JP5920693B2 - 不燃水蒸気バリアフィルム、不燃水蒸気バリアフィルムの製造方法、太陽電池バックシート、及び、太陽電池 - Google Patents
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Description
これまで、電子デバイス用のフィルムは、主に、基材として有機高分子材料を用いて製造されてきた。ガスバリア性を有するフィルムとしては、高分子樹脂フィルムを基材として、該高分子樹脂フィルムの片面又は両面に、ガスバリア層を形成したフィルムが一般的であり、該ガスバリア層としては、酸化アルミ、酸化ケイ素、窒化ケイ素等からなるものが、CVD法、PVD法等の様々な方法により形成されている。
また、金属シートは、ガスバリア性には優れているものの、耐候性、電気絶縁性、耐薬品性等に難点があり、その用途が限られる。例えば、太陽電池等過酷な環境下で用いられるデバイスの保護膜や、バックシートでは、耐紫外線、耐湿、耐熱、耐塩害等の耐候性や、水蒸気バリア性、電気絶縁性、機械的強度、耐薬品性、封止材との接着性等が要求される。ガスバリア性に対しても、従来材料より、厳しい環境下で用いることが可能なフィルムが求められている。
しかしながら、特許文献9に開示されている技術を用いても、接着剤を用いるため、耐久性は充分ではなかった。
以下に、本発明を詳述する。
また、非膨潤性粘土鉱物は通常、積層されにくいため、非膨潤性粘土鉱物を用いて不燃性と高い水蒸気バリア性とを有するフィルムを作製することは困難であった。
そこで本発明者らは、非膨潤性粘土鉱物を特定量含有する不燃フィルム層と、膨潤性粘土鉱物を含有する水蒸気バリアフィルム層とは、亀裂等を生じさせることなく均一に積層させることができ、得られた積層体は、不燃性を有し、柔軟性及び水蒸気バリア性に優れるものとなることを見出し、本発明を完成させるに至った。
上記不燃フィルム層は、非膨潤性粘土鉱物を含有する。具体的には、上記不燃フィルム層としては、非膨潤性粘土鉱物と合成樹脂とを含有するもの等が挙げられる。
なお、本明細書において、上記「非膨潤性」とは、水や有機溶媒に加えた際にほとんど膨潤しないことをいう。具体的には、膨潤力が5mL/2g未満であるものをいう。
上記「膨潤力」は水又は有機溶媒100mLの入った100mL容メスシリンダーに粘土鉱物の粉末2.0gを少量ずつ入れて自然沈降させ、膨潤した粘土鉱物の見かけ容積を読むことで測定することができる。
上記非膨潤性粘土鉱物の平均粒子径の好ましい下限は0.1μm、好ましい上限は50μmである。上記非膨潤性粘土鉱物の平均粒子径が0.1μm未満であると、得られるフィルムが機械的強度に劣るものとなることがある。上記非膨潤性粘土鉱物の平均粒子径が50μmを超えると、得られるフィルムが表面の平坦性に劣るものとなることがある。上記非膨潤性粘土鉱物の平均粒子径のより好ましい下限は0.2μm、より好ましい上限は20μm、更に好ましい下限は0.5μm、更に好ましい上限は15μmである。
なお、上記非膨潤性粘土鉱物の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計等を用いて粒度分布を測定することにより求めることができる。
本発明の不燃水蒸気バリアフィルムの比誘電率は、用途にもよるが、例えば、フレキシブルプリント基板に用いる場合は4以下が好ましく、3以下がより好ましく、2.5以下が更に好ましい。
なお、耐熱性の観点から、上記合成樹脂は、シクロヘキサン環等の飽和環式炭化水素を含まない構造であることが好ましい。得られる不燃水蒸気バリアフィルムが特に耐熱性に優れるものとなることから、上記合成樹脂は、芳香環を含む構造であることがより好ましく、芳香族ポリイミド樹脂及び/又は芳香族ポリアミドイミド樹脂であることが更に好ましい。
上記シラン系カップリング剤としては、例えば、アミノ系シランカップリング剤、ウレイド系シランカップリング剤、ビニル系シランカップリング剤、メタクリル系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤及びイソシアネート系シランカップリング剤等が挙げられる。
