JP5688783B2 - 粘土膜及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、粘土膜及びその製造方法に関する。また、粘土膜で少なくとも一部分が構成された電子ペーパー,基板,及びガスバリア膜に関する。
一般に、多くの化学産業分野において、高温条件下での種々の生産プロセスが用いられている。それらの生産ラインの配管連結部などでは、例えばパッキンや溶接などによって、液体や気体のリークを防止する方策がとられている。これまで、フレキシビリティーに優れたパッキンは、例えば有機高分子材料や石綿等を用いて作られていた。しかしながら、有機高分子材料を用いた場合は、その耐熱性は最も高いテフロン(登録商標)で約250℃であり、これ以上の温度では金属製パッキンを用いなければならない。しかし、金属製パッキンは、有機高分子材料を用いた場合と比較してフレキシビリティーに劣り、パッキンと対向する面への攻撃性が強いなどの問題があった。また、石綿を含有する材料は耐熱性及び耐薬品性に優れるが、石綿の人体に対する毒性が強いことが問題であり、早急な代替材料の開発が望まれている。
一方、近年、液晶ディスプレイをはじめとするフラットパネルディスプレイ(以降はFPDと記す)の製造技術が飛躍的に進歩し、従来のブラウン管では到底なし得ない薄型のディスプレイが現実のものとなった。現在のFPDはほぼ全てガラス基板上にデバイスが形成されており、ガラス基板以外の基板を用いた実用的なFPDは存在しない。その理由としては、ガラス基板が高耐熱性であり、高温形成が必要なディスプレイの駆動回路や部材を形成するのに適していること、線膨張係数が小さく、それら駆動回路や部材に与える応力を抑制でき、配線の破断や部品の特性変動が少ないこと、可視光域で透明なため光を取り出すことが容易であること、さらにガスバリア性が高く、外部からの酸素や水蒸気の進入を阻止するガスバリア材として用いることができ、必要により高真空を保持できること等があげられる。
しかし、ガラス基板は柔軟性がなく、割れやすい。また重量が重く、基板の変形や取り扱いの困難さが問題となっている。また、ガラス基板は、曲げて持ち運ぶ等の用途を想定した、曲げられる電子ペーパーのようなフレキシブルディスプレイには使えず、衝撃に対して割れやすく、落下させた場合にデバイスが損傷しやすいという欠点も持つことから、モバイル用途にはあまり適していない。このような観点から、ガラスと同等の耐熱性、線膨張係数、透明性、ガスバリア性等を有するディスプレイ用の基板やガスバリア膜の実用化が望まれている。
また、ディスプレイ,携帯電話端末,コンピューターといった電化製品を構成する電子部品が実装される回路基板に対して、部品実装の高密度化の要請が高まっている。また、携帯電話端末に代表される回転及び変形が要求される電化製品の増加により、フレキシブル化の要請も高まっている。そのため、フレキシブル回路基板や銅張積層板の需要及び要求も増大している。
フレキシブル回路基板としては、現在の所、ポリエチレンテレフタレート,ポリカーボネート,ポリイミド等の樹脂で形成された基板や、特殊なガラスエポキシ基板が用いられている。ところが、導電性ペーストのような導電性インクを用いて回路配線を印刷や塗布で形成するプリント基板を製造する際には、十分に高い導電率の配線を得るために、導電性インクを塗布した後に一般に300℃以上の高温で焼成する必要があるが、前記のような樹脂で形成された基板を用いたフレキシブル回路基板の場合は、樹脂の耐熱性が低く線膨張係数も一般的に大きいために前述の高温焼成を行うことができず、比較的低い温度で行わなければならない。
しかしながら、低温では導電性インクの焼結が十分進まないため、金属箔や真空蒸着で得られる配線と比較して一般的に導電性能が劣るという問題があった。ポリイミド樹脂は比較的高耐熱性であるが、高価であるため、RFID(Radio frequency identification)タグのようなコストが最重視される用途に用いることは困難である。このような観点から、絶縁性を有しつつ高い耐熱性及び難燃性を有する安価なフレキシブルプリント基板の実用化が望まれている。
他方、粘土は自然界に大量に存在し、安価、人体に無害、燃えない等の特徴を有する鉱物である。また、多くの天然粘土に認められる茶褐色の「土色」は有機物や鉄などの不純物に由来することが多いが、化学合成によってそれらの不純物を含まない無色の粘土を得ることもできる。粘土鉱物は結晶質鉱物と非晶質鉱物とに大別され、結晶質部分は全て「葉状」を意味するフィロケイ酸塩であり、その葉状たる形状ゆえに、基本的に層状構造を有している。すなわち、一般に層状ケイ酸塩と呼ばれる鉱物は、粘土と定義される鉱物の範疇に含まれる。多くの粘土は、酸素(O),ケイ素(Si),アルミニウム(Al)を中心として構成される厚さが約0.2nmから約0.5nmの四面体シートや八面体シートが1〜3層積層し、数十nm〜5μm程度の長軸方向の大きさを持つアスペクト比の大きなシート状の層状無機化合物からなる。
このような層状ケイ酸塩における四面体シートや八面体シートを、もう少し詳細に述べる。四面体シートは、Siに4つのOが配位してSiOの四面体を形成し、この四面体がその3つのOを共有して六角の網状につながることで形成される。場合によっては、SiがAlに代わりAlOの四面体を形成することもある。それ以外にも、鉄(Fe)等も四面体を作ることがある。これに対して八面体シートは、Alに6つの水酸基(OH)又はOを配位して形成されており、Alの代わりにマグネシウム(Mg)やFeなどでも形成されることがある。また、四面体シートにおいてSiがAl等に置き換わったり、八面体シートにおいてAlがMg等に置き換わること等により、シートの電荷に過不足が発生し、シートが永久電荷を帯びる場合が多い。四面体シートや八面体シートに人工的に上記以外の元素を制御しつつ導入することも可能であり、それにより磁気特性や光学特性などの様々な物性を変化させる試みも行われている。
このようなシートによって、あるいは、これらシートが積層して結合することによって、様々な層状無機化合物が生成する。本発明では、このシートが結合した単位層を粘土結晶と定義する。例えば、四面体シートのみを単位層とする粘土結晶からなるものとしては、一般に層状ポリケイ酸と呼ばれる一連の鉱物(例えばマガディアイト)をあげることができる。これに対して、正の電荷を帯びた八面体シートと八面体シートとの間に炭酸イオン等の負イオンを有することにより、ハイドロタルサイト類と呼ばれる粘土鉱物が形成されることが知られている。
四面体シートと八面体シートとが1:1で結合し積層することによって鉱物としての単位層である粘土結晶が形成されている粘土鉱物は一般にカリオン鉱物と呼ばれ、カリオナイト,ハロイサイト等が有名である。これに対して、四面体シートと八面体シートとが2:1で結合し積層して(すなわち四面体シート−八面体シート−四面体シート)単位層である粘土結晶が形成されている粘土鉱物には、パイロフィライト,タルク,スメクタイト族粘土,バーミキュライト,雲母粘土鉱物等がある。特にスメクタイト族に属する粘土(例えばモンモリロナイト,サポナイト,ヘクトライト,スチーブンサイト等)は、層間に無機陽イオンを有する一般的なものの場合は、水やアルコールのような高極性溶媒(特に水)に対して均一に分散させることが可能であり、高極性溶媒中で単位層1枚1枚にまでばらばらに分散させることが可能であると言われている(例えば非特許文献1を参照)。
上記のような粘土の利用方法の1つとして、樹脂に粘土を少量(一般的には約5質量%以下)添加したナノコンポジット材料について幅広い研究がなされ、一部実用化されている(例えば非特許文献2を参照)。それら粘土を少量添加したナノコンポジット材料の系においては、強度や難燃性の向上効果、もしくはガスバリア性の向上効果が認められている。
しかしながら、それらのナノコンポジット材料においては粘土の割合が少量であるため、本質的にガスバリア性や難燃性は大きくは向上しなかった。例えばガスバリア性をとってみると、粘土の添加によってガスの透過率が数分の一程度になる事例もあるが、一桁以上ガスバリア性が向上する事例はほとんどない。また、ガスが透過する際の気体の移動経路を長くしてガスバリア性を向上させる目的から、結晶サイズの大きな天然モンモリロナイトや合成雲母を用いる場合が多いが、この場合は、天然モンモリロナイト由来の黄色い着色や、合成雲母の大きなサイズ由来の光の散乱等の要因で、ディスプレイ等にも使えるようなヘイズ(曇度)が小さく無色で透明性の高い膜を得ることは困難であった。同様に、粘土の添加量が少ない場合には、ガスバリア性以外の他の物性、例えば耐熱性や温度変化時の寸法安定性を大幅に向上させることは難しく、高耐熱で寸法安定性に優れる粘土の本質的な特性が十分生かされているとは言い難いものであった。
ガスバリア性を向上させ、且つ、光の散乱を抑制して透明性を上げるためには、粘土結晶の層を密に且つ高度に配向させたナノコンポジット体を形成することが重要と考えられる。これにより、寸法安定性も向上すると考えられる。従来、例えば、粘土の分散液をガラス板の上に広げ、静置,乾燥することにより、粒子の配向の揃った膜が形成することが知られており、この膜形成により、X線回折法の定方位試料が調整されてきた(非特許文献3を参照)。また、ラングミュアーブロジェット法(Langmuir−Blodgett Method)を応用した粘土薄膜の作製が行われている(例えば非特許文献4を参照)。しかし、この方法では、粘土薄膜は、ガラスなどの材料でできた基板表面上に形成されるもので、自立膜としての強度を有する粘土薄膜ではなかった。
さらに、従来、機能性粘土薄膜等を調整する方法が、種々報告されている。例えば、ハイドロタルサイト系層間化合物の水分散液を膜状化して乾燥することからなる透明な粘土膜の製造方法(特許文献1を参照)、層状粘土鉱物と燐酸又は燐酸基との反応を利用し、その反応を促進させる熱処理を施すことにより層状粘土鉱物が持つ結合構造を配向固定した層状粘土鉱物薄膜の製造方法(特許文献2を参照)、スメクタイト系粘土鉱物と2価以上の金属の錯化合物を含有する皮膜処理用水性組成物(特許文献3を参照)などをはじめ、多くの事例が存在する。しかし、これらの先行文献における膜状の粘土形態物は全て何らかの支持体の上に形成されたものであり、自立膜として利用可能な機械的強度を有し、粘土粒子の積層を高度に配向させた粘土配向膜ではなかった。
また、粘土を用いた透明な膜としては、合成サポナイト又は合成ヘクトライトの水分散液をフィルムにコーティングして液晶ディスプレイの位相差フィルムとした例等がある。この透明膜は、合成サポナイト又は合成ヘクトライトが有する粘土結晶のシート面内方向とシート厚み方向との屈折率の大きな差を効果的に利用することにより、光の進行に対する位相差が付与されている。このような透明膜の中には、支持体上に形成した粘土膜を剥離して得られたものも一部ある(特許文献4を参照)。
しかし、特許文献4に記載の支持体から剥離して得た粘土膜の中で、唯一自立膜として利用可能な機械的強度を有すると推定される粘土膜に含まれる粘土の量は約47質量%であり、半分以上がポリマー等の添加剤からなる。よって、粘土を主体とする膜とは言い難く、ガスバリア性等が十分ではないと推定される。また、粘土の量を増やして厚い膜を形成すると、膜の面内方向と厚み方向との位相差が大きくなりすぎてしまい、液晶ディスプレイ用の位相差フィルムとしての好適性を失ってしまうため、自立性を有するような厚い膜を作る際には粘土の割合を減らさざるを得ない必然性があった。
さらには、透明なポリイミドと疎水性粘土とからなる、高強度で耐水性のある透明粘土膜も開発されている。この疎水性粘土は、水に分散するスメクタイト族の親水性粘土が備える無機イオンを有機アンモニウム塩等に交換して、有機溶媒への分散性を向上させた疎水性粘土である(特許文献5を参照)。この粘土膜は前述の特許文献4に記載の粘土膜とは異なり、水に触れても溶解することがない。
しかしながら、特許文献5には、粘土の含有量を20質量%未満にしないと製造工程で粘土が部分的に凝集すると記載されている。その結果、ヘイズが増大して透明とは言い難い状態(ヘイズ値で50%以上)になるとともに、靭性の低下も顕著になることが示されている。すなわち、これらは従来の粘土を少量添加したナノコンポジット体と同等のものであり、粘土を主体とすることによってガスバリア性や寸法安定性を大きく高めた膜とは言い難いものであった。
そのような状況の中、本発明者らは、粘土結晶の層を密に且つ高度に配向させた粘土配向膜の作製を種々試み、その過程で、粘土粒子が配向した、自立膜として使用できる強度を有する粘土膜が、下記のような方法により得られることを見出した。すなわち、粘土分散液を調整し、均一な分散液を得て、この分散液を水平に静置して粘土粒子を沈積させるとともに、分散媒である液体を種々の固液分離方法(例えば遠心分離、ろ過、真空乾燥、凍結真空乾燥、又は加熱蒸発法)で分離し、膜状に形成した後に、これを支持体から剥離する方法である(特許文献6を参照)。
また、粘土のみではなく、少量の添加剤を粘土分散液に加えた粘土含有液を用いることによって、粘土膜の柔軟性や強度を高めることができること(特許文献7を参照)、粘土含有液の固形比を高めた粘土ペーストを用いることにより、粘土膜を短時間で製造することができること(特許文献8を参照)、さらに合成粘土を用いること等により、粘土を主体とする着色のない可視光領域で透明な粘土膜を作製できることを見出した。
そして、粘土を主とし且つ粘土結晶の層を密に且つ高度に配向させた粘土膜が、従来の粘土の割合が少ないものと比較して、(1)高耐熱性を有する、(2)酸素や水素等の無機ガスに対して高いガスバリア性を有する、(3)膜にピンホールがない、(4)柔軟性を有する、(5)耐薬品性を有する、(6)線膨張係数が低い、(7)難燃性を有する、(8)絶縁性を有する、といった特徴を共通して保有することを確認し、前述したパッキンを構成する材料や、前述したディスプレイ用部材、フレキシブル回路基板等の電子材料用途に好適であることを見出した。
しかしながら、従来の方法では、粘土分散液に添加剤を入れて混合すると、添加剤によって粘土が凝集してしまう場合があった。あるいは、粘土分散液の粘度が急速に上昇して粘土分散液中に添加剤が均一に分散せず、粘土分散液中に不均一な凝集体が発生する場合や、粘土が凝集して粒子状に析出し、得られた粘土膜が不均一になってしまう場合もあった。さらに、粘土を好適に分散させる分散溶媒に対する添加剤の溶解性や分散性が低い場合にも、同様に添加剤が十分均一に分散せず、上記と類似の問題が発生する場合があった。その結果、透明な粘土膜においては透明性の低い領域が面内にまだらに生じたり、粒子状に凝集した粘土や添加剤が光を散乱させたりして、ヘイズが増大するなどの問題が発生するため、添加剤の添加により粘土膜の物性を向上させたくとも、添加剤の種類や添加量が制限される場合があった。
また、粘土膜における粘土の割合を大きくすることにより粘土結晶の層が緻密且つ高度に配向してくると、粘土膜中に残存した気体成分が粘土膜から抜け出ることが困難になってくることが分かってきた。すなわち、粘土含有液に混入していた気体成分由来の気泡(空隙)が粘土膜中に含まれている場合には、急速に加熱すると気泡が急膨張して粘土膜の表面に円形の膨れ上がりを発生させ粘土膜を破壊するという問題や、透明な粘土膜においては空隙が光の内部散乱の原因となって粘土膜が曇りヘイズが大きくなるという問題があった。
