JP2012028668A - 塗布電極およびこれを用いたキャパシタ - Google Patents

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Abstract

【課題】適用するキャパシタの高出力化を図ることができると同時に、充放電サイクルの安定性向上を図ることができるキャパシタ用電極ならびに、これを用いた蓄電特性に優れるキャパシタ、特には電気二重層キャパシタおよびリチウムイオンキャパシタを提供する。
【解決手段】集電体と、該集電体上に積層される最大膜厚20μm以下、好ましくは10μm以下の電極層とを備え、該電極層が、酸性官能基量が0.02〜0.2mmol/gであり、かつ、平均粒径が4μm以下である粒状炭素電極材を含むキャパシタ用の塗布電極、ならびにこれを用いた電気二重層キャパシタおよびリチウムイオンキャパシタである。
【選択図】なし

Description

本発明は、集電体上に炭素電極材を含有する塗料を塗布してなる塗布電極に関する。また本発明は、当該塗布電極を備える電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等のキャパシタに関する。
近年、環境問題への対策から、鉛蓄電池やニッケル・カドミウム電池のような有害な重金属を含む電池に対する規制が強まりつつあるなか、パーソナルコンピュータや携帯用情報通信機器等のエレクトロニクス機器の小型軽量化、高性能化の要求が益々高まってきている。このような状況下、従来の鉛蓄電池やニッケル・カドミウム電池に替わる新たな蓄電デバイスとして、エネルギー密度、寿命、出力等においてより優れるリチウムイオン電池や、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等のキャパシタが注目されており、活発に研究開発が進められている。これらのリチウムイオン電池やキャパシタには、エレクトロニクス機器の小型軽量化、高性能化の要求に伴い、さらなる高性能化(高エネルギー密度化、高電圧化、高出力化、長寿命化、低価格化等)が要求されている。
リチウムイオン二次電池は、通常、炭素電極材を負極に、リチウム含有化合物を正極に使用し、正極と負極との間でリチウムイオンを移動させることにより、充放電を行なう。
電気二重層キャパシタは、正・負極に比較的比表面積の大きな炭素電極材を使用し、電解質イオンの吸脱着により充放電を行なう。
また、最近提案されたリチウムイオンキャパシタは、正極に電気二重層キャパシタと同様の比較的比表面積の大きな炭素電極材を使用し、負極にはリチウムイオン二次電池と同様の炭素電極材を使用するものである。リチウムイオンのインターカレーションと脱インターカレーション、電解質イオンの吸脱着により充放電を行ない、電気二重層キャパシタのエネルギー密度の不足を補う新しいタイプのキャパシタである。
リチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等の蓄電デバイスの蓄電特性は、これに用いる電極、さらには電極に含有される炭素電極材の性状、特性に大きく依存することから、これらに関し、従来から種々の検討がなされている(たとえば特許文献1)。たとえば、電極の性状に関しては、集電体上に形成する電極層の膜厚を薄くする一方、正・負極の対向面積を大きくすることにより、高出力化を図る試みがなされている。
一方、従来のキャパシタ等の蓄電デバイスにおいては、炭素電極材と電解液もしくは電解質との副反応による蓄電デバイス内でのガス発生、ならびに、ガス発生に伴うキャパシタのセルの膨れおよび/または充放電サイクルの安定性(充電後、一定期間保存したときの静電容量の保存前に対する比)の悪化などの問題を有しており、蓄電特性の安定性向上が求められていた。
特開2009−49236号公報
本発明の目的は、適用するキャパシタの高出力化を図ることができると同時に、充放電サイクルの安定性向上を図ることができるキャパシタ用電極ならびに、これを用いた蓄電特性に優れるキャパシタ、特には電気二重層キャパシタおよびリチウムイオンキャパシタを提供することにある。
本発明は、集電体と、該集電体上に積層される最大膜厚20μm以下、好ましくは10μm以下の電極層とを備え、該電極層が、酸性官能基量が0.02〜0.2mmol/gであり、かつ、平均粒径が4μm以下、好ましくは3μm以下である粒状炭素電極材を含む、キャパシタ用の塗布電極を提供する。本発明において「平均粒径」は、レーザー回折・散乱法により得られる頻度分布の累積頻度50%値として定義される。
電極層の最大膜厚と最小膜厚との差は、最大膜厚の20%未満であることが好ましい。
電極層に含有される粒状炭素電極材は、下記式[1]:
粒径分布の変動係数=(d84%−d16%)/(2×平均粒径) [1]
(式中、d84%、d16%はそれぞれ、レーザー回折・散乱法により得られる頻度分布において累積頻度84%、16%を示す粒径である。)
で示される粒径分布の変動係数が0.65以下であることが好ましい。
電極層に含有される粒状炭素電極材は、下記式[2]:
単粒子率=単粒子の個数/1次粒子総個数 [2]
(式中、「単粒子」とは、2次凝集物を形成していない1次粒子である。)
で示される単粒子率が0.7以上であることが好ましい。
電極層に含有される粒状炭素電極材は、BET比表面積が1400〜2300m2/gであることができる。
また本発明は、上記塗布電極に含有される、酸性官能基量が0.02〜0.2mmol/gであり、かつ、平均粒径が4μm以下である粒状炭素電極材の製造方法を提供する。本発明の粒状炭素電極材の製造方法は、下記工程を含む。
(1)酸性触媒および保護コロイド剤の存在下、水性媒体中でアルデヒド類とフェノール類とを反応させることにより粒状フェノール樹脂を形成する工程、
(2)該粒状フェノール樹脂を含有する反応液を加熱することにより、非熱溶融性の粒状フェノール樹脂を形成する工程、
(3)該非熱溶融性の粒状フェノール樹脂を炭化した後、賦活する工程、および
(4)賦活により得られる賦活物を、不活性ガス雰囲気下、600〜1000℃の範囲内であって、かつ、賦活温度よりも低い温度で熱処理する工程。
さらに本発明は、上記塗布電極を備える電気二重層キャパシタおよびリチウムイオンキャパシタを提供する。
本発明によれば、高出力化とともに、充放電サイクルの安定性向上を図ることができる電気二重層キャパシタおよびリチウムイオンキャパシタ用電極が提供される。当該電極を用いた本発明の電気二重層キャパシタおよびリチウムイオンキャパシタは、高出力かつ充放電サイクルの安定性に優れており、高い信頼性を有する。
実施例8〜14、比較例6〜10で作製した簡易対向型電気二重層キャパシタを示す概略断面図である。 実施例8〜14、比較例6〜10で作製した円筒型電気二重層キャパシタを示す概略断面図である。
<キャパシタ用電極>
本発明のキャパシタ用電極は、集電体の片面または両面に積層された最大膜厚20μm以下の電極層を備える塗布電極である。「塗布電極」とは、粒状炭素電極材を含む塗料を集電体上に塗布することにより電極層を形成した電極である。以下、本発明の塗布電極についてより詳細に説明する。
(集電体)
集電体は、たとえば、金属材料、炭素材料、導電性高分子材料などからなることができ、好ましくは金属製の集電体が用いられる。金属としては、通常、アルミニウム、白金、ニッケル、タンタル、チタン、ステンレス鋼、銅、アルミニウム合金、その他の合金等が用いられる。金属材料からなる集電体は、金属箔の他、エッチング金属箔、エキスパンドメタル、パンチングメタル、網状金属等の貫通孔を有するものであることができる。集電体の厚みは、たとえば5〜100μm程度である。
(電極層)
集電体の片面または両面に形成される電極層は、少なくとも活物質としての粒状炭素電極材を含有するものであり、その最大膜厚は20μm以下、好ましくは10μm以下とされる。電極層の最大膜厚をこのように小さくすることにより、キャパシタの出力を向上させることができる。すなわち、電極層の最大膜厚を小さくできると、所定容積のキャパシタセル内に封入できる塗布電極の面積を大きくすることができるために、1)集電体と電極層との接触面積の増加によって集電抵抗が低減される、2)電極層に含まれる粒状炭素電極材から集電体への電子移動距離が短くなることによって電子移動抵抗が低減される、3)キャパシタの充放電において粒状炭素電極材内の細孔に吸脱着される電解質イオンの電極層への浸透性が向上することにより電荷移動抵抗が低減される、等の効果が得られるため、これらにより、キャパシタの出力を高めることができる。
たとえば、ヤシ殻、石炭、石油系ピッチ、合成高分子等を原料として、これを炭化、賦活処理した後、粉砕して得られるような従来の粒状炭素電極材は、平均粒径が小さくても5μm程度であり、また、広幅な粒径分布を示すので、このような粒状炭素電極材を用いて、電極層の最大膜厚が20μm以下である塗布電極を実現することは困難であった。本発明によれば、後で詳述するような特性を具備する粒状炭素電極材を用いるため、最大膜厚20μm以下、さらには10μm以下の膜厚が均一な電極層を塗布により形成することが可能となる。電極層の最大膜厚の下限値は特に制限されないが、たとえば2μm以上であり、製造容易性の観点からは、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上である。
