JP5682216B2 - 圧電デバイスおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、シリコン基板と圧電体とを接合してなる圧電デバイスと、その圧電デバイスの製造方法とに関するものである。
従来から、駆動素子やセンサなどの電気機械変換素子として、PZT(チタンジルコン酸鉛)などの圧電体が用いられている。その一方で、近年の装置の小型化、高密度化、低コスト化などの要求に応えて、シリコン基板を用いたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子が増加している。MEMS素子に圧電体を応用すれば、例えばインクジェットヘッド、超音波センサ、赤外線センサ、周波数フィルタなど、種々のデバイスを作製することができる。
ここで、シリコン基板上に圧電体を貼り付ける際には、例えば、導電性接着剤やエポキシ系接着剤などの有機系の接着剤が一般に用いられる。しかし、このように接着剤を用いてシリコン基板と圧電体とを接合する手法では、接着剤を構成する樹脂の耐熱性の制約から、接着剤で接合したウェハを高温下で加熱することができない。そのため、採用できる微細加工プロセスや圧電デバイスの用途に制約が生じる。
例えば、シリコン基板と圧電体とを接合した圧電デバイスをインクジェットヘッドに応用する場合、シリコン基板における圧電体の接合側とは反対側を深堀し、圧力室の一部となる凹部を形成する。その後、凹部に蓋をかぶせるように、上記のシリコン基板とノズルプレート(別のシリコン基板で構成される)とをガラス基板を介して接合する。このときのシリコンとガラスとの接合には、陽極接合という接合方法が用いられる。この陽極接合とは、シリコンおよびガラスに数百℃の温度下で数百Vの直流電圧を印加し、Si−Oの共有結合を生じさせることによって両者を直接、接合する手法である。
しかし、シリコンと圧電体との接合に接着剤を用いると、耐熱性の観点から上記のような陽極接合を用いることができないため、他の接合方法を採用せざるを得なくなり、製造プロセスに制約が生じる。
また、例えば、圧電体を接合したシリコン基板とノズルプレートとをガラス基板を介さずに直接接合するようにすれば、常温接合(表面活性化接合)という接合方法で両者を接合することもできる。なお、常温接合とは、高真空中でプラズマ照射等により接合表面を活性化し、化学結合を形成しやすい状態にした基板同士を接合する方法である。しかし、このような常温接合で両者を接合する装置は一般的に高価であり、製造コストが増大するため、コスト面を考えると、圧電デバイスをインクジェットヘッドに適用することが困難となる。つまり、圧電デバイスの用途にも制約が生じる。
一方、例えば特許文献1では、セラミックス基板上に、銀とパラジウムとからなるペーストを塗布して焼成し、その上に金ペーストを塗布して焼成した後、所定の金属をはんだ付けして、上記所定の金属とセラミックス基板とを接合している。このように金属ペーストを焼成して両者を接合する手法を「ろう付け」と呼ぶが、このような手法を、シリコン基板と圧電体との接合に適用すれば、上記した接着剤を用いたときの制約が生じないので、陽極接合の採用および圧電デバイスのインクジェットヘッドへの応用が可能となるものと思われる。
特開平6−64980号公報(段落〔0016〕〜〔0018〕、表1等参照)
ところが、シリコン基板と圧電体とを接合した圧電デバイスでは、電圧印加による圧電体の伸縮が起こるため、シリコン基板と圧電体との接合強度を十分に確保する必要がある。例えば金属ペーストを焼成してなる接合層を介して、シリコン基板と圧電体とを接合したときに、接合層とシリコン基板との接合強度が不十分であると、それらの界面で圧電体とシリコン基板とが剥がれて、デバイスとして機能しなくなる場合がある。したがって、シリコン基板と圧電体とを金属ペーストを用いて接合する場合には、特許文献1の手法をそのままストレートに採用することはできず、両者の接合強度を向上させるための何らかの工夫が必要となる。
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、シリコン基板と圧電体とを金属ペーストを用いて接合する場合でも、シリコン基板と圧電体との接合強度を向上させて、デバイスとしての信頼性を向上させることができる圧電デバイスの製造方法と、その圧電デバイスとを提供することにある。
本発明の圧電デバイスの製造方法は、シリコン基板と圧電体とを接合層を介して接合してなる圧電デバイスの製造方法であって、前記シリコン基板上に、前記接合層を密着させるための密着層を形成する密着層形成工程と、前記密着層上に、金属ペーストを介して前記圧電体を配置する圧電体配置工程と、前記金属ペーストを焼成して固めることによって前記接合層を形成し、該接合層によって前記シリコン基板と前記圧電体とを接合する接合工程とを有していることを特徴としている。
また、本発明の圧電デバイスは、シリコン基板と圧電体とを接合層を介して接合してなる圧電デバイスであって、前記接合層は、金属ペーストを焼成して固めることによって形成されており、前記接合層を前記シリコン基板に密着させるための密着層が、前記シリコン基板上に形成されていることを特徴としている。
上記の構成によれば、シリコン基板と圧電体とは、金属ペーストを焼成することによって形成される接合層で接合される。このように、接着剤を用いずにシリコン基板と圧電体とが接合されるので、製造された圧電デバイスを例えばインクジェットヘッドに応用する場合でも、高温での製造プロセス(例えば陽極接合)を採用することが可能となる。したがって、用途や製造プロセスに制約が生じるのを回避することができ、圧電デバイスの応用の自由度を増大させることができる。
