JP5676074B2 - 活性炭の改質方法 - Google Patents

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Description

本発明は、活性炭の改質方法に関するものである。また、本発明は、前記活性炭の改質方法により得られた活性炭を含有する電気二重層キャパシタ用電極材料、電気二重層キャパシタ用電極、および電気二重層キャパシタに関するものである。
活性炭、特にアルカリ金属化合物で賦活処理された活性炭には、水酸基やカルボキシル基等の酸性官能基が存在することが知られている。これらの酸性官能基は、活性炭の反応性や濡れ性等の特性に影響を与える。例えば、活性炭が電気二重層キャパシタ用電極材料として使用される場合、活性炭に酸性官能基が存在することにより、静電容量等の電極材料としての特性が長期使用の間に低下しやすくなる。
長期使用による静電容量の低下を緩和する活性炭の改質方法として、賦活処理された活性炭を加熱処理する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、アルカリ賦活処理された活性炭を、不活性ガスまたは還元性ガス雰囲気下で900℃〜1100℃の温度で加熱処理する方法が開示され、特許文献2には、アルカリ賦活処理された活性炭を、不活性ガス雰囲気下で、昇温速度0.1℃/min〜100℃/min、最高温度500℃〜1000℃の温度で加熱処理する方法が開示され、特許文献3には、賦活処理された活性炭を、不活性ガス雰囲気下で700℃〜1000℃の温度で加熱処理する方法が開示されている。
特開2006−24747号公報 特開2005−132702号公報 特開2003−209029号公報
特許文献1〜3に開示された方法では、加熱処理により、活性炭に存在する酸性官能基の量が低減され、静電容量の経時劣化を緩和しているものと考えられるが、加熱処理により、同時に活性炭の比表面積や細孔容積の低下が起こる。活性炭の比表面積や細孔容積の低下は、活性炭を電気二重層キャパシタ用電極材料用途に用いた場合の初期静電容量低下をもたらすとともに、活性炭を吸着材として用いる場合の吸着容量の低下も引き起こす。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、活性炭の比表面積や細孔容積の低下を極力抑えつつ、活性炭に存在する酸性官能基の量を低減できる活性炭の改質方法を提供することにある。また、初期静電容量が高く、長期使用による静電容量の低下が低く抑えられた電気二重層キャパシタ用電極材料、電気二重層キャパシタ用電極、電気二重層キャパシタを提供することにある。
上記課題を解決することができた本発明の活性炭の改質方法とは、活性炭を、不活性ガスまたは還元性ガス雰囲気下、加熱処理する方法であって、前記加熱処理の温度が500℃〜2000℃の範囲にあり、前記加熱処理の時間が10分未満であるところに特徴を有する。本発明の活性炭の改質方法は、前記構成により、比表面積や細孔容積の低下を極力抑えつつ、活性炭に存在する酸性官能基の量を低減することができる。
前記改質方法において用いる活性炭は、炭素質物質をアルカリ金属化合物で賦活処理して得られたものが好ましい。炭素質物質をアルカリ金属化合物で賦活処理した活性炭を用いれば、改質処理を施しても比表面積や細孔容積が大きい活性炭を得やすくなる。
本発明の改質方法で得られた活性炭は、改質により比表面積や細孔容積の低下が極力抑えられ、活性炭に存在する酸性官能基の量を低減できるため、電気二重層キャパシタの初期静電容量を高くすることができ、長期使用による静電容量の低下も低く抑えることができる。そのため、優れた静電容量特性を有する電気二重層キャパシタ用電極材料、電気二重層キャパシタ用電極、電気二重層キャパシタを得ることができる。
