JP5699532B2 - 印字方法 - Google Patents

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Description

発明はインクジェット式記録装置における印字方法に係り、特に、ロールに巻かれた紙類、布類、フィルム類、合成樹脂材などのシート状記録媒体にインクジェット方式で画像を形成(印字)する複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの機能を複合して有するデジタル複合機、印刷機などの画像形成装置を含むインクジェット式記録装置で実行される印字方法に関する。
インクジェット式記録装置は、インクジェットヘッドによりインクの液滴をシート状記録媒体に吐出し、シート状記録媒体の内部に浸透させ、若しくは表面に付着させて画像を形成し、あるいは印字するようになっている。このようにインクジェット式記録装置では、インク滴を使用するため、印字部雰囲気が高湿度環境となるとともに、シート状記録媒体の印字部分のみならず当該記録媒体自体も湿気を帯びることになる。
一方、高速印字を行うインクジェット式記録装置では、ロール状に巻かれた連続紙(用紙)を引き出して印字した後、ロール状に巻き取ることが多いことから、巻き取る前に用紙を乾燥させておく必要がある。さもないと、印字したインクの付着による汚れ、かすれ、にじみなどが生じ、また、巻き取りにも支障が生じる虞もある。
そこで、例えば特許文献1(特開2002−361850号公報)には、熱風を発生させる熱風機、連続紙を乾燥させる乾燥本体、熱風を除湿する除湿機を備え、熱風機から発生する熱風を乾燥本体に導くことにより連続紙を乾燥し、乾燥本体に導かれた熱風を除湿器に導いて除湿し、再度熱風機に導くようにした発明が開示されている。
また、特許文献2(特開2010−80340号公報)にも、インクジェット記録部により記録された布帛を乾燥する本乾燥区間と、この本乾燥区間を挟んで配置された予備乾燥区間とを含む乾燥部、及び布帛を搬送する搬送部を備え、予備乾燥区間は除湿機によって常温低湿度の雰囲気に設定され、本乾燥区間では風量発生器によって内部の空気が循環して布帛の表面に送風され、乾燥するようにした発明が開示されている。
前記特許文献1記載の発明は熱風により連続紙を乾燥し、前記特許文献2記載の発明は常温で布帛を乾燥し、それぞれ乾燥工程で使用した熱風を除湿して、再度乾燥に使用するように構成されている。
しかし、特許文献1記載の発明では、熱風を筐体に送り込み、この筐体内に連続紙を通過させて乾燥させることが記載されているだけで、消費電力も含め、効率的に乾燥させることについて特に配慮されているわけではなく、高速印字のインクジェット式記録装置に対応することは難しい。また、特許文献2記載の発明では、乾燥部の内部空間が常温(25℃〜50℃)で低湿度(0%〜20%)の雰囲気に維持され、1〜5分程度通過させて乾燥させているが、1〜5分程度通過させる必要があることから高速印字のインクジェット式記録装置に適用することはできない。
すなわち、インクジェット式ヘッドで印字する場合に、印字速度を高速にすることができるが、印字されたシート部の乾燥処理が印字速度に追いつくことができず、印字速度の上限が乾燥処理の処理時間に依存することになる。また、乾燥効率を上げようとすると、高温にする必要があり、高温にすると、その分消費電力が多くなる。また、用紙の乾燥処理に部分的な偏差が生じ、印字品質の低下を招くことになる。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、印字品質の低下を招くことなく、インクジェット式記録装置における印字速度の高速化及び低消費電力化を図ることにある。
前記課題を解決するため、本発明は、インクを記録ヘッドにより吐出してシート状記録媒体上に印字画像を形成するインクジェット式記録装置において、ヒートポンプを使用して用紙を乾燥させることを特徴とする。
具体的には、本発明は、インクを記録ヘッドにより吐出してシート状記録媒体上に印字画像を形成するインクジェット式記録装置における印字方法であって、前記インクジェット式記録装置は、ロール状に巻かれた前記シート状記録媒体の搬送路の前記記録ヘッドの下流側に設けられた乾燥室と、前記乾燥室に接続された複数のダクトを介して気体を循環させる用紙乾燥装置と、を備え、前記用紙乾燥装置が、用紙から水分を移行させて戻ってきた含湿気体から水滴を分離し、高温に加熱した高温乾燥気体として前記乾燥室の気体供給側のダクトから前記乾燥室に供給し、当該乾燥室で前記シート状記録媒体の水分を当該高温乾燥気体側に移行させ、水分が移行した含湿気体を前記乾燥室の排気側のダクトから前記用紙乾燥装置内に戻すヒートポンプを含み、印字を開始するときに、データ格納部に格納された用紙印刷のための基準データを読み込み、前記ヒートポンプの減圧機及び圧縮機のアイドリング運転を開始し、ホスト装置から印刷データを受信すると、印刷データから印刷密度データを抽出し、前記読み込んだ基準データと印刷密度データとから前記減圧機及び圧縮機の制御条件を求め、印刷密度に合った前記制御条件を取得した後、当該条件で印刷を開始し、印刷過程で前記乾燥室内の湿度を検出し、その検出した値に対応する前記制御条件が前記基準データのそれと合致しているかどうかを確認し、一致している場合にはその制御条件で、合致しない場合には前記制御条件が合致するように変更して印字することを特徴とする。
