(実施形態の構成)
本発明の一実施形態に係る車両用フード構造について図1〜図9を用いて説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印Wは車両幅方向を示している。また、フード閉止状態においては、フード前後方向は車両前後方向と同じ方向とし、フード上下方向は車両上下方向と同じ方向とし、フード幅方向は車両幅方向と同じ方向とする。
図1には、本実施形態に係る車両用フード構造が適用された車両前部が側面図にて示されている。図1に示されるように、自動車(車両)10における車両前部10Aには、エンジンルーム12を開閉可能に覆うフード(エンジンフード)14が配設されている。フード14に覆われるエンジンルーム12の内部には、パワーユニット等のエンジンコンパートメント内蔵物(図示省略)が配設されている。
フード14は、金属製(一例としてアルミニウム合金製等)とされている。また、フード14のフード前後方向における後端部の両サイドには、ヒンジ(図示省略)が配設されており、これによって、フード14は、前記ヒンジにおけるフード幅方向の軸回りに回転移動可能、すなわち開閉可能となっている。
図2には、フードアウタパネル16(想像線参照)を透視した状態のフード14が平面図にて示されている。また、図3には図2の3−3線に沿った拡大断面図が示され、図4には、図2の4−4線に沿った拡大断面図が示されている。図3に示されるように、フード14の前端部14Aにおけるフード幅方向中央部には、フードロック機構40の一部を構成するフードロック用部材としてのストライカ42が配設されている。また、フード14は、補強部材(広義には「フード付属部材」として把握される要素である。)によって、局部補強されている。すなわち、フード14には、前記ヒンジ側に設けられるヒンジリインフォース(図示省略)や、ストライカ42側に設けられるロックリインフォース44(フードロックリインフォース、詳細後述)等が配設されている。
図2〜図4に示されるように、フード14は、フード14の外板を構成すると共に略車両前後方向に沿って延在されるフードアウタパネル16と、このフードアウタパネル16に対してフード下方側に配置されると共にフードアウタパネル16に結合されてフード14の内板を構成するフードインナパネル18と、を含んで構成されている。
フードアウタパネル16及びフードインナパネル18は、いずれもプレス成形により形成されている。フードアウタパネル16の板厚及びフードインナパネル18の板厚は、軽量化や歩行者保護性能等の複数の観点から設定されている。フードアウタパネル16の外周部は、フードインナパネル18の外周部にヘミング加工によって結合されている。フードアウタパネル16とフードインナパネル18とが組付けられた状態では、両者は閉断面構造を形成しており、両者の間にはフード上下方向の隙間が形成されている。
図3に示されるように、フードインナパネル18の前端部のフード下方側には、フード前後方向及びフード幅方向に沿って延在するロックリインフォース44が配設されている(図2参照)。言い換えると、フードアウタパネル16の前端部のフード下方側にロックリインフォース44が配置され、フードアウタパネル16とロックリインフォース44との間にフードインナパネル18の前端部が配置されている。ロックリインフォース44は、フード前後方向の後端部44B側から前端部44A側へ向けて下り段階状に屈曲された形状とされている。フードインナパネル18とロックリインフォース44との間には、フード上下方向に空間が形成されている。
ロックリインフォース44の前端部44Aの端縁は、フードインナパネル18の最前端側の平面部下面に固定されている。また、ロックリインフォース44のフード幅方向両側の端部は、フードインナパネル18のフード幅方向両側寄りの平面部下面に固定されている。これに対して、ロックリインフォース44のフード幅方向中間部の後端部44Bは、フードインナパネル18に対しフード下方側に離れて配置されている。