電極層の厚みは、できるだけ均一であることが好ましく、具体的には、最大膜厚と最小膜厚との差が、最大膜厚の20%未満であることが好ましく、10%未満であることがより好ましい。最大膜厚と最小膜厚との差が最大膜厚の20%以上であると、電極層の機械的強度が低下したり、電極層と集電体との密着性が低下して電極層の剥離が生じたりすることがある。とりわけ円筒型のキャパシタセルを作製する場合には、塗布電極の巻回し時に、電極層にヒビや巻き斑が生じたり、集電体からの剥離が生じたりしやすい傾向にある。また、電極層の厚みが不均一であると、電子移動抵抗や電荷移動抵抗も面内において不均一になることから、局所的な発熱が生じやすく、キャパシタの安定性に悪影響を与え得る。均一な電極層厚みは、たとえば、粒状炭素電極材の平均粒径、酸性官能基量、粒径分布、単粒子率などを後述する好ましい範囲内に制御することにより、実現することができる。
電極層は、粒状炭素電極材、ならびに必要に応じて添加される導電材、バインダーおよび溶媒等を含む電極形成用塗料(以下、塗料という)を集電体上に塗布し、必要に応じて乾燥することにより形成される。乾燥後、電極層表面の平坦化、電極層表面からの粉落ちの防止、電極密度の向上、電極層と集電体との密着性向上等を目的として、必要に応じてロールプレス等のプレス処理を施してもよい。塗料の塗布方法は特に制限されず、たとえば、ダイコーター、コンマコーター、ドクターブレード等による方法などを用いることができる。
(1)粒状炭素電極材
本発明においては、最大膜厚が20μm以下、さらには10μm以下の電極層を形成するために、平均粒径が4μm以下、好ましくは3μm以下、より好ましくは2μm以下の粒状炭素電極材が用いられる。平均粒径が4μmを超えると、膜厚が20μm以下となるように上記塗料を塗布しても、少なくとも一部において最大膜厚が20μmを超えたり、あるいは、電極層面内において膜厚にムラが生じ、均一な膜厚の電極層が得られないなどの不具合が生じやすい。なお、平均粒径が0.5μm未満になると、賦活時の顕著な飛散や、粉砕、解砕、分級工程の実施による製造効率の低下および製造コストの増加の原因となり得る。また、平均粒径が0.5μm未満になると、塗料調製時における取り扱い性が低下したり、塗布電極の電子移動抵抗が増加したりする場合がある。したがって、粒状炭素電極材の平均粒径は、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。後述する本発明の粒状炭素電極材の製造方法によれば、粉砕や分級工程を実施することなく、平均粒径が1μm程度と小さく、シャープな粒径分布を有し、単粒子率が高く、さらには真球度の高い粒状炭素電極材を得ることができる。
本発明において、粒状炭素電極材の「平均粒径」とは、レーザー回折式粒度測定機を用いた測定方法、すなわちレーザー回折・散乱法(マイクロトラック法)により得られる頻度分布の累積頻度50%値を意味する。レーザー回折式粒度測定機としては、日機装(株)製「Microtrac X100」を好適に用いることができる。
また、本発明で用いられる粒状炭素電極材の細孔表面に存在する酸性官能基量は、0.02〜0.2mmol/gとされ、好ましくは0.05〜0.2mmol/gである。酸性官能基量が0.2mmol/gを超えると、塗布電極をキャパシタに適用したときに、使用条件によっては粒状炭素電極材の酸性官能基とキャパシタの電解液または電解質との反応によりガスが発生する場合があり、キャパシタのセルの膨れが生じたり、充放電サイクルの安定性(充電後、一定期間保存したときの静電容量の保存前に対する比)が低下したりするおそれがある。一方、酸性官能基量が0.02mmol/g未満になると、上記塗料における粒状炭素電極材の分散性が悪化することにより、最大膜厚が20μm以下、さらには10μm以下で均一な膜厚を有する電極層を形成することが困難になる傾向にある。
ここで、本発明でいう酸性官能基とは、たとえばカルボキシル基、フェノール性水酸基などを意味する。酸性官能基量は、粒状炭素電極材1gに0.1N−NaOH 10mLを加え、振とうし、濾過により粒状炭素電極材を濾別して得られる濾液5mLを0.05N−HClで滴定し、下記式:
酸性官能基量(mmol/g)=0.05(mol/L)×滴定量(mL)×2/粒状炭素電極材重量(g)
によって算出される。上記式における粒状炭素電極材重量は1gである。
最大膜厚が20μm以下で、かつ均一な膜厚の電極層の形成を実現するためには、粒状炭素電極材は、比較的シャープな粒径分布を有するものであることが好ましい。具体的には、粒状炭素電極材を構成する粒子の粒径分布の変動係数は、0.65以下であることが好ましく、0.60以下であることがより好ましく、0.55以下であることがさらに好ましい。粒径分布の変動係数が0.65を超えると、粒径が10μm、さらには20μmを超える粒子が比較的多く含まれることによって、最大膜厚が20μm以下、さらには10μm以下で均一な膜厚を有する電極層を形成することが困難な場合がある。
本発明において「粒径分布の変動係数」とは、下記式[1]:
粒径分布の変動係数=(d84%−d16%)/(2×平均粒径) [1]
により算出される値である。式中、d84%、d16%はそれぞれ、レーザー回折・散乱法により得られる頻度分布において累積頻度84%、16%を示す粒径であり、式中の平均粒径は上記で定義される平均粒径である。
また、最大膜厚が20μm以下で、かつ均一な膜厚の電極層の形成を実現するためには、粒状炭素電極材は、2次凝集物の含有率が少ないことが好ましく、具体的には、粒状炭素電極材の単粒子率は、0.7以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましく、0.9以上であることがさらに好ましい。単粒子率が0.7未満であると、結果として、上記粒径分布の変動係数が0.65を超え、最大膜厚が20μm以下、さらには10μm以下で均一な膜厚を有する電極層を形成することが困難な場合がある。
本発明において「単粒子」とは、凝集による2次凝集物を形成していない1次粒子を意味し、「単粒子率」とは、水滴中に粒状炭素電極材を分散して光学顕微鏡観察を行ない、1次粒子を約300個含む、無作為に選択した視野において、1次粒子の総個数および単粒子の個数を数えたとき、下記式[2]:
単粒子率=単粒子の個数/1次粒子総個数 [2]
によって算出される値である。
粒状炭素電極材の粒子形状は、より均一な膜厚の電極層を形成できるよう、できるだけ真球状に近いことが好ましく、具体的には、真球度が0.5以上であることが好ましく、0.7以上であることがより好ましく、0.9以上であることがさらに好ましい。本発明において「真球度」とは、光学顕微鏡観察において約300個の1次粒子を含む視野を無作為に決定し、アスペクト比(短径/長径の比)が最も小さい1次粒子を10個選択して、これら10個の1次粒子各々について、その投影断面におけるアスペクト比を測定したときの、これら10個のアスペクト比の平均値を意味する。
なお、たとえば、単粒子率の高い粒状炭素電極材を得るための手段として、賦活後の炭素電極材を粉砕することが考えられるが、4μm以下まで機械的に粉砕を行なうのは製造コストの面からは難しく、また、粉砕装置由来の金属不純物混合リスクが高まることもある。さらに、粉砕を行なうと、単粒子率は向上するものの、粒径分布が広くなったり、真球度が低下してしまう。粒径分布を制御するために、さらに分級工程を行なうことが考えられるが、平均粒径が4μm以下の粒子を篩分けすることは極めて困難であるのが現状である。かかる問題点は、後述する本発明の製造方法により解決でき、後述する本発明の粒状炭素電極材の製造方法によれば、粉砕や分級工程を実施することなく、平均粒径が小さく、シャープな粒径分布を有し、単粒子率が高く、さらには真球度の高い粒状炭素電極材を得ることができる。
粒状炭素電極材のBET比表面積は、好ましくは1400〜2300m2/gであり、より好ましくは1600〜2100m2/gである。この範囲内であると、電解質イオンが粒状炭素電極材内の細孔にスムーズに吸脱着されるため、キャパシタの高容量および高出力化において有利であり、また、細孔形成の観点からみても有利である。
(2)導電材、バインダー、その他の添加剤
上記塗料に配合することができる導電材としては、たとえば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック等の導電性カーボンブラック;黒鉛、炭素繊維等の炭素系物質;金属ファイバー、金属微粒子等の金属物質などを用いることができる。導電材は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、導電性カーボンブラックが好ましく用いられる。
上記塗料における導電材の含有量は、塗布電極が適用されるキャパシタの容量を十分に高くするとともに、内部抵抗を十分に低減する観点から、粒状炭素電極材100質量部に対して、通常、0.1〜50質量部、好ましくは0.5〜15質量部、より好ましくは1〜10質量部である。
上記塗料に配合することができるバインダーとしては、たとえば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリル系樹脂などを用いることができる。バインダーは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。上記塗料におけるバインダーの含有量は、集電体と電極層との間の良好な密着性を確保する観点から、粒状炭素電極材100質量部に対して、通常、0.1〜50質量部、好ましくは0.5〜20質量部、より好ましくは1〜10質量部である。
上記塗料は、N−メチルピロリドン、アルコール、水等の溶媒を含むことができる。また、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系ポリマーおよびこれらのアンモニウム塩またはアルカリ金属塩などの分散剤に代表されるその他の添加剤を必要に応じて含有させることができる。
<粒状炭素電極材の製造方法>
本発明の塗布電極に用いられる上記粒状炭素電極材は、次の工程(1)〜(4)を含む方法により好適に製造することができる。
