以下、本発明の一実施形態であるグロープラグ1について、図面を参照して説明する。図1の紙面下側をグロープラグ1の先端側として説明する。
図1から図4を参照して、グロープラグ1の構造について説明する。図1に示すグロープラグ1は、例えば、直噴式ディーゼルエンジン150の取付孔154に取り付けられ、エンジン150の始動時の点火を補助する熱源として利用される。
図1に示すように、グロープラグ1は、セラミックヒータ20と、中軸30と、リング部材70と、ヒータ保持部材80と、主体金具40と、支持リング90と、Oリング92と、ピン端子95とを構成の主体とする。以下、各部材について順に説明する。
セラミックヒータ20は、基体21と、発熱素子24と、電極取出部25,26とを備える丸棒状の部材である。基体21は、絶縁性のセラミックスで形成され、先端部22が半球状に曲面加工されている。発熱素子24は、導電性のセラミックスで形成され、基体21の内部に埋設されている。発熱素子24は、発熱体27と、リード部28,29とを備える。発熱体27は、先端部22の曲面にあわせて両端が折り返された略U字状の部材である。リード部28,29は、発熱体27の両端から、セラミックヒータ20の後端部23に向けて軸線AXに沿って互いに略平行に延設されている。発熱体27の断面積は、リード部28,29の断面積よりも小さい。電極取出部25,26は、セラミックヒータ20の中央より後端部23側の外周面に設けられた、リード部28,29から各々突出する部位である。電極取出部25,26は、軸線AX方向の異なる位置で各々露出されている。
セラミックヒータ20は、例えば、以下の手順により製造される。発熱素子24と、電極取出部25,26との原形となる発熱部粉末成形体は、原料である導電性セラミック粉末が一体に射出成形されることによって形成される。一方、基体21の原形となる分割成形体は、絶縁性セラミック粉末を原料として予め2分割の成形体として金型プレス成形される。2分割の分割成形体は、合わせ面に発熱部粉末成形体が収容される凹部を備える。セラミックヒータ20は、分割成形体の凹部に発熱部粉末成形体を挟んで収容したヒータ成型体を、プレス圧縮した後、脱バインダ処理、ホットプレス等の焼成工程に供し、ヒータ成型体の外周面を円筒形に研磨して整えて形成される。
中軸30は、軸線AX方向に延設された金属(例えば、SUS430等のステンレス鋼)製の棒である。中軸30は、先端部31と、後端部32とを備える。先端部31は、リング係合部34と、接触面35(図5参照)とを備える。リング係合部34は、中軸30の先端に形成された小径の部位である。接触面35は、グロープラグ1の組み立て工程において、後述するリング部材70の後端面101と接する面である。後端部32には、Oリング92と、円筒状の樹脂製の支持リング90とが挿入され、支持リング90の後端側には、ピン端子95が配置されている。中軸30は、一定の寸法に切断された金属製棒状部材に塑性加工と、切削といった加工が施されて形成される。
リング部材70は、金属(例えば、SUS630)で形成された、筒状の部材である。リング部材70は、セラミックヒータ20と中軸30とを軸線AXに沿って接続させるための部材である。リング部材70は、筒孔71を内側に備える。セラミックヒータ20の電極取出部26は、筒孔71と接触しており、電極取出部26とリング部材70とは電気的に接続されている。本実施形態では、電極取出部26とリング部材70との電気的接続性を確保するために、リング部材70の表面には、めっき層78(図3参照)が形成されている。めっき層78を形成する金属は、例えば、銀(Ag)と、金(Au)−銀(Ag)合金と、亜鉛(Zn)といった中軸30を形成する金属とは異なる金属であり、且つ、耐酸化性の優れた金属である。
リング部材70の先端側は、ヒータ保持部材80の金具嵌合部85から後端側に露出されたセラミックヒータ20の後端部23と嵌合されている。一方、図2に示すリング部材70の後端100にある後端面101は、グロープラグ1の組み立て工程において、中軸30の接触面35(図5参照)と接する。後端面101の外周と、接触面35の外周とは、全周に亘ってレーザ溶接されている。これにより中軸30は、リング部材70を介し、セラミックヒータ20の電極取出部26と電気的に接続されている。図2及び図3を参照して、リング部材70と中軸30との溶接部位について詳述する。
