JP5688783B2 - 粘土膜及びその製造方法 - Google Patents
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Description
フレキシブル回路基板としては、現在の所、ポリエチレンテレフタレート,ポリカーボネート,ポリイミド等の樹脂で形成された基板や、特殊なガラスエポキシ基板が用いられている。ところが、導電性ペーストのような導電性インクを用いて回路配線を印刷や塗布で形成するプリント基板を製造する際には、十分に高い導電率の配線を得るために、導電性インクを塗布した後に一般に300℃以上の高温で焼成する必要があるが、前記のような樹脂で形成された基板を用いたフレキシブル回路基板の場合は、樹脂の耐熱性が低く線膨張係数も一般的に大きいために前述の高温焼成を行うことができず、比較的低い温度で行わなければならない。
しかしながら、それらのナノコンポジット材料においては粘土の割合が少量であるため、本質的にガスバリア性や難燃性は大きくは向上しなかった。例えばガスバリア性をとってみると、粘土の添加によってガスの透過率が数分の一程度になる事例もあるが、一桁以上ガスバリア性が向上する事例はほとんどない。また、ガスが透過する際の気体の移動経路を長くしてガスバリア性を向上させる目的から、結晶サイズの大きな天然モンモリロナイトや合成雲母を用いる場合が多いが、この場合は、天然モンモリロナイト由来の黄色い着色や、合成雲母の大きなサイズ由来の光の散乱等の要因で、ディスプレイ等にも使えるようなヘイズ(曇度)が小さく無色で透明性の高い膜を得ることは困難であった。同様に、粘土の添加量が少ない場合には、ガスバリア性以外の他の物性、例えば耐熱性や温度変化時の寸法安定性を大幅に向上させることは難しく、高耐熱で寸法安定性に優れる粘土の本質的な特性が十分生かされているとは言い難いものであった。
しかしながら、特許文献5には、粘土の含有量を20質量%未満にしないと製造工程で粘土が部分的に凝集すると記載されている。その結果、ヘイズが増大して透明とは言い難い状態(ヘイズ値で50%以上)になるとともに、靭性の低下も顕著になることが示されている。すなわち、これらは従来の粘土を少量添加したナノコンポジット体と同等のものであり、粘土を主体とすることによってガスバリア性や寸法安定性を大きく高めた膜とは言い難いものであった。
そして、粘土を主とし且つ粘土結晶の層を密に且つ高度に配向させた粘土膜が、従来の粘土の割合が少ないものと比較して、(1)高耐熱性を有する、(2)酸素や水素等の無機ガスに対して高いガスバリア性を有する、(3)膜にピンホールがない、(4)柔軟性を有する、(5)耐薬品性を有する、(6)線膨張係数が低い、(7)難燃性を有する、(8)絶縁性を有する、といった特徴を共通して保有することを確認し、前述したパッキンを構成する材料や、前述したディスプレイ用部材、フレキシブル回路基板等の電子材料用途に好適であることを見出した。
また、従来の粘土と添加剤とからなる透明な粘土膜は、大気中に長時間放置しておくとヘイズが増大し、粘土膜が曇って透明性が低下していく場合があった。このヘイズの経時による増大は、粘土膜の表面の凸凹が時間とともに増大していくことにより生じる。
そこで、本発明は、前述のような従来技術が有する問題点を解決し、粘土や添加剤が均一に分散し、割れ,クラック等の欠陥が発生しにくく、自立膜として利用可能な強度を有する粘土膜及びその製造方法を提供することを課題とする。また、それに加えて、光線透過率が高く且つヘイズが小さく、大気中に放置してもヘイズの経時による増大が生じにくい透明な粘土膜及びその製造方法を提供することを併せて課題とする。さらに、このような粘土膜を備えた電子ペーパー,基板,及びガスバリア膜を提供することを併せて課題とする。
また、前記粘土含有液調整工程においては、常温よりも高い温度で前記粘土分散液と前記添加剤含有液とを混合して前記粘土含有液を得ることが好ましい。
さらに、前記粘土含有液を常温よりも高い温度とするとともに減圧下に置き、前記粘土含有液に含まれる気体を減少させることが好ましく、前記粘土含有液を常温よりも高い温度とするとともに減圧下で撹拌することにより、前記粘土含有液に含まれる気体を減少させることがより好ましい。
さらに、本発明の粘土膜の製造方法は、前記乾燥工程により得られた乾燥物の表面に、前記粘土を膨潤させる液体又は前記添加剤を溶解若しくは分散させる液体を配し、再乾燥させる再乾燥工程を有していてもよい。このとき、前記液体に浸漬することにより前記乾燥物の表面に前記液体を配してもよいし、前記液体を吹き付けることにより前記乾燥物の表面に前記液体を配してもよい。
さらに、本発明の粘土膜の製造方法においては、前記粘土は、水に対する親和性が高く水に分散しやすい親水性粘土であることが好ましい。また、前記粘土は、有機溶媒に対する親和性が高く有機溶媒に分散しやすい疎水性粘土であってもよい。疎水性粘土である場合は、親水性粘土が備える無機イオンを有機イオンに交換することにより有機溶媒への親和性及び分散性を向上させた疎水性粘土が好ましく、前記有機イオンが、アンモニウムイオン,フォスフォニウムイオン,イミダゾリウムイオンの少なくとも1つを含むことが好ましい。
さらに、本発明の粘土膜は、前述のような本発明の粘土膜の製造方法で製造された粘土膜であって、層状の粘土結晶が膜厚方向に積層してなることを特徴とする。そして、30℃から250℃までの平均の線膨張係数が10ppm以下であることが好ましい。
また、本発明の粘土膜は、ヘイズが5%以下であるとともに、全光線透過率が85%以上で、400nm以上800nm以下の波長範囲における光線透過率が85%以上95%以下であることが好ましい。ヘイズは、ヘイズが2%以下であることがより好ましく、ヘイズが1%未満であることがさらに好ましい。さらに、24℃,1気圧,湿度45%の環境下におけるヘイズの経時変化が−2%以上2%以下であることが好ましい。さらに、本発明の粘土膜は、膜厚が15μmよりも厚いことが好ましい。
さらに、本発明のフレキシブル基板は、前述のような本発明の粘土膜の製造方法により得られた粘土膜、又は、前述のような本発明の粘土膜で、少なくとも一部分が構成されたことを特徴とする。
