JP5659252B2 - 矢板の圧入工法 - Google Patents

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Description

本発明は、矢板の圧入工法に関し、特に矢板幅の広い矢板の圧入に好適な工法にするものである。
この種の矢板の圧入工法としては、例えば下記の特許文献1に記載された工法がある。これは、回転駆動される複数本の掘削用軸に径の異なる円筒状ケーシングを夫々外嵌装備し、各掘削用軸の先端部に、矢板圧入完了後にビット本体が矢板に衝突しないように地盤中から引き抜き可能な偏心掘削ビットをダウンザホールハンマーを介して取付けると共に、これら偏心掘削ビットのそれぞれの回転により一部重複するように形成される複合軌跡円の最大幅が矢板幅とほぼ同一である多軸掘削装置を用い、第1矢板を、その一方の継手用係合部が前記複合軌跡円内に位置し且つ他方の継手用係合部が該複合軌跡円の外に位置するように複数のケーシングに支持して、ダウンザホールハンマーにより打撃される各偏心掘削ビットの回転打撃作用により地盤を掘削しながら第1矢板を圧入し、次いで掘削装置をほぼ矢板幅分前進させ、第2矢板を第1矢板と逆向きに複数のケーシングに支持させると共に、第2矢板の一方の継手用係合部を前記複合軌跡円の外に位置させて、既掘削孔内に位置する第1矢板の継手用係合部に係合させ且つ第2矢板の他方の継手用係合部を前記複合軌跡円内に位置させた状態で、各掘削偏心ビットの回転打撃作用により地盤を掘削しながら第2矢板を圧入し、以降上記の工程を繰り返し行う方法である。
この工法によれば、矢板幅の広い矢板の圧入施工において有効である。例えばU形鋼矢板の場合は、有効幅が400mm、500mm及び600mmの3種類があり、しかして600mm幅の矢板を単軸の掘削装置を使用すると、1つの偏心掘削ビットにより掘削される掘削孔の内径が大きくなって必要以上に地盤が掘削される傾向にあるが、上記工法のように、多軸掘削装置の使用によると、複数の偏心掘削ビットによって横方向につながる横長の複合軌跡円で掘削孔が形成されることになるから、矢板の圧入に必要な最低限の大きさの地盤を掘削できる。
特許第2997402号
しかしながら、上記特許文献1の工法によれば、これに使用する多軸掘削装置には、各掘削用軸ごとに夫々径の異なる円筒状ケーシングを外嵌装備するため、これら複数の円筒状ケーシングの上端部側に、矢板の上端部を固定するためのチャックを設置するのが非常に困難であることから、そのチャックは、オーガマシン側に設置され、しかもオーガマシンの一面側にしか設けられておらず、従って矢板を交互に逆向きにケーシングに支持させるにあたっては、一つの矢板の圧入完了後に多軸掘削装置を地上へ引き上げた時にオーガマシンを反転させる作業が必要となり、その作業のために施工能率が低下している。
本発明は、上記の事情に鑑み、チャックの設置が容易であるとともに、オーガマシンをいちいち反転させる必要がなく、チャックによる矢板上端部の固定を簡単容易に行なえる矢板の圧入工法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための手段を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明の矢板の圧入工法は、オーガマシン2の下部に両側面側が平面状の支持管3を垂下連結し、支持管3には、オーガマシン2の回転駆動軸13により回転駆動される複数の掘削用軸4,5を挿入配備、支持管3の一側面3a側及び他側面3b側の夫々上部に矢板6の上端部を支持管3に固定するチャック7,8を設けると共に、支持管3の一側面3a側及び他側面3b側の夫々下端部側に矢板6の下端部を保持するための係止部21,21を設け、一方、矢板6の下端部には支持管3の係止部