粘土膜中に残存した気体成分は粘土含有液中に含まれる気体成分に由来するため、粘土含有液中の気体成分を十分除去した後に、支持体上で膜状に形成し乾燥して粘土膜を得ることが重要と考えられた。特に、粘土の割合が多い粘土膜を作製する場合は、すなわち粘土分散液において粘土の割合が多い場合は、粘土由来の粘性やチクソトロピー性が顕著に発現するため、粘土分散液の流動性が低下してそれらの気体成分を除去することが困難になる。よって、粘土含有液中の気体成分を減少させることは、粘土の割合が多い粘土膜の製造には重要な課題であり、その効果的な手法の開発が要求されていた。
さらに、粘土粒子を溶媒に分散させる方法としては一般に分散装置等で振とうする方法が用いられるが、特に固形分濃度が高い場合には分散装置で長時間振とうする必要があった。また、粘土の液性限界に束縛される粘土分散液の濃度には一般に上限があるため、粘土分散液の固形分濃度を液性限界で設定される値以上に高めることは困難であった。
また、従来の粘土と添加剤とからなる透明な粘土膜は、大気中に長時間放置しておくとヘイズが増大し、粘土膜が曇って透明性が低下していく場合があった。このヘイズの経時による増大は、粘土膜の表面の凸凹が時間とともに増大していくことにより生じる。
ヘイズを低下させ粘土膜の透明性を向上させるために、表面を研磨して平滑化したり、透明樹脂のような粘土とは異なる組成の層を付与して粘土膜を形成する等の検討も行われたが、平滑化はナノオーダーの精度で行う必要があるうえ、粘土膜の強度及び耐久性の問題等があるため、物理的な研磨は困難であった。また、前記付与層の耐熱温度が低いために粘土膜の耐熱性が大きく低下したり、温度変化に対する線膨張係数が粘土膜のそれとは異なるために膜が反ったり、応力で粘土膜に欠陥が発生する等の問題が発生する場合があった。このように、樹脂のような粘土とは異なる組成の層を付与する方法には、問題が多かった。
さらには、簡便で一般的な手法である加熱蒸発法により溶媒を除去して粘土膜を作製する場合には、溶媒の蒸発に伴い粘土分散液が固化して乾燥していく過程で体積収縮が発生するため、粘土膜には前記体積収縮に伴う応力が作用する。したがって、粘土膜の強度がこの応力に耐えられない場合は、乾燥過程で粘土膜が割れてしまう場合があるという問題があった。
そこで、本発明は、前述のような従来技術が有する問題点を解決し、粘土や添加剤が均一に分散し、割れ,クラック等の欠陥が発生しにくく、自立膜として利用可能な強度を有する粘土膜及びその製造方法を提供することを課題とする。また、それに加えて、光線透過率が高く且つヘイズが小さく、大気中に放置してもヘイズの経時による増大が生じにくい透明な粘土膜及びその製造方法を提供することを併せて課題とする。さらに、このような粘土膜を備えた電子ペーパー,基板,及びガスバリア膜を提供することを併せて課題とする。
日本国特許公開公報 平成6年第95290号 日本国特許公開公報 平成5年第254824号 日本国特許公開公報 2002年第30255号 日本国特許公報 第3060744号 日本国特許公開公報 2006年第37079号 日本国特許公開公報 2005年第104133号 日本国特許公開公報 2005年第313604号 日本国特許公開公報 2006年第265088号 須藤談話会編,「粘土科学への招待−粘土の素顔と魅力−」,日本国,三共出版,p.6(2000) 中條澄編,「ポリマー系ナノコンポジットの製品開発」,日本国,フロンティア出版,p.25〜90(2004) 白水晴雄,「粘土鉱物学−粘土科学の基礎−」,日本国,朝倉書店,p.57(1988) 梅沢泰史,「粘土科学」,日本国,第42巻,第4号,218〜222(2003)
前記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明の粘土膜の製造方法は、粘土を溶媒に分散させた粘土分散液と、添加剤を溶媒に分散又は溶解させた添加剤含有液と、をそれぞれ調製し、前記粘土及び前記添加剤の合計量中の前記添加剤の割合が0質量%超過50質量%以下となるように前記粘土分散液と前記添加剤含有液とを混合して粘土含有液を得る粘土含有液調整工程と、この粘土含有液を支持体の表面に配した後に前記溶媒を除去して乾燥する乾燥工程と、を有することを特徴とする。
また、本発明の粘土膜の製造方法は、粘土を溶媒に分散させた粘土分散液と、添加剤を溶媒に分散又は溶解させた添加剤含有液と、をそれぞれ調製し、前記粘土及び前記添加剤の合計量中の前記添加剤の割合が0質量%超過30質量%以下となるように前記粘土分散液と前記添加剤含有液とを混合して粘土含有液を得る粘土含有液調整工程と、この粘土含有液を支持体の表面に配した後に前記溶媒を除去して乾燥する乾燥工程と、を有することを特徴とする。
このような本発明の粘土膜の製造方法においては、前記粘土含有液に含まれる気体を減少させる脱気工程を有することが好ましい。また、前記乾燥工程により得られた乾燥物を前記支持体から剥離する剥離工程を有していてもよい。
また、前記粘土含有液調整工程においては、常温よりも高い温度で前記粘土分散液と前記添加剤含有液とを混合して前記粘土含有液を得ることが好ましい。
さらに、前記粘土含有液を常温よりも高い温度とするとともに減圧下に置き、前記粘土含有液に含まれる気体を減少させることが好ましく、前記粘土含有液を常温よりも高い温度とするとともに減圧下で撹拌することにより、前記粘土含有液に含まれる気体を減少させることがより好ましい。
さらに、本発明の粘土膜の製造方法においては、前記支持体は柔軟性を有していてもよく、その場合には、前記支持体が変形可能な状態で乾燥した後に前記乾燥物を前記支持体から剥離することが好ましい。前記支持体は、樹脂製フィルムであってもよい。また、前記支持体には剥離容易化処理が施されていてもよいし、撥水加工処理が施されていてもよい。
さらに、本発明の粘土膜の製造方法は、前記乾燥工程により得られた乾燥物の表面に、前記粘土を膨潤させる液体又は前記添加剤を溶解若しくは分散させる液体を配し、再乾燥させる再乾燥工程を有していてもよい。このとき、前記液体に浸漬することにより前記乾燥物の表面に前記液体を配してもよいし、前記液体を吹き付けることにより前記乾燥物の表面に前記液体を配してもよい。
さらに、前記再乾燥工程においては、表面に前記液体を配することにより少なくとも表面近傍部分が膨潤した前記乾燥物を、表面が平滑な平滑部材に接触させて、その表面を平滑化した後に、前記液体を再乾燥させてもよい。この平滑部材は柔軟性を有して変形可能であってもよく、その場合には、前記乾燥物が前記平滑部材に接触している状態で前記液体を再乾燥させることが好ましい。
さらに、本発明の粘土膜の製造方法においては、前記粘土は、水に対する親和性が高く水に分散しやすい親水性粘土であることが好ましい。また、前記粘土は、有機溶媒に対する親和性が高く有機溶媒に分散しやすい疎水性粘土であってもよい。疎水性粘土である場合は、親水性粘土が備える無機イオンを有機イオンに交換することにより有機溶媒への親和性及び分散性を向上させた疎水性粘土が好ましく、前記有機イオンが、アンモニウムイオン,フォスフォニウムイオン,イミダゾリウムイオンの少なくとも1つを含むことが好ましい。
さらに、本発明の粘土膜の製造方法においては、得られる粘土膜が透明であってもよい。
さらに、本発明の粘土膜は、前述のような本発明の粘土膜の製造方法で製造された粘土膜であって、層状の粘土結晶が膜厚方向に積層してなることを特徴とする。そして、30℃から250℃までの平均の線膨張係数が10ppm以下であることが好ましい。
また、本発明の粘土膜は、ヘイズが5%以下であるとともに、全光線透過率が85%以上で、400nm以上800nm以下の波長範囲における光線透過率が85%以上95%以下であることが好ましい。ヘイズは、ヘイズが2%以下であることがより好ましく、ヘイズが1%未満であることがさらに好ましい。さらに、24℃,1気圧,湿度45%の環境下におけるヘイズの経時変化が−2%以上2%以下であることが好ましい。さらに、本発明の粘土膜は、膜厚が15μmよりも厚いことが好ましい。
さらに、本発明の電子ペーパーは、前述のような本発明の粘土膜の製造方法により得られた粘土膜、又は、前述のような本発明の粘土膜で、少なくとも一部分が構成されたことを特徴とする。
さらに、本発明のフレキシブル基板は、前述のような本発明の粘土膜の製造方法により得られた粘土膜、又は、前述のような本発明の粘土膜で、少なくとも一部分が構成されたことを特徴とする。
さらに、本発明のフレキシブルプリント基板は、前述のような本発明の粘土膜の製造方法により得られた粘土膜、又は、前述のような本発明の粘土膜で、少なくとも一部分が構成されたことを特徴とする。
さらに、本発明の基板は、非発光有機半導体又はアモルファス無機半導体を備える電子デバイスが実装され、ガスバリア性を有する基板であって、前述のような本発明の粘土膜の製造方法により得られた粘土膜、又は、前述のような本発明の粘土膜で、少なくとも一部分が構成されたことを特徴とする。
さらに、本発明のガスバリア膜は、非発光有機半導体又はアモルファス無機半導体を備える電子デバイスをガスから保護するガスバリア膜であって、前述のような本発明の粘土膜の製造方法により得られた粘土膜、又は、前述のような本発明の粘土膜で、少なくとも一部分が構成されたことを特徴とする。
粘土膜の紫外可視吸収スペクトルを示す図である。 透明な粘土膜のX線回折スペクトルを示す図である。 透明な粘土膜のTEMによる断面写真を示す図である。 粘土膜のSEMによる断面写真を示す図である。 粘土膜のX線回折スペクトルを示す図である。 粘土膜のTEMによる断面写真を示す図である。 粘土膜のSEMによる断面写真を示す図である。
本発明の粘土膜は、粘土と添加剤とからなる膜であるが、粘土及び添加剤の合計量中の添加剤の割合は、0質量%超過50質量%以下である必要があり、0質量%超過40質量%以下であることが好ましい。そして、粘土膜としてより好適な特性を得るためには、添加剤の割合は0質量%超過30質量%以下であることがより好ましく、0質量%超過30質量%未満であることがさらに好ましく、0質量%超過15質量%以下であることが特に好ましく、0質量%超過10質量%以下であることが最も好ましい。
添加剤の割合が多いと、粘土の単位層の間に入る添加剤の量が多くなり粘土結晶の層の間が大きく開く影響や、さらには粘土結晶の配向が乱れる影響により、透明性の低下、添加剤の熱分解による耐熱性の低下、添加剤を通してのガス透過によるガスバリア性の低下、温度変化による粘土膜の寸法変化量の増大等の種々の不都合が生じて、物性によっては従来のナノコンポジットと大差がなくなってしまう場合もある。添加剤の割合が50質量%以下であれば(特に30質量%以下であれば)、粘土の割合が少ない従来のナノコンポジットとは一線を画す特徴(例えば、低い線膨張係数や高いガスバリア性)を得ることができる。
一般に、粘土膜は、粘土のみ又は粘土と添加剤とを含有する粘土含有液を支持体の表面に配し、乾燥させることによって得られる。粘土膜における添加剤の役割は発現させたい機能や用途によって様々であるが、粘土のみで自立膜として利用可能な強度を得ることは一般には困難であるので、添加剤には多かれ少なかれ強度付与としての機能が求められる。粘土結晶の平均アスペクト比が大きい場合には、例えば平均アスペクト比が300以上の天然モンモリロナイトを用いた場合には、添加剤無しでも自立膜として利用可能な強度を有する粘土膜を得ることができるが、得られた粘土膜は脆く、添加剤を用いることが極めて好ましい。本発明においても、添加剤の第一義的役割は、粘土膜の強度を向上させることにある。
したがって、強度向上効果を有する添加剤(例えばポリマーや重合性モノマー)の割合を増やせば、通常は粘土膜の強度も向上する。従来のナノコンポジット体のように、添加剤の割合が多い場合(50質量%超過)には、粘土結晶の配向、添加剤のインターカレーション(粘土結晶の層間に目的物質が挿入されていること)、粘土結晶の層剥離の進行度や分散の程度、粘土含有液に混入した気体成分の除去等の要素を一部考慮せずとも、添加剤による強度付与効果等により、支持体から剥離可能な程度の強度や一定の透明性を有していると推定されるものもあった。
しかし、粘土の割合が多い粘土膜を作製する場合、特に粘土の割合が70質量%以上である場合は、従来知られている方法では粘土や添加剤が粘土含有液中で十分均一に分散しなかったり、粘土含有液中に混入した気体成分が十分除去できなかったりするため、得られた粘土膜が不均一になってしまう場合があった。その結果、粘土膜の機械的強度やフレキシビリティーが不十分となる場合があった。また、添加剤の投入や粘土分散液における固形分濃度の増大により凝集が発生し、透明な粘土膜においては透明性が不十分となる場合があった。このような場合は、より透明性を向上するために、表面平滑化層等の粘土とは異なる組成の層を付与する等の対策を施すことが考えられるが、製造工程の増加や、前記付与層を設けることにより耐熱性が低下するなどの問題が発生するおそれがあった。また、そのような対策を施しても、粘土膜の内部に発生した不均一構造による物性の低下を避けることはできない。
そこで、本発明者らは、上記のような問題点を解決するために鋭意検討した結果、粘土や添加剤が均一に分散した粘土膜を得ることができる粘土膜の最適な製造方法を見出した。すなわち、本発明の粘土膜の製造方法は、(a)粘土を溶媒に分散させた粘土分散液と、添加剤を溶媒に分散又は溶解させた添加剤含有液と、をそれぞれ調製し、前記粘土及び前記添加剤の合計量中の前記添加剤の割合が0質量%超過50質量%以下となるように前記粘土分散液と前記添加剤含有液とを混合して粘土含有液を得る粘土含有液調整工程と、(b)この粘土含有液を支持体の表面に配した後に前記溶媒を除去して乾燥する乾燥工程と、を有することを特徴とする。
また、粘土や添加剤の種類を適切に選択することにより、得られる粘土膜を透明とすることができる。なお、本発明において透明とは、全光線透過率が70%以上、ヘイズが5%以下、400nm以上800nm以下の波長範囲における光線透過率が75%以上95%以下であることを意味する。しかしながら、この透明性は最低限のものであり、全光線透過率は80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、88%以上であることがさらに好ましい。また、ヘイズの値は3%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、1%未満であることがさらに好ましい。さらに、400nm以上800nm以下の波長範囲における光線透過率は、80%以上95%以下であることが好ましく、85%以上95%以下であることがより好ましい。なお、ここでいう全光線透過率及びヘイズとは、日本工業規格に規定されたプラスチック透明材料の全光線透過率の試験方法JIS K 7361、プラスチックの光学的試験方法JIS K 7105、プラスチック透明材料のヘイズの求め方JIS K 7136に準拠して求めたものである。
従来、本発明の粘土膜の製造方法によって得られるような粘土膜を製造する際は、粘土の割合が70質量%以上の場合でも、粘土を溶媒に分散させた粘土分散液に添加剤を直接添加して粘土含有液を調製していた。しかし、この方法では、粘土分散液における粘土の固形分濃度が高くなればなるほど粘土分散液の粘度が上昇し、またチクソトロピー性が顕著になって粘土分散液の流動性が著しく低下するため、添加剤を粘土含有液に均一に分散又は溶解させることは困難である。特に、添加することによって粘土含有液を増粘させる作用のある添加剤(例えばポリアクリル酸塩)の場合は、より困難である。
