JP5691169B2 - Icカード - Google Patents

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Description

本発明は、ICカードに係わり、特にはICカードの耐衝撃性を向上させる補強構造に関する。
ICカードは、不特定多数の人により、様々な状況下で保管され使用される。例えば、財布、ポケット等の凹凸のある箇所や湾曲した箇所に保持されて持ち歩かれる。さらに、ICカードを他の物にぶつけたり、ICカードをケースに入れたままで落とすことも考えられる。このように、ICカードは、様々な方向から外力を受けて曲げられたり、物がぶつかったり落としたりした際の衝撃に対しては、相当な程度の強度が必要である。
ところで、ICカードは、カード内部に半導体メモリを組み込んだカードであって、さらにCPUやコプロセッサなどを内蔵させて、カード内部で情報処理を可能としたものである。情報の読み書き方式には接触型と非接触型があり、それぞれ幾つかの方式が規格化・標準化されている。
このICカードに耐衝撃性が必要な理由は、カードに内蔵されているICチップ自体が外力によって破損したり、ICチップとアンテナ等の配線回路とが接続する部分が破壊されたりしないようにするためである。
ICカードの構造については、例えば特許文献1の図3から図4に記載がある。ICチップが収容される部分については、カード基体にICチップのサイズに対応するざぐり部分を形成し、ざぐられた部位にICチップを収容し両側から別のカード基体でラミネートする構成をとっている。このカード基体に文字情報・画像情報を書き込んだ受像層をクッション層を介して接着する構成も開示されている。ICチップを収容する開口部は両側から別の基体で覆われているが、クッション層だけでは開口部分に関係した凹凸の影響を受けて筆記性が悪化するため、さらにクッション層の下に硬質下敷き層を設けることもある。
特許文献2には、ICチップ部分を保護する別の構成として、インレット上に搭載されたICチップ全体とICチップの裏面側のインレットを緩衝材で覆う構成が開示されている。緩衝材が変形することで外力を吸収し、チップに加わる外力を低減するものである。
更に別の構成として、上記構成に類似するものであるが、インレットに搭載したICチップの上部とICチップのある部位のインレット裏面に、それぞれ補強板を設置するものがある。ICチップの保護とICチップを設置したことによるカード表面の凹凸を低減する効果がある(特許文献3、特許文献4)。
特開2005−259166号公報 特開平9−183285号公報 特開2000−222549号公報 特開2002−163624号公報
上記の先行技術には次のような問題がある。
クッション層、緩衝材あるいは補強板をICチップを挟み込むように配置するだけでは、ICチップ自体の物理的な強度が不足しているので、ICチップの破損が起こったり、端子部における接続不良の発生を抑止できないという問題がある。
また、熱ラミネート法で複数の基材を熱圧着してカード化する場合、個々の基材間の熱膨張係数が異なると、個々の基材表裏に働く応力の大きさと方向が冷却過程で異なるため、例えばクッション層が存在すると、クッション層にシワが発生しその影響がカード表面にまで遡及して外観異常を呈するという問題があり、外装に使用する基材材料が制限を受けるという問題があった。また緩衝材をICチップを覆うように使用する場合には上記と同じ理由でカードの表裏にシワが発生するという問題があった。
そこで、本発明は、熱ラミネート時にICカードの表面がシワにならず同時に耐衝撃性の改善されたICカードの構成を提供することを目的とした。
上記課題を達成するための請求項1に係わる発明は、厚さ約55μm、面積(3mm×3mm)のICチップとアンテナとを備える40μm厚のアンテナ基材に、少なくとも上下に内層シートと、外装シートと、を積層してなるICカードであって、該ICチップが前記アンテナと電気的に接続するアンテナ基材のチップ実装面のチップ実装領域と前記アンテナ基材のチップ実装面と対向する面のチップ実装領域にそれぞれ接着用樹脂を介して補強板が上下に接着され、チップ実装面側の補強板の上は、前記内層シート及び外装シートよりも低い弾性率の緩衝用樹脂で被覆されており、アンテナ基材上方の内層シートは130μm厚のホットメルト付PET−Gフィルムからなり、アンテナ基材下方の内層シートは350μm厚のホットメルト付PET−Gフィルムであり、アンテナ基材上方の補強板は厚さ110μmで、アンテナ基材下方の補強板は厚さ65μmでいずれも面積が4.5mm×4.5mm程度のSUS材からなり、前記緩衝用樹脂は厚さ5μmから300μmの範囲のシリコーン樹脂であり、前記緩衝用樹脂部位を補強板に射影した場合の平面形状は、前記補強板と相似であり、前記緩衝用樹脂部位を補強板に射影した場合の平面形状の面積は、補強板の面積の2倍以下であることを特徴とするICカードとしたものである。