図2に示すように、グロープラグ1を組み立てる前のリング部材70は、溶接ビード被形成部74と、凹部75と、溶接ビード非形成部76とを自身の外周側に備える。溶接ビード被形成部74は、リング部材70の後端部79に設けられ、後端側に面取部72を備える。凹部75は、リング部材70の先端部77に設けられ、先端側に面取部73を備える。溶接ビード非形成部76は、軸線AX方向において、溶接ビード被形成部74と、凹部75との間に設けられている。リング部材70は、軸線AX方向におけるリング部材70の中心点C1を通り、且つ、軸線AX方向に垂直な面F1に対して対称である。溶接ビード被形成部74の径方向の長さL1と、凹部75の径方向の長さL3とは、公差±0.05mmの範囲で均一である。即ち、溶接ビード被形成部74と、凹部75とは、それぞれ軸線AX方向に垂直な平面における断面が、概略円状である。溶接ビード被形成部74の径方向の長さL1と、凹部75の径方向の長さL3とは、それぞれ溶接ビード非形成部76の径方向の長さの最大値L2よりも短い。溶接ビード非形成部76の径方向の長さの最大値L2は、リング部材の径方向の長さの最大値である。
溶接ビード被形成部74の軸線AX方向の延設範囲L5は、中軸30と、リング部材70との合わせ部位付近に形成される溶接ビード部200(図3参照)の形成範囲を考慮して設定される。図3に示すように、溶接ビード部200は、中軸30と、リング部材70との合わせ部位付近に形成されている。具体的には、溶接ビード部200の軸線AX方向の形成範囲は、レーザ溶接時のレーザスポット径L4と等しいか、又は、レーザスポット径L4の外側に及ぶ。さらに、溶接ビード部200には、リング部材70の後端100の位置P1から先端側に(レーザスポット半径L4/2)+(L6)離れた位置に、突起202が形成されることがある。突起202は、溶接ビード被形成部74よりも径方向に突出した形状をなす。突起202は、例えば、リング部材70の表面のめっき層78を形成する金属が、レーザ溶接時に、中軸30を形成する金属及びめっき層78を除くリング部材70を形成する金属とは合金化せずに凝集することに伴い形成される。ここで言う「合金化しない」とは、「中軸とリング部材との溶接では合金化しない」の意味であり、他の条件(例えば、溶融温度が異なる条件)のもとでは合金化する金属の組み合わせを含む。例えば、中軸30を形成する金属としてSUS430を用い、めっき層78を形成する金属として銀(Ag)を用いた場合、中軸30とリング部材70との合わせ部位がレーザ溶接によって溶融されても、両金属は合金化しない。この場合、図4に例示するように、銀はステンレス鋼とは合金化せずに凝集して部位203を形成する。部位203の形成に伴い、突起202が形成される。
溶接ビード被形成部74の軸線AX方向の延設範囲L5は、溶接ビード部200のリング部材70側のビードエッジ201が溶接ビード被形成部74に形成されるように規定される。例えば、レーザスポット半径(L4/2)が、0.30mmであり、L6が、0.15mmから0.25mmの値である場合、L5は、0.6mmである。このように、溶接ビード被形成部74の軸線AX方向の延設範囲L5を規定することによって、溶接ビード部200に突起202が形成される場合に、確実に突起202を溶接ビード被形成部74に形成させることができる。レーザスポット半径(L4/2)は、本発明のレーザスポット半径Rに相当する。
L2に対するL1の長さは、溶接ビード部200に形成されうる突起202の突出高さと、リング部材70と主体金具40との間の隙間(クリアランス)とを考慮して設定される。本実施形態では、L1と溶接ビード被形成部74の外径からの突起202の突出高さL7との和が、L2以下となるように設定される。例えば、L2が、1.90mmであり、突起202の突出高さL7が0.10mmである場合、L1は、1.75mmに設定される。このように、L2に対するL1の長さが規定されることによって、溶接ビード部200に突起202が形成される場合に、主体金具40と、溶接ビード部200(特に突起202)とが、接触することを確実に回避させることができる。
リング部材70と中軸30とをレーザ溶接する場合のレーザ出力(レーザ強度)は、必要且つ十分な接合強度が得られるように適宜設定される。レーザ出力は、中軸30及びリング部材70の個々の微少な形状等の違いによって最適値が異なる。本実施の形態では、一例として、レーザ出力を100Wに設定して、レーザ溶接を行った。レーザ出力は、適宜変更されてよい。一方、グロープラグ1の大量生産を行う際に、上記個々の違いを考慮してレーザ出力を変更することは、極めて煩雑・非効率的である。したがって、レーザ出力は一条件に固定されることが好ましい。この場合、レーザ溶接に伴って形成される突起202の大きさは、個々のグロープラグ1で異なりうる。溶接ビード被形成部74の形成位置及び形状は、形成される可能性がある突起202の大きさを考慮して上記のように決定される。