本発明の活性炭の改質方法によれば、活性炭の比表面積や細孔容積の低下を極力抑えつつ、活性炭に存在する酸性官能基の量を低減することができる。また、本発明の改質方法により得られる活性炭は、改質により比表面積や細孔容積の低下が極力抑えられ、活性炭に存在する酸性官能基の量を低減できるため、電気二重層キャパシタの初期静電容量を高くすることができ、長期使用による静電容量の低下も低く抑えることができる。そのため、本発明の改質方法により得られる活性炭を含有する電気二重層キャパシタ用電極材料、電気二重層キャパシタ用電極、電気二重層キャパシタは、優れた静電容量特性を有する。
本発明の活性炭の改質方法は、活性炭を、不活性ガスまたは還元性ガス雰囲気下、加熱処理する。
本発明の活性炭の改質方法において用いられる活性炭は、炭素質物質を賦活処理して得られたものが好ましい。この場合、本発明の改質炭の活性方法は、炭素質物質を賦活処理して活性炭を得る工程、および、前記活性炭を、不活性ガスまたは還元性ガス雰囲気下、加熱処理する工程を有する改質炭の活性方法となる。
炭素質物質としては、活性炭原料として公知の炭素質物質であれば、特に限定されない。例えば、木材、おが屑、木炭、ヤシガラ、セルロース系繊維、合成樹脂(例えばフェノール樹脂)、石炭等の難黒鉛化性炭素;メソフェーズピッチ、ピッチコークス、石油コークス、石炭コークス、ニードルコークス、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、PAN等の易黒鉛化性炭素;およびこれらの混合物が挙げられる。炭素質物質は、必要に応じて、賦活処理前に高温炭化処理されていてもよい。
賦活処理とは、炭素質物質の表面に細孔を形成して、比表面積および細孔容積を大きくする処理である。この賦活処理としては、(1)賦活剤と炭素質物質との混合物を不活性ガス雰囲気下で加熱して活性炭を製造する薬剤賦活、または(2)水蒸気、二酸化炭素、空気、燃焼ガス等のガスとの共存下、炭素質物質を加熱して活性炭を製造するガス賦活、が知られている。賦活処理としては、活性炭の比表面積を大きくすることが容易な薬剤賦活を採用することが好ましい。
薬剤賦活で使用する賦活剤には、アルカリ金属化合物を使用することが好ましい。アルカリ金属化合物を賦活剤として用いることにより、活性炭の比表面積を容易に大きくすることができる。また、アルカリ金属化合物で賦活処理を行って得られる活性炭には、酸性官能基がより多く含まれるようになりやすいため、活性炭に存在する酸性官能基の量を低減するという本発明の効果をより顕著に発現させる点において、本発明で用いられる活性炭は、アルカリ金属化合物で賦活処理(アルカリ賦活処理)をして得られたものが好ましい。
賦活剤として用いられるアルカリ金属化合物としては、アルカリ金属の硫酸塩、炭酸塩、水酸化物等が挙げられ、アルカリ金属水酸化物を用いることが好ましい。アルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムが挙げられる。賦活剤の使用量は、アルカリ金属水酸化物を賦活剤として使用する場合、炭素質物質の質量の0.5倍〜10倍であることが好ましい。この使用量が多量である程、活性炭の比表面積および平均細孔径が大きくなり、少量である程、活性炭の比表面積および平均細孔径が小さくなる。
薬剤賦活では、炭素質物質および賦活剤とともに水を混合してもよい。水を混合することで、賦活剤を溶融しやすくなる。このときの水の混合量は、アルカリ金属水酸化物を賦活剤に使用する場合、賦活剤の質量の0.05倍〜10倍であることが好ましい。
薬剤賦活における加熱では、加熱温度が400℃〜900℃程度であることが好ましい。活性炭の比表面積および平均細孔径は、加熱温度が低いと小さくなる傾向があり、加熱温度が高いと大きくなる傾向がある。
薬剤賦活後は、水および/または酸性液により活性炭を洗浄してもよい。水や酸性液による活性炭の洗浄は、公知の方法を採用することができる。また、水および/または酸性液により活性炭を洗浄した後、500℃未満の温度(好ましくは、50℃〜300℃)で活性炭を乾燥してもよい。
以上のように、本発明の活性炭の改質方法において用いられる活性炭は、炭素質物質を賦活処理して得られた活性炭が好ましく、炭素質物質をアルカリ賦活処理して得られた活性炭がより好ましい。また、炭素質物質をアルカリ賦活処理して、水および/または酸性液により洗浄して得られた活性炭を用いてもよい。