さらに、本発明の基板は、非発光有機半導体又はアモルファス無機半導体を備える電子デバイスが実装され、ガスバリア性を有する基板であって、前述のような本発明の粘土膜の製造方法により得られた粘土膜、又は、前述のような本発明の粘土膜で、少なくとも一部分が構成されたことを特徴とする。
本発明において粘土分散液と添加剤含有液とを混合する際には常温で混合しても良いが、粘土分散液と添加剤含有液とを常温よりも高い温度で混合して粘土含有液を調製する方法は均一な粘土含有液を作製するという点、さらには粘土含有液の固形分濃度を上げるという点からより好ましい。そのような方法としては、粘土分散液と添加剤含有液とを混合して、ヒーター,温風,湯せん等の手法で加熱した後に攪拌,振とうにより混合する方法、上記手法で加熱しながら攪拌,振とうにより混合する方法、超音波分散装置,ホモジナイザー等でエネルギーを与え粘土含有液自体を発熱させながら攪拌,振とうにより混合する方法があげられる。
また、粘土と添加剤とをそれぞれ常温よりも高い温度で溶媒と混合することにより、粘土含有液の固形分濃度を高くすることが可能である。粘土含有液の固形分濃度を高くすれば、乾燥時間を短縮したり厚い粘土膜を製造することが容易となる。さらに、低粘度の粘土含有液は、支持体の表面のうち重力方向に対して直角をなす水平面にしか配することができず、傾斜面に配すると流れ落ちてしまうが、粘土含有液の固形分濃度を高くしてペースト状とすれば、傾斜面に対しても配することができる。また、流動性が低下することで支持体から粘土含有液が流れ出すことを防ぐことができるので、支持体に流れ出し防止のための工夫を施す必要がない(例えば枠などを設ける必要がない)。
粘土分散液,添加剤含有液,粘土含有液の調製における混合方法は、粘土や添加剤を十分に分散させることが可能であれば特に限定されるものではないが、前記容器を用いる方法は、強力な攪拌力と脱気能力により、分散又は溶解を短時間で行うことができるばかりでなく、液性限界を超えゲル化した状態でも攪拌することができるため、高い固形分濃度の粘土含有液を得るのに極めて好適である。
なお、前述の方法を複数を組み合わせた方法で、粘土膜の製造を行ってもよい。
本発明の製造方法で製造された粘土膜において、添加剤の割合が30質量%以下である場合には、気泡(空隙)が混入していると、加熱乾燥時に気泡が膨張して粘土膜を破壊したり、透明膜においては光線の散乱等により透明性が低下する等の問題が生じるおそれがある。また、一般的には粘土含有液は固形分濃度が高いほど粘度が上昇し、またチクソトロピー性が強くなるため、攪拌を停止すると流動性が失われる傾向が強くなる。その結果、粘土含有液に混入した気体成分を除去することが困難となってくる。実用的な乾燥速度が得られる固形分濃度の粘土含有液においては特にこの傾向が強く、粘土含有液に混入した気体成分は何らかの除去工程を通さないと減少させることは困難である。
さらに、粘土の割合が高い粘土膜に自立膜として利用可能な強度を付与するためには、ある程度以上の膜厚が必要となる。粘土膜の厚さは、10μmよりも厚いことが好ましく、15μmよりも厚いことがより好ましく、20μmよりも厚いことがさらに好ましく、30μmよりも厚いことが特に好ましく、50μmよりも厚いことが最も好ましい。これは、自立性が不要で、数μm以下の膜厚でも多くの場合に有効なコーティング膜の用途とは、大きく異なる点である。
得ようとする粘土膜の厚みを厚くするには、粘土含有液の粘土の濃度を上げる方法と、支持体上に配する粘土含有液の液膜を厚くする方法のいずれかが通常と考えられる。前者の方法の場合は、粘土の固形分濃度の増大に伴って粘土含有液の粘度が上昇し、さらにはチクソトロピー性も顕著になって粘土含有液の流動性が低下するため、混入した気体成分の除去を何らかの方法で十分に実施することが重要となる。また、後者の方法の場合でも、支持体上に配した液膜の厚みが厚くなると混入した気体成分の量が多くなるため、何らかの方法で混入した気体成分を十分除去することが重要となる。
また、粘土含有液を支持体上に配してから上記のような脱気操作を行っても良い。この場合、粘土含有液を支持体上に配することで薄い液膜とすることができ、タンク等に粘土含有液が厚い液膜の状態で入った形態で脱気操作を行う場合と比較して、効率よく気体成分を減少させることができる。
さらには、粘度を高め、場合によってはチクソトロピー性を顕著に発現させることにより流動性を低下させることが可能なため、前述のような支持体の制約を取り払うことができる。すなわち、ペースト状の粘土含有液は流動性が低いため、支持体に塗布した粘土含有液が流れ出さず、仕切られた容器等のような流れ出しを防止する構造を有する支持体を用いる必要がない。さらに、ペースト状の粘土含有液は、傾斜面にも塗布することができるなどの利点がある。なお、粘土含有液に増粘剤などを加えてペースト状としても、上記効果を奏することができる。
これらの方法のうち例えば加熱蒸発法を用いる場合は、例えば平坦なトレイを支持体として用い、これに粘土含有液を塗布するとよい。支持体の材質は特に限定されるものではないが、加熱時の温度に耐えられることが必要である。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリプロピレンのような樹脂からなるフィルム,基板や、ガラスやシリコンウェハがあげられる。また、真鍮,銅,ステンレス,アルミニウムのような金属からなる基板もあげることができる。支持体は、熱伝導率が高いほうが一般には好ましい。なお、粘土含有液の粘度が高いか又はチクソトロピー性が強く、塗布した粘土含有液が流れ出さない場合には、トレイのような粘土含有液の流れ出しを防止する構造のものである必要はなく、前述の材質からなる平坦な支持体を用いることもできる。
そのような場合には、体積収縮に伴う応力を吸収するために、柔軟性を有し変形しやすい支持体を使用することが好ましい。そうすれば、乾燥中に粘土膜自体が支持体とともに変形することが可能であるし、又は、体積収縮に伴う応力を緩和するような形状に支持体を積極的に変形させながら乾燥することが可能であるので、粘土膜の内部に残存する応力を緩和し、粘土膜の割れの発生を抑制することができる。
