JP5671803B2 - 反射防止フィルム - Google Patents

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本発明は、例えばプラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶ディスプレイパネル(LCD)等に適用され、単層構成で十分な反射防止性能を有し、かつ帯電防止性能にも優れた反射防止フィルムに関する。
近年、プラズマディスプレイパネル、液晶ディスプレイパネル等の電子画像表示装置(電子ディスプレイ)は、テレビやモニター用途として著しい進歩を遂げ、広く普及している。これら電子画像表示装置は、大型化に伴い、外光の映り込みによる視認性の低下が問題となっている。そのため、透明基材フィルムの表面に反射防止層を設けて形成された反射防止フィルムをディスプレイ表面に貼り合わせ、視認性を高める方法が一般的に採用されている。
さらに、静電気によるディスプレイ表面への埃などの付着を防止するために、これらの反射防止フィルムには帯電防止性能を有することが求められている。例えば、中空シリカ微粒子と多官能(メタ)アクリレートからなる低屈折率層を設けてなる反射防止フィルムが知られている(特許文献1を参照)。しかしながら、特許文献1に記載の反射防止フィルムは反射防止性能には優れるものの、帯電防止性能を付与させるためには、帯電防止性能を有するハードコート層もしくは帯電防止層を透明基材フィルムと低屈折率層の間に設ける必要があり、塗工回数が増えてしまうため、生産性が低下する。
一方、導電性を有する五酸化アンチモン粒子を含む帯電防止性ハードコートフィルムが知られている(特許文献2を参照)。しかしながら、特許文献2に記載の帯電防止性ハードコートフィルムは高屈折率層の成分として五酸化アンチモン粒子を含むことにより、帯電防止性能を有しているものの、反射防止性能を付与させようとした場合には、帯電防止性ハードコート層の上に反射防止層を少なくとも一層設ける必要がある。その場合、塗工回数が増えてしまうため、生産性が低下する。
特開2005−99778号公報 特開2004−50810号公報
本発明の目的とするところは、単層構成で十分な反射防止性能を有し、かつ帯電防止性能にも優れた反射防止フィルムを提供することにある。
前記の目的を達成するために、本発明の反射防止フィルムは、透明基材フィルム上に低屈折率層が直接積層されて構成されている。そして、前記低屈折率層は、(a)多官能(メタ)アクリレート、(b)五酸化アンチモン及び(c)中空シリカ微粒子を含有し、(a)多官能(メタ)アクリレート100質量部あたり、(b)五酸化アンチモンを200〜630質量部及び(c)中空シリカ微粒子を190〜620質量部含む低屈折率層用塗液の硬化物であって、前記低屈折率層の厚みは、λ/4(λは光の波長400〜650nmを表す。)であることを特徴とする。
本発明は、次のような効果を発揮することができる。
本発明の反射防止フィルムでは、透明基材フィルム上の低屈折率層が、(a)多官能(メタ)アクリレート、(b)五酸化アンチモン及び(c)中空シリカ微粒子を含有し、(a)多官能(メタ)アクリレート100質量部あたり、(b)五酸化アンチモンを200〜630質量部及び(c)中空シリカ微粒子を190〜620質量部含む低屈折率層用塗液の硬化物であって、前記低屈折率層の厚みは、λ/4(λは光の波長400〜650nmを表す。)である。
このため、低屈折率層の機能により反射防止作用が発現され、反射防止フィルムをプラズマディスプレイパネル、液晶ディスプレイパネル等の電子画像表示装置のディスプレイ表面に貼合せることにより、蛍光灯などの外部光源から照射された光線の反射を抑え、視認性を高めることができる。同時に、低屈折率層には導電性を有する五酸化アンチモンが含まれていることから帯電防止作用が発現され、反射防止フィルムを電子画像表示装置のディスプレイに貼合せることにより、静電気によるディスプレイ表面への埃などの付着を抑えることができる。
以下、本発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
本実施形態の反射防止フィルムは、透明基材フィルム上に低屈折率層が直接積層されている。そして、前記低屈折率層は、(a)多官能(メタ)アクリレート、(b)五酸化アンチモン及び(c)中空シリカ微粒子を含有し、(a)多官能(メタ)アクリレート100質量部あたり、(b)五酸化アンチモンを200〜630質量部及び(c)中空シリカ微粒子を190〜620質量部含む低屈折率層用塗液の硬化物(硬化膜)である。