本発明で用いられる活性炭の比表面積としては、500m2/g以上が好ましく、1,000m2/g以上がより好ましく、2,000m2/g以上がさらに好ましく、また4,000m2/g以下が好ましく、3,800m2/g以下がより好ましく、3,500m2/g以下がさらに好ましい。
本発明で用いられる活性炭の細孔容積としては、0.1mL/g以上が好ましく、0.4mL/g以上がより好ましく、1.0mL/g以上がさらに好ましく、また3.0mL/g以下が好ましく、2.5mL/g以下がより好ましく、2.0mL/g以下がさらに好ましい。
本発明で用いられる活性炭の酸性官能基の量としては、0.01meq/g以上が好ましく、0.03meq/g以上がより好ましく、0.05meq/g以上がさらに好ましく、また3.00meq/g以下が好ましく、2.50meq/g以下がより好ましく、2.00meq/g以下がさらに好ましい。
本発明の活性炭の改質方法では、加熱処理は不活性ガスまたは還元性ガス雰囲気下で行い、加熱処理の温度は500℃〜2000℃の範囲にあり、加熱処理の時間は10分未満である。
加熱処理で用いる不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等が挙げられ、還元性ガスとしては、水素ガス、水素ガスと前記不活性ガスとの混合物等が挙げられる。不活性ガスまたは還元性ガス雰囲気下で加熱処理を行うことにより、活性炭に存在する水酸基やカルボキシル基等の酸性官能基の分解や脱離が起こりやすくなる。
不活性ガスまたは還元性ガス雰囲気下で加熱処理する方法としては、不活性ガスまたは還元性ガスを加熱炉内に流しながら加熱処理する方法が好ましい。この場合、不活性ガスまたは還元性ガスの流量は、1分間に炉内容積の0.01倍〜20倍の容積の不活性ガスまたは還元性ガスが炉内に供給されるようにすることが好ましい。
本発明の活性炭の改質方法において、加熱処理の温度は、加熱処理により得られる改質活性炭の所望する性状に応じて適宜決められる。一般に活性炭は、様々な種類の酸性官能基を有している。活性炭に存在する酸性官能基は加熱処理により分解したり脱離したりするが、分解や脱離が起こる温度は酸性官能基の種類に応じて変わる。従って、加熱処理の温度は、改質活性炭が有していてもよい酸性官能基の種類の設定条件に応じて、適宜決められる。また、後述するように、酸性官能基は加熱処理により速やかに除去されるため、改質活性炭が有していてもよい酸性官能基の量は、加熱処理の時間を増減することで調整することは難しい。従って、加熱処理の温度を適宜設定して除去する酸性官能基の種類を調整することにより、改質活性炭が有する酸性官能基の量を調整することができる。
本発明の方法により得られる改質活性炭は、電気二重層キャパシタ用電極材料や吸着材等に用いることができるが、改質活性炭が有してもよい酸性官能基の種類や量はその用途に応じて変わる。例えば、改質活性炭を電気二重層キャパシタ用電極材料に適用する場合は、酸性官能基の量はできるだけ少ない方が好ましい。この場合、できるだけ多くの種類の酸性官能基を除去するために、加熱処理の温度は比較的高温に設定される。また、例えば、改質活性炭を吸着材に適用する場合は、吸着材が有する官能基の種類やその量に応じて吸着材の性能が変わるため、所望する吸着材の性能に応じて、加熱処理の温度を設定すればよい。例えば、ある程度酸性官能基を有する吸着材を得る場合には、加熱処理の温度は比較的低温に設定し、改質活性炭を得ればよい。
加熱処理の温度は、500℃以上が好ましく、600℃以上がより好ましく、800℃以上がさらに好ましく、また2000℃以下が好ましく、1600℃以下がより好ましく、1200℃以下がさらに好ましい。加熱処理の温度が500℃以上であれば、酸性官能基の分解や脱離が起こりやすくなる。一方、加熱処理の温度を2000℃まで上げれば大部分の酸性官能基を除去することが容易となるため、加熱処理の温度の上限は2000℃とすればよい。