支持体の表面のうち少なくとも粘土膜と接触する部分には、支持体から粘土膜が容易に剥離するようにする剥離容易化処理又は撥水加工処理が施されていることが好ましい。あるいは、撥水性の強いポリプロピレン,ポリテトラフルオロエチレン等で支持体を構成することが好ましい。剥離容易化処理としては、例えば紫外線照射処理,電子線照射処理,イオンビーム照射処理,コロナ放電処理,プラズマ処理(例えばリモートプラズマ処理,フレームプラズマ処理),物理的処理(例えば接触面積が少なくなるように表面を加工する機械処理)があげられる。また、シリコーン樹脂のような密着性を低下させる樹脂を塗布する処理や、光,熱等の物理的刺激を受けて柔らかさやヤング率が変化する又は発泡することによって密着性を低下させる剥離性付与剤を塗布する処理があげられる。あるいは、これらの処理のうち複数を組み合わせてもよい。
支持体の表面は、できる限り平滑であることが好ましい。平滑でない場合には、粘土膜の表面に支持体の表面の荒れが転写されるため、粘土膜の表面平滑性が低下する。さらに透明膜にあっては光が乱反射し、ヘイズを増大させる原因となる。
ただし、最適な乾燥時間は、粘土膜の膜厚、粘土含有液の固形分濃度、用いる溶媒の種類等によって変わる。水は比熱が大きく乾燥に時間がかかるため、溶媒としては有機溶媒が好適であり、特に沸点が比較的低い溶媒が好適である。そして、溶媒として有機溶媒を用い粘土として疎水性粘土を用いる組み合わせが、乾燥時間の短縮には望ましい。なお、溶媒の沸点があまり低すぎると、粘土含有液を調整している最中に溶媒が揮発して固形分濃度が上昇してしまうばかりでなく、引火爆発等の危険性も上昇するため、量産性と安全性の両面を考慮して溶媒の種類を適宜選択することが好ましい。
粘土含有液を乾燥して得た一次乾燥膜の表面に前記液体(粘土を膨潤させる液体又は添加剤を溶解若しくは分散させる液体)を配する方法は特に限定されるものではないが、例えば、一次乾燥膜を前記液体の中に浸漬する方法でもよいし、スプレーのように前記液体を一次乾燥膜の表面に吹き付ける方法でもよい。あるいは、前記液体の高濃度の蒸気雰囲気下に一次乾燥膜をおく方法でもよい。
また、前記液体を一次乾燥膜の表面に吹き付ける方法や、流動している前記液体中に一次乾燥膜を浸漬する方法等によって、一次乾燥膜の表面を洗い流すようにして前記液体を配すると、膜の平滑化及び経時によるヘイズ増大の抑制に効果的な場合が多い。一次乾燥膜の表面に前記液体を配したら、前記液体が一次乾燥膜の表面に長時間滞留しないように、一次乾燥膜を水平状態から傾けた状態にして、前記液体が流れ落ちるようにするとよい。
前記液体の種類は、粘土を膨潤させるもの、又は、添加剤を溶解若しくは分散させるものであれば特に限定されるものではなく、粘土と添加剤の種類に応じて適宜選択すればよい。特に、水に膨潤する親水性粘土又は水に溶解する添加剤を有する粘土膜であれば、水が好適である。
また、上記のようにして前記液体を配した一次乾燥膜においては、粘土又は添加剤のどちらか一方が前記液体を吸収し、一次乾燥膜全体又は少なくとも前記液体が接している一次乾燥膜の表面近傍部分が膨潤する。このような状態においては、一次乾燥膜の表面が膨潤して表面積が大きくなるために平滑性が向上するばかりでなく、一次乾燥膜の表面はゲル状になって軟化しており、外力による変形が容易であるため、表面が平滑な平滑部材に軟化した一次乾燥膜の表面を一時的に接触させると、一次乾燥膜の表面が平滑部材の表面に追随するように変形して一次乾燥膜の表面が平滑化され、得られる粘土膜の表面の平滑性を向上させることができる。例えば、前記液体を配した一次乾燥膜を表面が平滑なガラス基板や樹脂フィルムの上に配することにより、表面が平滑化された粘土膜を得ることができる。さらに、その上から同様のガラス基板や樹脂フィルムを配し平滑部材で粘土膜を挟むことにより、粘土膜の両面を平滑化することもできる。
さらに、平滑部材に一次乾燥膜を接触させて平滑化する際には、積極的に外力を加えてもよい。例えば、前記液体を配した後の一次乾燥膜を平滑な樹脂フィルム上に配し、表面が平滑なローラーをその上で転がすことにより平滑化してもよいし、プレス等により外力を加えて一次乾燥膜を平滑部材に押し付けて平滑化してもよい。このとき、ローラーやプレス装置は直接一次乾燥膜に接触させてもよいし、ローラーやプレス装置等に一次乾燥膜が付着したりすることを防ぎたい場合には、剥離容易化処理等を必要に応じて施した平滑な樹脂フィルム等を介在させて外力を加えてもよい。
本発明の製造方法によって得られた粘土膜は、粘土含有液に含まれる気体成分が十分除去されているので、内部の気泡(空隙)等が極めて少ない。そのため、添加剤の耐熱性にもよるが、例えば急速に(例えば毎分15℃以上の温度上昇速度で)300℃まで加熱し一時間保持した後に膜表面を詳細に観察しても、表面に膨れ上がりは認められず、300℃以上の高温条件下で使用できるような熱安定性に優れた粘土膜である。
本発明においては、粘土含有液中の気体成分を低減させる工程の導入によって、粘土膜が厚い場合(例えば15μmよりも厚い場合)でも、成膜直後のヘイズ(曇度)を5%以下とすることができる。ヘイズは、3%以下が好ましく、2%以下がより好ましく、1%未満がさらに好ましい。また、24℃,1気圧,湿度45%の環境下におけるヘイズの経時変化を、2%以下とすることができる。ヘイズの経時変化は、1%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。さらに、全光線透過率が85%以上であり、紫外可視分光器による400nm以上800nm以下の波長範囲における平行光の光線透過率が85%以上95%以下であるものを作製することが可能である。