なお、後述の実施形態では、記録ヘッドはインクジェットヘッド110に、シート状記録媒体は用紙10に、インクジェット式記録装置は符号インクジェット装置1に、ヒートポンプは符号406に、ロール状に巻かれたシート状記録媒体はロール紙21,31に、搬送路は符号111に、乾燥室はチャンバー412に、ダクトは第1及び第2のダクト411,413に、用紙乾燥装置は符号400に、水滴は符号409に、高温乾燥気体は高温乾燥空気に、気体供給側のダクトは第1のダクト411に、排気側のダクトは第2のダクト413に、シャッタ部材はシャッタ414に、駆動手段は図示しない駆動機構に、圧縮機は符号450に、減圧機は符号460に、それぞれ対応する。
本発明によれば、用紙を乾燥させるためにヒートポンプを使用したので、用紙に変形を与えずに確実に乾燥させることが可能となり、その結果、印字品質の低下を招くことなく、インクジェット式記録装置における印字速度の高速化及び低消費電力化を図ることができる。
本発明の実施形態に係るインクジェット式記録装置全体のシステム構成を示す図である。 図1のインクジェット式記録装置を拡大して示す概略構成図である。 図2に示したインクジェット式記録装置の右側面図である。 図2とは逆方向に送風するインクジェット式記録装置を正面から見た概略構成図である。 図4に示したインクジェット式記録装置の右側面図である。 チャンバーの流路面積を変更する用紙乾燥装置の構成を示す正面図である。 チャンバーの流路面積を変更する用紙乾燥装置の構成を示す右側面図である。 ヒートポンプの機能構成を示す概略構成図である。 ヒートポンプを含むインクジェット式記録装置の制御構成を示すブロック図である。 制御部が実行する用紙乾燥制御の制御手順の一例を示すフローチャートである。 図10に示した制御手順を経て用紙乾燥制御を行った場合の乾燥特性を示す特性図で、用紙と送風方向が同一で送風速度が遅い場合の例である。 図10に示した制御手順を経て用紙乾燥制御を行った場合の乾燥特性を示す特性図で、用紙と送風方向が同一で送風速度が速い場合の例である。 図10に示した制御手順を経て用紙乾燥制御を行った場合の乾燥特性を示す特性図で、用紙と対向する方向に送風する場合の例である。
本発明は、乾燥工程にヒートポンプを使用することを特徴としており、合わせて、乾燥空気の流速、乾燥処理時にシート部材を通過させるチャンバーの断面積などを可変制御し、高速、かつ効率的な乾燥を可能としたものである。以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施形態に係るインクジェット式記録装置(以下、インクジェット装置とも称する。)全体のシステム構成を示す図である。同図において、本実施形態に係るシステムは、インクジェット装置1、給紙装置(アンワインダー)2及び巻き取り装置(リワインダー)3から基本的に構成され、これらの各装置1,2,3は用紙搬送方向に沿って給紙装置2、インクジェット装置1及び巻き取り装置3の順に直線上に配置されている。なお、本実施形態では、これらの装置は、それぞれ下面に設けた車輪40によって同一水準の床面上に並置されている。
給紙装置2はロールに連続的に巻かれたロール紙21を引き出しながらインクジェット装置1側に供給する。巻き取り装置3はインクジェット装置1で印字された用紙10をロールに巻き取り、全シート部材を巻き取ってロール紙31とし、巻き取ったロール紙31を取り外し、後工程に送る。なお、ここでは、単に用紙10と称しているが、この用紙10はロールに巻かれた連続紙であり、ここでは、用紙10は連続紙を意味している。また、本実施形態では、用紙10はシート状記録媒体の1つとして代表して例示したもので、用紙10は前述の記録媒体として使用される前述の紙類、布類、フィルム類、合成樹脂材からなるシート状の部材に敷衍することができる。
インクジェット装置1はインクジェットヘッドを備えたインクジェット作像部100と、インクジェット作像部100の用紙搬送方向上流側(前段)にあって、給紙装置2から給紙された用紙10をインクジェット作像部100に送るインフィードユニット200と、インクジェット作像部100で印字された用紙10を巻き取り装置3側に送るアウトフィードユニット300とを備えている。
