以下、本発明の実施の形態に係る往復動工具について図1乃至図7に基づき説明する。図1に示される往復動工具例えば切削工具であるジグソー1は、ハウジング2と、モータ3と、ベース部4と、駆動部5と、制御装置6と、先端工具となるブレード7とから主に構成されており、ブレード7で図示せぬ被加工部材を切り進む工具である。このジグソー1が切り進む方向を切削方向における前方向と定義する。
ハウジング2はアルミ等のフレームから構成され、ジグソー1の後端上方部分となる位置に作業者が把持する箇所であるハンドル21が設けられている。ハンドル21の付け根部分には、作業者が操作するトリガ22Aを有しモータ3への電力供給を制御するトリガスイッチ22が設けられている。ハンドル21の切削方向後方位置には、モータ3や制御装置6等に電力を供給するための蓄電池23が着脱可能に設けられている。モータ3等の駆動源として蓄電池23を用いることにより、ジグソー1の携帯性が向上し作業性を向上することができる。尚、モータ3等の駆動源として蓄電池23ではなく外部商用電源(AC電源)90(図8)であってもよく、この場合には、交流電源を直流電源に変換する直流電圧変換部(コンバータ)80(図8)が必要である。AC電源90を使用すれば長時間の作業が可能になり作業性を向上することができる。又ハウジング2内において、駆動部5の上方に位置する部分には、後述のプランジャ52の死点間の移動(上死点と下死点間)を検知し信号を発する位置センサ24(例えば近接センサ)が配置されている。位置センサ24は、プランジャ52の位置を検出するため、プランジャ52の長手方向延長上のハウジング2に設けられていることが好ましい。
モータ3は、制御装置6により回転速度・回転角を細かく制御可能なDCブラシレスモータであり、ハウジング2内に配置されて前方向の一端に出力軸31が延出されている。出力軸31の先端部分には、ピニオンギヤ31Aが設けられている。また出力軸31の基端側には冷却ファン32を備え、ハウジング2に形成された不図示のファン風導入口からファン風をハウジング2内に導入しモータ3や制御装置6等の冷却を行っている。
ベース部4はアルミ等を基材として略長方形に構成されると共に被加工部材である木材板と対向する面が対向面41Aと規定され、その略長方形の長手方向が切削方向と一致するよう構成されており、ハウジング2を担持している。以下、ハウジング2からベース部4へ向かう方向を下方、反対方向を上方として上下方向を定義する。また上下方向及び切削方向とそれぞれと交差する方向を左右方向と定義する。またベース部4とハウジング2とは、対向面41A上で前後方向に延びブレード7と交差する仮想の軸を揺動軸として、ベース部4に対してハウジング2が仮想の軸周りに左右方向に揺動可能に構成されている。
図1に示されるようにブレード7は、刃部が切削方向前側上方側を向き、背部が切削方向後側を向くように後述のプランジャ52に取り付けられている。
駆動部5は、クランク部51と、プランジャ52と、伝達部53と、ローラホルダ54とから主に構成されている。クランク部51は、平歯車51Aと、ピン51Bと、スピンドル51Cとから主に構成されている。平歯車51Aは、ピニオンギヤ31Aに噛合していると共に、基端部分に伝達部53に係合するカム51Dを有している。ピン51Bは、平歯車51Aの回転軸と異軸かつ平行な状態で平歯車51Aから前方に向けて突出している。スピンドル51Cは、平歯車51Aを回転可能に支承しており、ハウジング2に固定されている。
プランジャ52は、略棒状に構成されて長手方向が上下方向となるようにハウジング2内に摺動可能に支持されている。図2に示されるようにプランジャ52の下端部分には、ブレード7を保持する保持部52Aが設けられている。またプランジャ52の中央部分には、左右方向に延びる溝52bが画成される受け部52Bが設けられており、受け部52Bの溝52b内にピン51Bが挿入されている。ピン51Bは受け部52Bの溝内で、左右方向の動きは許容され、上下方向の動きが規制されているため、受け部52Bはピン51Bの動きに応じて上下動のみ行うようになる。故にピン51Bのスピンドル51C周りの回転をプランジャ52の上下方向の動きに変換することができ、プランジャ52は、所定のストローク量S(図4)で上下動する。
図1に示されるように伝達部53は、ハウジング2に上下動可能に支持されていると共に、カム51Dと係合しカム51Dによりハウジング2内で上下動するように駆動されている。ローラホルダ54は、ホルダ54Aと、ローラ54Bと、軸部54Cとから構成されている。ホルダ54Aは、ブレード7の後方に配置され、左右方向に延びる軸部54Cによりハウジング2に左右方向と直交する方向に回動可能に支持されている。またホルダ54Aの上部は、伝達部53の下部と当接している。よって伝達部53が上下動することによりホルダ54Aも図1の紙面上で反時計回り、時計回りに回動する。ローラ54Bは、ホルダ54Aの下端部分に回転可能に保持されると共に、ブレード7の背部に当接するように配置されている。
制御装置6は、図1に示されるようにハウジング2内においてモータ3の後方に配置されており、冷却ファン32の回転によって生じるファン風の通路内に配置されている。制御装置6は、後述する制御回路61及びFET駆動回路(インバータ回路)62から主に構成されている。
