JP3686258B2 - ポリイミド系フィルムおよび製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シラン粘土複合体を含むポリイミド系フィルムおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリイミドフィルムは耐熱性と電気絶縁特性に優れるのでフレキシブルプリント配線板や半導体装置におけるリ−ドオンチップテ−プ用ベ−スフィルム等の電子材料として多く用いられている。しかし、近年、コンピュ−タや携帯電話等の電子機器の小型化、高機能化に伴い、それらに用いられる電子部品の小型化、精密化が強く求められ、そのためポリイミドフィルムの薄手化や高寸法安定性、水蒸気等のガスに対する高いバリヤ−性が強く望まれるようになってきている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来この様な問題に対処するため、層状粘土鉱物等の無機物をそのままポリイミド樹脂中に添加する方法などが検討されていたが、無機物の分散性が悪く弾性率や寸法安定性、ガスバリヤ−性などの特性向上効果が不十分であるばかりか、フィルムの表面平滑性が損なわれてしまうという問題が有った。
【0004】
特開平4−33955に予めアルキルアンモニウムイオンで有機化した膨潤性ケイ酸塩をポリイミド樹脂中に良好に分散させる方法が開示されているが、アルキルアンモニウムイオンは耐熱性に劣るためポリイミド樹脂の耐熱性を低下させるだけでなく、フィルム製造工程における高温処理時に熱分解を起こしフィルムの着色や靭性を低下させることが問題となっていた。
【0005】
【課題を解決しようとする手段】
第一の発明は、シラン粘土複合体を含有するポリイミド系フィルムであり、詳しくはフィルム中のシラン粘土複合体の平均層厚が300Å以下であるポリイミド系フィルムである。
第二の発明は、(A)シラン粘土複合体およびポリイミド樹脂の重合性モノマー及び/又は中間重合体を含む分散体を調製する工程、(B)上記分散体をフィルム化する工程を含む、請求項1〜5のいずれかに記載のポリイミド系フィルムの製造方法である。
【0006】
【発明の実施の態様】
本発明のポリイミド系フィルムは、ポリイミド樹脂およびシラン粘土複合体を含有するポリイミド系フィルムである。
本発明のポリイミド系フィルムは、耐熱性に優れるシラン系化合物で有機化処理された粘土複合体を用いる点に特徴があり、耐熱性や靭性を損なうこと無くポリイミド系フィルムの高弾性率化が実現できる。
【0007】
本発明で用いられるポリイミド樹脂とは、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの縮合反応により得られるポリアミド酸の脱水反応を行うことによって得られるポリイミド樹脂である。
テトラカルボン酸二無水物類としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’、4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’、4,4’−ジフェニルエ−テルテトラカルボン酸二無水物、3,3’、4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,4−ヒドロキノンジベンゾエ−ト−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物が挙げられ、1種または2種以上混合して用いることもできる。
【0008】
またジアミン類としては、パラフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、4,4’−ジアミノベンズアニリド、2、2−ビス[(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンが挙げられ、1種または2種以上混合して用いることもできる。
本発明で用いられるシラン粘土複合体とは、膨潤性ケイ酸塩に下記一般式(1)
YnSiX4−n (1)
(ただし、nは0〜3の整数であり、Yは、炭素数1〜25の炭化水素基、及び炭素数1〜25の炭化水素基と置換基から構成される有機官能基であり、Xは加水分解性基および/または水酸基である。n個のY、4−n個のXは、それぞれ同種でも異種でもよい。)
で表されるシラン系化合物が導入されているものである。
【0009】
上記の膨潤性ケイ酸塩は、主として酸化ケイ素の四面体シートと、主として金属水酸化物の八面体シートからなり、スメクタイト族粘土および膨潤性雲母などが挙げられる。
前記のスメクタイト族粘土は下記一般式(2)
X0.2〜0.6 Y2〜3 Z4O10(OH)2・nH2O (2)
(ただし、XはK、Na、1/2Ca、及び1/2Mgから成る群より選ばれる1種以上であり、YはMg、Fe、Mn、Ni、Zn、Li、Al、及びCrから成る群より選ばれる1種以上であり、ZはSi、及びAlから成る群より選ばれる1種以上である。尚、H2Oは層間イオンと結合している水分子を表すが、nは層間イオンおよび相対湿度に応じて著しく変動する)
