JP5688247B2 - 樹脂発泡シートの製造方法、及び、押出設備の改修方法 - Google Patents
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Description
この樹脂発泡シートは、通常、樹脂組成物の連続的な押し出しによって作製されており、一旦、長尺帯状のものがロール状に巻き取られた原反ロールなどと呼ばれる状態にされた後で最終製品として所定の形状に加工されている。
したがって、熱成形に適した樹脂発泡シートを得ることが従来困難な状況となっている。
本発明は、作製される樹脂発泡シートの厚みを均一化させ得る樹脂発泡シートの製造方法を提供し、ひいては、熱成形に適した樹脂発泡シートを提供することを課題としている。
そして、その原因を調査したところ、従来、樹脂発泡シートの表面の気泡状態の調整や、冷却マンドレルにおける延伸性の調整などの目的で、冷却マンドレルによって冷却される前の発泡体に外側から風を吹き付けて該発泡体を外側から冷却する冷却機構を有した押出設備が樹脂発泡シートの製造に広く用いられているが、このような冷却機構を作動させた際には、通常、発泡体の押出方向に沿った気流が発泡体の外側に形成され、この気流に押出機側の熱かい空気が誘引されて当該気流による冷却状況を発泡体上下で異ならせていることを見出した。
また、そのようにして得られる樹脂発泡シートは、例えば、原反ロールごとに成形条件を大幅に変更したりしなくても良好な成形品が得られやすいことから、成形品の形成に手軽に利用することができる。
まず、本実施形態に係る樹脂発泡シートの製造方法に用いられる押出設備について説明する。
図1は、押出設備の構成を示す図であり、図2は、この図1に破線Aで示した領域の端面図を示すものである。
また、図3は、図2に破線矢印Bで示した方向から押出設備を見た様子を示す概略図である。
この図にも示されているように、本実施形態の樹脂発泡シートの製造方法においては、発泡剤を含んだ樹脂組成物を溶融混練するための押出機としてタンデム押出機70を有する押出設備を利用する。
該タンデム押出機70の先端部には、前記樹脂組成物を発泡状態で押出して筒状の発泡体FBを形成させるためのサーキュラーダイ100が装着されている。
また、前記押出設備には、サーキュラーダイ100の前面において開口している円環状のダイスリット111から筒状に吐出された前記発泡体FBを内面側から冷却するとともに拡径して所定の大きさの筒状に形成させるための冷却マンドレル200が備えられている(これ以降において、マンドレルとサーキュラーダイとの間の発泡体を「バルーンFB’」と呼ぶことがある)。
さらに、前記押出設備には、前記タンデム押出機70の側から前記冷却マンドレル200の側への空気の流れを規制する規制部材が備えられており、具体的には、タンデム押出機70の側と冷却マンドレル200の側との間を仕切る仕切壁を前記サーキュラーダイ周りに形成させるための中抜円板状(ドーナツ状)の仕切部材SDが前記規制部材として備えられている。
そして、下流側押出機70bには、円環状のダイスリット111(樹脂吐出口)が形成された前記サーキュラーダイ100が装着されている。
なお、前記サーキュラーダイ100と前記冷却マンドレル200とは、該冷却マンドレル200の円柱形状の中心軸を延長した延長線上に、サーキュラーダイ100の前面において開口している円環状のダイスリット111の略中心が位置するようにして備えられている。
したがって、サーキュラーダイ100から冷却マンドレル200までの間の発泡体FB’はサーキュラーダイ100から冷却マンドレル200に向けて略均等に拡径されることになる。
前記外型102には、押出方向先端部の前記開口部から押出方向上流側に向かって縮径したすり鉢状の内壁面が形成されており、前記サーキュラーダイ100は、この内壁面の内側に前記内型103が収容されている。
該内型103には、前記外型102のすり鉢状の内壁面が傾斜している角度よりも僅かに大きな角度で傾斜した外壁面が形成されている。
すなわち、サーキュラーダイ100は、円環状の樹脂吐出口に向けて樹脂流路101の直径を増大させている一方で、樹脂流路101の幅が樹脂吐出口に向けて狭くなるように形成されている。
その結果、前記サーキュラーダイ100は、前記内型103と前記外型102との間に形成された樹脂流路101となる部分の断面積が押出方向に向けて小さくなるように形成されている。
