(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる異常判断装置を車載主機として回転機及びエンジンを備える大型ハイブリッド車両(バス)の電源システムに適用した第1の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1に、本実施形態にかかる電源システムの全体構成を示す。
図示される高圧バッテリ10は、車載主機としての図示しない回転機(モータジェネレータ)の電力供給源であり、例えば数百V以上の所定の高電圧を有する蓄電池である。ちなみに、高圧バッテリ10としては、例えば、リチウムイオン蓄電池や、ニッケル水素蓄電池を採用することができる。
高圧バッテリ10は、複数(2つ)並列接続されたDCDCコンバータ12a,12bのそれぞれに接続可能とされている。なお、高圧バッテリ10及びこれらDCDCコンバータの間には、これらの間を導通又は遮断する図示しないリレーが設けられている。また、本実施形態では、以降、これらDCDCコンバータ12a,12bのうち12aをマスタDCDCと称し、12bをスレーブDCDCと称すこととする。
マスタDCDC12aは、一対のスイッチング素子SW1,SW3の直列接続体及び一対のスイッチング素子SW2,SW4の直列接続体の並列接続体(フルブリッジ回路)と、トランス14とを備えて構成され、高圧バッテリ10の電圧を降圧して出力する絶縁型コンバータである。ここで、本実施形態では、上記スイッチング素子SW1〜SW4として、NチャネルMOSトランジスタを想定している。
高電位側のスイッチング素子SW1,SW2の入力端子(ドレイン)は、高圧バッテリ10の正極側に接続され、低電位側のスイッチング素子SW3,SW4の出力端子(ソース)は、高圧バッテリ10の負極側に接続されている。なお、スイッチング素子SW1〜SW4の入出力端子間のそれぞれには、図示しないフリーホイールダイオードが接続されている。
一対のスイッチング素子SW1,SW3の接続点、及び一対のスイッチング素子SW2,SW4の接続点のそれぞれには、トランス14の1次側コイル14aの両端のそれぞれが接続されている。
トランス14の2次側コイル14bの両端のそれぞれは、ダイオードRD1,RD2のアノード側に接続され、これらダイオードRD1,RD2のカソード側は短絡されている。そして、ダイオードRD1,RD2は、リアクトル16a及びコンデンサ16bからなる平滑回路16(LCフィルタ)に接続されている。
上記高圧バッテリ10やマスタDCDC12aの1次側は、車載高圧システムを構成し、マスタDCDC12aの図示しないケースに接続されたグランドラインGLから絶縁されている。これに対し、マスタDCDC12aの2次側は、グランドラインGLを基準として動作する車載低圧システムを構成する。
このため、本実施形態では、トランス14の2次側コイル14bの中点タップmtがグランドラインGLに接続されている。こうした構成によれば、ダイオードRD1,RD2は、高電位側のスイッチング素子SW1及び低電位側のスイッチング素子SW4がオン状態とされるか、高電位側のスイッチング素子SW2及び低電位側のスイッチング素子SW3がオン状態とされるかに応じて、2次側コイル14bの両端の電圧の「1/2」の電圧を交互に出力することとなる。なお、中点タップmtとは、トランス14の2次側コイル14bの中央(両端子から等距離にある点である中点)に接続された端子のことである。
マスタDCDC12aの1次側には、上記フルブリッジ回路の入力電圧を検出する入力側電圧センサ18、及びトランス14の1次側コイル14aを流れる電流を検出する入力側電流センサ20が備えられている。また、マスタDCDC12aの2次側には、マスタDCDC12aの出力電圧(平滑回路16からの出力電圧)を検出する出力側電圧センサ22が備えられている。
なお、本実施形態では、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bは、構造や性能に関して互いに同一であるものとする。このため、図1では、スレーブDCDC12bの内部構造の図示を省略している。
また、本実施形態において、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bを並列接続する構成を採用するのは、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの合計出力電流の最大値を大きくするためである。つまり、本実施形態にかかる電源システムの適用対象が大型車両であり、後述する車載負荷28に供給すべき電流が大きくなる傾向にある。
マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの並列接続体の一対の出力側は、低圧バッテリ24、車両ECU26、及び車載負荷28(車両ECU26を除く)の並列接続体に接続されている。低圧バッテリ24は、低圧システムの一部を構成し、所定の低電圧(例えば24V)を出力する蓄電池である。本実施形態では、低圧バッテリ24として、鉛蓄電池を用いており、より具体的には、12Vの端子電圧を有する一対の鉛蓄電池の直列接続体を用いている。
上記車載負荷28は、車室内空調用の空調装置(より詳しくは、空調装置の備える送風用ファンや暖房用のヒータ等)や、ヘッドライト、車室内の照明、更にはエンジン駆動用のアクチュエータ(燃料噴射弁等)を含むものである。
車両ECU26は、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bのそれぞれに備えられる制御回路30よりも上位(アクセルペダル等のユーザインターフェースから入力されるユーザの要求を最上流とした場合の上流側)の制御回路を備える制御装置であり、低圧バッテリ24を電力供給源としつつ、車両の制御を統括する機能を有する。
車両ECU26は、車両の走行がユーザによって許可されたと判断されることで低圧バッテリ24から電力が供給されて且つ、マスタDCDC12a、スレーブDCDC12b及び車載負荷28に対して共通の起動信号を出力する。ここで、本実施形態では、車両の走行がユーザによって許可されたか否かを、ユーザによってイグニッションスイッチ32がオンされたか否かで判断する。なお、車両ECU26は、マスタDCDC12aやスレーブDCDC12bの出力電圧を検出する電圧センサ26aを備えている。
