JP2008078328A - アクチュエータ装置の製造方法及びアクチュエータ装置並びに液体噴射ヘッド - Google Patents
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Abstract
【課題】圧電特性が良好なアクチュエータ装置の製造方法及びアクチュエータ装置並びに液体噴射ヘッドを提供する。
【解決手段】基板上に下地層を形成する工程と、前記下地層上に下電極60を形成する工程と、前記下電極上に圧電体前駆体膜71を形成し、結晶化させて第1の圧電体膜72を形成する工程と、前記下電極60及び前記第1の圧電体膜72を所定形状にパターニングする工程と、前記下地層の少なくとも前記下電極60の端部の外側の前記圧電体層70が設けられる領域に前記圧電体層70の結晶の核となる種物質イオン61を打ち込む工程と、前記第1の圧電体膜72及び前記下地層の前記種物質イオン61が打ち込まれた領域に圧電体前駆体膜を形成し、結晶化させて第2の圧電体膜73を形成し、前記第1の圧電体膜72と前記第2の圧電体膜73とからなる前記圧電体層70を形成する工程と、前記圧電体層70上に前記上電極を形成する工程とを有する。
【選択図】図6
【解決手段】基板上に下地層を形成する工程と、前記下地層上に下電極60を形成する工程と、前記下電極上に圧電体前駆体膜71を形成し、結晶化させて第1の圧電体膜72を形成する工程と、前記下電極60及び前記第1の圧電体膜72を所定形状にパターニングする工程と、前記下地層の少なくとも前記下電極60の端部の外側の前記圧電体層70が設けられる領域に前記圧電体層70の結晶の核となる種物質イオン61を打ち込む工程と、前記第1の圧電体膜72及び前記下地層の前記種物質イオン61が打ち込まれた領域に圧電体前駆体膜を形成し、結晶化させて第2の圧電体膜73を形成し、前記第1の圧電体膜72と前記第2の圧電体膜73とからなる前記圧電体層70を形成する工程と、前記圧電体層70上に前記上電極を形成する工程とを有する。
【選択図】図6
Description
本発明は、振動板上に、下電極、圧電材料からなる圧電体層及び上電極で構成される圧電素子を有するアクチュエータ装置の製造方法及びアクチュエータ装置並びに液体噴射ヘッドに関する。
アクチュエータ装置に用いられる圧電素子としては、電気機械変換機能を呈する圧電材料、例えば、結晶化した圧電性セラミックス等からなる圧電体層を、下電極と上電極との2つの電極で挟んで構成されたものがある。このようなアクチュエータ装置は、一般的に、撓み振動モードのアクチュエータ装置と呼ばれ、例えば、液体噴射ヘッド等に搭載されて使用されている。なお、液体噴射ヘッドの代表例としては、例えば、インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させて圧力発生室のインクを加圧してノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッド等がある。また、インクジェット式記録ヘッドに搭載されるアクチュエータ装置としては、例えば、振動板の表面全体に亘って成膜技術により均一な圧電材料層を形成し、この圧電材料層をリソグラフィ法により圧力発生室に対応する形状に切り分けて圧力発生室毎に独立するように圧電素子を形成したものがある。
このようなアクチュエータ装置を製造する方法として、例えば、以下のようなものがある。まず、基板上に振動板を構成する絶縁体膜等の下地層を形成した後、スパッタリング法等で下電極膜を形成し、この下電極膜上に圧電材料を塗布して圧電体前駆体膜を形成して焼成して第1の圧電体膜を形成した後、下電極膜と第1の圧電体膜をフォトリソグラフィ工程によりパターニングする。その後、第1の圧電体膜及び下地層上に圧電体膜を結晶化する際の核となる種チタンをスパッタリング法で形成する。この後、種チタン上に圧電材料を塗布して圧電体前駆体膜を形成して焼成する工程を繰り返して第2の圧電体膜を形成し、第1の圧電体膜と第2の圧電体膜とからなる圧電体層を形成する。そして、圧電体層上に上電極としてPt、Ir等をスパッタリング法で形成してパターニングすることにより、基板上に設けられた下地層と、該下地層上に設けられた下電極と該下電極上に下電極の端部の外側まで設けられた圧電体層と該圧電体層上に設けられた上電極とからなる圧電素子とを有するアクチュエータ装置を製造する方法が提案されている(特許文献1及び2参照)。
特開2005−035282号公報(請求項4、段落番号[0049]、[0038]等)
特開2006−144090号公報(段落番号[0039]、[0034]等)
上記の製造方法では、下電極膜と第1の圧電体膜をパターニングした後、第1の圧電体膜及びパターニングにより露出した下地層上にスパッタリング法でチタン膜を形成し、このチタン膜上に圧電体前駆体膜が形成されているため、第2の圧電体膜はチタンを核として結晶を成長させて形成することができる。したがって、下地層上に形成される第2の圧電体膜の結晶は微細なものとなり、クラックの発生が防止される。すなわち、下電極膜と第1の圧電体膜をパターニングした後、パターニングにより露出した下地層上に圧電体前駆体膜を直接設けた場合、第2の圧電体膜は結晶成長する際の核となる種チタンが存在しないため結晶の粒径が大きくなりクラックが発生する恐れがあるが、上記の方法では、このような問題は発生しない。
しかしながら、このチタン膜はスパッタリング法で形成されているため、下電極上に形成された第1の圧電体膜上にもチタン膜が形成されてしまい、第1の圧電体膜上に直接第2の圧電体膜を形成した場合に比べて、第1の圧電体膜上のチタン膜上に形成される第2の圧電体膜は結晶性が乱れてしまうため、十分な圧電特性が得られ難いという問題があった。
なお、下電極膜と第1の圧電体膜をパターニングした後に、当該パターニングに用いたレジストをマスクとして、第1の圧電体膜及び下地層上にチタン膜をスパッタリング法で形成し、その後、レジストと共に第1の圧電体膜上のチタン膜を除去する方法(リフトオフ)も考えられる。しかしながら、この方法では、スパッタリングで形成されたチタン膜により、レジストがはがれ難くなるという問題や、レジストが存在する状態でスパッタリングすることによりレジストが飛散し装置内が汚れてしまい清掃が必要になる等の不具合が生じてしまうという問題がある。
また、アクチュエータ装置を駆動してたわみ変形させた際に、圧電体層と下地層とが確実に剥れないようにするため、圧電体層と下地層との密着性も求められている。
勿論、このような問題は、インクジェット式記録ヘッド等の液体噴射ヘッドに搭載されるアクチュエータ装置だけでなく、他の装置に搭載されるアクチュエータ装置においても同様に存在する。