次に、この反射防止フィルムの構成要素について順に説明する。
<透明基材フィルム>
反射防止フィルムに用いられる透明基材フィルムは、透明性を有している限り特に制限されないが、光の反射を抑えるため、屈折率(n)が1.55〜1.70の範囲内のものが好ましい。そのような透明基材フィルムを形成する材料としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET、n=1.65)等のポリエステル、ポリカーボネート(PC、n=1.59)、ポリアリレート(PAR、n=1.60)及びポリエーテルスルフォン(PES、n=1.65)等が好ましい。これらのうち、ポリエステルフィルム特にポリエチレンテレフタレートフィルムが成形の容易性の点で好ましい。
透明基材フィルムの厚みは、好ましくは25〜400μm、さらに好ましくは50〜200μmである。なお、透明基材フィルムには、各種の添加剤が含まれていてもよい。そのような添加剤としては例えば、紫外線吸収剤、帯電防止剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤等が挙げられる。また、透明基材フィルムと低屈折率層の密着性を高めるために、透明基材フィルムと低屈折率層の間に公知の干渉防止層を設けてもよい。なお、干渉防止層は、透明基材フィルムの製造時に公知の方法で透明基材フィルム表面に形成することができ、或いは予め干渉防止層が形成された透明基材フィルムの市販品を使用することもできる。
<低屈折率層>
低屈折率層は、(a)多官能(メタ)アクリレート、(b)五酸化アンチモン及び(c)中空シリカ微粒子を含有し、(a)多官能(メタ)アクリレート100質量部あたり、(b)五酸化アンチモンを200〜630質量部及び(c)中空シリカ微粒子を190〜620質量部含む低屈折率層用塗液の硬化物である。
低屈折率層の厚みは、kλ/4とすることが光の干渉作用により表面反射が減少し、透過率が向上するため好ましい。ここで、λは光の波長400〜650nm、kは1を表す。このように低屈折率層の厚みをkλ/4とすることで反射防止の効果をより高めることができる。この場合、kが1のときには、反射防止性能(視感度反射率)が向上する。尚、kが3のときには耐擦傷性が向上する。
低屈折率層の屈折率は1.20〜1.44であることが好ましい。屈折率が1.20未満の場合には、多官能(メタ)アクリレートの含有量が少なくなるため、低屈折率層は十分な塗膜強度を持つことが難しくなる。一方、屈折率が1.44を超える場合には、十分な反射防止性能が得られない。
(多官能(メタ)アクリレート)
前記多官能(メタ)アクリレートは、紫外線や電子線のような活性エネルギー線を照射することにより、硬化反応を生じる樹脂であり、その種類は特に制限されない。塗膜の強度を向上させるという観点から、単官能(メタ)アクリレートではなく、多官能(メタ)アクリレートを用いる。ここで、単官能(メタ)アクリレートとは分子内に1個のアクリロイル基(CH=CHCO−)又はメタクリロイル基〔CH=C(CH)CO−〕を有する樹脂を示し、多官能(メタ)アクリレートとは分子内に2個以上のアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する樹脂を示す。
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、2官能(メタ)アクリレートとして、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変成1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられ、3官能(メタ)アクリレートとして、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変成トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられ、4官能(メタ)アクリレートとして、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられ、6官能(メタ)アクリレートとして、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。