JP5692364B2 - 内燃機関のシリンダーヘッド - Google Patents
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Description
本発明は、吸気ポート、排気ポート、被冷却部材を取り付けるための取付孔、及びその取付孔の周囲に設けられたウォータージャケットを備える内燃機関のシリンダーヘッドに関するものである。
周知のように、内燃機関のシリンダーヘッドは、そのアッパーデッキとロアデッキとの間に、吸気ポート、排気ポート及び点火プラグ取付孔の周囲を通るウォータージャケットを備えている。そしてそうしたウォータージャケットを流れる冷却水により、シリンダーヘッドの冷却が行われている。
そして従来、特許文献1には、隣接する2つのヘッドボルト通し孔を含む平面と点火プラグ取付孔との間に、アッパーデッキとロアデッキとを結合する柱状部を設けた構成のシリンダーブロックが提案されている。同文献に記載のシリンダーヘッドでは、柱状部の設置により、点火プラグ周りの応力を緩和しつつ、点火プラグ周りの冷却性能を確保するようにしている。
なお、特許文献2には、ヘッドボルトボスと吸排気ポートとをロアデッキに設けられた厚肉部で結ぶことで、ロアデッキの強度を高めたシリンダーヘッドが記載されている。また特許文献3には、排気ポートの上流側開口部間を結ぶリブを、ロアデッキの上面に設け、そのリブにより剛性を高めたシリンダーヘッドが記載されている。
ところで、内燃機関の運転中には、図6に示すように、筒内圧によって、点火プラグ取付孔50の設けられた燃焼室の頂面部分が押し上げられる。そして、点火プラグ取付孔50を中心に吸気ポート51及び排気ポート52が外側に開く向きの引っ張り応力が発生して、点火プラグ取付孔50の周りに応力が集中することがある。
その点、上記文献1のシリンダーヘッドでは、ヘッド両端部の補強しか行われないため、点火プラグ周りの応力緩和が不十分となることが考えられる。また、十分な強度を確保するため、柱状部の数を増やすことも考えられるが、そうした場合には、シリンダーヘッドの重量の増加を招いてしまう。
なお、近年には、ターボチャージャーを用いた過給により最大出力を確保することで排気量を低減する、内燃機関のターボダウンサイジングが進められている。そうした内燃機関では、過給域の拡大により、広い運転領域で高い筒内圧が作用するため、シリンダーヘッドを取り巻く環境は、強度的にも、熱的にもシビアなものとなっている。
本発明の目的は、筒内圧によるシリンダーヘッドの変形を抑え、その変形に伴う点火プラグ等の取付孔の周囲の応力集中を好適に緩和することのできる内燃機関のシリンダーヘッドを提供することにある。
上記課題を解決するため、吸気ポート、排気ポート、被冷却部材を取り付けるための取付孔、及びその取付孔の周囲に設けられたウォータージャケットを備える内燃機関のシリンダーヘッドとしての本発明は、吸気ポート及び排気ポートの少なくとも一方と取付孔との間の部分におけるウォータージャケットの周りの剛性を、取付孔の周囲のそれ以外の部分におけるウォータージャケットの周りの剛性よりも高めている。
上記構成では、吸排気ポートと取付孔との間の部分の剛性が高められている。この剛性の高められる部分は、筒内圧による燃焼室の頂面部分の押し上げで外側に開く向きの引っ張り応力が発生する部分となっている。そのため、筒内圧によるシリンダーヘッドの変形を抑え、その変形に伴う取付孔周囲の応力集中を好適に緩和することができる。
また上記課題を解決するため、吸気ポート、排気ポート、被冷却部材を取り付けるための取付孔、及びその取付孔の周囲に設けられたウォータージャケットを備える内燃機関のシリンダーヘッドとしてのもう一つの本発明は、吸気ポート及び排気ポートの少なくとも一方と取付孔との間の部分におけるウォータージャケットの周りに、剛性を高めるための補強を行っている。
上記構成では、吸排気ポートと取付孔との間の部分の剛性が高められるようになる。この剛性の高められる部分は、筒内圧による燃焼室の頂面部分の押し上げで外側に開く向きの引っ張り応力が発生する部分となっている。そのため、筒内圧によるシリンダーヘッドの変形を抑え、その変形に伴う取付孔周囲の応力集中を好適に緩和することができる。
なお、上記のような補強は、例えば吸排気ポートの少なくとも一方と取付孔との間の部分のウォータージャケットの上面を、取付孔の周囲のそれ以外の部分のウォータージャケットの上面よりも低くしたり、ウォータージャケットの周囲の壁面に増肉を行ったりすることで行うことができる。