加熱処理の温度とは、炉内の雰囲気温度を意味する。例えば、連続式炉の場合、炉の入口や出口に近いほど雰囲気温度が低く、炉内の加熱源設置領域では雰囲気温度が高くなる傾向がある。また、炉内の加熱源設置領域でも、炉の入口や出口側よりも炉の内部側の方が雰囲気温度が高くなる傾向がある。この場合、炉内の加熱源設置領域の最高雰囲気温度を、加熱処理の温度とする。
本発明の活性炭の改質方法では、加熱処理の時間を10分未満とする。上述したように、酸性官能基の分解や脱離が起こる温度(酸性官能基除去温度)は酸性官能基の種類に応じて変わるが、ある酸性官能基の分解や脱離は、酸性官能基除去温度近辺で速やかに起こり、その反応時間(分解または脱離反応の時間)は10分未満で十分である。従って、本発明では、加熱処理の温度を適宜設定し、10分未満という短い時間加熱することにより、改質活性炭に残存する酸性官能基の種類を調整している。また、改質活性炭に残存する酸性官能基の種類を調整することにより、改質活性炭が有する全酸性官能基量を調整することもできる。
一方、活性炭を加熱処理すると、活性炭の比表面積や細孔容積が低下するが、活性炭の比表面積や細孔容積は、加熱処理の時間が長くなるほどより低下する。加熱処理による活性炭の比表面積や細孔容積の低下は、加熱処理の温度よりも加熱処理の時間に大きく依存する。活性炭の比表面積や細孔容積の低下は、活性炭を電気二重層キャパシタ用電極材料用途に用いた場合の初期静電容量低下をもたらすとともに、活性炭を吸着材として用いる場合の吸着容量の低下も引き起こすため、好ましくない。従って、加熱処理の時間を10分未満とする本発明の活性炭の改質方法は、改質活性炭の比表面積や細孔容積の低下を極力抑える点でも好ましい。
すなわち、本発明は、酸性官能基の分解や脱離が、活性炭の比表面積や細孔容積の低下と比較して速やかに起こることを見出したことに基づくものであり、本発明の活性炭の改質方法によれば、活性炭の比表面積や細孔容積の低下を極力抑えつつ、活性炭に存在する酸性官能基の量を効果的に低減することができる。
加熱処理の時間とは、連続式炉の場合は、炉内の加熱源設置領域を通過する時間を意味する。加熱源が複数設置されている場合には、最も入口側に設置された加熱源から最も出口側に設置された加熱源までを通過する時間を意味する。炉内であっても加熱源設置領域以外であったり、炉から排出された後に活性炭が熱を保有していたとしても、加熱処理の時間には計上しない。なお、加熱源としては、電熱ヒーターやバーナー等が示される。
バッチ式炉の場合、加熱処理の時間とは、炉内で加熱源(例えば、電熱ヒーターやバーナー)により恒温的に加熱される時間を意味する。バッチ式炉の場合、炉内を所定温度(恒温的に加熱する温度)まで昇温する時間は、加熱処理の時間に計上しない。また、所定温度で加熱した後は、炉内に熱が残存していたり、活性炭が熱を保有していたとしても、加熱処理の時間には計上しない。
加熱処理の時間は、10分未満が好ましく、5分以下がより好ましく、1分以下がさらに好ましい。一方、加熱処理の時間の下限は、特に限定されない。活性炭がわずかな時間でも規定の温度で加熱処理されれば、酸性官能基の分解や脱離が起こるからである。しかし、必要最低限の加熱処理の時間を確保し、確実に活性炭を加熱処理する観点から、加熱処理の時間は、0.1秒以上が好ましく、1秒以上がより好ましい。
加熱処理の方式としては、連続式、バッチ式等の方式は問わない。加熱処理に用いる炉としては、例えば、ロータリーキルン、落下式急速焼成炉、トンネル炉、ローラーハース式焼成炉等の連続式炉;マッフル炉等のバッチ式炉を用いることができる。
連続式炉において加熱処理の時間を短くする方法としては、例えば、次の方法が示される。ロータリーキルンを用いる場合は、レトルト全長を短くしたり、レトルトの回転数を上げたり、レトルトの傾斜角度を大きくすることで、加熱処理の時間を短くすることができる。落下式急速焼成炉を用いる場合は、10秒程度までの加熱処理を容易に行うことができ、炉長(炉高)を短くすることでさらに加熱処理の時間を短縮することができる。トンネル炉、ローラーハース式焼成炉を用いる場合は、炉長を短くしたり、活性炭搬送速度を速くすることで、加熱処理の時間を短くすることができる。