また、シリコン基板上に密着層を形成し、接合層を密着層によってシリコン基板に密着させることにより、接合層とシリコン基板との接合強度を向上させることができ、これによって、接合層を介して接合される圧電体とシリコン基板との接合強度を向上させることができる。したがって、シリコン基板と圧電体とを金属ペーストを用いて接合する場合でも、シリコン基板と圧電体とが剥がれるのを確実に回避することができ、信頼性の高い圧電デバイスを実現することができる。
本発明の圧電デバイスの製造方法において、前記シリコン基板は、単結晶シリコン単体からなる半導体基板またはSOI基板の表面に熱酸化膜を形成して構成されており、前記接合工程では、前記金属ペーストとして貴金属のペースト材料を用いて前記接合層を形成し、前記密着層形成工程は、卑金属層を形成する工程を含んでいてもよい。
本発明の圧電デバイスにおいて、前記シリコン基板は、単結晶シリコン単体からなる半導体基板またはSOI基板の表面に熱酸化膜を形成して構成されており、前記接合層は、貴金属で構成されており、前記密着層は、卑金属層を含んで構成されていてもよい。
シリコン基板の熱酸化膜(酸化シリコン)上に卑金属層を形成すると、卑金属が酸化シリコンとの界面で酸化物を形成し、酸素を介して酸化シリコンと卑金属酸化物とが結合し、卑金属酸化物と卑金属とが同元素で結合する。これにより、卑金属層とシリコン基板との密着性を向上させることができる。また、貴金属からなる接合層と密着層の卑金属層とは、金属結合による自由電子の共有によって密着するため、その密着性も向上させることができる。したがって、卑金属層を介してシリコン基板および接合層との接合強度を確実に向上させることができ、接合層を介して接合されるシリコン基板と圧電体との接合強度を確実に向上させることができる。
本発明の圧電デバイスの製造方法において、前記卑金属層は、チタン、ニッケル、クロム、ジルコンのいずれかの卑金属材料からなる層を含んでいてもよい。
卑金属層を上記の材料で構成することにより、シリコン基板および接合層の両者に対する卑金属層の密着性を確実に向上させることができる。
本発明の圧電デバイスの製造方法において、前記密着層形成工程は、前記卑金属層上に貴金属層を形成する工程をさらに含んでいてもよい。
本発明の圧電デバイスにおいて、前記密着層は、前記卑金属層上に形成される貴金属層をさらに含んで構成されていてもよい。
密着層を卑金属層と貴金属層との2層で構成することにより、密着層の卑金属層の表面の酸化を貴金属層で回避することができ、卑金属層と接合層とを酸化膜を介さずに接合することができる。しかも、密着層の卑金属層と貴金属層とは、金属結合によって接合強度が向上し、密着層の貴金属層と、接合層との接合は、ともに貴金属同士の接合となるため、貴金属材料が同一であっても異なっていても、高い接合強度を得ることができる。よって、卑金属層と接合層との接合強度を高めることができる。
本発明の圧電デバイスの製造方法において、前記金属ペーストおよび前記密着層の前記貴金属層は、金、白金、銀、パラジウムのいずれかの貴金属材料またはそれらの合金からなっていてもよい。
この場合、貴金属層によって、卑金属層と接合層との接合強度を高める効果を確実に得ることができる。
本発明の圧電デバイスの製造方法において、前記密着層を形成する前に、前記シリコン基板から前記圧電体、および前記圧電体から前記シリコン基板への原子の相互の拡散を阻止するバリア層を、前記シリコン基板上に形成するバリア層形成工程をさらに有していてもよい。
金属ペーストの焼成による熱処理時に、シリコン基板と圧電体との間で原子(例えばシリコン原子、鉛原子)が相互に拡散すると、シリコン基板の強度が低下したり、圧電体の特性が劣化する。しかし、上記のような原子の相互移動がバリア層によって阻止されるので、シリコン基板の強度低下および圧電体の特性劣化を回避することができる。
本発明の圧電デバイスの製造方法において、前記圧電体をエッチングすることによって形成される複数の素子が縦横に所定のピッチで並ぶように、前記圧電体をエッチングするエッチング工程をさらに有しており、前記圧電体配置工程では、前記シリコン基板上に前記圧電体を均等な隙間を介して複数並べて配置し、前記エッチング工程では、前記素子の縦のピッチの略整数倍および横のピッチの略整数倍が、1個の前記圧電体の縦および横の寸法とそれぞれ等しくなるように、前記複数の圧電体をエッチングすることが望ましい。
複数の圧電体を2次元的に配置して、複数の素子が縦横に所定のピッチで並ぶように各圧電体をエッチングする場合でも、エッチングにより形成された素子が、隣り合う2つの圧電体の境界をまたいで形成されることがなく、形成された素子を素子として確実に機能させることができる。
本発明の圧電デバイスの製造方法において、前記圧電体は、鉛系のペロブスカイト型化合物からなる圧電材料を含んでいてもよい。
圧電材料として、例えばチタンジルコン酸鉛(PZT)や、PZTにランタン、ニオブを加えたものを用いて圧電デバイスを製造する場合において、上述した本発明の効果を得ることができる。
本発明によれば、金属ペーストを焼成することによって接合層を形成し、この接合層によってシリコン基板と圧電体とを接合するので、接着剤を用いてシリコン基板と圧電体とを接合する場合のように、用途や製造プロセスに制約が生じるのを回避することができ、圧電デバイスの応用の自由度を増大させることができる。また、密着層によって接合層をシリコン基板に密着させることにより、接合層を介して接合される圧電体とシリコン基板との接合強度を向上させることができる。これにより、圧電体の伸縮動作によってシリコン基板と圧電体とが剥がれるのを確実に回避することができ、信頼性の高い圧電デバイスを実現することができる。
