JP3597266B2 - 発泡ポリオレフィンシートの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、縦筋がなく、表面平滑な発泡ポリオレフィンシートの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリオレフィン系樹脂を押出発泡して発泡シートを製造する際に、該樹脂の発泡に伴う体積膨脹及びダイ内部での樹脂の配向分子若しくは発泡ガスの緩和の理由から、ダイ出口で、溶融樹脂はカーテンウォール現象を起し、コルゲートマークと称される縦筋が押出しシート、ひいては製品シートに残り、不良品となる。
【0003】
このコルゲートマークの発生を解消させる試みが従来なされている。例えば、▲1▼インフレーション成形法:溶融樹脂をチューブ状に押出発泡し、圧空エアーで中から脹らませた後、冷却して平面性の良い発泡シートを得る、▲2▼サイジングダイ方式:フラットシートダイの直後に、製品形状に合せた冷却サイジングダイを設置して、発泡樹脂シートを引張る、▲3▼開き角度を有するリップ開口部を備えたフラットダイを用い、該リップ開口部の先端を一対の成形ロール又は一対の成形ベルトコンベアーによる引き取り装置に近接させて成形する(特公昭47−32585号公報)、▲4▼ダイ出口直近(5〜12mm)に、小口径の成形ロールを設けて表面を冷却した後、発泡させ、次いで冷却する(特開昭63−288731号公報)等が挙げられる。
【0004】
しかし、上記の試みにおいても、以下のような問題を有しており、最善な方法にはなっていない。▲1▼設備コストが大きく、又製品シートの厚み精度が劣る、▲2▼薄物シートは、引張ることができないので、薄物発泡シートへの適用には適さない、▲3▼開口部形状が大き過ぎるため、ポリオレフィン系樹脂の溶融時の粘度では開口部内でセルを保持できない、▲4▼比較的良好な発泡シートが得られるが、小口径の成形用ロールを、ダイ出口から5〜12mmという極小距離、かつ狭い許容範囲に設ける必要があり、技術的に非常な困難を伴う。
【0005】
一方、図4に示すように、ダイからシート状発泡体を横方向に押出し、縦に3個並んだ冷却ロールで冷却、引き取りを行って発泡シートとする方法が多く採用されている。しかし、この成形方法においても、ダイと冷却ロールの間で、溶融シートにコルゲートマークが発生する。この際溶融シートの引き取り速度を上げれば、コルゲートマークは減少するが、溶融シートにネックイン、皺、表面荒れ等が現われたり、溶融シートが切断したりして、良好な発泡シートが製造できないという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、コルゲートマークがなく、表面平滑な発泡ポリオレフィンシートを高生産速度で製造し得る方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、シート状発泡体の冷却ロールの前に、該発泡体の引き取りロールを設け、該シート状発泡体が溶融樹脂の押し出し方向と特定の角度となるようにし、かつダイ出口と該引き取りロールの該シート状発泡体の接点との距離を特定の距離にして、該発泡体を該引き取りロールで引き取ることにより本発明の目的が達成できることを見出して本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、発泡剤を含むポリオレフィン系樹脂を加熱溶融しダイから押出発泡して形成されたシート状発泡体を、ダイ出口に近接させて設置した引き取りロールにより、該樹脂の押し出し方向に対して30〜60°の角度とすると共にダイ出口と上記引き取りロールの上記シート状発泡体の接点との距離を5〜50mmとして引き取った後、冷却ロールで成形することを特徴とする発泡ポリオレフィンシートの製造方法を要旨とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の方法を図面にて詳細に説明する。
図1において、溶融した発泡剤を含むポリオレフィン系樹脂は、押出機(図示せず)の先端のダイ1の出口2から押出され、シート状発泡体を形成する。このシート状発泡体は、引き取りロール3により引き取られ、その後冷却ロール6,7及び8により冷却,成形されて製品の発泡ポリオレフィンシート9となる。
【0010】