で表され、天然または合成されたものである。該スメクタイト族粘土の具体例としては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、鉄サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト、及びベントナイト等、またはこれらの置換体、誘導体、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0010】
また、前記の膨潤性雲母は下記一般式(3)
X0.5〜1.0 Y2〜3(Z4O10)(F、OH)2 (3)
(ただし、XはLi、Na、K、Rb、Ca、Ba、及びSrから成る群より選ばれる1種以上であり、YはMg、Fe、Ni、Mn、Al、及びLiから成る群より選ばれる1種以上であり、ZはSi、Ge、Al、Fe、及びBから成る群より選ばれる1種以上である。)
で表され、天然または合成されたものである。これらは、水、水と任意の割合で相溶する極性溶媒、及び水と該極性溶媒の混合溶媒中で膨潤する性質を有する物であり、例えば、リチウム型テニオライト、ナトリウム型テニオライト、リチウム型四ケイ素雲母、及びナトリウム型四ケイ素雲母等、またはこれらの置換体、誘導体、あるいはこれらの混合物が挙げられる。下記のバーミキュライト類相当品等も使用し得る。
【0011】
前記バーミキュライトには3八面体型と2八面体型があり、下記一般式(4)
(Mg,Fe,Al)2〜3(Si4−xAlx)O10(OH)2・(M+,M2+1/2)x・nH2O (4)
(ただし、MはNa及びMg等のアルカリまたはアルカリ土類金属の交換性陽イオン、x=0.6〜0.9、n=3.5〜5である)
で表される。
【0012】
前記の膨潤性ケイ酸塩は、単独または2種以上組み合わせて使用される。膨潤性ケイ酸塩の結晶構造は、c軸方向に規則正しく積み重なった純粋度が高いものが望ましいが、結晶周期が乱れ、複数種の結晶構造が混じり合った、いわゆる混合層鉱物も使用され得る。
膨潤性ケイ酸塩に導入されるシラン系化合物とは、通常一般に用いられる任意のものが使用され得、好ましくは、下記一般式(1)
YnSiX4−n (1)
で表されるものである。ここで、nは0〜3の整数である。Yは、炭素数1〜25の炭化水素基、及び炭素数1〜25の炭化水素基と置換基から構成される有機官能基、ただし該置換基はエステル基、エーテル基、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、カルボニル基、アミド基、メルカプト基、スルホニル基、スルフィニル基、ニトロ基、ニトロソ基、ニトリル基、ハロゲン原子、及び水酸基から成る群より選択される1種以上である。Xは加水分解性基および/または水酸基であり、該加水分解基は、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、ケトオキシム基、アシルオキシ基、アミノ基、アミノキシ基、アミド基、ハロゲン原子から成る群より選択される1種以上である。ここで、n個のY、4−n個のXは、それぞれ同種でも異種でもよい。
【0013】
本明細書において炭化水素基とは、直鎖または分岐鎖(すなわち側鎖を有する)の飽和または不飽和の一価または多価の脂肪族炭化水素基、および芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基を意味し、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、ナフチル基、シクロアルキル基等が挙げられる。本明細書において、「アルキル基」という場合は、特に指示が無い限り「アルキレン基」等の多価の炭化水素基を包含することを意図する。同様にアルケニル基、アルキニル基、フェニル基、ナフチル基、及びシクロアルキル基は、それぞれアルケニレン基、アルキニレン基、フェニレン基、ナフチレン基、及びシクロアルキレン基等を包含する。
【0014】
上記一般式(1)において、Yが炭素数1〜25の炭化水素基である場合の例としては、デシルトリメトキシシランの様にポリメチレン鎖を有するもの、メチルトリメトキシシランの様に低級アルキル基を有するもの、2−ヘキセニルトリメトキシシランの様に不飽和炭化水素基を有するもの、2−エチルヘキシルトリメトキシシランの様に側鎖を有するもの、フェニルトリエトキシシランの様にフェニル基を有するもの、3−β−ナフチルプロピルトリメトキシシランの様にナフチル基を有するもの、及びp−ビニルベンジルトリメトキシシランの様にフェニレン基を有するものが挙げられる。Yがビニル基を有する基である場合の例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、及びビニルトリアセトキシシランが挙げられる。Yがエステル基を有する基である場合の例としては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。Yがエーテル基を有する基である場合の例としては、γ−ポリオキシエチレンプロピルトリメトキシシラン、及び2−エトキシエチルトリメトキシシランが挙げられる。Yがエポキシ基を有する基である場合の例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。Yがアミノ基を有する基である場合の例としては、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、及びγ−アニリノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。