リング部材70は、例えば、以下の手順で製造される。ステンレス等の鋼材が引き抜かれて形成されたパイプ材を所定の寸法に切断し、切削により外形を整えて図2に示す形状を有するパイプ状に形成される。リング部材70が切削加工を用いて形成される場合、既存の工程と同様の工程でリング部材70を形成することができる。リング部材70は、材料のステンレス鋼材に塑性加工を行うことによって同様の形状に形成されてもよい。塑性加工を用いてリング部材70が製造される場合は、リング部材70を切削加工することなく一体的に加工できる。リング部材70の上記L1,L2,L3,L5の寸法は、実験によって決定される。リング部材70の筒孔71の径は、セラミックヒータ20の外径より僅かに小さくなるように形成される。リング部材70の表面は、例えば、バレルめっき法を用いてめっき処理される。めっき処理に用いられる金属は、前述の中軸30を形成する金属とは異なる金属である。
図1に示すように、ヒータ保持部材80は、軸線AX方向に延びる円筒状の金具である。ヒータ保持部材80は、筒孔81を内側に備える。筒孔81の直径は、セラミックヒータ20の外径より僅かに小さくなるように設定され、ヒータ保持部材80は、筒孔81の内側に圧入されたセラミックヒータ20を保持する。筒孔81の内周面には、銀(Ag)及び金(Au)等の耐酸化性に優れる金属を用いてめっき処理されている。セラミックヒータ20の先端部22及び後端部23は、筒孔81の両端から各々突出している。セラミックヒータ20の電極取出部25,26のうち、先端側に形成された電極取出部25は、ヒータ保持部材80の筒孔81の内周面に接触している。これにより、電極取出部25とヒータ保持部材80とが電気的に接続される。ヒータ保持部材80は、先端側から後端側に向かって、胴部82と、係止部83と、鍔部84と、金具嵌合部85とを外側に備える。係止部83は、テーパ状であり、グロープラグ1がエンジン150の取付孔154に取り付けられる際には、取付孔154内に設けられた段部156に係止される。これによって、取付孔154を介した燃焼室160内の気密漏れが防止される。鍔部84は、胴部82よりも肉厚に形成されている。金具嵌合部85は、ヒータ保持部材80と、主体金具40とを嵌合させるための段部である。
図1に示すように、主体金具40は、金属(例えば、S45C相当の炭素鋼)で形成された、軸線AX方向に伸びる筒状の部材である。主体金具40は、軸孔43を内側に備える。軸孔43には、セラミックヒータ20の後端部23に接合された中軸30の先端側が内挿される。主体金具40の先端部41は、ヒータ保持部材80の金具嵌合部85に対して圧入により嵌合される。さらに、先端部41と、金具嵌合部85との合わせ部位は、レーザ溶接される。これにより、主体金具40とヒータ保持部材80とが一体に接合され、主体金具40とヒータ保持部材80とが電気的に接続される。一方で、セラミックヒータ20と主体金具40とは、それぞれヒータ保持部材80に位置決めされるので、中軸30と主体金具40とは非接触の状態であり、電気的に絶縁される。
主体金具40は、後端側の外周面に、ねじ部52と、工具係合部56とを備える。ねじ部52は、ねじ山を有する。ねじ部52は、グロープラグ1をエンジン150の固定するための部材であり、エンジン150の取付孔154に設けられた雌ねじ157と螺合する。工具係合部56は、グロープラグ1をエンジン150に取り付ける際に使用される工具(図示外)が係合する断面六角形状の部位であり、ねじ部52よりも後端側に形成されている。軸孔43の工具係合部56の内側となる部位55は、軸孔43の先端側よりも拡径されている。
支持リング90は、主体金具40の軸孔43の拡径された部位55に押し込まれるように配置され、中軸30の位置決めと、中軸30と主体金具40との間の絶縁を担っている。Oリング92は、例えばフッ素ゴム、アクリルゴム、シリコンゴム等、絶縁性を有する弾性部材によって環状に形成されている。Oリング92は、支持リング90の先端面に押圧されて、主体金具40の軸孔43の内周面と中軸30の後端部32の外周面とに密着する。これにより、Oリング92は、主体金具40の軸孔43を封止する。ピン端子95は、中軸30を固定する。ピン端子95には、外部の電源から電力を供給するコードが接続される。