上記チタネート系カップリング剤としては、例えば、少なくとも炭素数1〜60のアルキレート基を有するチタネート系カップリング剤、アルキルホスファイト基を有するチタネート系カップリング剤、アルキルホスフェート基を有するチタネート系カップリング剤もしくはアルキルパイロホスフェート基を有するチタネート系カップリング剤等が挙げられる。
上記カップリング剤は、事前に非膨潤性粘土鉱物と混合させて作用させておいてもよいし、後述する不燃フィルム層用分散液に混合してもよい。
なお、本明細書において、上記「膨潤性」とは、水や有機溶媒に加えた際に膨潤することをいう。こうした膨潤性粘土鉱物の層間にはナトリウムイオン等のイオンが存在し、それらのイオンと溶媒の親和力により膨潤性粘土鉱物は膨潤する。具体的には、上述した「膨潤力」が5mL/2g以上であるものをいう。
上記シリル化剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン等が挙げられる。
上記層間陽イオンとしては、例えば、ナトリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン等の金属イオン、アンモニウムイオン化合物、ホスホニウムイオン化合物等のオニウムイオン、水素イオン等に交換することが好ましく、層間イオンが1価である、ナトリウムイオン、リチウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン化合物、ホスホニウムイオン化合物、水素イオン等がより好ましい。耐水性の効果を高める観点から、リチウムイオンに交換することが更に好ましい。
本発明の不燃水蒸気バリアフィルムにおいて、UL94規格VTM試験を行う際のフィルム厚みは200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましい。
なお、本明細書において上記引裂強度は、JIS K7128−1に準拠した測定法によって求められる値である。
なお、本明細書において上記引張強度は、JIS K7127−1に準拠した測定法によって求められる値であり、引張強度試験機を用い、つかみ間隔80mm、引っ張り速度20mm/分の条件で測定される。
上記膨潤性粘土鉱物をシリル化剤と反応させる方法としては、例えば、膨潤性粘土鉱物とシリル化剤とをボールミル処理する方法、自転公転ミキサーで混合する方法等が挙げられる。
上記膨潤性粘土鉱物の層間陽イオンを交換する方法としては、例えば、膨潤性粘土鉱物と交換する陽イオンを含有する水溶液とを振とうにより混合分散させる方法、攪拌機で撹拌する方法、自転公転ミキサーで混合分散させる方法等が挙げられる。
上記工程1において調製される水蒸気バリアフィルム層用分散液における不揮発成分の含有量は、水蒸気バリアフィルム層用分散液の全重量に対して、好ましい下限が0.3重量%、好ましい上限が15重量%である。上記水蒸気バリアフィルム層用分散液における不揮発成分の含有量が0.3重量%未満であると、分散媒が多くなり、分散媒の除去に時間を要することがある。上記水蒸気バリアフィルム層用分散液における不揮発成分の含有量が15重量%を超えると、水蒸気バリアフィルム層用分散液の粘性が高くなり、製膜できなくなることがある。上記水蒸気バリアフィルム層用分散液における不揮発成分の含有量のより好ましい下限は0.5重量%、より好ましい上限は10重量%である。
なお、本明細書において上記「不揮発成分」とは、300℃、常圧で不揮発である成分を指し、不揮発成分の割合は、熱重量測定(TG)や示差熱−熱重量同時測定(TG−DTA)やエバポレーター等を用いて真空蒸発により分散媒を除去し、残存した固形物の重量から求めることができる。
上記水蒸気バリアフィルム層用分散液における合成樹脂の前駆体としては、例えば、ポリアミド酸が挙げられ、該ポリアミド酸をイミド化することにより、ポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂が得られる。