なお、前記平均層間距離の最小値は粘土のみからなる組成物のそれに相当するが、本発明の粘土膜においては添加剤が層間に平均的にインターカレートされているため、粘土のみからなる組成物のそれよりも平均層間距離が大きくなっている。このことを確認する手法としては、X線回折スペクトルにおける前記主ピークのピークトップ位置が、粘土のみからなる組成物のそれよりも低2θ側にシフトしているかどうか、又は、前記主ピークのピーク幅が低2θ側にブロードニングしているかが目安となる。なお、粘土膜における平均層間距離が前記好ましい範囲にあるかどうかは、TEMによる写真撮影によって得られた像から直接層間距離を測長することでも確認することができる。
さらには、前記水蒸気バリア膜、樹脂材料等からなる補強材、傷等を防ぐ保護層、表面を平滑化する平滑化層等の、粘土とは異なる別の機能を有する膜を粘土膜に付与した後に、粘土膜の表面に液体を配して膨潤させ、それを再乾燥して粘土膜部分の平滑性を向上させても良い。例えば、粘土膜の片面に樹脂からなるフィルム等を貼り付けた後に、粘土と樹脂フィルムとからなる膜を液体に浸漬させる又は粘土面に液体を吹き付けることにより膨潤させ、再乾燥してもよい。無論、粘土膜と別の機能を有する粘土以外の膜とが多数積層された複合膜においては、少なくとも複合膜の片面の最外層が粘土膜であれば、前記手法による改良が可能である。
本発明において用いる粘土の種類は特に限定されるものではなく、天然粘土でも合成粘土でも差し支えない。例えば、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ノントロナイト、マガディアイト、ハイドロタルサイト、カリオナイト、及びハロイサイトが好ましい。特に、透明な粘土膜においては合成粘土が好ましい。合成粘土としては、合成サポナイト、合成ヘクトライト、合成スチーブンサイト、合成雲母、合成ハイドロタルサイト、合成カリオナイト等が好ましいが、分散性等の点でスメクタイト族に属する粘土がさらに好ましい。ガスバリア性の観点からは、粘土結晶の層のアスペクト比が大きな天然モンモリロナイトや雲母族に属する粘土が好ましい。さらに、ガスバリア性の観点からは、高アスペクト比の合成スメクタイト族の粘土、合成雲母、ハイドロタルサイトも好ましい。
そのような添加剤を具体的に示す。粘土を溶解又は分散させる溶媒が水である場合には、添加剤も親水性を有し水への分散性又は溶解性が高いものが好ましい。例えば、イプシロンカプロラクタム、デキストリン、澱粉、セルロース系樹脂、セルロース繊維、ゼラチン、寒天、小麦粉、グルテン、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニル樹脂、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアマイド、ポリエチレンオキサイド、タンパク質、デオキシリボヌクレイン酸、リボヌクレイン酸、ポリアミノ酸、多価フェノール、安息香酸類化合物が好適である。あるいは、ラテックスやエマルジョンといった、水分散系の材料を用いてもよい。なお、それらは水への分散性又は溶解性が高いため、耐水性は一般に低い。そこで、塩や他の反応性モノマーやポリマー又はオリゴマー等を加えて、添加剤を水に不溶化させてもよい。ただし、ラテックスやエマルジョンといった水分散系の材料を用いた場合は、成膜後の加熱処理等によって膜の耐水性を向上させることも可能である。
そのような添加剤としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリオレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、熱可塑性ポリイミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリスルホン系樹脂、非晶性フッ素系樹脂等の熱可塑性樹脂があげられる。
その他では、光硬化性樹脂を用いることもでき、例えば、潜在性光カチオン重合開始剤を含むエポキシ樹脂等があげられる。なお、上記光硬化性樹脂を硬化させる場合には、光照射と同時に熱を加えてもよい。また、本発明において熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂と併用して硬化剤、硬化触媒等を用いてもよいが、それらは熱硬化性樹脂及び光硬化性樹脂の硬化に一般的に用いられるものであれば特に限定されない。硬化剤の具体例としては、多官能アミン、ポリアミド、酸無水物、フェノール樹脂があげられ、硬化触媒の具体例としては、イミダゾール等があげられる。これらの硬化剤、硬化触媒は単独又は2種以上混合して使用することができる。さらに、前述した樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
さらには、前述した粘土の処理に用いられるアンモニウム塩,フォスフォニウム塩,イミダゾリウム塩等のような有機イオンを含む塩を添加剤として用いてもよい。このような塩は粘土との結合力が高いので、添加剤として好適である。特に、1分子中に前記有機塩部位を2つ以上含む添加剤は、粘土結晶の層間を架橋させて粘土結晶の層間の結合力を向上させるため、粘土膜の耐水性やガスバリア性を向上させることができる。このような前記有機塩部位を2つ以上含む添加剤としては、例えば、前記有機塩部位を含む2つ以上のユニットがケイ素原子からなるチェーン又はケイ素原子と酸素原子からなるチェーン(例えばポリシランやシリコーン等)でつながったような分子があげられる。さらに、前記有機塩部位を含むユニットとビニル基やエポキシ基のような重合性を有する部位とを1分子中に有する分子があげられる。
さらに、本発明において用いられる溶媒の種類は特に限定されるものではないが、水や有機溶媒を用いることができる。また、アセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、エタノール、メタノール等の有機物や塩などを少量溶解させた水を用いることもできる。有機物,塩などを添加する目的は、粘土含有液における粘土の分散性を変化させる、粘土含有液の粘性を変化させる、粘土膜の乾燥のしやすさを変化させる、粘土膜の均一性を向上させる等である。