ロックリインフォース44の前端部44Aに連続してフード後方側に延びる底壁部44Cには、貫通孔46が形成されており、この貫通孔46には、ストライカ42がフード上方側から挿入されている。ストライカ42は、側断面視形状が略U字形状となっており、上端部がストライカ固定用のパッチであるベースプレート48を介してロックリインフォース44の底壁部44Cに固定されて(取り付けられて)いる。これによって、ストライカ42は、フード14の前端下面側に配設されると共に、底壁部44Cに対してフード下方側へ突出している。
このストライカ42は、車体前端部側を構成するラジエータサポートアッパ52に固定されたロック機構部50のラッチが係止可能とされており、ストライカ42がロック機構部50のラッチに係止されることによってフード14が車体側に閉止状態でロックされるようになっている。なお、ロックリインフォース44は、ストライカ42を固定するために所定の強度・剛性が必要であり、フードインナパネル18よりも板厚が厚く設定されている。
一方、図2に示されるように、フードインナパネル18における外周縁部20は、フード前後方向の前端側の前端縁部20A、フード前後方向の後端側の後端縁部20B、及びフード幅方向の両サイド部のフード幅方向両端縁部20C、20Dで構成されており、外周縁部20の内側(すなわち、フードインナパネル18において外周縁部20を除く部分)が中央領域24となっている。
フード幅方向両端縁部20C、20Dは、フード14の捩り剛性を高めるために、断面高さ寸法が大きくなっており、中央領域24を構成する骨格形成部26に比べて剛性が高く設定された高剛性部とされている。また、このフード幅方向両端縁部20C、20Dの下面側には、フード前後方向に沿って配置されたフードヒンジリインフォース(図示省略)が固定されている。なお、フードヒンジリインフォースは、フード14におけるヒンジの取付部位を補強するための長尺状の高強度・高剛性部材である。
フード幅方向両端縁部20C、20Dの前端部には、建付ゴム受部22Aが設けられている。図4に示されるように、建付ゴム受部22Aは、車体前端部側の建付ゴム54に対応して設けられると共に、フードアウタパネル16側に若干凸状とされた受皿部であり、フード14の強閉止時に建付ゴム54を受けるための部位とされている。なお、建付ゴム54は、ラジエータサポートアッパ52の車両幅方向の両サイド部の上部に取り付けられている。
建付ゴム受部22Aの前端からはフード前方側に延びる略水平の平坦部22Bが形成されている。平坦部22Bの前端位置は、ラジエータサポートアッパ52の前端位置の直上位置付近とされている。また、平坦部22Bの前端部からはフード前方へ向けてフード下方側に傾斜する傾斜部22Cが設けられている。換言すれば、建付ゴム受部22Aのフード前方側には、ラジエータサポートアッパ52の前端位置に対して直上位置近傍に弱体部としての屈曲部22Dが設けられている。この屈曲部22Dの形成部は、図2に示されるフード幅方向両端縁部20C、20Dにおける他の部位に比べて、フード前後方向の荷重に対する剛性が低く設定されている。
また、図2に示されるように、フードインナパネル18の中央領域24には、複数の山部としてのビード30がフード前後方向を長手方向として形成されている。複数のビード30は、フード幅方向に並列に設けられている。各ビード30は、長手方向との直交面に沿う断面視でフードアウタパネル16側に隆起して凸形状に形成され、図5に示されるように、頂部30Cが平坦状とされている。ビード30における頂部30Cの一部は、フードアウタパネル16(図3参照)のフードインナパネル18との対向面に接着剤であるマスチック(図示省略)を介して接合されている。
また、図2に示されるように、各ビード30の後端部30Bは、いずれも、フードインナパネル18の後端縁部20Bの近傍に至っている。一方、各ビード30のうち前述した建付ゴム受部22Aよりもフード幅方向内側に形成された複数のビード30Xは、その前端部30Aがロックリインフォース44の後端部44Bよりフード前方側に設定された前側延設部36とされている。補足説明すると、フードアウタパネル(16)の前端部が(本実施形態には設けられない)デントリインフォースによって補強されるような対比構造では、一般的には、ビード(30)の前端部(30A)がロックリインフォース(44)の後端部よりフード後方側に設定される。これに対して、本実施形態では、デントリインフォースが配置されない代わりに、ビード30の前端部30Aがロックリインフォース44の後端部44Bよりフード前方側に設定された構造となっている。
