JP2004256354A - 有機変性層状珪酸塩及びその製造方法、並びに該珪酸塩を含む組成物及び基板 - Google Patents
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Abstract
【課題】安価で日常多量に使用されているオレフィン系ポリマー又はシクロオレフィン系ポリマーと層状珪酸塩とを劈開、分散させることのできる有機変性層状珪酸塩、優れたガスバリア機能を有し、かつ熱膨張係数が小さいポリマーナノコンポジットの提供。
【解決手段】層状珪酸塩の層間にシクロアルカン構造を有するアミン、アンモニウムホスフィン及びホスホニウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有する有機変性層状珪酸塩、該有機変性層状珪酸塩と有機溶媒又は熱可塑性樹脂からなる組成物、及び該組成物を含有する基板、及び前記有機変性層状珪酸塩の製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】層状珪酸塩の層間にシクロアルカン構造を有するアミン、アンモニウムホスフィン及びホスホニウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有する有機変性層状珪酸塩、該有機変性層状珪酸塩と有機溶媒又は熱可塑性樹脂からなる組成物、及び該組成物を含有する基板、及び前記有機変性層状珪酸塩の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シクロアルカン構造を有する親有機化剤を層間に含有する有機変性層状珪酸塩、該層状珪酸塩を含有する樹脂組成物及び基板に関する。さらに、本発明は、前記有機変性層状珪酸塩の製造方法に関する。
本発明は、特にこれらを含有することで優れた性能を発揮し得る食品・医薬品等の包装材、建築、電気機器、自動車などの部材として利用される難燃性材料、及び粘度調節剤、化粧品等への添加剤、コーティング剤、繊維などポリマーコンポジットの材料分野に関する。
【0002】
【従来の技術】
ベンナイト、モンモリロナイト等のような層状珪酸塩の層間に存在するイオン交換可能な無機カチオンを有機カチオンに置換することにより得られる、いわゆる「有機粘土」に関する研究は、1945年ごろから報告されている。
例えば、1947年に出願された米国特許第2,531,369号明細書には、有機粘土を添加することによりポリマーの構造強化が可能なことが報告されている。また米国特許第2,531,440号明細書には、有機粘土を有機溶媒中に分散することでグリースを作製できることが報告されている。
【0003】
上記のように、層状珪酸塩に含まれるイオン交換可能な親水性無機カチオンをイオン交換反応により有機カチオンへ置換すると、層状珪酸塩は親有機性(親油性)を帯びるようになる(以下、この置換を「親有機化」ともいう。)。このため、親有機化された層状珪酸塩(以下「有機変性層状珪酸塩」という)は、極性を有する親油性のポリマーに容易に分散できるようになる。
【0004】
このような性質に着目して、従来、ナイロン、ポリプロピレン、エポキシなどの各種のポリマーと有機変性層状珪酸塩とのポリマーコンポジット材料に関する数多くの研究が報告されている。これらの報告では、有機変性層状珪酸塩の層間にポリマーを侵入させ、有機変性層状珪酸塩を膨潤、劈開させるために、いずれも極性を有するか、あるいは極性を持たせたポリマーが用いられていた。
【0005】
一方、オレフィン系ポリマーは、非極性で水素結合性部分を有しないポリマーであるため、親水性で層間にイオン結合を有する層状珪酸塩の層間に侵入してこれを膨潤、劈開することは非常に困難であるとされていた。このため、従来、オレフィン系ポリマーと有機変性層状珪酸塩とのコンポジット化は商品化の段階までは至っていなかった。
【0006】
近年、上記オレフィン系ポリマーと有機変性層状珪酸塩とのコンポジット化を達成すべく、オレフィン系ポリマーと層状珪酸塩を劈開、分散する研究が行われている。例えば、超臨界流体の存在下で、オレフィン系ポリマーとカルボン酸変性オレフィン系ポリマー中に無機層状粘土鉱物を溶融混練する方法が報告されている(特許文献1)。特許文献1では、無機層状粘土鉱物の層表面に存在するカチオンを炭素数6〜30程度の鎖状炭化水素基を含有するアミンの4級アンモニウム塩でイオン交換した親有機化層状珪酸塩が使用されている。
【0007】
さらに、オレフィンメタセシス重合体と層状珪酸塩との複合物(コンポジット)及びその製造方法も報告されている(特許文献2)。特許文献2では、親有機化剤として4級アンモニウム塩又は4級ホスホニウム塩が用いられている。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1及び2で用いられる親有機化剤は、いずれも直鎖又は分岐鎖を有するアンモニウム塩やホスホニウム塩であり、シクロアルカン構造を有する有機カチオン又はアミン、ホスフィン化合物については報告されていない。
【0009】
【特許文献1】
特開2002−212305号公報(第3頁[0015][0016]、第4頁[0022]〜[0024])
【特許文献2】
特開2001−302888号公報(第8頁[0052]〜[0054])
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
かくして本発明の目的は、安価で日常多量に使用されているオレフィン系ポリマー又はシクロオレフィン系ポリマーと層状珪酸塩とを劈開、分散させることのできる有機変性層状珪酸塩及びその製造方法、並びに該有機変性層状珪酸塩を含む組成物を提供することにある。また本発明の別の目的は、優れたガスバリア機能を有し、かつ熱膨張係数が小さいポリマーナノコンポジットを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、オレフィン系ポリマーをコンポジット化すべく鋭意研究を重ねた結果、無機層状珪酸塩の層間にシクロアルカン構造を有する親有機化剤で親有機化した有機変性層状珪酸塩と、オレフィン系ポリマーとを溶融混練することにより、有機変性層状珪酸塩を著しく劈開、分散した状態でオレフィン系ポリマー内に混入できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の目的は、以下の有機変性層状珪酸塩、該珪酸塩を含む組成物及び基板により達成される。
(1)層状珪酸塩の層間に親有機化剤を含有する有機変性層状珪酸塩において、前記親有機化剤がシクロアルカン構造を有することを特徴とする有機変性層状珪酸塩。
(2)層状珪酸塩の層間にシクロアルカン構造を有するアミン、アンモニウム、ホスフィン及びホスホニウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする有機変性層状珪酸塩。
(3)前記シクロアルカン構造の炭素数が3〜12である(1)又は(2)に記載の有機変性層状珪酸塩。
(4)前記シクロアルカン構造を有するアミン、アンモニウム、ホスフィン及びホスホニウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の含有量が、前記層状珪酸塩100gに対して10〜200mmol当量である(1)〜(3)のいずれかに記載の有機変性層状珪酸塩。
(5)前記有機変性層状珪酸塩のアスペクト比が50〜10,000である(1)〜(4)のいずれかに記載の有機変性層状珪酸塩。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の有機変性層状珪酸塩と有機溶媒とからなる組成物。
(7)(1)〜(5)のいずれかに記載の有機変性層状珪酸塩と熱可塑性樹脂とからなる組成物。
(8)前記組成物が有機溶媒をさらに含む(7)に記載の組成物。
(9)前記熱可塑性樹脂がオレフィン系ポリマー樹脂である(7)又は(8)に記載の組成物。
(10)前記熱可塑性樹脂がシクロオレフィン構造を有する樹脂である(7)〜(9)のいずれかに記載の組成物。
(11)前記熱可塑性樹脂がシクロオレフィンポリマー樹脂である(10)に記載の組成物。
(12)(6)〜(11)のいずれかに記載の組成物からなる基板。
(13)(12)に記載の基板を有する画像表示素子。
(14)層状珪酸塩を水及び/又は有機溶媒に混合した後に、シクロアルカン構造を有する化合物を混合することを特徴とする有機変性層状珪酸塩の製造方法。
(15)層状珪酸塩を水及び/又は有機溶媒に混合した後に、シクロアルカン構造を有するアミン、アンモニウム、ホスフィン及びホスホニウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種を混合することを特徴とする有機変性層状珪酸塩の製造方法。
(16)前記シクロアルカン構造の炭素数が3〜12である(14)又は(15)に記載の有機変性層状珪酸塩の製造方法。
(17)前記シクロアルカン構造を有するアミン、アンモニウム、ホスフィン及びホスホニウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の添加量が、前記層状珪酸塩100gに対して10〜200mmol当量である(14)〜(16)のいずれかに記載の有機変性層状珪酸塩の製造方法。
(18)前記有機変性層状珪酸塩のアスペクト比が50〜10,000であることを特徴とする(14)〜(17)のいずれかに記載の有機変性層状珪酸塩の製造方法。
【0013】
【発明の実施の態様】
以下に、本発明の有機変性層状珪酸塩、該珪酸塩を含む組成物及び基板についてさらに詳細に説明する。
なお、本明細書において「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0014】
[有機変性層状珪酸塩]
本発明の有機変性層状珪酸塩は、親有機化剤としてシクロアルカン構造を有するアミン、アンモニウム、ホスフィン及びホスホニウム化合物から選ばれる少なくとも一種を層状珪酸塩の層間に含有する。
【0015】
<親有機化剤>