Yがカルボニル基を有する基である場合の例としては、γ−ユレイドプロピルトリエトキシシランが挙げられる。Yがメルカプト基を有する基である場合の例としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランが挙げられる。Yがハロゲンを有する基である場合の例としては、γ−クロロプロピルトリエトキシシランが挙げられる。Yがスルホニル基を有する基である場合の例としては、γ−フェニルスルホニルプロピルトリメトキシシランが挙げられる。Yがスルフィニル基を有する基である場合の例としては、γ−フェニルスルフィニルプロピルトリメトキシシランが挙げられる。Yがニトロ基を有する基である場合の例としては、γ−ニトロプロピルトリエトキシシランが挙げられる。Yがニトロソ基を有する基である場合の例としては、γ−ニトロソプロピルトリエトキシシランが挙げられる。Yがニトリル基を有する基である場合の例としては、γ−シアノエチルトリエトキシシランおよびγ−シアノプロピルトリエトキシシランが挙げられる。Yがカルボキシル基を有する基である場合の例としては、γ−(4−カルボキシフェニル)プロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0015】
上記以外にYが水酸基を有する基であるシラン系化合物もまた使用し得る。その様な例としては、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)アミノ−3−プロピルトリエトキシシランが挙げられる。
上記のシラン系化合物の置換体または誘導体もまた使用し得る。これらのシラン系化合物は、単独又は2種以上組み合わせて使用され得る。
【0016】
シラン粘土複合体は、膨潤性ケイ酸塩を分散媒中で底面間隔を拡大させた後に、シラン系化合物を添加する事により得られる。
上記の分散媒とは、水、水と任意の割合で相溶する極性溶媒、及び水と該極性溶媒の混合溶媒を意図する。該極性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のグリコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類、その他の溶媒であるジメチルスルホキシド、ピリジン等が挙げられる。これらの極性溶媒は単独で用いても良く2種類以上組み合わせて用いても良い。
【0017】
膨潤性ケイ酸塩を分散媒中で底面間隔を拡大させることは、該膨潤性ケイ酸塩を該分散媒中で充分に撹拌して分散させる事によりなし得る。拡大後の底面間隔は初期の膨潤性ケイ酸塩の底面間隔に比べて、好ましくは3倍以上であり、更に好ましくは5倍以上である。上限値は特にない。ただし、底面間隔が約10倍以上に拡大すると、底面間隔の測定が困難になるが、この場合、膨潤性ケイ酸塩は実質的に単位層で存在する。
【0018】
ここで、本明細書において、膨潤性ケイ酸塩の初期の底面間隔とは、分散媒に添加する前の、単位層が互いに積層し凝集状態である粒子状の膨潤性ケイ酸塩の底面間隔である事を意図する。
底面間隔は小角X線回折法(SAXS)などで確認し得る。すなわち、分散媒と膨潤性ケイ酸塩から成る分散体におけるX線回折ピーク角値をSAXSで測定し、該ピーク角値をBraggの式に当てはめて算出することにより底面間隔を求め得る。
【0019】
膨潤性ケイ酸塩の底面間隔を効率的に拡大させるためには、数千rpm以上で撹拌するか、以下に示す物理的な外力を加える方法が挙げられる。物理的な外力は、一般に行われるフィラーの湿式微粉砕方法を用いることによって加えられ得る。一般的なフィラーの湿式微粉砕方法としては、例えば、硬質粒子を利用する方法が挙げられる。この方法では、硬質粒子と膨潤性ケイ酸塩と任意の溶媒とを混合して撹拌し、硬質粒子と膨潤性ケイ酸塩との物理的な衝突によって、膨潤性ケイ酸塩を分離させる。通常用いられる硬質粒子はフィラー粉砕用ビーズであり、例えば、ガラスビーズまたはジルコニアビーズ等が挙げられる。これら粉砕用ビーズは、膨潤性ケイ酸塩の硬度、または撹拌機の材質を考慮して選択され、上述したガラスまたはジルコニアに限定されない。その粒径もまた、膨潤性ケイ酸塩のサイズなどを考慮して決定されるために一概に数値で限定されるものではないが、直径0.1〜6.0mmの範囲にあるものが好ましい。ここで用いる溶媒は特に限定されないが、例えば、上記の分散媒が好ましい。
【0020】
上記のように、膨潤性ケイ酸塩の底面間隔を拡大し、言い換えれば、凝集状態であった層を劈開してばらばらにし、個々独立に存在させた後にシラン系化合物を添加して撹拌する。この様に、劈開された膨潤性ケイ酸塩の層の表面に該シラン系化合物を導入する事によってシラン粘土複合体が得られる。
【0021】
シラン系化合物の導入は、分散媒を用いる方法の場合は、底面間隔が拡大された膨潤性ケイ酸塩と分散媒を含む分散体中にシラン系化合物を添加して撹拌することにより行われ得る。シラン系化合物をより効率的に導入したい場合は、撹拌の回転数を1000rpm以上、好ましくは1500rpm以上、より好ましくは2000rpm以上にするか、あるいは湿式ミルなどを用いて500(1/s)以上、好ましくは1000(1/s)以上、より好ましくは1500(1/s)以上の剪断速度を加える。回転数の上限値は約25000rpmであり、剪断速度の上限値は約500000(1/s)である。上限値よりも大きい値で撹拌を行ったり、剪断を加えたとしても変わらない傾向があり、上限値よりも大きい値で撹拌を行う必要はない。