これに対して本発明の方法は、粘土を溶媒に分散させた粘土分散液と、添加剤を溶媒に分散又は溶解させた添加剤含有液と、を別々に調製し、両者を混合して粘土含有液を調製するため、溶媒への溶解過程や分散過程で増粘効果を示す添加剤や、粘土を分散させるのに用いる溶媒への分散性又は溶解性が低い添加剤であっても、粘土含有液中で均一に分散させることが可能である。そのため、使用可能な添加剤の種類や添加量がほとんど制限されない。また、粘土と添加剤とをそれぞれ十分に分散又は溶解させた状態で混合するため、添加剤による作用で粘土が凝集して不均一な塊を形成することが抑制される。
この方法においては、粘土及び添加剤を、常温よりも高い温度で溶媒に分散又は溶解させることにより粘土分散液及び添加剤含有液を調製することが好ましい。そうすれば、添加剤をより均一に且つ高濃度に分散又は溶解させることができる。また、粘土含有液は、粘土分散液と添加剤含有液とを常温よりも高い温度で混合することにより得ることが好ましい。そうすれば、粘土がより均一に分散するとともに添加剤がより均一に分散又は溶解し、且つ、高い固形分濃度の粘土含有液を調製することができる。
粘土や添加剤を常温よりも高い温度で溶媒に分散又は溶解させて粘土分散液及び添加剤含有液を調製する方法としては、粘土又は添加剤を溶媒に加え、ヒーター,温風,湯せん等の手法で加熱した後に攪拌,振とうにより混合する方法、上記手法で加熱しながら攪拌,振とうにより混合する方法、超音波分散装置,ホモジナイザー等でエネルギーを与え添加剤含有液自体を発熱させながら攪拌,振とうにより混合する方法があげられる。
本発明において粘土分散液と添加剤含有液とを混合する際には常温で混合しても良いが、粘土分散液と添加剤含有液とを常温よりも高い温度で混合して粘土含有液を調製する方法は均一な粘土含有液を作製するという点、さらには粘土含有液の固形分濃度を上げるという点からより好ましい。そのような方法としては、粘土分散液と添加剤含有液とを混合して、ヒーター,温風,湯せん等の手法で加熱した後に攪拌,振とうにより混合する方法、上記手法で加熱しながら攪拌,振とうにより混合する方法、超音波分散装置,ホモジナイザー等でエネルギーを与え粘土含有液自体を発熱させながら攪拌,振とうにより混合する方法があげられる。
なお、粘土分散液中に含まれる粘土は1種類でも良いし、異なる2種類以上の粘土を混ぜ合わせて用いても良い。同様に、添加剤含有液に含まれる添加剤は1種類でも良いし、異なる2種類以上の粘土を混ぜ合わせて用いても良い。さらには、粘土の種類等が異なる2種類以上の粘土分散液を用いて粘土含有液を作製しても良いし、添加剤の種類等が異なる2種類以上の添加剤含有液を用いて粘土含有液を作製しても良い。もしくは、複数の種類の粘土分散液と複数の種類の添加剤含有液をそれぞれ混合して粘土含有液を作製しても良い。
このように、常温よりも高い温度で各液を調整することで、粘土や添加剤がより均一に分散した粘土含有液が得られるので、凝集物の発生を押さえ、粘土膜形成工程で粘土結晶の層の間に添加剤を平均的に挿入(インターカレート)することができ、結果として十分な機械的強度やフレキシビリティーを有する粘土膜を製造することができ、透明な粘土膜においては十分な透明性を付与することができる。
また、粘土と添加剤とをそれぞれ常温よりも高い温度で溶媒と混合することにより、粘土含有液の固形分濃度を高くすることが可能である。粘土含有液の固形分濃度を高くすれば、乾燥時間を短縮したり厚い粘土膜を製造することが容易となる。さらに、低粘度の粘土含有液は、支持体の表面のうち重力方向に対して直角をなす水平面にしか配することができず、傾斜面に配すると流れ落ちてしまうが、粘土含有液の固形分濃度を高くしてペースト状とすれば、傾斜面に対しても配することができる。また、流動性が低下することで支持体から粘土含有液が流れ出すことを防ぐことができるので、支持体に流れ出し防止のための工夫を施す必要がない(例えば枠などを設ける必要がない)。
本発明においては、粘土分散液,添加剤含有液,粘土含有液の調製における混合に、軸の周りを公転しながら自転する容器を使用するという方法を用いることができる。すなわち、粘土と添加剤とからなる粘土膜を製造するに際して、粘土分散液,添加剤含有液,粘土含有液の調製のうち少なくとも一つを、前記容器を用いて行って粘土含有液を調製するという方法である。
粘土分散液,添加剤含有液,粘土含有液の調製における混合方法は、粘土や添加剤を十分に分散させることが可能であれば特に限定されるものではないが、前記容器を用いる方法は、強力な攪拌力と脱気能力により、分散又は溶解を短時間で行うことができるばかりでなく、液性限界を超えゲル化した状態でも攪拌することができるため、高い固形分濃度の粘土含有液を得るのに極めて好適である。
特に、容器内を真空等の減圧状態とし、粘土含有液を減圧下で撹拌すれば、混合と同時に真空脱気を行うことができる。よって、固形分濃度が高く高粘度であるため混入した気体成分を減少させることが困難な粘土含有液の脱気を、十分に且つ効率良く行うことができる。
なお、前述の方法を複数を組み合わせた方法で、粘土膜の製造を行ってもよい。
本発明の製造方法で製造された粘土膜において、添加剤の割合が30質量%以下である場合には、気泡(空隙)が混入していると、加熱乾燥時に気泡が膨張して粘土膜を破壊したり、透明膜においては光線の散乱等により透明性が低下する等の問題が生じるおそれがある。また、一般的には粘土含有液は固形分濃度が高いほど粘度が上昇し、またチクソトロピー性が強くなるため、攪拌を停止すると流動性が失われる傾向が強くなる。その結果、粘土含有液に混入した気体成分を除去することが困難となってくる。実用的な乾燥速度が得られる固形分濃度の粘土含有液においては特にこの傾向が強く、粘土含有液に混入した気体成分は何らかの除去工程を通さないと減少させることは困難である。
また、粘土の割合が高い粘土膜においては粘土結晶が緻密に配向して積層するためガスバリア性が向上し、この結果、成膜時において粘土膜の内部に残留した気泡の除去が困難になる。したがって、粘土含有液に含まれる気体成分を十分除去する工程が極めて重要であり、粘土の割合が高い粘土膜ではほぼ必須の工程となる。
さらに、粘土の割合が高い粘土膜に自立膜として利用可能な強度を付与するためには、ある程度以上の膜厚が必要となる。粘土膜の厚さは、10μmよりも厚いことが好ましく、15μmよりも厚いことがより好ましく、20μmよりも厚いことがさらに好ましく、30μmよりも厚いことが特に好ましく、50μmよりも厚いことが最も好ましい。これは、自立性が不要で、数μm以下の膜厚でも多くの場合に有効なコーティング膜の用途とは、大きく異なる点である。
ところが、強度を高めるために粘土膜の膜厚を前述のように厚くすればするほど、粘土含有液に混入していた気体成分は、成膜時に粘土膜内部から除去されにくくなり、粘土膜の内部に残存しやすくなる。このことは、膜厚を厚くすればするほど、粘土膜の内部に残留した気泡等に起因する欠陥により、例えば光の散乱等による透明性の低下や加熱時の粘土膜の破損が起こりやすくなることを示している。
得ようとする粘土膜の厚みを厚くするには、粘土含有液の粘土の濃度を上げる方法と、支持体上に配する粘土含有液の液膜を厚くする方法のいずれかが通常と考えられる。前者の方法の場合は、粘土の固形分濃度の増大に伴って粘土含有液の粘度が上昇し、さらにはチクソトロピー性も顕著になって粘土含有液の流動性が低下するため、混入した気体成分の除去を何らかの方法で十分に実施することが重要となる。また、後者の方法の場合でも、支持体上に配した液膜の厚みが厚くなると混入した気体成分の量が多くなるため、何らかの方法で混入した気体成分を十分除去することが重要となる。
このような粘土含有液に含まれる気体成分を十分除去する方法としては、遠心分離により気体成分を粘土含有液から分離する方法も良いが、粘土含有液を減圧下におくことで真空脱気を行う方法が特に好ましい。このとき、粘土含有液を常温よりも高い温度とすることにより粘度を低下させれば、高い固形分濃度の粘土含有液でも良好に脱気を行うことが可能となる。すなわち、粘土含有液を支持体の表面に配する前に、粘土含有液を常温よりも高い温度とするとともに減圧下に置いて、粘土含有液に含まれる気泡を除去することが好ましい。この時、粘土含有液を減圧下で撹拌すれば、粘土含有液内部の残留気体を液面付近に移動させ粘土含有液から排出しやすくなるばかりでなく、チクソトロピー性の発現を抑えることができ粘土含有液の粘度の上昇を抑さえることができるため、脱気効果がより向上する。
なお、高い温度で脱気を行うと、前記のように粘性が低くなるので良好に脱気を行えるが、脱気中に粘土含有液の溶媒が蒸発しやすくなるため、特に溶媒が蒸発していく液面付近の固形分濃度が上昇しやすく、その結果、固形物の析出が起こりやすい。そこで、さらに攪拌しながら脱気を行うことで粘土含有液に局所的な固形分濃度の上昇を起こすことなく、またチクソトロピー性によって粘度が上昇するのを防いで、高い温度のまま好適に脱気を行うことができる。
上記のような脱気操作は、粘土含有液をヒーター,温風,湯せん等の手法で加熱した後に行ってもよいし、上記手法で加熱しながら行ってもよいし、超音波分散装置,ホモジナイザー等でエネルギーを与え粘土含有液自体を発熱させながら行ってもよい。また、粘土含有液を減圧下で撹拌する場合は、攪拌子や攪拌羽根を用いてもよいし、前述の軸の周りを公転しながら自転する容器を用いてもよい。
また、粘土含有液を支持体上に配してから上記のような脱気操作を行っても良い。この場合、粘土含有液を支持体上に配することで薄い液膜とすることができ、タンク等に粘土含有液が厚い液膜の状態で入った形態で脱気操作を行う場合と比較して、効率よく気体成分を減少させることができる。
本発明において粘土含有液を製造する場合には、粘土含有液の固形分濃度は0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。固形分濃度を高めることにより、乾燥に要する時間を短縮することができるので、0.5質量%以上とすることが好ましい。また、固形分濃度を20質量%以下とすることにより、粘土や添加剤が良好に分散した粘土含有液が得られる。また、粘土含有液の粘度が所定値以下に抑えられ、チクソトロピー性の発現を抑制できるため、粘土含有液中に混入した気体成分が除去されやすい。その結果、得られる粘土膜における粘土結晶の配向や均一性が向上し、粘土膜の透明性,ガスバリア性,及び寸法安定性等が向上する。これらの効果を十分に得るためには、粘土含有液の固形分濃度は1質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上12質量%以下であることがさらに好ましい。
なお、本発明においては、粘土含有液に含まれる気体成分を減圧下で攪拌する等して減少させた後に、加熱等して溶媒を減少させ、固形分濃度をより高めたペースト状の粘土含有液を用いても良い。この場合、前述の好適な範囲よりもさらに粘土含有液の固形分濃度を高めることも可能である。これにより、粘土含有液に含まれる気体成分を除去しつつ乾燥時間を短縮できるので、粘土膜の量産性を向上できるという効果が得られる。
さらには、粘度を高め、場合によってはチクソトロピー性を顕著に発現させることにより流動性を低下させることが可能なため、前述のような支持体の制約を取り払うことができる。すなわち、ペースト状の粘土含有液は流動性が低いため、支持体に塗布した粘土含有液が流れ出さず、仕切られた容器等のような流れ出しを防止する構造を有する支持体を用いる必要がない。さらに、ペースト状の粘土含有液は、傾斜面にも塗布することができるなどの利点がある。なお、粘土含有液に増粘剤などを加えてペースト状としても、上記効果を奏することができる。
粘土含有液中の溶媒を減少させる方法としては、加熱蒸発法が好ましいが特に限定されるものではなく、遠心分離,ろ過,圧搾等、公知の固液分離の技術を用いることができる。上記の固形分濃度を高める濃縮工程は減圧下で行ってもよく、特に粘土含有液の厚みを薄くし、且つ攪拌等により粘土含有液に流れを生じさせながら行うと、溶媒の蒸発量が多くなり短時間で濃縮できるため効果的である。また、減圧下で濃縮を実施すると、濃縮と同時に脱気も進むため好適である。ただし、粘土含有液を濃縮してしまうと前述したように粘土含有液中に残留している気体成分の除去が困難になってくるため、粘土含有液に含まれる気体成分を十分減少させた後に濃縮をしなければならないという点が重要である。また、濃縮と脱気とが同時に行われるような場合には、濃縮が進む前に脱気を完了させなければならないという点が重要である。
このようにして得られた粘土含有液を支持体の表面に一定の厚さで塗布した後に、溶媒をゆっくりと除去して粘土膜を形成する。溶媒を除去する方法は特に限定されるものではないが、例えば、遠心分離,ろ過,真空乾燥,凍結真空乾燥,不活性ガス雰囲気下放置,及び加熱蒸発法が好ましい。あるいは、これらの方法のうちの複数を組み合わせてもよい。
これらの方法のうち例えば加熱蒸発法を用いる場合は、例えば平坦なトレイを支持体として用い、これに粘土含有液を塗布するとよい。支持体の材質は特に限定されるものではないが、加熱時の温度に耐えられることが必要である。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリプロピレンのような樹脂からなるフィルム,基板や、ガラスやシリコンウェハがあげられる。また、真鍮,銅,ステンレス,アルミニウムのような金属からなる基板もあげることができる。支持体は、熱伝導率が高いほうが一般には好ましい。なお、粘土含有液の粘度が高いか又はチクソトロピー性が強く、塗布した粘土含有液が流れ出さない場合には、トレイのような粘土含有液の流れ出しを防止する構造のものである必要はなく、前述の材質からなる平坦な支持体を用いることもできる。
溶媒の蒸発に伴い粘土含有液が固化して乾燥していく過程では、体積収縮が発生し、得られる粘土膜には前記体積収縮に伴う応力が作用する。したがって、粘土膜の強度がこの応力に耐えられない場合には、乾燥過程で粘土膜が割れてしまう場合があり、この場合は大面積の粘土膜を作製することが困難となり、適用できる用途が限られてしまう問題がある。
そのような場合には、体積収縮に伴う応力を吸収するために、柔軟性を有し変形しやすい支持体を使用することが好ましい。そうすれば、乾燥中に粘土膜自体が支持体とともに変形することが可能であるし、又は、体積収縮に伴う応力を緩和するような形状に支持体を積極的に変形させながら乾燥することが可能であるので、粘土膜の内部に残存する応力を緩和し、粘土膜の割れの発生を抑制することができる。
支持体は、柔軟性を有し変形しやすいものであれば特に限定されるものではないが、乾燥後の粘土膜の剥離性、ロール状にして粘土膜を連続生産すること、及び粘土膜の製造コストへの影響を考慮すると、PET等の安価な樹脂製フィルムが好適である。
支持体の表面のうち少なくとも粘土膜と接触する部分には、支持体から粘土膜が容易に剥離するようにする剥離容易化処理又は撥水加工処理が施されていることが好ましい。あるいは、撥水性の強いポリプロピレン,ポリテトラフルオロエチレン等で支持体を構成することが好ましい。剥離容易化処理としては、例えば紫外線照射処理,電子線照射処理,イオンビーム照射処理,コロナ放電処理,プラズマ処理(例えばリモートプラズマ処理,フレームプラズマ処理),物理的処理(例えば接触面積が少なくなるように表面を加工する機械処理)があげられる。また、シリコーン樹脂のような密着性を低下させる樹脂を塗布する処理や、光,熱等の物理的刺激を受けて柔らかさやヤング率が変化する又は発泡することによって密着性を低下させる剥離性付与剤を塗布する処理があげられる。あるいは、これらの処理のうち複数を組み合わせてもよい。