本発明において、親有機化剤として用いられるシクロアルカン構造を有する化合物は、特に限定されるものではないが、好ましくはアミン、アンモニウム、ホスフィン、又はホスホニウム化合物であり、さらに好ましくはシクロアルカン構造の炭素数が3〜12であるアミン、アンモニウム、ホスフィン又はホスホニウム化合物であり、特に好ましくは、下記一般式(1)〜(4)で表される親有機化剤である。
【0016】
【化1】
【0017】
上記一般式(1)〜(4)において、シクロアルカン構造は、(a)R1〜R3又はR1〜R4の少なくとも一つがシクロアルカン構造を有する置換基である場合と、(b)R1〜R3又はR1〜R4の少なくとも2つがアルキル鎖を有し、該アルキル鎖が互いに連結してシクロアルカン構造を形成する場合の2つで表すことができる。なお、その他の置換基は特に限定されず、例えば、水素原子や炭素数1〜20個の炭化水素などであってもよい。また、上記一般式(1)及び(3)には、酸性下でこれらの化合物がプロトネーションして一価の正電荷を持った化合物も含まれる。
【0018】
(a)R1〜R3又はR1〜R4の少なくとも一つがシクロアルカン構造を有する置換基である場合
シクロアルカン構造を有する置換基としては、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカン、シクロドデカンなどの単環の置換基又はこれらの2つ以上が連結した置換基、又はノルボルナン、アダマンタン、デカリン等のビシクロ構造を有する置換基が挙げられる。また、これらの置換基に含まれる水素原子を任意の置換基で置換したものも上記シクロアルカン構造を有する置換基に含まれる。
【0019】
上記シクロアルカン構造は、直接窒素原子又はリン原子と結合してもよいし、窒素原子又はリン原子との間に任意の置換基を有してもよい。但し、上記シクロアルカン構造には二重結合又は三重結合は含まれない。
【0020】
具体的な化合物としては、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、シクロオクチルアミン、シクロドデシルアミン、シクロへキシルジブチルアミン、シクロオクチルブチルオクチルアミン、ジシクロペンチルジヘキシルアンモニウム、シクロオクチルジエチルブチルアンモニウム、シクロペンチルホスフィン、シクロヘキシルホスフィン、ジシクロヘキシルホスフィン、シクロオクチルホスフィン、シクロドデシルホスフィン、シクロへキシルジブチルホスフィン、シクロオクチルブチルオクチルホスフィン、ジシクロペンチルジヘキシルホスホニウム、シクロオクチルジエチルブチルホスホニウム等を挙げることができる。
【0021】
(b)R1〜R3又はR1〜R4の少なくとも2つがアルキル鎖を有し、該アルキル鎖が互いに連結してシクロアルカン構造を形成する場合
例えば、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン、ヘプタメチレンイミン及びこれらに含まれる水素原子を任意の置換基に置換した4−メチルピペリジン、キナクリジン、トロパン等の化合物、又はこれらの窒素原子をリン原子に置換した化合物を挙げることができる。また、アンモニウム化合物としてはN,N−ジメチルピペリジニウム化合物などを例示できる。但し、これらのシクロアルカン構造には二重結合又は三重結合は含まれない。
【0022】
本発明の親有機化剤は単独で用いてもよいし、複数を組合わせて用いてもよい。また異なる親有機化剤で親有機化された層状珪酸塩を混合して使用することもできる。
【0023】
<層状珪酸塩>
本発明で用いられる層状珪酸塩は、その層間にイオン交換可能な無機カチオンを有する。イオン交換可能な無機カチオンとは、層状珪酸塩の結晶表面上に存在するナトリウム、カリウム、リチウムなどの金属イオンのことである。これらのイオンは、親有機化剤とのイオン交換性を有し、イオン交換反応によりカチオン性を有する種々の物質を上記層状珪酸塩の層間に挿入(インターカレート)できるものが好ましい。
なお、上記親有機化剤は、本発明の有機変性層状珪酸塩の表面及び層間に存在すると考えられ、特に層間に存在することは親有機化された層状珪酸塩の層間隔の拡張をX線を用いて解析することにより容易に確認することができる。
【0024】
本発明で用いられる層状珪酸塩としては、例えば、天然又は合成のスメクタイト、モンモリロナイト、膨潤性雲母等の既知の無機層状珪酸塩を挙げることができる。層状珪酸塩のカチオン交換量は、好ましくは10〜200mmol当量/100gであり、より好ましくは50〜150mmol当量/100gであり、さらに好ましくは90〜130mmol当量/100gである。カチオン交換量が10mmol当量/100gより少ないと、親有機化剤(カチオン性表面修飾剤)の吸着量が不足し、十分な表面改質効果が得られない場合がある。一方、カチオン交換量が200mmol当量/100gより多いと、親有機化剤の吸着量は増加するが、層状珪酸塩の層間引力が強固なものとなり、劈開が困難となる場合がある。
【0025】
前記層状珪酸塩の好ましい平均粒径は、後述する本発明の組成物の用途により多少異なるが、概ね0.01〜50μmのものが好ましく、0.05〜10μmのものがより好ましく、0.1〜5μmのものがさらに好ましい。粒径が大きければ大きいほど複合材料の引張強度、曲げ強度等の機械強度や熱変形温度などの熱特性の改良効果は大きいが、材料の表面平滑性、射出成形性、上記特性の異方性などが大きくなる傾向にある。また硬度、屈折率、誘電率などは粒子の大きさに左右されずフィラーの体積分率に依存するため、これらの特性だけが必要な場合は粒径を考慮する必要はない。
【0026】
前記層状珪酸塩の好ましい厚みは、後述する本発明の組成物のバリア性や難燃性を改良する場合には薄ければ薄いほど改良効果が大きいと考えられる。すなわち、層状珪酸塩は約1nmが層構造の繰り返し単位となっており、層状珪酸塩の平均厚みはこの値に近いほど完全劈開に近い状態にあると考えられる。また機械的特性を改良する場合には、完全な劈開は必要なく、むしろ劈開を完全に行うために分子量の低下、あるいはシクロアルカンの場合には水添率の低下といった悪影響が出るため、これらを考慮した適点を選ぶべきである。
【0027】
上記条件を満たす層状珪酸塩として、具体的には、クニミネ工業のスメクトンSA、クニミネ工業のクニピアF、コープケミカル社のソマシフME−100、コープケミカル社のルーセンタイトSWN等を用いることができるが、本発明で用いることができる層状珪酸塩はこれらに限定されない。
【0028】
<有機変性層状珪酸塩の製造方法>
有機変性層珪酸塩は、層状珪酸塩に含まれるイオン交換可能な無機カチオンを本発明の親有機化剤とイオン交換することにより製造することができる。イオン交換する方法は既知の方法を用いることができる。具体的には、水中におけるイオン交換、有機溶媒(好ましくはアルコール)中におけるイオン交換、水/有機溶媒の混合溶媒中におけるイオン交換等の手法など溶媒を用いた既知のいずれの方法も用いることができる。また、液体ではなく超臨界流体中での修飾、ガス吸着による交換なども応用できる。上記の溶媒を用いたイオン交換では、0〜100℃の温度で行うことが好ましく、10〜80℃の温度範囲で行うことがより好ましく、15〜60℃の温度範囲で行うことがさらに好ましい。
【0029】
イオン交換時の親有機化剤の溶液濃度は、親有機化剤のCMC(臨界ミセル濃度)以上の濃度からCMCの10倍以下の濃度までの範囲で行うことが好ましい。親有機化剤の溶液濃度がCMCより低いとイオン交換反応が十分に進行せず、またCMCの10倍より高くなると、層状珪酸塩の層間に毛管凝縮現象で親有機化剤が析出し、イオン交換量以上の親有機化剤が層間に導入されてしまう場合がある。
【0030】
親有機化剤の表面被覆率は、50%以上で所望の性能が得られると考えられるが、これより少ないと劈開性能の低下を招いたり、また過剰な修飾は複合材料の強度低下、耐熱性の低下など思わぬ弊害を招いたりするので注意が必要である。
なお、ここでいう「表面被覆率」とは、層状珪酸塩表面の親有機化剤で被覆された割合を示すものであり、以下に述べるイオン交換率とは異なる概念である。
【0031】
イオン交換反応が進行したことは、既知の方法で確認することができる。具体的には、濾液のICP発光分析法により交換された無機イオンを定量する方法、X線解析により層状珪酸塩の層間隔が拡大したことを確認する方法、熱天秤により昇温過程の質量減少から有機化合物の存在を確認する方法等により、層状珪酸塩の交換可能な無機イオンが、本発明で用いられるシクロアルカン構造を有するアミン、アンモニウム、ホスフィン、又はホスホニウム化合物と置換されたことを確認することが可能である。イオン交換率は、交換可能な無機イオンの当量に対し、5〜150%の範囲であることが好ましく、10〜100%の範囲であることがより好ましく、50〜100%の範囲であることがさらに好ましい。
なお、ここにいう「イオン交換率」とは、層状珪酸塩に予め含まれていた無機イオンに対する、層状珪酸塩の昇温過程による質量減少分から求めた親有機化剤のモル比を百分率で表したものであり、100%を超えることもあり得る。
【0032】
本発明の有機変性層状珪酸塩のアスペクト比は、50〜10,000であることが好ましく、100〜10,000であることがさらに好ましく、500〜10,000であることが最も好ましい。アスペクト比が50未満であると、層状珪酸塩を添加した効果が十分に得られない場合があり、アスペクト比が10,000より大きくなると、層状珪酸塩の層間引力の増大により十分な劈開性が得られない場合がある。
【0033】
[組成物]
本発明の有機変性層状珪酸塩は、有機溶媒又は熱可塑性樹脂に劈開、分散して組成物として用いることができる。
【0034】
本発明の有機変性層状珪酸塩を有機溶媒に分散した組成物(以下、「溶媒組成物A」という)で用いられる有機溶媒は特に限定されないが、例えば、脂肪族炭化水素類(例えばシクロヘキサン、n−ヘキサン、n−テトラデカン、スクワラン)、芳香族炭化水素類(例えばベンゼン、トルエン、キシレン)、アルコール類(例えばエタノール、イソプロピルアルコール)、エーテル類(例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン)、アルデヒド類(例えばジメチルホルムアルデヒド)、ケトン類(例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エステル類(例えば酢酸エチル)、ハロゲン化炭化水素類(例えばクロロホルム、ジクロロメタン)等を挙げることができる。