その他にも多価アルコールと多価カルボン酸又はその無水物とアクリル酸とをエステル化することによって得ることができるポリエステル(メタ)アクリレート、多価アルコール、多価イソシアネート及び水酸基含有アクリレートを反応させることによって得られるポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリシロキサンポリ(メタ)アクリレート等を用いることもできる。また、含フッ素多官能(メタ)アクリレートを用いることもできる。
含フッ素多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,3−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2−ジフルオロプロパン、1,4−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3−テトラフルオロブタン、1,6−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロヘキサン、1,8−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロオクタン、1,10−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ヘキサデカフルオロデカン、1,12−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−3,10−ジヒドロキシ5,5,6,6,7,7,8,8−オクタフルオロドデカン等が挙げられる。
(五酸化アンチモン)
前記五酸化アンチモン(Sb、屈折率:2.0)は、他の電子伝導性微粒子と比較して優れた導電性を発現するとともに、湿度環境による影響が少ない。また、硬化膜中に五酸化アンチモンが含まれていると、透明基材フィルムとの密着性に優れるとともに、耐擦傷性、膜硬度にも優れた硬化膜を形成できる。なお、このような効果は、五酸化アンチモン特有のものであり、酸化インジウム、錫ドープ酸化インジウムなどの導電性酸化物微粒子などでは発現されない。
五酸化アンチモンは、平均粒子径が2〜100nm、好ましくは5〜80nmの範囲にある。五酸化アンチモンの平均粒子径が2nm未満の場合には、十分な帯電防止性能が得られない。一方、100nmを超える場合には、硬化膜の透明性が低下したり、硬化膜が着色したりする等の問題が生じる。
このような五酸化アンチモンは公知の製造方法で製造されたものが使用でき、例えば特開平2−180717号に記載の方法により製造することができる。すなわち、その方法は、三酸化アンチモン、アルカリ物質及び過酸化水素を所定のモル比に調整して反応させ、五酸化アンチモンゾルを製造するものである。
(中空シリカ微粒子)
前記中空シリカ微粒子は、シリカ(二酸化珪素、S)がほぼ球状に形成され、その外殻内に中空部を有する微粒子である。中空シリカ微粒子の平均粒子径は好ましくは10〜100nm、より好ましくは20〜60nmである。中空シリカ微粒子の平均粒子径が10nmより小さい場合、中空シリカ微粒子の製造が難しくなって好ましくない。一方、平均粒子径が100nmより大きい場合、低屈折率層における光の散乱が大きくなり、薄膜においては反射が大きくなり、反射防止機能が低下する。
この中空シリカ微粒子は、有機溶剤に分散された市販のものをそのまま使用することができ、或いは市販の各種シリカ粉体を有機溶剤に分散して使用することもできる。該中空シリカ微粒子は、例えば特開2006−21938号公報に開示された、外殻内部に空洞を有する中空で球状のシリカ系微粒子の製造方法により合成することもできる。この方法に基づいて、後述する製造例1の変性中空シリカ微粒子(ゾル)が製造されている。また、中空シリカ微粒子の表面を、重合性二重結合を有するシランカップリング剤によって変性した変性中空シリカ微粒子を使用することもできる。
(多官能(メタ)アクリレート、五酸化アンチモン及び中空シリカ微粒子の含有量)
低屈折率層用塗液における(a)多官能(メタ)アクリレート、(b)五酸化アンチモン、(c)中空シリカ微粒子の各々の含有量は、(a)多官能(メタ)アクリレート100質量部あたり、(b)五酸化アンチモンを200〜630質量部及び(c)中空シリカ微粒子を190〜620質量部である。