この際、該シート状発泡体を引き取る引き取りロール3迄の距離と、引き取り角度が重要である。それらを図1の部分拡大図である図2で説明すると、ダイ出口2と引き取りロール3の該シート状発泡体の接点との距離aを5〜50mm、好ましくは10〜50mmとし、該シート状発泡体を、ダイ出口2における溶融樹脂の押出方向に対して30〜60°の角度θとなるように、引き取りロール3により引き取る必要がある。
【0011】
距離aが5mm未満では、溶融樹脂の発泡が不完全であると共に引き取りロール3として極小のものを使用する必要があり、又50mmを超えると、シート状発泡体にネックインや皺が発生し易く、コルゲートマークが増加したり、ガス抜けが多くなることから、発泡倍率が低下し、更にシートの表面状態も悪くなる。更に、角度θが30°未満では、安定したシート状発泡体の引き取りができず、コルゲートマークの減少効果が小さくなり、又60°を超えるとダイ出口リップ部(特に上部)に溶融樹脂の蓄積が激しくなり、1時間以上の連続運転が出来ないこととなる。
【0012】
引き取りロール3により、シート状発泡体を引き取る際に、該発泡体の表面を冷却できるように、引き取りロール3を冷却して引き取りを行うのが、より好ましい。又、引き取りロール3は、1個に限らず、複数個使用しても良く、それによりより良い効果をもたらす場合が多い。図3は、その数を3個(符号3,4,5)とした例を示している。
【0013】
引き取りロールを複数個使用する場合、それらの大きさやそれらの設置方向は特に限定されるものではないが、それらの設置間隔を、前方の引き取りロールの該発泡体の接点とその次の引き取りロールの該発泡体の接点との距離b(図3参照)が100mm以内、特に40〜60mmとなるように各引き取りロールを設けるのが望ましい。距離bが100mmを超えると、引き取りロールを複数個使用することによる効果は得られにくくなる。
【0014】
なお、引き取りロールの大きさは、前記距離a及び前記角度θの値から自ずから導びき出されるが、冷却ロールの大きさよりも小さくするのが望ましい。
【0015】
次いで、該発泡体は、冷却ロール6,7及び8で冷却、成形されて、製品発泡シート9となる。図3では、3個の冷却ロール6,7及び8が用いられているが、その数は3個に限定されるものではなく、必要に応じて増減できることは言う迄もない。又、冷却ロールの大きさ、更には複数個用いる場合それらの設置方向やそれらの間隔も任意に設定できることも同様である。
【0016】
引き取りロールと冷却ロールとの間隔は、図1及び図3に示すように、引き取りロール3(図1),5(図3)の該発泡体の接点と冷却ロール6(図1,図3)の該発泡体の接点との距離cが150mm以内、特に40〜100mmとするのが好ましい。距離cが150mmを超えると、引き取りロールを介して該発泡体を引き取ることによる効果が薄れ、ガス抜けによるシート表面の荒れ、シート両端部の不良部(シートが薄い、発泡倍率が低い、コルゲートマークが有る)が増加することとなるので好ましくない。
【0017】
本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン−1系樹脂等が挙げられるが、特にポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂及びそれらの混合物がより好ましく用いられる。それらポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂は、エチレンやプロピレンの単独重合体の他に、それらと他のオレフィンとの共重合体も当然に含まれる。
【0018】
又、発泡剤としては、プロパン、ブタン、ペンタン等の低級脂肪族炭化水素及びモノクロロジフルオロメタン、トリクロロジフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素からなる揮発型発泡剤、窒素、炭素ガス、酸素、空気等のガス状発泡剤、重炭酸ソーダ、重炭酸アンモニウム、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、トルエンスルホニルヒドラジド、アゾジカルボンアミド、p,p´−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド等からなる熱分解型発泡剤等が用いられる。これらの中でも、特に熱分解型発泡剤が望ましい。
