JP2010129933A - 電解コンデンサの駆動用電解液およびこれを用いた電解コンデンサ - Google Patents
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Abstract
【課題】 低インピーダンスであり、かつ寿命特性に優れた電解コンデンサの駆動用電解液、およびこれを用いた電解コンデンサを提供する。
【解決手段】8.5〜68.5wt%の有機溶媒と、80.0〜20.0wt%の水とからなる混合溶媒に、カルボン酸、またはカルボン酸塩から選択される1種以上の電解質と、1種以上のリン酸化合物と、1,1’−ビス[(4S)−t−ブチル−1,3−オキサゾリン−2−イル]メチレンを溶解したことを特徴とする。
【選択図】なし
【解決手段】8.5〜68.5wt%の有機溶媒と、80.0〜20.0wt%の水とからなる混合溶媒に、カルボン酸、またはカルボン酸塩から選択される1種以上の電解質と、1種以上のリン酸化合物と、1,1’−ビス[(4S)−t−ブチル−1,3−オキサゾリン−2−イル]メチレンを溶解したことを特徴とする。
【選択図】なし
Description
本発明は、電解コンデンサの駆動用電解液(以下、電解液と称す)の改良に関するものであり、低比抵抗化のため電解液中の水分量を増加させた場合においても、電極箔の水和劣化反応を抑制することが可能であり、製品の寿命特性が良好なアルミニウム電解コンデンサの駆動用電解液に関するものである。
コンデンサは一般的な電子部品の1つであり、様々な電気・電子製品において、主として電源回路用やデジタル回路のノイズフィルタ用として広く使用されるものである。
一般に、アルミニウム電解コンデンサは、高純度のアルミニウム箔を電気化学的にエッチング処理して表面積を拡大させた後、ホウ酸アンモニウム水溶液、アジピン酸アンモニウム水溶液等の化成液中で化成処理を行い、エッチング箔表面に酸化皮膜を形成させた陽極箔と、高純度のアルミニウム箔をエッチング処理した陰極箔との間に、セパレータを挿入し巻回して得られたコンデンサ素子に電解液を含浸し、金属製の筒状ケースに収納した後、開口部を弾性ゴムにより封止し、封止した部位を絞り加工することにより構成される。
そして、従来の低圧用電解液にはエチレングリコールを主溶媒とし、これに水分を10%程度添加した混合溶媒やγ−ブチロラクトン溶媒に、電解質としてアジピン酸、安息香酸等のアンモニウム塩を溶解したものが使用されてきた。
近年、電子部品のデジタル化が進む中で、電解コンデンサの低損失、低インピーダンス化への要求が高まっており、電解コンデンサに使用する電解液は、低比抵抗化に向けて開発が進められている。
電解液の比抵抗をさらに低減する手法として、電解液中の水分量を増加させる方法が提案されている(例えば特許文献1、2参照)。
しかしながら、通常、水を多量に含む電解液を用いた電解コンデンサにおいては、電極箔として使用しているアルミニウムが徐々に溶出してアルミニウムイオンが生成する。さらに、このアルミニウムイオンは電解液中の水分と反応し、水酸化アルミニウムとなり箔表面に析出する。この反応が進むことにより、箔劣化が進行して最終的には電解コンデンサの著しい特性悪化を引き起こすことになる。
このような電極箔の劣化に対しては、リン酸添加により抑制効果が認められることがよく知られているが、十分なものではない。
そのメカニズムは、リン酸が電解液中に溶出したアルミニウムイオンと反応してリン酸アルミニウムを形成し電極箔に付着することにより、水酸化アルミニウムの生成を抑制する働きを有するものの、溶出されるアルミニウムイオンによって、次第にリン酸が消費され、最終的には電解液中からリン酸が消失してしまうことにあり、そのために、リン酸添加による抑制効果が十分でない。なお、リン酸を長期的に残存させる目的で添加量を過剰にすると、漏れ電流等の特性が悪化するという問題を有している。
そのメカニズムは、リン酸が電解液中に溶出したアルミニウムイオンと反応してリン酸アルミニウムを形成し電極箔に付着することにより、水酸化アルミニウムの生成を抑制する働きを有するものの、溶出されるアルミニウムイオンによって、次第にリン酸が消費され、最終的には電解液中からリン酸が消失してしまうことにあり、そのために、リン酸添加による抑制効果が十分でない。なお、リン酸を長期的に残存させる目的で添加量を過剰にすると、漏れ電流等の特性が悪化するという問題を有している。
そこで、本発明は低比抵抗で、かつ水分量の多い電解液を使用する場合においても、アルミニウムイオンの錯体化により、電極箔の水和劣化反応を長期的に抑制することを目的としている。
さらに、本発明による電解液を用いることにより、低インピーダンスであり、かつ長寿命を実現した電解コンデンサを提供することを目的としている。
さらに、本発明による電解液を用いることにより、低インピーダンスであり、かつ長寿命を実現した電解コンデンサを提供することを目的としている。
本発明は上記課題を解決するため、種々検討した結果見出されたものであり、1,1’−ビス[(4S)−t−ブチル−1,3−オキサゾリン−2−イル]メチレンの特性に着目し、その特性を電解液に適用しようとするものである。