ここで、図7を用いて制御装置6について説明する。まず、本発明で使用するモータ3について説明する。モータ3は上述のようにDCブラシレスモータであり、出力軸31方向に延びるN極およびS極の永久磁石(マグネット)が埋め込まれた内部磁石配置形であるロータ3Aと、ロータ3Aが内部に配置される円筒状の外形を持つステータ3Bと、ステータ3Bの内周部内に同心軸状に設けられステータ3Bの3相巻線U、V、Wからなるステータ巻線(電機子巻線)3Cとから構成される。
ステータ巻線3Cは、ステータ3Bを取り囲むように、樹脂材料からなる絶縁層(不図示)を介してステータ3Bのスロット内に巻回されている。ロータ3Aの近傍には、ロータ3Aの回転位置を検出するために、回転方向に60度毎に配置された3つの回転位置検出手段となるホールIC65、66、67が配置される。スター結線されたステータ巻線3Cには、FET駆動回路62によりホールIC65、66、67の位置検出信号に基づいて電気角120°の通電区間に制御された電流が供給される。
図7に示すように、FET駆動回路62は、3相ブリッジ形式に接続された6個の半導体スイッチング素子62Aを有している。スイッチング素子62Aは絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ(IGBT)Q1〜Q6から構成されている。尚、6個のFETをブリッジ接続してもよい。ブリッジ接続された6個のスイッチング素子62A(Q1〜Q6)の各ゲートは、制御回路61の制御信号出力回路63に接続され、又、6個のスイッチング素子62Aのコレクタ又はエミッタはスター結線されたモータ3のステータ巻線3C(U、V、W)に接続される。これによって、6個のスイッチング素子62Aは、制御信号出力回路63から各スイッチング素子62Aに入力されたスイッチング素子のPWM駆動信号(スイッチング信号)H1〜H6によってスイッチング動作を行い、FET駆動回路62に印加される蓄電池23の直流電圧を、3相(U相、V相、W相)の駆動電圧Vu、Vv、Vwに変換してステータ巻線3Cへ3相交流電力を供給する。
制御回路61は、FET駆動回路62へ制御信号出力回路63を介してスイッチング信号H1〜H6を出力しモータ3等を制御するために設けられている。制御回路61は、処理プログラムと制御データ、モータ位置信号等の入力信号等に基づいて制御信号出力回路63への出力信号を形成するためのマイクロコンピュータ等からなる制御・演算部61Aと、モータ3のロータ3Aの近傍にロータ3Aの回転位置を検出するためのホールIC65、66、67からの出力信号に基づいてロータ3Aとステータ3Bのステータ巻線3Cとの位置関係を検出し、制御・演算部61Aへロータ3Aの位置情報を出力する回転子位置検出回路68と、ホールIC65、66、67から一定間隔で出力される信号の時間間隔からモータ3の回転速度を検出する回転数検出回路69と、モータ3の駆動電流を常に検出して検出信号を制御・演算部61Aに出力する電流検出回路70と、トリガスイッチ22のトリガ22Aによるトリガ押込量に基づいてトリガスイッチ22によって発生する出力制御信号に対応するスイッチング信号のPWMデューティーを設定するための印加電圧設定回路71と、モータ3の回転速度を設定する速度設定手段(ボリュームVR)72からの信号に応じて制御・演算部61Aに設定回転速度信号を出力する速度指示回路61Eと、位置センサ24からの検出信号によりプランジャ52の位置を検出するプランジャ位置検出回路74と、から主に構成されている。
制御・演算部61Aは、電流検出回路70、印加電圧設定回路71、速度指示回路61E等からの出力信号に基づいて、スイッチング素子62AのPWM駆動信号のPWMデューティー比を制御することによって、モータ3のステータ巻線3Cへの印加電圧(Vu、Vv、Vw)を制御する。又、回転子位置検出回路68、回転数検出回路69からの出力信号に基づき、スイッチング素子62Aを所定の順序でスイッチングすることによってステータ巻線3Cに印加電圧を所定の順序で供給するように制御してモータ3の回転を制御する。又、プランジャ位置検出回路74からの出力信号に基づいてプランジャ52の位置を算出しプランジャ位置に応じてモータ3の回転速度(加減速又は停止)を制御する。又、制御・演算部61Aには、プランジャ52の往復移動中の減速位置(図4のα1及びα2)を設定するための減速位置設定手段76と、トリガスイッチ22がオフされた際にプランジャ52の停止位置を設定するための停止位置設定手段75が接続されており、制御・演算部61Aは位置センサ24によって検出したプランジャ52の位置と停止位置設定手段75及び減速位置設定手段76の出力信号に基づきモータ3の回転速度や回転角を制御する。
制御回路61は、トリガスイッチ22のトリガ22Aのトリガ押込量に対応した印加電圧設定回路71の出力信号と、速度設定手段72によって設定され速度指示回路61Eから出力されるモータ回転速度信号に基づいて、スイッチング素子62Aのスイッチング信号のPWMデューティーを変化させ、モータ3への供給電力を調整しモータ3の回転速度等を制御する。尚、トリガ22Aのトリガ押込量が最大の場合、速度設定手段72で設定されたモータ回転速度と等しくなるように構成されている。