また、撥水加工処理としては、前述の剥離容易化処理によって同様の効果が得られる場合も多いが、フッ素樹脂やチタニアをコーティングする方法が好適な例としてあげられる。
支持体の表面は、できる限り平滑であることが好ましい。平滑でない場合には、粘土膜の表面に支持体の表面の荒れが転写されるため、粘土膜の表面平滑性が低下する。さらに透明膜にあっては光が乱反射し、ヘイズを増大させる原因となる。
親水性粘土からなる粘土膜においては、乾燥収縮に伴って粘土膜に発生する応力は乾燥直後は大きいものの、乾燥後しばらく放置すると内部応力は減少する場合が多い。例えば、親水性粘土からなる透明膜の多くは乾燥直後は内部応力によりカールしているが、10分程度放置しておくと内部応力が開放され、平坦な膜になる。したがって、内部応力が減少するまでの間、発生した応力を支持体を変形させることにより逃がしておき、内部応力が開放された後に支持体から粘土膜を剥離することで、内部応力が少なく割れやカールのない粘土膜を作製することが可能となる。乾燥後しばらく放置すると内部応力が減少する理由としては、空気中の水分の吸収により柔軟性が向上するためと考えられる。したがって、乾燥直後の粘土膜を湿度の制御された環境でしばらく保持することは、親水性粘土からなる粘土膜の内部応力を除去する点で有効である。
前述のように、変形可能な支持体を用いることにより、粘土膜作製時の体積収縮に伴う応力による粘土膜の破損を抑制することができる。このことにより、大きな面積の粘土膜でも高い収率で作製することが可能となるため、ディスプレイのような大面積の膜を必要とする用途に対して好適である。また、本発明によれば、ロール状に巻かれたフィルムからなる支持体を用いてロールによる連続生産をする場合に、連続した粘土膜を得ることが容易となるため、長尺の粘土膜(例えば粘土テープ)を作製することが容易となる。
加熱蒸発法により粘土含有液の溶媒を除去する場合には、強制送風式オーブン等を用いるとよい。そして、30℃以上120℃以下の温度条件下で、10分以上7時間以下乾燥すると、粘土膜が得られる。温度条件は、30℃以上90℃以下がより好ましく、50℃以上70℃以下がさらに好ましい。また、乾燥時間は、20分以上3時間以下がより好ましく、20分以上2時間以下がさらに好ましい。
ただし、最適な乾燥時間は、粘土膜の膜厚、粘土含有液の固形分濃度、用いる溶媒の種類等によって変わる。水は比熱が大きく乾燥に時間がかかるため、溶媒としては有機溶媒が好適であり、特に沸点が比較的低い溶媒が好適である。そして、溶媒として有機溶媒を用い粘土として疎水性粘土を用いる組み合わせが、乾燥時間の短縮には望ましい。なお、溶媒の沸点があまり低すぎると、粘土含有液を調整している最中に溶媒が揮発して固形分濃度が上昇してしまうばかりでなく、引火爆発等の危険性も上昇するため、量産性と安全性の両面を考慮して溶媒の種類を適宜選択することが好ましい。
このような本発明の粘土膜の製造方法によって、自立膜として利用可能な機械的強度を有し、線膨張係数が小さい粘土膜を作製することができる。また、合成粘土等の着色のない粘土を用いた場合には、フラットなスペクトル特性で着色がなく、透過率やヘイズのムラが広範囲にわたって目視で確認できないような粘土膜を作製することができる。ところが、従来の粘土膜においては、大気中に放置しておくと表面の凸凹が時間とともに増大していく場合があった。特に、親水性の合成サポナイト又は合成ヘクトライトを粘土として用い、ポリアクリル酸塩を添加剤として用い、水を粘土含有液の溶媒として用いた場合に、このような現象が顕著であった。粘土膜の表面の凸凹は、粘土膜の表面に他の膜を付与したり電子デバイス等を形成したりする際に大きな問題となるばかりでなく、凸凹の増大によってヘイズが増大し、粘土膜が曇って透明性が低下していくため、解決すべき重要な課題であった。
このような問題は、これまで述べてきた粘土含有液を乾燥して得られた粘土膜(以降においては、一次乾燥膜と記すこともある)の表面に、粘土を膨潤させる液体又は添加剤を溶解若しくは分散させる液体を配し、再乾燥させることにより解決できる。また、そのような問題が発生しなくとも、このような方法により粘土膜の表面を平滑化できるため、ヘイズを低下させることも可能である。
粘土含有液を乾燥して得た一次乾燥膜の表面に前記液体(粘土を膨潤させる液体又は添加剤を溶解若しくは分散させる液体)を配する方法は特に限定されるものではないが、例えば、一次乾燥膜を前記液体の中に浸漬する方法でもよいし、スプレーのように前記液体を一次乾燥膜の表面に吹き付ける方法でもよい。あるいは、前記液体の高濃度の蒸気雰囲気下に一次乾燥膜をおく方法でもよい。
このとき、一次乾燥膜と前記液体とが接触している時間が長すぎると、一次乾燥膜の一部又は全体が前記液体中に再分散してしまったり、一次乾燥膜が前記液体を吸収して膨潤しすぎてしまう場合がある。よって、一次乾燥膜と前記液体とが接触している時間は比較的短い方が好ましく、数秒から、長くても数分以内が望ましい。
また、前記液体を一次乾燥膜の表面に吹き付ける方法や、流動している前記液体中に一次乾燥膜を浸漬する方法等によって、一次乾燥膜の表面を洗い流すようにして前記液体を配すると、膜の平滑化及び経時によるヘイズ増大の抑制に効果的な場合が多い。一次乾燥膜の表面に前記液体を配したら、前記液体が一次乾燥膜の表面に長時間滞留しないように、一次乾燥膜を水平状態から傾けた状態にして、前記液体が流れ落ちるようにするとよい。
また、一次乾燥膜を水平状態から傾けた状態に保持しつつ前記液体を配する際には、紙を抄紙する際に用いるようなメッシュ状のワイヤー等の上に一次乾燥膜を載置して前記液体を配することが好ましい。そうすれば、余分な前記液体が一次乾燥膜の表面から流れ落ちやすくなるので、一次乾燥膜の一部又は全体が前記液体に再分散したり過剰に膨潤することを抑制することができる。
前記液体の種類は、粘土を膨潤させるもの、又は、添加剤を溶解若しくは分散させるものであれば特に限定されるものではなく、粘土と添加剤の種類に応じて適宜選択すればよい。特に、水に膨潤する親水性粘土又は水に溶解する添加剤を有する粘土膜であれば、水が好適である。
なお、一次乾燥膜の表面に前記液体を配することにより該膜全体が容易にその液体を吸収してゲル状に変化する場合には、ゲル化に伴い一次乾燥膜の体積が増大し、その結果、しわ等を有する粘土膜が生成する場合がある。このような場合には粘土膜を延伸し、しわを伸ばして粘土膜を平坦化することにより、乾燥後に表面がより平滑な粘土膜を得ることができる。粘土膜を延伸する方法としては、ローラー等を粘土膜に押し当てる方法や、粘土膜を引っ張る2軸延伸のような方法があげられる。粘土膜の延伸は、表面が平滑な部材の上で行ってもよいし、紙を抄紙する際に用いるようなメッシュ状のワイヤー等の上で行ってもよいし、平滑部材のような支持体と接触しない状態で行っても良い。
一次乾燥後に粘土膜の表面に添加剤が析出し、その析出した添加剤がヘイズ増大の原因となる場合には、上記のように一次乾燥膜の表面に前記液体を配すると、析出した添加剤が前記液体によって除去されるので、本発明の効果が奏される。
また、上記のようにして前記液体を配した一次乾燥膜においては、粘土又は添加剤のどちらか一方が前記液体を吸収し、一次乾燥膜全体又は少なくとも前記液体が接している一次乾燥膜の表面近傍部分が膨潤する。このような状態においては、一次乾燥膜の表面が膨潤して表面積が大きくなるために平滑性が向上するばかりでなく、一次乾燥膜の表面はゲル状になって軟化しており、外力による変形が容易であるため、表面が平滑な平滑部材に軟化した一次乾燥膜の表面を一時的に接触させると、一次乾燥膜の表面が平滑部材の表面に追随するように変形して一次乾燥膜の表面が平滑化され、得られる粘土膜の表面の平滑性を向上させることができる。例えば、前記液体を配した一次乾燥膜を表面が平滑なガラス基板や樹脂フィルムの上に配することにより、表面が平滑化された粘土膜を得ることができる。さらに、その上から同様のガラス基板や樹脂フィルムを配し平滑部材で粘土膜を挟むことにより、粘土膜の両面を平滑化することもできる。
平滑化に用いる平滑部材は、表面が平滑であるならば特に限定されるものではなく、ガラス基板,シリコン基板,ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのような樹脂基板等を用いることができる。さらに、これら平滑部材の表面には、平滑化の後に粘土膜を剥離しやすいように、前述の一次乾燥膜を作製する際に用いた支持体に適用したものと同様の剥離容易化処理や撥水加工処理を施してもよい。
さらに、平滑部材に一次乾燥膜を接触させて平滑化する際には、積極的に外力を加えてもよい。例えば、前記液体を配した後の一次乾燥膜を平滑な樹脂フィルム上に配し、表面が平滑なローラーをその上で転がすことにより平滑化してもよいし、プレス等により外力を加えて一次乾燥膜を平滑部材に押し付けて平滑化してもよい。このとき、ローラーやプレス装置は直接一次乾燥膜に接触させてもよいし、ローラーやプレス装置等に一次乾燥膜が付着したりすることを防ぎたい場合には、剥離容易化処理等を必要に応じて施した平滑な樹脂フィルム等を介在させて外力を加えてもよい。
前記液体を配した一次乾燥膜を再乾燥することにより、前述した本発明の効果を奏する粘土膜を得ることができる。乾燥は、任意の部材上で、又は、部材と接触しない状態で行うことができるが、最終的に表面が平滑な粘土膜を得るためには、粘土膜の表面を平滑化するために用いた表面が平滑な前記平滑部材上で行うことが望ましい。再乾燥の方法は特に限定されるものではないが、例えば、遠心分離,ろ過,真空乾燥,凍結真空乾燥,不活性ガス雰囲気下放置,及び加熱蒸発法が好ましい。あるいは、これらの方法のうちの複数を組み合わせてもよい。あるいは、大気中に放置しておくだけでもよい。このとき、粘土膜の表面に異物が付着し表面の平滑性が低下することを防ぐために、乾燥雰囲気中に異物ができるだけ少ないクリーンオーブンやクリーンルーム中で再乾燥させることが望ましい。
再乾燥の際にも、粘土膜に体積収縮が発生するため、粘土膜には前記体積収縮に伴う応力が作用する。特に、膜全体が膨潤した場合には、前記体積収縮に伴う応力が強く作用する。したがって、前記平滑部材上で再乾燥させる場合において粘土膜の強度がこの応力に耐えられない場合は、一次乾燥膜を作製する場合と同様に乾燥過程で粘土膜が割れてしまう場合がある。これを回避するためには、前記平滑部材に柔軟性があり、前記平滑部材が変形可能な状態で再乾燥を行った後に、前記平滑部材から粘土膜を剥離することが好ましい。柔軟性を有する前記平滑部材としては、樹脂製フィルムが好ましい。
このような本発明の粘土膜の製造方法によれば、粘土結晶の層が高度に配向して積層し、添加剤が平均的に粘土層間にインターカレートされ、均一性に優れ、混入した気体による欠陥が少ない粘土膜を作製することができる。その結果、得られた粘土膜は、緻密な積層構造によって自立膜として利用可能な機械的強度を有しており、線膨張係数が小さい。そして、合成粘土等の着色のない粘土を用いた場合には、フラットなスペクトル特性で着色がなく、透過率やヘイズのムラが広範囲にわたって目視で確認できないような粘土膜を作製することができる。
自立膜として利用可能な機械的強度の定義は困難ではあるが、粘土膜の引張り強度は10MPa以上であることが好ましく、15MPa以上であることがより好ましく、20MPa以上であることがさらに好ましく、25MPa以上であることが最も好ましい。10MPa以上であれば、手で扱うことができる程度の強度を有していると言え、25MPa以上であれば十分な強度を有していると言える。
本発明の製造方法によって得られた粘土膜は、粘土含有液に含まれる気体成分が十分除去されているので、内部の気泡(空隙)等が極めて少ない。そのため、添加剤の耐熱性にもよるが、例えば急速に(例えば毎分15℃以上の温度上昇速度で)300℃まで加熱し一時間保持した後に膜表面を詳細に観察しても、表面に膨れ上がりは認められず、300℃以上の高温条件下で使用できるような熱安定性に優れた粘土膜である。
さらに、透明な粘土膜においては、可視光域全体に渡って高い透明性を有し、ヘイズが小さく着色がなく、且つ、透明性の面内ムラが少ない。粘土含有液に含まれる気体成分の除去は、特にヘイズの低減に大きく影響する。また、ヘイズを低下させることは、ディスプレイのような光学用途へ適用する際に非常に重要な課題である。
本発明においては、粘土含有液中の気体成分を低減させる工程の導入によって、粘土膜が厚い場合(例えば15μmよりも厚い場合)でも、成膜直後のヘイズ(曇度)を5%以下とすることができる。ヘイズは、3%以下が好ましく、2%以下がより好ましく、1%未満がさらに好ましい。また、24℃,1気圧,湿度45%の環境下におけるヘイズの経時変化を、2%以下とすることができる。ヘイズの経時変化は、1%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。さらに、全光線透過率が85%以上であり、紫外可視分光器による400nm以上800nm以下の波長範囲における平行光の光線透過率が85%以上95%以下であるものを作製することが可能である。
ヘイズが5%超過であると、透明性が低く、所望の光学特性が得られないという不都合が生じるおそれがある。また、表面が平滑でヘイズの低いガラス基板や光学フィルム材料等のヘイズは一般に0.5%前後、特に透明なものでも0.2%程度であり、それらを支持体や平滑部材として用いた場合に得られる粘土膜はその表面の凸凹がそれらベースや平滑部材によっておおむね規定されるため、得られる粘土膜のヘイズも0.5%から、良くても0.2%程度を下限とすることが多い。また、ヘイズの経時変化が2%超過であると、時間とともに粘土膜の透明性が低下して所望の光学特性が得られなくなるという不都合が生じるおそれがある。
なお、光線透過率の上限は膜の屈折率によって決定される。一般に粘土の屈折率は約1.5前後であることが多いため、屈折率の低い添加剤を加えても、本発明の粘土膜の製造方法で製造される粘土膜の平行光の光線透過率は95%程度を上限とすると考えられる。無論、粘土膜の表面に、例えば低屈折率の反射防止膜、光干渉を利用した多層反射防止膜、あるいはアンチグレア処理をした膜等を付与して積層する等すれば、さらに透過率を向上させることは可能である。
本発明の粘土膜の製造方法によれば、添加剤の割合が少なく、粘度結晶の層が高度に配向して積層し、添加剤が層間に平均的にインターカレートした効果により、40℃から250℃付近までの平均の線膨張係数が、絶対値として20ppm以下の粘土膜を得ることが可能である。線膨張係数は15ppm以下が好ましく、10ppm 以下がより好ましく、7pp以下がさらに好ましく、5ppm以下が特に好ましく、3ppm以下が最も好ましい。
このような小さな線膨張係数は、従来の樹脂からなるフィルムや、あるいは、粘土を含有していても樹脂が主体で、粘土結晶の層が緻密に且つ高度に配向して積層していなかった従来のナノコンポジット体では、到達し得なかった極めて小さな値であり、特に透明なフィルムにおいては極めて難しい値である。電子デバイスの多くは線膨張係数の小さな無機物質等からなるので、そのような電子デバイスを実装する基板として本発明の粘土膜は極めてふさわしい特性を有していると言える。また、このような粘土膜をパッキン等に利用した場合には、表面の凸凹が小さいため、ガス等の漏れをより抑制できるという効果が得られる。