【0022】
物理的外力を用いる方法の場合、膨潤性ケイ酸塩に物理的外力を加えながら(例えば、湿式粉砕しながら)そこにシラン系化合物を加えることによって、シラン系化合物を導入し得る。
あるいは、物理的外力によって底面間隔が拡大された膨潤性ケイ酸塩を分散媒中に加え、上記の分散媒を用いる方法の場合と同様に、そこにシラン系化合物を添加することによって、シラン系化合物を膨潤性ケイ酸塩に導入することもできる。
【0023】
膨潤性ケイ酸塩の表面に存在する水酸基と、シラン系化合物の加水分解性基または水酸基(式1中のX)とが反応する事によって、膨潤性ケイ酸塩にシラン系化合物が導入され得る。
有機オニウムイオンで有機化処理を施した場合、膨潤性ケイ酸塩と有機オニウムイオンはイオン結合力によって結合している。しかしシラン系化合物で処理を施した場合は、イオン結合より強い共有結合でシラン系化合物と膨潤性ケイ酸塩が結合することになり、このことが従来の粘土複合体に比べシラン粘土複合体が耐熱性に優れる一因となっていると考えられる。
【0024】
膨潤性ケイ酸塩とシラン系化合物との反応は室温で充分に進行し得るが、必要に応じて反応系を加温しても良い。加温時の最高温度は用いるシラン系化合物の分解温度より低く、かつ、分散媒の沸点より低い温度で有れば任意に設定し得る。
膨潤性ケイ酸塩中に導入されたシラン系化合物がさらに水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、あるいはビニル基などの様な反応活性な官能基(式1中のYの置換基)を有している場合、この様な反応活性基と反応できる化合物を更に添加して、この化合物をこの反応活性基と反応させることも可能である。この様にして膨潤性ケイ酸塩に導入されたシラン系化合物の官能基鎖の鎖長を長くしたり、極性を変えることができる。この場合、添加される化合物としては上記のシラン系化合物自体も用いられ得るが、それらに限定されることなく、目的に応じて任意の化合物が用いられ、例えば、エポキシ基含有化合物、アミノ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、酸無水物基含有化合物、及び水酸基含有化合物等が挙げられる。
【0025】
シラン系化合物の使用量は、シラン粘土複合体とポリイミド樹脂、ポリイミド樹脂の重合性モノマー及び/又は中間重合体、あるいはポリイミド樹脂の重合性モノマー及び/又は中間重合体の良溶媒(ピロリドン化合物等;後述する本発明のポリイミド系フィルムの好ましい製造方法における工程(A)にて用いられる)との親和性が十分に高まるように調製し得る。必要であるならば、異種の官能基を有する複数種のシラン系化合物を併用し得る。従って、シラン系化合物の添加量は一概に数値で限定されるものではないが、膨潤性ケイ酸塩100重量部に対して、0.1から200重量部であり、好ましくは0.2から180重量部であり、より好ましくは0.3から160重量部であり、更に好ましくは0.4から140重量部であり、特に好ましくは0.5から120重量部である。シラン系化合物の量が0.1重量部未満であると得られるシラン粘土複合体の微分散化効果が充分で無くなる傾向がある。また、200重量部以上では効果が変わらないので、200重量部より多く添加する必要はない。
【0026】
上記のようにして得られるシラン粘土複合体の底面間隔は、導入されたシラン系化合物の存在により、膨潤性ケイ酸塩の初期の底面間隔に比べて拡大し得る。例えば、分散媒中に分散されて底面間隔が拡大された膨潤性ケイ酸塩は、シラン系化合物を導入しない場合、分散媒を除去すると再び層同士が凝集した状態に戻るが、本発明によれば、底面間隔を拡大した後にシラン系化合物を導入することによって、分散媒を除去した後も、得られるシラン粘土複合体は層同士が凝集することなく底面間隔が拡大された状態で存在し得る。シラン粘土複合体の底面間隔は膨潤性ケイ酸塩の初期の底面間隔に比べて、1.3倍以上、好ましくは1.5倍以上、更に好ましくは1.7倍以上、特に好ましくは2倍以上拡大している。
【0027】
シラン系化合物が膨潤性ケイ酸塩に導入された事は種々の方法で確認し得る。確認の方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
まず、テトラヒドロフランやクロロホルムなどの有機溶剤を用いてシラン粘土複合体を洗浄する事によって、単に吸着しているシラン系化合物を洗浄し除去する。洗浄後のシラン粘土複合体を乳鉢などで粉体状にしたのち充分に乾燥する。次いで、シラン粘土複合体を粉末状の臭化カリウム(KBr)等のような窓材質と所定の比率で充分に混合して加圧錠剤化し、フーリエ変換(FT)−IRを用い、透過法等により、シラン系化合物に由来する吸収帯を測定する。より正確に測定することが所望される場合、あるいは導入されたシラン系化合物量が少ない場合には、充分に乾燥した粉末状のシラン粘土複合体をそのまま拡散反射法(DRIFT)で測定することが望ましい。
【0028】
シラン粘土複合体の底面間隔が膨潤性ケイ酸塩よりも拡大している事は、種々の方法で確認し得る。確認の方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