【0035】
本発明の有機変性層状珪酸塩を有機溶媒中に分散することにより、有機溶媒のレオロジー特性を改良することができる。このため、本発明の組成物は、化粧品、医薬品、染料、顔料、紫外線吸収剤等の分散媒として好ましく用いられる。また、本発明の組成物を塗布・乾燥することにより、薄膜状の形態で使用することも可能となる。
【0036】
溶媒組成物A中における有機溶媒の含有量は、有機変性層状珪酸塩100質量部に対して1,000〜100,000質量部の範囲であることが好ましく、3,000〜20,000質量部の範囲であることがさらに好ましく、2,000〜10,000質量部の範囲であることが好ましい。有機溶媒の含有量が有機変性層状珪酸塩100質量部に対して1,000質量部未満であると、増粘が高すぎて混合不良を引き起こす場合があり、また、有機変性層状珪酸塩100質量部に対して100,000質量部より多くなると、十分な添加効果が得られなくなる場合がある。
【0037】
本発明の有機変性層状珪酸塩と熱可塑性樹脂とからなる組成物(以下「樹脂組成物B」という)において用いられる熱可塑性樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン66、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルペンテン、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド等が挙げられる。中でも、熱可塑性樹脂としてポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルペンテン、シクロオレフィンポリマー等のオレフィン系ポリマーを用いることが好ましく、シクロオレフィンポリマーを用いることがさらに好ましい。
シクロアルキル構造を有する親有機化剤を用いた層状珪酸塩は、特にシクロオレフィンポリマーにおいて良く混練される。これは、親有機化剤とポリマー樹脂との構造が似ていることに起因するものである。
【0038】
シクロオレフィンポリマーの具体例としては、ゼオノア(日本ゼオン)、ゼオネックス(日本ゼオン)、アペル(三井化学)、トーパス(三井化学)、アートン(JSR)等を挙げることができる。
【0039】
本発明の有機変性層状珪酸塩を熱可塑性樹脂に分散する方法としては、次の2つが挙げられる。その1つは、熱可塑性樹脂の融点以上の温度で、熱可塑性樹脂と本発明の有機変性層状珪酸塩を混練する方法である。もう1つは、熱可塑性樹脂を有機溶媒中に均一溶解した後、有機溶媒中に分散した本発明の有機変性層状珪酸塩を加え、充分に混合、攪拌した後、有機溶媒を留去することにより、熱可塑性樹脂中に本発明の有機変性層状珪酸塩を分散する方法である。
【0040】
本発明の樹脂組成物B中における熱可塑性樹脂の含有量は、有機変性層状珪酸塩100質量部に対して100〜100,000質量部の範囲であることが好ましく、300〜3,000質量部の範囲であることがさらに好ましく、500〜2,000質量部の範囲であることが好ましい。熱可塑性樹脂の含有量が有機変性層状珪酸塩100質量部に対して100質量部未満であると、層状珪酸塩が劈開不良となる場合があり、また、有機変性層状珪酸塩100質量部に対して100,000質量部より多くなると、十分な添加効果が得られない場合がある。
【0041】
本発明の樹脂組成物Bは、必須成分である熱可塑性樹脂と有機変性層状珪酸塩のほかに、本発明の課題の達成を阻害しない範囲で必要に応じて、難燃性を向上させるための難燃剤を含有することもできる。
【0042】
上記難燃剤は、特に限定されるものではないが、例えば、リン系化合物、金属水酸化物、金属酸化物、メラミン誘導体等が挙げられ、中でもリン系化合物、金属水酸化物及びメラミン誘導体が好適に用いられる。これらの難燃剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0043】
難燃剤として用いられるリン系化合物は、特に限定されるものではないが、例えば、赤リン、ポリリン酸アンモニウムなどを用いることができ、中でも下記一般式(5)で表されるリン化合物等が好適に用いられる。これらのリン系化合物は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0044】
【化2】
【0045】
上記一般式(5)のR5 及びR7 は、水素原子、炭素数1〜16のアルキル基又はアリール基を示し、R6 は、水素原子、水酸基、炭素数1〜16のアルキル基、アルコキシ基、アリール基又はアリーロキシ基を示し、R5 、R6 及びR7 は、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。なお、上記炭素数が16を超えると、リンの相対比率が低くなって難燃化効果が不十分となることがある。
【0046】
赤リンは、耐湿性向上及び熱可塑性樹脂に添加して混練する際の自然発火防止の観点から、表面が樹脂で被覆されたものを用いることが好ましい。また、ポリリン酸アンモニウムは、メラミン変性等の表面処理が施されたものであってもよい。
【0047】
上記一般式(5)で表されるリン化合物は、特に限定されるものではないが、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチルブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。
【0048】
樹脂組成物B中における上記リン系化合物の含有量は特に限定されるものではないが、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して、リン系化合物0.5〜100質量部であることが好ましく、2〜50質量部であることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂100質量部に対するリン系化合物の含有量が0.5質量部未満であると、十分な難燃性を得られないことがあり、逆に熱可塑性樹脂100質量部に対するリン系化合物の含有量が100質量部を超えると、熱可塑性樹脂/層状珪酸塩複合体の機械的物性が低下することがある。
【0049】
樹脂組成物Bは、上記リン系化合物以外の難燃剤として金属水酸化物を用いることもできる。金属水酸化物は特に限定されるものではないが、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ドーソナイト、アルミン酸化カルシウム、2水和石膏、水酸化カルシウム等が挙げられる。中でも水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムがより好適に用いられる。これらの金属水酸化物は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。2種類以上の金属水酸化物を併用すると、各々が異なる温度で分解脱水反応を開始するので、より高い難燃化効果を得ることができる。また、これらの金属水酸化物は、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、ポリビニルアルコール系表面処理剤、エポキシ系表面処理剤等の表面処理剤で表面処理が施されていてもよい。
【0050】
上記金属水酸化物は、燃焼時の高熱下で吸熱脱水反応を起こして吸熱し、水分子を放出することにより、燃焼場の温度を低下させ、消火する効果を発揮する。樹脂組成物Bは、熱可塑性樹脂(シクロオレフィン構造を有するポリマー樹脂)と有機変性層状珪酸塩とからなるため、上記金属水酸化物を添加すると難燃化効果を増大することができる。これは有機変性層状珪酸塩の燃焼時の被膜形成による難燃化効果と、金属水酸化物の吸熱脱水反応による難燃化効果とが競争的に起こり、それぞれの効果を助長して相乗効果が得られるからである。
【0051】
樹脂組成物B中における上記金属水酸化物の含有量は、特に制限されないが、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して、金属水酸化物0.5〜100質量部であることが好ましく、20〜60質量部であることが好ましい。熱可塑性樹脂100質量部に対する金属水酸化物の含有量が0.5質量部未満であると、十分な難燃性を得られないことがあり、逆に熱可塑性樹脂100質量部に対する金属水酸化物の含有量が100質量部を超えると、熱可塑性樹脂/有機変性層状珪酸塩複合体の密度(比重)が増大したり、柔軟性が損なわれたり等のデメリットが生じることがある。
【0052】
樹脂組成物Bは、その他の難燃剤としてメラミン誘導体を用いることもできる。メラニン誘導体は特に限定されるものではないが、例えば、メラミン、メラミンシアヌレート、メラミンイソシアヌレート、リン酸メラミン等やこれらに表面処理が施されたものを挙げることができ、これらを好適に用いることができる。これらのメラミン誘導体は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0053】
樹脂組成物B中における上記メラミン誘導体の含有量は特に限定されるものではないが、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して、メラミン誘導体0.5〜100質量部であることが好ましく、1〜30質量部であることがより好ましい。100質量部に対するメラミン誘導体の含有量が0.5質量部未満であると、十分な難燃性を得られないことがあり、逆に熱可塑性樹脂100質量部に対するメラミン誘導体の配合量が100質量部を超えると、有機変性層状珪酸塩/熱可塑性樹脂コンポジットの機械的物性が低下したり、燃焼時における有機変性層状珪酸塩の燃焼被膜の形成が阻害されることがある。
【0054】