本発明の電解コンデンサの駆動用電解液は、8.5〜68.5wt%の有機溶媒と、80.0〜20.0wt%の水とからなる混合溶媒に、カルボン酸、カルボン酸塩から選択される1種以上の電解質と、1以上のリン酸化合物と、下式で示される1,1’−ビス[(4S)−t−ブチル−1,3−オキサゾリン−2−イル]メチレンを含むことを特徴とする。
1,1’−ビス[(4S)−t−ブチル−1,3−オキサゾリン−2−イル]メチレンを添加すると、電極箔の水和劣化を抑制でき、電解コンデンサの長寿命化を図ることができる。添加量は、全電解液重量に対して0.05〜5.0wt%の範囲が好ましく、より好ましい範囲は0.1〜3.0wt%である。
有機溶媒としては、プロトン系溶媒と非プロトン溶媒のうちから選択される1種以上の溶媒を使用することができる。プロトン系溶媒の例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等を挙げることができ、その中でもエチレングリコールが好適である。また、非プロトン系溶媒の例としては、γ−ブチロラクトン等のラクトン化合物が挙げられる。
本発明に用いられる電解質としては、カルボン酸およびカルボン酸塩のうちから選ばれる1種以上の電解質を使用することができる。使用できるカルボン酸としては、ギ酸、酢酸、シュウ酸、プロピオン酸、安息香酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸、アゼライン酸、クエン酸であり、カルボン酸塩としてはアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、およびアミン塩が挙げられる。この中でもギ酸、アジピン酸が低比抵抗化と寿命特性の双方を実現する上で好適である。また、カルボン酸の塩としては、アンモニウム塩が好ましい。
本発明に用いられるリン酸化合物としては、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、リン酸モノメチル、リン酸ジメチル、リン酸モノエチル、リン酸ジエチル、リン酸モノプロピル、リン酸ジプロピル、リン酸モノエチレングリコール、リン酸ジエチレングリコール、ホウ酸等が含まれる。
さらに、上記の電解液には、漏れ電流の低減、耐電圧向上、ガス吸収等の目的でコンデンサ駆動用電解液として一般的に使用される種々の添加剤を加えることができる。
添加剤の例としては、グルコース、フルクトース、マンニトール、キシロース、ガラクトース等の糖類、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の高分子化合物、ニトロフェノール、ニトロ安息香酸、ニトロアセトフェノン、ニトロアニソール、ジニトロ安息香酸等のニトロ化合物、シランカップリング剤等を挙げることができる。
添加剤の例としては、グルコース、フルクトース、マンニトール、キシロース、ガラクトース等の糖類、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の高分子化合物、ニトロフェノール、ニトロ安息香酸、ニトロアセトフェノン、ニトロアニソール、ジニトロ安息香酸等のニトロ化合物、シランカップリング剤等を挙げることができる。
本発明の電解液中に含まれる1,1’−ビス[(4S)−t−ブチル−1,3−オキサゾリン−2−イル]メチレンは、アルミニウムイオンをトラップすることが知られており、電解液に添加すると、水溶液中のアルミニウムイオンと反応して、水酸化アルミニウムの生成を抑制することができる。よって、長期的に電極箔の劣化を抑制し、製品の寿命特性を向上することが可能となる。
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。なお、以下に挙げる実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明は以下の内容に限定されるものではない。
[実施例]
実施例に用いる巻回型アルミニウム電解コンデンサの作製方法について以下に述べる。
高純度のアルミニウム箔を電気化学的にエッチング処理して表面積を拡大させた後、アジピン酸アンモニウム水溶液を化成液として化成処理を行い、エッチング箔表面に酸化皮膜を形成させた陽極箔と、高純度のアルミニウム箔をエッチング処理した陰極箔との間に、セパレータを挿入し巻回してコンデンサ用素子を作製した。
そして、このコンデンサ素子に表1記載の電解液を含浸してから、金属製の有底筒状ケースに収納した後、開口部を弾性ゴムにより封止し、封止した部位を絞り加工して、定格6.3V−3300μF(φ10×20mmL)の巻回型アルミニウム電解コンデンサを作製した。
実施例に用いる巻回型アルミニウム電解コンデンサの作製方法について以下に述べる。
高純度のアルミニウム箔を電気化学的にエッチング処理して表面積を拡大させた後、アジピン酸アンモニウム水溶液を化成液として化成処理を行い、エッチング箔表面に酸化皮膜を形成させた陽極箔と、高純度のアルミニウム箔をエッチング処理した陰極箔との間に、セパレータを挿入し巻回してコンデンサ用素子を作製した。
そして、このコンデンサ素子に表1記載の電解液を含浸してから、金属製の有底筒状ケースに収納した後、開口部を弾性ゴムにより封止し、封止した部位を絞り加工して、定格6.3V−3300μF(φ10×20mmL)の巻回型アルミニウム電解コンデンサを作製した。