上記ポリアミド酸をイミド化する方法としては、例えば、ポリアミド酸を加熱閉環してイミド化する方法、ポリアミド酸を化学閉環してイミド化する方法が挙げられる。
上記工程2において、分散液を基板上に展開する方法としては、ドクターブレードやバーコーター等を用いて膜状に塗布する方法等が挙げられる。
上記工程3において、基板上に展開した水蒸気バリアフィルム層用分散液から分散媒を除去する方法としては、種々の固液分離方法、例えば、遠心分離、ろ過、真空乾燥、凍結真空乾燥、加熱蒸発法や、これらの方法の組み合わせが可能である。これらの方法のうち、例えば、分散液を容器に流し込む加熱蒸発法を用いる場合、基板上に塗布された分散液を、水平を保った状態で、強制送風式オーブンで20〜150℃の温度条件下、好ましくは、30〜120℃の温度条件下で0.5〜24時間程度、好ましくは2〜12時間乾燥することにより、フィルムが得られる。
なお、作製するフィルムの欠陥を無くす観点から、上記工程3において、分散媒を除去する際の温度は150℃以下であることが好ましい。
上記工程5において、不燃フィルム層用分散液を水蒸気バリアフィルム層上に展開する方法としては、ドクターブレードやバーコーター等を用いて膜状に塗布する方法等が挙げられる。
上記工程3において、水蒸気バリアフィルム層上に展開した不燃フィルム層用分散液から分散媒を除去する方法としては、種々の固液分離方法、例えば、遠心分離、ろ過、真空乾燥、凍結真空乾燥、加熱蒸発法や、これらの方法の組み合わせが可能である。これらの方法のうち、例えば、分散液を容器に流し込む加熱蒸発法を用いる場合、基板上に塗布された分散液を、水平を保った状態で、強制送風式オーブンで20〜150℃の温度条件下、好ましくは、30〜120℃の温度条件下で0.5〜24時間程度、好ましくは2〜12時間乾燥することにより、フィルムが得られる。
なお、作製するフィルムの欠陥を無くす観点から、上記工程6において、分散媒を除去する際の温度は150℃以下であることが好ましい。
図1に示すように、本発明の太陽電池1は、光起電力により光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池素子2を有しており、該太陽電池素子2は封止剤3によって封止されている。また、本発明の太陽電池1は、太陽光を受ける側の表面に光透過性基板4を有し、光透過性基板4と反対側の面に、本発明の太陽電池バックシート5を有する。
図2では、本発明の太陽電池1は、太陽電池素子2が封止剤3によって封止されている。また、本発明の太陽電池1は、太陽光を受ける側の表面に光透過性基板4を有し、光透過性基板4と反対側の面に、本発明の不燃水蒸気バリアフィルム6を有する。
上記光透過性基板4の材料としては、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体等からなる樹脂製の基板や、ガラス基板等が挙げられ、なかでも、耐候性及び耐衝撃性に優れ、安価に作製することができることからガラス基板が好ましい。また、特に耐侯性が優れることから、フッ素樹脂も好適に用いられる。
(リチウム交換変性粘土の作製)
天然の精製ベントナイトであり、モンモリロナイトを主成分とするクニピアF(クニミネ工業社製)を、オーブンで110℃以上の温度で、充分に乾燥させた。当該ベントナイト300gを、アルミナボールとともに、ボールミル用ポットに入れた。次に、ポット内にシリル化剤(チッソ社製、「サイラエースS330」)6gを加え、ポット内を窒素ガスに置換し、1時間ボールミル処理を行うことにより、変性粘土を得た。
得られた変性粘土24gを、0.5規定の硝酸リチウム水溶液400mLに加え、振とうにより、混合分散させた。2時間、振とう分散して、粘土の層間イオンをリチウムイオンに交換し、分散物を得た。
次に、得られた分散物について、遠心分離により固液分離し、得られた固体を280gの蒸留水と120gのエタノールの混合溶液で洗浄し、過剰の塩分を除いた。この洗浄操作を、二回以上繰り返した。得られた生成物を、オーブンで、充分に乾燥させた後、解砕して、リチウム交換変性粘土を得た。
