JP5673323B2 - 硫黄を含む固体電解質電池の電極およびその製造方法 - Google Patents
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Description
その中で、従来用いられてきた非水電解液系のリチウム電池に比べて燃えやすい電解液を用いないため安全性が高くセルの形状の自由度が高く構造の自由度が増し補器の数を減らすことができる等の多くの利点を有し得ることから、固体電池の実用化が期待されている。
この固体電池の高容量・高出力を実現し得る技術の1つとして、Li2S−P2S5などの固体硫化物電解質が提案された。
しかし、前記のLi2S−P2S5などの固体硫化物電解質を用いた固体電池は、耐久後に電池特性が低下することが知られている。この耐久後の電池特性の低下の要因の1つとして考えられるのは、電極の少なくとも一部を構成する正極活物質と固体硫化物電解質との界面で正極活物質と固体硫化物電解質とが直接接触して反応が起こって絶縁層が形成されてリチウムイオンの電荷移伝導度が低下し、固体電池の反応抵抗が上昇することにあると考えられている。
例えば、固体電池において、正極活物質と固体硫化物電解質層との界面で反応が起って界面に高抵抗の反応層が形成されるのを防止するために、正極活物質表面や固体硫化物電解質表面に反応抑制層を形成する試みがなされている。この反応抑制層を形成するために、ニオブ酸リチウム、チタン酸リチウム、リン酸リチウムなどを使用することが提案されているが、いずれも初期の反応抑制については効果があるものの、維持率が低く、耐久性に劣るものであった。
例えば、非特許文献1には、固体硫化物電解質を用いた固体電池のLiCoO2電極にLi2O−TiO2膜を被覆した全固体リチウム二次電池により、Li2O−TiO2膜を被覆しなかった全固体リチウム二次電池に比べて固体電池の界面抵抗が低減し得ることが記載されている。そして、具体例として溶媒であるエタノール、アセチルアセトン、Li2Ti2O5を与え得る出発原料およびTiO2から調製したゾルをLiCoO2粒子と混合し、乾燥後、350℃で30分間焼成して得られたLi2Ti2O5およびTiO2被覆LiCoO2と固体硫化物電解質とを混合して調製した正極により室温での充電−放電後に界面抵抗が低減したことが示されている。
従って、本発明の目的は、厳しい条件下での耐久後に反応抵抗の悪化を抑制し得る、固体硫化物電解質層を有する固体電池における電極を提供することである。
さらに、本発明の目的は、厳しい条件下での耐久後に反応抵抗の悪化を抑制し得る、固体硫化物電解質層を有する固体電池における電極の製造方法を提供することである。
該電極の少なくとも一部を構成する正極活物質からなる薄膜又は粒子を用意する工程、
溶媒中でLi2Ti2O5を与え得る出発原料からカルボニル基を含有する有機化合物の不存在下にLi2Ti2O5又はその前駆体ゾルゲル溶液を用意する工程、および
前記正極活物質からなる薄膜又は粒子の固体硫化物電解質と接する面に、前記Li2Ti2O5又はその前駆体ゾルゲル溶液を被覆し、乾燥、焼成してLi2Ti2O5のコート層を形成する工程
を含む、前記製造方法に関する。
本明細書において、厳しい条件下での耐久とは、60℃以上の温度環境下で1ヶ月以上保存する試験を意味する。
また、本明細書において、反応抵抗とは後述の実施例の欄に詳述する測定法によって求められるインピーダンス解析における反応抵抗を意味する。
また、本発明によれば、厳しい条件下での耐久後に反応抵抗の悪化を抑制し得る、固体硫化物電解質層を有する固体電池における電極を容易に得ることができる。
1)前記電極が、電極の少なくとも一部を構成する正極活物質からなる薄膜の固体硫化物電解質と接する面が、前記コート層によって積層されてなる薄膜電極である前記電極。
2)前記電極が、電極の少なくとも一部を構成する正極活物質からなる粒子の固体硫化物電解質と接する面が、前記コート層によって積層された前記粒子と固体硫化物電解質とからなる正極合材粉体が成型されてなる圧粉電極である前記電極。
3)前記正極活物質が、コバルト酸リチウム(LiCoO2)である前記電極。
4)前記固体硫化物電解質層が、Li2S−P2S5からなる前記電極。
5)前記正極活物質からなる薄膜の固体硫化物電解質と接する面に、前記Li2Ti2O5又はその前駆体ゾルゲル溶液をスピンコーターにより被覆し、乾燥・焼成してLi2Ti2O5のコート層を形成する前記製造方法。
6)固体硫化物電解質層を前記正極活物質上に成膜する前に、前記Li2Ti2O5のコート層を形成する工程を含む前記製造方法。
固体硫化物電解質層を有する固体電池の電極の少なくとも一部を構成する正極活物質からなる薄膜又は粒子を用意する工程、