(1)酸性触媒および保護コロイド剤の存在下、水性媒体中でアルデヒド類とフェノール類とを反応させることにより粒状フェノール樹脂を形成する粒状フェノール樹脂形成工程、
(2)該粒状フェノール樹脂を含有する反応液を加熱することにより、非熱溶融性の粒状フェノール樹脂を形成する加熱工程、
(3)該非熱溶融性の粒状フェノール樹脂を炭化した後、賦活する炭化・賦活工程、および
(4)賦活により得られる賦活物を、不活性ガス雰囲気下、600〜1000℃の範囲内であって、かつ、賦活温度よりも低い温度で熱処理する熱処理工程。
上記製造方法によれば、比較的簡便な方法で、上記キャパシタ用塗布電極に用いる粒状炭素電極材として望ましい特性を示す炭素電極材を制御よく製造することが可能となる。すなわち、上記製造方法においては、保護コロイド剤の濃度の調整により、得られる粒状炭素電極材の平均粒径を制御することが可能であり、また、中間原料となるフェノール樹脂粒子および粒状炭素電極材に機械的破砕および/または分級を施すことなく、平均粒径、粒径分布、単粒子率、真球度が上記好ましい範囲となるような優れた特性を有する粒状炭素電極材を得ることができる。以下、各工程について詳細に説明する。
(1)粒状フェノール樹脂形成工程
本工程は、酸性触媒および保護コロイド剤の存在下、水性媒体中でアルデヒド類とフェノール類とを反応させることにより、粒状のフェノール樹脂を形成する工程である。アルデヒド類としては、たとえば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、グリオキサール、ベンズアルデヒドなどを挙げることができる。アルデヒド類は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、アルデヒド類は、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドまたはこれらの混合物であることが好ましい。使用するアルデヒド類の種類およびその使用量は、反応時において水性媒体中に溶解するように選択されることが好ましい。
フェノール類としては、たとえば、フェノール、ナフトール、ハイドロキノン、レゾルシン、キシレノール、ピロガロールなどを挙げることができる。フェノール類は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、水への溶解性および得られる粒状炭素電極材の性能とコストとのバランスを考慮すると、フェノール類はフェノールであることが好ましい。使用するフェノール類の種類およびその使用量は、反応時において水性媒体中に溶解するように選択されることが好ましい。
具体的には、たとえばフェノール類としてフェノール等を用いる場合には、フェノール類の使用量(仕込み量)は、反応液全重量に対するフェノール類の濃度(重量%)が10重量%以下となるように選択されることが好ましい。水への溶解度がより低いフェノール類(たとえばナフトール等)を用いる場合には、反応時における水性媒体中への溶解を保証し、粒状フェノール樹脂に優れた特性(微小な平均粒径および高単粒子率等)を発現させるために、さらに低い濃度を採用することが望ましい。ここで、「反応液全重量」とは、フェノール類、アルデヒド類、酸性触媒、保護コロイド剤および水性媒体の合計重量である。反応液全重量に対するフェノール類の濃度を10重量%以下とすることにより、反応開始段階から粒状フェノール樹脂形成段階に至る温度管理を容易に行なうことができる。たとえば、常温付近で反応を開始する場合においては、フェノール類の濃度を10重量%以下とすれば、特に反応初期において暴走反応等による過度の発熱を伴わないため、温度管理をほとんど行なうことなく、平均粒径が小さく、2次凝集が抑えられた粒状フェノール樹脂を形成させることができる。なお、フェノール類の濃度を10重量%より高くすることも可能であるが、その場合には、反応時の温度管理を適切に行なう必要があることが多い。
また、アルデヒド類の使用量(仕込み量)は、アルデヒド類に対するフェノール類の仕込みモル比(以下、P/Aともいう)が0.9以下となるように選択されることが好ましい。P/Aは、より好ましくは0.75以下であり、さらに好ましくは0.5以下である。P/Aを0.9以下とすることにより、平均粒径が小さく、2次凝集が抑えられ、さらには真球状により近く、粒径分布が狭く、遊離フェノール含有量の少ない粒状フェノール樹脂を形成させることが可能となる。また、P/Aを0.75以下とすることにより、さらに2次凝集を抑えることができる。これら粒状フェノール樹脂に係る特性をさらに良好なものとするためには、P/Aを0.5以下とすることが特に好ましい。P/Aの下限値については、特に制限はなく、たとえば水性媒体に溶解する範囲内でアルデヒド類を増やすことによってP/Aを小さくすることができるが、反応の効率を考慮すると、P/Aは0.1以上であることが好ましい。
上記酸性触媒は強酸性の触媒であることが好ましく、たとえば、塩酸、リン酸、硫酸等を挙げることができる。中でも、揮発性の酸であり乾燥操作により容易に除去できるため、残留酸成分による酸化反応が粒状フェノール樹脂の表面化学特性や強度に悪影響を与えることの少ない、塩酸であることが好ましい。
平均粒径が小さく、2次凝集が抑えられた粒状フェノール樹脂、さらにこれらに加えて真球状により近く、粒径分布が狭く、遊離フェノール含有量の少ない粒状フェノール樹脂を得るためには、反応を常温付近で開始する場合、反応液中における酸性触媒のモル濃度を2mol/L以上にすることが好ましく、3mol/L以上にすることがより好ましい。反応の開始温度を常温より高くすることにより、同等の反応速度を達成するために必要な酸性触媒のモル濃度を、反応開始温度が常温付近の場合よりも若干低くすることができる。酸性触媒のモル濃度は、工業生産に適した反応速度および付帯設備の耐酸性の観点から、6mol/L以下であることが好ましい。
上記保護コロイド剤はフェノール樹脂の粒状化に寄与するものであり、アルデヒド類とフェノール類との反応を保護コロイド剤の存在下で行なうことにより、平均粒径が小さく、2次凝集が抑えられた粒状フェノール樹脂、さらにこれらに加えて真球状により近く、粒径分布が狭く、遊離フェノール含有量の少ない粒状フェノール樹脂を形成することが可能になる。保護コロイド剤は水溶性であることが好ましく、水溶性保護コロイド剤として、たとえば、水溶性の多糖類誘導体を好適に用いることができる。好適に用いることができる水溶性の多糖類誘導体の具体例を挙げれば、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩;アラビアゴム、アカシア、グアーガム、ローカストビーンガム等の水溶性多糖類誘導体を主成分とする天然糊料などである。カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩を使用する場合、セルロースのカルボキシメチル化度は、特に限定されるものではないが、カルボキシメチル化度75%程度のものが市販されており、これを好適に用いることができる。なお、保護コロイド剤は、乾燥粉末として入手される場合、これを直接反応液に添加、溶解してもよく、あるいは、あらかじめ保護コロイド剤の水溶液を調製し、これを反応液に添加してもよい。
保護コロイド剤の使用量は、固形分重量で、上記フェノール類の使用量の0.2重量%程度以上とすることが好ましい。保護コロイド剤の使用量が0.2重量%未満である場合には、平均粒径が十分に小さな粒状フェノール樹脂を得ることができず、平均粒径4μm以下の粒状炭素電極材を得ることが困難となる。保護コロイド剤の使用量の上限に特に制限はないが、好ましくは、フェノール類の使用量の3重量%以下である。3重量%より多い場合、平均粒径が4μm以下の粒状炭素電極材を得ることはできるが、3重量%を超える量の保護コロイド剤を添加しても、それに見合うだけの効果が得られない傾向にある一方、反応液の粘度上昇により、後述の分離工程等において分離速度が低下する傾向にある。このように、保護コロイド剤の使用量の調整により、粒状フェノール樹脂の平均粒径、ひいては粒状炭素電極材の平均粒径を制御することができる。
上記水性媒体としては、水または水と水溶性有機溶媒との混合溶媒を挙げることができるが、本発明においては、水溶媒が好ましく用いられる。水性媒体の使用量は、酸性触媒の濃度が上記範囲内となるように選択され、好ましくは、さらにフェノール類の濃度が上記好ましい範囲内となるように選択される。
次に、アルデヒド類、フェノール類、酸性触媒および保護コロイド剤を用いて反応を行なう具体的方法について述べる。反応の具体的方法としては、次の2つの方法を挙げることができる。(i)水性媒体に酸性触媒と保護コロイド剤とアルデヒド類とを混合して混合液を調製した後、該混合液を攪拌しながらフェノール類を添加する方法、(ii)水性媒体に保護コロイド剤とアルデヒド類とフェノール類とを混合して混合液を調製した後、該混合液を攪拌しながら酸性触媒を添加する方法。
上記(i)および(ii)のいずれの方法においても、上記混合液は略均一な溶液であることが好ましい。すなわち、水性媒体に混合する溶質が完全に溶解しているか、または少なくともほぼ完全に溶解していることが好ましい。混合液の調製において、混合の順序は特に制限されるものではない。また、当該混合液の反応開始時の温度は、特に制限されないが、好ましくは10〜50℃程度、さらに好ましくは20〜40℃程度である。
上記(i)の方法においては、上記混合液を攪拌しながらフェノール類を添加することにより、アルデヒド類とフェノール類との反応を行なう。フェノール類の添加は、フェノール類を直接混合液に添加することにより行なってもよく、あるいは、あらかじめフェノール類を水に溶解して、当該水溶液を混合液に添加するようにしてもよい。当該反応は、反応温度が10〜60℃程度、好ましくは20〜50℃程度となるように制御されることが好ましい。反応温度が約10℃未満である場合、反応速度が小さくなる傾向にあり、反応温度が60℃を超えると、粒径の粗大化や2次凝集物の増加を起こすおそれがある。なお、上記混合液の反応開始時の温度を20〜30℃程度の常温付近とし、反応液全重量に対するフェノール類の濃度を10重量%以下とすることにより、過度の発熱を伴わないため、温度管理をほとんど行なうことなく、上記好ましい温度範囲で反応を行なわせることが可能である。