表1の電解液を使用して、上記定格のアルミニウム電解コンデンサを各10個作製し、静電容量、漏れ電流について初期特性測定後、105℃雰囲気中にてDC6.3V印加試験を行い、3000時間、5000時間経過後に再度これらの特性を測定した。その結果を表2に示す。
表2より明らかなように、1,1’−ビス[(4S)−t−ブチル−1,3−オキサゾリン−2−イル]メチレンを使用した実施例1〜14は、使用していない従来例1〜4よりも、105℃定格電圧印加試験における特性が優れた結果となっている。
従来例1〜4では、1,1’−ビス[(4S)−t−ブチル−1,3−オキサゾリン−2−イル]メチレンが添加されていないため、アルミニウムイオンをトラップすることができず、水酸化アルミニウム生成、リン酸消費を抑制できないことから、3000時間までに弁作動に到っている。
従来例1〜4では、1,1’−ビス[(4S)−t−ブチル−1,3−オキサゾリン−2−イル]メチレンが添加されていないため、アルミニウムイオンをトラップすることができず、水酸化アルミニウム生成、リン酸消費を抑制できないことから、3000時間までに弁作動に到っている。
ここで、1,1’−ビス[(4S)−t−ブチル−1,3−オキサゾリン−2−イル]メチレンを添加した実施例1〜14のうち、添加量が0.1〜3.0wt%の範囲にある実施例1、2、4〜6、9〜11は、添加量0.05wt%の実施例3、8、および添加量5.0wt%の実施例7、12と比べて、アルミニウムイオンのトラップ効果が大であり、105℃定格電圧印加5000時間後でも良好な電気特性を示している。添加量0.05wt%の実施例3、8、および添加量5.0wt%の実施例7、12は、105℃定格電圧印加3000時間までは、アルミニウムイオンのトラップを行うことができ、良好な電気特性を示しているが、5000時間後ではトラップ能力が低下し、弁作動に到っている。
よって、1,1’−ビス[(4S)−t−ブチル−1,3−オキサゾリン−2−イル]メチレンの添加量は0.1〜3.0wt%の範囲がより好ましいことが分かる。
なお、1,1’−ビス[(4S)−t−ブチル−1,3−オキサゾリン−2−イル]メチレンを使用し、リン酸エチレングリコールエステルを添加した実施例13、14においても、上記実施例と同様、良好な結果を得ることができた。
よって、1,1’−ビス[(4S)−t−ブチル−1,3−オキサゾリン−2−イル]メチレンの添加量は0.1〜3.0wt%の範囲がより好ましいことが分かる。
なお、1,1’−ビス[(4S)−t−ブチル−1,3−オキサゾリン−2−イル]メチレンを使用し、リン酸エチレングリコールエステルを添加した実施例13、14においても、上記実施例と同様、良好な結果を得ることができた。
以上のように、本発明によれば、1,1’−ビス[(4S)−t−ブチル−1,3−オキサゾリン−2−イル]メチレンを添加した電解液を用いることにより、低インピーダンスで寿命特性が良好な電解コンデンサを提供することができる。
なお、上記実施例ではカルボン酸塩として、アジピン酸アンモニウム、ギ酸アンモニウムを使用したが、カルボン酸であるアジピン酸とギ酸を使用し、アンモニア水で電解液のpHを調整しても同等の電解液が得られることはいうまでもない。
また、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、先に例示した各種溶質を単独または複数溶解した電解液や、電解コンデンサの駆動用電解液に使用される公知の添加剤を加えた電解液についても上記実施例と同等の効果を得ることができた。
Claims (3)
- 有機溶媒と、水とからなる混合溶媒中に、カルボン酸、またはカルボン酸塩から選択される1種以上の電解質と、1種以上のリン酸化合物と、下式で示される1,1’−ビス[(4S)−t−ブチル−1,3−オキサゾリン−2−イル]メチレンとを含むことを特徴とする電解コンデンサの駆動用電解液。
- 前記1,1’−ビス[(4S)−t−ブチル−1,3−オキサゾリン−2−イル]メチレンを0.1〜3.0wt%含有することを特徴とする請求項1に記載の電解コンデンサの駆動用電解液。
- 請求項1または2に記載の電解コンデンサの駆動用電解液を使用することを特徴とする電解コンデンサ。
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JP2008305766A JP2010129933A (ja) | 2008-11-29 | 2008-11-29 | 電解コンデンサの駆動用電解液およびこれを用いた電解コンデンサ |
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---|---|---|---|---|
JP2017017188A (ja) * | 2015-07-01 | 2017-01-19 | Necトーキン株式会社 | ゲル電解質用組成物ならびにそれを用いたゲル電解質および電解コンデンサ |
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2008
- 2008-11-29 JP JP2008305766A patent/JP2010129933A/ja active Pending
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