JP6091349B2 - 板クラウン予測モデルの決定方法 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、板クラウン予測モデルを、圧延荷重に依存する成分を予測する荷重依存予測式(ロール弾性変形式)や、圧延荷重に依存しない成分を予測する荷重非依存予測式(ロールの熱膨張予測式や摩耗予測式)とから構成し、板クラウン誤差と圧延終了後における圧延本数の関係から、板クラウン予測モデルの各要素がどの程度の誤差を有するものであるかを判定し、この判定結果に基づいて板クラウン予測モデルを修正する技術が開示されている。
例えば、特許文献3では、板クラウン予測モデルから得られる板クラウン予測値とその実測値との差である板クラウン誤差を、圧延荷重に依存する荷重依存誤差と圧延荷重に非依存の荷重非依存誤差とに分離し、板クラウン誤差又は荷重依存誤差が最小となるように圧延機のハウジングに対する圧延ロールの拘束度合いを示すパラメータを修正し、このパラメータを用いて、板クラウン予測モデルを修正する技術が開示されている。
実際の圧延工程においては、圧延荷重変動やロールの力学的状態により、ロールの弾性変形は大きく異なり、それに伴う板クラウン誤差も非常に大きなものとなる。すなわち、
板クラウン誤差には圧延荷重に起因する成分が多く含まれていることは、現場の認識としては一般的である。
そこで、特許文献3に開示された技術を用いて、板クラウン予測モデルの修正を行うことを考える。特許文献3は、板クラウン誤差を圧延荷重に依存する荷重依存誤差と圧延荷重に非依存の荷重非依存誤差とに分離し、板クラウン誤差又は荷重依存誤差が最小となるように当該予測モデルを修正するものであって、特許文献1及び特許文献2に開示された技術より、ある程度精度よく板クラウン予測モデルの修正を行うことができる。
本発明に係る板クラウン予測モデルの決定方法は、上下一対のワークロールと、当該ワークロールを支持するバックアップロールと、で構成される圧延ロールを備えた圧延機により圧延される圧延材の板クラウン予測モデルを決定する際に、前記圧延機のハウジングに対する前記バックアップロールの拘束度合いを示す「拘束度合いパラメータ」を用いて、前記板クラウン予測モデルを決定する板クラウン予測モデルの決定方法において、
前記圧延材が導入される前の状況下で、前記上下一対のワークロールをキス状態にしてバックアップロール表面の曲げひずみ量を測定し、前記測定したバックアップロール表面の曲げひずみ量に基づいて、前記バックアップロールの「拘束度合いパラメータ」を決定
することを特徴とする。
図1及び図2に示すように、本発明の板クラウン予測モデルの決定方法が適用される圧延装置1は、スラブ鋳片などの圧延材Xを厚鋼板Zに圧延するものであり、圧延材Xを加熱する加熱炉13と、加熱された圧延材Xを予め決定された板厚及び板幅に圧延する粗圧
延機2と、粗圧延機2で圧延された圧延材Xを目標の板厚及び板幅になるまで圧延して最終製品となる厚鋼板Zを製造する仕上圧延機3と、を有している。
また、粗圧延機2には圧延荷重Pを計測するための圧延荷重計6が備えられ、粗圧延機2の出側には圧延材Xの出側板厚を計測するための板厚計7が設けられている。さらに、粗圧延機2は、板クラウン予測モデルを基に板クラウンを算出し、その値を目標値として粗圧延機2を制御する制御手段9を備えている。
下流工程にある仕上圧延機3は、粗圧延機2と同様な略構成とされており、上下一対のワークロール4とワークロール4を支持するバックアップロール5とで構成される圧延ロールと、ワークロール4に圧延荷重Pを付与する圧下装置10とを有している。
圧延荷重計6や板厚計7で計測された仕上圧延機3での計測データは、予測モデル修正手段8に送られ、板クラウン予測モデルの決定(修正)に用いられるようになっている。
次に、本実施形態で用いられている板クラウン予測モデルの決定方法の基本的な考え方について、説明する。