粘土膜を製造した後に、粘土と添加剤が均一に分散し、混入気体の十分な除去が行われ、その結果、粘土結晶の層が高度に配向して積層した粘土膜が得られたかどうかを確認する手法としては、X線回折装置によるX線回折スペクトルの分析、及び、透過型電子顕微鏡(TEM)による積層状態の直接観察が有効である。従来より、ガラス基板等の支持体上に形成された粘土膜の配向積層状態や、粘土を含むナノコンポジット体における粘土結晶の分散や剥離状態等を、X線回折測定によって研究・評価することが広く行われている。一般的には、粘土結晶の(001)面の一次回折によってX線回折スペクトルに生じる主ピーク(最も低2θ側にある底面反射ピーク)の強度及び位置、並びに、低2θ領域におけるX線回折スペクトルのバックグラウンドの持ち上がり等によって、粘土結晶の積層状態(層の平均間隔)や分散状態を知ることができる。
添加剤の割合が30質量%未満の粘土膜における平均層間距離は、X線回折スペクトルにおける前記主ピークの位置から換算すると、10nm以下である。この平均層間距離は、7nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましく、4nm以下がさらに好ましく、3.5nm以下が特に好ましく、2nm以下が最も好ましい。さらに、平均層間距離が1.5nm以下になると、既存の測定装置の測定限界以下となるような極めて高いガスバリア性が発現し得る。
この好ましい平均層間距離は、前記一次回折ピークのトップ位置(2θの値)に換算すると、一般的な銅のKα線である1.54Åの波長を用いた測定の場合は、粘土結晶の1枚の層の厚みが約1nmであるスメクタイト族の粘土や合成雲母族の粘土からなる粘土膜においては、2θで0.8以上9.0以下の領域に対応する。
なお、前記平均層間距離の最小値は粘土のみからなる組成物のそれに相当するが、本発明の粘土膜においては添加剤が層間に平均的にインターカレートされているため、粘土のみからなる組成物のそれよりも平均層間距離が大きくなっている。このことを確認する手法としては、X線回折スペクトルにおける前記主ピークのピークトップ位置が、粘土のみからなる組成物のそれよりも低2θ側にシフトしているかどうか、又は、前記主ピークのピーク幅が低2θ側にブロードニングしているかが目安となる。なお、粘土膜における平均層間距離が前記好ましい範囲にあるかどうかは、TEMによる写真撮影によって得られた像から直接層間距離を測長することでも確認することができる。
また、本発明の粘土膜の製造方法によって得られる粘土膜は、一般に水素,酸素,窒素といった無機ガスに対する高いバリア性を有している。ガスバリア性は用いる粘土や添加剤の種類によって大きく異なるが、透過率で定義した場合は、用いた添加剤のみからなる膜の1/2以下となる。透過率は用いた添加剤のみからなる膜の1/10以下が好ましく、1/100以下がより好ましく、1/1000以下がさらに好ましい。粘土膜の組成によっては、現状の汎用なガス透過度測定装置(例えばモコン社の装置)の測定限界以下のガスバリア性を示す場合もある。
そして、本発明の粘土膜は自立膜として利用できる強度を有しているため、種々の用途に用いることができる。例えば、耐熱性,ガスバリア性,柔軟性,低線膨張性等を生かして、フレキシブルな電子ペーパーのバックプレーンとなるアクティブマトリックス駆動回路を、粘土膜に高温下で直接形成することが可能となる。そうすれば、耐熱性のあるガラス基板等の上に駆動回路を形成した後に樹脂フィルムに転写する等の従来方法を用いなくてもよいので、電子ペーパーの製造工程を少なくすることができ、コスト的にも優位である。電子ペーパーのバックプレーンであれば、透明性は一般に不要であるが、さらに粘土膜が透明であれば、電子ペーパーの視認側であるフロントプレーン側の基板やガスバリア膜として用いることができる。なお、本発明の粘土膜を適用可能な電子ペーパーの種類は特に限定されるものではないが、例えば電気泳動駆動式、電子粉流体方式の電子ペーパーがあげられる。
その他には、絶縁性である特徴を生かして、粘土膜を電気回路のフレキシブル基板として広範囲に用いることもできる。電気回路の基板として利用する場合にも、配線の断線等を防ぐ目的から基板表面の凸凹や線膨張係数はより小さいほうがより望ましく、本発明の粘土膜は好適である。特に、基板上の導体部分を導電性インクの塗布又は印刷で形成したフレキシブルプリント基板においては、粘土膜の耐熱性と低い線膨張係数を生かして導電性インクをより高温で焼成することが可能なため、塗布又は印刷で形成した導体部分の抵抗率をより低くすることが可能である。このようなフレキシブル基板及びフレキシブルプリント基板の好適な用途としては、RFIDタグの基板、銅張積層板等があげられる。さらに透明な粘土膜であれば、太陽電池のように光を通過する必要があるデバイスにも適用することができる。
また、ペンタセンやチオフェン類に代表される有機半導体は、一般に酸素や水分によって劣化しやすく、またアモルファス無機半導体も、有機半導体ほどではないが酸素や水分の影響を受けやすい。そのため、それらを用いたデバイスでは、酸素や水蒸気の侵入を十分に阻止する必要がある。本発明の粘土膜は高いガスバリア性を有しているため、酸素等による劣化に敏感な有機半導体やアモルファス無機半導体を有する電子デバイス用の基板や、有機半導体やアモルファス無機半導体を保護するガスバリア膜としても好適である。また、粘土膜は高温でも柔軟性を保持するので、上記電子デバイスをフレキシブル化することも可能である。
なお、前述した電子ペーパー,フレキシブル基板,フレキシブルプリント基板,有機半導体又はアモルファス無機半導体を有する電子デバイスに対して、本発明の粘土膜を適用する際には、粘土膜をそのまま適用してもよいし、必要に応じて粘土膜に別の機能を有する膜(例えば主として無機材料からなる水蒸気バリア膜、樹脂材料等からなる補強材、傷等を防ぐ保護層、表面を平滑化する平滑化層)等を付与して用いてもよい。
さらには、前記水蒸気バリア膜、樹脂材料等からなる補強材、傷等を防ぐ保護層、表面を平滑化する平滑化層等の、粘土とは異なる別の機能を有する膜を粘土膜に付与した後に、粘土膜の表面に液体を配して膨潤させ、それを再乾燥して粘土膜部分の平滑性を向上させても良い。例えば、粘土膜の片面に樹脂からなるフィルム等を貼り付けた後に、粘土と樹脂フィルムとからなる膜を液体に浸漬させる又は粘土面に液体を吹き付けることにより膨潤させ、再乾燥してもよい。無論、粘土膜と別の機能を有する粘土以外の膜とが多数積層された複合膜においては、少なくとも複合膜の片面の最外層が粘土膜であれば、前記手法による改良が可能である。
以下に、本発明の粘土膜及びその製造方法についてさらに詳細に説明する。
本発明において用いる粘土の種類は特に限定されるものではなく、天然粘土でも合成粘土でも差し支えない。例えば、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ノントロナイト、マガディアイト、ハイドロタルサイト、カリオナイト、及びハロイサイトが好ましい。特に、透明な粘土膜においては合成粘土が好ましい。合成粘土としては、合成サポナイト、合成ヘクトライト、合成スチーブンサイト、合成雲母、合成ハイドロタルサイト、合成カリオナイト等が好ましいが、分散性等の点でスメクタイト族に属する粘土がさらに好ましい。ガスバリア性の観点からは、粘土結晶の層のアスペクト比が大きな天然モンモリロナイトや雲母族に属する粘土が好ましい。さらに、ガスバリア性の観点からは、高アスペクト比の合成スメクタイト族の粘土、合成雲母、ハイドロタルサイトも好ましい。
また、アンモニウム塩、フォスフォニウム塩、イミダゾリウム塩、カルボン酸等のような有機イオンを有する塩を用いた処理を施して、有機溶媒への分散性を向上させた疎水性粘土を用いてもよい。この処理は、親水性粘土が備える無機イオンを有機イオンに交換する処理である。さらに、多くの粘土鉱物が層構造の構成要素として有する前記八面体シートの水酸基を、化学反応によって他の疎水性の置換基に変換する処理(例えば、任意のシランカップリング剤との脱水結合によって水酸基を他の有機基に置換する処理)により、耐水性をより向上させたり有機溶媒への分散性を制御した疎水性粘土を用いてもよい。特に、スメクタイト族に属する粘土を上記処理で疎水化した有機スメクタイトは、前記の処理の行いやすさや分散性等の点から好適である。
有機イオンを有する塩のうちアンモニウム塩としては、アルキル基、ベンジル基、ポリオキシエチレン基、オキシエチレン基、オキシプロピレン基等を有するアンモニウム塩や、ジメチルジステアリルアンモニウム塩、トリメチルステアリルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩があげられる。また、フォスフォニウム塩やイミダゾリウム塩等は耐熱性が高く、高温でも分解や着色等を呈しにくいことが知られている。よって、フォスフォニウム塩やイミダゾリウム塩等によって処理された疎水性粘土を用いれば、耐熱性に優れた粘土膜を得ることができる。疎水性粘土は水との親和性が低いため、得られる粘土膜も水と親和性が低く、その結果、耐水性に優れるものとなる。
なお、本発明における粘土とは、これら親水性粘土及び疎水性粘土の両方を含む。疎水性粘土においては、前述の四面体シートや八面体シートの表面に結合している有機イオンは粘土の一部と定義される。疎水性粘土における有機イオンの存在は、粘土結晶の層間距離を若干増大させるためガスバリア性の低下というデメリットを生じさせるものの、四面体シートや八面体シートの表面に強く結合しているため、粘土膜の透明性や寸法安定性等に与える影響は一般に小さく、また親水性粘土にはない耐水性というメリットを有する点で好適である。また、疎水性粘土は、親水性粘土の層間に存在するアルカリ金属等の無機イオンを有機イオンに交換して得ることが一般的である。そのため、十分にイオン交換を行った疎水性粘土を用いれば、アルカリ金属をほとんど含まない粘土膜を得ることも原理的には可能である。よって、アルカリ金属を嫌う電子デバイス用途に好適であると考えられる。
本発明において用いる添加剤の種類は特に限定されるものではないが、添加剤の主たる役割が粘土膜の柔軟性や強度を高めること、及び、粘土含有液の溶媒を除去する際の体積収縮による応力の緩和(表面の平滑性や粘土膜の内部の均一性の確保のため)であるため、一般的には添加剤自身が柔軟性,弾力性又は流動性を有していることが好ましい。添加剤そのものの形態は固体である必要はなく、溶媒に均一に溶解又は分散するものであれば、液体又はゾルやゲルのようなものであっても良い。透明な粘土膜を製造する場合には、添加剤も透明又は着色が少ないものであることが好ましい。
そのような物質としては、炭素やケイ素を主として主鎖に含むポリマーが特に好ましい。無論、粘土膜中で他のモノマーやポリマーと重合してポリマーに転化する重合性を有するモノマーでも良い。また、粘土と結合的な相互作用をする有機イオンを含んでいても良い。
そのような添加剤を具体的に示す。粘土を溶解又は分散させる溶媒が水である場合には、添加剤も親水性を有し水への分散性又は溶解性が高いものが好ましい。例えば、イプシロンカプロラクタム、デキストリン、澱粉、セルロース系樹脂、セルロース繊維、ゼラチン、寒天、小麦粉、グルテン、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニル樹脂、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアマイド、ポリエチレンオキサイド、タンパク質、デオキシリボヌクレイン酸、リボヌクレイン酸、ポリアミノ酸、多価フェノール、安息香酸類化合物が好適である。あるいは、ラテックスやエマルジョンといった、水分散系の材料を用いてもよい。なお、それらは水への分散性又は溶解性が高いため、耐水性は一般に低い。そこで、塩や他の反応性モノマーやポリマー又はオリゴマー等を加えて、添加剤を水に不溶化させてもよい。ただし、ラテックスやエマルジョンといった水分散系の材料を用いた場合は、成膜後の加熱処理等によって膜の耐水性を向上させることも可能である。
なお、粘土として有機スメクタイト等の疎水性粘土を用い、溶媒として水以外の溶媒を用いた場合又は水と他の親水性溶媒との混合溶媒を用いた場合には、親水性を有し水への分散性又は溶解性が高い添加剤を用いる必要はない。この場合は、水への分散性又は溶解性が低い添加剤であれば、得られる粘土膜も疎水性となり、その結果、耐水性が高い粘土膜を得ることができる。
そのような添加剤としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリオレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、熱可塑性ポリイミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリスルホン系樹脂、非晶性フッ素系樹脂等の熱可塑性樹脂があげられる。
また、エポキシ樹脂、熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂、ユリア樹脂、アリル樹脂、ケイ素樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、アルキド樹脂、フラン樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、アニリン樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることもできる。
その他では、光硬化性樹脂を用いることもでき、例えば、潜在性光カチオン重合開始剤を含むエポキシ樹脂等があげられる。なお、上記光硬化性樹脂を硬化させる場合には、光照射と同時に熱を加えてもよい。また、本発明において熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂と併用して硬化剤、硬化触媒等を用いてもよいが、それらは熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂の硬化に一般的に用いられるものであれば特に限定されない。硬化剤の具体例としては、多官能アミン、ポリアミド、酸無水物、フェノール樹脂があげられ、硬化触媒の具体例としては、イミダゾール等があげられる。これらの硬化剤、硬化触媒は単独又は2種以上混合して使用することができる。さらに、前述した樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記のものは主として主鎖が炭素原子からなる樹脂であったが、主鎖が炭素原子からなる必要はなく、例えば主鎖が珪素原子からなる樹脂でもよいし、主鎖が主として珪素と酸素からなる樹脂(例えばシリコーン)でも良い。
さらには、前述した粘土の処理に用いられるアンモニウム塩,フォスフォニウム塩,イミダゾリウム塩等のような有機イオンを含む塩を添加剤として用いてもよい。このような塩は粘土との結合力が高いので、添加剤として好適である。特に、1分子中に前記有機塩部位を2つ以上含む添加剤は、粘土結晶の層間を架橋させて粘土結晶の層間の結合力を向上させるため、粘土膜の耐水性やガスバリア性を向上させることができる。このような前記有機塩部位を2つ以上含む添加剤としては、例えば、前記有機塩部位を含む2つ以上のユニットがケイ素原子からなるチェーン又はケイ素原子と酸素原子からなるチェーン(例えばポリシランやシリコーン等)でつながったような分子があげられる。さらに、前記有機塩部位を含むユニットとビニル基やエポキシ基のような重合性を有する部位とを1分子中に有する分子があげられる。