加熱処理の時間の計測方法について、ロータリーキルンを例に、図1により説明する。ロータリーキルン1は、活性炭を内部で加熱処理する内筒(レトルト)2と、内筒2を覆う外筒3とを有している。内筒2の外側と外筒3の内側との間にはヒーター4が設置されている。内筒2は、原料活性炭投入側の入口開口5と、加熱処理された改質活性炭が排出される出口開口6とを有している。入口開口5には、原料活性炭を供給するためのフィーダー7が備わっている。フィーダー7は、内筒2の入口開口5に挿入された供給端8を有し、フィーダー7の供給端8の他方端近辺には、原料活性炭供給ホッパ9が接続している。ここで、ヒーター4の内筒2の軸方向の長さをxとし、フィーダー7の供給端8から内筒2の出口開口6までの長さをyとする。
原料活性炭は、ホッパ9からフィーダー7を介して供給端8から内筒2に供給され、このときの時間をT1とする。内筒2に供給された原料活性炭は、ロータリーキルンの回転により出口開口6側へ送り出され、出口開口6から改質活性炭として排出される、改質活性炭が排出され始めた時間をT2とする。このとき、加熱処理の時間は下記式により算出される。
加熱処理の時間=(T2−T1)×x/y
加熱処理することにより得られる改質活性炭の比表面積や細孔容積は、加熱処理前の活性炭と比較してできるだけ低下しないことが好ましい。例えば、改質活性炭の比表面積としては、500m2/g以上が好ましく、1,000m2/g以上がより好ましく、2,000m2/g以上がさらに好ましく、また4,000m2/g以下が好ましく、3,800m2/g以下がより好ましく、3,500m2/g以下がさらに好ましい。
改質活性炭の細孔容積としては、0.1mL/g以上が好ましく、0.4mL/g以上がより好ましく、1.0mL/g以上がさらに好ましく、また3.0mL/g以下が好ましく、2.5mL/g以下がより好ましく、2.0mL/g以下がさらに好ましい。改質活性炭の比表面積が500m2/g以上、または細孔容積が0.1mL/g以上であれば、改質活性炭を電気二重層キャパシタに適用した場合、質量基準静電容量の大きいキャパシタを得やすくなる。
加熱処理することにより得られる改質活性炭の酸性官能基の量は、所望の用途に応じて適宜設定される。加熱処理により得られる改質活性炭を電気二重層キャパシタ用電極材料に適用する場合は、酸性官能基の量はできるだけ少ない方が好ましく、例えば、1.0meq/g以下が好ましく、0.5meq/g以下がより好ましく、0.2meq/g以下がさらに好ましい。酸性官能基の量が1.0meq/g以下であれば、改質活性炭を電気二重層キャパシタに適用した場合、長期使用による静電容量の低下を低く抑えやすくなる。なお、改質活性炭の酸性官能基の量の下限は特に規定されない。
本発明の活性炭の改質方法により得られる改質活性炭は、電気二重層キャパシタ用電極材料に好適に使用できる。従って、前記改質活性炭を使用して、電気二重層キャパシタ用電極や電気二重層キャパシタを製造することが可能である。これら電極やキャパシタを製造するには、公知の製法を使用するとよい。
本発明の活性炭の改質方法により得られる改質活性炭を用いて作製される電気二重層キャパシタは、加熱処理による活性炭の比表面積や細孔容積の低下が極力抑えられているため、初期静電容量を高くすることができる。また、活性炭に存在する酸性官能基の量が効果的に低減されているため、長期使用による静電容量の低下も低く抑えられる。
電気二重層キャパシタ用電極としては、例えば、電極材料である活性炭、導電性付与剤、およびバインダーを混練し、溶媒を添加してペーストを調製し、このペーストをアルミ箔等の集電板に塗布した後、溶媒を乾燥除去したものや、前記ペーストを金型に入れプレス成形したものが挙げられる。
