JP5689635B2 - 電解コンデンサ用電解液 - Google Patents

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Description

本発明は、電解コンデンサ用電解液に関する。特にアルミニウム電解コンデンサ用電解液に関する。
アルミニウム電解コンデンサは、陽極(アルミニウムの表面を酸化処理した)箔と陰極箔とをセパレータを介して積層または巻き回したコンデンサ素子に電解液を含浸し、このコンデンサ素子をケース内に収納して蓋を取り付けて密閉し、陽極箔および陰極箔から引き出される引き出し端子を取り付けた構造になっている。通常、コンデンサ内の塩素イオン濃度を測定すると0から10ppm程度検出される場合がある。この塩素イオンの多くは、アルミニウム化成箔に残留していた塩素イオンが、電解液中へ移動したものと考えられる。この塩素イオンにより、使用時にコンデンサの陽極および、陽極の引き出しリードタブ部分で腐食が起こり、コンデンサの不良となる。
そのため、特許文献1には、電解液にp−ニトロフェノール等のニトロ化合物を腐食防止剤として添加して、塩素イオンに対して耐腐食性を向上させていることが記載されている。
特開昭52−45049号公報
しかし近年電解コンデンサは、機器の信頼性向上に伴い、長寿命で安全性が高い(高耐腐食性)ことが要求されており、p−ニトロフェノール等のニトロ化合物の腐食防止剤では要求を満足する特性は得られていない。また、これらの添加剤では添加量の増加に伴い耐電圧の低下が起こるという欠点があった。
本発明の目的は、上述の目的を改良し、電解液の耐電圧を低下させることなく、耐腐食性が向上し、微量の塩素存在下においても長寿命な電解コンデンサ用電解液を提供するものである。
本発明は、上記の課題を解決するために、多価アルコール類を主溶媒とする電解コンデンサ用電解液において、側鎖にメチル基と長鎖の両端にカルボキシル基を有する二塩基酸またはその塩Yと、長鎖の端部と途中にカルボキシル基を有する二塩基酸またはその塩Zとの溶解比:Z溶解量/(Y溶解量+Z溶解量)が0.2から0.6の割合で含有することを特徴とする電解コンデンサ用電解液を提供するものである。
本発明によれば、多価アルコール類を主溶媒とする電解コンデンサ用電解液において、側鎖にメチル基と長鎖の両端にカルボキシル基を有する二塩基酸またはその塩と、長鎖の途中にカルボキシル基を有する二塩基酸またはその塩とを含有しているため、電解液の耐電圧を低下させることなく、耐腐食性が向上し、微量塩素存在下においても長寿命な電解コンデンサ用電解液が得られる。
本発明に述べる側鎖にメチル基と長鎖の両端にカルボキシル基を有する二塩基酸またはその塩は、主鎖の炭素数が7から22のように、ある程度長鎖であることが火花電圧の向上(火花発生電圧増加)の点で好ましい。側鎖にメチル基を設けることにより、エステル化反応を抑制するとともに耐腐食性が向上する。
具体的には、2−メチルノナン二酸、5−メチルデカン二酸、6−メチルウンデカン二酸、6−メチルドデカン二酸、7−メチルトリデカン二酸、8−メチルペンタデカン二酸、8−メチルヘキサデカン二酸、9−メチルヘプタデカン二酸、9−メチルオクタデカン二酸、10−メチルノナデカン二酸、10−メチルエイコサン二酸、2,2,4−トリメチルヘキサン二酸、2,8−ジメチルノナン二酸、2,4−ジメチル−4−メトキシカルボニルウンデカン二酸、2,4,6−トリメチル−4,6−ジメトキシカルボニルトリデカン二酸または8,9−ジメチル−8,9−ジメトキシカルボニルヘキサデカン二酸を含む長鎖二塩基酸またはこれらのアンモニウム等の塩が使用できる。
本発明に述べる長鎖の途中にカルボキシル基を有する二塩基酸またはその塩は、主鎖の炭素数が6から22のように、ある程度長鎖であることが火花電圧の向上(火花発生電圧増加)の点で好ましい。長鎖の途中にカルボキシル基を有することによりエステル化反応を抑制するとともに耐腐食性が向上する。
具体的には、1,6−デカンジカルボン酸、5,6−デカンジカルボン酸またはそのアンモニウム等の塩が使用できる。構造上、2つのカルボキシル基が接近している5,6−デカンジカルボン酸、2,3−ジブチルブタンジオン酸等の場合は、分子内脱水縮合反応を起こし、環状のカルボン酸無水物をつくりやすく、水を排出するので、その点では、1,6−デカンジカルボン酸のように2つのカルボキシル基が離れているほうが好ましい。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
溶媒とする多価アルコールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキシレングリコールまたは、グリセリン等を用いる。また、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルまたは、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどを単独または混合して用いることができる。
