JP5660972B2 - 差厚板の製造方法及び圧延装置 - Google Patents
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Description
このような自動車用途向けの差厚板は薄板と呼ばれるものであり、冷間圧延工程を経て製造される。この差厚板は、薄肉の部分と厚肉の部分の板厚比は大きく取られる場合が多く、プレス成形した後の形状精度の要求が高いため、元となる差厚板には非常に高い板厚精度や板平坦度が必要とされる。
上記の状況に対応すべく、様々な技術が開発されている。
特許文献2は、 圧延過程の間、2つの作業ロールの間に形成された圧延ギャップに金属帯材を通しかつ圧延ギャップを圧延過程の間、目的に合わせて変化させ、金属帯材の長さに亘って異なる帯材厚さを達成する、金属帯材をフレキシブル圧延する方法において、そのつどの圧延ギャップを調節する間又はその直後に作業ローラの反り線を、調節された圧延ギャップに関連して制御して金属帯材の平坦性を達成する圧延方法を開示する。
一方、特許文献4は、長手方向に板厚が異なる鋼板を熱間圧延によって製造するに際して、長手方向に異なる板厚に圧延される予定の部分毎に定めた所定の温度分布を付与した後に、長手方向に異なる板厚の部分が形成されるように圧延することを特徴とする長手方向に板厚が異なる鋼板の製造方法を開示している。
特許文献1に開示された方法では、トラッキング精度の問題で長手方向の寸法の精度に欠け、さらに大きな差厚を製造するためにはロールギャップの昇降速度の応答性の向上が必要であるため、非常に高価な圧延設備となってしまうか、又は、生産性の低い低速での圧延を行うことになる可能性を否めない。同様に、特許文献2の技術においても、ロールギャップの昇降速度の応答性の問題を避けて通ることはできないと思われる。
すなわち、本発明の差厚板の製造方法は、長手方向に対して短ピッチで板厚が変化する差厚板を一対のワークロールを備えた圧延機にて圧延し製造する差厚板の圧延方法であって、前記圧延機の出側での板厚変化Δh(x)を実現すべく、当該圧延機での圧延直前又は圧延中に圧延材を局所的に加熱して、板厚変化Δh(x)に対応する位置の板温度を式(6)で示されるΔT(x)だけ変更し、板温度を変更した圧延材を圧延することで差厚板を製造することを特徴とする。
好ましくは、前記圧延機の入側に加熱装置が設けられていて、この加熱装置により圧延材を加熱するとよい。
また、本発明における他の技術的手段に係る圧延装置は、一対のワークロールを備えた圧延機と、前記圧延機の出側での板厚変化Δh(x)を実現すべく、当該圧延機での圧延直前又は圧延中に圧延材を局所的に加熱して、板厚変化Δh(x)に対応する位置の板温度を式(6)で示されるΔT(x)だけ変更する板温度変更手段と、を有することを特徴とする。
好ましくは、前記板温度変更手段は、前記圧延機の入側に設けられ且つ圧延材を局所的に加熱する加熱装置を備えているとよい。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を、冷間圧延機を例示しつつ図を基に説明する。
なお、以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
本実施形態の差厚板は、圧延材Wの長手方向(長さが数千m〜数百m)に対して非常に短いピッチ(数十m〜数m以下)で板厚が変化するものである。本明細書では、このように圧延材Wの長さに比して短い間隔で板厚が変化するような板を「短ピッチ」と呼ぶこととする。言い替えるならば、本実施形態の差厚板は、長手方向数十m〜数m以下(例えば10m以下)の間に板厚が様々に変化する帯状板のことである。
圧延機1の入側には、ロールギャップ直下に位置する圧延材Wの板温度を測定する板温度計3aが設けられると共に、ワークロール2,2の径方向の膨張量を測定するロール表面変位計4(膨張測定手段)を備えている。板温度計3aは放射温度計でなどで構成され、ロール表面変位計4は、レーザ変位計や静電容量変位計により構成されている。
この圧延機1には、前述した圧下機構を動かしワークロール2,2間のギャップ量を制御する板厚制御装置10が備えられている。板厚制御装置10はAGC制御手段11を有し、このAGC制御手段11により、圧延機1のロールギャップ量Sが制御されるようになっている。板厚制御装置10はプロコンやPLC等で構成されている。
この通電加熱装置6の働きの詳細は後述するが、通電加熱装置6は、圧延機1の上側のワークロール2と下側のワークロール2とを電極として、両電極間に交流電流又は直流電流を印加する構成を備えている。印加された電流により、両ワークロール2,2に挟み込まれた圧延材Wの部分にジュール熱が発生し、当該部分が局所的に加熱されることとなる。なお、ワークロール2の表面部分を銅材等で形成し電気抵抗が低く抑えることで、ワークロール2での発熱を可及的に抑制することが可能となる。
以上述べた冷間圧延機1においては、圧延材Wは、圧延機1を通ることで冷間圧延されて、所望の板厚、板幅、板クラウンを有する製品(差厚板)へとなり、コイル巻き取り機で巻き取られ次の工程へと搬送される。
本発明の板温度変更手段12は、圧延機1の出側での板厚変化Δh(x)を実現すべく、圧延機1での圧延直前又は圧延中に、圧延材Wを長手方向で局所的に加熱又は冷却し、板厚変化Δh(x)に対応する位置の板温度を式(6)で示されるΔT(x)だけ変更し、板温度変更後の圧延材Wを圧延することで、差厚板を製造する圧延方法を実現化するものである。
このゲージメータ式を整理すると、式(2)のようになる。