疎水性粘土の分散液にメタノールを少量添加すると、凝集している疎水性粘土の粘土結晶の層の間にメタノールが侵入して層の間隔が広げられる。そして、十分な時間とせん断力とを加えると、粘土結晶の単位層近くまで分散することができる。これによって粘土結晶の分散が極めて促進され粘土の凝集物がほとんどなくなるため、大部分の粘土が単位層近くまで剥離し、添加剤と粘土が極めて均一に混合された粘土含有液を得ることができる。そして、このようにメタノール等を添加して分散を促進した粘土含有液から粘土膜を作製することにより、特に透明な粘土膜においてはヘイズが大幅に低下するという効果が奏される。
〔参考例1〕
粘土として合成サポナイト(クニミネ工業株式会社製のスメクトンSA)、添加剤としてポリアクリル酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を使用した。
粘土10.2gと純水594mlを回転子とともにプラスチック製密封容器に入れ、25℃で2時間激しく振とうして均一な粘土分散液を得た。また、ポリアクリル酸ナトリウム1.8gと純水594mlを回転子とともにプラスチック製密封容器に入れ、25℃で2時間激しく振とうした後に、さらにホモジナイザーを用いて回転速度10000rpmで7分間撹拌して、均一な添加剤含有液を得た。このとき、添加剤含有液は発熱して温度が約60℃に上昇しており、液の粘度は低下していた。
さらに、この粘土膜のガスバリア性を確認するために、日本分光株式会社製のガス透過量測定装置「Gasperm−100」で酸素の透過係数を測定した。その結果、室温における酸素の透過係数が、3.2×10−11cm2s−1cmHg−1未満であることが確認され、高いガスバリア性能を示すことが分かった。
参考例1と同様に粘土膜を作製するに際して、ポリプロピレン製トレイに流し込む粘土含有液の量を変えて、膜厚の異なる3枚の粘土膜を作製した。得られた粘土膜の膜厚は、それぞれ13μm、19μm、及び24μmであった。
参考例1と同様にして透過率を測定したところ、膜厚13μmのものは278nmから800nmまでの範囲で、膜厚19μmのものは344nmから800nmまでの範囲で、膜厚24μmのものは326nmから800nmまでの範囲で、いずれも85%以上の透過率を有し、着色は認められなかった。また、紫外可視吸収スペクトルの形状は、いずれも参考例1の粘土膜とほとんど同様であった。
〔参考例3〕
参考例1と同様にして、脱気した粘土含有液を得た。B4サイズの真鍮製トレイ内に、剥離容易化処理が表面に施された厚さ50μmの平滑なPETフィルム(大成ラミネーター株式会社製)を入れ、PETフィルムの周囲を粘着テープで固定した後、このPETフィルムの剥離容易化処理が施された面に粘土含有液を塗布し、参考例1と同様にして厚さ約22μmの均一な粘土膜を得た。得られた粘土膜は、自立膜として使用可能な機械的強度を有していた。また、透明度が高く、フレキシビリティーに優れていた。
〔比較例1〕
参考例1と同様にして作製した粘土分散液と添加剤含有液とを回転子とともにプラスチック製密封容器に入れ、25℃で2時間激しく振とうした後に、さらにホモジナイザーを用いて回転速度10000rpmで20分間撹拌して、均一な粘土含有液を得た。
〔比較例2〕
粘土として合成サポナイト(クニミネ工業株式会社製のスメクトンSA)、添加剤としてポリアクリル酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を使用した。
得られた粘土膜は、自立膜として使用可能な機械的強度を有していた。粘土膜の柔軟性を確認するため、半径6mmの円筒状に湾曲させたが、クラックなどは発生せず、何の欠陥も生じなかった。また、参考例1と同様にして透過率を測定したところ、85%以上の透過率を有している波長領域はなかった(図1を参照)。さらに、参考例1と同様にして全光線透過率を測定したところ91.8%で、ヘイズ(曇度)を測定したところ7.0%であった。
比較例2と同様に粘土膜を作製するに際して、トレイに流し込む粘土含有液の量を変えて、膜厚の異なる2枚の粘土膜を作製した。得られた粘土膜の膜厚は、それぞれ15μm及び16μmであった。
参考例1と同様にして透過率を測定したところ、いずれの粘土膜も85%以上の透過率を有している波長領域はなかった。さらに、参考例1と同様にして全光線透過率を測定したところ膜厚15μmのものは92.0%で、膜厚16μmのものは91.7%であった。さらに、参考例1と同様にしてヘイズ(曇度)を測定したところ、膜厚15μmのものは7.7%で、膜厚16μmのものは6.5%であった。
粘土として合成サポナイト(クニミネ工業株式会社製のスメクトンSA)、添加剤としてポリアクリル酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を使用した。
ポリアクリル酸ナトリウム1.8gと純水594mlを回転子とともにプラスチック製密封容器に入れ、25℃で2時間激しく振とうし、添加剤含有液を得た。この添加剤含有液に粘土5.1gを加え、25℃で2時間激しく振とうしたが、粘土は十分に分散せず、大きな粘土凝集体が多数認められ、粘土膜の作製に適した粘土含有液を得ることはできなかった。
粘土として合成サポナイト(クニミネ工業株式会社製のスメクトンSA)、添加剤としてポリアクリル酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を使用した。
粘土4.0gと純水196mlを回転子とともにプラスチック製密封容器に入れ、22℃で2時間激しく振とうして均一な粘土分散液を得た。また、ポリアクリル酸ナトリウム2gと純水198mlを回転子とともにプラスチック製密封容器に入れ、22℃で2時間激しく振とうした後に、さらにホモジナイザーを用いて回転速度10000rpmで7分間撹拌して、均一な添加剤含有液を得た。
この粘土含有液を脱気することなく用い、参考例3と同様にして、厚さ約20μmの均一な粘土膜を得た。粘土膜の柔軟性を確認するため、半径6mmの円筒状に湾曲させたが、クラックなどは発生せず、何の欠陥も生じなかった。また、参考例1と同様にして全光線透過率を測定したところ91.8%で、ヘイズ(曇度)を測定したところ6.3%であった。