本発明は、下地層上は結晶が微細で且つ下電極上は結晶性に優れ、また下地層との密着性に優れた圧電体層を有し圧電特性が良好なアクチュエータ装置の製造方法及びアクチュエータ装置並びに液体噴射ヘッドを提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、基板の一方面側に設けられ振動板を構成する下地層と、該下地層上に設けられた下電極と該下電極上に当該下電極の端部の外側まで設けられた圧電体層と該圧電体層上に設けられた上電極とからなる圧電素子とを有するアクチュエータ装置の製造方法であって、前記基板上に前記下地層を形成する工程と、前記下地層上に前記下電極を形成する工程と、前記下電極上に圧電体前駆体膜を形成すると共に該圧電体前駆体膜を焼成して結晶化させて第1の圧電体膜を形成する工程と、前記下電極及び前記第1の圧電体膜を所定形状にパターニングする工程と、前記下地層の少なくとも前記下電極の端部の外側の前記圧電体層が設けられる領域に前記圧電体層の結晶の核となる種物質イオンを打ち込む工程と、前記第1の圧電体膜及び前記下地層の前記種物質イオンが打ち込まれた領域に圧電体前駆体膜を形成すると共に該圧電体前駆体膜を焼成して結晶化させて第2の圧電体膜を形成し、前記第1の圧電体膜と前記第2の圧電体膜とからなる前記圧電体層を形成する工程と、前記圧電体層上に前記上電極を形成する工程とを有することを特徴とするアクチュエータ装置の製造方法にある。
かかる第1の態様では、下地層上に形成される第2の圧電体膜は、種物質イオンを核として結晶を成長させて形成することができるため、結晶の粒径が微細で均一な圧電体膜を形成することができ、クラックの発生を防止できる。また、第1の圧電体膜上に形成される第2の圧電体膜は、第1の圧電体膜の結晶を核として結晶を成長させて形成することができるため、例えば、配向度、強度、粒径等の結晶性が良好になる。従って、圧電特性に優れたアクチュエータ装置を製造できる。また、下地層と下地層上に設けられた第2の圧電体膜とは、種物質イオンによりイオン結合することができ、また、種物質イオンは下地層の内部に形成されるため、圧電体前駆体膜を焼成して結晶化させる際の熱で当該圧電体層に拡散することなく、圧電体層と下地層との密着性が優れたアクチュエータ装置を製造できる。
かかる第1の態様では、下地層上に形成される第2の圧電体膜は、種物質イオンを核として結晶を成長させて形成することができるため、結晶の粒径が微細で均一な圧電体膜を形成することができ、クラックの発生を防止できる。また、第1の圧電体膜上に形成される第2の圧電体膜は、第1の圧電体膜の結晶を核として結晶を成長させて形成することができるため、例えば、配向度、強度、粒径等の結晶性が良好になる。従って、圧電特性に優れたアクチュエータ装置を製造できる。また、下地層と下地層上に設けられた第2の圧電体膜とは、種物質イオンによりイオン結合することができ、また、種物質イオンは下地層の内部に形成されるため、圧電体前駆体膜を焼成して結晶化させる際の熱で当該圧電体層に拡散することなく、圧電体層と下地層との密着性が優れたアクチュエータ装置を製造できる。
本発明の第2の態様は、前記種物質イオンが、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)、鉛(Pb)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、リン(P)、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)から選択される少なくとも一種のイオンであることを特徴とする第1の態様のアクチュエータ装置の製造方法にある。
かかる第2の態様では、下地層上に形成される第2の圧電体膜は、所定の種物質イオンを核として結晶を成長させて形成することができるため、結晶の粒径が微細で均一な圧電体膜を形成できる。また、下電極と第2の圧電体膜とは、所定の種物質イオンのイオン結合により密着性が良好になる。
かかる第2の態様では、下地層上に形成される第2の圧電体膜は、所定の種物質イオンを核として結晶を成長させて形成することができるため、結晶の粒径が微細で均一な圧電体膜を形成できる。また、下電極と第2の圧電体膜とは、所定の種物質イオンのイオン結合により密着性が良好になる。
本発明の第3の態様は、前記下電極及び前記第1の圧電体膜を所定形状にパターニングする工程では、前記第1の圧電体膜上に設けられた所定形状のパターンを有するレジストをマスクとしてエッチングすることにより所定形状にパターニングすると共に、前記種物質イオンを打ち込む工程では前記レジストをマスクとして前記下地層に当該種物質イオンを打ち込むことを特徴とする第1又は2の態様のアクチュエータ装置の製造方法にある。
かかる第3の態様では、新たなレジストを形成することなく、下電極及び第1の圧電体膜を所定形状にパターニングする際のレジストをマスクとすることで、選択的に下地層の圧電体層が形成される領域に、容易に種物質イオンを打ち込むことができる。
かかる第3の態様では、新たなレジストを形成することなく、下電極及び第1の圧電体膜を所定形状にパターニングする際のレジストをマスクとすることで、選択的に下地層の圧電体層が形成される領域に、容易に種物質イオンを打ち込むことができる。
本発明の第4の態様は、前記第1の圧電体膜を形成する工程では、前記下電極上に種チタン層を設け、該種チタン層上に前記第1の圧電体膜を形成することを特徴とする第1〜3の何れかの態様のアクチュエータ装置の製造方法にある。
かかる第4の態様では、第1の圧電体膜は種チタン層のチタン結晶を核として結晶を成長させて形成することができるため、第1の圧電体膜の結晶性を確実に良好にすることができる。したがって、その上に設ける第2の圧電体膜の結晶性も第1の圧電体膜の良好な結晶性を引き継いで確実に良好になり、圧電特性に優れたアクチュエータ装置を製造できる。
かかる第4の態様では、第1の圧電体膜は種チタン層のチタン結晶を核として結晶を成長させて形成することができるため、第1の圧電体膜の結晶性を確実に良好にすることができる。したがって、その上に設ける第2の圧電体膜の結晶性も第1の圧電体膜の良好な結晶性を引き継いで確実に良好になり、圧電特性に優れたアクチュエータ装置を製造できる。
本発明の第5の態様は、前記下地層を形成する工程では、前記圧電体層側の表層に酸化膜を形成することを特徴とする第1〜4の何れかの態様のアクチュエータ装置の製造方法にある。
かかる第5の態様では、下地層の圧電体層側の表層に振動板や絶縁体膜となる酸化膜を有し圧電特性に優れたアクチュエータ装置を製造することができる。
かかる第5の態様では、下地層の圧電体層側の表層に振動板や絶縁体膜となる酸化膜を有し圧電特性に優れたアクチュエータ装置を製造することができる。
本発明の第6の態様は、基板の一方面側に設けられ振動板を構成する下地層と、該下地層上に設けられた下電極と該下電極上に成膜及びリソグラフィ法により当該下電極の端部の外側まで設けられた圧電体層と該圧電体層上に設けられた上電極とからなる圧電素子とを有し、前記圧電体層は前記下電極上に設けられた第1の圧電体膜と該第1の圧電体膜及び前記下地層上に設けられた第2の圧電体膜からなり、前記下地層の少なくとも前記下電極の端部の外側の前記圧電体層が設けられた領域は、イオン打ち込みにより打ち込まれた前記圧電体層の結晶の核となる種物質イオンを含有することを特徴とするアクチュエータ装置にある。
かかる第6の態様では、下地層上に形成された第2の圧電体膜は種物質イオンを核として結晶を成長させて形成したものとすることができるため、結晶の粒径が微細で均一な圧電体膜となり、クラックの発生を防止できる。また、第1の圧電体膜上に形成された第2の圧電体膜は、第1の圧電体膜の結晶を核として結晶を成長させて形成したものとすることができるため、例えば、配向度、強度、粒径等の結晶性が良好になる。従って、圧電特性に優れたアクチュエータ装置となる。また、下地層と下地層上に設けられた第2の圧電体膜とは、種物質イオンによりイオン結合され、また、種物質イオンは下地層の内部に形成されるため、圧電体前駆体膜を焼成して結晶化させる際の熱で当該圧電体層に拡散することなく、圧電体層と下地層との密着性が優れたアクチュエータ装置となる。