制御・演算部61Aは、処理プログラムと各データに基づいて駆動信号を出力するためのCPU、後述するような制御フローを実行する処理プログラムや制御データを記憶するためのROM(記憶手段64)、データを一時記憶するためのRAM(記憶手段64)、時間をカウントするためのタイマ78(図7)等を含むマイクロコンピュータによって構成されている。記憶手段64(RAM)は、プランジャ52の位置とモータ3(ロータ3A)の位置との位置関係を記憶したり、所定の設定速度におけるプランジャ52の往復動時間や減速位置から死点までの時間を記憶する。タイマ78は、プランジャ52の所定位置から死点までの時間をカウント等する。
更に、制御・演算部61Aは、図3に示すように、位置検出部61B、速度制御部61C、電圧制御部61Dを有している。位置検出部61Bは、ロータ3Aの回転位置(回転速度)を検出する回転子位置検出回路68(回転数検出回路69)とプランジャ52の位置を検出するプランジャ位置検出回路74が接続され、各回路からの信号によってモータ3の回転位置及び回転速度、プランジャ52の位置を算出する。尚、後述するように回転子位置検出回路68に代わり端子電圧検出手段77が接続されるように構成してもよい。
速度制御部61Cは、予め設定された速度設定手段72からの信号に基づいた速度指示回路61Eからのモータ設定速度信号、及び位置検出部61Bからのモータ回転速度信号、モータ回転位置信号及びプランジャ位置信号に基づきモータ回転速度がモータ設定速度になったか否かの比較等を行い、電圧制御部61Dにモータ3の回転速度に関する信号を出力している。電圧制御部61Dは、速度制御部61Cの出力信号に基づき、制御信号出力回路63を介してFET駆動回路62にモータ3の駆動制御信号を出力している。
以上の構成により、ジグソー1は、蓄電池23をハウジング2に接続しトリガスイッチ22を操作するとモータ3が回転し出力軸31に接続された伝達部53を介してプランジャ52が上下動しプランジャ52に取り付けられたブレード7により被加工部材を切断する。具体的には、トリガスイッチ22を操作すると印加電圧設定回路71からトリガ押込量に対応した信号が制御回路61へ出力される。制御・演算部61Aはこの信号に基づき制御信号出力回路63を介してFET駆動回路62へスイッチング素子62Aのスイッチング信号を生成・出力しモータ3をトリガ押込量に応じた回転速度で回転させジグソー1による被加工部材の切断作業が開始される。尚、モータ3の最高回転速度は速度設定手段72によって設定された回転速度となる。
その後、制御回路61は、ホールIC65〜67からの信号によってロータ3Aの回転位置及び回転速度を回転子位置検出回路68及び回転数検出回路69を介して検出しトリガ押込量に応じたモータ速度になるように制御する。同時に、制御回路61は、位置センサ24及びプランジャ位置検出回路の出力に基づきプランジャ52の位置を算出し、プランジャ52が減速位置設定手段76によって設定されたプランジャ減速位置に到達したらプランジャ52を減速させる。その後、トリガスイッチ22がオフされると、停止位置設定手段75によって設定されたプランジャ停止位置でプランジャ52を停止し、ジグソー1による切断作業を終了する。
尚、ロータ3Aの回転位置を検出する方法として、ホールIC65、66、67の代わりに、図3に示されるように、モータ3のステータ巻線3C間の端子電圧(誘起起電圧)を検出する端子電圧検出手段77を設け、モータ3の端子電圧からロータ3Aの回転位置や回転速度を検出するセンサレス方式を採用してもよい。端子電圧検出手段77はステータ巻線3Cの端子電圧(誘起起電圧)を、フィルタを通して論理信号として取り出すように構成することができる。
次に、本発明となるプランジャ52(モータ3)の減速制御について説明する。本発明は、位置センサ24からのプランジャ52の位置情報、モータ3からのロータ3Aの位置情報、或いは両方の位置情報によってプランジャ52の位置を制御回路61で算出し、プランジャ52の位置に基づきプランジャ52が所定位置に達した場合にモータ3の回転速度又は回転角を制御することによって、振動や騒音を低減すると共に、作業性を向上させている。
以下、モータ3の減速開始位置をプランジャ52が両死点近傍(両死点の手前)になるように減速位置設定手段76によって設定した場合のモータ3の制御について図4を用いて説明する。制御回路61は、FET駆動回路62のスイッチング素子62Aのスイッチングを制御することによってモータ3を回転制御してプランジャ52を往復動させるが、制御・演算部61Aは常に位置センサ24からのプランジャ位置情報を見張っており、プランジャ52の一往復中の両死点近傍すなわち両死点手前位置にプランジャ52が到達したことを位置センサ24、プランジャ位置検出回路74が検出したら、制御・演算部61Aは、速度設定手段72で設定された回転速度(第一速度)で回転しているモータ3を第一速度より遅い第二速度に減速するようにスイッチング素子62Aを制御する。