水100mLの入った100mL容メスシリンダーに、作製したリチウム交換変性粘土の粉末2.0gを少量ずつ入れて自然沈降させ、全量を添加した後1時間静置し、膨潤した粘土鉱物の見かけ容積を読んだところ、85ml/2gであった。
得られたリチウム交換変性粘土10gを秤量し、容器に入れ、純水20mLを加え、10分程度放置し、該リチウム交換変性粘土に純水をなじませた。その後、ステンレス製スパチュラで軽く混練した。次いで、自転公転ミキサー(シンキー社製、「ARE−310」)を用い、混合モード(2000rpm)にて10分間混合処理を行った。これに、再度、純水20mLを加え、全体に純水が行き渡る様に、混練し、全体が一つにまとまる程度まで練り込んだ。
次に、自転公転ミキサーを用い、混合モード(2000rpm)にて10分間混合処理を行った。1回目の混合処理に比べ、全体がまとまった粘土プレゲルになった。そこへ、純水50mLを加え、ステンレス製スパチュラでよく混練した。大きなダマ(ゲルの塊)があれば極力つぶし、再度、自転公転ミキサーを用い、混合モード(2000rpm)にて10分間混合処理を行い、膨潤性粘土鉱物ゲルを得た。
容器にN−メチル−2−ピロリドン350gを入れ、ホモジナイザー(IKA社製、「ULUTRA TURRAX T50」)で撹拌しながら、膨潤性粘土鉱物ゲル10gを加えた。約7000rpmで約30分間撹拌を続け、得られた分散液120gを別の容器に分取し、18.6重量%ポリアミド酸のN−メチル−2−ピロリドン溶液(宇部興産社製、「U−ワニスA」)を、4.0g加えた。
次いで、自転公転ミキサー(シンキー社製、「ARE−310」)で混合モード(2000rpm)を10分間、脱泡モード(2200rpm)を10分間行って撹拌し、均一な水蒸気バリアフィルム層用分散液を得た。
なお、「U−ワニスA」に含まれるポリアミド酸は、下記式(7)の構造を有する芳香族系ポリアミド酸である。
タルク(日本タルク社製、「タルクMS−K」)2.7g、及び、18.6重量%ポリアミド酸のN−メチル−2−ピロリドン溶液(宇部興産社製、「U−ワニスA」)20.0gをプラスチック製密閉容器にとり、自転公転ミキサー(シンキー社製、「ARE−310」)で混合モード(2000rpm)を10分間行って撹拌し、全不揮発成分に対するタルクの割合が42.1重量%、分散液の全体量に対する不揮発成分の割合が28.3重量%である均一な不燃フィルム層用分散液を得た。
水100mLの入った100mL容メスシリンダーに「不燃フィルム層用分散液の調製」に用いたタルク(日本タルク社製、「タルクMS−K」)の粉末2.0gを少量ずつ入れて自然沈降させ、全量を添加した後1時間静置し、膨潤した粘土鉱物の見かけ容積を読んだところ、2ml/2gであった。
ポリプロピレン製シート上に得られた水蒸気バリアフィルム層用分散液を、ドクターブレードを用いて厚みが300μmとなるように塗布した。ポリプロピレン製シートを水平に保った状態で強制送風式オーブン中50℃の温度条件で3時間乾燥して、ポリプロピレン製シート上に水蒸気バリアフィルム層を形成した。
次に乾燥した水蒸気バリアフィルム層をポリプロピレン製シートより剥がし、裏返して再度ポリプロピレン製シートの上に置いた。
裏返した水蒸気バリアフィルム層に、作製した不燃フィルム層用分散液を、ドクターブレードを用いて厚みが300μmとなるように塗布した。ポリプロピレン製シートを水平に保った状態で強制送風式オーブン中50℃の温度条件で10時間乾燥して、水蒸気バリアフィルム層上に不燃フィルム層を成形し、積層体を得た。
得られた積層体をポリプロピレン製シートから剥がし、順に、120℃で1時間、150℃で1時間、200℃で1時間、350℃で6時間熱処理して、厚さ110μmの不燃水蒸気バリアフィルムを得た。
「水蒸気バリアフィルム層用分散液の調製」において、18.6重量%ポリアミド酸のN−メチル−2−ピロリドン溶液(宇部興産社製、「U−ワニスA」)の使用量を10.5gに変更し、「不燃水蒸気バリアフィルムの作製」における水蒸気バリアフィルム層用分散液の塗布厚みを1000μmとしたこと以外は、実施例1と同じ方法で、厚さ95μmの不燃水蒸気バリアフィルムを得た。