また上記課題を解決するため、吸気ポート、排気ポート、被冷却部材を取り付けるための取付孔、及びその取付孔の周囲に設けられたウォータージャケットを備える内燃機関のシリンダーヘッドとしての本発明は、吸気ポート及び排気ポートの少なくとも一方と取付孔との間の部分におけるウォータージャケットの上面を、取付孔の周囲のそれ以外の部分におけるウォータージャケットの上面よりも低くしている。
上記構成では、ウォータージャケットの上面を下げることで、吸排気ポートと取付孔との間の部分の剛性が高められる。この剛性の高められた部分は、筒内圧による燃焼室の頂面部分の押し上げで外側に開く向きの引っ張り応力が発生する部分となっている。そのため、筒内圧によるシリンダーヘッドの変形を抑え、その変形に伴う取付孔周囲の応力集中を好適に緩和することができる。
更に上記課題を解決するため、吸気ポート、排気ポート、被冷却部材を取り付けるための取付孔、及びその取付孔の周囲に設けられたウォータージャケットを備える内燃機関のシリンダーヘッドとしての本発明は、吸気ポート及び排気ポートの少なくとも一方と取付孔との間の部分におけるウォータージャケットの壁面に増肉を行っている。
上記構成では、ウォータージャケットの壁面の増肉により、吸排気ポートと取付孔との間の部分の剛性が高められる。この剛性の高められる部分は、筒内圧による燃焼室の頂面部分が押し上げで外側に開く向きの引っ張り応力が発生する部分となっている。そのため、筒内圧によるシリンダーヘッドの変形を抑え、その変形に伴う取付孔周囲の応力集中を好適に緩和することができる。
(第1の実施の形態)
以下、本発明の内燃機関のシリンダーヘッドを具体化した第1の実施の形態を、図1〜図4を参照して詳細に説明する。なお、本実施の形態のシリンダーヘッドは、直列4気筒配列の内燃機関に適用されるものとなっている。
以下、本発明の内燃機関のシリンダーヘッドを具体化した第1の実施の形態を、図1〜図4を参照して詳細に説明する。なお、本実施の形態のシリンダーヘッドは、直列4気筒配列の内燃機関に適用されるものとなっている。
図1に示すように、シリンダーヘッド1の内部は、ロアデッキ2とアッパーデッキ3との2つのデッキによる2層構造とされている。ロアデッキ2とアッパーデッキ3との間には、冷却水が流れるウォータージャケット4が形成されている。
図2に示すように、シリンダーヘッド1の下部には、被冷却部材である点火プラグが取り付けられる点火プラグ取付孔5と、吸気ポート7及び排気ポート8の各ポートとが形成されている。なお、このシリンダーヘッド1には、各気筒に、1つの点火プラグ取付孔5と一対の吸気ポート7と一対の排気ポート8とがそれぞれ設けられている。
こうしたシリンダーヘッド1には、図3及び図4に示すような形状のウォータージャケット4が形成されている。なお、ウォータージャケット4は、点火プラグ取付孔5が通される部分9、吸気ポート7が通される部分10、及び排気ポート8が通される部分11を避けるように形成されている。
図4に示すように、このシリンダーヘッド1では、吸気ポート7及び排気ポート8と点火プラグ取付孔5との間の部分におけるウォータージャケット4の上面12〜14が、点火プラグ取付孔5の周りの他の部分におけるウォータージャケット4の上面15〜17よりも一段低く形成されている。そしてこれにより、吸気ポート7及び排気ポート8と点火プラグ取付孔5との間の部分の補強がなされ、その部分のウォータージャケット4の周りの剛性が高められている。こうした本実施の形態のシリンダーヘッド1は、図2に点線で示される従来のシリンダーヘッドの同様のウォータージャケットから同図2にハッチングで示される部分Cを割愛したものとなっている。
次に、以上のように構成されたシリンダーヘッド1の作用について説明する。
本実施の形態のシリンダーヘッド1を備える内燃機関でも、燃焼により発生する筒内圧によって、燃焼室の頂面にあたるシリンダーヘッド1の下面が上方に押し上げられる。そして、その押し上げにより、点火プラグ取付孔5を中心に吸気ポート7及び排気ポート8が外側に開く向きの引っ張り応力が発生する。ただし、このシリンダーヘッド1では、吸気ポート7及び排気ポート8と点火プラグ取付孔5との間の部分の剛性が高められており、このときのシリンダーヘッド1の変形が抑えられる。そしてその結果、筒内圧作用時の点火プラグ取付孔5の周囲の応力集中が緩和されるようになる。
以上説明した本実施の形態によれば、次の効果を奏することができる。
(1)本実施の形態では、点火プラグ取付孔5の周りにおいて、吸気ポート7及び排気ポート8と点火プラグ取付孔5との間の部分におけるウォータージャケット4の上面12〜14が、点火プラグ取付孔5の周囲のそれ以外の部分におけるウォータージャケット4の上面15〜17よりも低くされている。そしてこれにより、吸気ポート7及び排気ポート8と点火プラグ取付孔5との間の部分のウォータージャケット4の周りが補強され、その剛性が高められている。そのため、筒内圧によるシリンダーヘッド1の変形を抑え、その変形に伴う点火プラグ取付孔5の周囲の応力集中を好適に緩和することができる。