なお、添加剤は、粘土膜の強度向上に寄与するものに限定されるものではなく、例えば、難燃性を付与したい場合には三酸化アンチモンのような無機系難燃剤を添加してもよいし、可塑性を付与したい場合にはフタル酸ジメチルのような可塑剤を添加してもよい。ただし、透明な粘土膜を製造する場合には、上記の添加剤も透明又は着色が少ないことが好ましい。
さらに、本発明において用いられる溶媒の種類は特に限定されるものではないが、水や有機溶媒を用いることができる。また、アセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、エタノール、メタノール等の有機物や塩などを少量溶解させた水を用いることもできる。有機物,塩などを添加する目的は、粘土含有液における粘土の分散性を変化させる、粘土含有液の粘性を変化させる、粘土膜の乾燥のしやすさを変化させる、粘土膜の均一性を向上させる等である。
疎水性粘土を十分に分散させるためには、メタノール等の高極性溶媒の添加は有効である。特に、主たる溶媒がトルエン等の極性の小さい溶媒である場合は、メタノールのような高極性溶媒を主溶媒に少量添加することが好ましい。メタノールのような高極性溶媒の添加量は、主溶媒の0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、0.5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
疎水性粘土の分散液にメタノールを少量添加すると、凝集している疎水性粘土の粘土結晶の層の間にメタノールが侵入して層の間隔が広げられる。そして、十分な時間とせん断力とを加えると、粘土結晶の単位層近くまで分散することができる。これによって粘土結晶の分散が極めて促進され粘土の凝集物がほとんどなくなるため、大部分の粘土が単位層近くまで剥離し、添加剤と粘土が極めて均一に混合された粘土含有液を得ることができる。そして、このようにメタノール等を添加して分散を促進した粘土含有液から粘土膜を作製することにより、特に透明な粘土膜においてはヘイズが大幅に低下するという効果が奏される。
また、前述した処理を施した疎水性粘土を用いる場合は、溶媒として芳香族炭化水素(例えばトルエン、キシレン)、エーテル類(例えばエチルエーテル、テトラヒドロフラン)、ケトン類(例えばアセトン、メチルエチルケトン)、脂肪族炭化水素(例えばn−オクタン)、アルコール類(例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール)、ハロゲン化炭化水素(例えばクロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン)や、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、フタル酸ジオクチル、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブ等を用いることができる。
疎水性粘土が分散可能な有機溶媒の種類は、疎水性を発現させる粘土結晶の表面の有機官能基の種類に大きく依存するため、適切なものを選択する必要がある。また、最終的に粘土含有液中で混合される添加剤の溶解性や分散性にも注意して選択する必要があり、粘土の分散性と添加剤の溶解性,分散性との双方に良好な有機溶媒を選択することが好ましい。ただし、粘土分散液の溶媒と添加剤含有液の溶媒とが同種である必要は必ずしもなく、混合して粘土含有液を得た際に粘土も添加剤も良好に分散状態を保持するものであれば特に限定されない。
以下に、実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。
参考例1〕
粘土として合成サポナイト(クニミネ工業株式会社製のスメクトンSA)、添加剤としてポリアクリル酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を使用した。
粘土10.2gと純水594mlを回転子とともにプラスチック製密封容器に入れ、25℃で2時間激しく振とうして均一な粘土分散液を得た。また、ポリアクリル酸ナトリウム1.8gと純水594mlを回転子とともにプラスチック製密封容器に入れ、25℃で2時間激しく振とうした後に、さらにホモジナイザーを用いて回転速度10000rpmで7分間撹拌して、均一な添加剤含有液を得た。このとき、添加剤含有液は発熱して温度が約60℃に上昇しており、液の粘度は低下していた。
次に、この粘土分散液と添加剤含有液とを回転子とともにプラスチック製密封容器に入れ、25℃で2時間激しく振とうした後に、さらにホモジナイザーを用いて回転速度10000rpmで20分間撹拌して、均一な粘土含有液を得た。このとき、粘土含有液は発熱して温度が約90℃に上昇しており、粘土含有液の粘度は低下していた。そして、約90℃の粘土含有液を真空脱気装置に入れ、0.08MPa以下の減圧下で20分間脱気を行った。
次に、この粘土含有液を、ポリプロピレン製トレイの表面のうち平坦部分に塗布した。粘土含有液の塗布にはステンレス製地べらを用い、スペーサーをガイドとして利用することにより、均一な厚さの粘土含有液膜を形成した。このトレイを強制送風式オーブン内に入れ、60℃の温度条件下で約6時間加熱して乾燥させた。生成した粘土膜をトレイから剥離し、厚さ約22μmの均一な粘土膜を得た。得られた粘土膜は、自立膜として利用可能な機械的強度を有していた。また、透明度が高く、柔軟性に優れていた。
粘土膜の柔軟性を確認するため、半径6mmの円筒状に湾曲させたが、クラックなどは発生せず、何の欠陥も生じなかった。また、粘土膜の透明性を確認するため、株式会社島津製作所製の紫外可視分光光度計「UV−3101PC」で波長200nm以上800nm以下の波長範囲における透過率を測定したところ、312nmから800nmまでの範囲で85%以上の透過率を有し(図1を参照)、着色は認められなかった。さらに、日本電色工業株式会社製の濁度計「NDH2000」で測定した粘土膜の全光線透過率は91.7%であり、ヘイズ(曇度)は2.3%であった。
次に、この粘土膜の寸法安定性を確認するため、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の「TMA/SS220」で線膨張係数を測定した。試料幅は3mm、荷重は2gとした。昇温レート5 ℃/minで233℃まで加熱した後に31℃まで冷却し、その後直ちに昇温レート5 ℃/minで300℃まで加熱して、線膨張係数を測定した。その結果、40℃から250℃の温度範囲における平均の線膨張係数は5.4ppm/℃で、前記温度範囲において線膨張係数の値はほぼ一定であった。
この粘土膜が、粘土結晶の層が高度に配向して緻密に積層したものであるかどうかを確認するため、株式会社リガクのX線回折装置「RINT−2500」を用いてX線回折による分析を実施した。用いたX線波長は、Cu/Kαの1.54056Åである。得られたX線回折スペクトル(図2を参照)には、2θで7.44の位置(層間距離に換算して1.19nm)に明瞭な主ピークが認められ、粘土膜における粘土結晶の層が高度に積層して且つ緻密に配向していることが分かる。
また、日立製作所株式会社製のTEM「HF−2000」を用いて、粘土膜の断面の電子顕微鏡写真を撮影したところ、平均層間距離約1.2nmで粘土結晶の層が配向して緻密に積層した均一な構造体であることが分かった(図3を参照)。
さらに、この粘土膜のガスバリア性を確認するために、日本分光株式会社製のガス透過量測定装置「Gasperm−100」で酸素の透過係数を測定した。その結果、室温における酸素の透過係数が、3.2×10−11cm−1cmHg−1未満であることが確認され、高いガスバリア性能を示すことが分かった。
参考例2〕
参考例1と同様に粘土膜を作製するに際して、ポリプロピレン製トレイに流し込む粘土含有液の量を変えて、膜厚の異なる3枚の粘土膜を作製した。得られた粘土膜の膜厚は、それぞれ13μm、19μm、及び24μmであった。
参考例1と同様にして透過率を測定したところ、膜厚13μmのものは278nmから800nmまでの範囲で、膜厚19μmのものは344nmから800nmまでの範囲で、膜厚24μmのものは326nmから800nmまでの範囲で、いずれも85%以上の透過率を有し、着色は認められなかった。また、紫外可視吸収スペクトルの形状は、いずれも参考例1の粘土膜とほとんど同様であった。
さらに、参考例1と同様にして全光線透過率を測定したところ、膜厚13μmのものは91.7%、膜厚19μmのものは90.9%、膜厚24μmのものは91.6%であった。さらに、参考例1と同様にしてヘイズ(曇度)を測定したところ、膜厚13μmのものは1.9%、膜厚19μmのものは3.4%、膜厚24μmのものは2.9%であった。
参考例3〕
参考例1と同様にして、脱気した粘土含有液を得た。B4サイズの真鍮製トレイ内に、剥離容易化処理が表面に施された厚さ50μmの平滑なPETフィルム(大成ラミネーター株式会社製)を入れ、PETフィルムの周囲を粘着テープで固定した後、このPETフィルムの剥離容易化処理が施された面に粘土含有液を塗布し、参考例1と同様にして厚さ約22μmの均一な粘土膜を得た。得られた粘土膜は、自立膜として使用可能な機械的強度を有していた。また、透明度が高く、フレキシビリティーに優れていた。
粘土膜の柔軟性を確認するため、半径6mmの円筒状に湾曲させたが、クラックなどは発生せず、何の欠陥も生じなかった。また、参考例1と同様にして透過率を測定したところ、264nmから800nmまでの範囲で85%以上の透過率を有し、着色は認められなかった。また、紫外可視吸収スペクトルの形状は、参考例1の粘土膜とほとんど同様であった。さらに、参考例1と同様にして全光線透過率を測定したところ92.0%で、ヘイズ(曇度)を測定したところ1.6%であった。
この粘土膜を大気中で300℃で1時間加熱し、同様に透過率を測定したところ、385nmから800nmまでの範囲で85%以上の透過率を有し、着色は認められなかった。紫外可視吸収スペクトルの形状は、加熱前とほとんど同様であった。さらに同様にして全光線透過率を測定したところ91.1%で、ヘイズ(曇度)を測定したところ1.9%であり、高い耐熱性が認められた。
〔比較例1〕
参考例1と同様にして作製した粘土分散液と添加剤含有液とを回転子とともにプラスチック製密封容器に入れ、25℃で2時間激しく振とうした後に、さらにホモジナイザーを用いて回転速度10000rpmで20分間撹拌して、均一な粘土含有液を得た。
この粘土含有液を脱気せずに、参考例3と同様にしてPETフィルムの表面に塗布し、厚さ約17μmの均一な粘土膜を得た。得られた粘土膜は、自立膜として使用可能な機械的強度を有していた。粘土膜には目視で確認できる気泡が表面に多数認められ、触指で凸凹が明瞭に感じられた。参考例1と同様にして全光線透過率を測定したところ91.8%で、ヘイズ(曇度)を測定したところ5.1%であった。
〔比較例2〕
粘土として合成サポナイト(クニミネ工業株式会社製のスメクトンSA)、添加剤としてポリアクリル酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を使用した。
粘土5.1gと純水594mlを回転子とともにプラスチック製密封容器に入れ、25℃で2時間激しく振とうして均一な粘土分散液を得た。この粘土分散液にポリアクリル酸ナトリウム0.9gをそのまま加え、25℃で2時間激しく振とうして粘土含有液を得た。こうして得た粘土含有液を用い、この後の工程を参考例3と同様に実施して、厚さ約17μmの均一な粘土膜を得た。
得られた粘土膜は、自立膜として使用可能な機械的強度を有していた。粘土膜の柔軟性を確認するため、半径6mmの円筒状に湾曲させたが、クラックなどは発生せず、何の欠陥も生じなかった。また、参考例1と同様にして透過率を測定したところ、85%以上の透過率を有している波長領域はなかった(図1を参照)。さらに、参考例1と同様にして全光線透過率を測定したところ91.8%で、ヘイズ(曇度)を測定したところ7.0%であった。
〔比較例3〕
比較例2と同様に粘土膜を作製するに際して、トレイに流し込む粘土含有液の量を変えて、膜厚の異なる2枚の粘土膜を作製した。得られた粘土膜の膜厚は、それぞれ15μm及び16μmであった。
参考例1と同様にして透過率を測定したところ、いずれの粘土膜も85%以上の透過率を有している波長領域はなかった。さらに、参考例1と同様にして全光線透過率を測定したところ膜厚15μmのものは92.0%で、膜厚16μmのものは91.7%であった。さらに、参考例1と同様にしてヘイズ(曇度)を測定したところ、膜厚15μmのものは7.7%で、膜厚16μmのものは6.5%であった。
〔比較例4〕
粘土として合成サポナイト(クニミネ工業株式会社製のスメクトンSA)、添加剤としてポリアクリル酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を使用した。
ポリアクリル酸ナトリウム1.8gと純水594mlを回転子とともにプラスチック製密封容器に入れ、25℃で2時間激しく振とうし、添加剤含有液を得た。この添加剤含有液に粘土5.1gを加え、25℃で2時間激しく振とうしたが、粘土は十分に分散せず、大きな粘土凝集体が多数認められ、粘土膜の作製に適した粘土含有液を得ることはできなかった。
〔比較例5〕
粘土として合成サポナイト(クニミネ工業株式会社製のスメクトンSA)、添加剤としてポリアクリル酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を使用した。
粘土4.0gと純水196mlを回転子とともにプラスチック製密封容器に入れ、22℃で2時間激しく振とうして均一な粘土分散液を得た。また、ポリアクリル酸ナトリウム2gと純水198mlを回転子とともにプラスチック製密封容器に入れ、22℃で2時間激しく振とうした後に、さらにホモジナイザーを用いて回転速度10000rpmで7分間撹拌して、均一な添加剤含有液を得た。
次に、この粘土分散液と添加剤含有液とを回転子とともにプラスチック製密封容器に入れた。粘土分散液と添加剤含有液との量比は、質量比で3対7である。22℃で2時間激しく振とうした後に、さらにホモジナイザーを用いて回転速度10000rpmで20分間撹拌して、粘土の含有量が50質量%未満の均一な粘土含有液を得た。
この粘土含有液を脱気することなく用い、参考例3と同様にして、厚さ約20μmの均一な粘土膜を得た。粘土膜の柔軟性を確認するため、半径6mmの円筒状に湾曲させたが、クラックなどは発生せず、何の欠陥も生じなかった。また、参考例1と同様にして全光線透過率を測定したところ91.8%で、ヘイズ(曇度)を測定したところ6.3%であった。
参考例4〕
粘土として合成サポナイト(クニミネ工業株式会社製のスメクトンSA)、添加剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウム(アルドリッチ株式会社製)をそれぞれ使用した。
粘土1.0gと純水89mlとを回転子とともにプラスチック製密封容器に入れ、25℃で2時間激しく振とうして粘土分散液を得た。また、カルボキシメチルセルロースナトリウム0.18gと純水30mlとを回転子とともにプラスチック製密封容器に入れ、25℃で2時間激しく振とうした後、さらにホモジナイザーを用いて回転速度10000rpmで10分間撹拌し、添加剤含有液を得た。