上記(ii)の方法においては、上記混合液を攪拌しながら酸性触媒を添加することにより、アルデヒド類とフェノール類との反応を行なう。酸性触媒の添加は、一度に行なってもよく、あるいは一定の時間をかけて滴下により行なってもよい。また、酸性触媒の添加は、酸性触媒を直接混合液に添加することにより行なってもよく、あるいは酸性触媒を水で希釈して、当該希釈液を混合液に添加するようにしてもよい。反応温度は、上記(i)の場合と同様に、好ましくは10〜60℃程度、より好ましくは20〜50℃程度である。
上記(i)および(ii)の方法のいずれにおいても、反応が進行するにつれ、反応液は次第に白濁化(懸濁化)し、粒状フェノール樹脂が形成されるが、このような白濁化は、典型的にはフェノール類または酸性触媒の添加後、数十秒〜数分後に起こる。白濁化の後、典型的には反応液は、淡いピンク色〜濃ピンク色を呈するが、このような着色が見られるまで反応を継続することが好ましい。白濁後着色を呈するまでの時間は、概して数十分〜数時間程度である。
(2)加熱工程
本工程は、上記粒状フェノール樹脂を含有する反応液を加熱することにより、該粒状フェノール樹脂を非熱溶融性とする工程である。このような非熱溶融性は、加熱による樹脂の架橋、硬化によってもたらされるものである。ここで、粒状フェノール樹脂が「非熱溶融性」を有するとは、特定の高温加圧条件下において粒状フェノール樹脂が融着しないことを意味するものであり、具体的には、粒状フェノール樹脂試料(乾燥品)約5gを、2枚の0.2mm厚ステンレス板間に挿入し、あらかじめ100℃に加温したプレス機で、50kgの総荷重で2分間プレスしたときに、溶融および/または融着により、粒状フェノール樹脂が平板を形成したり、フェノール樹脂粒子が変形したり、またはフェノール樹脂粒子同士が互いに接着しない性質と定義される。
本工程における反応液の加熱温度は、60℃以上であることが好ましく、より好ましくは70℃以上である。また、反応液の加熱温度は、好ましくは100℃以下であり、より好ましくは90℃以下である。加熱温度が60℃未満である場合には、十分な非熱溶融性が得られないおそれがある。また、加熱温度が100℃を超える場合には、コンデンサを有する反応器が必要であったり、付帯設備等の耐酸性が問題となることがある。なお、加熱温度が60℃程度と比較的低い場合であっても、十分な保持時間を設けることにより十分な非熱溶融性を付与することが可能である。
加熱時間は、粒状フェノール樹脂に十分な非熱溶融性を付与できる限り特に限定されるものではなく、加熱温度にもよるが、典型的には数分〜数時間程度である。加熱温度および加熱時間の調整により、フェノール樹脂の重合度および架橋度を制御することができる。
上記加熱工程の後、適宜の温度まで反応液を冷却した後、あるいは反応液を冷却することなく、得られた非熱溶融性粒状フェノール樹脂を反応液から分離する。分離方法としては、たとえば、濾過や圧搾などであることができる。このような分離操作のための装置として、たとえば、濾過装置、遠心脱水機、ベルトプレス、フィルタープレスなどを用いることができる。減圧留去、スプレードライなどの蒸発を利用した分離方法は、反応液が高濃度の酸性触媒を含むことから機器を傷める可能性があり、好ましくない。濾過による分離操作を行なう場合、珪藻土等の各種濾過助剤や凝集剤を用いてもよい。なお、得られる非熱溶融性粒状フェノール樹脂は、概して、比重が約1.2〜1.3であり、静置により沈降することから、当該分離操作に先立ってデカンテーション等の予備操作を行なってもよい。
上記分離工程の後、分離した粒状フェノール樹脂を洗浄する工程を設けてもよい。洗浄の具体的方法としては、たとえば(a)上記分離操作により分離されたフェノール樹脂ケーキに洗浄液を添加する方法(たとえば、分離された濾過機上のフェノール樹脂ケーキへ洗浄液を注ぎ、洗浄液を加圧または減圧により除去する等)、(b)洗浄液中に分離されたフェノール樹脂ケーキを分散させた後、再度分離操作を行なう方法、を挙げることができる。洗浄液としては、水を好適に用いることができる。水を用いて洗浄することによりフェノール樹脂ケーキ中の酸性成分を除去することができる。
また、洗浄操作の一部として、あるいは上記水による洗浄操作の代わりに、塩基性水溶液に接触させることにより中和反応を行なってもよい。中和反応を行なうことにより、粒状フェノール樹脂表面に付着した酸性触媒成分等を効果的に除去することができる。中和反応に用いる塩基性水溶液としては、有機または無機の弱塩基性水溶液を用いることが好ましい。強塩基性の濃厚な水溶液を用いると、粒状フェノール樹脂が変色したり、溶解することがある。弱塩基性水溶液としては、たとえばアンモニア水溶液を好適に用いることができる。アンモニア水溶液を用いた場合、生成する塩は水溶性であるため、水洗により当該塩を除去できる。また、微量の残留塩も加熱により昇華除去できる。
洗浄された粒状フェノール樹脂は、乾燥させることなく含水状態のまま次工程に供されてもよいし、乾燥させてもよい。乾燥の方法としては、特に限定されないが、たとえば棚型の静置乾燥機、気流乾燥機、流動層乾燥機などを用いた方法を挙げることができる。乾燥を行なうことにより、含水率約5%以下の良好な流動性を示す非熱溶融性粒状フェノール樹脂を得ることができる。本発明の方法によれば、解砕操作を行なうことなく、高い単粒子率を示す粒状フェノール樹脂を得ることができるが、上記乾燥工程の際または後に、解砕機などを用いて軽度の解砕を行なうことにより、さらに単粒子率を向上させてもよい。
以上のようにして得られる非熱溶融性粒状フェノール樹脂は、典型的には、粒径分布の変動係数が0.65以下であり、単粒子率が0.7以上であり、真球度が0.5以上である。また、平均粒径に関しても、保護コロイド剤の使用量の調整により、約5μm以下の範囲で所望の値とすることができる。なお、次工程の炭化・賦活工程により、粒子の平均粒径は、幾分(典型的には3割程度)縮小するため、この点を考慮して非熱溶融性粒状フェノール樹脂の平均粒径を制御する必要がある。粒状炭素電極材の特性(平均粒径、粒径分布、単粒子率等)は、中間原料である非熱溶融性粒状フェノール樹脂の特性によって定まる。上記非熱溶融性粒状フェノール樹脂の製造方法によれば、非熱溶融性粒状フェノール樹脂の特性を適切な範囲に制御可能であるため、電気二重層キャパシタまたはリチウムイオンキャパシタ用電極材として望ましい特性を有する炭素電極材を好適に得ることができる。なお、非熱溶融性粒状フェノール樹脂における平均粒径、粒径分布の変動係数、単粒子率の定義およびその測定方法は、粒状炭素電極材と同様である。
また、上記方法によれば、遊離フェノール含量が非常に小さい(500ppm以下、好ましくは300ppm以下、より好ましくは200ppm以下)非熱溶融性粒状フェノール樹脂を製造することができる。このような遊離フェノール含量が非常に小さい非熱溶融性粒状フェノール樹脂を用いると、炭化に伴う微小クラックの発生や残炭率の低下を抑制または回避することができ、また賦活後の細孔径分布がシャープな粒状炭素電極材を得ることができる。また、遊離フェノールは人体や環境に有害であるため、このような粒状フェノール樹脂を用いることにより、人体や環境に対し安全性の高い製造方法が提供される。
粒状フェノール樹脂の「遊離フェノール含有量」とは、次のような試験により算出される値と定義される。すなわち、粒状フェノール樹脂試料(乾燥品)約10gを精秤し、190mLのメタノール中で還流下30分間抽出し、ガラスフィルターで濾過する。濾液中のフェノール類濃度を液体クロマトグラフィーにより定量して、該濾液中のフェノール類重量を算出する。該フェノール類重量と試料重量との比、すなわち、濾液中のフェノール類重量/粒状フェノール樹脂試料重量を「遊離フェノール含有量」とする。
(3)炭化・賦活工程
本工程は、得られた非熱溶融性粒状フェノール樹脂を炭化した後、賦活する工程である。非熱溶融性粒状フェノール樹脂の炭化(焼成)は、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスの非酸化性雰囲気下、500〜2500℃、好ましくは500〜1200℃、より好ましくは550〜1000℃の温度範囲で行なわれる。賦活を効率的に進めることができることから、炭化温度は、特に好ましくは900℃程度以下である。炭化を行なう装置としては、たとえば電気炉、外熱式ガス炉などの従来公知の装置を用いることができる。
炭化工程に引き続き行なわれる賦活処理の温度は、500〜1100℃、好ましくは800〜1000℃、さらに好ましくは850〜950℃である。賦活処理の温度が、1100℃より高い場合には、炭素電極材表面の酸化、炭素骨格の酸化による、残炭率の低下等が生じる場合がある。また、500℃より低い場合には、賦活処理による細孔形成が十分に進行しない。
賦活処理には、酸素、二酸化炭素、水蒸気もしくはこれらの2種以上の混合ガス、またはこれらのガスを含む、窒素、アルゴン、ヘリウム等の雰囲気ガス、メタン、プロパン、ブタン等の燃焼ガスなどを用いることができる。賦活処理は、賦活による炭素材の重量減少率が5〜90%となるように行なわれることが好ましい。また、メソポアと呼ばれる比較的大きな細孔を形成する場合には、ニッケル、コバルト、鉄等の金属または金属化合物を適宜添加して賦活処理を行なってもよい。さらに、水酸化カリウム、塩化亜鉛等の薬品を添加する薬品賦活を行なってもよい。