ちなみに、車両ECU26は、車両の走行がユーザによって許可されたと判断された場合、車両を走行させるに先立ち、車両制御の準備に関する処理を行う。ここで、車両制御の準備に関する処理とは、高圧システム側と低圧システム側とをリレーの閉操作によって電気的に接続する処理を含む処理である。一方、車両ECU26は、ユーザによって車両の走行が禁止されたと判断された場合、車両制御の終了に関する処理を行う。ここで、車両制御の終了に関する処理とは、高圧システム側と低圧システム側とをリレーの開操作によって電気的に遮断する処理を含む処理である。なお、ユーザによって車両の走行が禁止されたか否かは、ユーザによってイグニッションスイッチ32がオフされたか否かで判断すればよい。
制御回路30は、低圧バッテリ24を電力供給源としつつ、同バッテリや、車両ECU26、車載負荷28に電力を供給すべく、スイッチング回路34を介してスイッチング素子SW1〜SW4を操作する。
詳しくは、制御回路30は、出力側電圧センサ22によって検出されるマスタDCDC12aの出力電圧を目標電圧にフィードバック制御(電圧フィードバック制御)するための操作量(Duty)、入力側電流センサ20の出力値から算出されるマスタDCDC12aの出力電流をその規定値(マスタ制限値)にフィードバック制御(電流フィードバック制御)するための操作量、及び入力側電圧センサ18によって検出される電圧を上記目標電圧とするための操作量等を算出する。そして、算出されたこれら操作量のうちの小さい方に基づき、スイッチング素子SW1〜SW4を操作する。ここで、マスタ制限値Iaは、DCDCコンバータの信頼性を維持する観点から設定され、具体的には例えば、DCDCコンバータの積算動作時間が規定時間(例えば8万時間)となるまでDCDCコンバータの信頼性を維持可能な電流値(平均電流)に設定すればよい。
こうした構成によれば、マスタDCDC12aの出力電流がマスタ制限値Iaを超えるまでは電圧フィードバック制御が行われる。一方、マスタDCDC12aの出力電流がマスタ制限値Iaを超える場合には、電流フィードバック制御によってマスタDCDC12aの出力電流がマスタ制限値Iaに制御されるため、マスタDCDC12aの出力電圧が低下される。すなわち、マスタDCDC12aは、定電流垂下特性を有する。
ちなみに、スレーブDCDC12bの制御回路30は、マスタDCDC12aの制御回路30の上述した処理と同様の処理を行う。また、上記処理において、出力側電圧センサ22の検出値に代えて、低圧バッテリ24や車載負荷28の両端の電圧を検出するセンサを備え、このセンサの検出値を用いてもよい。
さらに、高圧システムと、低圧システムとは、図示しない絶縁素子36(例えば、光絶縁素子としてのフォトカプラや、磁気絶縁素子としてのパルストランス)によって絶縁されており、スイッチング素子SW1〜SW4の操作信号は、絶縁素子36を介して高圧システムのスイッチング回路34に入力される。また、入力側電圧センサ18や入力側電流センサ20の検出値は、絶縁素子36を介して低圧システムの制御回路30に入力される。
次に、本実施形態にかかるDCDCコンバータの制御のうち目標電圧等の設定について説明する。
本実施形態では、マスタDCDC12aの目標電圧Va(例えば28V)をスレーブDCDC12bの目標電圧Vb(例えば27V)よりも高く設定する。ここで、スレーブDCDC12bの目標電圧Vbは、例えば、低圧バッテリ24の使用電圧範囲の上限値よりもやや高い値とすればよい。
ここで、マスタDCDC12aの目標電圧VaとスレーブDCDC12bの目標電圧Vbとを相違させるのは、DCDCコンバータの体格及びコストの増大の回避等を図るためである。つまり、DCDCコンバータの信頼性を向上させる上では、例えば、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bのそれぞれで、車載負荷28や、車両ECU26、更には低圧バッテリ24に供給すべき電流(以下、車両側の要求電流)を均等に負担させるようにこれらDCDCコンバータを動作させることが望ましい。こうした観点から、例えば、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの目標電圧を等しく設定することも考えられる。
しかしながら、この場合、スイッチング回路34からスイッチング素子SW1〜SW4のそれぞれへの信号伝達速度の相違等に起因するDCDCコンバータの個体差によって出力電圧にばらつきが生じること、及び並列接続された一対のDCDCコンバータのうち出力電圧の高いDCDCコンバータから優先的に車載負荷28等に電流が出力されることに起因して、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bのうちいずれかの動作頻度が高くなったり、いずれが動作するのかを把握できなかったりすることが懸念される。この場合、DCDCコンバータを設計する上で、DCDCコンバータの信頼性を保証する電流値(例えば定格電流)を大きくすることとなる。そして、この場合、DCDCコンバータ内のトランス14やスイッチング素子SW1〜SW4等を大電流に対応したものとする要求が生じ、素子を新規開発することとなり、ひいてはDCDCコンバータのコスト及び体格が増大するおそれがある。
こうした問題を回避すべく、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bのそれぞれの目標電圧を互いに相違させることで、車両側の要求電流に応じていずれが車両側に電流を出力するかを明確にする。これにより、DCDCコンバータの体格及びコストの増大を回避したり、従来のDCDCコンバータを流用して電源システムを設計したりすることができる。