本発明の実施の一形態の製造方法によって製造される圧電デバイスの概略の構成を示す断面図である。 PZTの結晶構造を模式的に示す斜視図である。 上記圧電デバイスの応用例の一つであるインクジェットヘッドの概略の構成を示す断面図である。 実施例1に係る圧電デバイスの製造方法における製造の流れを、製造工程の断面図とともに示す説明図である。 実施例1に係る圧電デバイスの製造方法における製造の流れを、製造工程の断面図とともに示す説明図である。 実施例1に係る圧電デバイスの製造方法における製造の流れを、製造工程の断面図とともに示す説明図である。 実施例1に係る圧電デバイスの製造方法における製造の流れを、製造工程の断面図とともに示す説明図である。 上記圧電デバイスのシリコン基板上に圧電体を並べて配置した状態を示す平面図である。 上記圧電体をエッチングして形成される素子を拡大して示す平面図である。 実施例2に係る圧電デバイスの製造方法における製造の流れを、製造工程の断面図とともに示す説明図である。 実施例2に係る圧電デバイスの製造方法における製造の流れを、製造工程の断面図とともに示す説明図である。 実施例2に係る圧電デバイスの製造方法における製造の流れを、製造工程の断面図とともに示す説明図である。 実施例2に係る圧電デバイスの製造方法における製造の流れを、製造工程の断面図とともに示す説明図である。 実施例2に係る圧電デバイスの製造方法における製造の流れを、製造工程の断面図とともに示す説明図である。 実施例3に係る圧電デバイスの製造方法における製造の流れを、製造工程の断面図とともに示す説明図である。 実施例3に係る圧電デバイスの製造方法における製造の流れを、製造工程の断面図とともに示す説明図である。 実施例3に係る圧電デバイスの製造方法における製造の流れを、製造工程の断面図とともに示す説明図である。 実施例3に係る圧電デバイスの製造方法における製造の流れを、製造工程の断面図とともに示す説明図である。
本発明の実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
〔1.圧電デバイスの構成について〕
図1は、本実施形態の製造方法によって製造される圧電デバイス10の概略の構成を示す断面図である。この圧電デバイス10は、シリコン基板1と圧電体2とを接合層3を介して接合して構成されている。
シリコン基板1は、例えばSOI(Silicon on Insulator)基板を用いて形成されている。すなわち、このSOI基板は、シリコンからなる支持層1aと、酸化シリコンからなる絶縁酸化膜層(BOX層)1bと、シリコンからなる活性層1cとをこの順で積層して構成されている。そして、SOI基板の表面には、酸化シリコンからなる熱酸化膜1d・1eがそれぞれ形成されている。つまり、支持層1aにおける絶縁酸化膜層1bとは反対側の面に熱酸化膜1dが形成されており、活性層1cにおける絶縁酸化膜層1bとは反対側の面に熱酸化膜1eが形成されている。なお、SOI基板の代わりに、単結晶シリコン単体からなる半導体基板を用いてシリコン基板1を形成してもよい。
圧電体2は、電圧印加によって伸縮する圧電特性を有するものであり、圧電材料2aを2つの電極層2bで挟持して構成されている。各電極層2bは、例えば圧電材料2a側から、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、金(Au)の各層をイオンプレーティング法によって順に積層して形成されている。このうち、クロム、ニッケルの各層は、電極層2bを構成し、金の層は、電極層2bを構成している。なお、クロム、ニッケル、金の各膜厚は、例えば0.1〜0.2μm、0.25μm、0.2μmである。
圧電材料2aを後述するPZTで構成する場合は、電極層2bは、チタン(Ti)やジルコニウム(Zr)で構成されてもよい。チタンやジルコニウムは、PZTに含まれる元素と同じであるので、この場合は、圧電材料2aと電極層2bとの密着性を向上させることができる。
圧電材料2aとしては、本実施形態では、鉛系のペロブスカイト型化合物であるPZT(チタンジルコン酸鉛)を用いている。図2は、PZTの結晶構造を模式的に示す斜視図である。同図に示すように、Pb(Zr,Ti-)Oの正方晶では、正方晶の各頂点にPb原子が位置し、体心にTi原子またはZr原子が位置し、各面心にO原子が位置する構造を採る。このような結晶構造はペロブスカイト構造と呼ばれ、良好な圧電効果を発揮する。本実施形態では、鉛原子を有するペロブスカイト構造の化合物を圧電材料2aとして用いることで、圧電デバイスとしての特性向上を図っている。このような鉛系のペロブスカイト型化合物で構成される圧電材料2aとしては、例えば日本セラテック社製のD材を用いることができる。
なお、PZTのZr、Tiの元素をMg、Nbに置き換えたPMN(マグネシウムニオブ酸鉛)や、Znに置き換えたPZN(亜鉛ニオブ酸鉛)などの、いわゆるリラクサ材料を圧電材料2aとして用いることも勿論可能であり、この場合は、PZTよりもさらに大きな圧電特性を得ることができる。また、ランタン(La)を付加して鉛系のペロブスカイト型化合物を実現することも可能である。