21,21に対応する位置にその係止部21が係止される被係止部22を設け、各掘削用軸4,5の先端部に、矢板圧入完了後にビット本体9a,10aが矢板6に衝突しないように地盤中から引き抜き可能な偏心掘削ビット9,10をダウンザホールハンマー11,12を介して取付けると共に、これら偏心掘削ビット9,10の回転により一部重複するように形成される複合軌跡円Soの最大幅Hが矢板幅Wとほぼ同一である多軸掘削装置1を用い、第1矢板6Aを、その一方の継手用係合部6aが前記複合軌跡円So内に位置し且つ他方の継手用係合部6bが複合軌跡円Soの外に位置するように支持管3の一側面3a側に支持させて、その上端部を支持管3の一側面3a側のチャック7で固定すると共に、その下端部の被係止部22を支持菅3の一側面3a側の係止部21に係止させ、この状態で、ダウンザホールハンマー11,12で打撃される各偏心掘削ビット9,10の回転打撃作用により地盤を掘削しながら第1矢板6Aを圧入し、次いで掘削装置1をほぼ矢板幅W分前進させ、第2矢板6Bを第1矢板6Aとは逆向きで支持管3の他側面3b側に支持させると共に、第2矢板6Bの一方の継手用係合部6bを前記複合軌跡円Soの外に位置させて、既掘削孔内に位置する第1矢板6Aの継手用係合部6aに係合させ且つ第2矢板6Bの他方の継手用係合部6aを前記複合軌跡円So内に位置させた状態で、第2矢板6Bの上端部を支持管3の他側面3b側のチャック8で固定すると共に、その下端部の被係止部22を支持菅3の他側面3b側の係止部21に係止させ、この状態で、各掘削用軸4,5の回転打撃作用で地盤を掘削しながら第2矢板6Bを圧入し、以降上記の工程を繰り返し行うことを特徴とする。
上記解決手段による発明の効果を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明の矢板の圧入工法は、オーガマシン2の下部に両側面側が平面状の支持管3を垂下連結し、支持管3には、オーガマシン2により回転駆動される複数の掘削用軸4,5を挿入配備すると共に、支持管3の一側面3a側及び他側面3b側の夫々上部に矢板6の上端部を支持管3に固定するチャック7,8を設け、各掘削用軸4,5の先端部に、矢板圧入完了後にビット本体9a,10aが矢板6に衝突しないように地盤中から引き抜き可能な偏心掘削ビット9,10をダウンザホールハンマー11,12を介して取付けた多軸掘削装置1を用い、第1矢板6を支持管3の一側面3a側に支持させる際には、この第1矢板6Aの上端部を、支持管3の一側面3a側に配備したチャック7により支持管3の一側面3a側上端部に固定し、第2矢板6Bを支持管3の他側面3b側に支持させる際には、この第2矢板6Bの上端部を、支持管3の他側面3b側に配備されたチャック8によって支持管3の他側面3b側上端部に固定するから、第2矢板6Bを支持管3の他側面3b側に支持させるにあたって、従来のようにオーガマシンを矢板圧入後に地上で反転させる必要がなく、多軸掘削装置全体をそのままの姿勢で支持管3の他側面3b側のチャック8により第2矢板6Bの上端部を支持管3の他側面3b側に固定でき、従って施工をスムーズに行なえ、施工能率を向上できる。また、支持管3の両側面3a,3b側が夫々平面状であるため、矢板6を各側面3a,3bに対し安定良く支持させることができ、矢板6の打ち込みを的確に行なわせることができる。また、この支持管3内に複数の掘削用軸4,5を挿入配備する構成であるため、チャック7,8を支持管3に直接的に容易に設置することができる。
