JP5689220B2 - 圧電駆動素子及び圧電駆動装置 - Google Patents

圧電駆動素子及び圧電駆動装置 Download PDF

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本発明は、圧電駆動素子及び圧電駆動装置に関し、更に具体的には、圧電体セラミックス層と内部電極とを積層した積層型の圧電駆動素子とそれを利用した圧電駆動装置に関するものである。
圧電アクチュエータは、パルス駆動などでそれ自体が変位する素子である。変位特性を向上させるための一つの手段として、圧電駆動部のセラミックス層を配向させるという手段がある。しかしながら、この手段では、配向させることで変位特性は向上しても、機械的強度が低下するという課題がある。
一方、圧電駆動部の端部における絶縁破壊の発生を抑制し、かつ、機械的強度を適切に保持した積層型圧電アクチュエータを提供するための技術が、下記特許文献1に開示されている。当該特許文献1によれば、アクチュエータは、圧電セラミックス層と内部電極層が交互に積層されてなる圧電駆動部と、圧電セラミックス層同士がその中央部で接合層により接合され、その外周部に圧電セラミックス層同士が不連続となる不連続層が形成されてなる応力吸収部と、圧電不活性な保護層部とを有している。前記接合層の中心から外周までの距離cと内部電極層の中心から外周までの距離aは、0.73≦c/a≦0.95の関係を満たすように設定されている。
特開2006−286774号公報(第1図及び第2図)
上述した特許文献1の技術では、アクチュエータ駆動時に端部に集中する応力により発生する絶縁劣化を抑制するため、圧電駆動部と保護層部の間に応力吸収部を配置しており、該応力吸収部によって応力集中を緩和することで、絶縁劣化を抑制している。しかしながら、前記圧電駆動部は、PZTを主とするセラミックス層であるため、セラミックス粒子が積層方向に配向していることはなく、配向による変位特性の向上は期待できない。また仮に、前記圧電駆動部と保護層部とを配向セラミックス層とした場合は、保護層部の機械的強度の低下を免れることはできないという不都合がある。
本発明は、以上の点に着目したもので、その目的は、変位特性を向上させるとともに、機械的強度を保持することができる圧電駆動素子を提供することである。
前記目的を達成するため、本発明は、圧電体セラミックス層と内部電極とを積層した圧電駆動部と、該圧電駆動部の積層方向両端側に設けられた一対の保護用の圧電体セラミックス層と、前記内部電極と接続する一対の外部電極とを備えた圧電駆動素子であって、前記圧電駆動部の内部電極に挟まれた圧電体セラミックス層のうち、少なくとも一部の層において、前記圧電体セラミックス層のセラミックス粒子はタングステンブロンズ構造であり、圧電体セラミックスの粒子がc軸方向で配向している未焼成シートを焼成することによって、前記圧電体セラミックスの粒子がc軸方向で積層方向に配向しており、前記圧電駆動部の圧電体セラミックス層の配向度が、焼成後において60%以上であり、前記保護用の圧電体セラミックス層では、圧電体セラミックスの粒子がランダム配向している未焼成シートを焼成することによって、圧電体セラミックスの粒子がランダム配向していることを特徴とする。
主要な形態の一つは、前記保護用の圧電体セラミックス層の配向度が、焼成後において5%以下であることを特徴とする他の形態は、前記圧電駆動部の内部電極で挟まれた圧電体セラミックス層が10〜100層であり、かつ、一層あたりの厚みが5〜40μmであることを特徴とする。更に他の形態は、前記保護用の圧電体セラミックス層の厚みが、50〜500μmであることを特徴とする。
本発明の圧電駆動装置は、前記いずれかに記載の圧電駆動素子を利用したことを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
本発明は、圧電体セラミックス層と内部電極とを積層した圧電駆動部の両端側に、保護用の圧電体セラミックス層を設けた圧電駆動素子において、前記圧電駆動部の内部電極に挟まれた圧電体セラミックス層のうち少なくとも一部の層では、前記圧電体セラミックス層のセラミックス粒子はタングステンブロンズ構造であり、圧電体セラミックスの粒子がc軸方向で配向している未焼成シートを焼成することによって、セラミックス粒子がc軸方向で積層方向に配向しており、前記圧電駆動部の圧電体セラミックス層の配向度が、焼成後において60%以上であり、前記保護用の圧電体セラミックス層では、圧電体セラミックスの粒子がランダム配向している未焼成シートを焼成することによって、セラミックス粒子がランダム配向することとした。このため、圧電駆動部のセラミックス粒子の配向性によって圧電特性が向上するとともに、保護用の圧電体セラミックス層のランダム配向により機械的強度を維持できるという効果が得られる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