接合層3は、シリコン基板1と圧電体2とを接合するための層であるが、本実施形態では、金属ペーストを焼成して固めることによって形成されている。金属ペーストとしては、例えば金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)のいずれかの貴金属材料またはそれらの合金を用いることができる。したがって、金属ペーストを焼成し、固めて接合層3を形成したときには、接合層3は貴金属で構成されることになる。
また、本実施形態では、シリコン基板1上に密着層4が形成されており、この密着層4を介して接合層3がシリコン基板1上に形成されている。密着層4は、接合層3をシリコン基板1に密着させるための層であり、卑金属層4aと貴金属層4bとで構成されている。
卑金属層4aは、例えばチタン(Ti)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、ジルコン(Zr)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)のいずれかの卑金属材料からなる層で形成されている。一般に、卑金属は、イオン化傾向が水素よりも大きく、酸化されやすい特性を持つ。
一方、貴金属層4bは、例えば金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)のいずれかの貴金属材料またはそれらの合金で構成されており、卑金属層4a上、すなわち、卑金属層4aと接合層3との間に形成されている。貴金属層4bは、接合層3として用いる金属ペーストと同一の貴金属材料で構成されてもよいし、異なる貴金属材料で構成されてもよい。一般に、貴金属は、イオン化傾向が水素よりも小さく、酸化されにくい特性を持つ。
なお、密着層4の膜厚が薄いと、密着層4の厚さの均一性が損なわれ、膜厚が厚いと、生産性が損なわれるため、卑金属層4aの膜厚は、例えば5nm〜100nmの範囲であることが望ましく、貴金属層4bの膜厚は、例えば50nm〜500nmの範囲であることが望ましい。また、密着層4は、少なくとも卑金属層4aを有していればよく、貴金属層4bを含んでいなくてもよい。
図3は、上記の圧電デバイス10の応用例の一つであるインクジェットプリンタ用ヘッド(インクジェットヘッド)の概略の構成を示す断面図である。同図に示すように、圧電デバイス10のシリコン基板1の熱酸化膜1dを除去し、フォトリソグラフィー技術により、支持層1aを所定のパターンでエッチングすることで、圧力室10aが形成されている。そして、シリコン基板1の支持層1aとガラス11、およびガラス11とシリコンからなるノズルプレート12とを400℃に加熱して陽極接合することで、インクジェットヘッドが形成される。
圧電体2におけるシリコン基板1とは反対側の電極層2bは、上部電極を構成し、圧電体2におけるシリコン基板1側の電極層2b、接合層3、密着層4は下部電極を構成する。これらの上部電極および下部電極は、図示しない配線により、外部の制御回路と接続されている。
制御回路から、上部電極および下部電極に電気信号を印加することにより、圧電体2を駆動することができる。つまり、上部電極および下部電極に所定の電界を加えると、圧電体2が左右方向に伸縮し、バイメタルの効果によって圧電体2およびシリコン基板1の活性層1cが上下に湾曲する。これにより、シリコン基板1に形成された圧力室10a内に充填されたインクを、ノズルプレート12から外部に吐出させることができる。
なお、圧電体2の電荷量を上部電極および下部電極を介して検出することにより、圧電体2の変形量を検出することができるので、この場合は、圧電デバイス10をセンサとして用いることもできる。つまり、音波や超音波により、圧電体2が振動することによって上下の電極間に電界が発生するため、このときの電界の大きさや検出信号の周波数を検出することにより、圧電デバイス10をセンサとして用いることができる。
〔2.圧電デバイスの製造方法について〕
次に、上記した圧電デバイス10の製造方法について、実施例1〜3として説明する。また、実施例1〜3との比較のため、比較例1〜3についても説明する。
(実施例1)
図4〜図7は、実施例1に係る圧電デバイス10の製造方法における製造の流れを、製造工程の断面図とともに示す説明図である。まず、図4に示すように、直径が例えば3インチのSOI基板の表面を加熱し、支持層1aにおける絶縁酸化膜層1bとは反対側の面に、膜厚が例えば0.2μmの熱酸化膜1dを形成し、活性層1cにおける絶縁酸化膜層1bとは反対側の面に、膜厚が例えば0.2μmの熱酸化膜1eを形成する(S1;熱酸化膜形成工程)。
このときのSOI基板の支持層1aの厚さは、例えば400μmであり、絶縁酸化膜層1bの厚さは例えば0.2μmであり、活性層1cの厚さは例えば2μmである。なお、SOI基板の表面に予め熱酸化膜1d・1eが形成されたものを用いてもよく、この場合は、S1の工程を省略することができる。
続いて、熱酸化膜1e上にチタンをスパッタし、密着層4の卑金属層4aを例えば50nmの膜厚で形成する(S2;密着層形成工程)。さらに、卑金属層4a上に、金をスパッタし、密着層4の貴金属層4bを例えば200nmの膜厚で形成する(S3;密着層形成工程)。なお、S3の工程を省略して、密着層4を卑金属層4aのみで構成してもよい。そして、ろう材3a(金属ペースト)として金ペースト(田中貴金属社製 TR−1301)を用い、バーコーターもしくはスクリーン印刷機にて、密着層4の上にろう材3aを約2μmの厚さとなるように塗布する(S4;金属ペースト塗布工程)。