なお、フード14においてデントリインフォースを配置するエリアをデントエリアという場合があり、本実施形態の前側延設部36は、このようなデントエリアに相当する位置に配置されている。以下の説明では、前側延設部36が配置されるエリアを便宜上、ビード前端部エリア38Aといい、ビード前端部エリア38Aに対してフード幅方向外側のエリアを便宜上、建付ゴム配置エリア38Bという。
ビード30は、フードインナパネル18においてフード前後方向の荷重に対する曲げ剛性を向上させる骨格を構成している。複数のビード30が並列したフードインナパネル18には、隣り合うビード30の頂部30C間にフードアウタパネル16側と反対方向へ凹む凹形状とされた谷部32がそれぞれ形成されている。複数の谷部32は、フード前後方向に沿って延在するように形成されている。すなわち、フードインナパネル18には、ビード30と谷部32とがフード幅方向に沿って交互に設けられて断面視で波形形状(概ねハット形状が連続的に形成されたような形状)とされた波状部28が形成されている。この波状部28は、エンジンルーム12の内部のエンジンコンパートメント内蔵物(図示省略)と対面する位置を含む位置に形成されている。
フードインナパネル18の波状部28は、フード14の上方側から頭部インパクタ60(図6参照)が衝突したときに、フード下方側に撓み変形可能とされている。また、ビード30の前側延設部36がロックリインフォース44の後端部44Bよりフード前方側に設定されているので、衝突荷重を上方側から受けたフードインナパネル18はそのフード前後方向の広い範囲に応力を伝播させることが可能な構造となっている。
ビード前端部エリア38Aには、前側延設部36同士の間の谷部32に脆弱部としての膨出部34が形成されている。膨出部34は、図3に示されるように、ストライカ42の前端位置よりもフード後方側のフード前後方向位置に設定されており、図5に示されるように、谷部32からフードアウタパネル16側に膨出しかつ前側延設部36同士の対向面(斜面30D)をフード幅方向に架け渡している。膨出部34の頂部34Aは、平坦状とされ、前側延設部36の頂部30Cよりも谷部32の底部32Aからの突出量が小さく設定されている。換言すれば、ビード前端部エリア38Aでは、膨出部34が形成されても、ビード30における頂部30Cの両サイドの稜線30Lが分断せずにそのまま残された構造になっている。
また、図2に示されるように、膨出部34は、複数の谷部32に形成されてフード幅方向に並設されている(脆弱部の断続的配置)。膨出部34の形成位置は、膨出部34の形成位置を繋ぐ仮想線がフード平面視においてフード後方側に向けて若干凸となる大径円弧状となるように設定されている。そして、膨出部34のうちで最もフード幅方向外側に配置されるサイド膨出部34Xのフード前後方向位置は、前述した建付ゴム配置エリア38Bの屈曲部22Dのフード前後方向位置に概ね揃えられている。
なお、膨出部34及びその周囲部を含むエリアにおけるフード前後方向の荷重に対する剛性は低く設定されているが、本実施形態では、前述した屈曲部22D及びその周囲部を含むエリアにおけるフード前後方向の荷重に対する剛性は、さらに低く設定されている。このように設定することで、大腿部インパクタ70(図8参照)がフード14の中央部の前端部側から衝突した場合には、屈曲部22Dの配列方向に沿ってフード幅方向の外側に伝達された荷重(フード幅方向中央部での荷重よりも小さい荷重)によって屈曲部22Dが折れ曲がり、フード14の前端部14A側が折れ曲がる構造になっている。