かかる第6の態様では、下地層上に形成された第2の圧電体膜は種物質イオンを核として結晶を成長させて形成したものとすることができるため、結晶の粒径が微細で均一な圧電体膜となり、クラックの発生を防止できる。また、第1の圧電体膜上に形成された第2の圧電体膜は、第1の圧電体膜の結晶を核として結晶を成長させて形成したものとすることができるため、例えば、配向度、強度、粒径等の結晶性が良好になる。従って、圧電特性に優れたアクチュエータ装置となる。また、下地層と下地層上に設けられた第2の圧電体膜とは、種物質イオンによりイオン結合され、また、種物質イオンは下地層の内部に形成されるため、圧電体前駆体膜を焼成して結晶化させる際の熱で当該圧電体層に拡散することなく、圧電体層と下地層との密着性が優れたアクチュエータ装置となる。
本発明の第7の態様は、前記下地層に含有された前記種物質イオンと前記圧電体層を構成する成分とがイオン結合していることを特徴とするにある。
かかる第7の態様では、イオン結合により圧電体層と下地層との密着性が良好なアクチュエータ装置となる。
かかる第7の態様では、イオン結合により圧電体層と下地層との密着性が良好なアクチュエータ装置となる。
本発明の第8の態様は、第6又は7の態様に記載のアクチュエータ装置を液体を噴射させるための液体吐出手段として具備することを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる第8の態様では、圧電特性に優れた液体噴射ヘッドを実現できる。
かかる第8の態様では、圧電特性に優れた液体噴射ヘッドを実現できる。
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るアクチュエータ装置を有する液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図であり、図2は、インクジェット式記録ヘッドの要部平面図であり、図3は、図2のA−A′断面図及びその要部拡大断面図である。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るアクチュエータ装置を有する液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図であり、図2は、インクジェット式記録ヘッドの要部平面図であり、図3は、図2のA−A′断面図及びその要部拡大断面図である。
図示するように、流路形成基板10は、本実施形態ではシリコン単結晶基板からなり、その一方の面には予め熱酸化により形成した二酸化シリコンからなる、厚さ0.5〜2μmの弾性膜50が形成されている。流路形成基板10には、隔壁11によって区画された複数の圧力発生室12がその幅方向(短手方向)に並設されている。また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向一端部側には、インク供給路14と連通路15とが隔壁11によって区画されている。また、連通路15の一端には、各圧力発生室12の共通のインク室(液体室)となるリザーバ100の一部を構成する連通部13が形成されている。すなわち、流路形成基板10には、圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15からなる液体流路が設けられている。
インク供給路14は、圧力発生室12の長手方向一端部側に連通し且つ圧力発生室12より小さい断面積を有する。例えば、本実施形態では、インク供給路14は、リザーバ100と各圧力発生室12との間の圧力発生室12側の流路を幅方向に絞ることで、圧力発生室12の幅より小さい幅で形成されている。なお、このように、本実施形態では、流路の幅を片側から絞ることでインク供給路14を形成したが、流路の幅を両側から絞ることでインク供給路を形成してもよい。また、流路の幅を絞るのではなく、厚さ方向から絞ることでインク供給路を形成してもよい。さらに、各連通路15は、インク供給路14の圧力発生室12とは反対側に連通し、インク供給路14の幅方向(短手方向)より大きい断面積を有する。本実施形態では、連通路15を圧力発生室12と同じ断面積で形成した。
すなわち、流路形成基板10には、圧力発生室12と、圧力発生室12の短手方向の断面積より小さい断面積を有するインク供給路14と、このインク供給路14に連通すると共にインク供給路14の短手方向の断面積よりも大きく圧力発生室12と同等の断面積を有する連通路15とが複数の隔壁11により区画されて設けられている。
また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。なお、ノズルプレート20は、厚さが例えば、0.01〜1mmで、線膨張係数が300℃以下で、例えば2.5〜4.5[×10-6/℃]であるガラスセラミックス、シリコン単結晶基板又はステンレス鋼などからなる。
一方、流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように、二酸化シリコンからなり厚さが例えば、約1.0μmの弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO2)等の酸化膜からなり厚さが例えば、約0.3〜0.4μmの絶縁体膜55が積層形成されている。また、絶縁体膜55上には、厚さが例えば約0.1〜0.2μmの下電極膜60と、厚さが例えば約0.5〜5μmの圧電体層70と、厚さが例えば約10〜200nmの上電極膜80とからなる圧電素子300が形成されている。なお、本実施形態では、絶縁体膜55が請求項の下地層に相当する。
ここで、圧電素子300は、下電極膜60、圧電体層70及び上電極膜80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。そして、ここではパターニングされた何れか一方の電極及び圧電体層70から構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部320という。本実施形態では、下電極膜60を圧電素子300の共通電極とし、上電極膜80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。何れの場合においても、各圧力発生室12毎に圧電体能動部320が形成されていることになる。