更に本発明によれば、上述のように、支持管3の一側面3a側及び他側面3b側の夫々上部に矢板6の上端部を支持管3に固定するチャック7,8を設けると共に、支持管3の一側面3a側及び他側面3b側の夫々下端部側に矢板6の下端部を保持するための係止部21,21を設け、一方、矢板6の下端部には支持管3の係止部21,21に対応する位置にその係止部21が係止される被係止部22を設けてなるため、第1矢板6Aを支持菅3の一側面3側に支持させ、第2矢板6Bを第1矢板6Aとは逆向きで支持管3の他側面3b側に支持させるにあたって、第1矢板6Aの上端部は支持管3の一側面3a側のチャック7で固定されると共に、第1矢板6Aの下端部は、その被係止部22が支持管3の一側面3a側の係止部21に係止され、一方、第2矢板6Bの上端部は支持管3の他側面3b側に設けたチャック8で固定されると共に、第2矢板6Bの下端部は、その被係止部22が支持管3の他側面3a側に設けた係止部21に係止されるようになっているため、第1矢板6Aを支持菅3の一側面3a側に沿って圧入後、これに隣接して第2矢板6Bを第1矢板6Aとは逆向きで支持菅3の他側面3bに沿って圧入する際に、上述のように掘削装置1、即ち、その支持菅3をほぼ矢板幅W分前進させるだけでよく、従来のようにオーガマシンを矢板圧入後に地上で反転させる必要がないからそれだけ作業能率が良く、又、支持菅3を反転させたりする必要もないから構造が簡単であり、第1矢板6A及び第2矢板6Bの上端部は夫々独自のチャック7,8で固定され、その下端部は夫々独自の係止部21,21で係止されて、第1矢板6A及び第2矢板6Bの圧入時に支持管3から離れることがなく、第1矢板6A及び第2矢板6Bの圧入を的確に行なわせることができる。
(a) は本発明工法に用いる多軸掘削装置の一部断面正面図、(b) は側面図である。 (a) は図1の(a) のX−X線断面図、(b) は図1の(a) のY−Y線断面図、(c) は図1の(a) に示す多軸掘削装置の一部断面拡大正面図、(d) は図1の(b) に示す多軸掘削装置の一部断面側面図であって、何れも矢板の被係止部を支持管の係止部に係止させた状態を示す。 (a) は図1のに示す多軸掘削装置の一部を更に拡大した拡大正面図で、多軸掘削装置の使用による矢板の圧入工程を説明しており、(b) は(a) のV−V線断面図であり、(c) は矢板打ち込み後に偏心掘削ビットを支持管と共に引き抜く際の偏心掘削ビットの配置を示す断面図である。 両側面が平面状の支持管の断面形が長方多角形である場合の実施形態を示す断面図である。
以下に本発明に係る工法の好適な一実施形態を図面に基づいて説明する。図1及び図2に示される多軸掘削装置1は、例えばクローラクレーン(図示せず)のブーム先端から垂下されるウインチ23により昇降自在に吊支されるオーガマシン2を有する。このオーガマシン2の下部には両側面3a,3b側が平面状である断面長円形の支持管3が垂下連結され、この断面長円形支持管3には、オーガマシン2によって回転駆動される2本の掘削用軸4,5が挿入配備されると共に、支持管3の一側面3a側及び他側面3b側の夫々上部に矢板6の上端部を支持管3に固定するためのチャック7,8が設けられ、そして各掘削用軸4,5の下端部には、図3の(a) 〜(c) に示すように、矢板6の圧入完了後にビット本体9a,10aが矢板6に衝突しないように地盤G中から引き抜き可能な偏心掘削ビット9,10がダウンザホールハンマー11,12を介して互いに衝突しないように上下に変位して取付けられると共に、これら偏心掘削ビット9,10の回転によって一部重複するように形成される複合軌跡円Soの最大幅Hが矢板幅Wとほぼ同一となるように構成されている。図3の(b) において、Saは一方の偏心掘削ビット9の回転軌跡円を示し、Sbは他方の偏心掘削ビット10の回転軌跡円を示す。
