JP2024032318A - Icシートおよびicシートの製造方法 - Google Patents

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悠 小久保
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【課題】ICモジュールの部位に点状の衝撃が加わったときのICモジュールの破壊に対する耐性を向上することができるICシートとその製造方法を提供する。【解決手段】アンテナのパターンが表面に形成されたアンテナ基板131と、アンテナと電気的に接続する接合部を有するリードフレーム21と、該リードフレームの一方の面に搭載されたICチップ22と、該ICチップを覆う樹脂モールディング23と、を含むICモジュール20と、を備えるICインレット13と、繊維層と粘着層を有し、リードフレームの他方の面に該粘着層で固定されたIC補強材15と、ICインレットおよびIC補強材を挟む様に積層された複数の樹脂シート11、12を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、パスポート等の冊子体に内蔵されるICシートに関し、特にICチップへの点状の衝撃の耐性を向上することができるICシートとその製造方法に関する。
一般に、ICシートやIDカードなどのICチップを搭載した媒体において、外部から加わる衝撃、特にICチップにダメージを与えやすい点状の衝撃に対する耐性を向上する方法として、ICを搭載したモジュールのIC上に補強材を設ける方法がある(例えば特許文献1)。
ICチップの搭載形態の1つであるパッケージ化されたICモジュールにおいては、ICチップの片面側がモールド樹脂によりモールディングされていることが多く、他方が金属によるリードフレームで形成されていて、ICチップのみの場合と比べてある程度の耐性を持っているが、点状の衝撃耐性を向上させるために厚みのある補強材を設けことが一般に行われている。そして補強材としてはSUS板が用いられることが多い。
図5は、SUS板を補強材とした、従来のICシートの構成例の断面模式図である。ICモジュール64が、アンテナ等が形成されたICインレット63に装着されている。そして、ICモジュール64の部分がくりぬかれたコアシート62、62が表裏の両面に積層され、さらにSUS板の補強材65を挟んでオーバーシート61、61が積層されてICシート60となっているものである。
しかし補強材としてのSUS板は、図6に例示したように、外部から点状の衝撃が加わったとき、SUS板が瞬間的に歪み、局所的に加わった衝撃力が減衰したり分散したりせずにそのまま反対側に伝わってしまうため、折れや曲げへの耐性向上の効果が大きい反面、点状の衝撃耐性の向上があまり望めず、より効果的な補強手段の提案が求められていた。
特開2011-54032号公報
そこで本発明は、カードや冊子体のICパスポート等に適用されるICシートにおいて、ICモジュールの部位に点状の衝撃が加わったときのICモジュールの破壊に対する耐性を向上することができるICシートとその製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は、
カードまたは冊子体に装備されるICシートであって、
アンテナのパターンが表面に形成されたアンテナ基板と、
前記アンテナと電気的に接続する接合部を有するリードフレームと、該リードフレームの一方の面に搭載されたICチップと、該ICチップを覆う樹脂モールディングと、を含むICモジュールと、
を備えるICインレットと、
繊維層と粘着層を有し、前記リードフレームの他方の面に該粘着層で固定されたIC補強
材と、
前記ICインレットおよび前記IC補強材を挟む様に積層された複数の樹脂シートを備えることを特徴とするICシートである。
前記ICシートにおいて、
前記IC補強材の繊維層が、繊維状物が織物状に織られたものであって良い。
前記ICシートにおいて、
前記IC補強材の繊維層が、フッ素樹脂が含浸されたものであって良い。
前記ICシートにおいて、
前記複数の樹脂シートに、前記ICモジュールを収納する空隙が形成されていて良い。
前記ICシートにおいて、
前記IC補強材の厚みが100~300μmであって良い。
前記ICシートにおいて、
前記IC補強材の大きさが、前記ICモジュールおよび前記接合部を覆う大きさであって良い。
本発明の別側面は、
ICシートの製造方法であって、
アンテナパターンが形成された基材に前記アンテナパターンに接続されたICモジュールが搭載されてなるICインレットの両面に、