ここで、本実施形態では、スレーブDCDC12bに対応する上記規定値(以下、スレーブ制限値Ib)をスレーブDCDC12bの出力可能な最大電流(例えば80A)に設定し、マスタ制限値Iaをスレーブ制限値Ibよりも小さい値(例えば35A)に設定している。この設定は、電源システムの信頼性の向上を図るための設定である。つまり、車両側の要求電流が大きくなる場合には、マスタDCDC12aとともに早期にスレーブDCDC12bにも上記要求電流の一部を負担させることで、車両側の要求電流をマスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bのそれぞれに極力均等に負担させる。
ちなみに、スレーブ制限値Ibに対してマスタ制限値Iaが小さいほど、マスタDCDC12aに流れる電流が小さくなること、及び車両側の要求電流が大きくなる場合に早期にスレーブDCDC12bに上記要求電流の一部を負担させることができることから、マスタDCDC12aの寿命の短縮を回避することが可能となる。
さらに、本実施形態では、スレーブDCDC12bの制御回路30においてスレーブDCDC12bの出力電流がスレーブ制限値Ibを超えると判断された場合、車両ECU26を介してマスタDCDC12aの制御回路30に過電流制限信号を出力する。そして、マスタDCDC12aの制御回路30において、過電流制限信号が入力されたと判断された場合、マスタ制限値Iaを増大させる処理を行う。本実施形態では、マスタ制限値IaをマスタDCDC12aの出力可能な最大電流(例えば80A)Icとする処理を行う。これは、車両側の要求電流が大きくなる場合に、電源システムによって車載負荷28等に供給可能な電流の最大値を増大させるための処理である。
なお、過電流制限信号は、スレーブDCDC12bから車両ECU26を介してマスタDCDC12aに伝達されてもよいし、スレーブDCDC12bからマスタDCDC12aに直接伝達されてもよい。
続いて、図2を用いて、制御回路30の上述した処理態様の一例を示す。詳しくは、図2(a)は、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの並列接続体の出力電圧の推移を示し、図2(b)は、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの合計出力電流の推移を示し、図2(c)は、マスタDCDC12a単独の出力電流の推移を示し、図2(d)は、スレーブDCDC12b単独の出力電流の推移を示し、図2(e)は、スレーブDCDC12bからマスタDCDC12aへの過電流制限信号の出力状態の推移を示す。なお、図2では、時間経過とともに車両側の要求電流が漸増する状況を示している。
図示されるように、合計出力電流(車両側の要求電流)がマスタ制限値Iaに到達する時刻t1までは、マスタDCDC12aのみから電流が出力される。そして、時刻t1において、マスタDCDC12aの出力電流がマスタ制限値Iaを超えることで、マスタDCDC12aの出力電流がマスタ制限値Iaで固定される。
その後、マスタDCDC12aの出力電圧が目標電圧Vbまで低下される時刻t2において、スレーブDCDC12bから電流の出力が開始される。そして、スレーブDCDC12bの出力電流がスレーブ制限値Ibを超える(合計出力電流がマスタ制限値Ia及びスレーブ制限値Ibの合計値115Aを超える)時刻t3において、スレーブDCDC12bの出力電圧が低下されるとともに、スレーブDCDC12bから過電流制限信号が出力される。
過電流制限信号がマスタDCDC12a側に入力されると、マスタDCDC12aは、マスタ制限値IaをIc(80A)に増大させる。これにより、マスタDCDC12aについて電流フィードバック制御から電圧フィードバック制御に切り替えられることに起因して、時刻t4において車両側の要求電流のうちマスタ制限値IcがマスタDCDC12aによって負担され、残りがスレーブDCDC12bによって負担される。すなわち、マスタDCDC12aの出力電流とスレーブDCDC12bの出力電流とが反転される。
なお、その後、車両側の要求電流が漸増し、合計出力電流がマスタ制限値Ic及びスレーブ制限値Ibの合計値(160A)を超えると、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bのそれぞれの出力電流が各制限値に固定されるため、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bのそれぞれの出力電圧が低下される。
次に、図3〜図6を用いて、本実施形態にかかる電源システムの異常の有無を判断する異常判断処理について説明する。本実施形態では、車両制御の準備に関する処理が実行される期間(走行準備期間)と、車両制御の終了に関する処理が実行される期間(待機準備期間)とにおいて上記異常判断処理を行う。ここで、電源システムの異常とは、制御回路30やスイッチング回路34等のDCDCコンバータの部品の故障によってDCDCコンバータ自身に生じる異常、DCDCコンバータと低圧バッテリ24及び車載負荷28等を接続する電気経路の異常(例えば断線)、及びDCDCコンバータから上記電気経路がはずれる異常を含むこととする。
まず、図3に、本実施形態にかかる異常判断処理のうち、マスタDCDC12aの制御処理の手順を示す。この処理は、マスタDCDC12aの制御回路30によって実行される。
この一連の処理では、ステップS10においてマスタ許可フラグFmの値を「0」とする。ここで、マスタ許可フラグFmは、「0」によってマスタDCDC12aの動作が禁止されていることを示し、「1」によって動作が許可されていることを示す。なお、本ステップにおいて、マスタDCDC12aの制御処理に用いるデータの初期化処理も併せて行う。
続くステップS12、S14では、車両ECU26からの起動信号が入力されるまで待機する(ステップS12:NO、ステップS14:YES)。この処理は、マスタDCDC12aの制御処理を行う上での基準となるタイミングを把握するための処理である。
起動信号が入力されたと判断された場合には、ステップS16に進み、マスタ許可フラグFmの値が「0」であるか否かを判断する。