五酸化アンチモンの含有量が200質量部よりも少ない場合には、十分な帯電防止性能が発現されず、630質量部よりも多い場合には、十分な反射防止性能が得られない。また、中空シリカ微粒子の含有量が190質量部よりも少ない場合には、十分な反射防止性能が得られず、620質量部よりも多い場合には、十分な帯電防止性能が発現されない。
加えて、反射防止フィルムの反射防止性能と帯電防止性能の両立を図るために、(b)五酸化アンチモンと(c)中空シリカ微粒子との割合は、いずれかの成分100質量部に対して他方の成分が55〜180質量部の範囲であることが好ましい。両成分の割合がこの範囲を外れる場合には、反射防止性能及び帯電防止性能のいずれかの性能発現が不足する傾向を示す。
(希釈溶剤)
前記低屈折率層用塗液には任意の溶媒を用いることができる。溶媒として具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、メチルグリコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類が挙げられる。
(その他の成分)
また、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の成分を低屈折率層用塗液に添加することができる。そのようなその他の成分としては、例えば重合体、重合開始剤、重合禁止剤、酸化防止剤、分散剤、界面活性剤、光安定剤及びレベリング剤等の添加剤が挙げられる。
(低屈折率層の形成方法)
透明基材フィルムの表面に低屈折率層を形成する方法は特に制限されないが、低屈折率層用塗液をロールコート法、スピンコート法、コイルバー法、ディップコート法、ダイコート法等の塗布方法により透明基材フィルムの表面に塗布した後、紫外線を照射する方法が挙げられる。このような方法により、低屈折率層用塗液が硬化して硬化物が得られ、低屈折率層が形成される。低屈折率層用塗液の塗布方法としては、ロールコート法等の低屈折率層を連続的に形成できる方法が生産性の点より好ましい。
また、低屈折率層用塗液をロールコート法、スピンコート法、コイルバー法、ディップコート法、ダイコート法等の塗布方法により透明基材フィルム表面に塗布する前に、透明基材フィルム表面にコロナ放電処理を施してもよい。
以下に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。なお、各例における部は質量部を示し、%は質量%を表す。
〔製造例1、変性中空シリカ微粒子(ゾル)の製造〕
第1工程として、平均粒子径5nm、シリカ(SiO)濃度20%のシリカゾルと純水とを混合して反応母液を調製し、80℃に加温した。この反応母液のpHは10.5であり、同反応母液にSiOとして1.17%の珪酸ナトリウム水溶液と、アルミナ(Al)として0.83%のアルミン酸ナトリウム水溶液とを同時に添加した。その間、反応液の温度を80℃に保持した。反応液のpHは、珪酸ナトリウム及びアルミン酸ナトリウムの添加直後12.5に上昇し、その後ほとんど変化しなかった。添加終了後、反応液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20%のSiO・Al一次粒子分散液(核粒子分散液)を調製した。
次いで、第2工程として、このSiO・Al一次粒子分散液を採取し、純水を加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、濃度0.5%の硫酸ナトリウムを添加した。続いて、SiOとして濃度1.17%の珪酸ナトリウム水溶液と、Alとして濃度0.5%のアルミン酸ナトリウム水溶液とを添加して複合酸化物微粒子分散液(核粒子に第1シリカ被覆層を形成した微粒子分散液)を得た。そして、これを限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13%の複合酸化物微粒子分散液とした。
第3工程として、この複合酸化物微粒子分散液に純水を加え、さらに濃塩酸(35.5%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lとを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離し、洗浄して固形分濃度20%のシリカ系微粒子(1)の水分散液を得た。