溶媒中でLi2Ti2O5を与え得る出発原料からカルボニル基を含有する有機化合物の不存在下にLi2Ti2O5又はその前駆体ゾルゲル溶液を用意する工程、および
前記正極活物質からなる粒子又は薄膜の固体硫化物電解質と接する面に、前記Li2Ti2O5又はその前駆体ゾルゲル溶液を被覆し、乾燥、焼成してLi2Ti2O5のコート層を形成する工程
を含む製造方法によって得ることができる。
本発明の実施態様の固体電池の電極1は、図1に示すように、電極の少なくとも一部を構成する正極活物質からなる薄膜2の固体硫化物電解質と接する面4が、製造工程でカルボニル基を含有する有機化合物を用いないで得られたLi2Ti2O5からなるコート層5によって積層されてなる薄膜電極8である。
本発明においては、カルボニル基を含有する有機化合物、例えばアセチルアセトンを用いないで、例えば前記正極活物質からなる薄膜の固体硫化物電解質と接する面に、前記Li2Ti2O5又はその前駆体ゾルゲル溶液をスピンコーターにより被覆し、乾燥、焼成してLi2Ti2O5のコート層を形成することによって、均一な厚さのコート層を形成し得る。
溶媒中でLi2Ti2O5を与え得る出発原料からカルボニル基を含有する有機化合物の不存在下にLi2Ti2O5又はその前駆体ゾルゲル溶液を用意する工程、および
前記正極活物質からなる薄膜又は粒子の固体硫化物電解質と接する面に、前記Li2Ti2O5又はその前駆体ゾルゲル溶液を被覆し、乾燥、焼成してLi2Ti2O5のコート層を形成する工程を含む。
前記正極活物質からなる薄膜又は粒子には、本発明の電極および該電極を用いた固体電池の性能向上のために任意の成分、例えばイオン伝導体が含まれ得る。
また、前記の溶媒としては、カルボニル基を含有しない有機化合物であれば特に制限はなく、例えばアルコール、例えばエタノール、メタノール、イソプロパノールなど、エーテル、例えばTHFなどが挙げられる。
前記のリチウムアルコキシドとチタンテトラアルコキシドとは当モル量で用い得る。
特に、LixCoO2、LixNiO2、LixMn2O4、LixNi1/2Mn1/2O2、LixNi1/3Co1/3Mn1/3O2、Lix[NiyLi1/3−2y/3]O3(0≦x≦1、0<y<1/2)やこれらのリチウム遷移金属酸化物のリチウム又は遷移金属を他の元素で置換したリチウム遷移金属、特にLiCoO2が正極活物質として挙げられる。
前記リチウムイオン伝導体としては、造粒体に含まれる活物質および電極中に含まれる他の成分である固体電解質と反応しない物質であることが必要であり、例えば、LiTi2(PO4)3など、あるいはLi2O−B2O3−P2O5、Li2O−SiO2、Li2O−B2O3、Li2O−B2O3−ZnOなどの酸化物系非晶質固体電解質、LiI−Li2S−P2S5、LiI−Li2S−B2S3、Li3PO4−Li2S−Si2S、Li3PO4−Li2S−SiS2、LiPO4−Li2S−SiS、LiI−Li2S−P2O5、LiI−Li3PO4−P2S5、Li3PS4、Li2S−P2S5などの硫化物系非晶質固体電解質、LiNbO3、あるいはLi1.3Al0.3Ti0.7(PO4)3、Li1+x+yAxTi2−xSiyP3−yO12(A=Al又はGa、0≦x≦0.4、0<y≦0.6)、[(B1/2Li1/2)1−zCz]TiO3(B=La、Pr、Nd、Sm、C=Sr又はBa、0≦x≦0.5)、Li5La3Ta2O12、Li7La3Zr2O12、Li6BaLa2Ta2O12、Li3PO(4−3/2w)Nw(w<1)、Li3.6Si0.6P0.4O4などの結晶質酸化物や酸窒化物などのニオブ、タンタル、ケイ素、リンおよびホウ素から選ばれる少なくとも1種の元素とリチウムとを含むリチウム含有化合物、LiI、LiI−Al2O3、LiN3、Li3N−LiI−LiOHなどが挙げられる。
あるいは、固体電池は、例えば固体硫化物電解質をセルに入れ、プレスし、セパレータとして機能する固体硫化物電解質層のペレットを作製し、次いで本発明の電極を与え得る正極合材粉体および負極合材粉体を固体硫化物電解質層の両面に入れ、プレスすることによって作製し得る。
また、固体電池は、先ず本発明の電極を与え得る正極合材粉体および負極合材粉体をプレスしてペレット化して正負極の電極を形成し、両極の間に固体硫化物電解質層を形成することによって作製し得る。
以下の実施例は単に説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。
以下の各例において、反応抵抗は以下の方法により行った。なお、以下の方法は例示であって、当業者が同等と考える方法も同様に用い得る。
反応抵抗の測定法:交流インピーダンス法