上記工程(1)〜(2)を経て得られた非熱溶融性粒状フェノール樹脂をそのまま用いて炭化・賦活処理を行なう場合、炉内等で粒状フェノール樹脂が舞い、これが排ガスと同伴して排出されることにより、収率の低下、操業性の低下が生じる場合がある。このような場合には、炭化工程に先立ち、粒状フェノール樹脂を適度な強度および大きさを有する粒子に造粒し、この造粒された粒子を炭化・賦活処理に供してもよい。造粒においては、バインダーとして、コールタール、ピッチ、クレオソート油、液状フェノール樹脂、液状メラミン樹脂、ポリビニルアルコール、澱粉、結晶性セルロース粉末、メチルセルロース等を用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
造粒は、非熱溶融性粒状フェノール樹脂およびバインダーを、ニーダー等の混合機を用いて均一に混合した後、湿式押出造粒機、竪型造粒機、半乾式ディスクペレッター、顆粒製造機等を用いて、粒状物に成形することにより行なうことができる。成形は、通常室温で行なわれるが、ピッチ成分等が多い場合には、加熱下で実施してもよい。造粒物の形状、大きさは特に制限されないが、たとえば直径0.5〜5mm、長さ1〜10mm程度の円柱状、直径0.1〜10mm程度の球状などとすることができる。なお、混合、成形時の作業性の向上等を目的として、たとえばエチレングリコール、ポリオキシエチレン、アルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリカルボン酸アンモニウム塩等の界面活性剤、液状熱硬化性樹脂等の硬化剤、ポリビニルアルコール等の糊料、押出造粒用の可塑剤などが添加されてもよい。造粒物の強度は、炭化・賦活処理および後述する熱処理の間ある程度形状を保持でき、後述する熱処理工程終了後に解砕可能な強度である。
(4)熱処理工程
本工程は、賦活により得られる賦活物を、不活性ガス雰囲気下、600〜1000℃の範囲内、好ましくは800〜950℃の範囲内であって、かつ、賦活温度よりも低い温度で熱処理する工程である。賦活処理後に、このような熱処理を行なうことにより、酸性官能基量が0.02〜0.2mmol/gである粒状炭素電極材を得ることができる。熱処理温度が600℃未満であると、酸性官能基量を十分に低減させることができない。また、熱処理温度が1000℃を超えたり、あるいは、賦活温度以上であると、賦活工程で形成したミクロポアが収縮しBET比表面積が低下することがあり、また、酸性官能基量が極端に低下して上記塗料における粒状炭素電極材の分散性が悪化することがある。
不活性ガスとしては、たとえば、窒素、アルゴン、ヘリウムもしくはこれらの混合ガスなどを用いることができる。熱処理時間は、酸性官能基量が上記範囲内となる限り特に制限されないが、通常0.5〜10時間である。
非熱溶融性粒状フェノール樹脂の造粒物を炭化・賦活、ついで熱処理した場合には、熱処理工程後、造粒物の解砕を行なう。解砕は、たとえば、ボールミル、振動ミル、ローターミル、ハンマーミル、ジェットミル等の粉砕機、解砕機を用いて行なうことができるが、粒状炭素電極材の諸特性(平均粒径、粒径分布、単粒子率、真球度等)に影響を与えない条件で行なわれることが極めて望ましい。
上記方法に従う粒状炭素電極材の製造方法によれば、平均粒径が4μm以下であり、酸性官能基量が0.02〜0.2mmol/gであり、さらには、粒径分布の変動係数が0.65以下、単粒子率が0.7以上、真球度が0.5以上である、本発明の塗布電極に好適に適用できる粒状炭素電極材を比較的簡便な方法で、制御よく調製することが可能となる。
<キャパシタ>
本発明の塗布電極は、電気二重層キャパシタの正極および/または負極として、あるいは、リチウムイオンキャパシタの正極として好適に使用することができ、本発明の塗布電極を備えるこれらのキャパシタは、高出力であるとともに、充放電サイクルの安定性に優れたものである。本発明の電気二重層キャパシタおよびリチウムイオンキャパシタは、その正極および/または負極に本発明の塗布電極を用いること以外は従来公知の構成であることができる。これらキャパシタの形状は特に制限されず、積層型、円筒型などのセルを有するものであることができる。
電気二重層キャパシタに用いる電解液としては、トリメチルエチルアンモニウムイオンのような第4級アンモニウムカチオンやスピロ−(1,1')−ビピロリジニウムイオンのようなスピロ型カチオンと、テトラフルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン、過塩素酸アニオン、ビストリフルオロメタンスルホンイミドアニオン等とを組み合わせた塩などを電解質として溶媒に溶解したものを用いることができる。溶媒は、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのカーボネート類;γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチルラクトン、β−メチル−γ−ブチルラクトン、γ−バレロラクトン、3−メチル−γ−バレロラクトンなどのラクトン類;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類;ジメチルスルフォキシド、ジエチルスルフォキシドなどのスルフォキシド類;ジメチルフォルムアミド、ジエチルフォルムアミドなどのアミド類;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどのエーテル類;ジメチルスルホラン、スルホランから選ばれる1種または2種以上からなる有機溶媒が好ましい。ただし、エチレンカーボネート等の高融点溶媒を使用する場合は、低温での使用を考慮し、プロピレンカーボネート等の低融点溶媒との混合溶媒とする必要がある。また、電解液中の水分は、高電圧時での分解を考慮しできるだけ少ないことが好ましく、具体的には、200ppm以下、さらには50ppm以下であることが好ましい。
リチウムイオンキャパシタの負極に用いる電極材(電極活物質)としては、リチウムイオンを可逆的に担持できる物質であれば特に制限されず、たとえば、リチウムイオン二次電池の負極で用いられる電極活物質が広く使用できる。中でも、黒鉛、難黒鉛化炭素等の結晶性炭素材料、ハードカーボン、コークス等の炭素材料、ポリアセン系骨格構造を有するポリアセン系有機半導体(PAS)が好ましい。これらの炭素材料およびPASは、フェノール樹脂等を炭化させ、必要に応じて賦活、粉砕したものを用いる。
リチウムイオンキャパシタに用いる電解液としては、カチオンがリチウムイオンであり、アニオンがPF6 -、BF4 -、AsF6 -、SbF6 -、N(RfSO32-、C(RfSO33-、RfSO3 -(Rfはそれぞれ炭素数1〜12のフルオロアルキル基を表す)、F-、ClO4 -、AlCl4 -、AlF4 -等であるリチウム塩を電解質として溶媒に溶解したものを用いることができる。溶媒は、電気二重層キャパシタについて上述したものを用いることができる。
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
〔塗布電極の作製〕
<実施例1:塗布電極1の作製>
(1)粒状フェノール樹脂Aの調製
35重量%塩酸と36重量%ホルムアルデヒド水溶液とを用いて、ホルムアルデヒド濃度10重量%および塩酸濃度16重量%である混合溶液20,000gを調製した後、該混合溶液にカルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム塩の2重量%水溶液80gを添加し、攪拌して均一溶液とした。次に、該均一溶液の温度を20℃に調整した後、攪拌しながら、30℃の95重量%フェノール700gを加えた。なお、反応液全重量に対するフェノール類の濃度は3.2重量%、ホルムアルデヒドに対するフェノールの仕込みモル比(P/A)は0.11、反応液中の塩酸のモル濃度は4.7mol/Lである。フェノールの添加から約120秒で反応液は白濁化した。白濁化後も攪拌速度を落として反応を継続したところ、フェノールの添加から約30分後に反応液は淡いピンク色に着色した。このとき、反応液の温度は30℃に達していた。反応液の着色後、外部加熱により反応液を80℃に加熱し、この温度で30分間保持した。ついで、この反応液を濾過し、得られたケーキを5,000gの水で洗浄した後、5,000gの0.5重量%アンモニア水溶液に懸濁させて、40℃で1時間中和反応を行なった。中和反応後、当該懸濁液をアスピレータを用いて吸引濾過し、5,000gの水で洗浄し、50℃の乾燥機で10時間乾燥させることにより、804gの淡黄色の粒状フェノール樹脂Aを得た。
(2)粒状炭素電極材Iの調製
粒状フェノール樹脂Aを坩堝に入れ、該坩堝を電気炉に入れた。電気炉内を充分に窒素ガスで置換した後、引き続き窒素を流しながら、室温から100℃/時間の速度で昇温し、600℃で3時間熱処理を行ない炭化させた。その後、100℃/時間の速度で昇温し、950℃にて5時間、水蒸気を飽和した窒素気流中で賦活処理を行なった。その後、温度を900℃まで降温し、30分間窒素ガスのみを通気して炉内を窒素雰囲気に置換した後、900℃で2時間熱処理を行ない、粒状炭素電極材Iを得た。なお、粒状炭素電極材Iを得るにあたり、賦活処理後または熱処理後に、粉砕および分級処理は行なわなかった。
(3)塗布電極1の作製
バインダーとしてのポリフッ化ビニリデン(PVDF、(株)クレハ製「クレハKFポリマー」)をN−メチルピロリドン(NMP)に溶解した溶液中に、粒状炭素電極材Iおよび導電材であるアセチレンブラックを配合し、スターラーで10分間分散し塗料を得た。塗料の配合比率(重量比)は、粒状炭素電極材I/バインダー/導電材/NMP=100/5/5/400とした。この塗料をベーカー式アプリケーター(テスター産業社製)を用いて、厚さ20μm、幅25cm、長さ30cmのエッチングアルミ箔の片面に、乾燥後の塗布電極層の厚さが10μm、幅20cm、長さ25cm以上となるように塗工した。ついで、塗布電極層が形成されたエッチングアルミ箔を自然乾燥後、真空乾燥機にて45℃で2時間、75℃で2時間、100℃で2時間、125℃で2時間、150℃で16時間乾燥し、塗布電極1を作製した。