「水蒸気バリアフィルム層用分散液の調製」において、18.6重量%ポリアミド酸のN−メチル−2−ピロリドン溶液(宇部興産社製、「U−ワニスA」)の使用量を24.0gに変更し、「不燃水蒸気バリアフィルムの作製」における水蒸気バリアフィルム層用分散液の塗布厚みを1000μmとした以外は、実施例1と同じ方法で、厚さ105μmの不燃水蒸気バリアフィルムを得た。
実施例1と同様にして得られた不燃フィルム層用分散液を、底面が平坦であり、底面の形状が長方形であるポリプロピレン製シートに、ドクターブレードを用いて厚みが400μmとなるように塗布した。ポリプロピレン製シートを水平に保った状態で強制送風式オーブン中50℃の温度条件で10時間乾燥して、ポリプロピレン製シート上に不燃水蒸気バリアフィルムを形成した。このフィルムをポリプロピレン製シートから剥離し、順に、120℃で30分、150℃で5分、200℃で5分、350℃で30分熱処理して、タルクとポリイミド樹脂とからなり、全重量に対するタルクの割合が61.7重量%である厚さ80μmの不燃水蒸気バリアフィルムを得た。
実施例1と同様にして得られた水蒸気バリアフィルム層用分散液を、ドクターブレードを用いて厚みが2000μmとなるように塗布し、乾燥させた。しかし、乾燥後のフィルムには多数の割れが生じ、均一なフィルムを得ることができなかった。乾燥後のフィルム厚みは40μmであり、焼成後も厚みは変わらなかった。
実施例1〜3、及び、比較例1で得られた不燃水蒸気バリアフィルムについて以下の評価を行った。結果を表4に示した。
得られた不燃水蒸気バリアフィルムについて、UL94規格による薄手材料垂直燃焼試験(VTM試験)を行った。
表1に示した各判定基準において、各試験片(長さ約200mm、幅50mm)を5枚使用した。炎の大きさは20mmとした。
なお、接炎時間は3秒間とし、接炎後の残炎時間をそれぞれ測定した。また、火が消えると同時に2回目の接炎を3秒間行って、1回目と同様にして、接炎後の残炎時間をそれぞれ測定した。更に、落下する火種により試験片の下に置いた綿が発火するか否かについても同時に評価した。また、標線は試験片の下端から125mmの位置にあり、標識用綿は試験片の下端から300mm下方に配置した。
VTM試験において、燃焼性分類としては、VTM−0が最高のものであり、VTM−1、VTM−2となるに従って難燃性が低下することを示す。ただし、VTM−0〜VTM−2のランクのいずれにも該当しないものは不合格とした。
国土交通省令第151号「鉄道に関する技術上の基準を定める法令」に基づく鉄道車両用材料燃焼試験に準拠して、得られた不燃水蒸気バリアフィルムから作製した試験片(長さ257mm、幅182mm)の短辺が上下にくるようにして45°傾斜に保持し、燃料容器(鉄製、厚さ0.8mm、直径17.5mm、高さ7.1mm)の底の中心が、試験片の下面の中心の垂直下方25.4mmの位置となるように、台に載せ、純エチルアルコール0.5mLを入れて着火し、燃料が燃えつきるまで放置し、燃焼性をアルコールの燃焼中と燃焼後とに分け、燃焼中はサンプルへの着火、着炎、煙及び火勢を観察し、燃焼後は残炎、残じん、炭化及び変形状態を調べた。
試験片に着火がなく、発煙が少なく、又、エチルアルコールの燃焼後、変色が試験片の縁に達していない場合は「極難燃性」とし、変色の大きさが100mm以内の場合は「不燃性」として判定した。
(総発熱量、最大発熱速度、及び、着火開始時間の評価)
得られた不燃水蒸気バリアフィルムについて、ISO5660−1に準拠したコーンカロリーメーター試験機(東洋精機製作所社製、「コーンカロリーメーターIII」)を用いて、加熱開始後20分間の総発熱量(MJ/m2)、加熱開始後20分間の最大発熱速度(kW/m2)、加熱開始後から着火するまでの時間(秒)を測定した。
得られた不燃水蒸気バリアフィルムから、幅5mm、長さ10mmの試験片を作製し、TMA装置(島津製作所社製、「TMA−60」)を用い、引張りモ−ド、荷重1.0g、10℃/分の条件で、50〜250℃における線膨張係数を測定した。