該冷却機構は、その具体的な構成部材として扁平なドーナッツ状の中空管である冷却リングCRを有している。
この冷却リングCRには、当該冷却リング内部の中空領域に流入させた空気を吹出させるための吹出口301が形成されており、該吹出口301は、前記冷却リングCRの内周縁に沿って円環状に形成されている。
該冷却リングCRは、その内周が前記ダイスリット111よりも僅かに径大な円形となっており、外周が外型102よりも径大な円形となっている。
そして、前記冷却リングCRは、その外周部を外型102よりも僅かに外側に突出させながら内側に前記ダイスリット111を包囲するような形でサーキュラーダイ100の前面部に備えられている。
この冷却リングCRには前記のように内周に沿って吹出口301が開口していることから当該吹出口301が前記ダイスリット111の外側に僅かな距離を隔てて開口しており、前記冷却機構は、押出された直後のバルーンFB’に対して風を吹付け得るように構成されている。
したがって、吹出した空気の多くは、バルーンFB’の外表面に沿って冷却マンドレル200側に移動して樹脂の押出方向に沿った気流(図2矢印CA)をバルーンFB’の外側に形成させることになる。
このような冷却リングCRからの冷却風の吹付けは、発泡体FBの外表面に近い部分の発泡状態の調整等に有効活用することができるものではあるが、一方で、その温度が周方向にバラツキを有していたりするとバルーンFB’における気泡の成長状態が周方向に異なる結果、発泡体FBの発泡状態にバラツキを生じさせることになる。
しかも、前記貫通孔の開口径が前記冷却リングCRの円環状の吹出口301よりも径大、且つ、冷却リングCRの外径よりも径小となっており、外径が、前記冷却リングCR並びに冷却マンドレル200よりも径大な円板が仕切部材SDとして備えられている。
すなわち、ドーナツ状の前記円板は、サーキュラーダイ100の前面において冷却マンドレル側と押出機側とを仕切る仕切板として機能するように設けられている。
なお、仕切部材SDは、押出機側の空気の誘引を防止する上では冷却風の吹出口301の近くに設けることが効果的ではあるが、冷却リングCRの前面側に設ける必要性はなく、例えば、図4の変更例1(a)に示すように、冷却リングCRよりも上流側の外型102の外周からフランジ状に外側に延びるように設置しても良い。
しかし、その場合には、外型102の熱を吹出口301から吹付ける風に誘引させるおそれを有する。
したがって、仕切部材SDは、サーキュラーダイ100の前面と略面一な状態になるように配置することが好ましい。
さらには、仕切部材SDをサーキュラーダイ100と密着させることなく独立した状態で仕切部材SDを設けることも可能であり、押出機側の空気の誘引をある程度抑制させ得るものであれば、例えば、図4(d)のように、サーキュラーダイ100との間に僅かな隙間を設けて仕切部材SDを配置することも可能である。
したがって、例えば、図2の“h”を30cm以上とすることが好ましく、40cm以上とすることがより好ましい。
したがって、仕切部材SDの大きさは、冷却マンドレル200との関係からも規定することが好ましい。
すなわち、より確実に押出機側の空気の誘引を樹脂発泡シートに影響させないようにするには、前記冷却マンドレルよりも大きな仕切板部を有する仕切部材を前記冷却マンドレルのサーキュラーダイ側の端面と前記仕切板部とを対向させるように前記サーキュラーダイ側に配置することが好ましい。
より具体的には、前記仕切部材としては、当該仕切部材に対して冷却マンドレルを投影させた場合に、その全てを投影させ得る大きさ、すなわち、押出機側から冷却マンドレルを見た場合に、その全てが当該仕切部材の内側に隠されてしまうような大きさのものが好ましい。
すなわち、仕切部材の利用は、簡便であり、コストメリットなどの点においても有利なものであるといえる。
この仕切部材は、金属、木材、樹脂、布帛、紙など種々の素材のもので形成させることができ、安価に作製が可能なものである。