<実施例2:塗布電極2の作製>
実施例1で調製した粒状炭素電極材Iを使用し、バインダーとしてSBR(スチレン・ブタジエン・ラバー)を用いて塗布電極2を作製した。すなわち、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム塩を蒸留水に溶解した水溶液中に、粒状炭素電極材Iおよび導電材であるアセチレンブラックを配合し、プラネタリーミキサーにて15分間分散処理を行なった。その後、バインダーであるSBR系エマルジョンを所定量配合し、5分間攪拌して塗料を得た。塗料の配合比率(重量比)は、粒状炭素電極材I/バインダー/導電材/CMCナトリウム塩/水=90/10/2/2/400とした。この塗料を、ベーカー式アプリケーターを用いて、実施例1で用いたのと同じエッチングアルミ箔の片面に、乾燥後の塗布電極層の厚さが10μm、幅20cm、長さ25cm以上となるように塗工した。100℃で1分間、ついで150℃で1分間粗乾燥後、ロールプレスを行なった。その後、真空乾燥機にて150℃で12時間乾燥し、塗布電極2を作製した。
<実施例3:塗布電極3の作製>
実施例1で調製した粒状炭素電極材Iを使用し、アクリル系バインダーを用いて塗布電極3を作製した。すなわち、CMCナトリウム塩を蒸留水に溶解した水溶液中に、粒状炭素電極材Iおよび導電材であるアセチレンブラックを配合し、プラネタリーミキサーにて15分間分散処理を行なった。その後、バインダーであるアクリル系エマルジョンを所定量配合し、5分間攪拌して塗料を得た。塗料の配合比率(重量比)は、粒状炭素電極材I/バインダー/導電材/CMCナトリウム塩/水=90/10/2/2/400とした。この塗料をベーカー式アプリケーターを用いて、実施例1で用いたのと同じエッチングアルミ箔の片面に、乾燥後の塗布電極層の厚さが10μm、幅20cm、長さ25cm以上となるように塗工した。100℃で1分間、ついで150℃で1分間粗乾燥後、ロールプレスを行なった。その後、真空乾燥機にて150℃で12時間乾燥し、塗布電極3を作製した。
<実施例4:塗布電極4の作製>
(1)粒状フェノール樹脂Bの調製
36重量%ホルムアルデヒド水溶液1,668gと、95重量%フェノール620gと、水1,590gとを混合して混合溶液3,878gを調製した後、該混合溶液にCMCナトリウム塩の2重量%水溶液72gを添加し、攪拌して均一溶液とした。次に、該均一溶液の温度を20℃に調整した後、攪拌しながら、30℃の35重量%塩酸2,742gを加えた。塩酸の添加から約20秒で反応液は白濁化した。白濁化後も反応を継続したところ、塩酸添加から約30分後に反応液はピンク色に着色した。その後、実施例1と同様にして、加熱、分離、洗浄(中和処理も含む)および乾燥を行ない、粒状フェノール樹脂Bを得た。なお、反応液全重量に対するフェノール類の濃度は8.8重量%、ホルムアルデヒドに対するフェノールの仕込みモル比(P/A)は0.31、反応液中の塩酸のモル濃度は4.4mol/Lである。
(2)粒状炭素電極材IIの調製および塗布電極4の作製
粒状フェノール樹脂Aの代わりに、粒状フェノール樹脂Bを用いたこと以外は実施例1と同様にして炭化、賦活、熱処理を行ない、粒状炭素電極材IIを得た。なお、粒状炭素電極材IIを得るにあたり、賦活処理後または熱処理後に、粉砕および分級処理は行なわなかった。次に、粒状炭素電極材Iの代わりに、粒状炭素電極材IIを用いたこと以外は実施例2と同様にして塗料を調製し、これを、乾燥後の塗布電極層の厚さが20μm、幅20cm、長さ25cm以上となるように塗工したこと以外は実施例2と同様にしてエッチングアルミ箔の片面に塗布電極層を形成することにより塗布電極4を作製した。
<実施例5:塗布電極5の作製>
乾燥後の塗布電極層の厚さが5μm、幅20cm、長さ25cm以上となるように塗工したこと以外は実施例4と同様にしてエッチングアルミ箔の片面に塗布電極層を形成することにより塗布電極5を作製した。
<実施例6:塗布電極6の作製>
賦活後の熱処理温度を980℃にしたこと以外は実施例1と同様にして粒状フェノール樹脂Aから粒状炭素電極材IIIを得た。なお、粒状炭素電極材IIIを得るにあたり、賦活処理後または熱処理後に、粉砕および分級処理は行なわなかった。次に、粒状炭素電極材Iの代わりに、粒状炭素電極材IIIを用いたこと以外は実施例2と同様にしてエッチングアルミ箔の片面に塗布電極層を形成することにより塗布電極6を作製した。
<実施例7:塗布電極7の作製>
賦活後の熱処理温度を770℃にしたこと以外は実施例6と同様にして粒状フェノール樹脂Aから粒状炭素電極材IVを得た。なお、粒状炭素電極材IVを得るにあたり、賦活処理後または熱処理後に、粉砕および分級処理は行なわなかった。次に、乾燥後の塗布電極層の厚さが20μm、幅20cm、長さ25cm以上となるように塗工したこと以外は実施例6と同様にしてエッチングアルミ箔の片面に塗布電極層を形成することにより塗布電極7を作製した。
<比較例1:塗布電極8の作製>
(1)粒状フェノール樹脂Cの調製
95重量%フェノールを1,050g添加したこと以外は、実施例1と同様に反応を行ない、粒状フェノール樹脂Cを得た。反応液全重量に対するフェノール類の濃度は4.7重量%、ホルムアルデヒドに対するフェノールの仕込みモル比(P/A)は0.16、反応液中の塩酸のモル濃度は4.6mol/Lである。
(2)粒状炭素電極材Vの調製および塗布電極8の作製
粒状フェノール樹脂Aの代わりに、粒状フェノール樹脂Cを用いたこと以外は実施例1と同様にして炭化、賦活、熱処理を行ない、粒状炭素電極材Vを得た。なお、粒状炭素電極材Vを得るにあたり、賦活処理後または熱処理後に、粉砕および分級処理は行なわなかった。次に、粒状炭素電極材Iの代わりに、粒状炭素電極材Vを用いたこと以外は実施例2と同様にして、乾燥後の塗布電極層の厚さが10μm、幅20cm、長さ25cm以上となるような条件でエッチングアルミ箔の片面に塗布電極層を形成することにより塗布電極8を作製した。
<比較例2:塗布電極9の作製>
賦活後の熱処理温度を1050℃にしたこと以外は実施例4と同様にして粒状フェノール樹脂Bから粒状炭素電極材VIを得た。なお、粒状炭素電極材VIを得るにあたり、賦活処理後または熱処理後に、粉砕および分級処理は行なわなかった。次に、粒状炭素電極材Iの代わりに、粒状炭素電極材VIを用いたこと以外は実施例2と同様にして、乾燥後の塗布電極層の厚さが10μm、幅20cm、長さ25cm以上となるような条件でエッチングアルミ箔の片面に塗布電極層を形成することにより塗布電極9を作製した。
<比較例3:塗布電極10の作製>
賦活後の熱処理温度を580℃にしたこと以外は実施例4と同様にして粒状フェノール樹脂Bから粒状炭素電極材VIIを得た。なお、粒状炭素電極材VIIを得るにあたり、賦活処理後または熱処理後に、粉砕および分級処理は行なわなかった。次に、粒状炭素電極材Iの代わりに、粒状炭素電極材VIIを用いたこと以外は実施例2と同様にしてエッチングアルミ箔の片面に塗布電極層を形成することにより塗布電極10を作製した。
<比較例4:塗布電極11の作製>
乾燥後の塗布電極層の厚さが30μm、幅20cm、長さ25cm以上となるように塗工したこと以外は実施例2と同様にしてエッチングアルミ箔の片面に塗布電極層を形成することにより塗布電極11を作製した。
<比較例5:塗布電極12の作製>
(1)粒状フェノール樹脂Dの調製
混合溶液中の塩酸濃度を8重量%にしたこと、および95重量%フェノール添加後、外部加熱により、反応液を50℃に昇温し、反応液の着色後80℃に加熱したこと以外は、実施例1と同様にして反応を行ない、粒状フェノール樹脂Dを得た。反応液全重量に対するフェノール類の濃度は3.2重量%、ホルムアルデヒドに対するフェノールの仕込みモル比(P/A)は0.11、反応液中の塩酸のモル濃度は2.3mol/Lである。
(2)粒状炭素電極材VIIIの調製および塗布電極12の作製
粒状フェノール樹脂Aの代わりに、粒状フェノール樹脂Dを用いたこと以外は実施例1と同様にして炭化、賦活、熱処理を行ない、粒状炭素電極材VIIIを得た。なお、粒状炭素電極材VIIIを得るにあたり、賦活処理後または熱処理後に、粉砕および分級処理は行なわなかった。次に、粒状炭素電極材Iの代わりに、粒状炭素電極材VIIIを用いたこと以外は実施例4と同様にして、乾燥後の塗布電極層の厚さが20μm、幅20cm、長さ25cm以上となるような条件でエッチングアルミ箔の片面に塗布電極層を形成することにより塗布電極12を作製した。
上記実施例および比較例で調製した粒状フェノール樹脂A〜Dの製造条件および特性を表1にまとめた。表1中、「フェノール濃度」は反応液全重量に対するフェノールの濃度であり、「P/A」はホルムアルデヒドに対するフェノールの仕込みモル比であり、「塩酸濃度」は反応液中の塩酸のモル濃度である。粒状フェノール樹脂の各特性の測定方法は下記のとおりである。
Figure 2012028668
〔1〕粒状フェノール樹脂の平均粒径
粒状フェノール樹脂の水分散液を調製し、レーザー回折式粒度測定機(日機装(株)製 Microtrac X100)により計測された頻度分布における累積頻度50%値として求めた。
〔2〕粒状フェノール樹脂の単粒子率
水滴中に粒状フェノール樹脂を分散して光学顕微鏡により観察を行ない、1次粒子を約300個含む、無作為に選択した視野において、1次粒子の総個数および単粒子の個数を数え、下記式:
単粒子の個数/1次粒子総個数
により算出した。