得られた不燃水蒸気バリアフィルムについて、JIS−K5600−5−1に準拠した方法で耐屈曲性(円筒形マンドレル法)試験を実施した。試験方法は、1〜5mm径マンドレルを使用し、一つの試験片に対して大きい直径のマンドレルから小さいマンドレルへと順に試験し、フィルム割れやひび割れの初めて起こるマンドレル直径を示した。1mmのマンドレルでも割れの生じなかったフィルムについては1mm以下とした。
JIS C2110に準拠した方法で絶縁破壊電圧を測定した。陽極として厚み100μm、10cm角のアルミ箔電極、陰極として真鍮性25mmφの電極を用い、この間に不燃水蒸気バリアフィルムをはさみ、直流高圧安定化電源(春日電気社製)を用いて、100V/秒の速度で昇圧しながら電圧を印加し、電流が10mA以上流れた場合を絶縁破壊したものとした。その時の電圧を測定点のフィルム厚みで割った値を絶縁破壊強度とし、5点測定した時の中央値で示した。
JIS K 7126 A法(差圧法)に準じた差圧式のガスクロ法により、ガスや蒸気等の透過率や透湿度の測定が可能なガス・蒸気透過率測定装置(GTRテック社製)を用いて、40℃、90%RHの条件で不燃水蒸気バリアフィルムの水蒸気透過度の測定を行った。
更に、本発明の不燃水蒸気バリアフィルムは、充分な機械的強度と優れた柔軟性、不燃性を持つフィルムであり、様々な電気材料、機械材料等の部材、例えば、コンデンサー誘電体、各種センサー用基板、電池用絶縁フィルム、コンデンサー用絶縁フィルム、各種積層板、離形フィルム、不燃性布地、不燃性建材、産業用パッキン等として使用可能である。これら分野に新素材を提供し、新技術への発展に貢献できる。
2 太陽電池素子
3 封止剤
4 光透過性基板
5 太陽電池バックシート
6 不燃水蒸気バリアフィルム
Claims (17)
- 不燃フィルム層と水蒸気バリアフィルム層とを積層してなり、
前記不燃フィルム層は、非膨潤性粘土鉱物と合成樹脂とを含有し、
該非膨潤性粘土鉱物の含有量が不燃フィルム層の全重量に対して30重量%以上90重量%以下であり、かつ、
前記水蒸気バリアフィルム層は、膨潤性粘土鉱物と合成樹脂とを含有し、
前記非膨潤性粘土鉱物は、シリカ化合物、シリカアルミナ化合物、アルミニウム化合物、カルシウム化合物、及び、窒化物からなる群から選択される少なくとも一種であり、
前記合成樹脂は、ポリイミド樹脂及び/又はポリアミドイミド樹脂であり、
前記膨潤性粘土鉱物は、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、及び、スチーブンサイトから選択される少なくとも一種である
ことを特徴とする不燃水蒸気バリアフィルム。 - UL94規格VTM試験において、燃焼性分類がVTM−0であることを特徴とする請求項1に記載の不燃水蒸気バリアフィルム。
- 燃焼性分類がVTM−0となるときの厚みが100μm以下であることを特徴とする請求項2記載の不燃水蒸気バリアフィルム。
- 40℃、90%RHの環境下での水蒸気透過率が0.5g/m2・day以下であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の不燃水蒸気バリアフィルム。
- 非膨潤性粘土鉱物として層状ケイ酸塩鉱物を含有することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の不燃水蒸気バリアフィルム。
- 非膨潤性粘土鉱物は、タルク、カオリン、及び、パイロフィライトからなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の不燃水蒸気バリアフィルム。
- 合成樹脂は、芳香族ポリイミド樹脂及び/又は芳香族ポリアミドイミド樹脂であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の不燃水蒸気バリアフィルム。
- 厚みが10μm以上であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の不燃水蒸気バリアフィルム。
- JIS−K5600−5−1(1999)に準拠した円筒形マンドレル法による耐屈曲性試験において、フィルムの割れの起こるマンドレル直径が10mm以下であることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の不燃水蒸気バリアフィルム。