かかる構成は、ICチップ周辺に加わる静的な外力は補強板で防いで、局所的・衝撃的な外力に対しては緩衝用樹脂で緩和する構成とするものである。
請求項2に係わる発明は、前記内層シートは、ICチップを収容する側の内層シートが、収容しない側の内層シートより厚く、前記ICチップに対応する部位に開口部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のICカードとしたものである。
かかる構成は、アンテナ基材に積層される内層シートに開口部を設け、該開口部にアンテナ基材から突出するICチップ、補強板及び緩衝用樹脂を収容し、同時に緩衝用樹脂が開口部の余分な隙間だけを埋めるように広がる構成とするものである。その結果、シワ発生が抑止される。
請求項1の構成は、内層シート開口部とICチップの間で生じる隙間を緩衝用樹脂を用いて埋める構成とするものである。
緩衝用樹脂の厚さは2μmから300μmの範囲であるため、上記の構成とあいまってICカード表面がより平滑となる。
緩衝樹脂は、シリコーン樹脂であると、耐衝撃性の向上効果とシワ発生防止効果、
平滑性向上効果が顕著である。
本発明によれば、耐衝撃性を備えた表面にシワのない平滑性の高いICカードを製造できる。その結果ICチップの破損が生じず長寿命で筆記性に優れるICカードを得ることができる。
本発明になるICカードの層構成を模式的に説明する断面視の図である。 従来型のICカードの層構成を模式的に説明する断面視の図である。 緩衝用樹脂、ICチップ、補強板の重なり具合を説明する上面視の図である。
本発明になるICカード単体の構成と従来構成を、構成する層ごとに分離して表示したものを図1および図2にそれぞれ示した。実際のICカードは、記載の層材料を上下から熱プレスして一体化したものであるが、基本的には、ICチップ5もしくはICチップ5とアンテナ配線7を備えたアンテナ基材10をインレットとし、その両側を2層または多層のシートを積層してカード化したものである。図1は、外装シート3,内層シート91,92を積層したものである。
ICチップ5は、厚みが数十μm程度のシリコン単結晶からなり、チップの外部接続用端子8をアンテナ基材側の端子と接続するようにアンテナ基材10に敷設する(図2を参照)。ICチップ5は厚み分、アンテナ基材10から突出しているので、外力や変形が加わってもICチップ5自体や接続部が打撃を受けないように、被覆する側の保護シートに開口部11を形成し、そこに収容されるようにしてあり、同時に上下をSUS、アルミ等の保護板61,62で狭持する構成となっている。ICチップを収容する空間は、カードの変形等があってもICチップに周囲の部材が接触しないように隙間を有しているのが普通である。
本発明は、図1に示すように、この隙間を緩衝用樹脂4で埋設したものである。緩衝用樹脂は外装シート3、内層シート91,92よりも低い弾性率の樹脂であることが好ましくシリコーン樹脂材料、ポリウレタン系材料、ゴム系材料またはダイラタンシー性を有する材料などを用いることができる。
以下、実施例を用いて本発明を説明する。
ICカードの、機能上の中核的部材であるアンテナ基材10は、ICチップ5と40μm厚のPET基材上に形成したアンテナ配線7を接続端子8を介して電気的に接続したもので、これらが複数多面付されたインレットとして製造される。多面付したインレットに、多面付けに対応する形態の内層シート91,92、外装用シート3等を順次積層して一括形成し、最終的にカードサイズに断裁するものであるが、便宜上、図1の小切れにした単体のICカードとして説明する。
尚、以下の記載では、ICカードの裏面とは、ICチップの実装側(図1、2では下側)
を指称し、表面とはその反対側(図1、2では上側)を指称するものとした。
先ず、アンテナ基材10に積層する上下の内層シート91,92のICチップ5に対応する部位(チップ実装領域)に金型を用いてプレス法で、ICチップ5と2枚の補強板61,62を収容する開口部11を形成する穴あけ加工を行う。内層シート91は130μm厚のホットメルト付PET−Gフィルム(引っ張り弾性率:1.50GPa)、もう一枚の内層シート92は350μm厚のホットメルト付PET−Gフィルムである。図では開口部11は貫通しているが、貫通していなくとも構わないし、場合によっては多段にざぐり加工することもある。
次に、アンテナ基材10に搭載された厚さ約55μm、面積(3mm×3mm)のICチップ5の背に第一の補強板62を接着し、第2の補強板61を図1に示すようにアンテナ基材10の対応する表面側に接着しICチップ5を両側から保護した。ここで第一の補強板62は厚さ65μm、第2の補強板61は厚さ110μmで、いずれも面積が4.5mm×4.5mm程度のSUS材からなっている。
次に、緩衝用樹脂4として厚さ200μmのシリコーン両面テープ(信越化学製:TC−20SAS、引っ張り弾性率:0.70GPa)を、第2の補強板61の上に仮置きして、アンテナ基材10を核にして内層シートと一緒に丁合いした後、熱ラミネート処理を施した。