具体的には、図4に示されるように、プランジャ52が上死点(t=0)から下死点へと移動している状態においては、第一速度でモータ3が回転している。プランジャ52が減速位置設定手段76で設定された減速位置となる下死点近傍位置例えば下死点手前位置である位置α1に到達(通過)したことを制御・演算部61A(位置検出部61B)で検出すると、この検出結果に基づき制御・演算部61A(速度制御部61C)はモータ3の回転速度を第ニ速度に減速するための信号をFET駆動回路62のスイッチング素子62Aに出力する。これにより位置α1においてモータ3の回転速度が設定速度(第一速度)から減速速度(第ニ速度)に減速される。最も振動や騒音が発生するプランジャ52の移動方向が切り替わる両死点近傍でモータ3を減速することが好ましく、特に死点手前位置で減速することにより移動方向の切り替わり位置での慣性(運動エネルギ)が小さくなるため振動や騒音を抑えるのに最も効果的である。
モータ3の回転速度を常に第一速度の状態で駆動してプランジャ52が上死点から下死点まで移動させた場合(グラフL1:破線)にかかる時間Tに対し、位置α1においてモータ3の回転速度を第一速度から第二速度に減速した場合(グラフL2:実線)には、上死点から下死点まで移動する時間がT+ΔTかかる。ここで、第二速度を第一速度の40%、具体的には、第二速度での微小時間Δt当たりのプランジャ52の移動量ΔXが第一速度の40%になるように設定した場合について説明する。グラフL1とグラフL2において、位置α1から下死点までの運動エネルギーを比較すると、質量Mが同じ場合に運動エネルギーは速度の二乗に比例(運動エネルギー=0.5×M×(ΔX/Δt)^2))するので、第二速度での運動エネルギーは0.5×M×(0.4×ΔX/Δt)^2)となり、グラフL2はグラフL1の16%の運動エネルギーを有する。下死点においては、プランジャ52の位相が逆転するため衝撃が発生するが、グラフL2においては、グラフL1に対して16%の運動エネルギーしか有していないため、衝撃発生に用いられる運動エネルギーが16%になり、プランジャ52の位相が逆転する際の衝撃を抑制することができる。
プランジャ52が下死点位置に到達(通過)したことを制御・演算部61Aで検出すると、この検出結果に基づき制御・演算部61A(速度制御部61C)はFET駆動回路62のスイッチング素子62Aに第一速度に応じたスイッチング信号H1〜H6を出力する。これにより下死点位置を通過したときにモータ3の回転速度が第二速度から第一速度に加速される。尚、プランジャ52が下死点に到達したことは、位置センサ24からのプランジャ位置信号や、減速位置設定手段76で設定可能な複数のプランジャ減速位置から最初に到達する各死点までの各減速位置に応じた時間を記憶手段64に記憶させておき、タイマ78によって減速位置から死点までの時間をカウントし記憶値と比較して算出することができる。又、記憶手段64に記憶する時間は、減速位置から死点までの時間に限らず、過去の経験から最も振動や騒音が発生しやすい領域(ストローク量S内の所定の領域)の間の時間でもよい。又、記憶時間は、減速位置から死点までの時間を予め記憶しておく必要はなく、位置センサ24からの信号に応じてその都度、減速位置から死点までの時間をタイマ78によってカウントして記憶し次の往復動の際にこの記憶値を用いるようにしてもよい。
更に、モータ3の設定速度(第一速度)は複数段階に設定可能であるため、制御・演算部61Aで設定速度と減速設定位置に基づき減速時間を算出して記憶手段64に記憶し、この記憶値に基づきモータ3の減速制御を行うようにすれば、いかなる設定速度でジグソー1を駆動しても確実にモータ3を制御でき振動や騒音を抑制することができ作業性も向上することができる。したがって、モータ3の回転速度を一度減速した後にその減速速度(第ニ速度)で回転し続けるのではなく、振動や騒音が大きくなる位置(下死点近傍)で減速し、下死点を通過後に加速して設定速度(第一速度)で回転するようにしているため、振動や騒音を抑えつつ作業性を向上することができる。
プランジャ52が下死点から上死点に移動する際にも同様に、位置α1から180°位相がずれた位置α2すなわち上死点近傍であって上死点手前位置である位置α2において、モータ3の回転速度を第一速度から第二速度に減速することにより、上死点での衝撃発生(振動や騒音)を抑制することができる。そしてプランジャ52が上死点を通過した後に再度モータ3の回転速度を第二速度から第一速度に加速するように制御・演算部61Aはスイッチング素子62Aを制御する。尚、下死点手前位置α1と上死点手前位置α2は各死点からの距離を合わせる必要はなく、減速位置設定手段76によってそれぞれの減速位置(α1、α2)を異なるように設定することもできる。
又、モータ3の設定速度(第一速度)がジグソー1の振動や騒音を発生しない又は発生が少ない速度の場合には、減速位置設定手段76の設定にかかわらず減速しないようにすることもできる。例えば、振動や騒音を発生しないモータ3の回転速度を予め記憶手段64に記憶させておき、減速位置設定手段76の設定速度が記憶速度の場合やそれより低い場合には、減速位置設定手段76の設定にかかわらず減速しないように制御することで作業性を向上することもできる。
又、減速位置をリセットしたり、記憶手段64に記憶されている減速時間やプランジャ52とモータ3の位置情報等をリセットするためのリセットスイッチ等を設け、ジグソー1を使用する度に各情報をセットするようにしてもよく、この場合には常に最新の情報でモータ3を制御することができる。