すなわち、樹脂発泡シートの製造に用いられる押出設備であって、押出機と、該押出機の先端部に装着されたサーキュラーダイと、冷却マンドレルとが備えられ、該冷却マンドレルによって冷却される前の発泡体に外側から風を吹き付けて押出方向に沿った気流を前記発泡体の外側に形成させることにより該発泡体を外側から冷却する冷却機構がさらに備えられている押出設備に、前記押出機側の空気が前記気流に誘引されることを抑制させつつ樹脂発泡シートを製造させうるように前記押出機側から前記冷却マンドレル側への空気の流れを規制する規制部材を新たに設ける改修を施すことによって製造される樹脂発泡シートの品質向上と、歩留り向上とを図ることができる。
具体的には、押出機側から冷却マンドレルを見た場合に、サーキュラーダイや冷却リングなどの外側に前記冷却マンドレルの一部がはみ出した状態になっている場合に、少なくとも、押出機の上側部分においてこれが見えなくなるように仕切部材を設けるような改修を既存の押出設備に施すことで製造される樹脂発泡シートの品質向上と、歩留り向上とを図ることができる。
従来、食品包装用容器などに熱成形される樹脂発泡シートにおいては、当該樹脂発泡シートの表面にフィルムをラミネートしたものを該ラミネートフィルム側が外側となるように熱成形して丼等の深底容器を作製し、容器外側に曲面印刷を施すような用いられ方が従来されている。
したがって、この種の用途に利用される樹脂発泡シートには、ラミネートの容易さや印刷精度などの観点から表面が平滑で、ある程度の表面硬度を有することが求められている。
このフィルムラミネート用途に用いられる樹脂発泡シートを製造するのに際しては、冷却リングCRからより多くの冷却風を発生させて押出後の早い段階で発泡体を外側から冷却し、この外側における気泡の成長を抑制させることが有効な手段となる。
例えば、図2や図5に示すように、冷却リングCR,CRxをサーキュラーダイ100,100xの前面部において外型よりの外方に突出させてフランジ状の構造が形成されていたとしても、通常、数cm程度の高さしかなく、押出機側の空気の誘引を防止するのには不十分であり、簡単にこれを乗り越えてしまうことになる。
本発明者らの調査によれば、一般的なポリスチレン樹脂の押出発泡を実施している場合において、押出機とサーキュラーダイとの境目付近における温度に上部側と下部側とで40℃以上の差があり、何も、対策を講じないと、押出直後のバルーン近傍の空気の温度に上下15℃程度の温度差を生じることが判明した。
そのために、このような条件下でポリスチレン系樹脂発泡シートを製造すると上ロール側では、発泡度が高くなってしまい、同じ長さの発泡シートを巻き取った場合でも、上ロールと下ロールとで原反ロールの巻径が異なる(上ロールの方が太くなる)結果となってしまうことになる。
また、その場合には、上ロールと下ロールとで原反ロールの質量も異ならせる結果となる。
したがって、本実施形態に係る発泡シートの製造方法によれば、作製される樹脂発泡シートの厚みを均一化させることができ、シート成形などに適した樹脂発泡シートを作製することができる。
特に、得られる樹脂発泡シートは、フィルムラミネートされる用途に好適であり、フィルムラミネートされた後でシート成形によって深底容器などに熱成形されるような用途に好適なものとなる。
また、本実施形態に係る発泡シートの製造方法は、既存の設備を改修して実施が可能なものであり、多額のコストを投じることなく製造される樹脂発泡シートの品質向上を図ることができる。
すなわち、本発明は、上記例示に限定されるものではない。
この発泡体を続けて直径670mmの冷却マンドレルで拡径且つ冷却した後、左右一対の切込みを入れて上下各1050mm幅の帯状のポリスチレン系樹脂発泡シートを作製した。
また、冷却リングの吹出口から吹出される風の温度について、周方向に略均等間隔に16箇所測定した。
これらの結果を図6に示す。
そして、サーキュラーダイから外側に30cmの長さで延出するようにドーナッツ状の仕切板を仕切部材として装着して押出機側からの空気の移動を規制した場合の結果を併せて図6に示す。
図6上左は、仕切板設置前の発泡体(バルーン)から1cm外側に離れたところの温度を示すグラフであり、図中「3」がサーキュラーダイからの押出直後(ダイスリットから押出方向に約30mm)の位置において温度を測定したもので、「1」は、冷却マンドレルの端面部において温度を測定したものである。
また、図6中の「2」は、押出直後の測定点(「3」)と冷却マンドレル端面位置における測定点(「1」)の中間点において温度を測定したものである。
この図が示すように、サーキュラーダイから冷却マンドレルに近付くにつれて(3→2→1)温度差が減少するもののダイスリットに近い部分では上側が52℃、下側が37℃となっており、15℃もの温度差を有している。