そしてこの多価アルコールに、主溶質として、側鎖にメチル基と長鎖の両端にカルボキシル基を有する二塩基酸またはその塩と、長鎖の端部と途中にカルボキシル基を有する二塩基酸またはその塩を溶解する。
側鎖にメチル基と長鎖の両端にカルボキシル基を有する二塩基酸またはその塩としては、たとえば、2−メチルノナン二酸、5−メチルデカン二酸、6−メチルウンデカン二酸、6−メチルドデカン二酸、7−メチルトリデカン二酸、8−メチルペンタデカン二酸、8−メチルヘキサデカン二酸、9−メチルヘプタデカン二酸、9−メチルオクタデカン二酸、10−メチルノナデカン二酸、10−メチルエイコサン二酸、2,2,4−トリメチルヘキサン二酸、2,8−ジメチルノナン二酸、2,4−ジメチル−4−メトキシカルボニルウンデカン二酸、2,4,6−トリメチル−4,6−ジメトキシカルボニルトリデカン二酸、または8,9−ジメチル−8,9−ジメトキシカルボニルヘキサデカン二酸とを含む長鎖二塩基酸またはこれらのアンモニウム等の塩を単独または混合して溶解する。
長鎖の途中にカルボキシル基を有する二塩基酸またはその塩としては、たとえば1,6−デカンジカルボン酸、5,6−デカンジカルボン酸またはその塩を単独または混合して溶解する。
これらの主溶質の溶解量は、0.5wt%〜10wt%の範囲が好ましく、特に2wt%〜8wt%の範囲が望ましい。溶解量が0.5wt%未満では、コンデンサの特性を改善する効果が少ない。また溶解量が20wt%より多いと、飽和状態に近づくため電解コンデンサの低温特性が悪くなる。溶解量が2wt%〜8wt%の場合には良好なコンデンサ特性が得られる。
またその他の成分として必要に応じてホウ酸アンモニウムやマンニトール、ソルビトール等を溶解する。
本発明の電解液の調合は、溶媒である多価アルコール類に主溶質とホウ酸アンモニウム等のその他の成分を溶解して130℃付近まで加熱し、常温まで冷却後、アンモニアガスを通して電解液のpHを調整することにより行われる。
次に、本発明の実施例について説明する。
まず、溶媒であるエチレングリコール中に、ホウ酸アンモニウム3.5wt%、マンニトール10wt%と表1に記号で示された物質を溶解し、アンモニアガスにより電解液のpHを約6.5調整した。また、実施例並びに比較例に係る電解液について、液温30℃での比抵抗と液温85℃での火花発生電圧を測定し、合わせて表1に示した。
なお、表1中の物質名を示す記号は、それぞれ下記の物質を表す。
A:2−メチルノナン二酸
B:2,4−ジメチル−4−メトキシカルボニルウンデカン二酸
C:2,4,6−トリメチル−4,6−ジメトキシカルボニルトリデカン二酸
D:8,9−ジメチル−8,9−ジメトキシカルボニルヘキサデカン二酸
E:1,6−デカンジカルボン酸
F:5,6−デカンジカルボン酸
Y:側鎖にメチル基と長鎖の両端にカルボキシル基を有する二塩基酸またはその塩
Z:長鎖の途中にカルボキシル基を有するデカンジカルボン酸またはその塩
溶解比=Z溶解量/(Y溶解量+Z溶解量)
Figure 0005689635
表1から明らかな通り、実施例が従来例と比べて、比抵抗と火花発生電圧において遜色ないことがわかる。
また、2000ppm、4000ppmの塩化ナトリウム水溶液を使用して、表1の組成の電解液を、塩素濃度20ppm、40ppmに調整後、定格400wV100μF(φ22×251)のアルミ電解コンデンサを作製した。試作時のエージング条件は、70℃の雰囲気中で400VDC、4h印加した。試料数は各20個とした。
次に、これらのコンデンサについて、110℃で定格電圧印加の高温負荷試験を行い、500hと1000h後解体し、腐食発生数を調べた。その結果を表2に示す。
Figure 0005689635
表2から明らかな通り、比較例ではコンデンサの腐食発生確率が高いが、実施例では腐食発生確率が低く、発明の効果が大きいことがわかる。
また、溶解比:Z溶解量/(Y溶解量+Z溶解量)が0.2から0.6の割合、好ましくは0.3から0.5の割合で含有すると腐食発生確率が低く、発明の効果が大きい。

Claims (1)

  1. 多価アルコール類を主溶媒とする電解コンデンサ用電解液において、側鎖にメチル基と長鎖の両端にカルボキシル基を有する二塩基酸またはその塩Yと、長鎖の端部と途中にカルボキシル基を有する二塩基酸またはその塩Zとの溶解比:Z溶解量/(Y溶解量+Z溶解量)が0.2から0.6の割合で含有することを特徴とする電解コンデンサ用電解液。
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