ステップS16において肯定判断された場合には、制御回路30内のタイマによって計時を開始する。そして、ステップS18において、計時が開始されてからの経過時間Tcmが第1のスレーブ側規定時間Tsaとなるまで待機する。この処理は、車両ECU26によって行われるスレーブDCDC12bを動作させた場合の異常判断処理(後に詳述)が完了するまで待機するための処理である。
続くステップS20では、マスタ許可フラグFmの値を「1」として且つ、マスタDCDC12aの異常判断用にマスタDCDC12aの動作を開始させる。これにより、マスタDCDC12aからの電流の出力が開始される。そして、上記ステップS12に戻る。
上記ステップS12において、起動信号の入力が停止されたと判断された場合には、続くステップS14において否定判断され、タイマの初期化処理を行うとともにタイマによって計時を開始する。
続くステップS22では、計時が開始されてからの経過時間Tcmが第2のマスタ側規定時間Tmbとなるまで待機する。この処理は、車両ECU26によって行われるマスタDCDC12aを動作させた場合の異常判断処理(後に詳述)が完了するまで待機するための処理である。
続くステップS24では、マスタ許可フラグFmの値を「0」とする。これにより、マスタDCDC12aの動作が停止され、マスタDCDC12aからの電流の出力が停止される。
なお、ステップS24の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
続いて、図4に、本実施形態にかかる異常判断処理のうち、スレーブDCDC12bの制御処理の手順を示す。この処理は、スレーブDCDC12bの制御回路30によって実行される。
この一連の処理では、ステップS30においてスレーブ許可フラグFsの値を「0」とする。ここで、スレーブ許可フラグFsは、「0」によってスレーブDCDC12bの動作が禁止されていることを示し、「1」によって動作が許可されていることを示す。なお、本ステップにおいて、スレーブDCDC12bの制御処理に用いるデータの初期化処理も併せて行う。
続くステップS32、S34では、車両ECU26からの起動信号が入力されるまで待機する(ステップS32:NO、ステップS34:YES)。この処理は、スレーブDCDC12bの制御処理を行う上での基準となるタイミングを把握するための処理である。
起動信号が入力されたと判断された場合には、ステップS36に進み、スレーブ許可フラグFsの値が「0」であるか否かを判断する。
ステップS36において肯定判断された場合には、ステップS38に進み、スレーブ許可フラグFsの値を「1」にして且つ、スレーブDCDC12bの異常判断用にスレーブDCDC12bの動作を開始させる。これにより、スレーブDCDC12bからの電流の出力が開始される。なお、本ステップにおいて、タイマによって計時を開始する処理も併せて行う。
続くステップS40では、計時が開始されてからの経過時間Tcsが第1のスレーブ側規定時間Tsaとなるまで待機する。この処理は、車両ECU26によって行われるスレーブDCDC12bを動作させた場合の異常判断処理が完了するまで待機するための処理である。
続くステップS42では、スレーブDCDC12bの動作を停止させる。これにより、スレーブDCDC12bからの電流の出力が停止される。なお、本ステップにおいて、タイマの初期化処理とともにタイマによって計時を開始する処理を併せて行う。また、スレーブDCDC12bの動作の停止後、スレーブ許可フラグFsの値を「0」とする。
続くステップS44では、タイマの計時に基づき、スレーブ許可フラグFsの値が「0」とされてからの経過時間Tcsが第1のマスタ側規定時間Tmaとなるまで待機する。この処理は、車両ECU26によって行われるマスタDCDC12aを動作させた場合の異常判断処理が完了するまで待機するための処理である。
続くステップS46では、その後の車両制御におけるスレーブDCDC12bの動作に備えるべく、スレーブ許可フラグFsの値を「1」とする。そして、上記ステップS32に戻る。
上記ステップS32において、起動信号の入力が停止されたと判断された場合には、続くステップS34において否定判断され、タイマの初期化処理を行うとともにタイマによって計時を開始する。
ステップS48では、スレーブ許可フラグFsの値を「0」にする。そして、続くステップS50では、計時が開始されてからの経過時間Tcsが第2のマスタ側規定時間Tmbとなるまで待機する。この処理は、車両ECU26によって行われるマスタDCDC12aを動作させた場合の異常判断処理が完了するまで待機するための処理である。
続くステップS52では、スレーブ許可フラグFsの値を「1」にする。なお、本ステップにおいて、タイマの初期化処理とともにタイマによって計時を開始する処理を併せて行う。また、スレーブ許可フラグFsの値を「1」にした後、スレーブDCDC12bの動作を開始させる。これにより、スレーブDCDC12bの異常判断用にスレーブDCDC12bからの電流の出力が開始される。
続くステップS54では、タイマの計時に基づき、スレーブDCDC12bの動作が開始されてからの経過時間Tcsが第2のスレーブ側規定時間Tsbとなるまで待機する。この処理は、車両ECU26によって行われるスレーブDCDC12bを動作させた場合の異常判断処理が完了するまで待機するための処理である。
続くステップS56では、スレーブ許可フラグFsの値を「0」とする。これにより、スレーブDCDC12bの動作が停止され、スレーブDCDC12bからの電流の出力が停止される。
なお、ステップS56の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
次に、図5に、本実施形態にかかる異常判断処理のうち車両ECU26によって実行される処理の手順を示す。この処理は、イグニッションスイッチ32がオンされることをトリガとして上記車両ECU26によって実行される。
この一連の処理では、ステップS60において、マスタ異常フラグF1の値及びスレーブ異常フラグF2の値を「1」とする。ここで、マスタ異常フラグF1は、「0」によってマスタDCDC12aに異常が生じていないことを示し、「1」によって異常が生じていることを示す。また、スレーブ異常フラグF2は、「0」によってスレーブDCDC12bに異常が生じていないことを示し、「1」によって異常が生じていることを示す。なお、本ステップにおいて、車両ECU26によって行われる処理に用いるデータの初期化処理も併せて行う。