上記のグロープラグ1の組み付け工程について簡単に説明する。グロープラグ1の組み付け工程は、基本的に公知の工程(例えば、特開2009−074708号公報参照)と同様である。グロープラグ1の主な組み付け工程は、実施順に、ヒータ圧入工程と、中軸係合工程と、中軸接合工程と、金具係合工程と、金具接合工程と、端子組付工程とを備える。以下、各工程を順に概説する。
ヒータ圧入工程では、セラミックヒータ20は、先端部22側からリング部材70に圧入嵌合され、電極取出部26とリング部材70との導通が図られる。セラミックヒータ20は、さらに、先端部22側からヒータ保持部材80から圧入嵌合され、電極取出部25と、ヒータ保持部材80との導通が図られる。
中軸係合工程では、図5に示すように、ヒータ圧入工程を経て、セラミックヒータ20とヒータ保持部材80およびリング部材70とが一体となったヒータ一体部材のリング部材70の内周に、中軸30の先端部31に設けたリング係合部34の外周が係合される。この係合の際、リング部材70の後方から挿入される中軸30のリング係合部34は遊嵌状であってもやや締まり嵌め状態の圧入であってもよい。
中軸接合工程では、図5に示すように、中軸30の接触面35とリング部材70の後端面101との合わせ位置P1が、レーザスポット中心となるように、外側から全周レーザが照射される。中軸30の先端側には、面取部33が形成されている。中軸30の面取部33の先端と、リング部材70の面取部72の後端とは、径方向の長さが等しい。レーザスポット径L4は、例えば、0.6mmである。レーザの照射により、中軸30を形成する金属と、リング部材70を形成する金属と、リング部材70の表面のめっき層78を形成する金属とが、溶融した溶接ビード部200(図3参照)が形成される。中軸接合工程によって、中軸30とヒータ一体部材とが一体に接合された中軸一体部材が得られる。
金具係合工程では、中軸一体部材の中軸30が、主体金具40の軸孔42内に、後端部32側から挿通される。主体金具40の先端部41は、ヒータ保持部材80の金具嵌合部85に、外嵌めにて圧入により嵌合される。
金具接合工程では、主体金具40と、ヒータ保持部材80との合わせ部位に外周からレーザが照射され、中軸一体部材のヒータ保持部材80と、主体金具40とが一体に接合される。
端子組付工程では、中軸30の後端部32にOリング92および支持リング90が係合され、主体金具40の部位55に収容される。ピン端子95は、中軸30の後端部32に嵌め込まれる。ピン端子95によって支持リング90を先端側に向けて押圧した状態で、ピン端子95の外周を加締めることで、ピン端子95が中軸30に固定される。
上記グロープラグ1では、下記の効果を奏する。上述のように、セラミックヒータ20は、リング部材70に圧入嵌合されるため、リング部材70には一定以上の強度が要求される。このため、少なくとも、リング部材70のセラミックヒータ20を保持する部分については、セラミックヒータ20を保持するのに十分な強度を備えた厚みが必要である。一方、リング部材と、中軸とをレーザ溶接することによって形成される溶接ビード部には、上述のように突起が形成されることがある。主体金具と、リング部材とのクリアランスが比較的小さい従来の構成のグロープラグでは、溶接ビード部に突起が形成された場合、主体金具と、突起とが接触し、電気的にショートする可能性がある。
これに対し、上記グロープラグ1では、リング部材70の径方向の長さの最大値L2は、主体金具40の軸孔43の大きさ及び形状と、リング部材70がセラミックヒータ20を保持する上での強度(厚み)とが考慮され、リング部材70と主体金具40とが接触しないように設定される。さらに、リング部材70の後端側に溶接ビード被形成部74が形成されている。リング部材70側に形成されるビードエッジ201は、リング部材70の溶接ビード被形成部74に形成される。溶接ビード被形成部74の径方向の長さL1は、リング部材70のめっき処理に用いた金属がレーザ溶接により溶融し、凝集することに伴い突起202が形成されることがあることを考慮して、リング部材70の径方向の長さの最大値L2よりも小さく設定される。より具体的には、溶接ビード被形成部74の径方向の長さL1は、突起202を含む、リング部材70の径方向の長さ(L1+L7)が、リング部材の径方向の長さの最大値L2以下となるように設定される。