また、図3に示されるように、膨出部34のうちフードインナパネル18のフード幅方向中央部に配置されるセンタ膨出部34Yは、大腿部を模擬した大腿部インパクタ(衝突体)70の上端位置から歩行者保護大腿部試験において大腿部インパクタ70が射出される方向70Xに延長した位置(仮想延長線を二点鎖線Lで示す)に設定されている。大腿部インパクタ70のサイズ、傾倒姿勢、フード14との衝突位置、及びその射出される方向70X(打撃角度)は、欧州の自動車アセスメント(ENCAP)において行なわれている歩行者保護大腿部試験において定められている基準(一例として、本実施形態では、本件出願時点での基準)による。
ここで、一例として本実施形態で基準にした歩行者保護大腿部試験での大腿部インパクタ70の位置について補足説明する。歩行者保護大腿部試験には、前縁基準線(ボンネットリーディングエッジ)と呼ばれる基準線が存在し、本実施形態で用いる大腿部インパクタ70は、その長手方向の中心位置が前縁基準線と一致するように配置される。図1を参照しながら前縁基準線を説明すると、前縁基準線は、水平面に対する垂直面からの傾倒角度αが50°になるように傾けた長さ1000mmの直定規SRを、下端を地上から600mm(図中のL=600mm)の位置にして、フード14の前縁をそれに接触したままで横切ったときのラインである。図1では前縁基準線における一点Pのみが示されているが、図示しない車両平面視では、フード14の意匠面に沿うようにフード幅方向中央部がフード幅方向両サイドよりもフード前方側に配置されるような略円弧状の曲線とされている。
なお、大腿部インパクタ70は、本実施形態では、長手方向の長さ350mm、直径50mmの鉄芯のコアに発泡フォーム材がカバー部として被覆されたものである。また、歩行者保護大腿部試験における大腿部インパクタ70は、図示しないガイドに沿って、水平面に対する垂直面からの傾倒角度αが50°となる姿勢を維持しながら、フード14の前端側に向けて射出される。言い換えれば、図3に示される大腿部インパクタ70が射出される方向70Xは、車両側面視で大腿部インパクタ70の長手方向に直交しかつフード14の前縁側へ向かう方向とされている。
(実施形態の作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
本実施形態に係る車両用フード構造では、図2及び図3に示されるように、波状部28を構成するビード30の前端部のうち複数の前端部が前側延設部36としてロックリインフォース44の後端部44Bよりフード前方側に設定されている。これにより、図6に示されるように、頭部を模擬した衝突体である頭部インパクタ60がフード14の上面に衝突したときには、前側延設部36を含むフードインナパネル18の波状部28が撓み、衝突時のフードインナパネル18のフード前後方向における撓み範囲が拡大する。このため、慣性マスが増え、慣性力が増加することで応力伝播範囲が広がり、エネルギー吸収性能が高まる。また、フードインナパネル18のフード下方側への変形をロックリインフォース44の後端部44Bで受けることで、衝撃荷重がロックリインフォース44に伝達される。なお、図6では、頭部インパクタ60の変位後の位置及びフード14の変形後の位置を二点鎖線で示している。
一方、このような構造で、フードインナパネル18の前端部の剛性が高くなり過ぎると、図8に示された歩行者の大腿部を模擬した衝突体である大腿部インパクタ70がフード14の前端側から衝突した際の当該大腿部インパクタ70への反力の抑制が課題となり得る。これに対しては、本実施形態では、図2に示されるように、前側延設部36同士の間の谷部32に膨出部34が形成されている。このため、図8に示されるように、大腿部インパクタ70がフード14の前端側から衝突したことによってフード14がフード上方斜め前方側に凸となるように撓もうとすると、フード上下方向下側の谷部32、ひいては膨出部34には圧縮荷重f1が作用する。