さらに樹脂組成物Bは、上記難燃剤以外に本発明の課題の達成を阻害しない範囲で必要に応じて粘度調整剤が配合されてもよい。粘度調整剤としては、例えば、熱可塑性樹脂がオレフィンメタセシス重合体である場合、オレフィンメタセシス反応性モノマーのオレフィンメタセシス重合体への重合時にオレフィンメタセシス重合体中に組み込まれ得る反応性粘度調整剤が好ましい。反応性粘度調整剤は特に限定されるものではないが、例えば、オレフィン性不飽和基を有するポリブタジエンやポリイソプレン等が挙げられ、これらが好適に用いられる。
【0055】
上記粘度調整剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。また粘度調整剤の含有量は、特に限定されるものではないが、オレフィンメタセシス反応性モノマー全量中に0.1〜50質量%含まれることが好ましく、0.1〜20質量%含まれることがさらに好ましい。
【0056】
さらに、樹脂組成物Bは、上記難燃剤や粘度調整剤以外に本発明の課題の達成を阻害しない範囲で必要に応じて、増量又は粘度調整のための炭酸カルシウム、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、フライアッシュ、硅砂等の充填剤や、分子量調整剤、高分子改質剤、揺変性付与剤、軟化剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、着色剤、酸化防止剤(老化防止剤)、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、消泡剤等の各種添加剤の1種若しくは2種以上を含有してもよい。
【0057】
樹脂組成物Bは、ASTM E 1354に準拠した燃焼試験において、燃焼残渣の降伏点応力は4.9kPa以上であることが好ましく、15.0kPa以上であることがさらに好ましい(但し、前記降伏点応力は、50kW/m2の輻射加熱条件下で30分間加熱することにより燃焼させた燃焼残渣を速度0.1cm/sで圧縮したものである。)。前記燃焼残渣の降伏点応力が4.9kPa未満であると、微少な力で燃焼残渣の崩壊が起こりやすくなって、樹脂組成物Bの難燃性が不十分となることがある。すなわち、樹脂組成物Bの焼結体が難燃被膜としての機能を十分に発現するためには、4.9kPa以上の降伏点応力を有することにより燃焼終了時まで焼結体がその形状を保持していることが好ましい。
【0058】
本発明の有機変性層状珪酸塩及びその組成物は、様々な分野で利用することができる。例えば、本発明の有機変性層状珪酸塩と有機溶媒からなる組成物は、有機溶媒のレオロジー特性を改良することが可能である。したがって、本発明の組成物は、化粧品、医薬品、染料、顔料、紫外線吸収剤等の分散媒として、好ましく用いることができる。また、本発明の組成物を塗布・乾燥することにより、薄膜状の形態として使用することもできる。
さらに、本発明の有機変性層状珪酸塩と熱可塑性樹脂とからなる組成物は、力学特性、帯電性、ガスバリア性、抗菌性等に優れたコンポジット材料として利用可能である。
【0059】
[基板]
本発明の基板は、本発明の有機変性層状珪酸塩と有機溶媒又は熱可塑性樹脂とからなる組成物を有する。本発明の基板は、例えばディスプレイ用基板や電子回路用基板として用いることができる。本発明の基板をディスプレイ用基板として用いる場合、例えば、本発明の組成物をフィルム状に成型し、該フィルム上に、電極、誘電体層、保護層、隔壁、蛍光体などを形成してディスプレイ用部材を得ることができ、さらにこれを用いてPDP、PALC、FED、VFD等のディスプレイを作製することができる。また、本発明の基板を電子回路用基板として用いる場合、前記フィルム上に回路を形成し、各種の電子機器、半導体素子に用いられる電子回路を作製することができる。その他、本発明の基板は 太陽電池、電子ペーパー、その他、各種の携帯を目的とした商品などの基板として用いることができる。
【0060】
さらに、本発明の基板は、画像表示素子の基板として用いることができる。画像表示素子とは、本発明の基板を有する液晶素子及び有機EL素子などである。有機EL素子は、例えば、特開平11−335661号公報、特開平11−335368号公報、特開2001−192651号公報、特開2001−192652号公報、特開2001−192653号公報、特開2001−335776号公報、特開2001−247859号公報、特開2001−181616号公報、特開2001−181617号公報、特願2001−58834号明細書、特願2001−58835号明細書、特願2001−89663号明細書、特願2001−334858号明細書に記載された態様で用いることが好ましい。
すなわち、本発明の基板を有する有機EL素子は、本発明の基板を基材フィルム、及び/又は保護フィルムとして用いることができる。
【0061】
【実施例】
以下に本発明の実施例、比較例及び参考例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。
以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0062】
(実施例1〜5及び比較例1及び2)
<有機変性層状珪酸塩の作製>
ソマシフME100(コープケミカル)を10質量%となるように水と混合し、Non−Bubbling Kneader NBK−2(日本精機会社)で10分間混合し、均一・粘調な分散物を得た。
親有機化剤としてシクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、シクロオクチルアミン、シクロドデシルアミンを表1に示される調液処方で調液し、この溶液全量に上記ソマシフME100の10質量%分散液を100gずつ攪拌しながら添加した。この後、1晩攪拌を続け、その後静置し、沈降させて上澄みを採取、分別した後、吸引濾過し、さらに蒸留水で濯ぎ洗いした後、乾燥、粉砕して有機変性層状珪酸塩を得た。
採取、分別した上澄み液はICP発光分析にてNaイオン濃度を測定し、ME100より溶出したNa量から表面修飾剤の置換量を計算した。また乾燥した有機変性層状珪酸塩を Themo Plus システム(リガク株式会社)を用いて、アルゴン雰囲気下、室温から600℃の温度範囲を10℃/minの速度で昇温した場合の質量減少から有機化層状珪酸塩中の有機物量を測定した。これらの値と得られた有機変性層状珪酸塩のXRD測定より得られた層間隔を表1に併せて示す。
【0063】
【表1】
【0064】
<混練試験による劈開、分散進行の評価>
続いて表1に示される有機変性層状珪酸塩及びソマシフMTE、ソマシフMAE(コープケミカル)0.7gとゼオノア1020R(日本ゼオン)6.3gを混合しMiniLab 混練試験機(HAAKE)で220℃、90rpm、10min及び30minの2条件で混練試験を行った。ソマシフMTEはトリオクチルメチルアンモニウムで親有機化されたソマシフME100であり、ソマシフMAEはジアルキル(炭素数=C14〜C18)ジメチルアンモニウムで親有機化されたソマシフME100である。
【0065】
得られたストランド状のサンプル各1gを CertiPrep6750 Freezer Mill(SPEX)を用いて液体窒素温度で5分間凍結粉砕し、RINT−2500 XRD測定装置(リガク)を用いて室温でX線回折パターンを測定した。この結果、求められた組成物中の有機変性層状珪酸塩の面間隔に基づくピークの高さをゼオノア1020Rのピークの高さで正規化し、さらに220℃、90rpm、10minのピーク高さを基準として220℃、90rpm、30minの混練でこのピーク高さが何倍になるか(混練進行度)を求めた。その結果を表2に示す。この値が小さいほど混練による有機変性層状珪酸塩の層間隔の不規則性が早く増大し、劈開、分散がスムーズに進行したことを示している。
【0066】
【表2】
【0067】
表2より、本発明の有機変性層状珪酸塩は、比較例の層状珪酸塩よりゼオノア1020Rに対して優れた劈開、分散性を示すことが分かる。
なお、同様の試験をゼオノア1420R、1600R、アペルAPL6011T、APL6015T、トーパス8007、6017、アートンF5023について行ったが、同様の結果を得た。
【0068】
(実施例6〜11及び比較例3及び4)
<本発明の組成物の作製及び該組成物の熱膨張係数の評価>
上記実施例1〜5及び比較例1及び2で作成した混練時間30minのサンプル(実施例6〜9、比較例3及び4)と、有機化層状珪酸塩を添加せず同条件で30min混練したゼオノア1020R単独のサンプル(参考例)と、シクロヘキシルアミンで親有機化した有機変性層状珪酸塩の添加量を30%、60%と増加させたサンプル(実施例10、11)を新たに作成し、これらを用いて熱膨張係数を測定した。添加量を30%、60%と増加させたサンプルは有機変性層状珪酸塩の分散度を一定にするために混練時間を30分、150分とした。
【0069】
これらのサンプルをヒートプレスで厚み200ミクロン程度の薄板に加工して、長さ30mm、幅3mmの試験片を作成した。この試験片をクランプ長25.4mm、室温〜90℃の範囲で加重0.07N(厚み100ミクロン当たり)の条件でMTA測定(MTA−10(SII))して熱膨張係数を求めた。結果を表3に示す。
【0070】
【表3】
1)ソマシフMTEは親有機化剤としてトリオクチルメチルアンモニウムを含む
2)ソマシフMAEは親有機化剤としてジアルキル(炭素数=C14〜C18)ジメチルアンモニウムを含む
【0071】
表3より、本発明の有機変性層状珪酸塩を含有する組成物は、有機変性層状珪酸塩を含有しない組成物、及び従来から知られている有機変性層状珪酸塩を含有する組成物よりも熱膨張係数が小さくなることが分かる。さらに本発明の有機変性層状珪酸塩の含有量が多い組成物ほど熱膨張係数が小さくなることが分かる。
また、表3に示されるサンプルを用いて、酸素、水蒸気のガスバリア性を評価した結果、有機変性層状珪酸塩の添加量に比例してガスバリア性が向上することが分かった。