図2は図1のインクジェット装置1を拡大して示す概略構成図である。同図においてインフィードユニット200は、複数のガイドローラ210、インフィードローラ220、ニップローラ230等を備え、給紙装置2からインフィードユニット200側面に形成された給紙口201から連続紙を引き込む。インフィードユニット200では、ガイドローラ210からインフィードローラ220とニップローラ230のニップに用紙10を導き、複数のガイドローラ210によって所定の張力を付与した状態でインクジェット作像部100に用紙10を送り込む。
インクジェット作像部100はインクジェットヘッド110及び後述の制御部120を備え、ホスト装置130からの指示に基づいて、用紙10に対する作像及び給紙制御を実行する。インクジェットヘッド110は用紙搬送路111に対向する位置に配置され、高速で搬送される用紙10に対してインク滴を吐出し、用紙10上に印字画像を形成する。インクジェット作像部100の前面側には、更にヒートポンプ406を備えた用紙乾燥装置400(図3参照)が設置され、ヒートポンプ406の吹き出し口401からアウトフィードユニット300を通り、吸い込み口402を経てヒートポンプ406に戻る送風経路410a,410bが設けられている。上流側の送風経路410aは上流側の第1のダクト411、乾燥室(以下、「チャンバー」と称す。)412及び下流側の第2のダクト413、及び下流側の送風経路410bを含み、チャンバー412内に用紙10の搬送路が形成されている。
チャンバー412はインクジェットヘッド110に対向する搬送路111の下流側に配置され、用紙10の印字面の上部の空間にヒートポンプ406から送風される高温の乾燥空気が供給される。これにより、高温の乾燥空気が用紙表面と接触して用紙10に対して乾燥と除湿が行えるように構成されている。また、第2のダクト413の内側にはチャンバー412内の雰囲気の湿度を検出する湿度センサ405が配されている。
アウトフィードユニット300内には、前記チャンバー412内に通過させるためのガイドローラ310を含め、複数のガイドローラ310が設置され、アウトフィードユニット300内の用紙搬送方向最下流側に設けられたアウトフィードローラ320及びニップローラ330によって搬送力が付与され、最後段のガイドローラ310を経て、排紙口340から巻き取り装置3側に送られ、巻き取り装置3でロール状に巻き取られる。本実施形態では、このようにして給紙装置2のロール先端から巻き取り装置3で巻き取られたロール後端までの連続紙に対して印字処理が行われる。
図3は図2のインクジェット装置1の右側面図であり、一部アウトフィードローラ320及びガイドローラ310を破断し、チャンバー412と送風経路410a,410b等の配置の状態を示している。
図3から分かるように、インクジェット作像部100の前面にヒートポンプ406を備えた用紙乾燥装置400が配置され、用紙乾燥装置400では、ヒートポンプ406の吹き出し口401から送風される高温乾燥空気が上流側の送風経路410aに案内され、アウトフィートユニット300内のチャンバー412に供給され、チャンバー412から下流側の送風経路410bを通ってヒートポンプ406に戻る。すなわち、送風経路410a,410bはチャンバー412の用紙搬送方向最上流側と最下流側の周面の用紙搬送方向に直交する方向のほぼ中央部でそれぞれ第1のダクト411及び第2のダクト413により接合され、ヒートポンプ406から出た温風がヒートポンプ406に戻る循環経路が形成されている。
前述したが、チャンバー412の図2において下側の壁面の内側に沿って用紙10の搬送路が形成され、用紙10はチャンバー412内の最終段のガイドローラ310からチャンバー412外に導かれる。用紙10から湿気を奪った高温乾燥空気は前記最終段のガイドローラ310の下流側から送風経路410bに導かれ、ヒートポンプ406内に戻る。なお、図3では、第1及び第2のダクト411,412は吐出側と吸入側でそれぞれ単数となっているが、それぞれの側で並列あるいはチャンバー412内の流速分布を均一化するような位置に並べて複数設けても良いことは言うまでもなく、その方が温風の循環効率が高くなる。なお、図1ないし図3に示した例は、温風が矢印D1で示すように用紙10と同じ方向(順方向)に送られる例である。
ヒートポンプ406からの温風は、逆方向に送られる場合もある。この例を図4及び図5に示す。図4はインクジェット装置1を正面から見た概略構成図、図5はその右側面図で、図4は図2に、図5は図3にそれぞれ対応し、共にヒートポンプ406からの送風方向が用紙搬送方向と対向する矢印D2で示す方向に送られる例である。その他の各部は前記図2及び図3を参照して説明した各部と同一なので、同一の各部には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