板クラウン予測モデルは、式(1)に示すように、板クラウンの荷重依存成分を予測する荷重依存予測式Ch1と、板クラウンの荷重非依存成分を予測する荷重非依存予測式Ch2との和で表される。
荷重非依存予測式で予測される板クラウンの荷重非依存成分、換言すれば荷重非依存誤差は、熱膨張又は摩耗による圧延ロール(バックアップロール5及びワークロール4)のプロフィールの変形に起因するものであって、圧延が進むにつれて、圧延ロール4,5が熱膨張したり、圧延ロール4,5表面の摩耗が進み、圧延ロール4,5のロールプロフィールが変化したりすることで発生するものである。
Ch1=f(P,CW,α,・・・) ・・・(2)
図2に示すように、バックアップロール5は、その幅方向両側にバックアップロール5両端面より突出し、且つバックアップロール5の径より径小なロールネック部11を備えている。このロールネック部11は、圧延機2,3のチョック部12に嵌り込んでおり、圧延機2,3のチョック部12内に設けられている軸受け(図示せず)により回転自在に支持されている。圧延機2,3のチョック部12は、圧延機2,3のハウジングに連結固定されている。また、圧延機2,3のチョック部12の上方には、圧延荷重Pをワーク
ロール4及びバックアップロール5に付与する圧下装置10が備えられている。
不適切な拘束度合いパラメータαを選択した場合、バックアップロール5のたわみ予測値が実態と大きく外れ、その状態で、圧延荷重Pを横軸、板クラウン誤差を縦軸に取った関係式を考えた場合、そこに現れる「圧延荷重Pと板クラウン誤差との関係」を示す線形近似直線の傾きは、非常に大きなものとなる。具体的には、不適切に「小さな」 拘束度合いパラメータαを選択した場合、バックアップロール5は大きくたわむ。一方、不適切に「大きな」拘束度合いパラメータαを選択した場合、バックアップロール5のたわみは小さくなる。すなわち、圧延荷重Pが大きなものになるにつれ、板クラウン予測値と板クラウン実測値との差が大きくなり、板クラウン予測モデルの精度が悪いものとなっている。
従って、「圧延荷重Pと板クラウン誤差との関係」を示す線形近似直線の傾きが小さいものとなるような拘束度合いパラメータαを算出し、このαを板クラウン予測モデルに適用することで予測モデル修正を行えば、板クラウンの荷重依存誤差を最小とすることができる。
例えば、圧延機2,3において、圧延材Xを1パスからn−1パス目まで圧延し、現在nパス目の圧延を行っているとする。その際に、nパス目での圧延荷重Pやバックアップロール5のロールクラウンCW等の測定データを収集する。
次に、式(2)に示した板クラウン予測モデルを用いて、nパス目の板クラウン予測値を算出すると共に、板厚計7を用いて、板クラウン実測値を算出する。
このようにして求められた拘束度合いパラメータαを、板クラウン予測モデルの荷重依存式Ch1=f(P,CW,α,・・・)の独立変数に含まれているαと置き換えることで、板クラウン予測モデルが決定する。
しかしながら、上述したような、板クラウン誤差を荷重依存誤差と荷重非依存誤差とに分離するだけでは、より精度よく板クラウン予測モデルの決定(修正)を行えないことがある。つまり、圧延材Xの偏熱(圧延材Xの幅方向の温度分布)や、圧延材Xの幅方向へのメタルフローの影響などによる圧延材Xの変形(圧延材Xの幅方向分布)の値が、拘束度合いパラメータαに含まれてしまい、十分な精度でバックアップロール5のたわみの補正を行うことができない。
また、本実施形態では、圧延機2,3のワークロール4とバックアップロール5とを交換した後に、バックアップロール5の変形量を測定している。なお、バックアップロール5の変形量を測定に際しては、ワークロール4のみの交換後に変形量を測定してもよく、バックアップロール5のみの交換後に変形量を測定してもよい。
図4に示す如く、例えば、拘束度合いパラメータαがα=0のとき(図3(b)のCASE4に近似)、バックアップロール5(BUR)のたわみ量は、0.085mmとされている。また、拘束度合いパラメータαがα=1のとき(図3(b)のCASE1に近似)、バックアップロール5(BUR)のたわみ量は、0.05mmとされている。