粘土として合成サポナイト(クニミネ工業株式会社製のスメクトンSA)、添加剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウム(アルドリッチ株式会社製)をそれぞれ使用した。
粘土1.0gと純水89mlとを回転子とともにプラスチック製密封容器に入れ、25℃で2時間激しく振とうして粘土分散液を得た。また、カルボキシメチルセルロースナトリウム0.18gと純水30mlとを回転子とともにプラスチック製密封容器に入れ、25℃で2時間激しく振とうした後、さらにホモジナイザーを用いて回転速度10000rpmで10分間撹拌し、添加剤含有液を得た。
この粘土含有液が入ったトレイをオーブン内に入れ、60℃の温度条件下で約5時間加熱して乾燥させた。乾燥後、得られた粘土層をPETフィルムから剥離し、厚さ約14μmの均一な透明粘土膜を得た。
〔参考例5〕
粘土として天然モンモリロナイト(クニミネ工業株式会社製のクニピアF)、添加剤としてポリアクリル酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を使用した。
粘土27.4gと純水658mlを回転子とともにプラスチック製密封容器に入れ、25℃で2時間激しく振とうして均一な粘土分散液を得た。また、ポリアクリル酸ナトリウム1.44gと純水142mlを回転子とともにプラスチック製密封容器に入れ、25℃で2時間激しく振とうした後に、さらにホモジナイザーを用いて回転速度10000rpmで7分間撹拌して、均一な添加剤含有液を得た。このとき、添加剤含有液は発熱して温度が約60℃に上昇しており、液の粘度は低下していた。
〔比較例6〕
粘土として天然モンモリロナイト(クニミネ工業株式会社製のクニピアF)、添加剤としてポリアクリル酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)を使用した。
粘土27.4gと純水658mlを回転子とともにプラスチック製密封容器に入れ、25℃で2時間激しく振とうして均一な粘土分散液を得た。この粘土分散液にポリアクリル酸ナトリウム1.44gを加え、25℃で2時間激しく振とうしたが、大きな凝集体が多数発生し、粘土膜の作製に適した粘土含有液を得ることはできなかった。
粘土として天然モンモリロナイト(クニミネ工業株式会社製のクニピアF)、添加剤としてイプシロンカプロラクタム(和光純薬工業株式会社製)を使用した。
粘土27.4gと純水600mlを回転子とともにプラスチック製密封容器に入れ、25℃で2時間激しく振とうして均一な粘土分散液を得た。また、イプシロンカプロラクタム1.44gと純水58mlを回転子とともにプラスチック製密封容器に入れ、スターラーで攪拌して均一な添加剤含有液を得た。
この粘土膜の寸法安定性を確認するため、参考例1と同様にして線膨張係数を測定した。試料幅は3mm、荷重は5gとした。昇温レート5 ℃/minで148℃まで加熱し、1時間その温度を保った後、38℃まで冷却した。そして、直ちに昇温レート5 ℃/minで299℃まで加熱して線膨張係数を測定した。その結果、40℃から299℃の温度範囲における線膨張係数は1.2〜8.0ppm/℃であった。
また、参考例1と同様に粘土膜の断面の電子顕微鏡写真を撮影したところ、同様に平均層間距離約1.2nmで粘土結晶の層が配向して緻密に積層していることが分かった(図6を参照)。電子顕微鏡写真から見積もられた平均層間距離がX線回折による分析からのそれより僅かに小さいのは、X線回折による分析は大気下であるのに対し、電子顕微鏡写真撮影は高真空下で行うためであると思われる。すなわち、粘土膜に混入していた水分が真空下で揮発したため、平均層間距離が僅かに縮んだことが原因であると推定される。
〔比較例7〕
参考例6と同様にして、粘土含有液を得た。ホモジナイザーを用いて撹拌したことにより温度が約90℃に上昇している粘土含有液を、常温で約30分放置して約30℃まで温度を下げた後、真空脱法装置に入れ、0.08MPa以下の減圧下で40分間脱気を行った。粘土含有液からの泡の発生は、脱気を行っている間は低頻度ではあるが最後まで認められた。
この粘土膜を、毎分約18℃の温度上昇速度で300℃まで加熱し、300℃で1時間保持した後に観察した。すると、粘土膜はやや黒化し、直径1〜5mm程度の円形の膨れ上がりがスポット的に多数認められた。この膜の断面をSEMで観察したところ、多数の細かな空隙が観察された(図7を参照)。これらのことは、粘土含有液に含まれる気体成分の除去が不十分である場合は、粘土含有液に混入した気体成分由来の気泡(空隙)が粘土膜の内部に多く残り、加熱時に前述のような円形の膨れ上がりが発生する可能性があることを示している。
粘土として疎水性ヘクトライト(コープケミカル株式会社製のルーセンタイトSAN)、添加剤としてアサフレックスL451(旭化成ケミカルズ株式会社製)を使用した。
粘土8.5gを、トルエン62gとメタノール12gとの混合溶媒とともに三角フラスコに入れ、約25℃で2時間回転子により攪拌して均一な粘土分散液を得た。また、アサフレックスL4511.5gとトルエン16gを三角フラスコに入れ、1時間回転子により攪拌して均一な添加剤含有液を得た。
参考例4で用いたものと同じ真鍮製トレイの内面をアルミ箔で覆い、アルミ箔のうちトレイの底面に面する部分を平坦に均した。参考例3で用いたものと同じPETフィルムをトレイ内に入れ(すなわちアルミ箔上に載せ)、PETフィルムに粘土含有液を塗布した。粘土含有液の塗布にはガラス製の棒を用い、スペーサーをガイドとして利用することにより、均一な厚さの粘土含有液膜を形成した。
粘土膜の透明性を確認するため、参考例1と同様にして透過率を測定したところ、360nmから800nmまでの範囲で85%以上の透過率を有し、着色は認められなかった。さらに、参考例1と同様にして全光線透過率を測定したところ90.1%で、ヘイズ(曇度)を測定したところ1.6%であった。