前記ICモジュールの部位に空隙が形成された樹脂製のコアシートと、樹脂製のオーバーシートとを積層し、
下記の条件で順次熱冷プレスによりラミネートすることを特徴とするICシートの製造方法である。
(1)プレヒート:温度100~200℃、加工時間30~60min、圧力10~20N/cm
(2)熱プレス:温度100~200℃、加工時間10~20min、圧力100~200N/cm
(3)冷却プレス:温度20~30℃、加工時間10~20min、圧力100~200N/m
本発明のICシートによれば、
ICモジュールのリードフレーム側からペン先等の鋭利なもので点状の衝撃が加えられたとき、その圧力をIC補強材の繊維層で吸収または分散させ、リードフレームにかかる衝撃を分散し、リードフレームやICチップの破損を防止することができる。
本発明のICシートの一実施形態の構成を説明する断面模式図である。 本発明のICシートの一実施形態に適用されるIC補強材の層構成図である。 IC補強材をICモジュールに装着する態様の説明図である。 IC補強材に点状の衝撃が加わったときの挙動を説明する図である。 従来のICシートの構成例を説明する断面模式図である。 SUS板に点状の衝撃が加わったときの挙動を説明する図である。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また以下に示す実施形態では、発明を実施するために技術的に好ましい限定がなされているが、この限定は本発明の必須要件ではない。
<ICシート>
図1は、本発明のICシートの一実施形態の構成を説明する断面模式図である。なお図1は説明のためのものであって、図の縦横比や厚みなどは正確に示されたものではない。ICシートの一般的な構成を、図1を援用して説明すれば、ICインレット13の上下両面にそれぞれコアシート12、オーバーシート11を積層させて構成される。ICチップの保護の観点から、オーバーシートの厚みが厚い方が機械的強度や各種物性において良好な結果が得られるため、代わりにICインレットの厚みをできる限り薄くすることが求められる。また、ICシートの構成は図1の様な5層であっても構わないし、それより多層でも何ら問題はないが、厚みの観点から5層とする事が好ましいとされる。
本実施形態のICシート10において、コアシート12は、ICインレット13のICモジュール20搭載部分に、ICモジュール20を収納する空隙として貫通孔14が設けられた形状で良い。また、ICモジュール20を収納できる空隙を確保していれば、貫通していない穴の形状でも良い。この時のICシート10の厚みは600~800μmが好ましく、600~700μmがより好ましい。また、IC補強材は点状の衝撃耐性を向上させるために厚みのあるもの、さらにはICに対して表裏で挟む形で使用されることが多いが、本実施形態では、ICチップ22が片面側でモールド樹脂23によりモールドされており、他方が金属によるリードフレーム21で形成されていることから、リードフレーム21側が点状の衝撃耐性に劣るため、IC補強材15をリードフレーム21側に配置することで点状の衝撃耐性の向上を図っている。ただし、IC補強材15を両面に配置しても問題は無い。
なお、本発明のICシートは、ISO/IEC7810に規定されるID・1~ID・3サイズや、ICAOのDOC9303に規定されるTD・1~TD・3サイズのIDカードやパスポート冊子向けのICシートに好適に適用される。
<オーバーシートおよびコアシート>
本実施形態のICシート10におけるオーバーシート11およびコアシート12の材質は、ポリエステル樹脂、アクリルニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂(ABS)、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂、PET-G、ポリプロピレン、ポリカーボネート、トリアセテート、ポリアミド等の樹脂を用いることができるが、この限りではなく、ISO/IEC7810のID・1やICAOのID・3の規格を満たすものであれば使用することができる。
<ICインレット>
ICインレット13は、金属をエッチングすることによりアンテナが形成されているアンテナ基板131にICモジュール20が装着されてなり、ICモジュール20とアンテナは、図3に例示したような接合部24で電気的に接続されている。アンテナは、金属をコイル状にして融着させて形成しても良い。このときの金属は銅やアルミニウム、金や銀等を使用する事ができる。本形態ではアルミニウム、もしくは銅が好ましい。また、アンテナ基板131は上記オーバーシート11およびコアシート12と同様に各種の樹脂、その共重合体が使用される。