図6及び図7はチャンバーの流路面積を変更する構成を示す図で、図6は正面図、図7は右側面図である。図7に示すように、本実施形態では、チャンバー412の用紙搬送方向と平行にシャッタ414を設け、チャンバー412内で図示しない駆動機構により用紙搬送方向と直交する方向に変位できるようにしている。シャッタ414の形状は、図6に示すようにチャンバー412内部の用紙搬送方向と平行な断面形状とほぼ同一形状であり、用紙の幅方向のサイズに応じて図7に示すように用紙搬送方向と直交する方向に移動し、用紙幅に応じて最もヒートポンプ406と用紙乾燥の効率が良くなる流路幅となるようにする。駆動機構は、ここでは、図示しないが、例えばモータを使用してシャッタ414の駆動と位置決めを行えば、簡単に精度の高い位置決めが可能となる。なお、シャッタ414の位置は、例えば用紙幅を基準に設定しても良いし、予め用紙幅とシャッタ位置と効率の関係を実験室などで求めておき、そのなかで効率の良い位置を選択して設定するようにすることもできる。駆動機構の駆動制御は後述の制御部120で実行される。
図8はヒートポンプの機能構成を示す概略構成図である。ヒートポンプ406は、熱媒体を使用したヒートポンプであり、送風機420、冷却側及び加熱側の熱交換機430,440、圧縮機450、及び減圧機460を備え、これら各部は吹き出し口401及び吸い込み口402が形成されたケース470内に収納されている。また、冷却側の熱交換機430、減圧機460、加熱側の熱交換機440、圧縮機450はそれぞれの間の媒体管路403によって接続され、閉鎖された循環管路を形成している。熱媒体は図示矢印D3方向に循環し、チャンバー412に供給される高温乾燥空気は図示D4方向に循環する。
送風機420はチャンバー412に供給される温風の駆動源であり、冷却側の熱交換機430と加熱側の熱交換機440との間に配置され、吸い込み口402から吸い込まれた戻り側の含湿空気Awを冷却側の熱交換機430から加熱側の熱交換機440に送り、加熱側の熱交換機440で所定の温度に加熱された高温乾燥空気Ahを吹き出し口401から送り出す。ヒートポンプ406の熱媒体は、減圧機460で減圧され、周辺温度よりも低温となって冷却側の熱交換機430に送られる。そして、冷却側の熱交換機430が冷やされ、吸い込み口402から吸い込まれた含湿空気(温風)Awを水滴409と乾いた空気に分離する。
一方、冷却側の熱交換機430を通った熱媒体は圧縮機450側に送られ、圧縮機450で圧縮されて高温となる。高温となった熱媒体は加熱側の熱交換機440に送られ、冷却側の熱交換機430で除湿された空気と熱交換し、減圧機460に送られる。他方、加熱側の熱交換440を通った空気は、高温の乾燥空気Ahとなって吹き出し口401から送風経路410aに送り出される。
すなわち、ヒートポンプ406は熱媒体が膨張と圧縮を繰り返して吸熱と放熱を行う過程で送風経路410a,410bを循環する空気と熱交換を行い、用紙10から湿気を奪って吸い込み口402からヒートポンプ406側に導入される含湿空気Awから水分を奪い、用紙10を乾燥するに足る熱量を温風に供給し、チャンバー412側に50℃〜100℃の高温乾燥空気Ahとして送り出す。
なお、ヒートポンプ及びヒートポンプの熱交換原理は公知の技術であることから、ここでは詳細な説明は省略する。また、ヒートポンプの熱交換能力や送風能力は熱交換対象となる機器に応じて適宜設定されるべきものであるので、これらの詳細についてもここでの説明は省略する。
このように、ヒートポンプ406の送風機420によって高温乾燥空気Ahを吹き出し口401から上流側の送風経路410a、第1のダクト411を介してチャンバー412内に供給し、チャンバー412内で用紙10を乾燥させた後、第2のダクト413及び下流側の送風経路410bを介して吸い込み口402から含湿空気Awを回収し、回収した含湿空気Awをヒートポンプ406によって再度高温乾燥空気Ahにして送り出すという循環経路を形成することにより高速印字を行うインクジェット装置1における用紙10の乾燥が可能となる。なお、ここでいう高速印字とは例えば75m/min〜150m/minの搬送速度での印字を想定している。なお、特許請求の範囲でいう気体はここでは空気である。
その際、図2及び図4にも示すように用紙10はチャンバー412内の下面に沿って搬送され、高温乾燥空気Ahは用紙10の印字面側を所定の相対速度で移動し、用紙10に含まれる湿気を高温乾燥空気Ah内に移行させる。この場合、送風機420からの送風速度は、用紙10からの湿気の高温乾燥空気Ah内への移行が平衡状態を維持するような相対速度となる速度が好ましい。