〔3〕粒状フェノール樹脂の粒径分布の変動係数
粒状フェノール樹脂を用いて水分散液を調製し、レーザー回折式粒度測定機(日機装(株)製 Microtrac X100)により計測された頻度分布から下記式:
粒径分布の変動係数=(d84%−d16%)/(2×平均粒径)
により算出した。式中、d84%、d16%はそれぞれ、得られた頻度分布において累積頻度84%、16%を示す粒径であり、平均粒径は上記〔1〕の方法により測定された平均粒径である。
〔4〕粒状フェノール樹脂の真球度
光学顕微鏡による観察において約300個の1次粒子を含む視野を無作為に決定し、アスペクト比(すなわち、短径/長径の比)が最も低い1次粒子を10個選択して、これら10個の1次粒子各々について、その投影断面におけるアスペクト比を測定し、これら10のアスペクト比の平均値を真球度とした。
〔5〕粒状フェノール樹脂の非熱溶融性
粒状フェノール樹脂試料約5gを、2枚の0.2mm厚ステンレス板間に挿入し、あらかじめ100℃に加温したプレス機で、50kgの総荷重で2分間プレスしたときに、溶融および/または融着により、粒状フェノール樹脂が平板を形成したり、フェノール樹脂粒子が変形したり、または粒状フェノール樹脂同士が互いに接着しない場合を「非熱溶融性」を有すると判定した。
〔6〕粒状フェノール樹脂の遊離フェノール含有量
粒状フェノール樹脂を約10g精秤し、190mLのメタノール中で還流下30分間抽出し、ガラスフィルターで濾過した。濾液中のフェノール類濃度を液体クロマトグラフィーにより定量して、該濾液中のフェノール類重量を算出し、該フェノール類重量と試料重量との比、すなわち、フェノール類重量/粒状フェノール樹脂試料重量を遊離フェノール含有量(ppm)とした。
また、上記実施例および比較例で調製した粒状炭素電極材I〜VIIIの製造条件および特性、ならびに上記実施例および比較例で作製した塗布電極1〜12が有する塗布電極層の最大膜厚、最大膜厚と最小膜厚との差(表2では「膜厚差」と表記する)および密度を表2にまとめた。粒状炭素電極材の各特性、塗布電極層の最大膜厚、最大膜厚と最小膜厚との差および密度の測定方法は下記のとおりである。
Figure 2012028668
〔1〕粒状炭素電極材の平均粒径
粒状炭素電極材の水分散液を調製し、レーザー回折式粒度測定機(日機装(株)製 Microtrac X100)により計測された頻度分布における累積頻度50%値として求めた。
〔2〕粒状炭素電極材の比表面積
粒状炭素電極材約0.1gを正確に秤量した後、高精度全自動ガス吸着装置BELSORP−miniII(日本ベル株式会社製)の専用セルに入れ窒素吸着によるB.E.T法により求めた。
〔3〕粒状炭素電極材の酸性官能基量
粒状炭素電極材1gを三角フラスコに秤取り、0.1N−NaOH 10mLを加え、20℃で60分振とうした。ついで、この分散液を濾過し、濾液5mLにブランスウイック指示薬を添加し、0.05N−HClで滴定し、下記式:
酸性官能基量(mmol/g)=0.05(mol/L)×滴定量(mL)×2/粒状炭素電極材重量(g)
に基づいて酸性官能基量を算出した。
〔4〕粒状炭素電極材の粒径分布の変動係数
水滴中に粒状炭素電極材を分散して光学顕微鏡により観察を行ない、1次粒子を約300個含む、無作為に選択した視野において、1次粒子の総個数および単粒子の個数を数え、上記式[1]により算出した。
〔5〕粒状炭素電極材の単粒子率
水滴中に粒状炭素電極材を分散して光学顕微鏡により観察を行ない、1次粒子を約300個含む、無作為に選択した視野において、1次粒子の総個数および単粒子の個数を数え、上記式[2]により算出した。
〔6〕粒状炭素電極材の真球度
光学顕微鏡による観察において約300個の1次粒子を含む視野を無作為に決定し、アスペクト比(すなわち、短径/長径の比)が最も低い1次粒子を10個選択して、これら10個の1次粒子各々について、その投影断面におけるアスペクト比を測定し、これら10のアスペクト比の平均値を真球度とした。
〔7〕塗布電極層の最大膜厚
実施例および比較例で作製した塗布電極から縦2.0cm×横1.5cmの長方形型の試験片を10枚切り出し、マイクロメーター(ミツトヨ製)を用いて、各試験片の任意の1点について塗布電極の膜厚を測定し、集電体の膜厚20μmを差し引くことによって得られた10点の塗布電極層の膜厚のうち、最も大きい膜厚を最大膜厚とした。
〔8〕塗布電極層の最大膜厚と最小膜厚との差(膜厚差)
上記〔7〕で得られた10点の塗布電極層の膜厚のうち、最も大きい膜厚を最大膜厚、最も小さい膜厚を最小膜厚とし、その差を求めた。
〔9〕塗布電極層の密度
上記〔7〕で用いた長方形型の試験片10枚を使用し、各塗布電極層の重量をその体積で除することで密度を算出し、10枚の平均値を塗布電極層の密度とした。塗布電極層の重量および体積は、それぞれ〔塗布電極試験片の重量−集電体の重量〕、〔上記〔7〕で測定した塗布電極層の膜厚×塗布電極層の面積(縦2.0cm×横1.5cm)〕として求めた。
表2に示されるように、本発明に係る実施例1〜7においては、最大膜厚が20μmで、厚みムラ(膜厚差)の小さい塗布電極層を有する塗布電極を良好に作製することができた。一方、比較例1では、乾燥後の厚さが10μmとなるような条件で塗布電極層の形成を試みたが、粒状炭素電極材の平均粒径が大きいために、電極層表面に凹凸が生じ、最大膜厚および膜厚差がともに大きくなった。比較例2では、粒状炭素電極材の酸性官能基量が極端に小さく、塗料における粒状炭素電極材の分散性が悪かったために、乾燥後の厚さが10μmとなるような条件で塗布電極層の形成を試みたが、塗布電極層の膜厚差が大きくなった。また、比較例2で用いた粒状炭素電極材VIにおいては、熱処理温度が高いために、BET比表面積が低下した。比較例5では、乾燥後の厚さが20μmとなるような条件で塗布電極層の形成を試みたが、粒状炭素電極材の平均粒径が大きいために、電極層表面に凹凸が生じ、最大膜厚および膜厚差がともに大きくなった。
〔電気二重層キャパシタの作製および評価〕
<実施例8>
(1)簡易対向型電気二重層キャパシタの作製
上記実施例1の塗布電極1を正極電極および負極電極に用いて、以下に示す手順に従い、図1に示される構造の簡易対向型電気二重層キャパシタを作製した。図1は、作製した簡易対向型電気二重層キャパシタの概略断面図である。まず、負極集電体101として、縦21mm×横31mm、厚み2mmのポリプロピレン(PP)板上に縦15mm×横20mmの集電用のSUSメッシュを取り付けた部材と、正極集電体102として、縦21mm×横31mm、厚み4mmのPP板上に縦15mm×横20mmの集電用のSUSメッシュを取り付けた部材を作製した。次に、ステンレス製の筐体100の凹部底面に、負極集電体101を、そのPP板が凹部底面側となるように凹部底面に配置し、その上に、負極電極105としての縦15mm×横20mmに切り出した塗布電極1、セルロース系セパレータ106、正極電極107としての縦15mm×横20mmに切り出した塗布電極1をこの順で積層した。塗布電極1は、その塗布電極層がセパレータ106側となるように積層した。正極電極107上にさらに正極集電体102を、そのSUSメッシュが正極電極107側となるように積層した。ついで、筐体100の凹部内に、両方の塗布電極1が十分に浸漬する量の電解液(1.0M−トリメチルエチルアンモニウム テトラフルオロホウ酸塩/プロピレンカーボネート溶液)を真空含浸させた後、正極集電体102上に縦15mm×横20mmのステンレス板103を配置し、その上から万力で締め、密閉することにより、簡易対向型電気二重層キャパシタセルを作製した。なお、この簡易対向型電気二重層キャパシタセルにおいては、図1に示される参照極104は使用していない。
(2)円筒型電気二重層キャパシタの作製
上記実施例1の塗布電極1を正極電極および負極電極に用いて、以下に示す手順に従い、図2に示される構造の円筒型電気二重層キャパシタを作製した。図2は、作製した円筒型電気二重層キャパシタの概略断面図である。まず、正極電極201として縦17mm×横340mmに切り出した塗布電極1、負極電極202として縦17mm×横360mmに切り出した塗布電極1、および、縦21mm×横380mmに切り出したセルロース系セパレータ205を1枚用意し、これらを、温度125℃で12時間真空乾燥させた。塗布電極1の集電体側にそれぞれ正極リードタブ203、負極リードタブ204を取り付け、図2のように、塗布電極1/セパレータ/塗布電極1の順に重ね、巻回した。得られた巻回体を筐体(アルミ缶体からなるセルケース)206に組み込み、電解液(1.0M−トリメチルエチルアンモニウム テトラフルオロホウ酸塩/プロピレンカーボネート溶液)を入れ、ガスケット207で封止することにより、円筒型電気二重層キャパシタを得た。
<実施例9〜14、比較例6〜10>
正極電極102および負極電極101として、実施例2〜7、比較例1〜5で作製した塗布電極2〜12をそれぞれ用いたこと以外は実施例8と同様にして、簡易対向型電気二重層キャパシタセルおよび円筒型電気二重層キャパシタセルを作製した。
(電気二重層キャパシタの蓄電特性等の評価)
上記で作製した簡易対向型電気二重層キャパシタセルまたは円筒型電気二重層キャパシタセルを用いて、下記項目について測定を行ない、キャパシタの蓄電特性および耐久性を評価した。
〔1〕塗布電極層単位体積あたりの静電容量
簡易対向型電気二重層キャパシタの両極間に2.7Vの電圧を印加し、充電を行なった後、0.1mA(低レート)と1000mA(高レート)のそれぞれの放電電流で定電流放電させ、電圧が2.5Vから0.5Vに降下するのに要した時間から電気二重層キャパシタの静電容量(F)を求め、この値と、一組(2個)の塗布電極の重量から、下記式:
塗布電極層単位体積あたりの静電容量=(塗布電極層単位重量あたりの静電容量)×(塗布電極層の密度)