このため、本実施形態では、膨張量測定手段であるロール表面変位計4によりロールの表面変位δR(θ)(ロール膨張量)を常に測定し、その変位量を基にロールギャップ補正量ΔS(x)を算出する。その後、算出されたロールギャップ補正量ΔS(x)を圧延機1に適用するようにしている。この処理はロールギャップ補正手段13にて行われる。
以上のことから、式(6),式(7)が導かれる。
次に、図2に基づき、第1実施形態に係る差厚板の製造方法の具体的な手法について述べる。
次に、S12において、圧延開始温度Tでの式(2)にて定義されたQ1,Q2を計算により求める。
S13において、式(6)を用いることで、圧延機入側の目標温度変動ΔT(x)を求める。
具体的には、ある一定角θ毎のδRを測定してテーブル化し、その中間点のために折れ線関数を当てるが容易であるが、この方法に限定しない。また、上ワークロール2,2と下ワークロール2,2が別々のδRを示す場合も考えると、上下のロールで別々にδRを測定し、その平均値を採用する方が望ましい。このδR(θ)を用いて、S17にて測定した現在のロールバイト位置での回転角θより、ロールギャップΔS(x)を式(7)を基に算出する。
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態を、図を基に説明する。
図3に示す如く、第2実施形態の圧延機1(冷間圧延機)は、第1実施形態の通電加熱装置6に代えて、圧延材Wを局所的に加熱する加熱装置7を有している。
まず、S21において、作りたい差厚板の目標板厚(目標とする板厚変化Δh(x))を決定する。ここで、xは長手方向の位置である。
次に、S22において、圧延開始温度Tでの式(2)にて定義されたQ1,Q2を計算により求める。
一方、S24において、式(7)を用いることで、圧延機入側の目標温度変動ΔT(x)を求める。すなわち、ロールの回転数を検出すると共に、ロール表面変位計4により、ロール半径の膨張量δR(θ)を常に計測し(S26)、ロール回転角θに対する関数としてδR(θ)を求める。得られたδR(θ)を用いて、S27にて測定した現在のロールバイト位置での回転角θより、ロールギャップ補正量ΔS(x)を式(7)を基に算出する。
すなわち、加熱装置7からワークロール2,2直下までの距離L、通板速度v、通板中の圧延材Wの冷却速度C、熱の拡散速度Vtを予め計算しておいたり設定しておく。その場合、加熱装置7を出た圧延材W(出側温度Tc)がワークロール2,2直下に達するまでの時間はL/Vであり、その間に冷却される板温はC・L/Vである。それ故、板温度の拡散速度VtからL/V後の板温度の予測が可能であり、ΔTcからΔT(x)の予測が可能となる。この関係を用い、ワークロール2,2直下でΔT(x)となるように加熱装置7の出側温度の変化ΔTcを制御する。
ところで、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
2 ワークロール
3a 板温度計(入側)
3b 板温度計(出側)
4 ロール表面変位計
5 板厚計
6 通電加熱装置
7 加熱装置
10 板厚制御装置
11 AGC制御手段
12 板温度変更手段
13 ロールギャップ補正手段
W 圧延材
Claims (8)
- 長手方向に対して短ピッチで板厚が変化する差厚板を一対のワークロールを備えた圧延機にて圧延し製造する差厚板の製造方法であって、
前記圧延機の出側での板厚変化Δh(x)を実現すべく、当該圧延機での圧延直前又は圧延中に圧延材を局所的に加熱して、板厚変化Δh(x)に対応する位置の板温度を式(6)で示されるΔT(x)だけ変更し、
板温度を変更した圧延材を圧延することで差厚板を製造することを特徴とする差厚板の製造方法。
- 前記圧延機のワークロールの膨張量δR(θ)を測定すると共に、測定されたδR(θ)を式(7)へ適用することでロールギャップ補正量ΔS(x)を算出し、
算出されたロールギャップ補正量ΔS(x)を前記圧延機に適用して差厚板を製造することを特徴とする請求項1に記載の差厚板の製造方法。
- 前記圧延材を加熱するために、ワークロール間に電流を流して圧延材を加熱することを特徴とする請求項1又は2に記載の差厚板の製造方法。
- 前記圧延機の入側に加熱装置が設けられていて、この加熱装置により圧延材を加熱することを特徴とする請求項1又は2に記載の差厚板の製造方法。
- 一対のワークロールを備えた圧延機と、
前記圧延機の出側での板厚変化Δh(x)を実現すべく、当該圧延機での圧延直前又は圧延中に圧延材を局所的に加熱して、板厚変化Δh(x)に対応する位置の板温度を式(6)で示されるΔT(x)だけ変更する板温度変更手段と、
を有することを特徴とする圧延装置。
- 前記圧延機のワークロールの膨張量δR(θ)を測定する膨張量測定手段と、
前記膨張量測定手段にて測定されたδR(θ)を式(7)を適用することでロールギャップ補正量ΔS(x)を算出し且つ算出されたロールギャップ補正量ΔS(x)を圧延機に適用するロールギャップ補正手段と、
を有することを特徴とする請求項5に記載の圧延装置。
- 前記板温度変更手段は、ワークロール間に電流を流すことで当該ワークロールに挟み込まれた圧延材を加熱する通電加熱装置を備えていることを特徴とする請求項5又は6に記載の圧延装置。
- 前記板温度変更手段は、前記圧延機の入側に設けられ且つ圧延材を局所的に加熱する加熱装置を備えていることを特徴とする請求項5又は6に記載の圧延装置。
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