このように、減速位置設定手段76によってプランジャ52が所定位置(α1、α2)に到達した際にモータ3の回転速度を減速するように制御して、上死点、下死点手前位置α1、下死点、上死点手前位置α2、上死点・・・という往復動作を繰り返すことにより、上死点位置及び下死点位置での衝撃の発生を抑制しつつ図示せぬ被加工部材を切断することができるため、ジグソー1使用時の作業性を増すことができる。尚、上述のように第一速度と第二速度とを併用して衝撃発生を抑制した場合、常に第一速度で移動する場合に比べて2ΔTほどプランジャ52の周期が長くなるが、これは微少時間であるので作業量にはあまり影響は無い。作業量に影響が出る場合には、予め無負荷時における第一速度を若干速くすること等が例示される。
次に、ジグソー1による切断作業が終了した後のプランジャ52(ブレード7)の停止制御について説明する。切断作業終了時においてブレード7がベース部4から突出していると、ジグソー1の収納時や輸送時に突出したブレード7が邪魔になる。よって制御回路61は、図5に示されるように、プランジャ52が上死点若しくは上死点近傍位置に停止されるようにモータ3を回転制御する。
トリガスイッチ22からモータ3の駆動信号が出力されなくなった、すなわち切断作業が終了したことを制御回路61が検出した場合、制御回路61は位置センサ24からのプランジャ52の位置信号からプランジャ52の位置を見張りながらFET駆動回路62にスイッチング素子62Aのスイッチング信号を出力する。位置センサ24からの信号によりプランジャ52が所定位置である上死点若しくは上死点近傍位置、例えば図4の上死点若しくは位置α2に達したこと制御・演算部61Aが検出したら、制御・演算部61AはFET駆動回路62へスイッチング信号の供給を停止する、又は強制的にモータ3を停止させる。よってプランジャ52は図5に示す位置で停止することができる。又、設定位置になってからモータ3の停止制御を行うのではなく、設定位置に達する前からモータ3の停止制御を行うこともできる。
又、図5に示すようにプランジャ52が上死点位置若しくは上死点近傍位置に停止されていたのでは、ブレード7を着脱する際にベース部4等が邪魔になり作業性が悪い。そこで、プランジャ52の停止位置を切り替える停止位置設定手段75を設けることによって、プランジャ52を上死点位置若しくは上死点近傍位置に停止した後にプランジャ52を下死点位置若しくは下死点近傍位置(図1又は図4の下死点若しくは位置α1)に移動させるようにモータ3を制御することもできる。
又、プランジャ52の位置と停止位置設定手段75で設定可能な停止位置の情報(例えば、プランジャ位置に応じた設定可能な停止位置までの時間)を記憶手段64に記憶させ、トリガスイッチ22がオフされた際のプランジャ位置を位置センサ24から制御・演算部61Aが検出し、検出したプランジャ位置から記憶してある設定停止位置までの時間をタイマ78でカウントして所望の停止位置にプランジャ52を停止するようにしてもよい。
尚、停止位置設定手段75を設けずにトリガスイッチ22においてトリガ22Aが軽く一回引かれた際すなわち制御・演算部61Aがトリガスイッチ22からの信号を一回検出した際に、位置検出部61B(位置センサ24、プランジャ位置検出回路74)により検出されたプランジャ52の位置に基づき、プランジャ52が下死点位置若しくは下死点近傍位置に移動するようにFET駆動回路62等を制御してもよい。
又、停止位置設定手段75は、プランジャ52の停止位置を上死点側と下死点側とのいずれか一方側から他方側に切り替えるだけではなく、停止位置設定手段75をプランジャ52の停止位置を設定する手段(例えばダイヤルやスイッチ)として用いることもできる。
上述のように停止位置設定手段75がダイヤルの場合は、所望の停止位置にダイヤルを合わせる。停止位置設定手段75がスイッチであり、このスイッチが複数ある場合は所望の停止位置に相当するスイッチを押す。またスイッチが一つの場合はスイッチを押す回数によって所望の停止位置に合わせる。制御・演算部61Aはこれら停止位置信号とプランジャ52の位置信号(位置センサ24からの信号、ホールIC65〜67からの信号)に基づきモータ3を制御し設定された停止位置にプランジャ52を停止させる。尚、プランジャ52の停止位置を特に設定する必要がない場合には、不図示のリセットスイッチや停止位置設定手段75の調整(ダイヤルの場合は設定不要位置に合わせる)等により設定位置を解除する信号を制御・演算部61Aに出力することにより、トリガスイッチ22がオフされた際に任意の位置に停止するようにモータ3を制御することもできる。
停止位置設定手段75によるプランジャ52の停止位置は、トリガスイッチ22がオンされる前の切断作業前に設定する必要はなく、切断作業中や切断作業終了後に設定することもできるため、停止位置の設定が必要な場合にいつでも設定できるため作業性を向上することができる。
以下、ジグソー1において、作業時の制御について図6のフローチャートに基づき説明する。尚、本フローチャートでは、位置センサ24によってプランジャ52の位置を検出する場合について説明する。先ず、S01において、速度設定手段72となるボリュームVRによりモータ3の速度設定を行い、次にS02に進んで、トリガスイッチ22が作動したかを制御回路61で判断する。ここで、制御回路61がトリガ22Aが作業者により操作されずにトリガスイッチ22が動作していないと判断すれば(S02:N)、S01へ戻る。トリガ22Aが作業者により操作されてトリガスイッチ22が動作したと判断すれば(S02:Y)、S03へと進む。