【0072】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、オレフィン系ポリマー又はシクロオレフィン系ポリマーと優れた劈開性及び分散性を有する有機変性層状珪酸塩を提供することができる。さらに、本発明は、熱膨張係数が小さく、かつ優れたガスバリア性能を有するポリマーナノコンポジットを提供することができる。さらに、本発明は、ディスプレイ用基板や電子回路用基板に用いるのに適した基板を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、シクロアルカン構造を有する親有機化剤を層間に含有する有機変性層状珪酸塩、該層状珪酸塩を含有する樹脂組成物及び基板に関する。さらに、本発明は、前記有機変性層状珪酸塩の製造方法に関する。
本発明は、特にこれらを含有することで優れた性能を発揮し得る食品・医薬品等の包装材、建築、電気機器、自動車などの部材として利用される難燃性材料、及び粘度調節剤、化粧品等への添加剤、コーティング剤、繊維などポリマーコンポジットの材料分野に関する。
【0002】
【従来の技術】
ベンナイト、モンモリロナイト等のような層状珪酸塩の層間に存在するイオン交換可能な無機カチオンを有機カチオンに置換することにより得られる、いわゆる「有機粘土」に関する研究は、1945年ごろから報告されている。
例えば、1947年に出願された米国特許第2,531,369号明細書には、有機粘土を添加することによりポリマーの構造強化が可能なことが報告されている。また米国特許第2,531,440号明細書には、有機粘土を有機溶媒中に分散することでグリースを作製できることが報告されている。
【0003】
上記のように、層状珪酸塩に含まれるイオン交換可能な親水性無機カチオンをイオン交換反応により有機カチオンへ置換すると、層状珪酸塩は親有機性(親油性)を帯びるようになる(以下、この置換を「親有機化」ともいう。)。このため、親有機化された層状珪酸塩(以下「有機変性層状珪酸塩」という)は、極性を有する親油性のポリマーに容易に分散できるようになる。
【0004】
このような性質に着目して、従来、ナイロン、ポリプロピレン、エポキシなどの各種のポリマーと有機変性層状珪酸塩とのポリマーコンポジット材料に関する数多くの研究が報告されている。これらの報告では、有機変性層状珪酸塩の層間にポリマーを侵入させ、有機変性層状珪酸塩を膨潤、劈開させるために、いずれも極性を有するか、あるいは極性を持たせたポリマーが用いられていた。
【0005】
一方、オレフィン系ポリマーは、非極性で水素結合性部分を有しないポリマーであるため、親水性で層間にイオン結合を有する層状珪酸塩の層間に侵入してこれを膨潤、劈開することは非常に困難であるとされていた。このため、従来、オレフィン系ポリマーと有機変性層状珪酸塩とのコンポジット化は商品化の段階までは至っていなかった。
【0006】
近年、上記オレフィン系ポリマーと有機変性層状珪酸塩とのコンポジット化を達成すべく、オレフィン系ポリマーと層状珪酸塩を劈開、分散する研究が行われている。例えば、超臨界流体の存在下で、オレフィン系ポリマーとカルボン酸変性オレフィン系ポリマー中に無機層状粘土鉱物を溶融混練する方法が報告されている(特許文献1)。特許文献1では、無機層状粘土鉱物の層表面に存在するカチオンを炭素数6〜30程度の鎖状炭化水素基を含有するアミンの4級アンモニウム塩でイオン交換した親有機化層状珪酸塩が使用されている。
【0007】
さらに、オレフィンメタセシス重合体と層状珪酸塩との複合物(コンポジット)及びその製造方法も報告されている(特許文献2)。特許文献2では、親有機化剤として4級アンモニウム塩又は4級ホスホニウム塩が用いられている。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1及び2で用いられる親有機化剤は、いずれも直鎖又は分岐鎖を有するアンモニウム塩やホスホニウム塩であり、シクロアルカン構造を有する有機カチオン又はアミン、ホスフィン化合物については報告されていない。
【0009】
【特許文献1】
特開2002−212305号公報(第3頁[0015][0016]、第4頁[0022]〜[0024])
【特許文献2】
特開2001−302888号公報(第8頁[0052]〜[0054])
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
かくして本発明の目的は、安価で日常多量に使用されているオレフィン系ポリマー又はシクロオレフィン系ポリマーと層状珪酸塩とを劈開、分散させることのできる有機変性層状珪酸塩及びその製造方法、並びに該有機変性層状珪酸塩を含む組成物を提供することにある。また本発明の別の目的は、優れたガスバリア機能を有し、かつ熱膨張係数が小さいポリマーナノコンポジットを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、オレフィン系ポリマーをコンポジット化すべく鋭意研究を重ねた結果、無機層状珪酸塩の層間にシクロアルカン構造を有する親有機化剤で親有機化した有機変性層状珪酸塩と、オレフィン系ポリマーとを溶融混練することにより、有機変性層状珪酸塩を著しく劈開、分散した状態でオレフィン系ポリマー内に混入できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の目的は、以下の有機変性層状珪酸塩、該珪酸塩を含む組成物及び基板により達成される。
(1)層状珪酸塩の層間に親有機化剤を含有する有機変性層状珪酸塩において、前記親有機化剤がシクロアルカン構造を有することを特徴とする有機変性層状珪酸塩。
(2)層状珪酸塩の層間にシクロアルカン構造を有するアミン、アンモニウム、ホスフィン及びホスホニウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする有機変性層状珪酸塩。
(3)前記シクロアルカン構造の炭素数が3〜12である(1)又は(2)に記載の有機変性層状珪酸塩。
(4)前記シクロアルカン構造を有するアミン、アンモニウム、ホスフィン及びホスホニウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の含有量が、前記層状珪酸塩100gに対して10〜200mmol当量である(1)〜(3)のいずれかに記載の有機変性層状珪酸塩。
(5)前記有機変性層状珪酸塩のアスペクト比が50〜10,000である(1)〜(4)のいずれかに記載の有機変性層状珪酸塩。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の有機変性層状珪酸塩と有機溶媒とからなる組成物。
(7)(1)〜(5)のいずれかに記載の有機変性層状珪酸塩と熱可塑性樹脂とからなる組成物。
(8)前記組成物が有機溶媒をさらに含む(7)に記載の組成物。
(9)前記熱可塑性樹脂がオレフィン系ポリマー樹脂である(7)又は(8)に記載の組成物。
(10)前記熱可塑性樹脂がシクロオレフィン構造を有する樹脂である(7)〜(9)のいずれかに記載の組成物。
(11)前記熱可塑性樹脂がシクロオレフィンポリマー樹脂である(10)に記載の組成物。
(12)(6)〜(11)のいずれかに記載の組成物からなる基板。
(13)(12)に記載の基板を有する画像表示素子。
(14)層状珪酸塩を水及び/又は有機溶媒に混合した後に、シクロアルカン構造を有する化合物を混合することを特徴とする有機変性層状珪酸塩の製造方法。
(15)層状珪酸塩を水及び/又は有機溶媒に混合した後に、シクロアルカン構造を有するアミン、アンモニウム、ホスフィン及びホスホニウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種を混合することを特徴とする有機変性層状珪酸塩の製造方法。
(16)前記シクロアルカン構造の炭素数が3〜12である(14)又は(15)に記載の有機変性層状珪酸塩の製造方法。
(17)前記シクロアルカン構造を有するアミン、アンモニウム、ホスフィン及びホスホニウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の添加量が、前記層状珪酸塩100gに対して10〜200mmol当量である(14)〜(16)のいずれかに記載の有機変性層状珪酸塩の製造方法。
(18)前記有機変性層状珪酸塩のアスペクト比が50〜10,000であることを特徴とする(14)〜(17)のいずれかに記載の有機変性層状珪酸塩の製造方法。
【0013】
【発明の実施の態様】
以下に、本発明の有機変性層状珪酸塩、該珪酸塩を含む組成物及び基板についてさらに詳細に説明する。
なお、本明細書において「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0014】
[有機変性層状珪酸塩]
本発明の有機変性層状珪酸塩は、親有機化剤としてシクロアルカン構造を有するアミン、アンモニウム、ホスフィン及びホスホニウム化合物から選ばれる少なくとも一種を層状珪酸塩の層間に含有する。
【0015】
<親有機化剤>
本発明において、親有機化剤として用いられるシクロアルカン構造を有する化合物は、特に限定されるものではないが、好ましくはアミン、アンモニウム、ホスフィン、又はホスホニウム化合物であり、さらに好ましくはシクロアルカン構造の炭素数が3〜12であるアミン、アンモニウム、ホスフィン又はホスホニウム化合物であり、特に好ましくは、下記一般式(1)〜(4)で表される親有機化剤である。
【0016】
【化1】
【0017】
上記一般式(1)〜(4)において、シクロアルカン構造は、(a)R1〜R3又はR1〜R4の少なくとも一つがシクロアルカン構造を有する置換基である場合と、(b)R1〜R3又はR1〜R4の少なくとも2つがアルキル鎖を有し、該アルキル鎖が互いに連結してシクロアルカン構造を形成する場合の2つで表すことができる。なお、その他の置換基は特に限定されず、例えば、水素原子や炭素数1〜20個の炭化水素などであってもよい。また、上記一般式(1)及び(3)には、酸性下でこれらの化合物がプロトネーションして一価の正電荷を持った化合物も含まれる。
【0018】
(a)R1〜R3又はR1〜R4の少なくとも一つがシクロアルカン構造を有する置換基である場合
シクロアルカン構造を有する置換基としては、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカン、シクロドデカンなどの単環の置換基又はこれらの2つ以上が連結した置換基、又はノルボルナン、アダマンタン、デカリン等のビシクロ構造を有する置換基が挙げられる。また、これらの置換基に含まれる水素原子を任意の置換基で置換したものも上記シクロアルカン構造を有する置換基に含まれる。