第4工程として、前記固形分濃度20%のシリカ系微粒子(1)の水分散液と、純水、エタノール及び28%アンモニア水との混合液を35℃に加温した後、エチルシリケート(SiOが28%)を添加してシリカ被膜(第2シリカ被覆層)を形成した。続いて、純水5Lを加えながら、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20%のシリカ系微粒子(2)の分散液を調製した。
最後に第5工程として、再びシリカ系微粒子(2)の分散液を200℃にて11時間水熱処理した。その後、純水5Lを加えながら限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20%に調整した。そして、限外濾過膜を用いて、この分散液の分散媒をエタノールに置換し、固形分濃度20%のオルガノゾルを得た。このオルガノゾルは、平均粒子径が60nmで、比表面積が110m/gの中空シリカ微粒子が分散されたオルガノゾル(以下、「中空シリカゾルA」と称する。)であった。
該中空シリカゾルA(シリカ固形分濃度20%)200gを用意し、限外濾過膜にて、メタノールへの溶媒置換を行い、SiO分が20%のオルガノゾル100g(水分量はSiO分に対して0.5%)を調製した。そこへ28%アンモニア水溶液を前記オルガノゾル100gに対してアンモニアとして100ppmとなるように加え、十分に混合し、次にγ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン〔商品名:KBM5103、信越化学(株)製〕3.6gを添加し、反応液とした。
これを50℃に加温し、撹拌しながら50℃で6時間加熱を行なった。加熱終了後、反応液を常温まで冷却し、さらにロータリーエバポレーターでイソプロピルアルコールへ溶媒置換を行い、SiO濃度20%の被覆中空微粒子からなるオルガノゾルを得た。このオルガノゾルは、平均粒子径が60nm、屈折率1.25、空隙率40〜45%で、比表面積が130m/g、熱質量測定法(TG)による質量減少割合が3.6%の変性中空シリカ微粒子が分散されたオルガノゾル(変性中空シリカ微粒子ゾル)であった。
〔製造例2、低屈折率層用塗液の調製〕
(製造例2−1、低屈折率層用塗液(L−1)の調製)
(a)UV7600B[日本合成化学(株)製、商品名:紫光UV7600B、6官能ウレタンアクリレート]を100部、(b)五酸化アンチモン粒子分散液[触媒化成工業(株)製、商品名:ELCOM PC−14、平均粒子径20nm、Sb濃度20%]を固形分換算で300部、(c)前記製造例1で得られた変性中空シリカ微粒子ゾルを固形分換算で215部、光重合開始剤[チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア907]を31部及びイソプロピルアルコールを10214部混合して低屈折率層用塗液L−1を調製した。
(製造例2−2、低屈折率層用塗液(L−2)の調製)
(a)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート[日本化薬(株)製、商品名:DPHA、6官能アクリレート]を100部、(b)五酸化アンチモン粒子分散液[触媒化成工業(株)製、商品名:ELCOM PC−14、平均粒子径20nm、Sb濃度20%]を固形分換算で300部、(c)前記製造例1で得られた変性中空シリカ微粒子ゾルを固形分換算で400部、光重合開始剤[チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア907]を40部及びイソプロピルアルコールを13160部混合して低屈折率層用塗液L−2を調製した。
(製造例2−3、低屈折率層用塗液(L−3)の調製)
(a)1,6−ヘキサンジオールジアクリレート[共栄社化学(株)製、商品名:ライトアクリレート1,6HX−A、2官能アクリレート]を100部、(b)五酸化アンチモン粒子分散液[触媒化成工業(株)製、商品名:ELCOM PC−14、平均粒子径20nm、Sb濃度20%]を固形分換算で300部、(c)前記製造例1で得られた変性中空シリカ微粒子ゾルを固形分換算で600部、光重合開始剤[チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア907]を50部及びイソプロピルアルコールを16350部混合して低屈折率層用塗液L−3を調製した。