次に、PZTからなる圧電材料2aの両面に電極層2b・2bを順に形成したチップ状の圧電体2を、ろう材3a上に2次元的に並べて配置して、基板全面に密に貼り付けた後、プレス機で3MPaの圧力を加えて、圧電体2をろう材3aに密着させる(S5;圧電体配置工程)。ちなみに、図8は、シリコン基板1上に圧電体2を2次元的に並べて配置した状態を示している。このように、複数の圧電体2をシリコン基板1上に密に配置する。なお、圧電体2は、例えば縦10mm、横10mm、厚さ0.1mmの大きさに切り出されている。
なお、圧電体2としては、PZTからなる圧電材料2aの両面に、チタンをスパッタして電極層2b(例えば膜厚50nm)を形成し、その上に金をスパッタして電極層2b(例えば膜厚100nm)を形成したものを用いた。
次に、図5に示すように、約100℃で約1時間の乾燥により、シリコン基板1上に圧電体2を仮固定する(S6;乾燥工程)。続いて、850℃で30分の加熱により、ろう材3aを焼成し、これを固めることによって接合層3aを形成し、この接合層3aによってシリコン基板1と圧電体2とを接合する(S7;接合工程)。焼成後は、圧電体2の電極層2bを構成する金と、ろう材3aの焼成によって固まる金(接合層3aの金)と、密着層4の貴金属層4bを構成する金とが一体的に接着する。
続いて、圧電体2の表面にワックス5を塗布し、圧電体2の端部および隣り合う圧電体2の隙間をワックス5で埋める(S8;ワックス塗布工程)。そして、この状態で(隙間をワックス5で埋めたまま)、圧電体2を厚さが例えば20μmとなるように研磨する(S9;圧電体研磨工程)。圧電体2を研磨するのは、デバイスの薄型化のためと、圧電体2を薄型化したほうが圧電体2の伸縮による変位量が増大し、圧電特性が向上するからである。
そして、図6に示すように、ワックス5を残したまま、圧電体2(圧電材料2a)の表面にチタンをスパッタして、電極層2bを例えば膜厚50nmで形成し(S10;電極層形成工程)、さらにその上に金をスパッタして電極層2bを例えば膜厚100nmで形成する(S11;電極層形成工程)。これらの電極層2b・2bは、アクチュエータの上部電極となる。
その後、ワックス5を除去する(S12;ワックス除去工程)。このとき、ワックス5の上部に位置する電極層2b・2bは、膜厚が薄いため、ワックス5の除去と同時に除去される。そして、下部電極を構成する接合層3aと上部電極との間に電圧を印加し、PZTの分極を行う。
次に、圧電体2の表面にレジスト6を塗布し(S13;レジスト塗布工程)、その後、図7に示すように、レジスト6をパターニングする(S14;レジストパターニング工程)。続いて、パターニングしたレジスト6をマスクとして、圧電体2の上部電極(電極層2b・2b)を所定のパターンでドライエッチングし(S15;電極パターニング工程)、さらに、同じレジストをマスクとして、圧電材料2aを所定のパターンでウェットエッチングする(S16;圧電体パターニング工程)。なお、S13〜S16の工程をまとめて、圧電体2のエッチング工程と呼ぶこともできる。なお、圧電材料2aをエッチングした後、さらに圧電材料2aの下方の電極層2b・2bを同じレジストをマスクとしてエッチングしてもよい。最後に、レジスト6を除去する(S17;レジスト除去工程)。これにより、複数の圧電デバイス10が完成する。
ところで、上述したS13〜S16の圧電体2のエッチング工程においては、圧電体2をエッチングする際に、シリコン基板1上に貼り付ける圧電体2の大きさと、エッチングにより形成される素子の大きさとを考慮してエッチングを行う必要がある。以下、この点について説明する。
図9は、圧電体2をエッチングして形成される素子20を拡大して示す平面図である。1つの素子20は、複数(図9では例えば5つ)の圧電デバイス10の集合で構成されている。S5において、シリコン基板1上に複数の圧電体2が均等な隙間Sを介して2次元的に並べて配置されている場合、S13〜S16のエッチング工程では、圧電体2をエッチングすることによって形成される複数の素子20が縦方向および横方向に所定のピッチで並ぶように、圧電体2をエッチングする。
このとき、素子20の縦方向の形成ピッチの略整数倍および横方向の形成ピッチの略整数倍が、1個の圧電体2の縦方向および横方向の寸法とそれぞれ等しくなるように、複数の圧電体2をエッチングする。図9では、複数の素子20が、縦方向に約5mmのピッチで形成されており、横方向に約3.3mmのピッチで形成されている。1個の圧電体2の縦方向および横方向の寸法がそれぞれ10mmであることを考慮すると、素子20の縦方向の形成ピッチの整数倍(ここでは2倍)および横方向の形成ピッチの整数倍(ここでは3倍)が、1個の圧電体2の縦方向および横方向の寸法とほぼ等しいと言える。
このように、複数の圧電体2をエッチングすることにより、エッチングによって形成された素子20が、隣り合う2つの圧電体2の境界(隙間S)をまたいで形成されることがないため、全ての素子20を確実に動作させることができる。
(比較例1)
比較例1では、実施例1の密着層形成工程(S2、S3)を省略し、密着層4(卑金属層4a、貴金属層4b)を形成することなく、シリコン基板1と圧電体2とを金属ペースト(金ペースト)を用いて接合した。それ以外については、実施例1と同様である。
(実施例2)
図10〜図14は、実施例2に係る圧電デバイス10の製造方法における製造の流れを、製造工程の断面図とともに示す説明図である。実施例2では、実施例1のS1〜S4の各工程を、S1−1、S1−2、S2、S3−1、S3−2、S4−1に置き換え、それ以外については実施例1と同様の工程により、圧電デバイス10を製造している。以下、実施例1と異なる部分のみ説明する。