また、図1及び図2に示すように、本実施形態では、下電極膜60は、複数の圧電素子300に亘って設けられている。そして下電極膜60は、流路形成基板10の端部で外部配線と接続する領域を有している。尚、当該下電極膜60の圧力発生室12の長手方向に相当する方向を長手方向とし、圧力発生室12の幅方向に相当する方向を下電極膜60の短手方向(幅方向)とする。そして本実施形態では、下電極膜60の長手方向の両端部を圧力発生室12に相対向する領域内に設けることで、圧電素子300の実質的な駆動部となる圧電体能動部320の長手方向の端部(長さ)を規定している。また、圧電素子300の短手方向である上電極膜80の短手方向の端部を圧力発生室12に相対向する領域内に設けることで、圧電体能動部320の短手方向の端部(幅)を規定している。すなわち、圧電体能動部320は、パターニングされた下電極膜60及び上電極膜80によって、圧力発生室12に相対向する領域にのみ設けられていることになる。さらに、圧電体層70及び上電極膜80は、圧電素子300の長手方向で、下電極膜60の両端部の外側まで延設されて設けられており、下電極膜60の長手方向の両端面は、圧電体層70によって覆われている。さらに、本実施形態では、下電極膜60、圧電体層70及び上電極膜80が、図3に示すように、上電極膜80側の幅が狭くなるようにパターニングされ、その側面は傾斜面となっている。そもそも、パターニングされた下電極膜60上に圧電体層70を形成しようとすると、下電極膜60の端部を覆う部分及び絶縁体膜55上に形成される圧電体層の膜質が良くない、すなわち、下電極膜60上の第1の圧電体膜72と、絶縁体膜55上の第2の圧電体膜73とで結晶性等の特性が急激に異なってしまい、圧電体層70は下電極膜60の端部近傍で実質的に不連続となる。このため、圧電体層70に電圧を印加するとクラック等の破壊が生じてしまうという問題がある。しかし、下電極膜60の端部を傾斜させることで下電極膜60の端部近傍の圧電体層70の結晶性が改善されるため、電圧を印加することによる圧電体層70の破壊を防止できると共に圧電素子300の駆動信頼性が向上する。また、圧電体層70の側面を傾斜させることで、両側面における応力集中が防止され、破壊等の虞がなくなる。
さらに、ここでは、圧電素子300を所定の基板上(流路形成基板10上)に設け、当該圧電素子300を駆動させた装置をアクチュエータ装置と称する。また、上述した例では、弾性膜50、絶縁体膜55及び下電極膜60が振動板として作用するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、弾性膜50及び絶縁体膜55の何れか一方を設けずに、他方及び下電極膜60のみが振動板として作用するようにしてもよい。
本実施形態の下電極膜60としては、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、チタン(Ti)、タングステン(W)等の各種金属や、これらの合金等が挙げられる。また、圧電素子300を構成する圧電体層70の材料(圧電材料)としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電性圧電性材料や、これにニオブ、ニッケル、マグネシウム、ビスマス又はイットリウム等の金属を添加したリラクサ強誘電体等が用いられる。その組成としては、例えば、PbTiO3(PT)、PbZrO3(PZ)、Pb(ZrxTi1−x)O3(PZT)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−PbTiO3(PMN−PT)、Pb(Zn1/3Nb2/3)O3−PbTiO3(PZN−PT)、Pb(Ni1/3Nb2/3)O3−PbTiO3(PNN−PT)、Pb(In1/2Nb1/2)O3−PbTiO3(PIN−PT)、Pb(Sc1/2Ta1/2)O3−PbTiO3(PST−PT)、Pb(Sc1/2Nb1/2)O3−PbTiO3(PSN−PT)、BiScO3−PbTiO3(BS−PT)、BiYbO3−PbTiO3(BY−PT)等が挙げられる。また、上電極膜80としては、Ir,Pt,W,Ta,Mo等の各種金属、これらの合金や、酸化イリジウム等の金属酸化物が挙げられる。
さらに、図3に示すように、圧電体層70は下電極膜60上に下電極膜60の長手方向両端部の外側まで設けられ、絶縁体膜55の一部と下電極膜60の長手方向両端面が圧電体層70に覆われている。そして、詳しくは後述するが圧電体層70は、下電極膜60上に成膜及びリソグラフィ法により設けられた第1の圧電体膜72と、この第1の圧電体膜72及び絶縁体膜55上に成膜及びリソグラフィ法により設けられた第2の圧電体膜73とからなる。本実施形態では、下電極膜60の長手方向両端部の外側の絶縁体膜55は、全面に亘ってイオン打ち込みにより打ち込まれたチタンイオン等の種物質イオン61を有する。この種物質イオン61は、イオン打ち込みにより打ち込まれたものなので、絶縁体膜55の表面上ではなく、絶縁体膜55の内部の少なくとも表面側に存在する。また、本実施形態では、チタンイオンを絶縁体膜55に含有させたが、イオン打ち込みにより打ち込まれる物質は、圧電体層70の結晶の核となる種物質イオンであればよく、例えば、Zr、Ta、Pb、Al、V、Mo、W、Fe、Cr、Mn、Co、Ni等の金属イオンや、Si、P等の非金属イオンでもよく、また、単独でも複数種でもよい。
このように、本発明のアクチュエータ装置は、圧電体層70が設けられた領域の絶縁体膜55は圧電体層70側にイオン打ち込みにより打ち込まれた種物質イオン61を有するため、圧電体層70と絶縁体膜55との密着性が優れる。詳述すると、絶縁体膜55に打ち込まれた種物質イオン61と圧電体層70を構成する成分とがイオン結合するため、絶縁体膜55と圧電体層70との密着性が向上する。絶縁体膜55にイオン打ち込みされたものではなく、絶縁体膜55上に圧電体層70の結晶の核となるチタンなどの膜を形成すると、圧電体層70を高温で焼成する際に、圧電体層70の中に当該チタンが拡散してしまうため、密着性が劣り圧電素子300が変位する際に不活性部領域となる絶縁体膜55上の第2の圧電体膜73といえども剥離が発生する場合がある。しかし、本発明のアクチュエータ装置は、絶縁体膜55中に種物質イオン61が打ち込まれているため、圧電体層70を高温で焼成しても圧電体層70中に拡散しないので、密着性が確保される。種物質イオン61をチタンイオン、圧電体層70の材料(圧電材料)をPZT、絶縁体膜55をZrO2とした場合を例に具体的に説明すると、酸化物(PZT)中の酸素は2価の陰イオンを持ち、Ti4+など陽イオンとイオン結合するため、ZrO2表面に打ち込まれたチタンイオンもZrO2中の酸素とイオン結合し、更にその上に形成されるPZT層の酸素ともイオン結合する。この結果、両者の密着性が向上する。特に、Fe2+,Ti4+,Cr3+,Mo6+,Mn2+,Co2+,Ni2+,W6+は、酸素イオンとの結合性が良いため、これらのイオンを種物質イオン61とすると、絶縁体膜55と圧電体層70との密着性がより良好なアクチュエータ装置となる。
また、圧電体層70は下電極膜60上に成膜及びリソグラフィ法により設けられた第1の圧電体膜72と、この第1の圧電体膜72及び絶縁体膜55上に成膜及びリソグラフィ法により設けられた第2の圧電体膜73とからなり、第2の圧電体膜73は下地の結晶の影響を受けて結晶が成長して形成されたものである。下電極膜60の長手方向両端部の外側の圧電体層70が設けられた領域の絶縁体膜55は種物質イオン61を含有するため、この絶縁体膜55上に形成された圧電体層70(第2の圧電体膜73)は種物質イオン61を核として結晶を成長させて形成されたものであるので、第1の圧電体膜72と同様に第2の圧電体膜73の結晶の粒径は微細で均一である。したがって、絶縁体膜55上に直接形成された圧電体層と下電極膜60上に形成された圧電体層との結晶性等の特性に大きな差が生じないので圧電体層70のクラック発生が防止される。また、第1の圧電体膜72上に形成される第2の圧電体膜73は、第1の圧電体膜72の結晶を核として結晶を成長させて形成されたものであるため、例えば、配向度、強度、粒径等の結晶性が良好になる。したがって、圧電特性に優れたアクチュエータ装置となる。