ここで、図9(A)の模式図を用いて補足説明すると、フード14の前端側から衝突荷重F1によってフード14がフード上方斜め前方側に凸となるように撓もうとすると、パネル下面側には圧縮荷重f1が作用し、パネル上面側には引張荷重f2が作用する。このため、図9(B)に示されるように、谷部32の膨出部34には圧縮荷重f1が作用し、ビード30の頂部30C側には引張荷重f2が作用する。そして、谷部32における膨出部34は圧縮荷重f1に対しては比較的剛性が低い(引っ張り荷重に対する場合に比べて剛性が低い)ので、図8に示されるように、膨出部34を起点としてフードインナパネル18が容易に座屈変形する。なお、図8では、大腿部インパクタ70の変位後の位置及びフード14の変形後の位置を二点鎖線で示している。
一方、図6に示されるように、頭部インパクタ60がフード14の上面に衝突した際にフード14がフード下方側に撓もうとすると、フード上下方向下側の谷部32、ひいては膨出部34には引張荷重f3が作用する。この点について、図7(A)の模式図を用いて補足説明すると、フード14の上面への衝突荷重F2によってフード14がフード下方側に凸となるように撓もうとすると、パネル下面側には引張荷重f3が作用し、パネル上面側には圧縮荷重f4が作用する。このため、図7(B)に示されるように、谷部32の膨出部34には引張荷重f3が作用し、ビード30の頂部30C側には圧縮荷重f4が作用する。そして、谷部32における膨出部34は引張荷重f3に対しては比較的剛性が高い(圧縮荷重に対する場合に比べて剛性が高い)ので、図6に示されるように、膨出部34を起点としたフードインナパネル18の座屈変形が抑えられる。よって、脆弱部として膨出部34が設けられても、フードインナパネル18のフード前後方向における撓み範囲が確保され、エネルギー吸収性能は概ね維持される。
また、本実施形態に係る車両用フード構造では、図3に示されるように、膨出部34は、ロックリインフォース44に取り付けられたストライカ42の前端位置よりもフード後方側のフード前後方向位置に設定されている。このため、大腿部インパクタ70がフード14の前端側から衝突し、フード14の前端部14Aがある程度押し込まれてストライカ42がラジエータサポートアッパ52側から反力を得ると、図示を省略するが、フードインナパネル18はストライカ42の前端を支点とし膨出部34を作用点として変形しようとする。これにより、フードインナパネル18は膨出部34が持ち上げられる変形モードとなる(図示省略)。この場合、フード14の前端部14Aはストライカ42を支点として回転移動しようとするので、ストライカ42の移動量が抑えられ、ストライカ42を支持する車体側のラジエータサポートアッパ52の変形荷重が抑えられる。
また、このような構造では、図3に示すように、衝突体が歩行者の大腿部を模擬した大腿部インパクタ70である場合、概ね大腿部インパクタ70の上端に対応する位置に膨出部34が設定されることになり、本実施形態ではそのような位置に膨出部34が設定されている。このため、図8に示されるように、大腿部インパクタ70がフード14の前端側から衝突した際には、大腿部インパクタ70が基本的にはフードインナパネル18の膨出部34よりもフード前方側の部位を膨出部34に近い位置で押圧するので、フードインナパネル18は膨出部34を起点として効果的に座屈変形する。
この点について補足説明すると、大腿部インパクタの上端に対応する位置よりもフード前方側に弱体部が設けられた構造では、大腿部インパクタの衝突時にフードインナパネルが弱体部で折れ曲がっても、弱体部よりもフード後方側の部位にも大腿部インパクタが衝突してしまう。このため、大腿部インパクタは、フードインナパネルに対して弱体部よりもフード後方側の部位をも変形させようとする。そして、この場合には、フードインナパネルの前端部を弱体部のみで変形させるよりも大腿部インパクタに作用する反力が相対的に大きくなってしまう。一方、大腿部インパクタの上端に対応する位置よりもフード後方側に弱体部が設けられた構造では、大腿部インパクタからフードインナパネルへの直接入力位置に対して離れた位置に弱体部が存在することになる。このため、このような構造では、(大腿部インパクタからフードインナパネルへの直接入力位置に対して直近位置に弱体部がある場合に比べて)弱体部での曲げ変形が生じにくくなるので、大腿部インパクタに作用する反力を抑えるうえでは不利になる。これに対して、本実施形態では、大腿部インパクタの上端に対応する位置に膨出部34が設定されているので、大腿部インパクタに作用する反力が効果的に抑えられる。