(2)本実施の形態では、剛性を高めながらも、燃焼室に近い点火プラグ取付孔5の下部の周囲には、ウォータージャケット4が残されている。そのため、点火プラグ取付孔5の周囲の剛性を高めて点火プラグ取付孔5の周りの応力集中を緩和しながらも、高温となる燃焼室側の部分の冷却性能を維持することができる。
(3)本実施の形態では、吸気ポート7及び排気ポート8と点火プラグ取付孔5との間の部分におけるウォータージャケット4の上面12〜14を低くしながらも、両排気ポート8の間の部分のウォータージャケット4の上面17は高いままとされている。そのため、点火プラグ取付孔5の周囲の剛性を高めてその周囲の応力集中を緩和しながらも、高温となる排気ポート8の間の部分の冷却性能を維持することができる。
(第2の実施の形態)
続いて、本発明の内燃機関のシリンダーヘッドを具体化した第2の実施の形態を、図5を参照して詳細に説明する。なお、本実施の形態のシリンダーヘッドは、第1の実施の形態のシリンダーヘッドに対して、点火プラグ取付孔5の周囲に形成されるウォータージャケットの形状を変更しただけのものとなっている。そこで、本実施の形態では、第1の実施の形態のものと共通する構成については、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
続いて、本発明の内燃機関のシリンダーヘッドを具体化した第2の実施の形態を、図5を参照して詳細に説明する。なお、本実施の形態のシリンダーヘッドは、第1の実施の形態のシリンダーヘッドに対して、点火プラグ取付孔5の周囲に形成されるウォータージャケットの形状を変更しただけのものとなっている。そこで、本実施の形態では、第1の実施の形態のものと共通する構成については、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
図5に示すように、本実施の形態のシリンダーヘッド20にも、点火プラグ取付孔5の周囲を通って冷却水を流すようにウォータージャケット21が形成されている。ただし、本実施の形態では、吸排気ポート7,8と点火プラグ取付孔5との間の部分でも、ウォータージャケット21の上面は、点火プラグ取付孔5の周囲のそれ以外の部分のウォータージャケット21の上面と同じ高さとなるように形成されている。
ただし、本実施の形態のシリンダーヘッド20では、吸排気ポート7,8と点火プラグ取付孔5との間の部分におけるウォータージャケット21の内周側の壁面21aに増肉による補強がなされている。同図5にハッチングで示される部分22は、そうした増肉のなされた部分を示している。
次に、以上のように構成されたシリンダーヘッド20の作用について説明する。
本実施の形態のシリンダーヘッド20では、筒内圧が作用すると、燃焼室直上の点火プラグ取付孔5の周囲が押し上げられて、点火プラグ取付孔5を中心に吸気ポート7及び排気ポート8が外側に開くように変形する。このとき、このシリンダーヘッド20では、増肉部22を形成することで、吸気及び排気ポート7,8と点火プラグ取付孔5との間の部分の剛性が高められている。そのため、このシリンダーヘッド20では、筒内圧の作用による変形が抑制されるようになり、その変形に伴う点火プラグ取付孔5周りの応力集中も緩和されるようになる。
以上説明した本実施の形態によれば、次の効果を奏することができる。
(4)本実施の形態では、吸気ポート7及び排気ポート8と点火プラグ取付孔5との間の部分におけるウォータージャケット4の壁面の増肉を行っている。そしてそれにより、吸気ポート7及び排気ポート8と点火プラグ取付孔5との間の領域のウォータージャケット4の周りが補強され、その剛性が高められている。そのため、筒内圧による点火プラグ取付孔5周囲の応力集中を好適に緩和することができる。
(5)本実施の形態では、ウォータージャケット21の壁面を補強するための増肉を、ウォータージャケット21の上部において行っている。そのため、吸排気ポート7,8と点火プラグ取付孔5との間の部分の剛性を高めながらも燃焼室に近い領域では、流路面積を縮小することなくウォータージャケット21がそのまま残されるため、高温となる燃焼室側の領域の冷却性能を維持できる。
以上説明した各実施の形態は、次のように変更して実施することもできる。
・第2の実施の形態では、吸排気ポート7,8と点火プラグ取付孔5との間の部分におけるウォータージャケット21の内周側に増肉を行うようにしていたが、同部分におけるウォータージャケット21の外周側に増肉を行うようにしても良い。