【0019】
これら発泡剤の使用量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部当り、通常0.1〜30重量部である。又、この発泡剤とポリオレフィン系樹脂との混合方法としては、熱分解型発泡剤の場合は、該樹脂と直接混合して押出機に供給することができ、揮発型発泡剤やガス状発泡剤の場合は、例えばベント式押出機等のスクリュー中間部からこれらを溶融した該樹脂中に圧入することにより行われる。
【0020】
本発明においては、上記ポリオレフィン系樹脂及び発泡剤以外に、ポリオレフィン系樹脂に慣用の酸化防止剤、無機充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、着色剤等の添加剤を、本発明の方法や発泡シートを使用する際に阻害とならないような範囲の量で使用することができる。
【0021】
本発明で用いられる押出機は、一般的な単軸押出機を用いることができ、ポリオレフィン系樹脂は、押出機内で、発泡剤、更には必要に応じて用いられる上記添加剤と共に、160〜230℃で溶融混練され、その先端部のダイ出口からシート状に押出発泡される。
【0022】
本発明の方法は、広い発泡倍率範囲の発泡シートの製造に適用できるが、特に発泡倍率が1.5〜5倍程度の発泡シートを製造する場合に適している。
【0023】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
【0024】
(実施例1)
図1に示す装置により発泡ポリオレフィンシートを製造した。
メルトフローレート3.0g/10分のポリプロピレン70重量%とメルトインデックス0.3g/10分のポリエチレン30重量%からなる樹脂混合物100重量部及び熱分解型発泡剤(三共化成(株)製、商品名TS211)1.8重量部を押出機(50mm中、L/D=28)に供給して、溶融混練し、幅500mm、クリアランス1.0mmのダイ出口2から押出発泡させてシート状発泡体とし、引き取りロール3で引き取り、外径が各200mmの冷却ロール6,7及び8で冷却、成形して、製品発泡ポリオレフィンシート9を得た。
【0025】
この際の、引き取りロール3における引き取り角度θ(図2参照)は30°、出口2と引き取りロール3のシート状発泡体の接点との距離a(図2参照)は20mm、引き取りロール3のシート状発泡体の接点と冷却ロール6のシート状発泡体の接点との距離cは、100mmであった。又、この時の製品発泡ポリオレフィンシート9の引き取り速度(以下、表1その他で単に引取速度と表示する。)は、1.0m/分又は1.2m/分であった。
【0026】
ダイ出口2付近(A)及び冷却ロール6の前(C)のシート状発泡体並びに製品発泡シート9(D)のコルゲートマーク率を測定し、それらの結果を表1に示した。又、ダイ出口2でのネックインの有無、及び製品発泡シート9の皺の有無を観察し、それらの結果を表1に示した。
【0027】
なお、コルゲートマーク率は、発泡シート及びシート状発泡体の全幅に対するコルゲートマークが発生したシート幅の割合である。
【0028】
(実施例2)
図3に示す装置により発泡ポリオレフィンシートを製造した。
実施例1と同様にしてダイ出口2でシート状発泡体を形成させ、引き取りロール3,4及び5で引き取った後、外径が各200mmの冷却ロール6,7及び8で冷却、成形して、製品発泡ポリオレフィンシート9を得た。
【0029】
この際の、引き取り角度θ(図2参照)は30°、出口2と引き取りロール3のシート状発泡体の接点との距離a(図2参照)は20mm、引き取りロール3のシート状発泡体の接点と引き取りロール4のシート状発泡体の接点との距離bは50mm、引き取りロール4のシート状発泡体の接点と引き取りロール5のシート状発泡体の接点との距離bは50mm、引き取りロール5のシート状発泡体の接点と冷却ロール6のシート状発泡体の接点との距離cは100mmであった。又、引取速度は、1.2m/分又は1.4m/分であった。
【0030】
ダイ出口2付近(A)、引き取りロール3の後(B)及び冷却ロール6の前(C)のシート状発泡体並びに製品発泡シート9(D)のコルゲートマーク率を測定し、それらの結果を表1に示した。又、ダイ出口2でのネックインの有無、及び製品発泡シート9の皺の有無を観察し、それらの結果を表1に示した。
【0031】
(比較例1)