(製造例2−4、低屈折率層用塗液(L−4)の調製)
(a)UV7600B[日本合成化学(株)製、商品名:紫光UV7600B、6官能ウレタンアクリレート]を100部、(b)五酸化アンチモン粒子分散液[触媒化成工業(株)製、商品名:ELCOM PC−14、平均粒子径20nm、Sb濃度20%]を固形分換算で300部、光重合開始剤[チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア907]を20部及びイソプロピルアルコールを6780部混合して低屈折率層用塗液L−4を調製した。
(製造例2−5、低屈折率層用塗液(L−5)の調製)
(a)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート[日本化薬(株)製、商品名:DPHA、6官能アクリレート]を100部、(b)五酸化アンチモン粒子分散液[触媒化成工業(株)製、商品名:ELCOM PC−14、平均粒子径20nm、Sb濃度20%]を固形分換算で300部、(c)前記製造例1で得られた変性中空シリカ微粒子ゾルを固形分換算で133部、光重合開始剤[チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア907]を27部及びイソプロピルアルコールを8908部を混合して低屈折率層用塗液L−5を調製した。
(製造例2−6、低屈折率層用塗液(L−6)の調製)
(a)1,6−ヘキサンジオールジアクリレート[共栄社化学(株)製、商品名:ライトアクリレート1,6HX−A、2官能アクリレート]を100部、(b)五酸化アンチモン粒子分散液[触媒化成工業(株)製、商品名:ELCOM PC−14、平均粒子径20nm、Sb濃度20%]を固形分換算で300部、(c)前記製造例1で得られた変性中空シリカ微粒子ゾルを固形分換算で930部、光重合開始剤[チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア907]を67部及びイソプロピルアルコールを21623部を混合して低屈折率層用塗液L−6を調製した。
(製造例2−7、低屈折率層用塗液(L−7)の調製)
(a)UV7600B[日本合成化学(株)製、商品名:紫光UV7600B、6官能ウレタンアクリレート]を100部、(b)五酸化アンチモン粒子分散液[触媒化成工業(株)製、商品名:ELCOM PC−14、平均粒子径20nm、Sb濃度20%]を固形分換算で220部、(c)前記製造例1で得られた変性中空シリカ微粒子ゾルを固形分換算で400部、光重合開始剤[チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア907]を36部及びイソプロピルアルコールを11884部混合して低屈折率層用塗液L−7を調製した。
(製造例2−8、低屈折率層用塗液(L−8)の調製)
(a)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート[日本化薬(株)製、商品名:DPHA、6官能アクリレート]を100部、(b)五酸化アンチモン粒子分散液[触媒化成工業(株)製、商品名:ELCOM PC−14、平均粒子径20nm、Sb濃度20%]を固形分換算で500部、(c)前記製造例1で得られた変性中空シリカ微粒子ゾルを固形分換算で400部、光重合開始剤[チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア907]を50部及びイソプロピルアルコールを16350部を混合して低屈折率層用塗液L−8を調製した。
(製造例2−9、低屈折率層用塗液(L−9)の調製)
(a)ペンタエリスリトールトリアクリレート[共栄社化学(株)製、商品名:ライトアクリレートPE−3A、3官能ウレタンアクリレート]を100部、(b)五酸化アンチモン粒子分散液[触媒化成工業(株)製、商品名:ELCOM PC−14、平均粒子径20nm、Sb濃度20%]を固形分換算で611部、(c)前記製造例1で得られた変性中空シリカ微粒子ゾルを固形分換算で400部、光重合開始剤[チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア907]を56部及びイソプロピルアルコールを18129部混合して低屈折率層用塗液L−9を調製した。