この際、緩衝用樹脂4は、カード表面から見た投影形状を補強板6と略一致させるように揃え、該当部分の表面に不要な凹凸が生じないようにした。図3に好ましい配置の一例を図示した。図中、黒の四角はICチップ5である。補強板6の面積を基準とすると緩衝用樹脂4の面積は2以下が好ましい態様である。2以上であると補強板4周辺の凹凸が顕著となり、カード面への印画・印字性が低下した。
緩衝用樹脂4の厚さは5μmから300μmの範囲が望ましい。5μm未満では応力緩和効果が不十分であって、一方300μmを超えると外装シート3に厚さ100μmの基材を適用して、平滑性を確保しようとすると、ICカードの厚さをJIS規格X6301に準拠した規格厚760±80μmに収めるのが困難になる。
次に、ポリエステル系の30μm厚のホットメルトフィルム12と外装用シート3(延伸PET、引っ張り弾性率:3.60GPa)を2次丁合いした後、2次ラミネート処理して基材および全シートを接着する。ホットメルトフィルム12の厚さは、隙間が埋まるように、また固まってから後も凹凸が生じないように上記の厚みの範囲で適宜設定する必要がある。
次いで、カードサイズに小切れ抜きして所望のICカードを製造することができた。
(比較例)
上記の緩衝用樹脂4を備えるICカードと耐衝撃性を比較すべきICカードは、同様の工程で製造したが、違いは内層用シート(PET−G)94,95を表裏とも2枚重ねして厚さを240μmとしたことである(図2を参照のこと)。アンテナ基材10に接着する内層シート94,95にはICチップ5と補強板61,62を収容する開口部11を設けた。実施例における内層シートの厚みは表裏で異なるが、表裏の合計厚みは480μmとして比較例と同じとしてある。実施例では、緩衝用樹脂が収容される部位の厚さを表裏で変えたものである。
(比較実験)
衝撃試験は、JIS規格K5600-5-3の落体式試験装置を用いて、内径27mmの穴
の空いた受け台の中心にICチップが位置するように、カードの表面を上にして固定し、直径20mm、重さ50gの鋼鉄製おもりを15cmから落下させ、次いでカードの表裏を逆にして同様に設置、おもりを落下させた。ICチップの動作を確認し、正常動作が確認されたカードに対して高さを5cmずつ増して同様の衝撃試験を繰りかえした。正常動作が確認された最も高い高さを個数とともに記録した。
結果を表1に示した。表はその高さ(上段横の数字で単位はcm)で破損したICカードの枚数を投入数で除したものである。
Figure 0005691169
実施例と比較例を較べると、緩衝用樹脂を設置した裏面側におもりを落下させた場合に差が顕著であった。開口部11に備える緩衝用材料4としては、硬いPETよりもシリコン樹脂を配置した方が衝撃を吸収する効果が顕著で、ICチップに加わる力がより低減されたものと考えられる。一方、表面側では同等の結果となり差が見られなかった。ほぼ同じ構成であるので当然の結果である。
3、外装用シート
4、緩衝用樹脂
5、ICチップ
7、アンテナ配線
8、接続部分
10、アンテナ基材
11、開口部
12、ホットメルトフィルム(樹脂)
61、第二の補強板
62、第一の補強板
91、92、93、94、95、96、内層用シート

Claims (2)

  1. 厚さ約55μm、面積(3mm×3mm)のICチップとアンテナとを備える40μm厚のアンテナ基材に、少なくとも上下に内層シートと、外装シートと、を積層してなるICカードであって、該ICチップが前記アンテナと電気的に接続するアンテナ基材のチップ実装面のチップ実装領域と前記アンテナ基材のチップ実装面と対向する面のチップ実装領域にそれぞれ接着用樹脂を介して補強板が上下に接着され、チップ実装面側の補強板の上は、前記内層シート及び外装シートよりも低い弾性率の緩衝用樹脂で被覆されており、アンテナ基材上方の内層シートは130μm厚のホットメルト付PET−Gフィルムからなり、アンテナ基材下方の内層シートは350μm厚のホットメルト付PET−Gフィルムであり、アンテナ基材上方の補強板は厚さ110μmで、アンテナ基材下方の補強板は厚さ65μmでいずれも面積が4.5mm×4.5mm程度のSUS材からなり、前記緩衝用樹脂は厚さ5μmから300μmの範囲のシリコーン樹脂であり、前記緩衝用樹脂部位を補強板に射影した場合の平面形状は、前記補強板と相似であり、前記緩衝用樹脂部位を補強板に射影した場合の平面形状の面積は、補強板の面積の2倍以下であることを特徴とするICカード。
  2. 前記内層シートは、ICチップを収容する側の内層シートが、収容しない側の内層シートより厚く、前記チップ実装領域に対応する部位に開口部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のICカード。
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