- 国土交通省令第151号「鉄道に関する技術上の基準を定める法令」に基づく鉄道車両用材料燃焼試験の不燃性に該当することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の不燃水蒸気バリアフィルム。
- ISO5660−1に準拠したコーンカロリーメーターによる発熱性試験において、加熱開始後20分間の総発熱量がサンプル面積に対して8MJ/m2以下であり、加熱開始後20分間の最大発熱速度が、サンプル面積に対して300kW/m2以下であり、かつ、試験開始から着火するまでの時間が60秒以上であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10記載の不燃水蒸気バリアフィルム。
- 請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11記載の不燃水蒸気バリアフィルムを製造する方法であって、
分散媒と、膨潤性粘土鉱物と、合成樹脂及び/又は合成樹脂の前駆体とを含有する水蒸気バリアフィルム層用分散液を調製する工程1と、
調製した水蒸気バリアフィルム層用分散液を基板上に展開して静置する工程2と、
該基板上に展開した水蒸気バリアフィルム層用分散液から分散媒を除去してフィルム状に成形し、水蒸気バリアフィルム層を作製する工程3と、
分散媒と、非膨潤性粘土鉱物と、合成樹脂及び/又は合成樹脂の前駆体とを含有する不燃フィルム層用分散液を調製する工程4と、
工程3にてフィルム状に成形した水蒸気バリアフィルム層上に、調製した不燃フィルム層用分散液を展開する工程5と、
水蒸気バリアフィルム層上に展開した不燃フィルム層用分散液から分散媒を除去してフィルム状に成形し、水蒸気バリアフィルム層上に不燃フィルム層を作製する工程6とを有する
ことを特徴とする不燃水蒸気バリアフィルムの製造方法。 - 請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11記載の不燃水蒸気バリアフィルムを製造する方法であって、
分散媒と、非膨潤性粘土鉱物と、合成樹脂及び/又は合成樹脂の前駆体とを含有する不燃フィルム層用分散液を調製する工程1と、
調製した不燃フィルム層用分散液を基板上に展開して静置する工程2と、
該基板上に展開した不燃フィルム層用分散液から分散媒を除去してフィルム状に成形し、不燃フィルム層を作製する工程3と、
分散媒と、膨潤性粘土鉱物と、合成樹脂及び/又は合成樹脂の前駆体とを含有する水蒸気バリアフィルム層用分散液を調製する工程4と、
工程3にてフィルム状に成形した不燃フィルム層上に、調製した水蒸気バリアフィルム層用分散液を展開する工程5と、
不燃フィルム層上に展開した水蒸気バリアフィルム層用分散液から分散媒を除去してフィルム状に成形し、不燃フィルム層上に水蒸気バリアフィルム層を作製する工程6とを有する
ことを特徴とする不燃水蒸気バリアフィルムの製造方法。 - 工程3及び工程6における分散媒を除去する際の温度が150℃以下である
ことを特徴とする請求項12又は13記載の不燃水蒸気バリアフィルムの製造方法。 - 基板は、ガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエチレン、又は、ポリプロピレンからなることを特徴とする請求項12、13又は14記載の不燃水蒸気バリアフィルムの製造方法。
- 請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11記載の不燃水蒸気バリアフィルムを用いてなる太陽電池バックシート。
- 請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10若しくは11記載の不燃水蒸気バリアフィルム、又は、請求項16記載の太陽電池バックシートを用いてなる太陽電池。
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