(製造例2−10、低屈折率層用塗液(L−10)の調製)
(a)UV7600B[日本合成化学(株)製、商品名:紫光UV7600B、6官能ウレタンアクリレート]を100部、(c)前記製造例1で得られた変性中空シリカ微粒子ゾルを固形分換算で400部、光重合開始剤[チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア907]を25部及びイソプロピルアルコールを8375部混合して低屈折率層用塗液L−10を調製した。
(製造例2−11、低屈折率層用塗液(L−11)の調製)
(a)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート[日本化薬(株)製、商品名:DPHA、6官能アクリレート]を100部、(b)五酸化アンチモン粒子分散液[触媒化成工業(株)製、商品名:ELCOM PC−14、平均粒子径20nm、Sb濃度20%]を固形分換算で150部、(c)前記製造例1で得られた変性中空シリカ微粒子ゾルを固形分換算で400部、光重合開始剤[チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア907]を33部及びイソプロピルアルコールを10777部混合して低屈折率層用塗液L−11を調製した。
(製造例2−12、低屈折率層用塗液(L−12)の調製)
(a)1,6−ヘキサンジオールジアクリレート[共栄社化学(株)製、商品名:ライトアクリレート1,6HX−A、2官能アクリレート]を100部、(b)五酸化アンチモン粒子分散液[触媒化成工業(株)製、商品名:ELCOM PC−14、平均粒子径20nm、Sb濃度20%]を固形分換算で750部、(c)前記製造例1で得られた変性中空シリカ微粒子ゾルを固形分換算で400部、光重合開始剤[チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア907]を63部及びイソプロピルアルコールを20347部混合して低屈折率層用塗液L−12を調製した。
(実施例1−1)
厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム[東洋紡績(株)製、商品名:A4300]の上に前記製造例2−1で調製した低屈折率層用塗液(L−1)を、光学膜厚がkλ/4(k:1、λ:550nm)になるようにグラビアコート法で塗布し、乾燥後、窒素雰囲気下で400mJ/cmの出力にて紫外線を照射して硬化させることにより、反射防止フィルムを作製した。
得られた反射防止フィルムについて、視感度反射率、表面抵抗率及び硬化膜の屈折率の評価を以下に記載する方法で行い、それらの評価結果を表1に示した。
(視感度反射率)
測定面の裏面反射を除くため、裏面をサンドペーパーで粗し、黒色塗料で塗り潰したものを分光光度計[日本分光(株)製、商品名:U−best560]により、光の波長380nm〜780nmの5°、−5°正反射スペクトルを測定した。得られる380nm〜780nmの分光反射率と、CIE標準イルミナントD65の相対分光分布を用いて、JIS Z8701で想定されているXYZ表色系における、反射による物体色の三刺激値Yを視感度反射率とした。
(表面抵抗率)
デジタル絶縁計[東亜DKK(株)製、商品名:SM−8220]を用いて、反射防止フィルムの表面抵抗率を測定した。なお、表1及び表2において、「RANGE OVER」は表面抵抗率が測定限界を超えるほど高くなったことを意味する。
(硬化膜の屈折率)
屈折率1.49のアクリル樹脂板[旭化成工業(株)製、商品名:デラグラスA]上に、ディップコーター[杉山元理化学機器(株)製]により、前記製造例2−1で調製した低屈折率層用塗液(L−1)を、光学膜厚がkλ/4(k:1、λ:550nm)になるように塗布し、乾燥後、窒素雰囲気下で400mJ/cmの出力にて紫外線を照射して硬化させた。
このアクリル樹脂板の裏面をサンドペーパーで粗し、黒色塗料で塗り潰したものを分光光度計[日本分光(株)製、商品名:U−best560]により、光の波長400nm〜650nmの5°、−5°正反射スペクトルを測定し、その反射率の極小値又は極大値を読み取った。
反射率の極値より以下の式を用いて硬化膜の屈折率を計算した。
最小反射率(%)={[アクリル樹脂板の屈折率×空気の屈折率―(層の屈折率)]/[アクリル樹脂板の屈折率×空気の屈折率+(層の屈折率)]}×100