図9は本実施形態におけるヒートポンプを含むインクジェット装置の制御構成を示すブロック図である。同図において、インクジェット装置1は、ホスト装置130と通信可能に接続された制御部120を備え、この制御部120には、減圧機・圧縮機制御部121、送風機制御部122、操作パネル140、データ格納部123、減圧機460及び圧縮機450を駆動制御するためのモータドライバ124、及び送風機420を駆動制御するためのモータドライバ125が接続されている。また、減圧機・圧縮機制御部121及び送風機制御部122には、前述のチャンバー412内の湿度を検出する湿度センサ405からの検出出力が入力される。これにより、各制御部121,122は用紙10から蒸発して温風内に移行した水分量に基づく湿度情報を取得し、制御情報をインクジェット装置1の制御部120に出力する。インクジェット装置1の制御部120では、データ格納部123に格納された用紙乾燥制御ための制御データを参照し、前記各制御部121,122からの制御情報に基づいてモータドライバ124,125を介して減圧機460及び圧縮機450、並びに送風機420を制御する。操作パネル140はユーザーインターフェースであり、ユーザーによる初期設定のためのキー、及び各種モードを設定するキー、動作を指示するキーなどを備えている。
なお、制御部120、減圧機・圧縮機制御部121及び送風機制御部122は、それぞれCPU、ROM及びRAMを備え、各制御部120,121,122ごとに、CPUはROMに格納されたプログラムコードを読み出し、読み出したプログラムコードをRAMに展開し、当該RAMをワークエリア及びデータバッファとして使用しながら前記プログラムコードで定義された制御を実行する。
図10は制御部120が実行する用紙乾燥制御の制御手順の一例を示すフローチャートである。この制御手順では、制御部120のCPUは、データ格納部123に格納された用紙印刷のための基準データを読み込み(ステップS1)、各制御部120,121,122により、減圧機460及び圧縮機450のアイドリング運転が開始される(ステップS2,S3)。次いで、ホスト装置130から印刷データを受信すると(ステップS4)、印刷データから印刷密度データを抽出し、ステップS1で読み込んだ基準データと印刷密度データによる減圧機460及び圧縮機450の回転数が合致しているかどうか判断する(ステップS5)。
合致していない場合には、ステップS1に戻ってデータ格納部123のデータテーブルから減圧機460と圧縮機450の回転数の読み出しを繰り返し、印刷密度に合った回転数を取得する(ステップS5−Y)。そして、減圧機460と圧縮機450の回転数が印刷密度データと合致したら、印刷密度データテーブルのデータに基づいて送風機420の回転数を印刷密度に合わせ、動作させる(ステップS6,S7)。次いで、インクジェットヘッド110を駆動して印刷を開始する(ステップS8)。
この過程で、チャンバー412内の湿度センサ405の検出値を読み取り、その検出値に対応する減圧機460、圧縮機450及び送風機420の回転数が基準データのそれと合致しているかどうかを確認し(ステップS10)、異なる場合には、ステップS1に戻って以降の処理を繰り返すが、その際、印刷密度データに対して合致しない分、加算し、あるいは減算して湿度センサ405の検出値に対して合致する回転数に設定し(ステップS10−Y)、印刷を実行する。
そして、印刷が停止すると(ステップS11)、送風機420の運転を停止し(ステップS12)、次の印刷を待つ。なお、減圧機460及び圧縮機450も合わせて停止させても良いが、運転状況に応じてそのままアイドリング運転を継続させておいても良い。
図11ないし図13は図10に示した制御手順を経て用紙乾燥制御を行った場合の乾燥特性を示す特性図である。図11は用紙10と送風方向が同一(順方向送風)で、送風速度が遅い場合のチャンバー412内の湿度と用紙の含水率との関係を示し、図12は用紙10と送風方向が同一(順方向送風)で、送風速度が速い場合のチャンバー412内の湿度と用紙10の含水率との関係を示す。いずれも、用紙10の上流側から下流側にわたって検出したもので、実線がチャンバー412内の湿度、波線が用紙含水率である。なお、チャンバー412内の湿度は、チャンバー412の湿度センサ405と同等のものを用紙搬送方向に複数並設して検出したものである。実機では湿度センサ405は下流側に設置されているので、下流側での検出値が基準となる。また、送風速度が遅い速いは相対的なもので、前記印字速度である75m/min〜150m/minの搬送速度に対して相対的に遅い場合と速い場合を想定したものであり、例えば、遅い場合とは、送風速度が印字速度と同等程度の場合で、速い場合とは、印字速度に対して同等以上の場合である。
図11の特性から、高温乾燥空気Ahの送風速度が相対的に遅い場合には、チャンバー412内が高湿度になり、用紙搬送方向下流側になっても用紙含水率は下がらない。これは用紙10表面近傍の高温乾燥空気Ahの空気層が飽和水蒸気量に達した後、相対速度が低いことから表面近傍の空気層が置換されにくく、用紙10内の水分が空気層側に蒸発して移行しないためである。