一方、溶接ビード被形成部74の軸線AX方向における延設範囲L5は、中軸30と、リング部材70との合わせ部位付近に形成される溶接ビード部200(図3参照)の形成範囲を考慮して設定される。したがって、グロープラグ1では、溶接ビード部200に形成される突起202は確実に溶接ビード被形成部74に配置される。グロープラグ1は、溶接ビード被形成部74を設けることによって、突起202を含む溶接ビード被形成部74の径方向の長さは、溶接ビード非形成部76の径方向の長さを超えないように、又は超えたとしても、主体金具40と突起202とが接触することを回避させることができる。このように、グロープラグ1は、主体金具40と、突起202とが電気的にショートする可能性を良好に低減することによって、発熱体27への通電の確実性を高めることができる。リング部材70の表面に、中軸30を形成する金属と合金化しない金属によって形成されためっき層78が存在する場合、突起202が大きく形成されてしまう傾向がある。このような場合には上記効果が好適に得られる。めっき層78が亜鉛の如く、中軸30を形成する金属と一部合金化をするような金属で形成される場合にも、レーザ溶接の条件によっては突起202が形成されることもある。このため、めっき層78が中軸30を形成する金属と一部合金化をする金属で形成される場合にも、同様に上記効果が得られる。グロープラグ1では、軸線方向において、中軸30の接触面35の外周と、リング部材70の後端面101の外周とを含む範囲が全周に亘ってレーザ溶接することによって、リング部材70と、中軸30とが確実に溶接される。
リング部材70の表面のめっき処理に、銀(Ag)と、金(Au)−銀(Ag)合金と、亜鉛(Zn)とのいずれかを用いた場合、グロープラグ1は、金(Au)等の高価な金属を用いる場合に比べ、めっき処理に要するコストを低減させることができる。溶接ビード被形成部74の径方向の長さL1は、公差±0.05mmの範囲で均一である。したがって、グロープラグ1は、溶接ビード被形成部74の径方向の長さL1が不均一である場合に比べ、溶接ビード部200に形成される突起202を含むリング部材70の径方向の長さ(L1+L7)が不均一になる可能性を低減することができる。リング部材70は、軸線AX方向におけるリング部材70の中心点C1を通り、且つ、軸線AX方向に垂直な面F1に対して対称である。したがって、グロープラグ1は、製造時において、中軸30に対するリング部材70の溶接ビード被形成部74の配置を管理する手間を省くことができる。さらに、グロープラグ1は、中軸30の面取部33の先端と、リング部材70の面取部72の後端とは、径方向の長さが等しい。このため、グロープラグ1は、両者が異なる場合に比べ、中軸30の先端部31とリング部材70との合わせ位置P1に対する、レーザ溶接のレーザ発信機によるレーザ発信角度を調整する必要がなく、溶接作業が容易である。
本発明は、以上詳述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更が加えられてもよい。例えば、以下の(1)から(5)の変形が適宜加えられてもよい。
(1)溶接ビード被形成部は、軸線方向において、リング部材側のビードエッジを含む範囲に形成され、且つ、径方向の長さが、リング部材の径方向の長さの最大値よりも小さければよい。溶接ビード被形成部の軸線AX方向の延設範囲は、中軸と、リング部材との合わせ位置付近に形成される溶接ビードの形成範囲を考慮して設定されればよく、適宜変更されてよい。例えば、図6に例示するリング部材170及び図7に例示するリング部材270のように、溶接ビード被形成部の軸線AX方向の延設範囲が設定されてもよい。以下、リング部材170と、リング部材270とについて説明する。