最初に、図1〜図4を参照しながら本発明の実施例1を説明する。図1(A)は本実施例の圧電アクチュエータの積層構造を示す断面図,(B)は圧電駆動部におけるセラミックス粒子の配向の様子を示す模式図,(C)は保護層におけるセラミックス粒子の配向の様子を示す模式図である。図2は、配向性圧電体セラミックスの製造方法の一例を示す図であり、図3は、本実施例の配向性の積層体と比較例の無配向の積層体の断面及び平面を、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)で撮影した画像である。図4は、圧電駆動部を配向性とした場合と無配向性とした場合の印加電圧と変位量の関係を示す図である。本実施例は、本発明を圧電アクチュエータに適用した例である。
図1(A)に示すように、本実施例の圧電アクチュエータ10は、圧電体セラミックス層12と内部電極14,16を積層した圧電駆動部18と、該圧電駆動部18の両端に設けられており圧電体セラミックスからなる一対の保護層24,26と、外部電極20,22によって構成されている。ここでいう圧電駆動部18の両端とは、前記圧電体セラミックス層12と内部電極14,16の積層方向における両端を示している。本実施例では、前記内部電極14と内部電極16は交互に積層されており、一方の内部電極14が前記外部電極20に接続され、他方の内部電極16が外部電極22に接続されている。前記内部電極14,16や外部電極20,22としては、例えば、銀−パラジウム,パラジウム,銀,銅,白金などの化学的に安定な金属材料が用いられる。
前記圧電駆動部18を構成する圧電体セラミックス層12は、図1(B)に拡大して示すように、セラミックス粒子30が一軸配向,あるいは、それに近い形で積層方向に配向している。すなわち、圧電体セラミックス層12と内部電極14,16の積層方向と、前記圧電体セラミックス層12の結晶配向方向(分極軸方向)が一致している。このような配向性の圧電体セラミックス層12は、例えば、結晶配向の手段として磁場配向を利用することで形成される。なかでも、試料を回転させながら、その回転軸と垂直方向に3.5[T]〜12[T]の強力な磁場を印加することで配向させる手法(以下「回転磁場手法」)によって、磁気不安定軸(分極軸ないしc軸)方向を磁場回転軸方向に揃えることで、c軸方向に結晶配向できることが望ましい。そうすることによって、積層方向に、分極軸であり、かつ磁気不安定軸であるc軸方向を向かせることができる。
本実施例の圧電体セラミックス層12の材料としては、以上のような条件を満たすものとして、例えば、タングステンブロンズ構造を有する化合物を主成分とすることが望ましい。タングステンブロンズ構造を有する化合物としては、例えば、SrNaNb15,BaNaNb15,SrKNb15,BaKNb15,KLiNb15などの化合物が挙げられる。前記タングステンブロンズ構造を有する化合物は、c軸(分極軸)が磁化困難軸であるため、磁場印加方向にc軸を揃えることができないが、回転させることで、回転軸方向,すなわち磁場印加方向と垂直方向に、c軸を揃えることが可能である。
具体的には、図2(A)に示すタングステンブロンズ構造を有する化合物の粉体40を、図2(B)に示すように溶剤に分散してスラリー化する。図2(A)及び(B)に示す状態では、前記粉体40の分極軸(ないしc軸)42は、磁気不安定軸であってランダム配向となっている。次に、図2(C)に示すように、前記スラリーを回転させながら、その回転軸と垂直方向に強力な磁場Bを印加する。これにより、回転軸方向,すなわち磁場印加方向と垂直方向にc軸(分極軸)を揃えるとともにスラリーを乾燥させる。そして、図2(D)に示すように成型し、該成型体44を焼成することによって、図2(E)に示すように、結晶46内の分極軸が一定方向に配向した結晶配向焼結体48が得られる。この結晶配向焼結体48が、前記圧電体セラミックス層12に相当する。
図3(A-1)及び(A-2)には、上述した方法によって形成した圧電体セラミックス層と内部電極層を積層した配向性積層体の断面及び平面のSEM(走査型電子顕微鏡)画像が示されており、図3(B-1)及び(B-2)には、比較例の無配向(ランダム配向)の積層体の断面及び平面のSEM画像が示されている。図3に示す画像の比較により、上述した方法によって形成した圧電体セラミックス層12においては、セラミックス粒子30が積層方向に配列していることが分かる。