また、図2に示されるように、膨出部34が複数の谷部32に形成されてフード幅方向に並設されると共に、膨出部34の形成位置は、膨出部34の形成位置を繋ぐ仮想線がフード平面視においてフード後方側に向けて若干凸となる大径円弧状となるように設定されている。このため、図8に示される大腿部インパクタ70がフード14の前端側から衝突した際には、フードインナパネル18が膨出部34の配列方向に沿って曲げ変形する。
また、本実施形態に係る車両用フード構造では、図4等に示されるように、フードインナパネル18のフード幅方向の両サイド部には建付ゴム受部22Aのフード前方側に屈曲部22Dが設けられている。このため、図8に示される大腿部インパクタ70がフード14の前端側から衝突した際には、ラジエータサポートアッパ52(図4参照)を変形させる前に、フードインナパネル18が屈曲部22Dを起点として曲げ変形するので、大腿部インパクタ70への反力が抑えられる。
さらに、図5に示されるように、膨出部34は、谷部32からフードアウタパネル16(図3参照)側に膨出しかつ前側延設部36同士の対向面(斜面30D)を架け渡しているので、フード幅方向における脆弱範囲が大きく設定される。このため、図8に示される大腿部インパクタ70がフード14の前端側から衝突した際には、大腿部インパクタ70への反力が抑えられつつフードインナパネル18が曲げ変形する。
以上説明したように、本実施形態に係る車両用フード構造によれば、図6に示される頭部インパクタ60がフード14の上面に衝突した際のエネルギー吸収性能の向上と、図8に示される大腿部インパクタ70がフード14の前端側から衝突した際の当該大腿部インパクタ70への反力の抑制とを両立することができる。
(実施形態の補足説明)
なお、上記実施形態では、図2等に示されるように、脆弱部が膨出部34とされているが、脆弱部は、前側延設部同士の間の谷部に貫通孔や薄肉部が形成されることによって脆弱化された部位であってもよい。また、上記実施形態では、弱体部が屈曲部22Dとされているが、弱体部は、フードインナパネル(18)の建付ゴム受部(22A)のフード前方側に貫通孔や薄肉部が形成されることによって弱体化された部位であってもよい。
また、上記実施形態では、図3に示されるように、フードロック用部材がストライカ42とされているが、例えば、ストライカが車体側に設けられた車両では、フードロック用部材が前記ストライカと係止するロック機構部となる。
また、上記実施形態の変形例として、例えば、ロックリインフォースに取り付けられたフードロック用部材の前端位置が本実施形態のストライカ42の後端位置よりもフード後方側にあるようなフードや水平面に対する傾斜角度が大きいフード等においては、脆弱部は、フードロック用部材の前端位置よりも若干フード前方側のフード前後方向位置に設定されてもよい。
また、図2等に示される膨出部34(脆弱部)の形成位置は、膨出部34(脆弱部)の形成位置を繋ぐ仮想線がフード平面視においてフード幅方向に沿う直線状となるように設定されてもよい。
また、上記実施形態では、フードインナパネル18の建付ゴム受部22Aのフード前方側に弱体部としての屈曲部22Dが形成されており、このような構成が好ましいが、フードインナパネルの建付ゴム受部のフード前方側に弱体部が形成されない構成とすることも可能である。
また、フードインナパネルに形成される山部は、フード平面視でフード後方側に向けてビード間の間隔が徐々に広がる形状に形成されていてもよいし、フード平面視でフード後方側に向けてビード間の間隔が徐々に狭まる形状に形成されていてもよい。
さらに、上記実施形態の構成に加えて、ロックリインフォース44にて膨出部34との対向部又はその対向部の両サイドに孔や薄肉部や折れビード等を設けて弱体化部位を形成してもよい。
なお、上記実施形態及び上述の複数の変形例は、適宜組み合わされて実施可能である。