上記多軸掘削装置1について更に詳しく説明すると、各掘削用軸4,5の下端部にダウンザホールハンマー11,12を介して一体装備された偏心掘削ビット9,10は、図3の(a) に示すように、夫々ビット本体9a,10aとビット軸部9b,10bとからなるもので、各偏心掘削ビット9,10は、矢板6の圧入完了後に偏心掘削ビット9,10を地盤中から引き抜く際にビット本体9a,10aが矢板6に衝突しないように掘削用軸4,5の回転中心軸O1 ,O2 に対し夫々偏心して形成されている。また各偏心掘削ビット9,10は、図3の(a) に示すように全体が側面視で略ブーツ状に形成されると共に、ビット本体9a,10aが平面視で略扇形に形成されている。矢板6は、U形の鋼製矢板とする。尚、図示は省略するが、ビット本体9a,10aの外周面及び底面には多数の突起が設けられ、またビット本体9a,10aの底面にはダウンザホールハンマー11,12からの圧縮エアを噴出させるエア噴出孔が設けてある。
各ダウンザホールハンマー11,12は、図1の(a) に概略示すように、シリンダ11a,12a内に収容したピストンハンマー(図示省略)を、掘削用軸4,5の中空部4a,5aに供給される圧縮エアにより駆動して、偏心掘削ビット9,10に打撃力を与えるようにしたものである。そして、図3の(b) に示すように、両ダウンザホールハンマー11,12のうち一方のダウンザホールハンマー12を他方より径小とし、この径小ダウンザホールハンマー12の下端側の偏心掘削ビット10を径大ダウンザホールハンマー11の下端側の偏心掘削ビット9より短くして、その回転軌跡円Sbが偏心掘削ビット9の回転軌跡円Saよりも径小となるようにしているのは、図3の(b) から分かるように、第1矢板6Aの圧入完了後に第2矢板6Bを圧入する時に偏心掘削ビット10が第1矢板6Aの一方の継手用係合部6aに干渉してその継手用係合部6aを破損させたりするのを回避するためである。
また、図1の(a) ,(b) に示すように、オーガマシン2の回転駆動軸13は、歯車機構14を介して2本の掘削用軸4,5の上端部に連動連結され、両掘削用軸4,5の上端部側にはスイベル機構15が介装されていて、エアホース16からの圧縮エアが、スイベル機構15により両掘削用軸4,5の中空部4a,5a(図2の(a) ,(b) 参照)に導入されて、ダウンザホールハンマー11,12に供給されるようになっている。
支持管3の上部側にチャック取付枠17が取付け固定されていて、このチャック取付枠17には、支持管3の一側面3a側及びその他側面3b側の夫々上部で矢板6の上端部を支持管3に固定できるようにするためのチャック7,8が装備されている。各チャック7,8は、チャック取付枠17のブラケット18に油圧シリンダ19を取り付け、このシリンダ19により押圧板20を支持管3の一側面3a又は他側面3bに対し進退移動させて矢板6の上端部を支持管3の一側面3a又は他側面3bに押し付け固定するようにしたものである。
従って、図1の(a) ,(b) 及び図2の(a) に示すように矢板6を支持管3の一側面3a側に支持させる時は、チャック7を作動させて、油圧シリンダ19で押圧板20を支持管3の一側面3aに対し前進移動させることにより、押圧板20で矢板6の上端部を支持管3の一側面3aに押し付けて固定し、矢板6を解放する時は、油圧シリンダ19で押圧板20を後退移動させる。そして、矢板6を支持管3の他側面3b側に支持させる時には、チャック8を作動させて、油圧シリンダ19で押圧板20を支持管3の他側面3bに対し前進移動させることにより、押圧板20で矢板6の上端部を支持管3の他側面3bに押し付けて固定し、押圧板20を後退移動させることで、矢板6を解放する。
また、図1の(a) ,(b)及び図2の(b) 〜(d) に示すように、支持管3の一側面3a側及び他側面3b側の夫々下端部側には夫々矢板6の下端部を保持するための係止部21が設けられる、そして矢板6の下端部には支持管3の係止部21に対応する位置にその係止部21が係止される被係止部22が設けられていて、支持管3の一側面3a側又は他側面3b側に支持される矢板6の被係止部22を支持管3側の係止部21に係止させることによって、その矢板6の下端部を支持管3に保持できるようになっている。