この電極に使用されるバインダーとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系高分子化合物や、カルボキシメチルセルロース、スチレン−ブタジエンゴム、石油ピッチ、フェノール樹脂等を使用することができる。また、導電性付与剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等を使用することができる。
電気二重層キャパシタは、一般に、電極、電解液、およびセパレータを主要構成とし、一対の電極間にセパレータを配置した構造となっている。電解液を例示すれば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、メチルエチルカーボネート等の有機溶剤にアミジン塩を溶解した電解液、過塩素酸の4級アンモニウム塩を溶解した電解液、4級アンモニウムやリチウム等のアルカリ金属の四フッ化ホウ素塩や六フッ化リン塩を溶解した電解液、4級ホスホニウム塩を溶解した電解液等が挙げられる。また、セパレータを例示すれば、セルロース、ガラス繊維、または、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンを主成分とした不織布、クロス、微孔フィルムが挙げられる。
以下に、実施例を示すことにより本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
<活性炭の改質>
[製造例1]
テキサコ社製ディレードコークスをアルカリ賦活処理し、水および酸性液により洗浄した後、115℃で乾燥させた活性炭(原料活性炭)を、窒素ガス雰囲気下、加熱処理した。加熱処理には、レトルトの外側に電熱ヒーターが設置された連続式ロータリーキルン(株式会社東洋製作所製)を用いた。ロータリーキルンは、レトルト全長が1000mmであり、ヒーターが設置された領域(加熱源設置領域)の長さが100mmであった。加熱処理は、レトルト内に窒素ガスを活性炭と並流で流しながら、レトルト外部より加熱することにより、加熱処理の温度1000℃にて行った。加熱処理では、レトルトを活性炭投入側が上になるように5°傾け、レトルトの回転数を8rpmに調整した。原料活性炭が加熱源設置領域を通過する時間(加熱処理の時間)は2秒であった。なお、レトルトから排出された活性炭は自然放冷により冷却した。
[製造例2]
製造例1で用いた原料活性炭を、窒素ガス雰囲気下、加熱処理した。加熱処理には、レトルトの外側に電熱ヒーターが設置された外熱式ジャバラキルン(岩佐機械工業株式会社製)を用いた。ジャバラキルンは、レトルト全長2965mmであり、ヒーターが設置された領域(加熱源設置領域)の長さが1300mmであった。加熱処理は、レトルト内に窒素ガスを活性炭と並流で流しながら、レトルト外部より加熱することにより、加熱処理の温度1000℃にて行った。なお、加熱源設置領域では、200mm間隔で7地点の雰囲気温度を測定し、その中で最も高い温度を示したレトルト入口側および出口側から4点目の地点(つまり、7地点の測定地点のうちの真ん中の地点)の温度が1000℃であった。原料活性炭が加熱源設置領域を通過する時間(加熱処理の時間)は5分であった。なお、レトルトから排出された活性炭は自然放冷により冷却した。
[製造例3]
製造例2において、キルン回転速度を下げることにより加熱処理の時間を9分とした以外は、製造例2と同様に原料活性炭を加熱処理した。
[製造例4]
製造例1で用いた原料活性炭を、窒素ガス雰囲気下、加熱処理した。加熱処理には、箱形マッフル炉を用いた。炉内に原料活性炭を入れた後、窒素ガスを流しながら、2時間かけて炉内の温度を1000℃まで昇温し、炉内の温度を1000℃で2時間保持し、その後加熱を止め、炉内温度が100℃以下になったところで活性炭を取り出した。製造例4では、加熱処理の時間は2時間であった。
[製造例5」
製造例1とは異なるロットのテキサコ社製ディレードコークスをアルカリ賦活処理し、水および酸性液により洗浄した後、115℃で乾燥させた活性炭(原料活性炭)を、窒素ガス雰囲気下、加熱処理した。加熱処理条件は、加熱処理の温度を800℃とした以外は、製造例1と同様に行った。