これに対し、高温乾燥空気Ahの送風速度が相対的に速い場合には、図12の特性から分かるように相対速度が高くなり、飽和水蒸気量に達した空気層が迅速に置換されるためである。その結果、チャンバー412内の湿度勾配が緩やかになり、高湿度とならないので、用紙含水率が下がり、用紙10の乾燥効果が向上する。また、チャンバー412内の湿度と用紙含水率は互いに逆勾配の特性を示しているが、両者の傾きが緩やかであることから、用紙10の乾燥むらを抑制することができる。
一方、図13は用紙10と送風方向が逆方向(対向送風)の場合のチャンバー412内の湿度と用紙の含水率との関係を示す特性図である。この場合、送風速度が遅くとも、用紙10の搬送速度との相対速度は大きくなり、図12に示した順方向で相対速度が大きい場合と同様に、飽和した空気層が迅速に置換されるので、用紙の乾燥効率が大きいことが分かる。また、特性図からチャンバー412内の湿度と用紙含水率が同勾配となることから、乾燥むらも発生しにくい。
なお、用紙10の搬送に伴って用紙10表面の乾燥空気も用紙10の搬送方向の速度成分を得るので、用紙10から水分を乾燥空気側に効率良く移行させるには、少なくとも用紙10から乾燥空気側に移行したときの用紙表面の空気層の湿度が飽和水蒸気量に達していない平衡状態となっている必要がある。すなわち、用紙表面近傍の空気層の水蒸気の含有量が飽和状態となると、用紙表面から水分が空気層側に移行できなくなり、用紙の含水率が下がらない。そのため、高温乾燥空気Ahと用紙10との相対速度は、前記飽和状態とならないだけの速度が必要であり、最適には、常に水分の空気層への最大移行量で平衡状態となるような相対速度が最も効率的な速度となる。なお、ここでいう平衡状態とは、常に同量の水蒸気が蒸発して高温乾燥空気Ah側に移行し、高温乾燥空気Ahの湿度が飽和蒸気圧以下の一定の水準を保持している状態を意味する。
この速度は、高温乾燥空気Ahの温度、湿度、及び用紙10に印字されるインクの量にも関係するため、最適な温度、送風機420の駆動速度、減圧機460及び圧縮機450の駆動速度とインク量(水分)との関係を実験的に取得し、前述の基準データとしてデータテーブルに記憶しておく。そして、実際の運転時には、湿度センサ405によって検出されるチャンバー412内の湿度からデータテーブルを参照し、データテーブルに適切な値がない場合には、補間計算を行って最も効率の良い運転条件を設定し、その条件で送風機420、減圧機460及び圧縮機450を駆動して用紙乾燥を行う。
なお、ここでいうインク量は前述のステップS5における印刷密度に対応する。したがって、印刷密度が高いほど、用紙10に供給するインク量が多いことになり、その分、風速を大きくし、あるいは高温乾燥空気の温度を上げ、前述の水分の空気層への移行の平衡状態を高くする必要がある。同様にチャンバー412内の湿度の湿度が高い場合には、用紙10から水分の移行量が多いか、水分が飽和した乾燥空気の置換が遅いことを意味しているので、その分、風速を大きくし、あるいは高温乾燥空気の温度を上げ、前述の平衡状態を高くする。これらは実験的に得られることから、前記データテーブルのデータは、このような印刷密度及び湿度もパラメータとして含んでいる。
また、送風機420の駆動速度の設定には、チャンバー412内の風速が問題となるので、送風経路410a,410b、第1及び第2のダクト411,413及びチャンバー412等における速度損失を計算にいれる必要がある。また、減圧機460及び圧縮機450の駆動速度を設定する場合には、前記各部からの熱損失も計算に入れる必要がある。そこで、熱損失を少なくするため、チャンバー412及び、ヒートポンプ406側とチャンバー412を接続する第1及び第2のダクト411,413、及び送風経路401a,401bは、熱伝導率が2W/(m・K)以下の材質を使用することが望ましい。これにより、熱効率の低下を最小限に抑えることができ、低消費電力化を促進することが可能となる。
以上のように、本実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
(1)用紙10の乾燥にヒートポンプ406を使用したので、高温乾燥空気(除湿空気)Ahによる確実な乾燥と低消費電量化の両立を図ることができる。低消費電力化については、前述の公知例のようなヒータを使用した場合に比べて最大3倍程度の低消費電力化を見込むことができる。
(2)ヒートポンプ406によって高温乾燥空気Ahを作成し、チャンバー412内へ循環させるので、チャンバー412内で用紙10から奪い取った水分をヒートポンプ406側で確実に水滴化することができる。これにより、装置設備環境が高湿化することがなく、あるいは装置設置室から外部への排気設備を不要とすることが可能となり、設備の環境の浄化及び設備費の削減にもつながる。