さらに、この粘土膜を24℃の水に24時間浸漬させたところ、肉眼で確認できる変化はなく、強度もほとんど低下しておらず、高い耐水性を有していることが分かった。浸漬前後での重量変化から計算された浸漬に伴う吸水率は約1.9%であった。
粘土として疎水性ヘクトライト(コープケミカル株式会社製のルーセンタイトSAN)、添加剤としてアサフレックスL451(旭化成ケミカルズ株式会社製)を使用した。
粘土8.0gとトルエン80gを三角フラスコに入れ、約25℃で3時間回転子により攪拌して均一な粘土分散液を得た。また、アサフレックスL451 1.5gとトルエン10gを三角フラスコに入れ、約25℃で1時間回転子により攪拌して均一な添加剤含有液を得た。
粘土膜の透明性を確認するため、参考例1と同様にして透過率を測定したところ、85%以上の透過率を有する領域はなく、着色は認められなかった。さらに、参考例1と同様にして全光線透過率を測定したところ90.8%で、ヘイズ(曇度)を測定したところ23.8%であった。
参考例1と同様にして、同様の組成の粘土含有液を調整した。B4サイズの真鍮製トレイ内に、参考例3と同じPETフィルムを入れ(PETフィルムは粘着テープでトレイに固定しない)、PETフィルムのシリコーン樹脂が塗布された面に粘土含有液を塗布した。粘土含有液の塗布にはステンレス製地べらを用い、スペーサーをガイドとして利用することにより、均一な厚さの粘土含有液膜を形成した。
粘土膜の柔軟性を確認するため、半径6mmの円筒状に湾曲させたが、クラックなどは発生せず、何の欠陥も生じなかった。また、参考例1と同様にして透過率を測定したところ、波長500nmにおける透過率は89.3%であり、264nmから800nmまでの範囲で80%以上の透過率を有していた。参考例1と同様に測定した粘土膜の全光線透過率は92.0%であり、ヘイズ(曇度)は1.6%であった。
周囲に枠があり且つ肉厚であるため容易に変形することができないB4サイズのポリプロピレン製トレイを用意した。そして、このトレイの表面のうち平坦部分に、参考例8で用いたものと同様の粘土含有液を塗布した。粘土含有液の塗布にはステンレス製地べらを用い、スペーサーをガイドとして利用することにより、均一な厚さの粘土含有液膜を形成した。
〔実施例9〕
参考例8と同様にして、厚さ約21μmの均一な粘土膜(一次乾燥膜)を得た。得られた粘土膜は、自立膜として使用可能な機械的強度を有していた。また、透明度が高く、フレキシビリティーに優れていた。参考例1と同様にして測定した粘土膜の全光線透過率は91.5%で、ヘイズは1.8%であった。また、ケーエルエー・テンコール社製の表面粗さ計「アルファステップIQ」で測定した粘土膜の表面粗さは、Raで39nmであった。
〔比較例10〕
参考例8と同様にして、厚さ約19μmの均一な粘土膜を得た。得られた粘土膜は、自立膜として使用可能な機械的強度を有していた。また、透明度が高く、フレキシビリティーに優れていた。参考例1と同様にして測定した粘土膜の全光線透過率は91.7%で、ヘイズは2.3%であった。また、実施例9と同様に測定した粘土膜の表面粗さは、Raで47nmであった。
〔実施例10〕
比較例9と同様にして作製した一次乾燥膜を、1気圧,温度24℃,湿度45%に保持されたクリーンルーム中で1ヶ月放置した。すると、ヘイズが26.5%まで増大した厚さ約23μmの粘土膜が得られた。この粘土膜に、表面を洗い流すようにして純水を噴霧し、粘土膜を膨潤させた後に、シリコーン樹脂を表面に塗布したPETフィルムの間に挟んだ。このとき、両PETフィルムの平滑面が粘土膜に接触するようにした。
〔比較例11〕
比較例2と同様にして、厚さ約17μmの均一な粘土膜を得た。得られた粘土膜は、自立膜として使用可能な機械的強度を有していた。また、透明度が高く、フレキシビリティーに優れていた。参考例1と同様にして測定した粘土膜の全光線透過率は91.8%で、ヘイズは7.0%であった。また、実施例9と同様に測定した粘土膜の表面粗さは、Raで55nmであった。
〔実施例11〕
比較例11においてヘイズが27.0%にまで増大した一次乾燥膜を純水に約5秒間浸漬し、引き上げた後、シリコーン樹脂を表面に塗布したPETフィルムの間に挟んだ。このとき、両PETフィルムの平滑面が粘土膜に接触するようにした。次に、表面が平滑なガラスのローラーをPETフィルム上で転がして粘土膜を伸ばし余分な水分を押し出した後に、一方のPETフィルムを剥離し、約20℃にて一昼夜放置して乾燥させた。乾燥した粘土膜を他方のPETフィルムから剥離し、厚さ約12μmの均一な粘土膜を得た。得られた透明な粘土膜の引張り強度は35MPaであり、自立膜として使用可能な機械的強度を有していた。また、透明度が高く、フレキシビリティーに優れていた。
〔参考例12〕
比較例11においてヘイズが27.0%にまで増大した一次乾燥膜に、表面を洗い流すようにして純水を噴霧し、粘土膜を膨潤させた後に、シリコーン樹脂を表面に塗布したPETフィルムの間に挟んだ。このとき、両PETフィルムの平滑面が粘土膜に接触するようにした。次に、参考例1と同様にして表面が平滑なガラスのローラーをPETフィルム上で転がして粘土膜を伸ばし余分な水分を押し出した後に、一方のPETフィルムを剥離し、約20℃にて一昼夜放置して乾燥させた。乾燥した粘土膜を他方のPETフィルムから剥離し、厚さ約10μmの均一な粘土膜を得た。得られた透明な粘土膜の引張り強度は31MPaであり、自立膜として使用可能な機械的強度を有していた。また、透明度が高く、フレキシビリティーに優れていた。
Claims (28)
- 粘土を溶媒に分散させた粘土分散液と、添加剤を溶媒に分散又は溶解させた添加剤含有液と、をそれぞれ調製し、前記粘土及び前記添加剤の合計量中の前記添加剤の割合が0質量%超過50質量%以下となるように前記粘土分散液と前記添加剤含有液とを混合して粘土含有液を得る粘土含有液調整工程と、
この粘土含有液を支持体の表面に配した後に前記溶媒を除去して乾燥する乾燥工程と、
前記乾燥工程により得られた乾燥物の表面に、前記粘土を膨潤させる液体又は前記添加剤を溶解若しくは分散させる液体を配し、再乾燥させる再乾燥工程と