【0019】
上記シクロアルカン構造は、直接窒素原子又はリン原子と結合してもよいし、窒素原子又はリン原子との間に任意の置換基を有してもよい。但し、上記シクロアルカン構造には二重結合又は三重結合は含まれない。
【0020】
具体的な化合物としては、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、シクロオクチルアミン、シクロドデシルアミン、シクロへキシルジブチルアミン、シクロオクチルブチルオクチルアミン、ジシクロペンチルジヘキシルアンモニウム、シクロオクチルジエチルブチルアンモニウム、シクロペンチルホスフィン、シクロヘキシルホスフィン、ジシクロヘキシルホスフィン、シクロオクチルホスフィン、シクロドデシルホスフィン、シクロへキシルジブチルホスフィン、シクロオクチルブチルオクチルホスフィン、ジシクロペンチルジヘキシルホスホニウム、シクロオクチルジエチルブチルホスホニウム等を挙げることができる。
【0021】
(b)R1〜R3又はR1〜R4の少なくとも2つがアルキル鎖を有し、該アルキル鎖が互いに連結してシクロアルカン構造を形成する場合
例えば、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン、ヘプタメチレンイミン及びこれらに含まれる水素原子を任意の置換基に置換した4−メチルピペリジン、キナクリジン、トロパン等の化合物、又はこれらの窒素原子をリン原子に置換した化合物を挙げることができる。また、アンモニウム化合物としてはN,N−ジメチルピペリジニウム化合物などを例示できる。但し、これらのシクロアルカン構造には二重結合又は三重結合は含まれない。
【0022】
本発明の親有機化剤は単独で用いてもよいし、複数を組合わせて用いてもよい。また異なる親有機化剤で親有機化された層状珪酸塩を混合して使用することもできる。
【0023】
<層状珪酸塩>
本発明で用いられる層状珪酸塩は、その層間にイオン交換可能な無機カチオンを有する。イオン交換可能な無機カチオンとは、層状珪酸塩の結晶表面上に存在するナトリウム、カリウム、リチウムなどの金属イオンのことである。これらのイオンは、親有機化剤とのイオン交換性を有し、イオン交換反応によりカチオン性を有する種々の物質を上記層状珪酸塩の層間に挿入(インターカレート)できるものが好ましい。
なお、上記親有機化剤は、本発明の有機変性層状珪酸塩の表面及び層間に存在すると考えられ、特に層間に存在することは親有機化された層状珪酸塩の層間隔の拡張をX線を用いて解析することにより容易に確認することができる。
【0024】
本発明で用いられる層状珪酸塩としては、例えば、天然又は合成のスメクタイト、モンモリロナイト、膨潤性雲母等の既知の無機層状珪酸塩を挙げることができる。層状珪酸塩のカチオン交換量は、好ましくは10〜200mmol当量/100gであり、より好ましくは50〜150mmol当量/100gであり、さらに好ましくは90〜130mmol当量/100gである。カチオン交換量が10mmol当量/100gより少ないと、親有機化剤(カチオン性表面修飾剤)の吸着量が不足し、十分な表面改質効果が得られない場合がある。一方、カチオン交換量が200mmol当量/100gより多いと、親有機化剤の吸着量は増加するが、層状珪酸塩の層間引力が強固なものとなり、劈開が困難となる場合がある。
【0025】
前記層状珪酸塩の好ましい平均粒径は、後述する本発明の組成物の用途により多少異なるが、概ね0.01〜50μmのものが好ましく、0.05〜10μmのものがより好ましく、0.1〜5μmのものがさらに好ましい。粒径が大きければ大きいほど複合材料の引張強度、曲げ強度等の機械強度や熱変形温度などの熱特性の改良効果は大きいが、材料の表面平滑性、射出成形性、上記特性の異方性などが大きくなる傾向にある。また硬度、屈折率、誘電率などは粒子の大きさに左右されずフィラーの体積分率に依存するため、これらの特性だけが必要な場合は粒径を考慮する必要はない。
【0026】
前記層状珪酸塩の好ましい厚みは、後述する本発明の組成物のバリア性や難燃性を改良する場合には薄ければ薄いほど改良効果が大きいと考えられる。すなわち、層状珪酸塩は約1nmが層構造の繰り返し単位となっており、層状珪酸塩の平均厚みはこの値に近いほど完全劈開に近い状態にあると考えられる。また機械的特性を改良する場合には、完全な劈開は必要なく、むしろ劈開を完全に行うために分子量の低下、あるいはシクロアルカンの場合には水添率の低下といった悪影響が出るため、これらを考慮した適点を選ぶべきである。
【0027】
上記条件を満たす層状珪酸塩として、具体的には、クニミネ工業のスメクトンSA、クニミネ工業のクニピアF、コープケミカル社のソマシフME−100、コープケミカル社のルーセンタイトSWN等を用いることができるが、本発明で用いることができる層状珪酸塩はこれらに限定されない。
【0028】
<有機変性層状珪酸塩の製造方法>
有機変性層珪酸塩は、層状珪酸塩に含まれるイオン交換可能な無機カチオンを本発明の親有機化剤とイオン交換することにより製造することができる。イオン交換する方法は既知の方法を用いることができる。具体的には、水中におけるイオン交換、有機溶媒(好ましくはアルコール)中におけるイオン交換、水/有機溶媒の混合溶媒中におけるイオン交換等の手法など溶媒を用いた既知のいずれの方法も用いることができる。また、液体ではなく超臨界流体中での修飾、ガス吸着による交換なども応用できる。上記の溶媒を用いたイオン交換では、0〜100℃の温度で行うことが好ましく、10〜80℃の温度範囲で行うことがより好ましく、15〜60℃の温度範囲で行うことがさらに好ましい。
【0029】
イオン交換時の親有機化剤の溶液濃度は、親有機化剤のCMC(臨界ミセル濃度)以上の濃度からCMCの10倍以下の濃度までの範囲で行うことが好ましい。親有機化剤の溶液濃度がCMCより低いとイオン交換反応が十分に進行せず、またCMCの10倍より高くなると、層状珪酸塩の層間に毛管凝縮現象で親有機化剤が析出し、イオン交換量以上の親有機化剤が層間に導入されてしまう場合がある。
【0030】
親有機化剤の表面被覆率は、50%以上で所望の性能が得られると考えられるが、これより少ないと劈開性能の低下を招いたり、また過剰な修飾は複合材料の強度低下、耐熱性の低下など思わぬ弊害を招いたりするので注意が必要である。
なお、ここでいう「表面被覆率」とは、層状珪酸塩表面の親有機化剤で被覆された割合を示すものであり、以下に述べるイオン交換率とは異なる概念である。
【0031】
イオン交換反応が進行したことは、既知の方法で確認することができる。具体的には、濾液のICP発光分析法により交換された無機イオンを定量する方法、X線解析により層状珪酸塩の層間隔が拡大したことを確認する方法、熱天秤により昇温過程の質量減少から有機化合物の存在を確認する方法等により、層状珪酸塩の交換可能な無機イオンが、本発明で用いられるシクロアルカン構造を有するアミン、アンモニウム、ホスフィン、又はホスホニウム化合物と置換されたことを確認することが可能である。イオン交換率は、交換可能な無機イオンの当量に対し、5〜150%の範囲であることが好ましく、10〜100%の範囲であることがより好ましく、50〜100%の範囲であることがさらに好ましい。
なお、ここにいう「イオン交換率」とは、層状珪酸塩に予め含まれていた無機イオンに対する、層状珪酸塩の昇温過程による質量減少分から求めた親有機化剤のモル比を百分率で表したものであり、100%を超えることもあり得る。
【0032】
本発明の有機変性層状珪酸塩のアスペクト比は、50〜10,000であることが好ましく、100〜10,000であることがさらに好ましく、500〜10,000であることが最も好ましい。アスペクト比が50未満であると、層状珪酸塩を添加した効果が十分に得られない場合があり、アスペクト比が10,000より大きくなると、層状珪酸塩の層間引力の増大により十分な劈開性が得られない場合がある。
【0033】
[組成物]
本発明の有機変性層状珪酸塩は、有機溶媒又は熱可塑性樹脂に劈開、分散して組成物として用いることができる。
【0034】
本発明の有機変性層状珪酸塩を有機溶媒に分散した組成物(以下、「溶媒組成物A」という)で用いられる有機溶媒は特に限定されないが、例えば、脂肪族炭化水素類(例えばシクロヘキサン、n−ヘキサン、n−テトラデカン、スクワラン)、芳香族炭化水素類(例えばベンゼン、トルエン、キシレン)、アルコール類(例えばエタノール、イソプロピルアルコール)、エーテル類(例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン)、アルデヒド類(例えばジメチルホルムアルデヒド)、ケトン類(例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エステル類(例えば酢酸エチル)、ハロゲン化炭化水素類(例えばクロロホルム、ジクロロメタン)等を挙げることができる。
【0035】
本発明の有機変性層状珪酸塩を有機溶媒中に分散することにより、有機溶媒のレオロジー特性を改良することができる。このため、本発明の組成物は、化粧品、医薬品、染料、顔料、紫外線吸収剤等の分散媒として好ましく用いられる。また、本発明の組成物を塗布・乾燥することにより、薄膜状の形態で使用することも可能となる。
【0036】
溶媒組成物A中における有機溶媒の含有量は、有機変性層状珪酸塩100質量部に対して1,000〜100,000質量部の範囲であることが好ましく、3,000〜20,000質量部の範囲であることがさらに好ましく、2,000〜10,000質量部の範囲であることが好ましい。有機溶媒の含有量が有機変性層状珪酸塩100質量部に対して1,000質量部未満であると、増粘が高すぎて混合不良を引き起こす場合があり、また、有機変性層状珪酸塩100質量部に対して100,000質量部より多くなると、十分な添加効果が得られなくなる場合がある。
【0037】