ただし、アクリル樹脂板の屈折率は1.49、空気の屈折率は1.00である。
(実施例1−2及び実施例1−3)
実施例1−1において、実施例1−2では低屈折率層用塗液(L−1)の代わりに、製造例2−2で調製した低屈折率層用塗液(L−2)を用い、実施例1−3では製造例2−3で調製した低屈折率層用塗液(L−3)を用いた以外は実施例1−1と同様にして、反射防止フィルムを得た。
得られた反射防止フィルムについて、視感度反射率、表面抵抗率及び硬化膜の屈折率を評価し、それらの評価結果を表1に示す。
(比較例1−1〜比較例1−3)
実施例1−1において、低屈折率層形成用塗液(L−1)の代わりに、比較例1−1では製造例2−4で調製した低屈折率層形成用塗液(L−4)、比較例1−2では製造例2−5で調製した低屈折率層形成用塗液(L−5)、比較例1−3では製造例2−6で調製した低屈折率層形成用塗液(L−6)を用いた。それ以外は実施例1−1と同様にして、反射防止フィルムを得た。
得られた反射防止フィルムについて、視感度反射率、表面抵抗率及び硬化膜の屈折率を測定し、それらの評価結果を表1に示す。
Figure 0005671803
表1に示したように、実施例1−1〜1−3では、単層構成で反射防止性能を有し、かつ帯電防止性能にも優れた反射防止フィルムを得ることができた。
一方、比較例1−1では中空シリカ微粒子を含有していないことから、硬化膜の屈折率が高くなり、視感度反射率が高いという結果であった。また、比較例1−2では中空シリカ微粒子を含有しているものの、その含有量が少ないため、硬化膜の屈折率が十分に低くならず、反射防止性能が劣るという結果であった。比較例1−3では中空シリカ微粒子の含有量が過剰で、相対的に五酸化アンチモンの含有量が少ないため、帯電防止性能が発現されないという結果であった。
(実施例2−1〜実施例2−3)
実施例1−1において、低屈折率層用塗液(L−1)の代わりに、実施例2−1では製造例2−7で調製した低屈折率層用塗液(L−7)を用い、実施例2−2では製造例2−8で調製した低屈折率層用塗液(L−8)を用い、実施例2−3では製造例2−9で調製した低屈折率層用塗液(L−9)を用いた。それ以外は実施例1−1と同様にして、反射防止フィルムを得た。
得られた反射防止フィルムについて、視感度反射率、表面抵抗率及び硬化膜の屈折率を測定し、それらの評価結果を表2に示す。
(比較例2−1〜比較例2−3)
実施例1−1において、低屈折率層用塗液(L−1)の代わりに、比較例2−1では製造例2−10で調製した低屈折率層用塗液(L−10)を用い、比較例2−2では製造例2−11で調製した低屈折率層用塗液(L−11)を用い、比較例3−3では製造例2−12で調製した低屈折率層用塗液(L−12)を用いた。それ以外は実施例1−1と同様にして、反射防止フィルムを得た。
得られた反射防止フィルムについて、視感度反射率、表面抵抗率及び硬化膜の屈折率を測定し、それらの評価結果を表2に示す。
Figure 0005671803
表2に示したように、実施例2−1〜2−3では、単層構成で反射防止性能を有し、かつ帯電防止性能にも優れた反射防止フィルムを得ることができた。
一方、比較例2−1では五酸化アンチモンを含有していないことから、帯電防止性能が発現されないという結果であった。また、比較例2−2では五酸化アンチモンを含有しているものの、その含有量が少ないため、帯電防止性能が発現されないという結果であった。比較例2−3では、五酸化アンチモンの含有量が過剰で、相対的に中空シリカ微粒子の含有量が少ないため、硬化膜の屈折率が十分に低くならず、反射防止性能が劣るという結果であった。

Claims (1)

  1. 透明基材フィルム上に低屈折率層が直接積層されて構成されている反射防止フィルムであって、
    前記低屈折率層は、(a)多官能(メタ)アクリレート、(b)五酸化アンチモン及び(c)中空シリカ微粒子を含有し、(a)多官能(メタ)アクリレート100質量部あたり、(b)五酸化アンチモンを200〜630質量部及び(c)中空シリカ微粒子を190〜620質量部含む低屈折率層用塗液の硬化物であって、前記低屈折率層の厚みは、λ/4(λは光の波長400〜650nmを表す。)である反射防止フィルム。
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