[製造例6]
製造例5で用いた原料活性炭を、加熱処理の温度800℃とした以外は製造例2と同様の処理条件で、加熱処理を行った。
[製造例7]
製造例6において、加熱処理の時間を9分とした以外は、製造例6と同様に原料活性炭を加熱処理した。
[製造例8]
製造例5で用いた原料活性炭を、加熱処理の温度800℃とした以外は製造例4と同様の処理条件で、加熱処理を行った。
<電気二重層キャパシタの作製>
[電極の作製]
製造例1〜8で得られた各々の活性炭に、ポリテトラフルオロエチレン粉末(市販のPTFE)とアセチレンブラックとを、電極材料:PTFE:アセチレンブラック=8:1:1(質量比)になるように混合し、ペースト状態になるまで混練した。次いで、ミニブレンダーで粉砕し、目開き500μmのステンレス鋼製篩により篩い分けし、篩の通過分を集めた。次いで、前記篩の通過分を、直径1インチの金型に入れ、500kg/cm2の圧力でプレス成形して、直径1インチ、厚み0.5mmのコイン型の電極を作製した。
[電気二重層キャパシタの組み立て]
真空条件下、200℃、1時間の条件で電極を乾燥した後、窒素ガスを流通させたグローブボックス内で電解液(テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートが1mol/lのプロピレンカーボネート溶液)を電極に真空含浸させた。この電極を、電解液を含浸させたポリプロピレン製セパレータ(Celgard社製「セルガード♯3501」)で挟み、さらにアルミニウム板で挟んで電気二重層キャパシタを組み立てた。
<活性炭の分析方法>
[比表面積]
マイクロメリティックス社製ASAP−2400窒素吸着装置を使用し、活性炭の窒素吸着等温線を測定するBET法により比表面積を求めた。
[細孔容積]
マイクロメリティックス社製ASAP−2400窒素吸着装置を使用し、相対圧P/P0(P:吸着平衡にある吸着質の気体の圧力、P0:吸着温度における吸着質の飽和蒸気圧)が0.93までの窒素吸着量を測定するBET法により求めた。
[平均細孔径]
細孔の形状をシリンダー状と仮定し、下記式に基づき平均細孔径を算出した。
平均細孔径(Å)=細孔容積(m3/g)/比表面積(m2/g)×4×1010
[酸性官能基の量]
酸性官能基の量は、Boehm法に従い、活性炭をナトリウムエトキシドと反応させた後、未反応のナトリウムエトキシドを塩酸で滴定して定量することにより求めた。具体的には、共栓付き三角フラスコ(容量100ml)に、活性炭2g、および0.1mol/lのナトリウムエトキシド50mlを加え、30分間の振とう後、30分間放置した。この振とうと放置を3回繰り返した。次いで、更に24時間放置し、ろ過分離して得られたろ液25mlを、1/10規定の塩酸で中和滴定した。また、ブランクテストも行った。そして、次式により酸性官能基の量を算出した。なお、Boehm法については、H.P.Boehm, Adzan. Catal, 16, 179 (1966)に、その詳細が記載されている。
酸性官能基の量(meq/g)=(a−b)×0.1/(S×25/50)
0.1:滴定に使用した塩酸濃度(mol/l)
a:ブランクテストにおける滴定量(ml)
b:活性炭を使用したときの滴定量(ml)
S:活性炭質量(g)
25:ろ液分取量(ml)
50:ナトリウムエトキシド量(ml)
<キャパシタの性能評価試験方法>
[静電容量]
充放電装置(楠本化成株式会社製ETAC Ver4.4)の充放電端子をキャパシタのアルミニウム板に接続し、25℃で、集電板間電圧が2.5Vになるまで40mAの定電流充電を行い、続けて、2.5Vの定電圧で30分間充電した。充電後、定電流(放電電流=0.010A)でキャパシタの放電を行った。このとき、キャパシタ電圧(V1,V2)と放電時間(t1,t2)を測定し、下式からキャパシタの静電容量を算出した、そして、キャパシタの静電容量を電極における電極材料層の総質量で除することで質量基準静電容量を算出し、キャパシタの静電容量を電極における電極材料層の総体積で除することで体積基準静電容量を算出した。