続くステップS62では、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bに対して起動信号を出力する。なお、起動信号は、車両制御の準備に関する処理のうち、高圧システム側と低圧システム側とを電気的に接続する処理の完了後に出力すればよい。また、本ステップにおいて、タイマによって計時を開始する処理も併せて行う。
続くステップS64〜S78では、走行準備期間(例えば、数百msec)における電源システムの異常判断処理を行う。
詳しくは、まず、ステップS64〜S68において、計時が開始されてからの経過時間Tpが第1のスレーブ側規定時間Tsaとなるまでの期間(先の図4のステップS40においてスレーブDCDC12bが動作している期間)に、スレーブDCDC12bの出力電圧Vsが第1の規定値α以上となるか否かを判断する。ここで、第1の規定値αは、スレーブDCDC12bの出力電圧Vsが正常であるか否かを判別可能な値に設定され、本実施形態では、低圧バッテリ24の電圧の上限値よりも高くて且つスレーブDCDC12bの目標電圧Vb近傍の値に設定している。この処理は、スレーブDCDC12bに異常が生じているか否かを判断するための処理である。
上記経過時間Tpが第1のスレーブ側規定時間Tsaとなるまでの期間において、スレーブDCDC12bの出力電圧Vsが第1の規定値α以上になると判断された場合には、スレーブDCDC12bに異常が生じていない旨判断し、ステップS66においてスレーブ異常フラグF2を「0」とする。
なお、ステップS68において肯定判断された場合、タイマの初期化処理を行うとともにタイマによって計時を開始する。
続くステップS70〜S74では、タイマの計時に基づき、スレーブ許可フラグFsの値が「0」とされてからの経過時間Tpが第1のマスタ側規定時間Tmaとなるまでの期間に、マスタDCDC12aの出力電圧Vmが第2の規定値β以上となるか否かを判断する。ここで、第2の規定値βは、マスタDCDC12aの出力電圧Vmが正常であるか否かを判別可能な値に設定され、本実施形態では、低圧バッテリ24の電圧の上限値よりも高くて且つマスタDCDC12aの目標電圧Va近傍の値に設定している。この処理は、マスタDCDC12aに異常が生じているか否かを判断するための処理である。
続くステップS76では、マスタ異常フラグF1の値及びスレーブ異常フラグF2の値の双方が「0」であるか否かを判断する。
ステップS76において否定判断された場合には、ステップS78に進み、DC異常時処理を行う。本実施形態では、DC異常時処理として、報知処理及び走行禁止処理を行う。
詳しくは、報知処理は、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bのうち少なくとも一方に関する異常が生じている旨をユーザに報知する処理であり、具体的には例えば、MILを点灯させる処理とすればよい。
また、走行禁止処理は、車両を適切に走行させることができなくなることを回避するための処理であり、具体的には例えば、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの双方に関する異常が生じた旨判断された場合にモータジェネレータやエンジンの始動を禁止する処理とすればよい。
一方、上記ステップS76において肯定判断された場合には、電源システムに異常が生じていない旨判断し、ステップS80において車両の走行制御を許可する処理を行う。
続くステップS82では、イグニッションスイッチ32がオフされると判断されるまで待機する。そして、ステップS84では、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bに対する起動信号の出力を停止させる。なお、車両制御の終了に関する処理のうち高圧システム側と低圧システム側とを電気的に遮断する処理の完了前に、起動信号の出力を停止して待機準備期間における異常判断処理を完了すればよい。また、本ステップにおいて、タイマの初期化処理とともに、タイマによって計時を開始する処理も併せて行う。
続くステップS86では、マスタ異常フラグF1の値及びスレーブ異常フラグF2の値を「1」とする。
続くステップS88〜S100では、駐車に先立つ待機準備期間(例えば、数百msec)における電源システムの異常判断処理を行う。
詳しくは、まず、ステップS88〜S92において、計時が開始されてからの経過時間Tpが第2のマスタ側規定時間Tmbとなるまでの期間(先の図3のステップS22においてマスタDCDC12aが動作している期間)に、マスタDCDC12aの出力電圧Vmが第2の規定値β以上となるか否かを判断する。
上記経過時間Tpが第2のマスタ側規定時間Tmbとなるまでの期間において、マスタDCDC12aの出力電圧Vmが第2の規定値β以上になると判断された場合には、ステップS90においてマスタ異常フラグF1を「0」とする。なお、ステップS92において肯定判断された場合、タイマの初期化処理を行うとともにタイマによって計時を開始する。
続くステップS94〜S98において、タイマの計時に基づき、スレーブDCDC12bの動作が開始されてからの経過時間Tpが第2のスレーブ側規定時間Tsbとなるまでの期間(先の図4のステップS54においてスレーブDCDC12bが動作している期間)に、スレーブDCDC12bの出力電圧Vsが第1の規定値α以上となるか否かを判断する。
上記経過時間Tpが第2のスレーブ側規定時間Tsbとなるまでの期間において、スレーブDCDC12bの出力電圧Vsが第1の規定値α以上になると判断された場合には、ステップS96においてスレーブ異常フラグF2を「0」とする。
続くステップS100では、マスタ異常フラグF1の値及びスレーブ異常フラグF2の値の双方が「0」であるか否かを判断する。ステップS100において肯定判断された場合には、ステップS102に進み、車両の制御を最終的に終了させる車両待機処理を行う。