本発明の有機変性層状珪酸塩と熱可塑性樹脂とからなる組成物(以下「樹脂組成物B」という)において用いられる熱可塑性樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン66、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルペンテン、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド等が挙げられる。中でも、熱可塑性樹脂としてポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルペンテン、シクロオレフィンポリマー等のオレフィン系ポリマーを用いることが好ましく、シクロオレフィンポリマーを用いることがさらに好ましい。
シクロアルキル構造を有する親有機化剤を用いた層状珪酸塩は、特にシクロオレフィンポリマーにおいて良く混練される。これは、親有機化剤とポリマー樹脂との構造が似ていることに起因するものである。
【0038】
シクロオレフィンポリマーの具体例としては、ゼオノア(日本ゼオン)、ゼオネックス(日本ゼオン)、アペル(三井化学)、トーパス(三井化学)、アートン(JSR)等を挙げることができる。
【0039】
本発明の有機変性層状珪酸塩を熱可塑性樹脂に分散する方法としては、次の2つが挙げられる。その1つは、熱可塑性樹脂の融点以上の温度で、熱可塑性樹脂と本発明の有機変性層状珪酸塩を混練する方法である。もう1つは、熱可塑性樹脂を有機溶媒中に均一溶解した後、有機溶媒中に分散した本発明の有機変性層状珪酸塩を加え、充分に混合、攪拌した後、有機溶媒を留去することにより、熱可塑性樹脂中に本発明の有機変性層状珪酸塩を分散する方法である。
【0040】
本発明の樹脂組成物B中における熱可塑性樹脂の含有量は、有機変性層状珪酸塩100質量部に対して100〜100,000質量部の範囲であることが好ましく、300〜3,000質量部の範囲であることがさらに好ましく、500〜2,000質量部の範囲であることが好ましい。熱可塑性樹脂の含有量が有機変性層状珪酸塩100質量部に対して100質量部未満であると、層状珪酸塩が劈開不良となる場合があり、また、有機変性層状珪酸塩100質量部に対して100,000質量部より多くなると、十分な添加効果が得られない場合がある。
【0041】
本発明の樹脂組成物Bは、必須成分である熱可塑性樹脂と有機変性層状珪酸塩のほかに、本発明の課題の達成を阻害しない範囲で必要に応じて、難燃性を向上させるための難燃剤を含有することもできる。
【0042】
上記難燃剤は、特に限定されるものではないが、例えば、リン系化合物、金属水酸化物、金属酸化物、メラミン誘導体等が挙げられ、中でもリン系化合物、金属水酸化物及びメラミン誘導体が好適に用いられる。これらの難燃剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0043】
難燃剤として用いられるリン系化合物は、特に限定されるものではないが、例えば、赤リン、ポリリン酸アンモニウムなどを用いることができ、中でも下記一般式(5)で表されるリン化合物等が好適に用いられる。これらのリン系化合物は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0044】
【化2】
【0045】
上記一般式(5)のR5 及びR7 は、水素原子、炭素数1〜16のアルキル基又はアリール基を示し、R6 は、水素原子、水酸基、炭素数1〜16のアルキル基、アルコキシ基、アリール基又はアリーロキシ基を示し、R5 、R6 及びR7 は、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。なお、上記炭素数が16を超えると、リンの相対比率が低くなって難燃化効果が不十分となることがある。
【0046】
赤リンは、耐湿性向上及び熱可塑性樹脂に添加して混練する際の自然発火防止の観点から、表面が樹脂で被覆されたものを用いることが好ましい。また、ポリリン酸アンモニウムは、メラミン変性等の表面処理が施されたものであってもよい。
【0047】
上記一般式(5)で表されるリン化合物は、特に限定されるものではないが、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチルブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。
【0048】
樹脂組成物B中における上記リン系化合物の含有量は特に限定されるものではないが、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して、リン系化合物0.5〜100質量部であることが好ましく、2〜50質量部であることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂100質量部に対するリン系化合物の含有量が0.5質量部未満であると、十分な難燃性を得られないことがあり、逆に熱可塑性樹脂100質量部に対するリン系化合物の含有量が100質量部を超えると、熱可塑性樹脂/層状珪酸塩複合体の機械的物性が低下することがある。
【0049】
樹脂組成物Bは、上記リン系化合物以外の難燃剤として金属水酸化物を用いることもできる。金属水酸化物は特に限定されるものではないが、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ドーソナイト、アルミン酸化カルシウム、2水和石膏、水酸化カルシウム等が挙げられる。中でも水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムがより好適に用いられる。これらの金属水酸化物は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。2種類以上の金属水酸化物を併用すると、各々が異なる温度で分解脱水反応を開始するので、より高い難燃化効果を得ることができる。また、これらの金属水酸化物は、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、ポリビニルアルコール系表面処理剤、エポキシ系表面処理剤等の表面処理剤で表面処理が施されていてもよい。
【0050】
上記金属水酸化物は、燃焼時の高熱下で吸熱脱水反応を起こして吸熱し、水分子を放出することにより、燃焼場の温度を低下させ、消火する効果を発揮する。樹脂組成物Bは、熱可塑性樹脂(シクロオレフィン構造を有するポリマー樹脂)と有機変性層状珪酸塩とからなるため、上記金属水酸化物を添加すると難燃化効果を増大することができる。これは有機変性層状珪酸塩の燃焼時の被膜形成による難燃化効果と、金属水酸化物の吸熱脱水反応による難燃化効果とが競争的に起こり、それぞれの効果を助長して相乗効果が得られるからである。
【0051】
樹脂組成物B中における上記金属水酸化物の含有量は、特に制限されないが、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して、金属水酸化物0.5〜100質量部であることが好ましく、20〜60質量部であることが好ましい。熱可塑性樹脂100質量部に対する金属水酸化物の含有量が0.5質量部未満であると、十分な難燃性を得られないことがあり、逆に熱可塑性樹脂100質量部に対する金属水酸化物の含有量が100質量部を超えると、熱可塑性樹脂/有機変性層状珪酸塩複合体の密度(比重)が増大したり、柔軟性が損なわれたり等のデメリットが生じることがある。
【0052】
樹脂組成物Bは、その他の難燃剤としてメラミン誘導体を用いることもできる。メラニン誘導体は特に限定されるものではないが、例えば、メラミン、メラミンシアヌレート、メラミンイソシアヌレート、リン酸メラミン等やこれらに表面処理が施されたものを挙げることができ、これらを好適に用いることができる。これらのメラミン誘導体は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0053】
樹脂組成物B中における上記メラミン誘導体の含有量は特に限定されるものではないが、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して、メラミン誘導体0.5〜100質量部であることが好ましく、1〜30質量部であることがより好ましい。100質量部に対するメラミン誘導体の含有量が0.5質量部未満であると、十分な難燃性を得られないことがあり、逆に熱可塑性樹脂100質量部に対するメラミン誘導体の配合量が100質量部を超えると、有機変性層状珪酸塩/熱可塑性樹脂コンポジットの機械的物性が低下したり、燃焼時における有機変性層状珪酸塩の燃焼被膜の形成が阻害されることがある。
【0054】
さらに樹脂組成物Bは、上記難燃剤以外に本発明の課題の達成を阻害しない範囲で必要に応じて粘度調整剤が配合されてもよい。粘度調整剤としては、例えば、熱可塑性樹脂がオレフィンメタセシス重合体である場合、オレフィンメタセシス反応性モノマーのオレフィンメタセシス重合体への重合時にオレフィンメタセシス重合体中に組み込まれ得る反応性粘度調整剤が好ましい。反応性粘度調整剤は特に限定されるものではないが、例えば、オレフィン性不飽和基を有するポリブタジエンやポリイソプレン等が挙げられ、これらが好適に用いられる。
【0055】
上記粘度調整剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。また粘度調整剤の含有量は、特に限定されるものではないが、オレフィンメタセシス反応性モノマー全量中に0.1〜50質量%含まれることが好ましく、0.1〜20質量%含まれることがさらに好ましい。
【0056】
さらに、樹脂組成物Bは、上記難燃剤や粘度調整剤以外に本発明の課題の達成を阻害しない範囲で必要に応じて、増量又は粘度調整のための炭酸カルシウム、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、フライアッシュ、硅砂等の充填剤や、分子量調整剤、高分子改質剤、揺変性付与剤、軟化剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、着色剤、酸化防止剤(老化防止剤)、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、消泡剤等の各種添加剤の1種若しくは2種以上を含有してもよい。