を有することを特徴とする粘土膜の製造方法。 - 粘土を溶媒に分散させた粘土分散液と、添加剤を溶媒に分散又は溶解させた添加剤含有液と、をそれぞれ調製し、前記粘土及び前記添加剤の合計量中の前記添加剤の割合が0質量%超過30質量%以下となるように前記粘土分散液と前記添加剤含有液とを混合して粘土含有液を得る粘土含有液調整工程と、
この粘土含有液を支持体の表面に配した後に前記溶媒を除去して乾燥する乾燥工程と、
前記乾燥工程により得られた乾燥物の表面に、前記粘土を膨潤させる液体又は前記添加剤を溶解若しくは分散させる液体を配し、再乾燥させる再乾燥工程と
を有することを特徴とする粘土膜の製造方法。 - 前記粘土含有液に含まれる気体を減少させる脱気工程を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の粘土膜の製造方法。
- 前記乾燥工程により得られた乾燥物を前記支持体から剥離する剥離工程を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の粘土膜の製造方法。
- 前記粘土含有液調整工程においては、常温よりも高い温度で前記粘土分散液と前記添加剤含有液とを混合して前記粘土含有液を得ることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の粘土膜の製造方法。
- 前記粘土含有液を常温よりも高い温度とするとともに減圧下に置き、前記粘土含有液に含まれる気体を減少させることを特徴とする請求項3に記載の粘土膜の製造方法。
- 前記粘土含有液を常温よりも高い温度とするとともに減圧下で撹拌することにより、前記粘土含有液に含まれる気体を減少させることを特徴とする請求項3に記載の粘土膜の製造方法。
- 前記支持体は柔軟性を有しており、前記支持体が変形可能な状態で乾燥した後に前記乾燥物を前記支持体から剥離することを特徴とする請求項4に記載の粘土膜の製造方法。
- 前記支持体が樹脂製フィルムであることを特徴とする請求項8に記載の粘土膜の製造方法。
- 前記支持体に剥離容易化処理が施されていることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の粘土膜の製造方法。
- 前記支持体に撥水加工処理が施されていることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の粘土膜の製造方法。
- 前記液体に浸漬することにより、前記乾燥物の表面に前記液体を配することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の粘土膜の製造方法。
- 前記液体を吹き付けることにより、前記乾燥物の表面に前記液体を配することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の粘土膜の製造方法。
- 表面に前記液体を配することにより少なくとも表面近傍部分が膨潤した前記乾燥物を、表面が平滑な平滑部材に接触させて、その表面を平滑化した後に、前記液体を再乾燥させることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の粘土膜の製造方法。
- 前記平滑部材は柔軟性を有して変形可能であり、前記乾燥物が前記平滑部材に接触している状態で前記液体を再乾燥させることを特徴とする請求項14に記載の粘土膜の製造方法。
- 前記粘土は、水に対する親和性が高く水に分散しやすい親水性粘土であることを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載の粘土膜の製造方法。
- 前記粘土は、有機溶媒に対する親和性が高く有機溶媒に分散しやすい疎水性粘土であることを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載の粘土膜の製造方法。
- 前記疎水性粘土は、親水性粘土が備える無機イオンを有機イオンに交換することにより有機溶媒への親和性及び分散性を向上させたものであり、前記有機イオンが、アンモニウムイオン,フォスフォニウムイオン,イミダゾリウムイオンの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項17に記載の粘土膜の製造方法。
- 得られる粘土膜が透明であることを特徴とする請求項1〜18のいずれか一項に記載の粘土膜の製造方法。
- 請求項1〜19のいずれか一項に記載の粘土膜の製造方法で製造された粘土膜であって、層状の粘土結晶が膜厚方向に積層してなり、ヘイズが1%未満であるとともに、全光線透過率が85%以上で、400nm以上800nm以下の波長範囲における光線透過率が85%以上95%以下であることを特徴とする粘土膜。
- 30℃から250℃までの平均の線膨張係数が10ppm以下であることを特徴とする請求項20に記載の粘土膜。
- 24℃,1気圧,湿度45%の環境下におけるヘイズの経時変化が−2%以上2%以下であることを特徴とする請求項20又は請求項21に記載の粘土膜。
- 膜厚が15μmよりも厚いことを特徴とする請求項20〜22のいずれか一項に記載の粘土膜。
- 請求項20〜23のいずれか一項に記載の粘土膜で、少なくとも一部分が構成されたことを特徴とする電子ペーパー。
- 請求項20〜23のいずれか一項に記載の粘土膜で、少なくとも一部分が構成されたことを特徴とするフレキシブル基板。
- 請求項20〜23のいずれか一項に記載の粘土膜で、少なくとも一部分が構成されたことを特徴とするフレキシブルプリント基板。
- 非発光有機半導体又はアモルファス無機半導体を備える電子デバイスが実装され、ガスバリア性を有する基板であって、請求項20〜23のいずれか一項に記載の粘土膜で、少なくとも一部分が構成されたことを特徴とする基板。
- 非発光有機半導体又はアモルファス無機半導体を備える電子デバイスをガスから保護するガスバリア膜であって、請求項20〜23のいずれか一項に記載の粘土膜で、少なくとも一部分が構成されたことを特徴とするガスバリア膜。
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