一方、上記ステップS100において否定判断された場合には、上記ステップS78に進み、DC異常時処理を行う。なお、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの双方に関する異常が生じている旨判断された場合、車両ECU26の次回の起動時において、上記異常判断処理を行うことなく走行禁止処理を行ってもよい。
なお、上記ステップS78、S102の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
次に、図6に、本実施形態にかかる異常判断処理の一例を示す。詳しくは、図6(a)に、車両状態の推移を示し、図6(b)に、車両ECU26からの起動信号の出力状態の推移を示し、図6(c)に、マスタ許可フラグFmの値の推移を示し、図6(d)に、マスタDCDC12aの動作状態の推移を示し、図6(e)に、スレーブ許可フラグFsの値の推移を示し、図6(f)に、スレーブDCDC12bの動作状態の推移を示す。また、図6(g)に、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの合計出力電流の推移を示し、図6(h)に、これらDCDCの並列接続体の出力電圧の推移を示し、図6(i)に、車両ECU26によるマスタDCDC12aの異常判断処理の実行状態の推移を示し、図6(j)に、車両ECU26によるスレーブDCDC12bの異常判断処理の実行状態の推移を示す。
図示されるように、時刻t1においてイグニッションスイッチ32がオンされることで、車両ECU26が起動される。そして、時刻t2において車両ECU26から起動信号が出力される。これにより、走行準備期間における異常判断処理が開始される。詳しくは、まず、第1のスレーブ側規定時間Tsaである時刻t2〜t3において、スレーブDCDC12bを動作させた場合の異常判断処理が行われる。そしてその後、第1のマスタ側規定時間Tmaである時刻t4〜t5において、マスタDCDC12aを動作させた場合の異常判断処理が行われる。
なお、その後、車両の走行制御の許可がなされ、時刻t5〜t6において車両の走行制御がなされる。この期間においては、マスタ許可フラグFmの値は「1」とされて且つ、車両側の要求電流がマスタ制限値Iaを超えると判断された場合にのみスレーブ許可フラグFsの値が「1」とされる。
その後、時刻t6においてイグニッションスイッチ32がオフされ、時刻t7において車両ECU26からの起動信号の出力が停止される。これにより、待機準備期間における異常判断処理が開始される。詳しくは、まず、第2のマスタ側規定時間Tmbである時刻t7〜t8において、マスタDCDC12aを動作させた場合の異常判断処理が行われる。そしてその後、第2のスレーブ側規定時間Tsbである時刻t9〜t10において、スレーブDCDC12bを動作させた場合の異常判断処理が行われる。なお、その後、時刻t11において車両ECU26の起動が停止される。
このように、本実施形態では、走行準備期間及び待機準備期間において上記態様の異常判断処理を行うことで、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの異常の有無を適切に判断することができる。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)走行準備期間及び待機準備期間において、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bのそれぞれを単独で動作させた。そして、上記期間において、マスタDCDC12aの出力電圧Vmが第2の規定値β以上になると判断されない場合、マスタDCDC12aに関する異常が生じている旨判断し、スレーブDCDC12bの出力電圧Vsが第1の規定値α以上になると判断されない場合、スレーブDCDC12bに関する異常が生じている旨判断した。これにより、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bのうちいずれに異常が生じているか等、電源システムの異常箇所を特定することができる。すなわち、電源システムの異常の有無を適切に判断することができる。
さらに、車両制御の準備に関する処理や車両制御の終了に関する処理の実行中は車両側の要求電流が小さいことに鑑み、走行準備期間又は待機準備期間において異常判断処理を行った。このため、マスタDCDC12aやスレーブDCDC12bの単独動作が可能な期間を適切に選択して異常判断処理を行うこともできる。
(2)マスタDCDC12a(スレーブDCDC12b)の出力電流がマスタ制限値Ia(スレーブ制限値Ib)を超える場合、上記出力電流をマスタ制限値Ia(スレーブ制限値Ib)で固定した。また、マスタDCDC12aの目標電圧VaをスレーブDCDC12bの目標電圧Vbよりも高く設定した。こうした構成によれば、例えば車両側の要求電流が小さい状況が継続される場合には、スレーブDCDC12bの動作頻度が低くなる傾向にある。このため、スレーブDCDC12bの動作頻度が低くなりやすい本実施形態は、上記異常判断処理を行うメリットが大きい。
(3)電源システムに異常が生じていると判断された場合、DC異常時処理を行った。これにより、ユーザにその後の対応を適切にとらせることなどができる。
(4)スレーブDCDC12bの出力電流がスレーブ制限値Ibを超える場合、マスタ制限値Iaを増大させる処理を行った。これにより、車載負荷28等に供給可能な電流の最大値を増大させつつ、電源システムの信頼性を向上させることができる。
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図7に、本実施形態にかかる電源システムの全体構成を示す。
図示されるように、車両ECU26は、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bのそれぞれに対して各別の起動信号を出力する。なお、本実施形態において、以降、マスタDCDC12aに対する起動信号をマスタ起動信号と称し、スレーブDCDC12bに対する起動信号をスレーブ起動信号と称することとする。