すなわち、上記と同様にして、吸着しているシラン系化合物を有機溶媒で洗浄してシラン粘土複合体から除去し、乾燥した後に、小角X線回折法(SAXS)などで確認し得る。この方法では、粉末状のシラン粘土複合体の(001)面に由来するX線回折ピーク角値をSAXSで測定し、Braggの式に当てはめて算出することにより底面間隔を求め得る。同様に初期の膨潤性ケイ酸塩の底面間隔を測定し、この両者を比較することにより底面間隔の拡大を確認し得る。
【0029】
上記のように、シラン系化合物が導入されていること、および底面間隔が拡大していることを確認することによって、シラン粘土複合体が生成していることを確認できる。この様に、本発明によれば、シラン系化合物を導入すること、および底面間隔を拡大することにより、シラン粘土複合体とポリイミド樹脂あるいはポリイミド樹脂の重合性モノマー及び/又は中間重合体、またはその良溶媒(N−メチル−2−ピロリドン化合物等)との間の親和性を高めることができる。
【0030】
本発明のポリイミド系フィルムにおいて、ポリイミド樹脂100重量部に対するシラン粘土複合体の配合量が、代表的には0.01〜20重量部、好ましくは0.05〜15重量部、より好ましくは0.1〜12重量部となるように調製される。シラン粘土複合体の配合量が0.01重量部未満であると機械物性や寸法安定性の改善効果が不充分となる場合があり、20重量部を超えるとフィルムの外観や透明性、あるいは製膜時の流動性などが損なわれる傾向がある。
【0031】
また、シラン粘土複合体に由来するポリイミド系フィルムの灰分率が、代表的には0.01〜15重量%、好ましくは0.05〜13重量%、より好ましくは0.1〜11重量%と成るように調製される。灰分率が0.01重量%未満であると機械物性や寸法安定性の改善効果が不充分となる場合があり、15重量%を超えるとフィルムの外観や透明性、あるいは製膜時の流動性などが損なわれる傾向がある。
【0032】
本発明のポリイミド系フィルム中で分散しているシラン粘土複合体の構造は、配合前の膨潤性ケイ酸塩が有していたような、層が多数積層したμmサイズの凝集構造とは全く異なる。すなわち、マトリックスと親和性を有するシラン系化合物が導入され、かつ初期の膨潤性ケイ酸塩に比べて底面間隔が拡大されたシラン粘土複合体を用いることによって、シラン粘土複合体はポリイミド系フィルム中で非常に細かく互いに独立した薄片状に分散する。この様な薄片状のシラン粘土複合体の分散状態は以下に述べるようなパラメーターで表現され得る。
【0033】
まず、平均層厚を、薄片状に分散したシラン粘土複合体の層厚みの数平均値であると定義すると、本発明のポリイミド系フィルム中のシラン粘土複合体の平均層厚の上限値は300Å以下であり、好ましくは250Å以下であり、より好ましくは200Å以下である。また、シラン粘土複合体の平均層厚の下限は特に制限されないが、10Å程度である。シラン粘土複合体の平均層厚が上記の範囲にないと、本発明のポリイミド系フィルムの外観、寸法安定性が損なわれる場合があり、また、弾性率等の特性向上効果が十分に得られない場合がある。
【0034】
また、アスペクト比を、ポリイミド系フィルム中に分散したシラン粘土複合体の層長さ/層厚の比の数平均値であると定義すると、本発明のポリイミド系フィルム中のシラン粘土複合体のアスペクト比は10〜300であり、好ましくは20〜300であり。更に好ましくは30〜300である。シラン粘土複合体のアスペクト比が10未満であると、本発明のポリイミド系フィルムの特性向上効果が十分に得られない傾向がある。また、300より大きくても効果はそれ以上変わらないため、アスペクト比を300より大きくする必要はない。
【0035】
また、最大層厚を、ポリイミド系フィルム中に薄片状に分散したシラン粘土複合体の層厚みの最大値であると定義すると、本発明のポリイミド系フィルム中のシラン粘土複合体の最大層厚の上限値は、2000Å、好ましくは1800Å、より好ましくは1500Å、更に好ましくは1200Å、特に好ましくは1000Åである。最大層厚の上限値が2000Åより大きいと、本発明のポリイミド系フィルムの表面性が損なわれたり、寸法安定性への改良効果が十分に得られない等の問題を生じることになる。シラン粘土複合体の最大層厚の下限値は、特に制限されない。
【0036】
上記の層厚および層長さは顕微鏡等を用いて撮影される像から求めることができる。すなわち、いま仮に、X−Y面上に置いたポリイミド系フィルムをX−Z面あるいはY−Z面と平行な面で薄片を切り出し、該薄片を透過型電子顕微鏡などを用い、約4〜10万倍以上の高倍率で観察して求められ得る。測定は、上記の方法で得られた透過型電子顕微鏡の象上に置いて、100個以上のシラン粘土複合体を含む任意の領域を選択し、画像処理装置などで画像化し、計算機処理する事等により定量化できる。あるいは、定規などを用いて計測しても求めることもできる。
【0037】
本発明のポリイミド系フィルムの製造方法を説明する。
ポリイミドの中間重合体である一般式(化1)
【0038】
【化1】
【0039】
(式中R1は4価の有機基、R2は2価の有機基を示す。)で表されるポリアミド酸とシラン粘土複合体との混合溶液(以下、粘土分散体と称する)を調製する。
ポリアミド酸は公知の方法で製造することができる。即ちテトラカルボン酸二無水物類と芳香族ジアミン類を実質等モル使用し有機極性溶媒中で重合して得られる。