また、圧電素子300の個別電極である各上電極膜80には、インク供給路14側の端部近傍から引き出され、絶縁体膜55上にまで延設される、例えば、金(Au)等からなるリード電極90が接続されている。なお、リード電極90が絶縁体膜55の材料との相性が良くない場合には、絶縁体膜55上に直接第2の圧電体膜73を形成した領域の種物質イオン61をリード電極90が形成されている領域に対向する絶縁体膜55にイオン打ち込みを行っておいて、リード電極90と絶縁体膜55との密着性を確保するようにすると良い。
さらに、圧電素子300が形成された流路形成基板10上には、圧電素子300に対向する領域に、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部32を有する保護基板30が、接着剤35によって接合されている。なお、圧電素子保持部32は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。
また、保護基板30には、連通部13に対向する領域にリザーバ部31が設けられており、このリザーバ部31は、上述したように、流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバ100を構成している。また、保護基板30の圧電素子保持部32とリザーバ部31との間の領域には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられ、この貫通孔33内に下電極膜60の一部及びリード電極90の先端部が露出されている。
また、保護基板30上には、圧電素子300を駆動するための図示しない駆動回路が固定されており、駆動回路とリード電極90とはボンディングワイヤ等の導電性ワイヤからなる接続配線を介して電気的に接続されている。
保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚さが6μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム)からなり、この封止膜41によってリザーバ部31の一方面が封止されている。また、固定板42は、金属等の硬質の材料(例えば、厚さが30μmのステンレス鋼(SUS)等)で形成される。この固定板42のリザーバ100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、リザーバ100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドでは、図示しない外部インク供給手段からインクを取り込み、リザーバ100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの下電極膜60と上電極膜80との間に電圧を印加し、弾性膜50、絶縁体膜55、下電極膜60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
ここで、インクジェット式記録ヘッドの製造方法について、図4〜図8を参照して説明する。なお、図4〜図8は、圧力発生室の長手方向の断面図である。まず、図4(a)に示すように、シリコンウェハである流路形成基板用ウェハ110を約1100℃の拡散炉で熱酸化し、その表面に弾性膜50を構成する二酸化シリコン膜51を形成する。なお、本実施形態では、流路形成基板用ウェハ110として、膜厚が約625μmと比較的厚く剛性の高いシリコンウェハを用いている。
次に、図4(b)に示すように、弾性膜50(二酸化シリコン膜51)上に、酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜55を形成する。具体的には、弾性膜50(二酸化シリコン膜51)上に、例えば、スパッタリング法等によりジルコニウム(Zr)層を形成後、このジルコニウム層を、例えば、500〜1200℃の拡散炉で熱酸化することにより酸化ジルコニウム(ZrO2)からなる絶縁体膜55を形成する。
次に、図5(a)に示すように、例えば密着層62、白金層63及び拡散防止層64からなる下電極膜60を形成する。具体的には、まず、絶縁体膜55上に、密着層62を形成する。密着層62としては、例えば、厚さが10〜50nmのチタン(Ti)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)及びタングステン(W)からなる群から選択される少なくとも一つの元素を主成分とするものが挙げられる。本実施形態では、密着層62として、厚さ20nmのチタン(Ti)を設けた。このように下電極膜60の最下層に密着層62を設けることによって、絶縁体膜55と下電極膜60との密着力を高めることができる。次いで、密着層62上に白金(Pt)からなり厚さが50〜500nmの白金層63を形成する。本実施形態では、白金層63を130nmの厚さで形成した。そして、白金層63上に拡散防止層64を形成する。これにより、密着層62、白金層63及び拡散防止層64からなる下電極膜60が形成される。なお、拡散防止層64は、後の工程で圧電体層70を焼成して結晶化させて形成する際に、密着層62の成分が圧電体層70に拡散するのを防止すると共に圧電体層70の成分が下電極膜60に拡散するのを防止するためのものである。このような拡散防止層64としては、厚さが例えば、5〜20nmのイリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)及びオスミウム(Os)からなる群から選択される少なくとも一つの元素を主成分とするものが挙げられる。本実施形態では、拡散防止層64として、厚さ10nmのイリジウム(Ir)を用いた。なお、このような下電極膜60の各層62〜64は、例えば、DCマグネトロンスパッタリング法によって形成することができる。
次に、下電極膜60上に、チタン(Ti)をスパッタリング法、例えば、DCスパッタリング法で1回以上、本実施形態では2回塗布することにより所定の厚さの種チタン層(図示なし)を形成する。このように、種チタン層を形成し該種チタン層上に第1の圧電体膜72を形成すると、チタン結晶を核として第1の圧電体膜72の結晶が成長するので第1の圧電体膜72の結晶性が大幅に向上する。なお、種チタン層を設けるかわりに、チタンイオンを下電極膜60上に打ち込んでもよい。また、結晶性が良好な第1の圧電体膜72を形成できるのであれば、この種チタン層は形成しなくてもよい。
次に、このように形成した種チタン層上に、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる圧電体層70を形成する。ここで、本実施形態では、金属有機物を溶媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用いて圧電体層70を形成している。なお、圧電体層70の材料としては、チタン酸ジルコン酸鉛に限定されず、例えば、上述したようにリラクサ強誘電体(例えば、PMN−PT、PZN-PT、PNN-PT等)の他の圧電材料を用いてもよい。また、圧電体層70の製造方法は、圧電材料を塗布して圧電体前駆体膜を形成すると共に該圧電体前駆体膜を焼成し結晶化させて形成する方法であればよく、ゾル−ゲル法に限定されず、例えば、MOD(Metal-Organic Decomposition)法等を用いてもよい。