S03では、ボリュームVR72における速度設定に基づき、制御回路61(図4の速度制御部61Cを含む制御・演算部61A)が、FET駆動回路62にモータ3の駆動信号(FET駆動回路62のスイッチング素子62Aにスイッチング信号H1〜H6)を出力し、蓄電池23からモータ3に電力を供給し、モータ3を設定速度で回転駆動させる。次にS04に進んで、位置センサ24でプランジャ52を検出したか否か、即ちプランジャ52が位置センサ24で検出可能な距離(上死点近傍或いは下死点近傍)に位置するか否かを検出する。尚、位置センサ24は、上述したように常にプランジャ52の位置を検出するようにしてもよい。検出していない場合(S04:N)には、S03に戻る。プランジャ52を検出した場合には(S04:Y)、S05へ進んで制御・演算部61A(位置検出部61B)により、プランジャ52の位置を特定すると共にホールIC65〜67又はモータ3のステータ巻線3C間端子電圧に基づきモータ回転位置を特定する。
次にS06へと進んで位置センサ24の出力信号に基づき制御・演算部61A(位置検出部61B)が、プランジャ52が減速位置設定手段76によって設定されたモータ3の減速位置に到達したか否か、例えばプランジャ52が下死点手前の位置α1若しくは上死点手前の位置α2のいずれかを通過したかを検出する。ここで、記憶手段64にプランジャ52が検出された位置から位置α1又は位置α2、上死点又は下死点に到達するまでの情報(モータ回転速度に応じて設定された時間、プランジャの位置信号、モータの位置信号等)を予め記憶しておき、制御・演算部61Aはこの記憶値と実際の検出信号とを比較することによって所定位置への到達を特定している。位置α1若しくは位置α2のいずれかを通過したことを検出しない場合には(S06:N)、S03へと戻る。位置α1若しくは位置α2のいずれかを通過したことを制御・演算部61Aが検出した場合には(S06:Y)、S07に進んで、制御・演算部61Aは、ボリュームVR72によってS01で設定されたモータ3の設定速度より低い回転速度となるようにFET駆動回路62にスイッチング素子62Aのスイッチング信号H1〜H6を出力しモータ3の回転速度を減速する。ここで、記憶手段64には、ボリュームVR72で設定可能な複数の設定速度に対応した減速回転速度が記憶されている。
次にS08へと進んで制御・演算部61A(位置検出部61B)により、プランジャ52が上死点若しくは下死点のいずれかを通過したかを位置センサ24からの出力信号によって検出する。又、記憶手段64に記憶されている情報から算出してもよい。上・下死点のいずれかを通過したことを検出しない場合には(S08:N)、S07へと戻りモータ3の減速を継続する。上・下死点のいずれかを通過したことを検出した場合には(S08:Y)、S09に進んで、ボリュームVR72の速度設定に基づき、制御・演算部61A(速度制御部61C)はS01で設定したモータ3の回転速度になるようにFET駆動回路62にスイッチング素子62Aのスイッチング信号H1〜H6を出力しモータ3の回転速度を加速する。
次にS10に進み、制御回路61はトリガ22Aが作業者により操作された状態か否かを判断する。トリガ22Aが作業者により操作されてトリガスイッチ22が動作している状態であれば(S10:Y)、S03へと戻り、S03〜S10までを再びループする。作業者がトリガ22Aの操作を停止し、トリガスイッチ22が動作していない状態を制御回路61が判断すれば(S10:N)、S11に進んで、制御・演算部61A(速度制御部61C)は、FET駆動回路62へのスイッチング信号H1〜H6の出力を制御し蓄電池23からモータ3に供給されている電力を減じて、モータ3を減速させる。次にS12に進み、位置センサ24により、プランジャ52の位置を検出する。検出できない場合(S12:N)は、S11に戻り、検出できた場合(S12:Y)にはS13に進む。尚、位置センサ24により常にプランジャ52の位置を検出するようにしてもよい。
S13では、位置センサ24の出力信号に基づき制御・演算部61A(位置検出部61B)は、プランジャ52が停止位置設定手段75によって設定されたモータ3の停止位置に到達したか否か、例えばプランジャ52が上死点若しくは上死点近傍位置に移動したかを検出する。プランジャ52が上死点若しくは上死点近傍位置に移動したことを検出できない場合(S13:N)は、S11に戻る。プランジャ52が上死点若しくは上死点近傍位置に移動したことを検出できた場合(S13:Y)は、S14に進んで制御・演算部61A(速度制御部61C)により、FET駆動回路62へのスイッチング素子62Aのスイッチング信号H1〜H6を制御しモータ3にブレーキをかけてモータ3の出力軸31の回転を完全に停止させ、プランジャ52(ブレード7)を上死点若しくは上死点近傍位置に配置し、本制御を終了する。
S13、S14において、ブレード7を交換する際にはブレード7(プランジャ52)が下死点に位置する方がよい。よって、停止位置設定手段75を操作することによってプランジャ52の停止位置を切り替えて下死点側にすることもでき、又、トリガ22Aを軽く一回引き、プランジャ52を下死点若しくは下死点近傍位置に移動させることもできる。この位置にブレード7を配置することにより、容易にプランジャ52(保持部52A)を操作して、ブレード7を交換することができる。