に基づき、塗布電極層単位体積あたりの静電容量を算出した。
〔2〕出力保持率
下記式:
出力保持率(%)=高レート(放電電流1000mA)での塗布電極層単位体積あたりの静電容量/低レート(放電電流0.1mA)での塗布電極層単位体積あたりの静電容量×100
に基づき算出した。出力保持率が70%以上である場合を「高出力」、70%未満である場合を「出力不足」と評価した。
〔3〕充放電サイクルの安定性(容量保持率)
円筒型の電気二重層キャパシタの両極間に2.7Vの電圧を印加し、充電を行なった後、70℃で1,000時間保存した前後において放電電流0.1mAでの塗布電極層単位体積あたりの静電容量を測定し、下記式:
容量保持率(%)=1,000時間保存後の塗布電極層単位体積あたりの静電容量/保存前の塗布電極層単位体積あたりの静電容量×100
に基づき算出した。容量保持率が80%以上である場合、充放電サイクルの安定性が良好と評価した。
〔4〕耐久性(セルの膨れ)
円筒型の電気二重層キャパシタの両極間に2.7Vの電圧を印加し、充電を行なった後、70℃で1,000時間保存した。保存後の筐体(セルケース)の高さ方向の膨れをノギスで測定し、下記式:
セル膨れ(%)=保存後の高さ方向の膨れ長さ/保存前の円筒型電気二重層キャパシタの高さ(3.0cm)×100
に基づき算出した。セル膨れが小さいほど耐久性に優れる。
上記キャパシタの蓄電特性および耐久性の評価結果を表3にまとめた。
Figure 2012028668
表3に示されるように、本発明に係る塗布電極1〜7を用いた実施例8〜14の電気二重層キャパシタは、高出力かつ充放電サイクルの安定性に優れており、また、セル膨れも生じなかった。塗布電極10を用いた比較例8では、粒状炭素電極材の酸性官能基量が高いために、充放電サイクルの安定性が低下し、また、セル膨れが生じた。塗布電極11を用いた比較例9では、塗布電極層の厚みが大きいために、十分に高い出力が得られなかった。比較例6、7および10においては、塗布電極層の厚みムラが大きいことに起因して、電気二重層キャパシタの作製中または評価試験中に塗布電極層表面のヒビ割れまたは塗布電極層の集電体からの部分的剥離が生じたために、上記〔1〕〜〔4〕について評価することができなかった。
〔リチウムイオンキャパシタの作製および評価〕
<実施例15>
(1)簡易対向型リチウムイオンキャパシタの作製
上記実施例1の塗布電極1を正極電極に用いて、以下に示す手順に従い、図1と類似の構造を有する簡易対向型リチウムイオンキャパシタを作製した。まず、ポリプロピレン(PP)からなる負極集電体101の一方の面に縦15mm×横20mmの集電用のSUSメッシュを、他方の面に縦15mm×横20mmの集電用のSUSメッシュを取り付け、その上に縦15mm×横20mmの金属リチウムからなる参照極104を取り付け、参照極付き負極側部材を作製した。次に、ステンレス製の筐体100の凹部内に、その底面から、縦15mm×横20mmのセルロース系セパレータ/参照極付き負極側部材(参照極104が凹部底面に積層したセパレータ側)/銅箔からなる集電体の片面にグラファイトを塗工した負極電極105としての塗布電極(グラファイト層がセパレータ106側)/縦15mm×横20mmのセルロース系セパレータ106/リチウムイオンプレドープ用の縦15mm×横20mmの金属リチウム/集電用のSUSメッシュが片面に取り付けられたポリプロピレン(PP)からなる正極集電体102(SUSメッシュが金属リチウム側)を順に積層した。ついで、筐体100の凹部内を十分に満たすように、電解液(1.0M−LiPF6/プロピレンカーボネート(PC)−エチレンカーボネート(EC)−ジエチルカーボネート(DEC)溶液〔PC:EC:DEC=1:3:4(重量比)〕)を真空含浸させた後、正極集電体102上に縦15mm×横20mmのステンレス板103を配置し、その上から万力で締め、密閉した後、リチウムの充電容量が500mAh/gとなるようにリチウムイオンのプレドープを実施した。その後、ステンレス板103を取り外してリチウムイオンプレドープ用の金属リチウムを取り除き、その代わりに、正極電極107として縦15mm×横20mmに切り出した塗布電極1を、その塗布電極層がセパレータ106側となるように積層した。上記と同じ電解液を真空含浸させた後、塗布電極1上に正極集電体102、ステンレス板103を順に配置し、その上から万力で締め、密閉することにより、簡易対向型リチウムイオンキャパシタセルを作製した。
<実施例16〜21、比較例11〜15>
正極電極として、実施例2〜7、比較例1〜5で作製した塗布電極2〜12をそれぞれ用いたこと以外は実施例15と同様にして、簡易対向型リチウムイオンキャパシタセルを作製した。
(リチウムイオンキャパシタの蓄電特性等の評価)
上記で作製した簡易対向型リチウムイオンキャパシタセルを用いて、下記項目について測定を行ない、キャパシタの蓄電特性を評価した。
〔1〕リチウムイオンキャパシタセルの静電容量(セル容量)
簡易対向型リチウムイオンキャパシタの両極間に3.8Vの電圧を印加し、充電を行なった後、0.1mA(低レート)と1000mA(高レート)のそれぞれの放電電流で定電流放電させ、電圧が3.8Vから2.2Vに降下するのに要した時間からリチウムイオンキャパシタの静電容量(F)(セル容量)を求めた。
〔2〕出力保持率
下記式:
出力保持率(%)=高レート(放電電流1000mA)での静電容量(セル容量)/低レート(放電電流0.1mA)での静電容量(セル容量)×100
に基づき算出した。出力保持率が70%以上である場合を「高出力」、70%未満である場合を「出力不足」と評価した。
〔3〕充放電サイクルの安定性(容量保持率)
簡易対向型リチウムイオンキャパシタの両極間に3.8Vの電圧を印加し、充電を行なった後、70℃で1,000時間保存した前後において放電電流3mAでの静電容量(セル容量)を測定し、下記式:
容量保持率(%)=1,000時間保存後の静電容量(セル容量)/保存前の静電容量(セル容量)×100
に基づき算出した。容量保持率が80%以上である場合、充放電サイクルの安定性が良好と評価した。
上記キャパシタの蓄電特性の評価結果を表4にまとめた。
Figure 2012028668
表4に示されるように、本発明に係る塗布電極1〜7を用いた実施例15〜21のリチウムイオンキャパシタは、高出力かつ充放電サイクルの安定性に優れており、優れた蓄電特性を示した。塗布電極10を用いた比較例13では、粒状炭素電極材の酸性官能基量が高いために、充放電サイクルの安定性が低下した。塗布電極11を用いた比較例14では、塗布電極層の厚みが大きいために、十分に高い出力が得られなかった。比較例11、12および15においては、塗布電極層の厚みムラが大きいことに起因して、リチウムイオンキャパシタの作製中または評価試験中に塗布電極層表面のヒビ割れまたは塗布電極層の集電体からの部分的剥離が生じたために、上記〔1〕〜〔3〕について評価することができなかった。
100 筐体、101 負極集電体、102 正極集電体、103 ステンレス板、104 参照極、105,202 負極電極、106,205 セパレータ、107,201 正極電極、203 正極リードタブ、204 負極リードタブ、207 ガスケット。

Claims (9)

  1. 集電体と、前記集電体上に積層される最大膜厚20μm以下の電極層とを備えるキャパシタ用塗布電極であって、
    前記電極層は、酸性官能基量が0.02〜0.2mmol/gであり、かつ、レーザー回折・散乱法により得られる頻度分布の累積頻度50%値として定義される平均粒径が4μm以下である粒状炭素電極材を含む塗布電極。
  2. 前記電極層の最大膜厚が10μm以下である請求項1に記載の塗布電極。
  3. 前記電極層の最大膜厚と最小膜厚との差が、最大膜厚の20%未満である請求項1に記載の塗布電極。
  4. 前記粒状炭素電極材の平均粒径が3μm以下である請求項1に記載の塗布電極。
  5. 前記粒状炭素電極材は、下記式[1]:
    粒径分布の変動係数=(d84%−d16%)/(2×平均粒径) [1]
    (式中、d84%、d16%はそれぞれ、レーザー回折・散乱法により得られる頻度分布において累積頻度84%、16%を示す粒径である。)
    で示される粒径分布の変動係数が0.65以下である請求項1に記載の塗布電極。
  6. 前記粒状炭素電極材は、下記式[2]:
    単粒子率=単粒子の個数/1次粒子総個数 [2]
    (式中、単粒子とは、2次凝集物を形成していない1次粒子である。)
    で示される単粒子率が0.7以上である請求項1に記載の塗布電極。
  7. 前記粒状炭素電極材は、BET比表面積が1400〜2300m2/gである請求項1に記載の塗布電極。
  8. 請求項1に記載の塗布電極に含有される、酸性官能基量が0.02〜0.2mmol/gであり、かつ、レーザー回折・散乱法により得られる頻度分布の累積頻度50%値として定義される平均粒径が4μm以下である粒状炭素電極材の製造方法であって、
    (1)酸性触媒および保護コロイド剤の存在下、水性媒体中でアルデヒド類とフェノール類とを反応させることにより粒状フェノール樹脂を形成する工程と、
    (2)前記粒状フェノール樹脂を含有する反応液を加熱することにより、非熱溶融性の粒状フェノール樹脂を形成する工程と、
    (3)前記非熱溶融性の粒状フェノール樹脂を炭化した後、賦活する工程と、
    (4)前記賦活により得られる賦活物を、不活性ガス雰囲気下、600〜1000℃の範囲内であって、かつ、賦活温度よりも低い温度で熱処理する工程と、
    を含む製造方法。
  9. 請求項1〜7のいずれかに記載の塗布電極を備える電気二重層キャパシタまたはリチウムイオンキャパシタ。
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