【0057】
樹脂組成物Bは、ASTM E 1354に準拠した燃焼試験において、燃焼残渣の降伏点応力は4.9kPa以上であることが好ましく、15.0kPa以上であることがさらに好ましい(但し、前記降伏点応力は、50kW/m2の輻射加熱条件下で30分間加熱することにより燃焼させた燃焼残渣を速度0.1cm/sで圧縮したものである。)。前記燃焼残渣の降伏点応力が4.9kPa未満であると、微少な力で燃焼残渣の崩壊が起こりやすくなって、樹脂組成物Bの難燃性が不十分となることがある。すなわち、樹脂組成物Bの焼結体が難燃被膜としての機能を十分に発現するためには、4.9kPa以上の降伏点応力を有することにより燃焼終了時まで焼結体がその形状を保持していることが好ましい。
【0058】
本発明の有機変性層状珪酸塩及びその組成物は、様々な分野で利用することができる。例えば、本発明の有機変性層状珪酸塩と有機溶媒からなる組成物は、有機溶媒のレオロジー特性を改良することが可能である。したがって、本発明の組成物は、化粧品、医薬品、染料、顔料、紫外線吸収剤等の分散媒として、好ましく用いることができる。また、本発明の組成物を塗布・乾燥することにより、薄膜状の形態として使用することもできる。
さらに、本発明の有機変性層状珪酸塩と熱可塑性樹脂とからなる組成物は、力学特性、帯電性、ガスバリア性、抗菌性等に優れたコンポジット材料として利用可能である。
【0059】
[基板]
本発明の基板は、本発明の有機変性層状珪酸塩と有機溶媒又は熱可塑性樹脂とからなる組成物を有する。本発明の基板は、例えばディスプレイ用基板や電子回路用基板として用いることができる。本発明の基板をディスプレイ用基板として用いる場合、例えば、本発明の組成物をフィルム状に成型し、該フィルム上に、電極、誘電体層、保護層、隔壁、蛍光体などを形成してディスプレイ用部材を得ることができ、さらにこれを用いてPDP、PALC、FED、VFD等のディスプレイを作製することができる。また、本発明の基板を電子回路用基板として用いる場合、前記フィルム上に回路を形成し、各種の電子機器、半導体素子に用いられる電子回路を作製することができる。その他、本発明の基板は 太陽電池、電子ペーパー、その他、各種の携帯を目的とした商品などの基板として用いることができる。
【0060】
さらに、本発明の基板は、画像表示素子の基板として用いることができる。画像表示素子とは、本発明の基板を有する液晶素子及び有機EL素子などである。有機EL素子は、例えば、特開平11−335661号公報、特開平11−335368号公報、特開2001−192651号公報、特開2001−192652号公報、特開2001−192653号公報、特開2001−335776号公報、特開2001−247859号公報、特開2001−181616号公報、特開2001−181617号公報、特願2001−58834号明細書、特願2001−58835号明細書、特願2001−89663号明細書、特願2001−334858号明細書に記載された態様で用いることが好ましい。
すなわち、本発明の基板を有する有機EL素子は、本発明の基板を基材フィルム、及び/又は保護フィルムとして用いることができる。
【0061】
【実施例】
以下に本発明の実施例、比較例及び参考例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。
以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0062】
(実施例1〜5及び比較例1及び2)
<有機変性層状珪酸塩の作製>
ソマシフME100(コープケミカル)を10質量%となるように水と混合し、Non−Bubbling Kneader NBK−2(日本精機会社)で10分間混合し、均一・粘調な分散物を得た。
親有機化剤としてシクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、シクロオクチルアミン、シクロドデシルアミンを表1に示される調液処方で調液し、この溶液全量に上記ソマシフME100の10質量%分散液を100gずつ攪拌しながら添加した。この後、1晩攪拌を続け、その後静置し、沈降させて上澄みを採取、分別した後、吸引濾過し、さらに蒸留水で濯ぎ洗いした後、乾燥、粉砕して有機変性層状珪酸塩を得た。
採取、分別した上澄み液はICP発光分析にてNaイオン濃度を測定し、ME100より溶出したNa量から表面修飾剤の置換量を計算した。また乾燥した有機変性層状珪酸塩を Themo Plus システム(リガク株式会社)を用いて、アルゴン雰囲気下、室温から600℃の温度範囲を10℃/minの速度で昇温した場合の質量減少から有機化層状珪酸塩中の有機物量を測定した。これらの値と得られた有機変性層状珪酸塩のXRD測定より得られた層間隔を表1に併せて示す。
【0063】
【表1】
【0064】
<混練試験による劈開、分散進行の評価>
続いて表1に示される有機変性層状珪酸塩及びソマシフMTE、ソマシフMAE(コープケミカル)0.7gとゼオノア1020R(日本ゼオン)6.3gを混合しMiniLab 混練試験機(HAAKE)で220℃、90rpm、10min及び30minの2条件で混練試験を行った。ソマシフMTEはトリオクチルメチルアンモニウムで親有機化されたソマシフME100であり、ソマシフMAEはジアルキル(炭素数=C14〜C18)ジメチルアンモニウムで親有機化されたソマシフME100である。
【0065】
得られたストランド状のサンプル各1gを CertiPrep6750 Freezer Mill(SPEX)を用いて液体窒素温度で5分間凍結粉砕し、RINT−2500 XRD測定装置(リガク)を用いて室温でX線回折パターンを測定した。この結果、求められた組成物中の有機変性層状珪酸塩の面間隔に基づくピークの高さをゼオノア1020Rのピークの高さで正規化し、さらに220℃、90rpm、10minのピーク高さを基準として220℃、90rpm、30minの混練でこのピーク高さが何倍になるか(混練進行度)を求めた。その結果を表2に示す。この値が小さいほど混練による有機変性層状珪酸塩の層間隔の不規則性が早く増大し、劈開、分散がスムーズに進行したことを示している。
【0066】
【表2】
【0067】
表2より、本発明の有機変性層状珪酸塩は、比較例の層状珪酸塩よりゼオノア1020Rに対して優れた劈開、分散性を示すことが分かる。
なお、同様の試験をゼオノア1420R、1600R、アペルAPL6011T、APL6015T、トーパス8007、6017、アートンF5023について行ったが、同様の結果を得た。
【0068】
(実施例6〜11及び比較例3及び4)
<本発明の組成物の作製及び該組成物の熱膨張係数の評価>
上記実施例1〜5及び比較例1及び2で作成した混練時間30minのサンプル(実施例6〜9、比較例3及び4)と、有機化層状珪酸塩を添加せず同条件で30min混練したゼオノア1020R単独のサンプル(参考例)と、シクロヘキシルアミンで親有機化した有機変性層状珪酸塩の添加量を30%、60%と増加させたサンプル(実施例10、11)を新たに作成し、これらを用いて熱膨張係数を測定した。添加量を30%、60%と増加させたサンプルは有機変性層状珪酸塩の分散度を一定にするために混練時間を30分、150分とした。
【0069】
これらのサンプルをヒートプレスで厚み200ミクロン程度の薄板に加工して、長さ30mm、幅3mmの試験片を作成した。この試験片をクランプ長25.4mm、室温〜90℃の範囲で加重0.07N(厚み100ミクロン当たり)の条件でMTA測定(MTA−10(SII))して熱膨張係数を求めた。結果を表3に示す。
【0070】
【表3】
1)ソマシフMTEは親有機化剤としてトリオクチルメチルアンモニウムを含む
2)ソマシフMAEは親有機化剤としてジアルキル(炭素数=C14〜C18)ジメチルアンモニウムを含む
【0071】
表3より、本発明の有機変性層状珪酸塩を含有する組成物は、有機変性層状珪酸塩を含有しない組成物、及び従来から知られている有機変性層状珪酸塩を含有する組成物よりも熱膨張係数が小さくなることが分かる。さらに本発明の有機変性層状珪酸塩の含有量が多い組成物ほど熱膨張係数が小さくなることが分かる。
また、表3に示されるサンプルを用いて、酸素、水蒸気のガスバリア性を評価した結果、有機変性層状珪酸塩の添加量に比例してガスバリア性が向上することが分かった。
【0072】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、オレフィン系ポリマー又はシクロオレフィン系ポリマーと優れた劈開性及び分散性を有する有機変性層状珪酸塩を提供することができる。さらに、本発明は、熱膨張係数が小さく、かつ優れたガスバリア性能を有するポリマーナノコンポジットを提供することができる。さらに、本発明は、ディスプレイ用基板や電子回路用基板に用いるのに適した基板を提供することができる。
Claims (8)
- 親有機化剤を層間に含有する有機変性層状珪酸塩において、前記親有機化剤がシクロアルカン構造を有することを特徴とする有機変性層状珪酸塩。
- 前記親有機化剤がアミン、アンモニウム、ホスフィン及びホスホニウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載の有機変性層状珪酸塩。
- 請求項1又は2に記載の有機変性層状珪酸塩と有機溶媒とからなる組成物。
- 請求項1又は2に記載の有機変性層状珪酸塩と熱可塑性樹脂とからなる組成物。
- 前記熱可塑性樹脂がオレフィン系ポリマー樹脂である請求項4に記載の組成物。
- 前記オレフィン系ポリマー樹脂がシクロオレフィン構造を有する樹脂である請求項5に記載の組成物。
- 請求項4〜6のいずれか一項に記載の組成物からなる基板。
- 層状珪酸塩を水及び/又は有機溶媒に混合した後に、シクロアルカン構造を有する親有機化剤を混合することを特徴とする有機変性層状珪酸塩の製造方法。
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