次に、この粘土分散液と添加剤含有液とを混ぜ合わせて2時間激しく振とうした後、さらにホモジナイザーを用いて回転速度10000rpmで10分間撹拌し、固形分濃度1質量%の粘土含有液を得た。そして、この粘土含有液を、軸の周りを公転しながら自転する容器を備えた自転−公転型攪拌脱気装置AR−100(株式会社シンキー製)で5分間撹拌した。その後、自転を停止させ公転運動のみの遠心力にて混入気泡を除去する脱気モードにて2分間脱気した。得られた粘土含有液を、プラスチック製のディスポトレイに入れ厚み約5mm以下の薄い液膜状とし、0.08MPa以下の減圧下で10分間真空脱気した。
B6サイズの真鍮板に厚さ1mmのテフロン製のガイドを付けて作製したトレイ内に、参考例3で用いたものと同じPETフィルムを入れ、PETフィルムのシリコーン樹脂が塗布された面に20.1gの粘土含有液(厚さ3mm)を塗布した。そして、塗布した粘土含有液の液面をガラス棒で平滑化した。
この粘土含有液が入ったトレイをオーブン内に入れ、60℃の温度条件下で約5時間加熱して乾燥させた。乾燥後、得られた粘土層をPETフィルムから剥離し、厚さ約14μmの均一な透明粘土膜を得た。
参考例1と同様にして粘土膜の全光線透過率を測定したところ91.3%で、ヘイズ(曇度)を測定したところ3.5%であった。
参考例5〕
粘土として天然モンモリロナイト(クニミネ工業株式会社製のクニピアF)、添加剤としてポリアクリル酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を使用した。
粘土27.4gと純水658mlを回転子とともにプラスチック製密封容器に入れ、25℃で2時間激しく振とうして均一な粘土分散液を得た。また、ポリアクリル酸ナトリウム1.44gと純水142mlを回転子とともにプラスチック製密封容器に入れ、25℃で2時間激しく振とうした後に、さらにホモジナイザーを用いて回転速度10000rpmで7分間撹拌して、均一な添加剤含有液を得た。このとき、添加剤含有液は発熱して温度が約60℃に上昇しており、液の粘度は低下していた。
次に、この粘土分散液と添加剤含有液とを回転子とともにプラスチック製密封容器に入れ、25℃で2時間激しく振とうした後に、さらにホモジナイザーを用いて回転速度10000rpmで20分間撹拌して、均一な粘土含有液を得た。このとき、粘土含有液は発熱して温度が約90℃に上昇しており、粘土含有液の粘度は低下していた。そして、約90℃の粘土含有液を直ちに真空脱気装置に入れ、0.08MPa以下の減圧下で20分脱気を行った。
次に、この粘土含有液を、真鍮製トレイの表面のうち平坦部分に塗布した。粘土含有液の塗布にはステンレス製地べらを用い、スペーサーをガイドとして利用することにより、均一な厚さの粘土含有液膜を形成した。このトレイを強制送風式オーブン内に入れ、60℃の温度条件下で約6時間加熱して乾燥させた。生成した粘土膜をトレイから剥離し、厚さ約40μmの均一な粘土膜を得た。得られた粘土膜は、十分な機械的強度を有しているため自立膜として使用可能であり、また柔軟性に優れていた。
粘土膜の柔軟性を確認するため、半径6mmの円筒状に湾曲させたが、クラックなどは発生せず、何の欠陥も生じなかった。
〔比較例6〕
粘土として天然モンモリロナイト(クニミネ工業株式会社製のクニピアF)、添加剤としてポリアクリル酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を使用した。
粘土27.4gと純水658mlを回転子とともにプラスチック製密封容器に入れ、25℃で2時間激しく振とうして均一な粘土分散液を得た。この粘土分散液にポリアクリル酸ナトリウム1.44gを加え、25℃で2時間激しく振とうしたが、大きな凝集体が多数発生し、粘土膜の作製に適した粘土含有液を得ることはできなかった。
参考例6〕
粘土として天然モンモリロナイト(クニミネ工業株式会社製のクニピアF)、添加剤としてイプシロンカプロラクタム(和光純薬工業株式会社製)を使用した。
粘土27.4gと純水600mlを回転子とともにプラスチック製密封容器に入れ、25℃で2時間激しく振とうして均一な粘土分散液を得た。また、イプシロンカプロラクタム1.44gと純水58mlを回転子とともにプラスチック製密封容器に入れ、スターラーで攪拌して均一な添加剤含有液を得た。
次に、この粘土分散液と添加剤含有液とを回転子とともにプラスチック製密封容器に入れ、25℃で1時間激しく振とうした後に、さらにホモジナイザーを用いて回転速度10000rpmで20分間撹拌して、均一な粘土含有液を得た。このとき、粘土含有液は発熱して温度が約90℃に上昇しており、粘土含有液の粘度は低下していた。そして、約90℃の粘土含有液を真空脱気装置に入れ、0.08MPa以下の減圧下で脱気を40分間行った。脱気を開始して約15分経過した後は、粘土含有液からの泡の発生はほとんど認められなかった。
次に、この粘土含有液を、真鍮製トレイの表面のうち平坦部分に塗布した。粘土含有液の塗布にはステンレス製地べらを用い、スペーサーをガイドとして利用することにより、均一な厚さの粘土含有液膜を形成した。このトレイを強制送風式オーブン内に入れ、60℃の温度条件下で約6時間加熱して乾燥させた。生成した粘土膜をトレイから剥離し、厚さ約30μmの均一な粘土膜を得た。得られた粘土膜は、十分な機械的強度を有しているため自立膜として使用可能であり、また柔軟性に優れていた。
この粘土膜を、毎分約18℃の温度上昇速度で300℃まで加熱し、300℃で1時間保持した後に観察した。すると、粘土膜はやや黒化したものの、肉眼で確認できる膨れ上がりは認められなかった。この粘土膜の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、内部はかなり均一であることが分かった(図4を参照)。
この粘土膜の寸法安定性を確認するため、参考例1と同様にして線膨張係数を測定した。試料幅は3mm、荷重は5gとした。昇温レート5 ℃/minで148℃まで加熱し、1時間その温度を保った後、38℃まで冷却した。そして、直ちに昇温レート5 ℃/minで299℃まで加熱して線膨張係数を測定した。その結果、40℃から299℃の温度範囲における線膨張係数は1.2〜8.0ppm/℃であった。
この粘土膜が、粘土結晶の層が高度に配向して緻密に積層したものであるかどうかを確認するため、参考例1と同様にしてX線回折による分析を実施した。得られたX線回折スペクトル(図5を参照)には、2θで6.48の位置(層間距離に換算して1.36nm)に明瞭なピークが認められ、粘土膜における粘土結晶の層が高度に積層して且つ緻密に配向していることが示された。
また、参考例1と同様に粘土膜の断面の電子顕微鏡写真を撮影したところ、同様に平均層間距離約1.2nmで粘土結晶の層が配向して緻密に積層していることが分かった(図6を参照)。電子顕微鏡写真から見積もられた平均層間距離がX線回折による分析からのそれより僅かに小さいのは、X線回折による分析は大気下であるのに対し、電子顕微鏡写真撮影は高真空下で行うためであると思われる。すなわち、粘土膜に混入していた水分が真空下で揮発したため、平均層間距離が僅かに縮んだことが原因であると推定される。
この粘土膜のガスバリア性を確認するために、参考例1と同様に酸素の透過係数を測定した。その結果、室温における酸素の透過係数が、3.2×10−11cm−1cmHg−1未満であることが確認され、高いガスバリア性能を示すことがわかった。
〔比較例7〕
参考例6と同様にして、粘土含有液を得た。ホモジナイザーを用いて撹拌したことにより温度が約90℃に上昇している粘土含有液を、常温で約30分放置して約30℃まで温度を下げた後、真空脱法装置に入れ、0.08MPa以下の減圧下で40分間脱気を行った。粘土含有液からの泡の発生は、脱気を行っている間は低頻度ではあるが最後まで認められた。
参考例6と同様に、この粘土含有液を用いて厚さ約30μmの均一な粘土膜を得た。得られた粘土膜は、十分な機械的強度を有しているため自立膜として使用可能であり、また柔軟性に優れていた。
この粘土膜を、毎分約18℃の温度上昇速度で300℃まで加熱し、300℃で1時間保持した後に観察した。すると、粘土膜はやや黒化し、直径1〜5mm程度の円形の膨れ上がりがスポット的に多数認められた。この膜の断面をSEMで観察したところ、多数の細かな空隙が観察された(図7を参照)。これらのことは、粘土含有液に含まれる気体成分の除去が不十分である場合は、粘土含有液に混入した気体成分由来の気泡(空隙)が粘土膜の内部に多く残り、加熱時に前述のような円形の膨れ上がりが発生する可能性があることを示している。
参考例7〕
粘土として疎水性ヘクトライト(コープケミカル株式会社製のルーセンタイトSAN)、添加剤としてアサフレックスL451(旭化成ケミカルズ株式会社製)を使用した。
粘土8.5gを、トルエン62gとメタノール12gとの混合溶媒とともに三角フラスコに入れ、約25℃で2時間回転子により攪拌して均一な粘土分散液を得た。また、アサフレックスL4511.5gとトルエン16gを三角フラスコに入れ、1時間回転子により攪拌して均一な添加剤含有液を得た。
次に、この粘土分散液と添加剤含有液とを別の三角フラスコ中で混合し、約25℃で2時間回転子により攪拌して、均一な粘土含有液を得た。そして、この粘土含有液を減圧下におき、攪拌しながら数分間脱気を行った。
参考例4で用いたものと同じ真鍮製トレイの内面をアルミ箔で覆い、アルミ箔のうちトレイの底面に面する部分を平坦に均した。参考例3で用いたものと同じPETフィルムをトレイ内に入れ(すなわちアルミ箔上に載せ)、PETフィルムに粘土含有液を塗布した。粘土含有液の塗布にはガラス製の棒を用い、スペーサーをガイドとして利用することにより、均一な厚さの粘土含有液膜を形成した。
このトレイをホットプレート上に載せ、80℃の温度条件で約30分加熱して乾燥させた。生成した粘土膜をPETフィルムから剥離し、厚さ約57μmの均一な粘土膜を得た。得られた粘土膜は、十分な機械的強度を有しているため自立膜として使用可能であり、また柔軟性を有していた。
粘土膜の透明性を確認するため、参考例1と同様にして透過率を測定したところ、360nmから800nmまでの範囲で85%以上の透過率を有し、着色は認められなかった。さらに、参考例1と同様にして全光線透過率を測定したところ90.1%で、ヘイズ(曇度)を測定したところ1.6%であった。
この粘土膜を200℃で30分大気中で加熱し、同様に透過率を測定したところ、420nmから800nmまでの範囲で85%以上の透過率を有し、着色は認められなかった。さらに同様にして全光線透過率を測定したところ91.1%で、ヘイズ(曇度)を測定したところ1.7%であった。
さらに、この粘土膜を24℃の水に24時間浸漬させたところ、肉眼で確認できる変化はなく、強度もほとんど低下しておらず、高い耐水性を有していることが分かった。浸漬前後での重量変化から計算された浸漬に伴う吸水率は約1.9%であった。
〔比較例8〕
粘土として疎水性ヘクトライト(コープケミカル株式会社製のルーセンタイトSAN)、添加剤としてアサフレックスL451(旭化成ケミカルズ株式会社製)を使用した。
粘土8.0gとトルエン80gを三角フラスコに入れ、約25℃で3時間回転子により攪拌して均一な粘土分散液を得た。また、アサフレックスL451 1.5gとトルエン10gを三角フラスコに入れ、約25℃で1時間回転子により攪拌して均一な添加剤含有液を得た。
この粘土含有液を用いて、参考例7と同様にして、厚さ約84μmの均一な粘土膜を得た。得られた粘土膜は、十分な機械的強度を有しているため自立膜として使用可能であり、またフレキシビリティーを有していた。
粘土膜の透明性を確認するため、参考例1と同様にして透過率を測定したところ、85%以上の透過率を有する領域はなく、着色は認められなかった。さらに、参考例1と同様にして全光線透過率を測定したところ90.8%で、ヘイズ(曇度)を測定したところ23.8%であった。
参考例8〕
参考例1と同様にして、同様の組成の粘土含有液を調整した。B4サイズの真鍮製トレイ内に、参考例3と同じPETフィルムを入れ(PETフィルムは粘着テープでトレイに固定しない)、PETフィルムのシリコーン樹脂が塗布された面に粘土含有液を塗布した。粘土含有液の塗布にはステンレス製地べらを用い、スペーサーをガイドとして利用することにより、均一な厚さの粘土含有液膜を形成した。
このトレイを強制送風式オーブン内に入れ、60℃の温度条件で約6時間加熱して、支持体であるPETフィルムが変形可能な状態で乾燥させた。乾燥終了直後は、PETフィルムは粘土膜と一体化して湾曲し、その一部分はトレイの底面に接触せず離れた状態となっていた。生成した粘土膜をPETフィルムごと取り出した後、大気中で30分放置して湾曲がほとんどなくなったら、粘土膜をPETフィルムから剥離して、厚さ約22μmの均一な粘土膜を得た。
得られた粘土膜は、自立膜として使用可能な機械的強度を有していた。また、透明度が高く、フレキシビリティーに優れていた。さらに、膜全体に渡って割れやクラックの発生は認められなかった。
粘土膜の柔軟性を確認するため、半径6mmの円筒状に湾曲させたが、クラックなどは発生せず、何の欠陥も生じなかった。また、参考例1と同様にして透過率を測定したところ、波長500nmにおける透過率は89.3%であり、264nmから800nmまでの範囲で80%以上の透過率を有していた。参考例1と同様に測定した粘土膜の全光線透過率は92.0%であり、ヘイズ(曇度)は1.6%であった。
〔比較例9〕
周囲に枠があり且つ肉厚であるため容易に変形することができないB4サイズのポリプロピレン製トレイを用意した。そして、このトレイの表面のうち平坦部分に、参考例8で用いたものと同様の粘土含有液を塗布した。粘土含有液の塗布にはステンレス製地べらを用い、スペーサーをガイドとして利用することにより、均一な厚さの粘土含有液膜を形成した。
このトレイを強制送風式オーブン内に入れ、60℃の温度条件で約6時間加熱して乾燥させた。乾燥終了時点でトレイは変形しておらず、粘土膜のほぼ全面がトレイの表面に付着しており、粘土膜の一部にクラックが発生していた。生成した粘土膜をトレイから剥離し、厚さ約22μmの均一な粘土膜を得た。得られた粘土膜は、自立膜として使用可能な機械的強度を有していた。また、透明度が高く、フレキシビリティーに優れていた。ただし、前述のように粘土膜の一部にクラックが発生していたため、粘土膜が複数の部分に分裂してしまい、B4サイズの粘土膜は得られなかった。
粘土膜の柔軟性を確認するため、半径6mmの円筒状に湾曲させたが、新たなクラックなどは発生しなかった。また、参考例1と同様にして透過率を測定したところ、波長500nmにおける透過率は89.0%であり、312nmから800nmまでの範囲で85%以上の透過率を有していた。参考例1と同様に測定した粘土膜の全光線透過率は91.7%であり、ヘイズ(曇度)は2.3%であった。
〔実施例9〕
参考例8と同様にして、厚さ約21μmの均一な粘土膜(一次乾燥膜)を得た。得られた粘土膜は、自立膜として使用可能な機械的強度を有していた。また、透明度が高く、フレキシビリティーに優れていた。参考例1と同様にして測定した粘土膜の全光線透過率は91.5%で、ヘイズは1.8%であった。また、ケーエルエー・テンコール社製の表面粗さ計「アルファステップIQ」で測定した粘土膜の表面粗さは、Raで39nmであった。
この粘土膜を製膜後直ちに純水に約5秒間浸漬し、引き上げた後、シリコーン樹脂を表面に塗布した前述と同様のPETフィルムの間に挟んだ。このとき、両PETフィルムの平滑面が粘土膜に接触するようにした。次に、表面が平滑なガラスのローラーをPETフィルム上で転がして粘土膜を伸ばし余分な水分を押し出した後に、一方のPETフィルムを剥離し、約20℃にて一昼夜放置して乾燥させた。乾燥した粘土膜を他方のPETフィルムから剥離し、厚さ約10μmの均一な粘土膜を得た。得られた透明な粘土膜は32MPaの引張り強度を有し、自立膜として使用可能な機械的強度を有していた。また、透明度が高く、フレキシビリティーに優れていた。