図4に示す従来の装置により発泡ポリオレフィンシートを製造した。
実施例1と同様にしてダイ出口2でシート状発泡体を形成させた後、直接冷却ロール6,7及び8で引き取ると共に冷却、成形して、製品発泡ポリオレフィンシート9を得た。なお、ダイ出口2と冷却ロール6のシート状発泡体の接点との距離は100mmであった。又、引取速度は、1.0m/分又は1.2m/分であった。
【0032】
ダイ出口2付近(A)及び冷却ロール6の前(C)のシート状発泡体並びに製品発泡シート9(D)のコルゲートマーク率を測定し、それらの結果を表1に示した。又、ダイ出口2でのネックインの有無、及び製品発泡シート9の皺の有無を観察して、それらの結果を表1に示した。
【0033】
表1から明らなように、本発明の方法で得られた製品シートは、従来の方法により得られる製品シートに比べ、コルゲートマークの発生は大巾に改良され、又成形速度(引取速度)を上昇しても、ネックインや皺が発生しない。
【0034】
【表1】
(実施例3,比較例2)
実施例1おいて、シート状発泡体の引き取り角度θを60°(実施例3)又は20°(比較例2)とし、かつ引取速度を1.2m/分とした以外は、実施例1と同様にして発泡シート9を製造した。
【0035】
場所Aにおけるシート状発泡体のコルゲートマーク率を測定した所、それぞれ5%(実施例3)及び18%(比較例2)であった。
【0036】
(実施例4,比較例3)
実施例1おいて、ダイ出口2と引き取りロール3のシート状発泡体の接点との距離aを50mm(実施例4)又は70mm(比較例3)とし、かつ引取速度を1.2m/分とした以外は、実施例1と同様にして発泡シート9を製造した。
【0037】
場所Aにおけるシート状発泡体のコルゲートマーク率を測定した所、それぞれ10%(実施例4)及び15%(比較例3)であった。
【0038】
(実施例5,比較例4)
実施例2において、ダイ出口2と引き取りロール3のシート状発泡体の接点との距離aを表2に示す通りにし、かつ引取速度を1.2m/分とした以外は、実施例2と同様に発泡シート9を製造した。
【0039】
場所Aにおけるシート状発泡体のコルゲートマーク率を測定すると共に、発泡シート9の皺の有無を観察し、それらの結果を表2に示した。
【0040】
表2から、引き取り距離aが本発明で規定される値を外れると、発泡倍率も充分に上がらず、又製品発泡シートの表面状態も劣ることが理解できる。
【0041】
【表2】
【0042】
【発明の効果】
本発明の方法により、コルゲートマークの発生が抑制され、高速発泡成形しても、ネックインが起らず、皺のない表面平滑な発泡ポリオレフィンシートを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法で用いられる装置要部の一概略断面図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】本発明の方法で用いられる装置要部の他の概略断面図である。
【図4】従来の方法で用いられる装置要部の概略断面図である。
【符号の説明】
1 ダイ
2 ダイ出口
3,4,5 引き取りロール
6,7,8 冷却ロール
9 製品発泡シート
Claims (3)
- 発泡剤を含むポリオレフィン系樹脂を加熱溶融しダイから押出発泡して形成されたシート状発泡体を、ダイ出口に近接させて設置した引き取りロールにより、該樹脂の押し出し方向に対して30〜60°の角度とすると共にダイ出口と上記引き取りロールの上記シート状発泡体の接点との距離を5〜50mmとして引き取った後、冷却ロールで成形することを特徴とする発泡ポリオレフィンシートの製造方法。
- 各引き取りロールの上記シート状発泡体の各接点間の距離を、それぞれ100mm以内とした複数の上記引き取りロールにより、上記シート状発泡体を引き取ることを特徴とする請求項1に記載の発泡ポリオレフィンシートの製造方法。
- 上記冷却ロールと最も近接する上記引き取りロールの上記シート状発泡体の接点と上記冷却ロールの上記シート状発泡体の接点との距離を150mm以内として引き取り、成形することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の発泡ポリオレフィンシートの製造方法。
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