(3)チャンバー412、ダクト411,413及び送風経路401a,401bを低熱伝導率の材質により構成したので、送風循環経路内での放熱量を少なくすることが可能となり、更に低消費電力化を図ることができる。
(4)高温乾燥空気Ahを用紙搬送方向と順方向に送風する際に、高温乾燥空気Ahは用紙10の搬送速度より速い速度で用紙表面を移動するので、チャンバー412内で用紙10から水分が移行した含湿空気Awを用紙10よりも速い速度で乾燥空気と置換することが可能となる。これにより、乾燥効率を向上させることができる。
(5)高温乾燥空気Ahを用紙搬送方向と逆方向に送風すると、相対速度は用紙10の搬送速度より速い速度となるので、チャンバー412内で用紙10から水分が移行した含湿空気Awを確実に乾燥空気と置換することが可能となる。これにより、乾燥効率を向上させることができる。
(6)ヒートポンプ406から供給される高温乾燥空気Ahの温度を50℃〜100℃としたので、用紙収縮の発生を抑えることができるとともに、乾燥が不完全なることを防止することができる。すなわち、100℃以上の高温乾燥空気Ahで乾燥させた場合、用紙10の収縮速度が速いので、加速中及び減速中の用紙10の収縮量が大きくなるが、100℃未満であると、用紙10の収縮速度は遅いので、加速中及び減速中の用紙10の収縮量が大きくなることがない。また、50℃以下の場合には、飽和水蒸気量が小さいので、乾燥が不完全となることがあるが、50℃よりも高温であると、乾燥に適した飽和水蒸気量を確保することができるので、用紙10の乾燥が不完全となることはない。
(7)ヒートポンプ406の立ち上げ特性として、安定した温風を送風できるまで20分以上の時間を要するが、図10のフローチャートから分かるように、ステップS8で印刷を開始するまでに、ステップS2からステップS7の間で減圧機460、圧縮機450のアイドル運転が実行され、その後、送風機420が起動される。このように印刷開始前にヒートポンプ406運転に関する所定の条件が完備するまでアイドル運転を行うので、ヒートポンプ406の立ち上げ特性を改善することができる。
(8)印刷密度(印刷カバレッジ)情報に基づいて、ヒートポンプ406の運転条件を制御するので、例えば、低密度印刷時には送風温度、送風速度を落として運転することが可能となり、更に低消費電力化を図ることができる。また、高密度印刷時には、高密度印刷に使用されるインク量に応じて効率的なヒートポンプ406の運転が可能となる。
(9)チャンバー412内に湿度センサ405を設け、チャンバー412内の湿度情報に基づいて基準データを参照してヒートポンプを制御するので、低湿度状況下での用紙10の過乾燥による変形を防止することにより、印字製品の品質を保証することができる。また、高湿度下での用紙10の乾燥不良を防止することができる。
(10)チャンバー412内にシャッタ414を設け、チャンバー412内の高温乾燥空気Ahの流路幅を可変制御することができるようにしたので、幅狭の用紙10に印字する場合に、用紙幅に応じてチャンバー412内の空間容量を小さくすることが可能となる。これにより、ヒートポンプで加熱乾燥する空気量が減り、ヒートポンプ406の立ち上がり特性を向上させることができる。
なお、本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施形態は、好適な実施形態をそれぞれ示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲により規定される範囲に含まれる。
1 ジェット式記録装置
10 用紙
21,31 ロール紙
110 インクジェットヘッド
111 搬送路
120 制御部
123 データ格納部
400 用紙乾燥装置
406 ヒートポンプ
409 水滴
410a,410b 送風経路
411,413 ダクト
412 チャンバー(乾燥室)
414 シャッタ
420 送風機
450 圧縮機
460 減圧機
405 湿度センサ
特開2002−361850号公報 特開2010−80340号公報

Claims (15)

  1. インクを記録ヘッドにより吐出してシート状記録媒体上に印字画像を形成するインクジェット式記録装置における印字方法であって、
    前記インクジェット式記録装置は、
    ロール状に巻かれた前記シート状記録媒体の搬送路の前記記録ヘッドの下流側に設けられた乾燥室と、
    前記乾燥室に接続された複数のダクトを介して気体を循環させる用紙乾燥装置と、
    を備え、前記用紙乾燥装置が、用紙から水分を移行させて戻ってきた含湿気体から水滴を分離し、高温に加熱した高温乾燥気体として前記乾燥室の気体供給側のダクトから前記乾燥室に供給し、当該乾燥室で前記シート状記録媒体の水分を当該高温乾燥気体側に移行させ、水分が移行した含湿気体を前記乾燥室の排気側のダクトから前記用紙乾燥装置内に戻すヒートポンプを含み