以上のような配向性の圧電体セラミックス層12は、例えば、一層当たりの厚みが5〜40μm程度であって、前記圧電駆動部18内に10〜100層程度となるように積層される。なお、前記圧電体セラミックス層12の内部配向組織をX線回折により見積もった配向度Fが、焼成後で60%以上であると良好な配向性を示すため好都合である。前記配向度Fは、例えば、ロットゲーリング法により測定される。ロットゲーリング法は、試料の結晶配向度を測定する方法の一つであって、無配向試料の各結晶面(hkl)からのX線反射強度をI(hkl)とし、それらの合計をΣI(hkl)とする。そのうち、(001)面からのX線反射強度I(001)の合計をΣI(001)として、それらの比P0を下記の数式1により求める。
同様にして、配向試料に対しても、X線反射強度について、ΣI(hkl)及びΣI(001)を求めて、それらの比をPとして、下記数式2により求める。
そして、前記P0及びPを用いて、配向度Fが下記の数式3により求められる。
このように、圧電駆動部18の圧電体セラミックス層12を配向性とすることにより、図3(B-1)及び(B-2)に示すような無配向の場合と比べて、変位が大きくでき、圧電特性を向上させることができる。図4には、圧電駆動部18の圧電体セラミックス層12を配向性にした本実施例と、図3(B-1)及び(B-2)に示すように、圧電体セラミックス層を無配向性(ランダム配向)とした比較例についての印加電圧と変位量の関係を示すグラフが示されている。同図において、横軸は印加電圧[V],縦軸は変位量[nm]を表している。図4の結果からも、圧電駆動部の圧電セラミックス層12を配向性とすることにより、無配向性の場合と比較して変位量が倍以上に大きくできることが確認された。
一方、前記圧電駆動部18の両端側に配置される保護層24,26は、無配向ないしランダム配向の圧電体セラミックスにより形成されている。図1(C)に示すように、保護層24,26を形成する圧電体セラミックスにおいては、セラミックス粒子30はランダム配向となっている。これは、保護層24,26の機械的強度の低下を防止して強度を維持するためである。仮に、前記保護層24,26を構成する圧電体セラミックスが、前記圧電駆動部18の圧電体セラミックス12と同様に配向性を有する場合、積層方向への機械的強度が低下するため、外的負荷に対して壁開しやすくなる。
これに対し、本実施例では、前記保護層24,26の圧電体セラミックスをランダム配向の組織にすることで、配向セラミックス層と比べて機械的強度への耐性が保持され、より信頼性を向上させることができる。また、配向性の圧電体セラミックス層12よりなる圧電駆動部18は、前記保護層24,26により保護される。なお、前記保護層24,26のセラミックス粒子30の配向度は、例えば、焼成後において5%以下とすると、壁開性が小さくなるため好都合である。前記保護層24,26は、例えば、ドクターブレード法などの一般的なシート作製工法を用いて、セラミックス粒子を分散させたスラリーを数μm〜50μmのシートにし、得られたシートを積層後、圧着することで、50〜500μm程度の厚みに形成される。また、セラミックス粒子は一般的な固相法により合成する。このように、保護層24,26の圧電体セラミックスをランダム配向とすることにより、変位によるクラック抑制効果が得られ、大きな機械的強度を保つことができる。
このように、実施例1によれば、圧電体セラミックス層12と内部電極14,16を積層した圧電駆動部18の両端側に保護層24,26を備えた圧電アクチュエータ10において、前記圧電駆動部18の内部電極14,16に挟まれた圧電体セラミックス層12を配向性とし、前記保護層24,26を形成する圧電体セラミックスをランダム配向とした。このため、圧電駆動部18のセラミックス粒子の配向性によって圧電特性が向上するとともに、保護層24,26のセラミックス粒子のランダム配向により機械的強度を維持できるという効果がある。また、前記保護層24,26により、前記圧電駆動部18を保護できるという効果もある。
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例で示した形状,寸法は一例であり、必要に応じて適宜変更してよい。材料についても同様であり、必要に応じて適宜変更してよい。
(2)前記実施例に示した内部電極14,16や圧電体セラミックス層12の積層数も一例であり、同様の効果を奏するように適宜増減してよい。