支持管3側に設けられる係止部21は、図2の(b) ,(c) 及び(d) から分かるように、支持管3下端部の一側面3a側の左右2箇所と他側面3b側の左右2箇所との4箇所に設けられ、各係止部21は、下向きに突出するピンからなるもので、このピン21は、支持管3の下端部の上記4箇所に夫々切欠開口形成された開口部25(図2の(c) 及び(d) 参照)の上端部から支持管3内に水平に突入するように固着された取付部片24に下向きに突設されている。一方、矢板6側に設けられる被係止部22は、図2の(b) ,(c) ,(d) に示すように、支持管3の一側面3a側又は他側面3b側の夫々左右2箇所に設けてある係止部(ピン)21と対応する位置で矢板6下端部の内側面側に水平内向きに突設された受板26のピン孔27からなるもので、図2の(d) の仮想線で示すように、矢板6を支持管3の一側面3a側に支持させる際に、矢板6の受板26が支持管3のピン21の位置より下方に位置するように矢板6を引き下げた状態から、矢板6を支持管3の一側面3aに寄せ付けて受板26を支持管3の開口部25内に突入させた後、矢板6を引き上げることにより、矢板6の受板26のピン孔27(被係止部22)を支持管3側のピン21(係止部)に挿通係止させ、それにより矢板6の下端部を支持管3に保持することができる。
上述したような多軸掘削装置1の使用による矢板6の圧入方法について、図3の(b) ,(c) を参照して具体的に説明する。
先ず、多軸掘削装置1を地上の所定箇所に配置して、図3の(b) の左側に示すように、第1矢板6A(6)を、その一方の継手用係合部6aが複合軌跡円So(偏心掘削ビット9の軌跡円Saと偏心掘削ビット10の軌跡円Sbとからなるもの)の軌跡円Sa内に位置し且つ他方の継手用係合部6bが複合軌跡円Soの軌跡円Sbの外に位置するような状態で支持管3の一側面3a側に支持させる。尚、第1矢板6A(6)を支持管3に支持させるにあたって、この第1矢板6A(6)は、リーダの頂部より垂下される前記ウインチ23(図1参照)とは別のウインチ(図示せず)によって吊り込む。第2矢板6B(6)も同様である。
第1矢板6A(6)を支持管3の一側面3a側に支持させる際に、第1矢板6A(6)の下端部にある被係止部22を、支持管3側の係止部21に対し図2の(c) 及び(d) に示すように適宜に係止させた状態で、この第1矢板6A(6)の上端部を、支持管3の一側面3a側に配備されたチャック7により支持管3の一側面3a側上端部に固定する。それから、オーガマシン2により掘削用軸4,5を回転駆動して、両偏心掘削ビット9,10を互いに同方向に回転させると共に、両偏心掘削ビット9,10を夫々ダウンザホールハンマー11,12によって打撃しつつ地盤を掘削しながら、第1矢板6A(6)を地盤中所定深度まで圧入する。尚、矢板6側の被係止部22で受板26のピン孔27(被係止部22)を、支持管3側の係止部であるピン21に対して図2の(c) ,(d) に示すように係止させるには、前述したように被係止部22である受板26のピン孔27がピン21の位置より下方に位置するように矢板6を引き下げた状態から、矢板6を支持管3の一側面3aに寄せ付けて受板26を支持管3の開口部25内に突入させた後、矢板6を引き上げるようにすればよい。また、ピン21をピン孔27から抜き抜くには、矢板6の圧入後に矢板6を残して掘削装置1を引き上げる時に、支持管3の引き上げに伴ってピン21は矢板6側のピン孔27から自動的に抜け出ることになる。