次に、実際の圧延機2,3における拘束度合いパラメータαの求め方、及び板クラウン予測モデルの修正方法について説明する。
具体的には、表面にひずみゲージが貼り付けられたバックアップロール5とワークロール4とを圧延機2,3に組み込む(交換する)。好ましくは、バックアップロール5のたわみ量の測定結果と、予め用意したバックアップロール5のたわみ量の算出結果との比較が容易になるように、ひずみゲージをバックアップロール5表面の幅方向中央の最上部に貼り付けておくとよい。
このバックアップロール5の曲げひずみの測定結果に基づいて、ワークロール4をキス状態にして圧延したときに生じるバックアップロール5のたわみ量を求める。
図4に示すように、交換した後のバックアップロール5の拘束度合いパラメータαは、測定したバックアップロール5の表面のたわみ量(0.075mm)を示す線と、予め算出したバックアップロール5の表面におけるたわみ量を示す線とが交差する交差点であり、α=0.3である。
図5には、上述した本発明の板クラウン予測モデルの決定方法で予測した板クラウン(mm)の精度と、従来の方法で予測した板クラウン(mm)の精度を比較したものを示す。
例えば、実績板クラウンが0mmである場合、予測板クラウンもほぼ0mmである。また、実績板クラウンが−0.05mmである場合、予測板クラウンもほぼ−0.05mmである。このように、図5中の破線近傍に集中するようになっており、かなり精度のよい板クラウン予測モデルを決定することが可能であることが確認できる。
以上述べたように、本発明の板クラウン予測モデルの決定方法は、圧延機2,3の圧延ロール(バックアップロール5及びワークロール4)を交換する毎に変化する各部位(ハウジングのチョック部12など)の隙間を考慮した上で、圧延ロール4,5の拘束度合いを示す拘束度合いパラメータαを決定し、そのαを用いることで、圧延材Xの偏熱や幅方向へのメタルフローの影響を受けずに板クラウンの予測を行うことができる。
例えば、本実施形態では、バックアップロール5の表面のひずみをひずみゲージを用い
て測定し、バックアップロール5のたわみ量を算出する方法を説明したが、バックアップロール5の幅方向にレーザ変位計などの測定手段を複数配置し、バックアップロール5のたわみ量を直接測定してもよい。あるいは、X線回折やレーザ照射を用いてバックアップロール5たわみ量を測定する方法を利用してもよい。
特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
2 粗圧延機
3 仕上圧延機
4 ワークロール
5 バックアップロール
6 圧延荷重計
7 板厚計
8 予測モデル修正手段
9 制御手段
10 圧下装置
11 ロールネック部
12 チョック部(圧延機のハウジング)
13 加熱炉
X 圧延材
Z 厚鋼板
Claims (2)
- 上下一対のワークロールと、当該ワークロールを支持するバックアップロールと、で構成される圧延ロールを備えた圧延機により圧延される圧延材の板クラウン予測モデルを決定する際に、前記圧延機のハウジングに対する前記バックアップロールの拘束度合いを示す「拘束度合いパラメータ」を用いて、前記板クラウン予測モデルを決定する板クラウン予測モデルの決定方法において、
前記圧延材が導入される前の状況下で、前記上下一対のワークロールをキス状態にしてバックアップロール表面の曲げひずみ量を測定し、
前記測定したバックアップロール表面の曲げひずみ量に基づいて、前記バックアップロールの「拘束度合いパラメータ」を決定する
ことを特徴とする板クラウン予測モデルの決定方法。 - 前記バックアップロール表面の曲げひずみ量を測定するに際しては、前記圧延機のバックアップロールを交換した後に測定することを特徴とする請求項1に記載の板クラウン予測モデルの決定方法。
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