まず、図10に示すように、直径が例えば3インチのSOI基板の表面を加熱し、支持層1aにおける絶縁酸化膜層1bとは反対側の面に、膜厚が例えば0.2μmの熱酸化膜1dを形成し、活性層1cにおける絶縁酸化膜層1bとは反対側の面に、膜厚が例えば0.2μmの熱酸化膜1eを形成する(S1−1;熱酸化膜形成工程)。
続いて、熱酸化膜1e上に、バリア層7を形成する(S1−2;バリア層形成工程)。より詳しくは、熱酸化膜1e上に、酸化アルミニウム(Al)からなる第1のバリア層7aを膜厚例えば0.2μmで形成し、さらに、その上に酸化チタン(TiO)からなる第2のバリア層7bを膜厚例えば0.1μmで形成する。このバリア層7は、
その後の熱処理時(例えば金属ペーストの焼成時)において、シリコン基板1から圧電体2へのシリコン原子の拡散(移動)、および圧電体2からシリコン基板1への鉛原子の拡散を阻止するためのものである。
次に、バリア層7の表面にチタンをスパッタし、密着層4の卑金属層4aを例えば50nmの膜厚で形成する(S2;密着層形成工程)。さらに、卑金属層4a上に、白金をスパッタし、密着層4の貴金属層4bを例えば100nmの膜厚で形成する(S3−1;密着層形成工程)。
一方、図11に示すように、PZTからなる圧電材料2aの両面に電極層2b・2bを順に形成したチップ状の圧電体2の一方の面(シリコン基板1との接合側の電極層2bの表面)には、白金をスパッタして、密着層2cを形成する(S3−2;密着層形成工程)。
次に、ろう材3bとして白金ペースト(田中貴金属社製 TR−7905)を用い、バーコーターもしくはスクリーン印刷機にて、密着層4(貴金属層4b)の上にろう材3bを約1μmの厚さとなるように塗布する(S4−1;金属ペースト塗布工程)。
その後は、実施例1のS5以降と同様の工程を行うが、本実施例では、金属ペーストして白金ペーストを用いているため、S7の接合工程では、焼成温度を1050℃とする。つまり、1050℃で30分の加熱により、ろう材3bを焼成し、これを固めることによって接合層3bを形成し、この接合層3bによってシリコン基板1と圧電体2とを接合する(S7;接合工程)。焼成後は、圧電体2の密着層2cを構成する白金と、ろう材3bの焼成によって固まる白金(接合層3bの白金)と、密着層4の貴金属層4bを構成する白金とが一体的に接着する。
(比較例2)
比較例2では、実施例2の密着層形成工程(S2、S3−1)を省略し、密着層4(卑金属層4a、貴金属層4b)を形成することなく、シリコン基板1と圧電体2とを金属ペースト(白金ペースト)を用いて接合した。それ以外については、実施例2と同様である。
(実施例3)
図15〜図18は、実施例3に係る圧電デバイス10の製造方法における製造の流れを、製造工程の断面図とともに示す説明図である。実施例3では、実施例1のS4の工程を、S4−2に置き換え、それ以外については実施例1と同様の工程により、圧電デバイス10を製造している。以下、実施例1と異なる部分のみ説明する。
S2にて、熱酸化膜1e上にチタンをスパッタし、密着層4の卑金属層4aを例えば50nmの膜厚で形成し、S3にて、卑金属層4a上に、金をスパッタし、密着層4の貴金属層4bを例えば200nmの膜厚で形成した後、ろう材3cとして銀パラジウムペースト(田中貴金属社製 TR−4865P)を用い、バーコーターもしくはスクリーン印刷機にて、密着層4(貴金属層4b)の上にろう材3cを約3μmの厚さとなるように塗布する(S4−2;金属ペースト塗布工程)。
その後は、実施例1のS5以降と同様の工程を行うが、本実施例では、金属ペーストして銀パラジウムペーストを用いているため、S7の接合工程では、焼成時間を60分とする。つまり、850℃で60分の加熱により、ろう材3cを焼成し、これを固めることによって接合層3cを形成し、この接合層3cによってシリコン基板1と圧電体2とを接合する(S7;接合工程)。焼成後は、圧電体2の電極層2bを構成する金と、ろう材3cの焼成によって固まる銀パラジウム合金(接合層3cの銀パラジウム合金)と、密着層4の貴金属層4bを構成する金とが一体的に接着する。
(比較例3)
比較例3では、実施例3の密着層形成工程(S2、S3)を省略し、密着層4(卑金属層4a、貴金属層4b)を形成することなく、シリコン基板1と圧電体2とを金属ペースト(銀パラジウムペースト)を用いて接合した。それ以外については、実施例3と同様である。
〔3.接合強度について〕
次に、実施例1〜3、比較例1〜3の製法によって製造された圧電デバイスの接合強度を調べた。接合強度の測定方法は、以下の通りである。
各実施例および各比較例ともに、測定用サンプルとして、圧電体2のエッチングによるパターニング前の状態、すなわち、S12の状態で、圧電体2に沿って縦10mm、横10mmの大きさに切り出したものを準備した。そして、シリコン基板1側および圧電体2側をそれぞれ、接着剤で鉄板と接着した。各鉄板には、クランプ(つなぎ金具)が取り付けられるように穴が開いており、クランプを介して各鉄板を互いに反対方向に引っ張り、シリコン基板1と圧電体2とが剥がれたときの力の大きさから、接合強度を求めた。なお、接着剤の接合強度は、シリコン基板1と圧電体2の接合強度よりも大きくなるように選定した。表1は、各実施例1および各比較例の測定用サンプル(圧電デバイス)の接合強度を示している。
Figure 0005682216
表1より、実施例1〜3の圧電デバイスでは、比較例1〜3に比べて接合強度が格段に高いことがわかる。一方、比較例1〜3の圧電デバイスでは、接合強度が低いため、引っ張り方向の力を加えたときに、実施例1〜3のものよりも早く剥がれてしまうことが確認された。