【0040】
ポリアミド酸の生成反応に使用される有機溶剤としては、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド等のホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン等のピロリドン系溶媒、フェノ−ル、o−,m−,またはp−クレゾ−ル等のフェノ−ル系溶媒等を挙げることができ、これらを単独または混合物として用いるのが望ましいが、更にキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の使用も可能である。また、このポリアミド酸は、前記の有機極性溶媒中に1〜40重量%、好ましくは5〜25重量%溶解されているのが取り扱いの面からも望ましい。
【0041】
ポリアミド酸の重合においてポリアミド酸の重量平均分子量は、特に限定されないが15万以上が好ましく、20万以上が更に好ましい。重量平均分子量が15万以下であると、強度に劣るポリイミド系フィルムが得られるからである。
ポリアミド酸溶液あるいはシラン粘土複合体との混合方法については、特に制限はなく、ポリアミド酸溶液にシラン粘土複合体を固体状で添加する方法あるいは分散媒に予め分散させた分散液の状態で添加する方法のいずれの方法でもよいが、添加後に均一になるまで混練機などにより機械的剪断下で攪拌することが肝要である。
【0042】
混合を効率よく行うためには、撹拌機の回転数は500rpm以上、あるいは300(1/s)以上の剪断速度を加えることが望ましい。回転数の上限値は25000rpmであり、剪断速度の上限値は500000(1/s)である。上限値よりも大きい値で撹拌を行っても効果はそれ以上変わらない傾向があるため、上限値より大きい値で撹拌を行う必要はない。
【0043】
上記の方法で得られる粘土分散体に含まれるシラン粘土複合体は、膨潤性ケイ酸塩が有していたような初期の積層・凝集構造はほぼ完全に消失し、層同士の間隔が拡大していわゆる膨潤状態に成る。膨潤状態を表す指標として底面間隔が用いられ得る。すなわち、粘土分散体におけるシラン粘土複合体の底面間隔は、膨潤性ケイ酸塩の初期の底面間隔の4倍以上であり、好ましくは5倍以上であり、更に好ましくは6倍以上である。底面間隔が4倍未満であると、本発明のポリイミド系フィルムにおいてシラン粘土複合体が効率的に微分散しない傾向がある。
【0044】
また、シラン粘土複合体は、任意の段階で添加することができる。例えば、重合前のポリアミド酸の重合性モノマ−溶液に添加する方法、あるいは重合途中段階に添加する方法、更には、ポリアミド酸を熱的あるいは化学的にイミド化した後に添加する方法、即ちイミド樹脂溶液に添加する方法などを用いることができる。
【0045】
この粘土分散体から本発明のポリイミド系フィルムを得るには、(1)熱的に脱水しイミド化する熱的方法と(2)脱水剤を用いる化学的方法のいずれを用いてもよいが、伸びや強度などの機械的特性の優れるポリイミド系フィルムを得やすい化学的方法による方がより好ましい。
粘土分散体からポリイミド系フィルムを製造する方法を例示する。(1)上記混合溶液をドラムあるいはエンドレスベルト上に流延または塗布して膜状とし、その膜を自己支持性を有するまで150℃以下の温度で約5分〜60分乾燥させる。ついで、これを支持体から引き剥がし端部を固定した後、膜の収縮を制限しながら約100℃〜500℃のまで徐々に加熱することにより乾燥及びイミド化し、冷却後これより取り外し本発明のポリイミド系フィルムを得る。
【0046】
上記製造方法において、自己支持性を有するフィルムを支持体から剥がれやすくするためにポリアミド酸とシラン粘土複合体の混合溶液にかえて混合溶液に更に剥離剤を加えた混合溶液を用いてもよい。剥離剤としては、例えばジエチレングリコ−ルジメチルエ−テル、トリエチレングリコ−ルジメチルエ−テル等の脂肪族エ−テル類、ピリジン、ピコリンなどの3級アミン類、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフェ−ト等の有機りん化合物類が挙げられる。
【0047】
また化学的方法によりポリイミド系フィルムを得る場合は、ポリアミド酸とシラン粘土複合体の混合溶液に代えて、混合溶液に更に化学量論以上の脱水剤と触媒量の3級アミン類を加えた混合溶液を用いればよい。
脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水フタル酸などの脂肪族あるいは芳香族酸無水物類が挙げられる。触媒としては、例えばトリエチルアミンなどの脂肪族3級アミン、ピリジン、ピコリン、イソキノリン等の複素環式3級アミン類が挙げられる。
【0048】
粘土複合体からフィルム化する際に支持体から剥離した後の自己支持性を有するフィルムを延伸してもよい。延伸することにより機械的特性に優れるフィルムを得やすいからである。
ポリイミド系フィルムに接着性や耐熱性、または滑り性等の各種特性を向上させることを目的に、複合体中に、酸化チタン、炭酸カルシウム、アルミナ、シリカゲル等のシラン粘土複合体以外の微粒子を含有させたり、フィルム表面を、シランカップリング剤などの表面改質剤や微粒子とバインダ−樹脂を含む溶液等を塗布したり、コロナ処理やプラズマ処理などの放電処理などを施してもよい。
【0049】