ちなみに、本実施形態において、走行準備期間及び車両待機期間のマスタDCDC12aの制御処理は、車両ECU26から出力されるマスタ起動信号の入力又は入力の停止を基準タイミングとして、マスタDCDC12aを動作させたり、マスタDCDC12aの動作を停止させたりする処理となる。また、走行準備期間及び車両待機期間のスレーブDCDC12bの制御処理は、車両ECU26から出力されるスレーブ起動信号の入力又は入力の停止を基準タイミングとして、スレーブDCDC12bを動作させたり、スレーブDCDC12bの動作を停止させたりする処理となる。
次に、本実施形態にかかる異常判断処理について説明する。本実施形態では、走行準備期間及び待機準備期間に加えて、車両の走行制御中においても異常判断処理を行う。
図8及び図9に、本実施形態にかかる異常判断処理のうち車両ECU26によって実行される処理の手順を示す。この処理は、上記車両ECU26によってイグニッションスイッチ32がオンされることをトリガとして実行される。なお、図8及び図9において、先の図5に示した処理と同一の処理については、便宜上同一のステップ番号を付している。
まず、図8を用いて、走行準備期間及び待機準備期間における異常判断処理について説明する。
この一連の処理では、ステップS62aにおいて、スレーブ起動信号を出力する。なお、タイマによって計時を開始する処理も併せて行う。
その後、ステップS64〜S68にて、走行準備期間においてスレーブDCDC12bを動作させた場合の異常判断処理を行った後、ステップS104においてマスタ起動信号を出力する。そして、ステップS106においてスレーブ起動信号の出力を停止する。そして、ステップS70〜S74においてマスタDCDC12aを動作させた場合の異常判断処理を行う。
その後、ステップS76において肯定判断された場合には、ステップS108においてスレーブ起動信号を出力し、ステップS80に進む。
続くステップS82において肯定判断された場合には、ステップS84aに進み、スレーブ起動信号の出力を停止する。そして、ステップS86に進む。
続くステップS88〜S92では、待機準備期間においてマスタDCDC12aを動作させた場合の異常判断処理を行う。
続くステップS110では、スレーブ起動信号を出力し、その後ステップS112においてマスタ起動信号の出力を停止する。
続くステップS94〜S98においてスレーブDCDC12bを動作させた場合の異常判断処理を行った後、ステップS114においてスレーブ起動信号の出力を停止する。そして、ステップS100に進む。
続いて、図9を用いて、車両の走行制御中における異常判断処理について説明する。
車両の走行制御中であると判断された場合には、ステップS116に進み、車両側の要求電流Iがマスタ制限値Ia以下であると判断されるまで待機する。この処理は、マスタDCDC12a又はスレーブDCDC12bのいずれかによって車両側の要求電流を車載負荷28等に供給可能な状況であるか否かを判断するための処理である。
続くステップS118では、マスタ異常フラグF1の値及びスレーブ異常フラグF2の値を「1」とする。そして、ステップS120では、マスタ起動信号の出力を停止する。なお、タイマによって計時を開始する処理も併せて行う。
続くステップS122〜S128では、スレーブDCDC12bを動作させた場合の異常判断処理を行う。詳しくは、計時が開始されてからの経過時間Tpが第3のスレーブ側規定時間Tscとなるまでの期間に、スレーブDCDC12bの出力電圧Vsが第1の規定値α以上となるか否かを判断する。
上記経過時間Tpが第3のスレーブ側規定時間Tscとなるまでの期間において、スレーブDCDC12bの出力電圧Vsが第1の規定値α以上になると判断された場合には、ステップS124においてスレーブ異常フラグF2を「0」とする。
ここで、本実施形態では、上記経過時間Tpが第3のスレーブ側規定時間Tscとなるまでの期間中に車両側の要求電流Iがマスタ制限値Iaを超えると判断された場合には(ステップS126:NO)、ステップS130においてマスタ起動信号を出力する。これにより、スレーブDCDC12bとともに速やかにマスタDCDC12aを動作させ、車両の走行制御中におけるマスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの通常の制御処理に戻る。
なお、上記ステップS122〜S128において異常判断処理を行う場合、マスタDCDC12aの動作停止指令を車両ECU26からマスタDCDC12aに出力して且つ、スレーブDCDC12bの動作指令を車両ECU26からスレーブDCDC12bに出力する処理を行えばよい。ここでは、ステップS116で肯定判断されるタイミングから上記動作停止指令及び動作指令を出力してもよいし、ステップS116で肯定判断されるタイミングからずれたタイミングでこれら指令を出力してもよい。また、ステップS128において肯定判断された場合、タイマの初期化処理を行うとともにタイマによって計時を開始する。
続くステップS132では、マスタ起動信号の出力をし、その後ステップS134ではスレーブ起動信号の出力を停止する。
続くステップS136〜S142では、マスタDCDC12aを動作させた場合の異常判断処理を行う。詳しくは、ステップS136〜S142において、計時が開始されてからの経過時間Tpが第3のマスタ側規定時間Tmcとなるまでの期間に、マスタDCDC12aの出力電圧Vmが第2の規定値β以上となるか否かを判断する。
上記経過時間Tpが第3のマスタ側規定時間Tmcとなるまでの期間において、マスタDCDC12aの出力電圧Vmが第2の規定値β以上になると判断された場合には、ステップS138においてマスタ異常フラグF1を「0」とする。
ここで、本実施形態では、上記経過時間Tpが第3のマスタ側規定時間Tmcとなるまでの期間中に車両側の要求電流Iがマスタ制限値Iaを超えると判断された場合には(ステップS140:NO)、ステップS144においてスレーブ起動信号を出力する。これにより、マスタDCDC12aとともに速やかにスレーブDCDC12bを動作させて、車両の走行制御中におけるマスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの通常の制御処理に戻る。