一方、仕切板設置後(図6上右)は上下の温度差は5℃(41℃と36℃)に低減される結果となった。
また、図6下左のグラフからは、バルーンの上側に吹付けられる風の温度が約50℃であったものが仕切板設置後は40℃弱に低減され、しかも、風の温度がバルーン周りに均一化されていることがわかる。
このように規制部材(仕切板)によって温度が均等化されていることがわかる。
結果を図7に示す。
なお、図7の横軸はテストピースのシート幅方向の並び順を示す番号であり、ポリスチレン系樹脂発泡シートの一方の端で採取したテストピースが「1」で、反対側の端で採取したテストピースが「10」である。
この図からも、上側のポリスチレン系樹脂発泡シートでは、発泡体の最も上側部分に相当するシート幅方向中央部における坪量が低く発泡度が高いことがわかる。
この図8では、坪量や厚みが一定しており、図7に比べて大きく改善されていることがわかる。
また、図7では、上側のポリスチレン系樹脂発泡シートから採取した10枚のテストピースの平均発泡倍率と、下側のテストピースの平均発泡倍率との差が0.13倍であったが、仕切板設置後は、0.04倍に改善されていることがわかった。
100 サーキュラーダイ
111 ダイスリット
200 冷却マンドレル
301 吹出口
CR 冷却リング
FB 発泡体
SD 仕切部材
Claims (5)
- 発泡剤を含んだ樹脂組成物を溶融混練するための押出機と、該押出機の先端部に装着されたサーキュラーダイと、該サーキュラーダイのダイスリットから前記樹脂組成物が押し出されてなる筒状の発泡体を内面側から冷却するための冷却マンドレルとが備えられ、該冷却マンドレルによって冷却される前の発泡体に外側から風を吹き付けて該発泡体を外側から冷却する冷却機構がさらに備えられている押出設備を使用して樹脂発泡シートを製造する樹脂発泡シートの製造方法であって、
前記押出設備には、前記押出機側から前記冷却マンドレル側への空気の流れを規制する規制部材がさらに備えられており、前記冷却マンドレルが前記サーキュラーダイよりも大きく前記規制部材として前記冷却マンドレルよりも大きな仕切板部を有する仕切部材が備えられている前記押出設備を使用し、前記冷却マンドレルのサーキュラーダイ側の端面と前記仕切板部とを対向させるように配置した前記仕切部材によって前記押出機側の空気が前記風に誘引されることを抑制させつつ樹脂発泡シートを製造することを特徴とする樹脂発泡シートの製造方法。 - 前記発泡体が通過される円形の貫通孔を中央部に有するドーナッツ状の円板で前記仕切板部が形成されている仕切部材を用いる請求項1記載の樹脂発泡シートの製造方法。
- 前記円板で形成された仕切板部とともに、前記円板の外周部から前記冷却マンドレル側に向けて筒状に延びる周側壁部を有する前記仕切部材を用いる請求項2記載の樹脂発泡シートの製造方法。
- 前記発泡体の外側に相当する面にフィルムがラミネートされて用いられる樹脂発泡シートを製造する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の樹脂発泡シートの製造方法。
- 樹脂発泡シートの製造に用いられ、発泡剤を含んだ樹脂組成物を溶融混練するための押出機と、該押出機の先端部に装着されたサーキュラーダイと、該サーキュラーダイのダイスリットから前記樹脂組成物が押し出されてなる筒状の発泡体を内面側から冷却するための冷却マンドレルとが備えられ、該冷却マンドレルによって冷却される前の発泡体に外側から風を吹き付けて該発泡体を外側から冷却する冷却機構がさらに備えられている押出設備を改修する押出設備の改修方法であって、
前記押出機側の空気が前記風に誘引されることを抑制させつつ樹脂発泡シートを製造させうるように前記押出機側から前記冷却マンドレル側への空気の流れを規制する規制部材を新たに設け、しかも、サーキュラーダイよりも大きい冷却マンドレルが備えられている押出設備に対して前記規制部材として前記冷却マンドレルよりも大きな仕切板部を有する仕切部材を新たに設け、前記冷却マンドレルのサーキュラーダイ側の端面と前記仕切板部とを対向させるように前記サーキュラーダイ側に前記仕切部材を配置することを特徴とする押出設備の改修方法。
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