本発明のポリイミド系フィルムは弾性率が高く、かつ透明性や靭性にも優れている。また、シラン系粘土複合体はフィルム中でフィルム面に平行に配向して分散しているため、フィルムガスバリヤー性や寸法安定性に優れ、しかも分散性が良好なためフィルム表面平滑性を損なわないので、フレキシブルプリント配線板や高密度磁気記録媒体等のベ−スフィルムに利用され得る。
【0050】
【実施例】
以下実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
まず実施例および比較例における評価方法を以下にまとめて示す。
1.シラン粘土複合体の分散性評価
フィルム中のシラン粘土複合体の分散性の評価は、フィルム中のシラン粘土複合体の平均及び最大層厚みを測定することにより行った。
ミクロトームを用い、厚み80〜100nmの薄片状サンプルを切り出した。透過型電子顕微鏡(日本電子JEM−1200EX)を用い、加速電圧80kVで倍率4万〜10万倍でシラン粘土複合体の分散状態を観察撮影した。TEM写真において、100個以上のシラン粘土複合体が存在する任意の領域を選び、平均層厚は個々のシラン粘土複合体の層厚の数平均値とし、アスペクト比は個々のシラン粘土複合体の層の長さを層厚で除した値の数平均値とし、最大層厚は個々のシラン粘土複合体の層厚の中で最大の値とした。
【0051】
測定は定規を用いたが、必要に応じてインタークエスト社の画像解析装置PIASを用いて処理する事により求めた。
2.粘土分散体における底面間隔の測定
X線発生装置(理学電機(株)製、RU−200B)を用い、ターゲットCuKα線、Niフィルター、電圧40kV、電流200mA、走査角2θ=0.2〜16.0°、ステップ角=0.02°の測定条件で底面間隔を測定した。
【0052】
底面間隔は、小角X線回折ピーク角値をBraggの式に代入して算出した。ただし、小角X線ピーク角値の確認が困難である場合は、層が十分に劈開して結晶性が実質的に消失したかあるいは、ピーク角値がおおよそ0.8°以下である為に確認が困難であるとみなし、底面間隔の評価結果としては>100Åとした。
3.フィルムの弾性率、伸び率
JISC2151に準拠して測定を行い、弾性率、伸び率について算出した。
4.フィルムの線膨張係数
JISK7197に準拠して測定を行い、100〜200℃における数値を算出した。
5.フィルムのガスバリヤー性
ガスバリヤ−性の評価は、ASTMに準拠して水蒸気透過率を測定することにより行った。
6.フィルムの灰分率
シラン粘土複合体に由来する、ポリイミド系フィルムの灰分率は、JISK7052に準じて測定した。
次に、ポリアミド酸溶液とシラン粘土複合体の調整例を示す。
【0053】
ODAは、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、PMDAはピロメリット酸二無水物、BPDAは、3,3’、4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、NMPはN−メチル−2−ピロリドンを表す。
(ポリアミド酸溶液の調整 A−1)
室温下に、ODA0.08molとパラフェニレンジアミン0.02molのNMP溶液にPMDA0.095molを加え、窒素雰囲気で1時間攪拌した。次に、この溶液にゆっくりとPMDA 0.005molのNMP溶液を加えて15重量%のポリアミド酸溶液を得た。
(ポリアミド酸溶液の調整A−2)
室温下に、ODA0.08molとパラフェニレンジアミン0.02molのNMP溶液にBPDA0.095molを加え、窒素雰囲気で1時間攪拌した。次に、この溶液にゆっくりとBPDA 0.005molのNMP溶液を加えて15重量%のポリアミド酸溶液を得た。
(シラン粘土複合体の調整B−1)
3500gのイオン交換水に125gのモンモリロナイト(クニミネ(株)のクニピアF、底面間隔=13Å)を加え、日本精機(株)製の湿式ミルを用いて5000rpm、5分間撹拌して分散させた。その後、簡易ピペットを用いて、A1120(γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、日本ユニカ−(株)製)を滴下し更に撹拌する事によってシラン粘土複合体を調製した。
【0054】
次いで、シラン粘土複合体と水を含む系に、3500gのNMPを加えて十分に混合し、温度約100〜130℃で約4時間撹拌を行い水を除去する事によって、シラン粘土複合体をNMPに分散させた混合液として得た。
(シラン粘土複合体の調整B−2)
3500gのイオン交換水に125gの(ヘクトライト:コープケミカル(株)製のルーセンタイトSWN、底面間隔=12Å)を加え、日本精機(株)製の湿式ミルを用いて5000rpm、5分間撹拌して分散させた。その後、簡易ピペットを用いて、A1230(γ−ポリオキシエチレンプロピルトリメトキシシラン、日本ユニカ−(株)製)を滴下し更に撹拌する事によってシラン粘土複合体を調製した。尚、A1230は塩酸でpH3.0に調製した水で加水分解したものを用いた。
【0055】
次いで、シラン粘土複合体と水を含む系に、3500gのNMPを加えて十分に混合し、温度約100〜130℃で約4時間撹拌を行い水を除去する事によって、シラン粘土複合体をNMPに分散させた混合液として得た。
(実施例1〜6)