〔4.まとめ〕
以上のように、本実施形態の製法によれば、シリコン基板1と圧電体2とは、金属ペーストを焼成することによって形成される接合層3(接合層3a・3b・3c)で接合され、接着剤を用いずに圧電デバイス10が製造されるので、この圧電デバイス10とガラス11とを高温環境となる陽極接合を用いて接合してインクジェットヘッドを作製することができ、圧電デバイス10をインクジェットヘッドに適用することが可能となる。したがって、圧電デバイス10の用途に制約が生じることがなく、また製造プロセスの制約もないので(陽極接合以外の接合方法を用いなくても済むので)、圧電デバイス10の応用の自由度を増大させることができる。
また、上述した実施例と比較例との結果から、シリコン基板1上に密着層4を形成し、接合層3を密着層4によってシリコン基板1に密着させることにより、接合層3とシリコン基板1との接合強度が向上し、接合層3を介して接合される圧電体2とシリコン基板1との接合強度が向上すると言える。したがって、本実施形態のように、シリコン基板1と圧電体2とを金属ペーストを用いて接合する場合でも、両者が剥がれるのを確実に回避することができ、信頼性の高い圧電デバイス10を実現することができる。
また、シリコン基板1の熱酸化膜1eは酸化シリコンであるが、この酸化シリコン上に卑金属層4aを形成すると、卑金属が酸化シリコンとの界面で酸化物を形成し、酸素を介して酸化シリコンと卑金属酸化物とが結合し、卑金属酸化物と卑金属とが同元素で結合する。これにより、卑金属層4aとシリコン基板1との密着性を向上させることができる。また、貴金属からなる接合層3と密着層4の卑金属層4aとは、貴金属層4bがあってもなくても、金属結合による自由電子の共有によって密着するため、その密着性も向上させることができる。したがって、密着層4として少なくとも卑金属層4aを形成することにより、卑金属層4aを介してシリコン基板1および接合層3との接合強度を確実に向上させることができ、接合層3を介して接合されるシリコン基板1と圧電体2との接合強度を確実に向上させることができる。
特に、卑金属層4aを、チタン、ニッケル、クロム、ジルコン、亜鉛、マンガンのいずれかの卑金属材料で構成することにより、シリコン基板1および接合層3の両者に対する卑金属層4aの密着性を確実に向上させることができる。
また、密着層4の卑金属層4aは酸化されやすいが、密着層4を卑金属層4aと貴金属層4bとの2層で構成することにより、卑金属層4aを形成した後の表面の酸化を、貴金属層4bで回避することができ、卑金属層4aと接合層3とを酸化膜を介さずに接合することができる。しかも、卑金属層4aと貴金属層4bとは、金属結合で接合されるので、接合強度が向上する。また、貴金属層4bと接合層3との接合は、ともに貴金属同士の接合となるため、貴金属材料が同一である場合は勿論のこと、異なっていても、格子定数に差がほとんどなく、物理的、化学的特性もほとんど同じであるので、高い接合強度を得ることができる。よって、貴金属層4bを形成することにより、卑金属層4aと接合層3との接合強度を高めることができる。
特に、接合層3を構成する金属ペーストおよび密着層4の貴金属層4bが、金、白金、銀、パラジウムのいずれかの貴金属材料またはそれらの合金からなっていれば、貴金属層4bによって、卑金属層4aと接合層3との接合強度を高める効果を確実に得ることができる。
また、実施例2のように、シリコン基板1上にバリア層7(第1のバリア層7a、第2のバリア層7b)を形成してから密着層4を形成することにより、その後の金属ペーストの焼成等の熱処理時に、シリコン基板1から圧電体2へのシリコン原子の拡散、および圧電体2からシリコン基板1への鉛原子の拡散を阻止することができる。これにより、シリコン基板1の強度低下や、圧電体2の特性劣化を回避することができる。
〔5.補足〕
本実施形態では、密着層4(卑金属層4a、貴金属層4b)をスパッタによって形成しているが、メッキで形成してもよい。例えば、無電解メッキにより、ニッケル等を膜厚5nm〜100nmで形成して卑金属層4aを形成した後に、金、白金等の貴金属を電解メッキにより膜厚50nm〜500nmで形成して貴金属層4bを形成してもよい。なお、電解メッキによって貴金属層4bを厚く形成すると、自身の膜応力のため剥がれやすくなってしまうため、適当な厚さで貴金属層4bを形成することが必要である。メッキは安価で行うことができるので、メッキによって密着層4を形成することにより、圧電デバイス10の製造コストを低減することができる。
なお、メッキでも特に無電解メッキは、酸やアルカリの溶液を用いて行われるため、例えば圧電体2側の電極層2bをメッキで形成すると、圧電体2にダメージを与えるおそれがある。したがって、密着層4の卑金属層4a(例えばニッケル)はメッキで形成してもよいが、電極層2b(例えばチタン)はスパッタで形成するほうが望ましい。
なお、ニッケルは磁性体であるため、ニッケルを用いてスパッタを行う場合は、スパッタ装置のマグネットを強化するなどの工夫が必要となる。このため、スパッタは、ニッケル以外の金属材料を用いて金属層を形成する場合に好適となる。
なお、接合層3の厚さは、例えば0.5μm〜50μmの範囲であることが望ましい。この厚さの範囲であれば十分な接合強度が得られる。接合層3を上記範囲よりも厚くする場合、特に接合強度については問題ないが、接合層3を構成するための金属ペーストのコストが上昇するため、現実的ではなくなる。