    印字を開始するときに、データ格納部に格納された用紙印刷のための基準データを読み込み、
    前記ヒートポンプの減圧機及び圧縮機のアイドリング運転を開始し、
    ホスト装置から印刷データを受信すると、印刷データから印刷密度データを抽出し、
    前記読み込んだ基準データと印刷密度データとから前記減圧機及び圧縮機の制御条件を求め、
    印刷密度に合った前記制御条件を取得した後、当該条件で印刷を開始し、
    印刷過程で前記乾燥室内の湿度を検出し、
    その検出した値に対応する前記制御条件が前記基準データのそれと合致しているかどうかを確認し、
    合致している場合にはその制御条件で、合致しない場合には前記制御条件が合致するように変更して印字すること
    を特徴とする印字方法
  2. 請求項1記載の印字方法であって、
    前記乾燥室内に用紙搬送方向を平行に、かつ用紙搬送方向と直交する方向に可動に配置されたシャッタ部材と、
    前記シャッタ部材を用紙搬送方向と直交する方向に移動させる駆動手段と、
    を備え、
    前記駆動手段により乾燥室内の気体の流路面積を可変制御すること
    を特徴とする印字方法
  3. 請求項2記載の印字方法であって、
    前記駆動手段は前記用紙の用紙幅に応じて前記流路面積を変更すること
    を特徴とする印字方法
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項に記載の印字方法であって、
    前記乾燥室及び前記複数のダクトが熱伝導率2W/(m・K)以下の材質からなること
    を特徴とする印字方法
  5. 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の印字方法であって、
    前記気体の前記乾燥室内への気体の送風方向が前記シート状記録媒体の搬送方向と同一であって、前記気体の送風速度が前記シート状記録媒体の搬送速度よりも速く設定されていること
    を特徴とする印字方法
  6. 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の印字方法であって、
    前記気体の前記乾燥室内への気体の送風方向が前記シート状記録媒体の搬送方向と対向する方向であること
    を特徴とする印字方法
  7. 請求項1ないし6のいずれか1項に記載の印字方法であって、
    前記乾燥室に供給される高温乾燥気体の温度が50℃〜100℃の範囲内に設定されていること
    を特徴とする印字方法
  8. 請求項1ないし7のいずれか1項に記載の印字方法であって、
    前記ヒートポンプは、圧縮機、減圧機及び送風機を備え、
    前記圧縮機及び減圧機は前記記録ヘッドによる印字動作以前に動作していることを特徴とする印字方法
  9. 請求項8記載の印字方法であって、
    印刷密度に応じて前記ヒートポンプの前記送風機の送風速度を可変制御する制御手段を備えていること
    を特徴とする印字方法
  10. 請求項9記載の印字方法であって、
    前記制御手段は、印刷密度が高い場合には、前記送風機からの送風速度を印刷密度が低い場合より高速にすること
    を特徴とする印字方法
  11. 請求項8記載の印字方法であって、
    印刷密度に応じて前記ヒートポンプの前記圧縮機及び減圧機の駆動速度を可変制御する制御手段を備えていること
    を特徴とする印字方法
  12. 請求項11記載の印字方法であって、
    前記制御手段は、印刷密度が高い場合には、印刷密度が低い場合よりも高温になるように前記圧縮機の駆動速度を制御すること
    を特徴とする印字方法
  13. 請求項8記載の印字方法であって、
    前記乾燥室内に当該乾燥室内の湿度を検出する検出手段と、
    前記検出手段の検出結果に応じて前記ヒートポンプの圧縮機、減圧機及び送風機を制御する制御手段と、
    を備えていることを特徴とする印字方法
  14. 請求項13記載の印字方法であって、
    前記制御手段は、前記検出手段によって検出した湿度が高い場合には、湿度が低い場合よりも送風速度が高速になるように前記送風機を制御すること
    を特徴とする印字方法
  15. 請求項13記載の印字方法であって、
    前記制御手段は、前記検出手段によって検出した湿度が高い場合には、湿度が低い場合よりも高温乾燥気体の温度が高温になるように前記圧縮機を制御すること
    を特徴とする印字方法
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