次に本実施の形態の変更例として、モータ3の駆動電源をAC電源とすると共に、位置センサ24を用いずにモータ3の回転位置及び回転速度を検出してプランジャ52の位置を検出する構成及び方法について主に図8に基づき説明する。
プランジャ52の速度制御や停止位置制御を行う場合、プランジャ52の位置に応じてモータ3を制御する必要がある。そのため、本発明の実施の形態では、プランジャ52の位置を検出するための位置センサ24を設け、制御・演算部61Aが位置センサ24からの信号に基づいてプランジャ52の位置を算出してモータ3を制御している。一方、モータ3の回転速度や回転位置の制御は、モータ3のロータ3Aの位置を検出するホールIC65〜67やステータ巻線3Cの端子間電圧を検出する端子電圧検出手段77(図3)からの信号により行っている。ホールICや端子電圧によるモータ3(ロータ3A)の回転位置や回転速度の検出はブラシレスモータを使用する際に必要であるため、図8に示すように、モータ回転信号のみからでプランジャ52の位置を検出することができれば、位置センサ24を設ける必要がなくなりセンサの部品コストを抑えることができる。
図8は、図7の回路構成に対して、位置センサ24及びプランジャ位置検出回路74を削除し、モータ3の駆動源を蓄電池23ではなく外部商用電源(AC電源)90とした点が異なっている。AC電源90を用いたことにより、交流を直流に変換するための直流電圧変換部80、直流電圧を検出する一組の抵抗81及び82、直流電圧を検出し制御・演算部61Aに検出信号を出力する電圧検出回路83を追加し、更にジグソー1の運転設定状態等を表示する表示手段91、プランジャ52の基準位置を設定する基準位置設定手段92を追加した。基準位置設定手段92はスイッチ等で構成される。
モータ3の位置情報のみでプランジャ52の位置を算出する場合には、プランジャ52の一往復(図4の時間0から2T)がモータ3(ロータ3A)の一回転に対応しない場合があるため、プランジャ52の位置とモータ3の位置を整合させる必要がある。プランジャ52位置とモータ3位置の設定について以下説明する。
ジグソー1の工場出荷時(製品組み立て時)において、外部装置を用いてモータ3を回転させてロータ3Aの回転位置を検出すると共にプランジャ52の位置を検出する。外部装置としては、位置センサ24のようなプランジャ52とセンサとの距離に基づき位置を検出してもよいし、スプリング等をプランジャ52に接続してスプリングの引っ張り力に基づき検出してもよく、種々の方法が考えられる。又、外部装置を用いずにジグソー1でプランジャ52とモータ3の位置関係についての初期設定を行ってもよい。
先ず、プランジャ52を基準位置例えば上死点に配置し基準位置設定手段(スイッチ)92を操作(オン)してプランジャ52の基準位置(上死点)を制御・演算部61A(記憶手段64)に認識させる。プランジャ52の基準位置への設定は作業者が行ってもよいし外部装置によりプランジャ52の位置を測定しながら行ってもよい。制御・演算部61A(記憶手段64)には、プランジャ52が一往復するのに要するモータ3の回転数が予め記憶されている。以下、一例としてプランジャ52が一往復する間にモータ3が10回転する場合について説明する。
モータ3を回転するとロータ3Aの回転位置、回転速度をホールIC65〜67で検出するが、ホールICからはロータ3Aの極性(N極、S極)に応じたパルス信号が出力され、パルス信号は回転子位置検出回路68、回転数検出回路69によって制御・演算部61Aが認識できるパルス信号に変換され制御・演算部61Aに入力される。図8の場合、ロータ3Aは一対のN極、S極を有しているため、ホールICはそれぞれ極性の変化に応じた信号を出力する。具体的には各ホールICからロータ一回転当たりそれぞれ2パルス出力され全体として6パルス出力される。したがって、モータ3が10回転したら一つのホールICから20パルス、全体として60パルス出力される。このパルス数を予め制御・演算部61Aに記憶しておく。尚、基準位置設定手段92に設定された基準位置でパルス数0になるように記憶しておくことにより、プランジャ52の一往復間のモータ3の回転情報(パルス数)に基づきプランジャ52を制御することができる。尚、制御・演算部61Aに入力されるパルス数を多くして、細かな制御を行う場合には、ホールICから出力されたパルス数分周回路を設ければよい。
工場出荷時において、基準位置設定手段92を操作しプランジャ52の基準位置を設定し、その基準位置からプランジャ52が一往復する際のホールICからのパルス数を記憶手段64に記憶する。作業時に基準位置設定手段92を操作することによって、制御・演算部61Aはモータ3の回転情報すなわちホールICのパルス信号からプランジャ52の位置を認識することができる。例えば、ホールIC65〜67からの総パルス数が30パルスの場合、制御・演算部61Aは記憶手段64に記憶してあるパルス情報と検出したパルス数(30パルス)を比較しプランジャ52が一往復の半分のパルス数すなわちプランジャ52は死点に位置していることを認識することができる。