第1矢板6A(6)の圧入が完了したならば、掘削用軸4,5の回転を、偏心掘削ビット9,10が図3の(c) に示すように第1矢板6A(6)の下端に衝突しない位置(ビット本体9a,10aの最径小側周縁が第1矢板6A(6)側に対向する位置)で停止させた後、チャック7を解放操作して、第1矢板6A(6)の上端部を支持管3から解放した状態で、掘削装置1を地上へ引き上げつつ、この引き上げにより第1矢板6A(6)下端部の被係止部22(ピン孔27)から支持管3下端部の係止部(ピン)21を離脱させ、偏心掘削ビット9,10を第1矢板6A(6)沿いに引き上げながら多軸掘削装置1全体を地盤中から引き上げる。
次いで、多軸掘削装置1を、ほぼ矢板幅W分図3の(b) の右方へ前進させて、第2矢板6Bを同図の仮想線図示のように第1矢板6A(6)と逆向きにして支持管3の他側面3b側に支持させると共に、第2矢板6B(6)の一方の継手用係合部6bを、複合軌跡円Soの軌跡Sbの外に位置させて、既に掘削された掘削孔内に位置する第1矢板6Aの継手用係合部6aに係合させ、第2矢板6B(6)の他方の継手用係合部6aを複合軌跡円Soの軌跡円Sa内に位置させた状態で、偏心掘削ビット9,10により地盤を掘削しながら第2矢板6Bを圧入する。
この第2矢板6B(6)を支持管3の他側面3b側に支持させる際には、第2矢板6B(6)の下端部にある被係止部22を支持管3側の係止部21に係止させた状態で、この第2矢板6B(6)の上端部を、支持管3の他側面3b側に配備されたチャック8によって支持管3の他側面3b側上端部に固定する。このように第2矢板6B(6)を支持管3の他側面3b側に支持させるにあたって、従来工法のようにオーガマシンを第1矢板6Aの圧入後に地上で反転させる作業を行なう必要がなく、多軸掘削装置1全体をそのままの姿勢で、支持管3の他側面3b側のチャック8により第2矢板6B(6)の上端部を支持管3に固定できるから、作業をスムーズに行なえ、施工能率を向上できる。
第2矢板6B(6)の圧入が完了したならば、第1矢板6A(6)の場合と同じ様に、掘削用軸4,5の回転を、偏心掘削ビット9,10が第2矢板6B(6)の先端に衝突しない位置で停止させた後、チャック7の解放操作によって第2矢板6B(6)の上端部を支持管3から解放すると共に、第2矢板6B(6)下端部の被係止部22を支持管3の係止部21から離脱させた状態で、多軸掘削装置1を地盤G中から引き上げる。以降は、上記の工程を繰り返し行えばよい。
この実施例の圧入工法では、両偏心掘削ビット9,10の夫々の回転によって一部重複するように形成される2つの軌跡円Sa,Sbからなる複合軌跡円Soの最大幅Hが矢板幅Wとほぼ同一である2つの偏心掘削ビット9,10を用いて、矢板6の圧入を行うため、隣合う掘削孔間に掘削残し部分を形成することなく有効に掘削孔を掘削できると共に、既に圧入された例えば第1矢板6A(6)に対し第2矢板6B(6)の圧入を行う際に、この第2矢板6B(6)が圧入される掘削孔を掘削する一方の偏心掘削ビット10が、これに隣接する第1矢板6A(6)の継手用係合部6aに衝当するようなことがない。
また、この圧入工法では、支持管3の一側面3a側又は他側面3b側に支持される矢板6の被係止部22を支持管3の係止部21に係止させることによって、その矢板6の下端部を支持管3に保持させるようにしているから、矢板6の圧入時に矢板6の下端部が支持管3から離れることがなく、矢板6の圧入を的確に行なわせることができる。