反応抵抗の測定装置:東陽テクニカ社、ソーラトロン
実施例で得られたLi2Ti2O5について、以下のXRD装置を用いて測定し同定を行った。
XRD測定装置:リガク社、スマートラボ
エタノール(10mL、和光純薬工業社)、リチウムエトキシド(1mmol、高純度化学研究所社)およびチタンテトライソプロポキシド(1mmol、高純度化学研究所社)を窒素置換したガラス瓶中で、1時間マグネットスターラーで攪拌混合して、ゾルゲル反応によりLi2Ti2O5前駆体ゾルゲル溶液を調製した。
コバルト酸リチウム薄膜表面に、このLi2Ti2O5前駆体ゾルゲル溶液をスピンコータ(ミカサ社製、MS−A100)にて5000rpm、10秒で塗布した。乾燥後、350℃で0.5時間焼成し、Li2Ti2O5コート層を形成して、正極を得た。
形成されたLi2Ti2O5コート層について、XRDにより同定を行って、確認した。Li2Ti2O5のX線回折図を図3に示す。
得られた全固体電池のインピーダンス測定を、初期と60℃耐久試験(保存条件:60℃環境、OCV、1ケ月間)における反応抵抗変化(=耐久試験における所定時間経過後の抵抗/初期抵抗)の経時変化を求めた。
得られた結果を他の結果とまとめて図4に示す。
エタノール(10mL、和光純薬工業社)、リチウムエトキシド(1mmol、高純度化学研究所社)、チタンテトライソプロポキシド(1mmol、高純度化学研究所社)およびアセチルアセトン(1mmol、和光純薬工業社)を窒素置換したガラス瓶中で、1時間マグネットスターラーで攪拌混合して、ゾルゲル反応によりLi2Ti2O5前駆体ゾルゲル溶液を調製した。
このLi2Ti2O5前駆体ゾルゲル溶液を用いた他は実施例1と同様にして、正極および全固体電池を得た。
この全固体電池について測定した結果を他の例とまとめて図4に示す。
エタノール(487g、和光純薬工業社)、リチウムエトキシド(0.59mol、高純度化学研究所社)およびチタンテトライソプロポキシド(0.74mol、高純度化学研究所社)を混合して、ゾルゲル反応によりLi2Ti2O5前駆体ゾルゲル溶液を調製した。
このLi4Ti5O12前駆体ゾルゲル溶液を用いた他は実施例1と同様にして、正極および全固体電池を得た。
この全固体電池について測定した結果を他の例とまとめて図4に示す。
2 正極活物質からなる薄膜
3 正極活物質からなる粒子
4 固体硫化物電解質と接する面
5 Li2Ti2O5からなるコート層
6 固体硫化物電解質
7 正極合材粉体
8 圧粉電極
Claims (8)
- 固体硫化物電解質層を有する固体電池の電極であって、該電極の少なくとも一部を構成する正極活物質からなる薄膜又は粒子の固体硫化物電解質と接する面が、製造工程でカルボニル基を含有する有機化合物を用いないで得られたLi2Ti2O5からなるコート層によって積層されてなる、前記電極。
- 前記電極が、電極の少なくとも一部を構成する正極活物質からなる薄膜の固体硫化物電解質と接する面が、前記コート層によって積層されてなる薄膜電極である請求項1に記載の電極。
- 前記電極が、電極の少なくとも一部を構成する正極活物質からなる粒子の固体硫化物電解質と接する面が、前記コート層によって積層された前記粒子と固体硫化物電解質とからなる正極合材粉体が成型されてなる圧粉電極である請求項1に記載の電極。
- 前記正極活物質が、コバルト酸リチウム(LiCoO2)である請求項1〜3のいずれか1項に記載の電極。
- 前記固体硫化物電解質層が、Li2S−P2S5からなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の電極。
- 固体硫化物電解質層を有する固体電池の電極の製造方法であって、
該電極の少なくとも一部を構成する正極活物質からなる粒子又は薄膜を用意する工程、
溶媒中でLi2Ti2O5を与え得る出発原料からカルボニル基を含有する有機化合物の不存在下にLi2Ti2O5又はその前駆体ゾルゲル溶液を用意する工程、および
前記正極活物質からなる薄膜又は粒子の固体硫化物電解質と接する面に、前記Li2Ti2O5又はその前駆体ゾルゲル溶液を被覆し、乾燥、焼成してLi2Ti2O5からなるコート層を形成する工程
を含む、前記製造方法。 - 前記正極活物質からなる薄膜の固体硫化物電解質と接する面に、前記Li2Ti2O5又はその前駆体ゾルゲル溶液をスピンコーターにより被覆し、乾燥、焼成してLi2Ti2O5のコート層を形成する請求項6に記載の製造方法。
- 固体硫化物電解質層を前記正極活物質上に被覆する前に、前記Li2Ti2O5のコート層を形成する工程を含む、請求項7に記載の製造方法。
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