プランジャ52を複数回往復動する場合、制御・演算部61Aは60パルスの整数倍のパルス数の時に基準位置になったことを認識することができる。例えば、速度設定手段72によってモータ3の回転速度が3000rpmに設定された場合、モータは1秒間に50回転するため、プランジャ52は5往復することになる。1往復でホールIC65〜67からのパルス数は60であるから5往復で300パルスとなる。制御・演算部61Aは、記憶手段64に記憶してあるパルス数と比較しプランジャ52の位置を判別し、減速位置設定手段76や停止位置設定手段75からの信号例えばホールICのパルス数に応じた信号により、ホールICからのパルス数と比較することで減速位置や停止位置を正確に認識でき設定された位置での減速や停止をするようにモータ3を制御する。よって、位置センサ24を設けなくてもモータ3(ロータ3A)の回転位置情報のみに基づいてプランジャ52の位置を算出することができ、図7に示す位置センサ24及びプランジャ位置検出回路74を省略することができる。
ここでモータ3の位置情報に基づきプランジャ52の位置を制御する方法を説明する。トリガスイッチ22をオンしモータ3を回転させる。制御回路61は、ホールIC65〜67によって検出したモータ3の回転位置信号(パルス信号)を回転子位置検出回路68を介して入力する。制御・演算部61Aは、検出したモータ位置信号(パルス数)と記憶手段64に予め記憶してあるモータ位置情報(パルス数)とに基づいてプランジャ52の位置を算出する。例えば検出したパルス数が20パルスの場合、制御・演算部61Aはプランジャ52が下死点(パルス数:30)に達していないことを認識すると共に減速位置設定手段76で設定された所定の位置、例えば上死点手前位置や下死点手前位置に達したか否かを確認する。減速位置がパルス数20に相当する位置に設定されていたことを制御・演算部61Aが認識した場合には、制御・演算部61AはFET駆動回路62にモータ3の回転速度を減速するための信号H1〜H6を出力する。引き続き制御・演算部61AはホールICからのパルス数を検出しパルス数30になったと認識した場合にはモータ3を加速するように制御する。一方、制御回路61がトリガスイッチ22がオフされたことを検出した際には、制御・演算部61AはホールICからのパルス数から停止位置設定手段75で設定された所定の停止位置、例えば上死点位置に相当するパルス数になったかを判別しプランジャ52を停止するようにモータ3を制御する。よって、プランジャ52の位置センサ24を設けなくても、モータ3とプランジャ52の位置関係を予め記憶手段64に記憶させることによって、モータ3の位置からプランジャ52の位置を算出することができる。
また、記憶手段64に記憶したモータ3とプランジャ52の位置関係をリセットするための記憶リセット手段や、モータ3とプランジャ52の位置関係を再設定するための記憶設定手段を設けることによって、古い記憶データを削除でき常に最新のデータを記憶しておくことができる。よって精度の高い制御を行うことができる。尚、記憶リセット手段や記憶設定手段は、停止位置設定手段75や減速位置設定手段76で兼用することができ、ダイヤルの場合には所定回連続で回転させたときに記憶リセット手段等に切り替わり、スイッチの場合には押し込む時間によって記憶リセット手段等に切り替わるようにし、その後に該手段を操作するようにしてもよい。
記憶設定手段によってモータ3とプランジャ52の位置関係を再設定する場合には、工場出荷時に使用した外部装置を用いてもよいが、ジグソー1に記憶手段64を組み込んだ状態で設定できるようにしてもよい。この場合には位置センサ24及びプランジャ位置検出回路74を設ける必要がある。記憶設定手段を操作すると、制御回路61はトリガスイッチ22の状態に関係なく自動的にモータ3を回転させる。制御・演算部61AはホールIC65〜67又はステータ巻線3Cの端子電圧からロータ3Aの位置情報を所定角度毎に読み込むと共に記憶手段64に記憶する。同時に位置センサ24から所定角度に対応したプランジャ52の位置情報を読み込み、ロータ3Aとプランジャ52の位置関係を記憶手段64に記憶する。制御回路61はモータ3の回転を停止し記憶作業を終了する。このように、モータ3とプランジャ52の位置関係を記憶しておけば、仮に位置センサ24が故障した場合でもプランジャ52の位置に応じてモータ3を制御することができ作業性を向上することができる。
また、ジグソー1にディスプレイやLED等の表示手段91(図8)を設ければ、記憶作業中であること、モータ3の設定回転速度、プランジャ位置等を視覚的に確認することができるため、より作業性を向上することができる。更に、ディスプレイであれば記憶作業の方法や減速位置、停止位置の状況を容易に確認することもできる。
本実施の形態にかかる往復動工具は、上述の実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の改良や変形が可能である。例えばプランジャの位置を把握する位置センサは、プランジャの上死点側のみに一個設けたが、これに限らず、更に下死点側に設けてもよい。この場合に、プランジャの位置検出がより高精度に行われる。又、近接センサでなく種々のセンサが適用できる。
また本実施の形態では、往復動工具として切削工具であるジグソーについて説明したがこれに限らず、先端工具を往復動させるセイバーソー(レシプロソー)やハンマ、ハンマドリル、卓上糸ノコ盤等にも適用することができる。