圧電体層70の具体的な形成手順としては、まず、図5(b)に示すように、下電極膜60上にPZT前駆体膜である圧電体前駆体膜71を成膜する。すなわち、下電極膜60が形成された流路形成基板10上に金属有機化合物を含むゾル(溶液)を塗布して例えば膜厚が0.1μm程度の圧電体前駆体膜71を形成する(塗布工程)。次いで、この圧電体前駆体膜71を所定温度に加熱して一定時間乾燥させる(乾燥工程)。例えば、本実施形態では、圧電体前駆体膜71を170〜180℃で8〜30分保持することで乾燥することができる。
次に、乾燥した圧電体前駆体膜71を所定温度に加熱して一定時間保持することによって脱脂する(脱脂工程)。例えば、本実施形態では、圧電体前駆体膜71を300〜400℃程度の温度に加熱して約10〜30分保持することで脱脂した。なお、ここで言う脱脂とは、圧電体前駆体膜71に含まれる有機成分を、例えば、NO2、CO2、H2O等として離脱させることである。
次に、図5(c)に示すように、圧電体前駆体膜71を所定温度に加熱して一定時間保持することによって結晶化させ、第1の圧電体膜72を形成する(焼成工程)。焼成工程では、圧電体前駆体膜71を680〜900℃に加熱するのが好ましく、本実施形態では、680℃で5〜30分間加熱を行って圧電体前駆体膜71を焼成して第1の圧電体膜72を形成した。なお、乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程で用いられる加熱装置としては、例えば、赤外線ランプの照射により加熱するRTP(Rapid Thermal Processing)装置やホットプレート等が挙げられる。なお、このように第1の圧電体膜72を焼成して形成することによって、下電極膜60の各層62〜64も同時に加熱され、密着層62、白金層63及び拡散防止層64が合金化された下電極膜60が形成される。
次に、図6(a)に示すように、第1の圧電体膜72上に所定形状のレジスト400を形成する。このようなレジスト400は、例えば、成膜及びフォトリソグラフィ法により所定形状に形成することができる。なお、本実施形態では、下電極膜60等の端面を傾斜した傾斜面で形成するため、レジスト400の開口の側面も傾斜した傾斜面で形成した。
次に、図6(b)に示すように、レジスト400をマスクとして下電極膜60及び第1の圧電体膜72をそれらの側面が傾斜するように同時にパターニングする。これにより、絶縁体膜55が露出する。この段階で当然ながら絶縁体膜55が露出している領域には、第2の圧電体膜73の結晶を良好に成長させるための上記種チタン層に相当する層は存在しない。
このように、本実施形態では、流路形成基板10上の全面に亘って下電極膜60を形成した後、下電極膜60上に第1の圧電体膜72を形成するようにしたため、第1の圧電体膜72を形成する際に、第1の圧電体膜72の下地を同一にして、焼成ムラをなくし、均一な圧電特性の第1の圧電体膜72を得ることができる。すなわち、例えば、下電極膜60をパターニングした後に流路形成基板10の全面に亘って第1の圧電体膜72を形成する場合、圧電体前駆体膜71を焼成した際に、下電極膜60の形成領域と、下電極膜60の非形成領域(絶縁体膜55が露出した領域)との熱吸収の差、より詳細には、赤外線吸収の差が大きくなってしまい、圧電体前駆体膜71の焼成ムラが生じ、第1の圧電体膜72の結晶性にばらつきが生じてしまい、耐電圧が低下してしまうからである。
また、下電極膜60をパターニングする前に下電極膜60の上に種チタン層を形成し、その後にパターニングしてから第1の圧電体膜72を形成すると、パターニングの際にプラズマなどによるドライエッチングが直接種チタンに触れることになりその結果種チタンが変質してしまい、変質した種チタン上に第1の圧電体膜72を形成しても当該第1の圧電体膜72の結晶性が良好なものではなくなる。それに比べ、第1の圧電体膜72を形成した後に下電極膜60と同時にパターニングすれば、パターニングの際に種チタンがエッチングガスなどに触れることがないため第1の圧電体膜72は結晶性が良好になる。
このように、下電極膜60及び第1の圧電体膜72をパターニングした後、剥離せず残しておいたレジスト400をマスクとして、図6(c)に示すように、下電極膜60の長手方向端部の外側の絶縁体膜55、即ち、露出した絶縁体膜55に、圧電体層の結晶の核となる種物質イオン61を、例えば、打ち込み電圧100〜200[KeV]、ドーズ量1×1016〜1×1020[個/cm2]で打ち込む。この打ち込み電圧及びドーズ量を変化させたイオン打ち込みを複数回行うようにしてもよい。本実施形態では、チタンイオンを、打ち込み電圧が200[KeV]で、ドーズ量が1×1020[個/cm2]で1回打ち込んだ。なお、打ち込まれた種物質イオン61は、スパッタリング法により形成された種チタン等とは異なり、絶縁体膜55の内部に含有されるため、第2の圧電体膜73の形成後も絶縁体膜55内に残留する。
本実施形態では、下電極膜60をパターニングするために用いたレジスト400を用いて種物質イオン61を打ち込むようにしたため、第1の圧電体膜72上に種物質イオン61を確実に打ち込まないようにするための新たなレジストを形成する工程が不要となって製造コストを低減することができる。また、下電極膜60をパターニングするために用いたレジスト400を用いて種物質イオン61を打ち込むようにしたため、新たなレジストを形成する場合に比べて、レジスト400の位置合わせが不要となり、高精度に種物質イオン61を打ち込むことができる。勿論、下電極膜60をパターニングしたレジスト400を除去し、新たなレジストを形成した後に種物質イオン61を打ち込んでもよい。
なお、本実施形態では、レジスト400をマスクとして絶縁体膜55表面に種物質イオン61を打ち込み、第1の圧電体膜72には種物質イオン61が確実に打ち込まれないようにしたが、マスクを用いずイオン打ち込みを行ってもよい。マスクを用いない場合、打ち込み条件等を調節して、露出した絶縁体膜55のみに種物質イオン61を打ち込むようにすればよい。
次に、レジスト400を剥離した後、上述した塗布工程、乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程からなる圧電体膜形成工程を複数回繰り返して複数の第2の圧電体膜73aからなる第2の圧電体膜73を形成することで、図6(d)に示すように第1の圧電体膜72及び第2の圧電体膜73からなる所定厚さの圧電体層70を形成する。例えば、ゾルの1回あたりの膜厚が0.1μm程度の場合には、例えば、10層の圧電体膜からなる圧電体層70全体の膜厚は約1.1μm程度となる。なお、本実施形態では、第2の圧電体膜73は複数の第2の圧電体膜73aを積層して設けたが、1層のみでもよい。