ポリアミド酸溶液 A−1又はA−2とシラン粘土複合体のNMP混合溶液 B−1又はB−2を表1に示す組み合わせで混合しポリアミド酸とシラン粘土複合体を含む粘土分散体を調製した。粘土分散体におけるシラン粘土複合体の底面間隔を測定し、結果を表1に示した。
【0056】
得られた粘土分散体からポリイミド系フィルムを作製した。フィルムの作製は、以下のようにして行う。100gの粘土分散体に無水酢酸15g、β−ピコリン5g、NMP10gを加え充分攪拌した後、PETフィルム上にコ−タ−で塗布し、80℃で10分間加熱し自己支持性を有する膜を得た。この膜をPETから剥したのち、端部を固定して100℃〜450℃へ連続的に加熱し、更に450℃で5分間加熱しイミド化させて、透明性良好な厚みが15μmのポリイミド系フィルム得た。
【0057】
得られたポリイミド系フィルムについて、灰分率、シラン粘土複合体の平均及び最大層厚みを測定しその結果を表1に示した。更に弾性率、伸び率、線膨張係数及び水蒸気透過率を測定し、その結果を表2に示した。
(比較例1)
ポリアミド酸溶液 A−1とシラン粘土複合体のNMP混合溶液 B−1を混合しポリアミド酸とシラン粘土複合体を含む粘土分散体を調製した。粘土分散体におけるシラン粘土複合体の底面間隔を測定し、結果を表1に示した。
【0058】
得られた粘土分散体からポリイミド系フィルムを作製した。フィルムの作製は、以下のようにして行う。100gの粘土分散体に無水酢酸15g、β−ピコリン5g、NMP10gを加え充分攪拌した後、PETフィルム上にコ−タ−で塗布し、80℃で10分間加熱し自己支持性を有する膜を得た。この膜をPETから剥したのち、端部を固定して100℃〜450℃へ連続的に加熱し、更に450℃で5分間加熱しイミド化させて、透明性良好な厚みが15μmのポリイミド系フィルム得た。
【0059】
得られたポリイミド系フィルムについて、灰分率、シラン粘土複合体の平均及び最大層厚みを測定しその結果を表1に示した。更に弾性率、伸び率、線膨張係数及び水蒸気透過率を測定し、その結果を表2に示した。
(比較例2)
ポリアミド酸溶液A−1に灰分率が2%になるようにモンモリロナイトを直接加え攪拌し、ポリアミド酸溶液とモンモリロナイトの混合液を調整した。
【0060】
混合液におけるモンモリロナイトの底面間隔を測定し、結果を表1に示した。
混合液から、比較例1と同様の方法で15μmのフィルムを得た。
得られたフィルムについて、、灰分率、シラン粘土複合体の平均及び最大層厚みを測定しその結果を表1に示した。更に弾性率、伸び率、線膨張係数及び水蒸気透過率を測定し、その結果を表2に示した。
(比較例3〜4)
ポリアミド酸溶液A−1及びA−2から、比較例1と同様の方法で15μmのフィルムを得た。得られたフィルムについて、弾性率、伸び率、線膨張係数及び水蒸気透過率を測定し、その結果を表2に示した。
【0061】
【発明の効果】
以上のように、本発明のポリイミド系フィルムは、ポリイミド樹脂中にシラン粘土複合体が分散していることにより、伸び率を指標とした靭性を損なうことなく高弾性化し、更に寸法安定性、ガスバリヤ−性も向上している。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
Claims (8)
- ポリイミド樹脂およびシラン粘土複合体を含有しており、耐熱性および電気絶縁特性が求められ、かつ、小型化、精密化した電子部品用の電子材料に用いられるポリイミド系フィルムであって、
シラン粘土複合体が膨潤性ケイ酸塩に下記一般式(1)
YnSiX4−n (1)
(ただし、nは0〜3の整数であり、Yは、炭素数1〜25の炭化水素基、及び炭素数1〜25の炭化水素基と置換基から構成される有機官能基であり、Xは加水分解性基および/または水酸基である。n個のY、4−n個のXは、それぞれ同種でも異種でもよい。)
で表されるシラン系化合物が導入される事により調製され、フィルム中のシラン粘土複合体の平均層厚が300Å以下であるポリイミド系フィルム。 - ポリアミド酸溶液およびシラン粘土複合体を混合した粘土分散体を支持体上に流延または塗布して膜状としてから、乾燥及びイミド化してなる請求項1に記載のポリイミド系フィルム。
- フィルム中のシラン粘土複合体の平均アスペクト比(層長さ/層厚の比)が10〜300である請求項1または2に記載のポリイミド系フィルム。
- シラン粘土複合体の最大層厚が2000Å以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のポリイミド系フィルム。
- 粘土複合体(1)に由来するフィルムの灰分率が0.01〜15重量%である、請求項1〜4のいずれかに記載のポリイミド系フィルム。
- 膨潤性ケイ酸塩が、スメクタイト族粘土および膨潤性雲母よりなる群から選択される1種以上である、請求項1〜5のいずれかに記載のポリイミド系フィルム。
- (A)シラン粘土複合体およびポリイミド樹脂の重合性モノマー及び/又は中間重合体を含む分散体を調製する工程、(B)上記分散体をフィルム化する工程を含む、請求項1〜6のいずれかに記載のポリイミド系フィルムの製造方法。
- 工程(A)において、分散体中に含まれるシラン粘土複合体の底面間隔が、膨潤性ケイ酸塩の底面間隔の4倍以上である請求項7に記載のポリイミド系フィルムの製造方法。
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