<IC補強材>
ICチップの点状の衝撃耐性向上のためにICモジュールのリードフレーム側にIC補強
材15を固定する。IC補強材15は点状の衝撃に対する衝撃吸収性に優れることが好ましい。点状の衝撃耐性確保のため補強材を厚くするとICシートの厚みが厚くなり、冊子化後のICの耐久性などが低下するため、補強材は薄いものが好ましい。上記条件を満たす構成として、図2に示すように、繊維状物が織られた織物に樹脂含浸した繊維層16に粘着剤からなる粘着層17を積層した構成とすると好ましい。織物を構成する繊維状物にはカーボンファイバー、ガラス繊維、アラミド繊維などが挙げられるが、特にガラス繊維が好ましい。またこれらから選択される、1種または複数からなる複合材料でもよい。
また、含浸樹脂にはPTFE、PFA、FEPなどのフッ素樹脂が挙げられ、特にPTFEが好ましい。粘着剤にはアクリル系粘着剤、シリコーン粘着剤、ウレタン粘着剤、ゴム系粘着剤などが挙げられるが、特にシリコーン系粘着剤が好ましい。IC補強材15の厚みとしては、100~300μm、好ましくは130~200μm、さらに好ましくは130~150μmとするとよい。具体的には、日東電工製PTFE含侵ガラスクロステープNO.973ULSが例示できる。このガラスクロステープの厚みはおよそ130μmである。ただし、上記構成に限らず、点状の衝撃耐性が向上するのであれば、樹脂を含浸しない織物に粘着層を積層した構成でも何ら問題はない。
IC補強材15の形状としては、本発明の趣旨に反しない限りのものを適宜設計して用いることができる。本発明では、図3に示す様に、ICモジュール20のリードフレーム21のサイズおよび形状よりも一回り大きく、接合部24を含めリードフレーム21を覆う形状の補強材が好ましい。
リードフレーム21のサイズが5.0mm×8.0mmとした場合に、IC補強材15のサイズは5.5mm~10.0mm×8.5mm~13.0mm、好ましくは5.5mm~8.0mm×8.5mm~11.0mmが良く、本実施形態ではアンテナのパターン132を考慮しIC補強材15のサイズを7.5mm×8.6mmとすることでリードフレーム21とアンテナのパターン132との接合部24を保護するとともに、点衝撃耐性試験において接合部24の外れを防ぐことができる。ただし、上記サイズは一例であり、これに限らず、ICモジュール20とアンテナの接合部24の保護と点状衝撃耐性試験における接合部24の外れを防ぐことが可能なサイズであれば何ら問題はない。
<ラミネート加工>
ICシート10を形成する方法として、ICインレット13とIC補強材15を上記オーバーシート11およびコアシート12で表裏から挟み込み、熱冷プレスにより加工する方法がある。この時の加工条件としては、
(1)プレヒート:温度100~200℃、加工時間30~60min、圧力10~20N/cm
(2)熱プレス:温度100~200℃、加工時間10~20min、圧力100~200N/cm
(3)冷却プレス:温度20~30℃、加工時間10~20min、圧力100~200N/m
とする事で、基材同士が熱圧着しICシート10が形成される。
このとき、ICインレット13に厚みがある場合などに、加工後の外観に凹凸が発生し、外観を損なうことがある。加えて、ICインレット13の端とオーバーシート11およびコアシート12の融着がうまく行われず、空隙による隙間が発生してしまうことがある。これらの現象を改善するためには、各加工条件を、
(1)プレヒート:温度120~130℃、加工時間40~45min、圧力10~15N/m
(2)熱プレス:温度120~130℃、加工時間10~15min、圧力100~15
0N/cm
(3)冷却プレス:温度20~25℃、加工時間10~15min、圧力100~150N/m
とより精密に制御すると好ましい。この条件で加工を行うと樹脂の溶融が十分に行われて外観に凹凸が出る恐れがなく、均一、かつ内部に空隙の見られないICシートを得ることができる。
<点状の衝撃耐性>
IC補強材を下記の表1に示す部材とした5点のICシートについて、シャルピー衝撃試験において、
ハンマーの先端のヘッドを球状、
ハンマーの容量:0.5J、
ハンマーの落下高さ:30mm、
荷重部位:ICチップ中央、
試験対象:平板、
として確認試験を実施した。
シャルピー衝撃試験は、JIS K7061に準拠する落下試験法によりICシートのリードフレーム側の面(LF面)およびモールディング側の面(MD面)について点状の衝撃耐性を確認した。