本発明においては、露出した絶縁体膜55に種物質イオン61を打ち込んでおり、絶縁体膜55上に形成する第2の圧電体膜73の結晶がこの種物質イオン61を核として成長するため、第2の圧電体膜73の結晶は粒径が微細で均一になる。したがって、圧電体層70のクラックの発生が抑制される。
また、第1の圧電体膜72をレジスト400でマスクした状態で種物質イオン61を打ち込んだので、第1の圧電体膜72に種物質イオン61は打ち込まれていない。したがって、第2の圧電体膜73を第1の圧電体膜72上に不純物がない状態で形成できるので、第1の圧電体膜72の結晶を核として第2の圧電体膜73の結晶が成長して、結晶性が非常に優れた圧電体層70となる。
ここで、イオン打ち込みではなく、スパッタリング法で露出した絶縁体膜55上に種チタン膜等の中間種膜を設けた場合、第1の圧電体膜72上にも種チタン膜等の中間種膜が設けられてしまい、第1の圧電体膜72上に直接第2の圧電体膜73を形成した場合に比べて、第1の圧電体膜72上の中間種膜上に形成される第2の圧電体膜73は結晶性が乱れてしまい、第1の圧電体膜72と第2の圧電体膜73との界面が不連続面となるという問題があった。この第1の圧電体膜72上に中間種膜が存在することに起因する問題に対し、第1の圧電体膜72にレジストをマスクとして設けた後にスパッタリング法で中間種膜を形成し、その後レジストと共に第1の圧電体膜72上の中間種膜を除去する方法(リフトオフ)も考えられる。しかしながら、この方法では、スパッタリングで形成された中間種膜により、レジストがはがれ難くなるという問題や、スパッタリングにより装置が汚れる等の問題が新たに生じる。一方、本発明の製造方法においては、イオン打ち込みにより種物質イオン61を打ち込んでいるため、リフトオフができない等の上記の問題は生じずに、結晶性に優れた圧電体層70を形成することができる。
なお、露出した絶縁体膜55上にスパッタリング法で中間種膜を設けた場合、第1の圧電体膜と第2の圧電体膜の間に種チタン等の中間種膜が形成されるが、圧電体層70を構成する成分と同じであれば圧電体層70へ拡散するため、圧電体層70の構成成分と異なる物質からなる中間種膜を形成するよりは比較的結晶成長への影響が少ない。したがって、スパッタリング法で露出した絶縁体膜55上に種物質を設ける場合は、使用できる物質は圧電体層70の構成成分と同じ物質(例えばチタン)に限定されていた。しかしながら、本発明ではイオン打ち込みなのでリフトオフの際にレジストが剥れ難いという問題も生じず後にリフトオフすることができるため、圧電体層70の結晶の核となる種物質イオンであればどんな物質でも適応することができる。
また、絶縁体膜55に打ち込まれた種物質イオン61と圧電体層70を構成する成分とが上述したようにイオン結合するため、絶縁体膜55と圧電体層70との密着性を向上させることができる。特に、Fe2+,Ti4+,Cr3+,Mo6+,Mn2+,Co2+,Ni2+,W6+は、酸素イオンの結合性が良いため、これらのイオンを種物質イオン61とすると、絶縁体膜55と圧電体層70との密着性がより良好なアクチュエータ装置を製造できる。
このように圧電体層70を形成した後は、図7(a)に示すように、圧電体層70上の全面に亘って白金(Pt)又はイリジウム(Ir)等からなる上電極膜80をスパッタリング法等で形成し、各圧力発生室12に対向する領域にパターニングして、下電極膜60と圧電体層70と上電極膜80からなる圧電素子300を形成する。なお、圧電体層70と上電極膜80とのパターニングでは、所定形状に形成したレジスト(図示なし)を介してドライエッチングすることにより一括して行うことができる。そして、このようなドライエッチングでは、レジストの側面を予め傾斜させておくと、圧電体層70及び上電極膜80が、上電極膜80側の幅が狭くなるようにパターニングされ、その側面が傾斜面となる。
次に、図7(b)に示すように、流路形成基板用ウェハ110の全面に亘って、例えば、金(Au)等からなるリード電極90を形成後、例えば、レジスト等からなるマスクパターン(図示なし)を介して各圧電素子300毎にパターニングする。
次に、図7(c)に示すように、流路形成基板用ウェハ110の圧電素子300側に、シリコンウェハであり複数の保護基板30となる保護基板用ウェハ130を接着剤35を介して接合する。なお、この保護基板用ウェハ130は、例えば、400μm程度の厚さを有するため、保護基板用ウェハ130を接合することによって流路形成基板用ウェハ110の剛性は著しく向上することになる。
次に、図8(a)に示すように、流路形成基板用ウェハ110をある程度の厚さとなるまで研磨した後、さらにフッ硝酸によってウェットエッチングすることにより流路形成基板用ウェハ110を所定の厚みにする。例えば、本実施形態では、約70μm厚になるように流路形成基板用ウェハ110をエッチング加工した。また、流路形成基板用ウェハ110上に、例えば、窒化シリコン(SiN)からなるマスク膜52を新たに形成し、所定形状にパターニングする。
そして、図8(b)に示すように、流路形成基板用ウェハ110をマスク膜52を介してKOH等のアルカリ溶液を用いた異方性エッチング(ウェットエッチング)することにより、圧電素子300に対応する圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15等を形成する。
その後は、流路形成基板用ウェハ110及び保護基板用ウェハ130の外周縁部の不要部分を、例えば、ダイシング等により切断することによって除去する。そして、流路形成基板用ウェハ110の保護基板用ウェハ130とは反対側の面の二酸化シリコン膜51を除去した後にノズル開口21が穿設されたノズルプレート20を接合すると共に、保護基板用ウェハ130にコンプライアンス基板40を接合し、流路形成基板用ウェハ110等を図1に示すような一つのチップサイズの流路形成基板10等に分割することによって、本実施形態のインクジェット式記録ヘッドとする。
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の基本的構成は上述した実施形態1に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1では、圧電体層70を下電極膜60の長手方向の両方の端部の外側まで設けているが、圧電体層70を下電極膜60の長手方向の一方の端部のみの外側まで設けるようにしてもよい。また、上電極膜80を圧電素子300の共通電極とし下電極膜60を個別電極とした場合、下電極膜60の長手方向端部の外側だけでなく、短手方向端部の外側の下地層にも種物質イオンを打ち込み、その上にも圧電体層70を形成するようにしてもよく、また、下電極膜60の短手方向端部の外側の下地層のみにイオン打ち込みしその上に圧電体層70を形成してもよい。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の基本的構成は上述した実施形態1に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1では、圧電体層70を下電極膜60の長手方向の両方の端部の外側まで設けているが、圧電体層70を下電極膜60の長手方向の一方の端部のみの外側まで設けるようにしてもよい。また、上電極膜80を圧電素子300の共通電極とし下電極膜60を個別電極とした場合、下電極膜60の長手方向端部の外側だけでなく、短手方向端部の外側の下地層にも種物質イオンを打ち込み、その上にも圧電体層70を形成するようにしてもよく、また、下電極膜60の短手方向端部の外側の下地層のみにイオン打ち込みしその上に圧電体層70を形成してもよい。