この実施形態では、支持管3の断面形状を長円形としているが、その断面形は、長円形の他、図4に示すような長方多角形が好ましい。尚、支持管3の断面が長方矩形でもよいが、支持管3内に挿入配備される掘削用軸4,5が夫々断面円形であることから、支持管3の断面形状が長方矩形であれば、掘削用軸4,5との間に余分なスペースができ、結果的に支持管3の形状が大きくなり、矢板6に対する支持管3の嵌まり込み具合も悪くなる。従って、支持管3としては、両側面3a,3bが平面状である断面長円形又は断面長方矩形のものが好ましい。図4に示す支持管3は、両側面3a,3b側が夫々平面状で且つ両端面側の断面が緩やかな山形を成す略横長矩形状で尚且つ両端面側の山裾部3c,3cが略U字形矢板6の側片部6c,6cと平行であって、矢板6の内面に対し図示のように嵌合状態となるため、矢板圧入時に矢板6が支持管3に対し横ズレすることがなく、従って矢板6を安定良く支持させることができ、矢板6の打ち込みを的確に行なわせることができる。また、このような支持管3内に複数の掘削用軸4,5を挿入配備する構成であるため、チャック7,8を支持管3に直接的に容易に設置することができる。
この実施例では、2本の掘削用軸4,5を備えた多軸掘削装置1を使用したが、3本以上の掘削用軸を有する多軸掘削装置を使用するも可能で、各掘削用軸に下端側に夫々偏心掘削ビットを取付ければよい。しかして、このような多軸掘削装置による圧入工法によれば、矢板幅Wの広い大型の矢板6の打ち込みに最適である。即ち、大型の矢板6の場合、単軸の掘削装置を使用すると、1つの偏心掘削ビットにより掘削される掘削孔の内径が大きくなって、必要以上に地盤が掘削される傾向にあるが、本発明に係る多軸掘削装置の使用によれば、複数の偏心掘削ビットによって横方向につながる横長の複合軌跡円Soで掘削孔が形成されることになるから、矢板6の圧入に必要な最低限の大きさの地盤を掘削できる利点があり、更には複数の偏心掘削ビットの組み合わせによって、種々の形状、大きさの矢板6に対応できる利点も有する。
1 多軸掘削装置
2 オーガマシン
3 支持管
3a 支持管の一側面
3b 支持管の他側面
4,5 掘削用軸
6 矢板
6a 継手用係合部
6b 継手用係合部
6A 第1矢板
6B 第2矢板
7,8 チャック
9,10 偏心掘削ビット
11,12 ダウンザホールハンマー
21 係止部
22 被係止部

Claims (1)

  1. オーガマシンの下部に両側面側が平面状の支持管を垂下連結し、支持管には、オーガマシンの回転駆動軸により回転駆動される複数の掘削用軸を挿入配備、支持管の一側面側及び他側面側の夫々上部に矢板の上端部を支持管に固定するチャックを設けると共に、支持管の一側面側及び他側面側の夫々下端部側に矢板の下端部を保持するための係止部を設け、一方、矢板の下端部には支持管の係止部に対応する位置にその係止部が係止される被係止部を設け、各掘削用軸の先端部に、矢板圧入完了後にビット本体が矢板に衝突しないように地盤中から引き抜き可能な偏心掘削ビットをダウンザホールハンマーを介して取付けると共に、これら偏心掘削ビットの回転により一部重複するように形成される複合軌跡円の最大幅が矢板幅とほぼ同一である多軸掘削装置を用い、第1矢板を、その一方の継手用係合部が前記複合軌跡円内に位置し且つ他方の継手用係合部が複合軌跡円の外に位置するように支持管の一側面側に支持させて、その上端部を支持管の一側面側のチャックで固定すると共に、その下端部の被係止部を支持菅の一側面側の係止部に係止させ、この状態で、ダウンザホールハンマーで打撃される各偏心掘削ビットの回転打撃作用により地盤を掘削しながら第1矢板を圧入し、次いで掘削装置をほぼ矢板幅分前進させ、第2矢板を第1矢板とは逆向きで支持管の他側面側に支持させると共に、第2矢板の一方の継手用係合部を前記複合軌跡円の外に位置させて、既掘削孔内に位置する第1矢板の継手用係合部に係合させ且つ第2矢板の他方の継手用係合部を前記複合軌跡円内に位置させた状態で、第2矢板の上端部を支持管の他側面側のチャックで固定すると共に、その下端部の被係止部を支持菅の他側面側の係止部に係止させ、この状態で、各掘削用軸の回転打撃作用で地盤を掘削しながら第2矢板を圧入し、以降上記の工程を繰り返し行う矢板の圧入工法。
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