Figure 2024032318000002
結果を表2に示す。なお、表2では、
RWによるICチップとの通信が可能:○
RWによるICチップとの通信が不可:×
として評価した。
Figure 2024032318000003
IC補強材としてガラスクロステープを用いた構成とした実験例1、2では、点状の衝撃によりICチップが破壊される、またはICモジュールとアンテナとの接合部分が外れる、破壊されるなどの通信に影響がみられるダメージがLF面およびMD面ともに見られなかったのに対し、SUS板をIC補強材とした実験例3~5では、そのようなダメージによりICチップとの通信が不可となることが確認された。SUS板をIC補強材とした場合は、従来の同様の試験においてはハンマーの落下高さが30mm程度が限界であったのに対し、ガラスクロステープをIC補強材とした場合は、53mmでも上記の様なダメージがないことが確認でき、落下高さにおいては約1.5倍の耐性があることが確認できた。
これは、図4に示す様に、織物状となっているガラスクロスまたはPTFE樹脂を含浸したガラスクロスにおいては、球状のハンマーの先端31からの衝撃が、繊維層30の織目が撓む、ずれるなどしたり、またPTFE樹脂が変形するなどして、矢印の様に繊維層30の面内方向に分散されることで、ICモジュール側に伝わる衝撃が緩和されたためと想定される。
以上説明したように、パスポート等の冊子体に内蔵されるICシートにおいて、リードフレーム、ICチップ等からなるICモジュールのリードフレーム側の面に、繊維層を有するIC補強材を固定したICシートとすることで、ICモジュールへの点状の衝撃に対する耐性を向上することができるICシートとその製造方法を提供することができた。
10・・・ICシート
11・・・オーバーシート
12・・・コアシート
13・・・ICインレット
131・・・アンテナ基板
132・・・アンテナのパターン
14・・・貫通孔
15・・・IC補強材
16・・・繊維層
17・・・粘着層
20・・・ICモジュール
21・・・リードフレーム
22・・・ICチップ
23・・・モールド樹脂
24・・・接合部
30・・・繊維層
31・・・ハンマーの先端

Claims (7)

  1. カードまたは冊子体に装備されるICシートであって、
    アンテナのパターンが表面に形成されたアンテナ基板と、
    前記アンテナと電気的に接続する接合部を有するリードフレームと、該リードフレームの一方の面に搭載されたICチップと、該ICチップを覆う樹脂モールディングと、を含むICモジュールと、
    を備えるICインレットと、
    繊維層と粘着層を有し、前記リードフレームの他方の面に該粘着層で固定されたIC補強材と、
    前記ICインレットおよび前記IC補強材を挟む様に積層された複数の樹脂シートを備えることを特徴とするICシート。
  2. 前記IC補強材の繊維層が、繊維状物が織物状に織られたものであることを特徴とする請求項1に記載のICシート。
  3. 前記IC補強材の繊維層が、フッ素樹脂が含浸されたものであることを特徴とする請求項1に記載のICシート。
  4. 前記複数の樹脂シートに、前記ICモジュールを収納する空隙が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のICシート。
  5. 前記IC補強材の厚みが100~300μmであることを特徴とする請求項1に記載のICシート。
  6. 前記IC補強材の大きさが、前記ICモジュールおよび前記接合部を覆う大きさであることを特徴とする請求項1に記載のICシート。
  7. ICシートの製造方法であって、
    アンテナパターンが形成された基材に前記アンテナパターンに接続されたICモジュールが搭載されてなるICインレットの両面に、
    前記ICモジュールの部位に空隙が形成された樹脂製のコアシートと、樹脂製のオーバーシートとを積層し、
    下記の条件で順次熱冷プレスによりラミネートすることを特徴とするICシートの製造方法。
    (1)プレヒート:温度100~200℃、加工時間30~60min、圧力10~20N/cm
    (2)熱プレス:温度100~200℃、加工時間10~20min、圧力100~200N/cm
    (3)冷却プレス:温度20~30℃、加工時間10~20min、圧力100~200N/m
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