さらに、実施形態1では、下電極膜60の端部の外側の絶縁体膜55、即ち、露出した絶縁体膜55の全面に亘って、種物質イオン61を打ち込んだが、全面ではなく、少なくとも下電極膜60の端部の外側の圧電体層70が設けられる領域の絶縁体膜55、即ち、少なくとも圧電体層70に接する領域の絶縁体膜55に、イオン打ち込みすればよい。
また、実施形態1では第1の圧電体膜72には種物質イオン61が打ち込まれないようにしたが、第1の圧電体膜72の結晶を核として第2の圧電体膜73の結晶が成長する阻害とならない程度の量であれば、第1の圧電体膜72に種物質イオン61が打ち込まれてもよい。スパッタリング法では、第1の圧電体膜72の表面に中間種膜が成膜され第2の圧電体膜73の結晶の良好な成長の阻害となって第1の圧電体膜72と第2の圧電体膜73とは不連続面となり結晶性が悪くなるが、イオン打ち込みの場合は、種物質イオン61が第1の圧電体膜72内部に取り込まれるため第1の圧電体膜72と第2の圧電体膜73とは不連続面とはならず、第2の圧電体膜73の結晶成長への影響が少ないためである。なお、第1の圧電体膜72にも種物質イオン61を打ち込む場合は、ドーズ量1×1016〜1×1019[個/cm2]程度とすることが好ましい。なお、勿論、イオン打ち込みであっても、第1の圧電体膜72に種物質イオン61を打ち込まないほうがよく、またイオン打ち込みするとしても種物質イオン61が圧電体層70を構成する成分と同じほうが好ましい。
また、上述した実施形態1では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。なお、本発明は、液体噴射ヘッド(インクジェット式記録ヘッド等)に搭載されるアクチュエータ装置だけでなく、あらゆる装置に搭載されるアクチュエータ装置に適用できることは言うまでもない。
10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 13 連通部、 14 インク供給路、 20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 30 保護基板、 31 リザーバ部、 32 圧電素子保持部、 40 コンプライアンス基板、 60 下電極膜、 61 種物質イオン、 70 圧電体層、 71 圧電体前駆体膜、 72 第1の圧電体膜、 73 第2の圧電体膜、 80 上電極膜、 90 リード電極、 100 リザーバ、 300 圧電素子、 320 圧電体能動部
Claims (8)
- 基板の一方面側に設けられ振動板を構成する下地層と、該下地層上に設けられた下電極と該下電極上に当該下電極の端部の外側まで設けられた圧電体層と該圧電体層上に設けられた上電極とからなる圧電素子とを有するアクチュエータ装置の製造方法であって、
前記基板上に前記下地層を形成する工程と、前記下地層上に前記下電極を形成する工程と、前記下電極上に圧電体前駆体膜を形成すると共に該圧電体前駆体膜を焼成して結晶化させて第1の圧電体膜を形成する工程と、前記下電極及び前記第1の圧電体膜を所定形状にパターニングする工程と、前記下地層の少なくとも前記下電極の端部の外側の前記圧電体層が設けられる領域に前記圧電体層の結晶の核となる種物質イオンを打ち込む工程と、前記第1の圧電体膜及び前記下地層の前記種物質イオンが打ち込まれた領域に圧電体前駆体膜を形成すると共に該圧電体前駆体膜を焼成して結晶化させて第2の圧電体膜を形成し、前記第1の圧電体膜と前記第2の圧電体膜とからなる前記圧電体層を形成する工程と、前記圧電体層上に前記上電極を形成する工程とを有することを特徴とするアクチュエータ装置の製造方法。 - 前記種物質イオンが、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)、鉛(Pb)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、リン(P)、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)から選択される少なくとも一種のイオンであることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ装置の製造方法。
- 前記下電極及び前記第1の圧電体膜を所定形状にパターニングする工程では、前記第1の圧電体膜上に設けられた所定形状のパターンを有するレジストをマスクとしてエッチングすることにより所定形状にパターニングすると共に、前記種物質イオンを打ち込む工程では前記レジストをマスクとして前記下地層に当該種物質イオンを打ち込むことを特徴とする請求項1又は2に記載のアクチュエータ装置の製造方法。
- 前記第1の圧電体膜を形成する工程では、前記下電極上に種チタン層を設け、該種チタン層上に前記第1の圧電体膜を形成することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のアクチュエータ装置の製造方法。
- 前記下地層を形成する工程では、前記圧電体層側の表層に酸化膜を形成することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のアクチュエータ装置の製造方法。
- 基板の一方面側に設けられ振動板を構成する下地層と、該下地層上に設けられた下電極と該下電極上に成膜及びリソグラフィ法により当該下電極の端部の外側まで設けられた圧電体層と該圧電体層上に設けられた上電極とからなる圧電素子とを有し、前記圧電体層は前記下電極上に設けられた第1の圧電体膜と該第1の圧電体膜及び前記下地層上に設けられた第2の圧電体膜からなり、前記下地層の少なくとも前記下電極の端部の外側の前記圧電体層が設けられた領域は、イオン打ち込みにより打ち込まれた前記圧電体層の結晶の核となる種物質イオンを含有することを特徴とするアクチュエータ装置。
- 前記下地層に含有された前記種物質イオンと前記圧電体層を構成する成分とがイオン結合していることを特徴とする請求項6に記載のアクチュエータ装置。
- 請求項6又は7に記載のアクチュエータ装置を液体を噴射させるための液体吐出手段として具備することを特徴とする液体噴射ヘッド。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN111799364A (zh) * | 2020-06-29 | 2020-10-20 | 中国科学院上海微系统与信息技术研究所 | 一种基于离子注入的铌酸锂或钽酸锂晶圆黑化方法 |
US20220173301A1 (en) * | 2020-11-30 | 2022-06-02 | Tdk Corporation | Thin-film piezoelectric actuator |
-
2006
- 2006-09-20 JP JP2006254893A patent/JP2008078328A/ja active Pending
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