まず、図6を参照して、リング部材170について説明する。図6に示すように、リング部材170は、筒孔171を内側に備える。リング部材170は、溶接ビード被形成部174と、凹部175と、溶接ビード非形成部176、178と、溶接部180とを自身の外周側に備える。溶接ビード非形成部176は、軸線AX方向において、溶接ビード被形成部174と、凹部175との間に設けられている。溶接部180は、リング部材170の後端部179であって、溶接ビード被形成部174の後端側に設けられている。溶接部180は、後端側に面取部172を備える。溶接ビード非形成部178は、リング部材170の先端部177であって、凹部175の先端側に設けられている。溶接ビード非形成部178は、先端側に面取部173を備える。リング部材170は、軸線AX方向におけるリング部材170の中心点C2を通り、且つ、軸線AX方向に垂直な面F2に対して対称である。溶接ビード被形成部174及び凹部175の径方向の長さL11,L13は、公差±0.05mmの範囲で均一である。溶接ビード非形成部176、178と、溶接部180とは、それぞれ径方向の長さが互いに等しい。溶接ビード被形成部174及び凹部175の径方向の長さL11,L13は、溶接ビード非形成部176、178と、溶接部180との径方向の長さの最大値L12よりも短い。中軸30の面取部33の先端と、リング部材170の後端110にある後端面111の外周とは、径方向の長さが等しい。
溶接ビード部の形成条件が、上記実施形態と同様である場合、溶接ビード被形成部174の軸線AX方向の延設範囲L15は、リング部材170の後端110から先端側に(レーザスポット半径L4/2)の位置P11から、突起形成位置(位置P11から先端側にL6の位置)よりも先端側の位置P12までの範囲である。より具体的には、位置P11は、リング部材170の後端110から先端側に0.3mmの位置であり、位置P12は、リング部材170の後端110から先端側に0.6mmの位置である。また例えば、L12が、1.90mmであり、突起の突出高さが0.10mmである場合、L11は、1.75mmに設定される。
次に、図7を参照して、リング部材270について説明する。図7に示すように、リング部材270は、筒孔271を内側に備える。リング部材270は、溶接ビード被形成部274と、溶接ビード非形成部276とを自身の外周側に備える。溶接ビード被形成部274は、リング部材270の後端部279に設けられている。溶接ビード非形成部276は、溶接ビード被形成部274の先端からリング部材270の先端部277に亘って延設されている。溶接ビード非形成部276は、先端側に面取部273を備える。リング部材270は、軸線AX方向におけるリング部材270の中心点C3を通り、且つ、軸線AX方向に垂直な面F3に対して非対称である。溶接ビード被形成部274の径方向の長さL21は、公差±0.05mmの範囲で均一である。溶接ビード被形成部274は、軸線AX方向において、後端側ほど先端側に比べ径方向の長さL21が短いテーパ状に形成されている。溶接ビード被形成部274の径方向の長さL21は、溶接ビード被形成部274の最も先端側の部位の径方向の長さL24も含め、溶接ビード非形成部276の径方向の長さの最大値L22よりも短い。中軸30の面取部33の先端と、リング部材270の後端120にある後端面121の外周とは、径方向の長さが等しい。
溶接ビード部の形成条件が、上記実施形態と同様である場合、溶接ビード被形成部274の軸線AX方向の延設範囲L25は、リング部材270の後端120の位置P21から、リング部材270の後端120から先端側に0.6mmの位置P22までの範囲である。また例えば、L22が、1.90mmであり、突起の突出高さが0.10mmである場合、L21のうち、溶接ビード被形成部274の後端の径方向の長さL23は、1.75mmに設定される。
(2)中軸を形成する金属及びリング部材のめっき層を形成する金属は、互いに異なっていればよく適宜変更されてよい。耐酸化性と、経済性とを考慮すると、めっき層を構成する金属としては、銀が特に好ましい。
(3)溶接ビード被形成部の径方向の長さは、全周均一ではなくてもよい。溶接ビード被形成部の径方向の長さは、全周均一ではない場合、溶接ビード被形成部の径方向の長さの最大値が、リング部材の径方向の長さの最大値よりも小さければよい。
(4)リング部材は、図7に示すリング部材270のように、軸線方向におけるリング部材の中心点を通り、且つ、軸線方向に垂直な面に対して非対称な形状であってもよい。
(5)グロープラグ1を構成する部材の形状、及び材料等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更が加えられてもよい。例えば、中軸30の先端の径方向の長さと、リング部材70の後端100の径方向の長さとは同じでなくてもよい。中軸30と、リング部材70とは、中軸30の先端部と、リング部材70の後端部とにおいて溶接されていればよく、レーザ溶接前の中軸30の先端部の形状及びリング部材70の後端部の形状は適宜変更されてよい。