透明な粘土膜の柔軟性を確認するため、半径6mmの円筒状に湾曲させたが、クラックなどは発生せず、何の欠陥も生じなかった。また、粘土膜の透明性を確認するため、参考例1と同様にして波長190nm以上800nm以下の波長範囲における透過率を測定したところ、312nmから800nmまでの範囲で85%以上の透過率を有し、着色は認められなかった。さらに、参考例1と同様にして測定した透明な粘土膜の全光線透過率は91.7%であり、ヘイズは1.5%であった。さらに、同様にして測定した粘土膜の表面粗さは、Raで35nmであった。
この透明な粘土膜を、1気圧、温度24℃、湿度45%に保持されたクリーンルーム中で1週間放置した後に、前述と同様にして全光線透過率及びヘイズを測定したところ、全光線透過率は91.8%であり、ヘイズは1.6%であった。さらに1ヵ月間放置した後に同様の測定を実施したところ、全光線透過率は91.9%であり、ヘイズは1.5%であった。
〔比較例10〕
参考例8と同様にして、厚さ約19μmの均一な粘土膜を得た。得られた粘土膜は、自立膜として使用可能な機械的強度を有していた。また、透明度が高く、フレキシビリティーに優れていた。参考例1と同様にして測定した粘土膜の全光線透過率は91.7%で、ヘイズは2.3%であった。また、実施例9と同様に測定した粘土膜の表面粗さは、Raで47nmであった。
この粘土膜を24℃,1気圧,湿度45%に保持されたクリーンルーム中で放置しておいたところ、1週間後にはヘイズが16.8%に、1ヵ月後には24.3%にまで増大した。また、1ヵ月放置後の粘土膜の表面粗さは、Raで109nmであった。
〔実施例10〕
比較例9と同様にして作製した一次乾燥膜を、1気圧,温度24℃,湿度45%に保持されたクリーンルーム中で1ヶ月放置した。すると、ヘイズが26.5%まで増大した厚さ約23μmの粘土膜が得られた。この粘土膜に、表面を洗い流すようにして純水を噴霧し、粘土膜を膨潤させた後に、シリコーン樹脂を表面に塗布したPETフィルムの間に挟んだ。このとき、両PETフィルムの平滑面が粘土膜に接触するようにした。
次に、実施例9と同様にして表面が平滑なガラスのローラーをPETフィルム上で転がして粘土膜を伸ばし余分な水分を押し出した後に、一方のPETフィルムを剥離し、24℃にて一昼夜放置して乾燥させた。乾燥した粘土膜を他方のPETフィルムから剥離し、厚さ約12μmの均一な粘土膜を得た。得られた透明な粘土膜の引張り強度は22MPaであり、自立膜として使用可能な機械的強度を有していた。また、透明度が高く、フレキシビリティーに優れていた。
透明な粘土膜の柔軟性を確認するため、半径6mmの円筒状に湾曲させたが、クラックなどは発生せず、何の欠陥も生じなかった。また、粘土膜の透明性を確認するため、参考例1と同様にして波長190nm以上800nm以下の波長範囲における透過率を測定したところ、328nmから800nmまでの範囲で85%以上の透過率を有し、着色は認められなかった。さらに、参考例1と同様にして測定した透明な粘土膜の全光線透過率は91.8%であり、ヘイズは0.63%であった。さらに、参考例1と同様にして測定した粘土膜の表面粗さは、Raで23nmであった。
この透明な粘土膜を、1気圧、温度24℃、湿度45%に保持されたクリーンルーム中で1週間放置した後に、前述と同様にして全光線透過率及びヘイズを測定したところ、全光線透過率は91.7%であり、ヘイズは0.68%であった。さらに1ヵ月間放置した後に同様の測定を実施したところ、全光線透過率は91.9%であり、ヘイズは0.65%であった。
〔比較例11〕
比較例2と同様にして、厚さ約17μmの均一な粘土膜を得た。得られた粘土膜は、自立膜として使用可能な機械的強度を有していた。また、透明度が高く、フレキシビリティーに優れていた。参考例1と同様にして測定した粘土膜の全光線透過率は91.8%で、ヘイズは7.0%であった。また、実施例9と同様に測定した粘土膜の表面粗さは、Raで55nmであった。
この粘土膜を24℃,1気圧,湿度45%に保持されたクリーンルーム中で放置しておいたところ、1週間後にはヘイズが21.4%に、1ヵ月後には27.0%にまで増大した。また、1ヵ月放置後の粘土膜の表面粗さは、Raで122nmであった。
〔実施例11〕
比較例11においてヘイズが27.0%にまで増大した一次乾燥膜を純水に約5秒間浸漬し、引き上げた後、シリコーン樹脂を表面に塗布したPETフィルムの間に挟んだ。このとき、両PETフィルムの平滑面が粘土膜に接触するようにした。次に、表面が平滑なガラスのローラーをPETフィルム上で転がして粘土膜を伸ばし余分な水分を押し出した後に、一方のPETフィルムを剥離し、約20℃にて一昼夜放置して乾燥させた。乾燥した粘土膜を他方のPETフィルムから剥離し、厚さ約12μmの均一な粘土膜を得た。得られた透明な粘土膜の引張り強度は35MPaであり、自立膜として使用可能な機械的強度を有していた。また、透明度が高く、フレキシビリティーに優れていた。
透明な粘土膜の柔軟性を確認するため、半径6mmの円筒状に湾曲させたが、クラックなどは発生せず、何の欠陥も生じなかった。また、粘土膜の透明性を確認するため、参考例1と同様にして波長190nm以上800nm以下の波長範囲における透過率を測定したところ、321nmから800nmまでの範囲で85%以上の透過率を有し、着色は認められなかった。さらに、参考例1と同様にして測定した透明な粘土膜の全光線透過率は92.0%であり、ヘイズは0.83%であった。さらに、実施例9と同様に測定した粘土膜の表面粗さは、Raで32nmであった。
この透明な粘土膜を、1気圧、温度24℃、湿度45%に保持されたクリーンルーム中で1週間放置した後に、前述と同様にして全光線透過率及びヘイズを測定したところ、全光線透過率は92.0%であり、ヘイズは0.86%であった。さらに1ヵ月間放置した後に同様の測定を実施したところ、全光線透過率は92.1%であり、ヘイズは0.84%であった。
参考例12〕
比較例11においてヘイズが27.0%にまで増大した一次乾燥膜に、表面を洗い流すようにして純水を噴霧し、粘土膜を膨潤させた後に、シリコーン樹脂を表面に塗布したPETフィルムの間に挟んだ。このとき、両PETフィルムの平滑面が粘土膜に接触するようにした。次に、参考例1と同様にして表面が平滑なガラスのローラーをPETフィルム上で転がして粘土膜を伸ばし余分な水分を押し出した後に、一方のPETフィルムを剥離し、約20℃にて一昼夜放置して乾燥させた。乾燥した粘土膜を他方のPETフィルムから剥離し、厚さ約10μmの均一な粘土膜を得た。得られた透明な粘土膜の引張り強度は31MPaであり、自立膜として使用可能な機械的強度を有していた。また、透明度が高く、フレキシビリティーに優れていた。
透明な粘土膜の柔軟性を確認するため、半径6mmの円筒状に湾曲させたが、クラックなどは発生せず、何の欠陥も生じなかった。また、粘土膜の透明性を確認するため、参考例1と同様にして波長190nm以上800nm以下の波長範囲における透過率を測定したところ、305nmから800nmまでの範囲で85%以上の透過率を有し、着色は認められなかった。さらに、参考例1と同様にして測定した透明な粘土膜の全光線透過率は91.9%であり、ヘイズは0.62%であった。さらに、参考例1と同様にして測定した粘土膜の表面粗さは、Raで26nmであった。
この透明な粘土膜を、1気圧,温度24℃,湿度45%に保持されたクリーンルーム中で1週間放置した後に、前述と同様にして全光線透過率及びヘイズを測定したところ、全光線透過率は92.0%であり、ヘイズは0.64%であった。さらに1ヵ月間放置した後に同様の測定を実施したところ、全光線透過率は92.1%であり、ヘイズは0.65%であった。
本発明の粘土膜の製造方法は、粘土や添加剤が均一に分散し、割れ,クラック等の欠陥が発生しにくく、自立膜として利用可能な強度を有する粘土膜を製造することができる。また、本発明の粘土膜は、粘土や添加剤が均一に分散しており、割れ,クラック等の欠陥が少なく、自立膜として利用可能な強度を有する粘土膜である。それに加えて、光線透過率が高く且つヘイズが小さく、大気中に放置してもヘイズの経時による増大が生じにくい透明な粘土膜である。

Claims (28)

  1. 粘土を溶媒に分散させた粘土分散液と、添加剤を溶媒に分散又は溶解させた添加剤含有液と、をそれぞれ調製し、前記粘土及び前記添加剤の合計量中の前記添加剤の割合が0質量%超過50質量%以下となるように前記粘土分散液と前記添加剤含有液とを混合して粘土含有液を得る粘土含有液調整工程と、
    この粘土含有液を支持体の表面に配した後に前記溶媒を除去して乾燥する乾燥工程と、
    前記乾燥工程により得られた乾燥物の表面に、前記粘土を膨潤させる液体又は前記添加剤を溶解若しくは分散させる液体を配し、再乾燥させる再乾燥工程と
    を有することを特徴とする粘土膜の製造方法。
  2. 粘土を溶媒に分散させた粘土分散液と、添加剤を溶媒に分散又は溶解させた添加剤含有液と、をそれぞれ調製し、前記粘土及び前記添加剤の合計量中の前記添加剤の割合が0質量%超過30質量%以下となるように前記粘土分散液と前記添加剤含有液とを混合して粘土含有液を得る粘土含有液調整工程と、
    この粘土含有液を支持体の表面に配した後に前記溶媒を除去して乾燥する乾燥工程と、
    前記乾燥工程により得られた乾燥物の表面に、前記粘土を膨潤させる液体又は前記添加剤を溶解若しくは分散させる液体を配し、再乾燥させる再乾燥工程と
    を有することを特徴とする粘土膜の製造方法。
  3. 前記粘土含有液に含まれる気体を減少させる脱気工程を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の粘土膜の製造方法。
  4. 前記乾燥工程により得られた乾燥物を前記支持体から剥離する剥離工程を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の粘土膜の製造方法。
  5. 前記粘土含有液調整工程においては、常温よりも高い温度で前記粘土分散液と前記添加剤含有液とを混合して前記粘土含有液を得ることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の粘土膜の製造方法。
  6. 前記粘土含有液を常温よりも高い温度とするとともに減圧下に置き、前記粘土含有液に含まれる気体を減少させることを特徴とする請求項3に記載の粘土膜の製造方法。
  7. 前記粘土含有液を常温よりも高い温度とするとともに減圧下で撹拌することにより、前記粘土含有液に含まれる気体を減少させることを特徴とする請求項3に記載の粘土膜の製造方法。
  8. 前記支持体は柔軟性を有しており、前記支持体が変形可能な状態で乾燥した後に前記乾燥物を前記支持体から剥離することを特徴とする請求項4に記載の粘土膜の製造方法。
  9. 前記支持体が樹脂製フィルムであることを特徴とする請求項8に記載の粘土膜の製造方法。
  10. 前記支持体に剥離容易化処理が施されていることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の粘土膜の製造方法。
  11. 前記支持体に撥水加工処理が施されていることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の粘土膜の製造方法。
  12. 前記液体に浸漬することにより、前記乾燥物の表面に前記液体を配することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の粘土膜の製造方法。
  13. 前記液体を吹き付けることにより、前記乾燥物の表面に前記液体を配することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の粘土膜の製造方法。
  14. 表面に前記液体を配することにより少なくとも表面近傍部分が膨潤した前記乾燥物を、表面が平滑な平滑部材に接触させて、その表面を平滑化した後に、前記液体を再乾燥させることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の粘土膜の製造方法。
  15. 前記平滑部材は柔軟性を有して変形可能であり、前記乾燥物が前記平滑部材に接触している状態で前記液体を再乾燥させることを特徴とする請求項14に記載の粘土膜の製造方法。
  16. 前記粘土は、水に対する親和性が高く水に分散しやすい親水性粘土であることを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載の粘土膜の製造方法。
  17. 前記粘土は、有機溶媒に対する親和性が高く有機溶媒に分散しやすい疎水性粘土であることを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載の粘土膜の製造方法。
  18. 前記疎水性粘土は、親水性粘土が備える無機イオンを有機イオンに交換することにより有機溶媒への親和性及び分散性を向上させたものであり、前記有機イオンが、アンモニウムイオン,フォスフォニウムイオン,イミダゾリウムイオンの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項17に記載の粘土膜の製造方法。
  19. 得られる粘土膜が透明であることを特徴とする請求項1〜18のいずれか一項に記載の粘土膜の製造方法。
  20. 請求項1〜19のいずれか一項に記載の粘土膜の製造方法で製造された粘土膜であって、層状の粘土結晶が膜厚方向に積層してなり、ヘイズが1%未満であるとともに、全光線透過率が85%以上で、400nm以上800nm以下の波長範囲における光線透過率が85%以上95%以下であることを特徴とする粘土膜。
  21. 30℃から250℃までの平均の線膨張係数が10ppm以下であることを特徴とする請求項20に記載の粘土膜。
  22. 24℃,1気圧,湿度45%の環境下におけるヘイズの経時変化が−2%以上2%以下であることを特徴とする請求項20又は請求項21に記載の粘土膜。
  23. 膜厚が15μmよりも厚いことを特徴とする請求項20〜22のいずれか一項に記載の粘土膜。
  24. 請求項20〜23のいずれか一項に記載の粘土膜で、少なくとも一部分が構成されたことを特徴とする電子ペーパー。
  25. 請求項20〜23のいずれか一項に記載の粘土膜で、少なくとも一部分が構成されたことを特徴とするフレキシブル基板。
  26. 請求項20〜23のいずれか一項に記載の粘土膜で、少なくとも一部分が構成されたことを特徴とするフレキシブルプリント基板。
  27. 非発光有機半導体又はアモルファス無機半導体を備える電子デバイスが実装され、ガスバリア性を有する基板であって、請求項20〜23のいずれか一項に記載の粘土膜で、少なくとも一部分が構成されたことを特徴とする基板。
  28. 非発光有機半導体又はアモルファス無機半導体を備える電子デバイスをガスから保護するガスバリア膜であって、請求項20〜23のいずれか一項に記載の粘土膜で、少なくとも一部分が構成されたことを特徴とするガスバリア膜。
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