F(V1−V2)=−I(t1−t2)
F:キャパシタの静電容量(F)
V1:2.0(V)
V2:1.5(V)
t1:キャパシタ電圧がV1になったときの放電時間(秒)
t2:キャパシタ電圧がV2になったときの放電時間(秒)
I:0.010(A)
[内部抵抗]
前記静電容量の評価と同じ条件でキャパシタ充電を行った後、定電流(放電電流=0.010A)でキャパシタの放電を行った。このとき、キャパシタ電圧(V1,V2)と放電時間(t1,t2)を測定し、下記の2式からキャパシタの抵抗を算出した。
V1=(V1−V2)/(t1−t2)
R=(V0−VX)/I
R:抵抗(Ω)
V0:2.5(V)
VX:みなし電圧(V)
V1:2.0(V)
V2:1.5(V)
t1:キャパシタ電圧がV1になったときの放電時間(秒)
t2:キャパシタ電圧がV2になったときの放電時間(秒)
I:0.010(A)
[1000時間後の静電容量および内部抵抗]
キャパシタを、70℃の恒温槽内で2.7Vの電圧を印加した状態で1000時間保持した。その後、恒温槽から取り出し、上記した方法により、静電容量と内部抵抗を算出した。
<分析および試験結果>
原料活性炭および製造例1〜8で得られた改質活性炭の分析結果と、原料活性炭および前記改質活性炭を用いて作製した電気二重層キャパシタの性能評価試験結果を、表1,2に示す。
原料活性炭と改質活性炭の分析結果を見ると、比表面積と細孔容積は加熱処理の時間に対し緩やかに減少するのに対し、酸性官能基の量は2秒間の加熱処理だけで大きく減少し、それ以上の時間加熱処理しても酸性官能基の量はほとんど変化しなかった。このことから、酸性官能基の分解や脱離は、活性炭の比表面積や細孔容積の低下と比較して、速やかに起こることが分かる。
原料活性炭および改質活性炭を用いて作製した電気二重層キャパシタの性能評価試験結果を見ると、静電容量(初期)は加熱処理の時間に対し緩やかに減少する傾向を示した。静電容量の値は、比表面積および細孔容積にほぼ比例した。つまり、加熱処理の時間を短くすることで、比表面積や細孔容積の低下を極力抑え、電気二重層キャパシタの静電容量を高くすることができた。一方、内部抵抗(初期)は、加熱処理により減少したが、加熱処理の時間との相関はほとんど見られなかった。
1000時間後の静電容量を初期静電容量で除した静電容量維持率については、加熱処理を行った製造例1〜8は、いずれも原料活性炭より高い静電容量維持率を示した。静電容量維持率は、加熱処理の時間との相関はほとんど見られなかった。すなわち、加熱処理により活性炭の酸性官能基量が低減した結果、長期使用による静電容量の低下も低く抑えることができたと考えられる。
Figure 0005676074
Figure 0005676074
本発明の活性炭の改質方法により得られる活性炭は、電気二重層キャパシタ用電極材料、電気二重層キャパシタ用電極、電気二重層キャパシタ、吸着材等の用途へ適用できる。
本発明の活性炭の改質方法に用いられ得るロータリーキルンの概略図を表す。
符号の説明
1: ロータリーキルン
2: 内筒
3: 外筒
4: ヒーター
7: フィーダー
9: ホッパ

Claims (2)

  1. 活性炭を、連続式炉またはバッチ式炉において不活性ガスまたは還元性ガス雰囲気下、加熱処理する活性炭の改質方法であって、
    前記加熱処理には、昇温過程、及び降温過程を含まず、且つ
    前記加熱処理が800℃〜2000℃の範囲にあり、
    前記加熱処理の時間は、前記連続式炉の加熱源設置領域を通過する時間、または前記バッチ式炉の加熱源により恒温的に加熱される時間であって、前記加熱処理の時間は10分未満(0分を含まない)であることを特徴とする活性炭の改質方法。
  2. 前記活性炭が、炭素質物質をアルカリ金属化合物で賦活処理して得られた活性炭である請求項1に記載の活性炭の改質方法。
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