なお、金属ペーストはペースト状であり、重力によるダレが生じることを考えると、接合層3の厚さを25μm以下とする場合は、シリコン基板1側に金属ペーストを塗布した後、上方から圧電体2を貼り合わせることが望ましい。また、接合層3の厚さを25μmよりも厚くする場合は、シリコン基板1側に所望の厚さまで金属ペーストの重ね塗りを行うか、または圧電体2側およびシリコン基板1側のそれぞれに金属ペーストを塗布した後、速やかに両者を接合することが望ましい。
なお、金属ペーストとしては、該金属ペーストの焼成温度が、用いる圧電材料の焼成温度よりも低いものを用いることが望ましい。例えば圧電材料がPZTの場合、PZTの焼成温度は1150℃であるので、金属ペーストとしては、本実施形態で示したように、焼成温度が850℃である金や銀パラジウム、焼成温度が1050℃である白金が好適となる。
本発明は、例えばインクジェットヘッドの振動板をはじめ、MEMS用アクチュエータ(特にマイクロミラーデバイス)、pMUT(Piezo-electric Micromachined Ultrasonic Transducer)などに利用可能である。
1 シリコン基板
1e 熱酸化膜
2 圧電体
3 接合層
3a 接合層
3b 接合層
3c 接合層
3a ろう材(金属ペースト)
3b ろう材(金属ペースト)
3c ろう材(金属ペースト)
4 密着層
4a 卑金属層
4b 貴金属層
7 バリア層
10 圧電デバイス
20 素子

Claims (11)

  1. シリコン基板と圧電体とを接合層を介して接合してなる圧電デバイスの製造方法であって、
    前記シリコン基板上に、前記接合層を密着させるための密着層を形成する密着層形成工程と、
    前記密着層上に、金属ペーストを介して前記圧電体を配置する圧電体配置工程と、
    前記金属ペーストを焼成して固めることによって前記接合層を形成し、該接合層によって前記シリコン基板と前記圧電体とを接合する接合工程とを有しており、
    前記接合工程では、前記金属ペーストとして貴金属のペースト材料を用いて前記接合層を形成し、
    前記密着層形成工程は、卑金属層を形成する工程と、前記卑金属層上に貴金属層を形成する工程とを含んでいることを特徴とする圧電デバイスの製造方法。
  2. 前記シリコン基板は、単結晶シリコン単体からなる半導体基板またはSOI基板の表面に熱酸化膜を形成して構成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電デバイスの製造方法。
  3. 前記卑金属層は、チタン、ニッケル、クロム、ジルコンのいずれかの卑金属材料からなる層を含んでいることを特徴とする請求項1または2に記載の圧電デバイスの製造方法。
  4. 前記金属ペーストおよび前記密着層の前記貴金属層は、金、白金、銀、パラジウムのいずれかの貴金属材料またはそれらの合金からなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の圧電デバイスの製造方法。
  5. 前記密着層を形成する前に、前記シリコン基板から前記圧電体、および前記圧電体から前記シリコン基板への原子の相互の拡散を阻止するバリア層を、前記シリコン基板上に形成するバリア層形成工程をさらに有していることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の圧電デバイスの製造方法。
  6. 前記圧電体をエッチングすることによって形成される複数の素子が縦横に所定のピッチで並ぶように、前記圧電体をエッチングするエッチング工程をさらに有しており、
    前記圧電体配置工程では、前記シリコン基板上に前記圧電体を均等な隙間を介して複数並べて配置し、
    前記エッチング工程では、前記素子の縦のピッチの略整数倍および横のピッチの略整数倍が、1個の前記圧電体の縦および横の寸法とそれぞれ等しくなるように、前記複数の圧電体をエッチングすることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の圧電デバイスの製造方法。
  7. 前記圧電体は、鉛系のペロブスカイト型化合物からなる圧電材料を含んでいることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の圧電デバイスの製造方法。
  8. シリコン基板と圧電体とを接合層を介して接合してなる圧電デバイスであって、
    前記接合層は、金属ペーストを焼成して固めることによって形成されており、
    前記接合層を前記シリコン基板に密着させるための密着層が、前記シリコン基板上に形成されており、
    前記接合層は、貴金属で構成されており、
    前記密着層は、卑金属層と、前記卑金属層上に形成される貴金属層とを含んで構成されていることを特徴とする圧電デバイス。
  9. 前記シリコン基板は、単結晶シリコン単体からなる半導体基板またはSOI基板の表面に熱酸化膜を形成して構成されていることを特徴とする請求項8に記載の圧電デバイス。
  10. 前記卑金属層は、チタン、ニッケル、クロム、ジルコンのいずれかの卑金属材料からなる層を含んでいることを特徴とする請求項8または9に記載の圧電デバイス。
  11. 前記金属ペーストおよび前記密着層の前記貴金属層は、金、白金、銀、パラジウムのいずれかの貴金属材料またはそれらの合金からなることを特徴とする請求項8から10のいずれかに記載の圧電デバイス。
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