(3)保護層24,26の厚さも一例であり、必要に応じて適宜変更してよい。
(4)上述した圧電体セラミックス層12や保護層24,26の製造方法も一例であり、同様の効果を奏するように適宜変更してよい。
(5)前記実施例では、内部電極14,16を、一層おきに外部電極20,22に接続することとしたが、これも一例であり、必要に応じて適宜変更してよい。
(6)前記実施例では、圧電体セラミックス層12を全て配向性としたが、これも一例であり、配向性の圧電体セラミックス層12と、ランダム配向の圧電体セラミックス層12を交互に積層して機械的強度の向上を図るようにしてもよい。
(7)前記実施例は、本発明を圧電アクチュエータに適用した例でありが、これも一例であり、本発明の圧電駆動素子は、他の公知の各種の駆動部を有する装置全般に適用可能である。
本発明によれば、圧電体セラミックス層と内部電極とを積層した圧電駆動部の両端側に、保護用の圧電体セラミックス層を設けるとともに、前記圧電駆動部の内部電極に挟まれた圧電体セラミックス層のうちの少なくとも一部の層においては、前記圧電体セラミックス層のセラミックス粒子はタングステンブロンズ構造であり、圧電体セラミックスの粒子がc軸方向で配向している未焼成シートを焼成することによって、セラミックス粒子がc軸方向で積層方向に配向しており、前記圧電駆動部の圧電体セラミックス層の配向度が、焼成後において60%以上であり、前記保護用の圧電体セラミックス層では、圧電体セラミックスの粒子がランダム配向している未焼成シートを焼成することによって、セラミックス粒子がランダム配向することとした。これにより、圧電駆動部のセラミックス粒子の配向性によって圧電特性が向上するとともに、保護用の圧電体のセラミックス層のランダム配向により機械的強度を維持できるという効果が得られるので、圧電駆動素子の用途に適用できる。
本発明の実施例1の圧電アクチュエータを示す図であり、(A)は積層構造を示す断面図,(B)は圧電駆動部におけるセラミックス粒子の配向の様子を示す模式図,(C)は保護層におけるセラミックス粒子の配向の様子を示す模式図である。 前記実施例の配向性圧電体セラミックスの製造方法の一例を示す図である。 前記実施例1及び比較例の積層体の断面及び平面を示す写真である。 圧電駆動部を配向性とした場合(前記実施例1)と無配向性とした場合(比較例)の印加電圧と変位量の関係を示す図である。
符号の説明
10:圧電アクチュエータ
12:圧電体セラミックス層
14,16:内部電極
18:圧電駆動部
20,22:外部電極
24,26:保護層
30:セラミックス粒子
40:粉体
42:分極軸(ないしc軸)
44:成型体
46:結晶
48:結晶配向焼結体

Claims (5)

  1. 圧電体セラミックス層と内部電極とを積層した圧電駆動部と、該圧電駆動部の積層方向両端側に設けられた一対の保護用の圧電体セラミックス層と、前記内部電極と接続する一対の外部電極とを備えた圧電駆動素子であって、
    前記圧電駆動部の内部電極に挟まれた圧電体セラミックス層のうち、少なくとも一部の層において、前記圧電体セラミックス層のセラミックス粒子はタングステンブロンズ構造であり、圧電体セラミックスの粒子がc軸方向で配向している未焼成シートを焼成することによって、前記圧電体セラミックスの粒子がc軸方向で積層方向に配向しており、
    前記圧電駆動部の圧電体セラミックス層の配向度が、焼成後において60%以上であり、 前記保護用の圧電体セラミックス層では、圧電体セラミックスの粒子がランダム配向している未焼成シートを焼成することによって、圧電体セラミックスの粒子がランダム配向していることを特徴とする圧電駆動素子。
  2. 前記保護用の圧電体セラミックス層の配向度が、焼成後において5%以下であることを特徴とする請求項1記載の圧電駆動素子。
  3. 前記圧電駆動部の内部電極で挟まれた圧電体セラミックス層が10〜100層であり、かつ、一層あたりの厚みが5〜40μmであることを特徴とする請求項1又は2記載の圧電駆動素子。
  4. 前記保護用の圧電体セラミックス層の厚みが、50〜500μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の圧電駆動素子。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の圧電駆動素子を利用したことを特徴とする圧電駆動装置。
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