・第2の実施の形態では、吸排気ポート7,8と点火プラグ取付孔5との間の部分におけるウォータージャケット21の上部に増肉を行うようにしていたが、応力集中緩和のための剛性の確保に必要であれば、ウォータージャケット21の下部にも増肉を行うようにしても良い。なお、冷却性能を確保するには、ウォータージャケット21の下部の流路面積を広くすることが望ましい。そのため、ウォータージャケット21の上部から下部にかけて増肉が必要な場合にも、下部の増肉量を少なくするとともに上部の増肉量を多くして、下部に向うほど幅が広くなるようにウォータージャケット21を形成することが望ましい。
・上記実施の形態では、ウォータージャケット4の上面を低くしたり、増肉を行ったりすることで、吸排気ポート7,8と点火プラグ取付孔5との間の部分におけるウォータージャケット4、21の周りの剛性を高めていた。そうした部分の剛性を高めるための補強を、例えば梁やリブを設けたり、そうした部分のウォータージャケット4、21の周りを、それ以外の部分に比して剛性の高い材料で形成したりすることなど、他の補強方法で行うようにしても良い。
・上記実施の形態では、点火プラグ取付孔5と吸気ポート7との間の部分、及び点火プラグ取付孔5と排気ポート8との間の部分の双方に補強を行うようにしていたが、十分な応力集中の緩和が可能であれば、それらのいずれか一方の補強を省略するようにしても良い。
・上記実施の形態では、点火プラグの取り付けられる点火プラグ取付孔5を形成するようにしていたが、例えばディーゼルエンジンなどでは、点火プラグの代わりにインジェクターがシリンダーヘッドに取り付けられることがある。そうした場合にも、吸気ポート、排気ポートの少なくとも一方とインジェクター取付孔との間の部分におけるウォータージャケットの周りに補強を行えば、インジェクター取付孔の周囲の応力集中を緩和することが可能である。なお、その場合には、インジェクターが被冷却部材となる。
・上記実施の形態では、気筒毎に一対の吸気ポート7と一対の排気ポート8とをそれぞれ設けるようにしていたが、気筒毎の吸気ポート7及び排気ポート8の数や配置は、これに限らず、適宜に変更しても良い。
・上記実施の形態では、直列4気筒配列の内燃機関に本発明を適用した場合を説明したが、本発明はそれ以外の気筒配列の内燃機関にも同様に適用することができる。
1…シリンダーヘッド、2…ロアデッキ、3…アッパーデッキ、4…ウォータージャケット、5…点火プラグ取付孔(被冷却部材を取り付けるための取付孔)、7…吸気ポート、8…排気ポート、9…点火プラグ取付孔が通される部分、10…吸気ポートが通される部分、11…排気ポートが通される部分、12〜14…(吸排気ポートと点火プラグ取付孔との間の部分におけるウォータージャケットの)上面、15〜17…(点火プラグ取付孔の周囲のそれ以の部分のウォータージャケットの)上面、20…シリンダーヘッド、21…ウォータージャケット、21a…ウォータージャケットの壁面、22…増肉のなされた部分、50…点火プラグ取付孔、51…吸気ポート、52…排気ポート。
Claims (2)
- 吸気ポート、排気ポート、被冷却部材を取り付けるための取付孔、及びその取付孔の周囲に設けられたウォータージャケットを備える内燃機関のシリンダーヘッドにおいて、
前記取付孔は、一つの気筒に対応して一つ設けられ、
前記吸気ポートと前記取付孔との間の部分における前記ウォータージャケットの上面、及び前記排気ポートと前記取付孔との間の部分における前記ウォータージャケットの上面の少なくとも一方は、一つの前記気筒に対応して設けられる前記排気ポート同士の間の部分における前記ウォータージャケットの上面よりも低くされてなる
ことを特徴とする内燃機関のシリンダーヘッド。 - 吸気ポート、排気ポート、被冷却部材を取り付けるための取付孔、及びその取付孔の周囲に設けられたウォータージャケットを備える内燃機関のシリンダーヘッドにおいて、
前記取付孔は、一つの気筒に対応して一つ設けられ、
前記吸気ポートと前記取付孔との間の部分における前記ウォータージャケットの上面、及び前記排気ポートと前記取付孔との間の部分における前記ウォータージャケットの上面の少なくとも一方は、一つの前記気筒に対応して設けられる前記排気ポート同士の間の部分における前記ウォータージャケットの上面、及び一つの前記気筒に対応して設けられる前記吸気ポートと一つの前記気筒に対応して設けられる前記排気ポートとの間の部分における前記ウォータージャケットの上面よりも低くされてなる
ことを特徴とする内燃機関のシリンダーヘッド。
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