なお、上記ステップS136〜S142において異常判断処理を行う場合、マスタDCDC12aの動作指令を車両ECU26からマスタDCDC12aに出力して且つ、スレーブDCDC12bの動作停止指令を車両ECU26からスレーブDCDC12bに出力する処理を行えばよい。
ステップS142において肯定判断された場合には、ステップS146に進み、マスタ異常フラグF1の値及びスレーブ異常フラグF2の値の双方が「0」であるか否かを判断する。
ステップS146において肯定判断された場合には、電源システムに異常が生じていない旨判断し、車両の走行制御中におけるマスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの通常の制御処理に戻る。
一方、上記ステップS146において否定判断された場合には、DC異常時処理を行う。なお、車両の走行制御中においてマスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの双方に異常が生じている旨判断された場合には、走行禁止処理を行わないようにしてもよい。
なお、上記ステップS78、S102の処理が完了する場合には、この一連の処理を一旦終了する。
次に、図10に、本実施形態にかかる異常判断処理の一例を示す。詳しくは、図10(b)に、車両ECU26からのマスタ起動信号の出力状態の推移を示し、図10(d)に、車両ECU26からのスレーブ起動信号の出力状態の推移を示す。また、図10(a)、図10(c)及び図10(e)〜図10(i)は、先の図6(a)、図6(d)及び図6(f)〜図6(j)に対応している。
図示されるように、時刻t1においてイグニッションスイッチ32がオンされることで、時刻t2において車両ECU26からスレーブ起動信号が出力されることで、走行準備期間における異常判断処理が開始される。なお、その後時刻t3においてマスタ起動信号が出力される。
その後、車両の走行許可がなされ、車両側の要求電流Iがマスタ制限値Ia以下であると判断される期間における時刻t4において、車両の走行制御中における異常判断処理が開始される。詳しくは、第3のスレーブ側規定時間Tscである時刻t4〜t5において、スレーブDCDC12bを動作させた場合の異常判断処理が行われる。
なお、時刻t6においてマスタDCDC12aを動作させた場合の異常判断処理が開始されるものの、時刻t7において、この処理が開始されてから第3のマスタ側規定時間Tmcが経過する以前に車両側の要求電流Iがマスタ制限値Iaを超えると判断されるため、上記異常判断処理が中止される。
また、時刻t8においてイグニッションスイッチ32がオフされた後、待機準備期間における異常判断処理が行われる。
このように、本実施形態では、車両の走行制御中において電源システムの異常判断処理を行うことができるため、電源システムの異常判断の頻度を好適に向上させることができる。
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図11に、本実施形態にかかる電源システムの全体構成を示す。
図示されるように、車両ECU26は、起動信号とは別に、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bのそれぞれに対する各別の動作許可信号(マスタ動作許可信号NODM、スレーブ動作許可信号NODS)を出力する。詳しくは、これら動作許可信号は、論理「L」によってDCDCコンバータの動作が禁止されていることを示し、論理「H」によってDCDCコンバータの動作が許可されていることを示す。
スレーブDCDC12bの制御回路は、信号線38を介してマスタDCDC12aの制御回路30に過電流制限信号を直接出力する。
マスタDCDC12aの制御回路30は、後述する伝達異常判断処理によってスレーブDCDC12bからマスタDCDC12aへの過電流制限信号の伝達異常が生じている旨判断された場合、車両ECU26に対して判定信号を出力する。詳しくは、判定信号は、論理「H」によって過電流制限信号の伝達異常が生じていることを示し、論理「L」によって上記伝達異常が生じていないことを示す。
次に、本実施形態にかかる電源システムの異常判断処理について説明する。本実施形態では、上記異常判断処理として、先の第1の実施形態で説明した異常判断処理に代えて、上記伝達異常判断処理を行う。ここで、過電流制限信号の伝達異常としては、信号線38の断線や、信号線38及び低圧バッテリ24の負極側の短絡(GNDショート)、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bのうち少なくとも1つから信号線38がはずれること等のL側固着異常がある。L側固着異常が生じると、マスタDCDC12aにおいて認識される過電流制限信号の論理が常に「L」となる。このため、スレーブDCDC12bにおいて論理「H」の過電流制限信号の出力処理を行っても、マスタ制限値Iaを増大させることができない。こうした状況下、車両側の要求電流がマスタ制限値Ia及びスレーブ制限値Ibの加算値を超える場合には、車載負荷28等に対する供給電流が不足することとなる。
また、過電流制限信号の伝達異常としては、他に、信号線38及び低圧バッテリ24の正極側の短絡(Bショート)等のH側固着異常がある。H側固着異常が生じると、マスタDCDC12aにおいて認識される過電流制限信号の論理が常に「H」となるため、マスタ制限値が常に増大された状態(Ia=35A→Ic=80A)となる。この場合、車両側の要求電流が増大されたマスタ制限値Icを超えるまでは、マスタDCDC12aから優先的に電流が出力されることとなるため、スレーブDCDC12bと比較してマスタDCDC12aの動作頻度が高くなり、マスタDCDC12aの信頼性が大きく低下するおそれがある。
なお、上記伝達異常としては、他に、過電流制限信号の出力機能に関するスレーブDCDC12bの制御回路内の異常も考えられる。
図12に、本実施形態にかかる伝達異常判断処理のうちスレーブDCDC12b側で実行される処理の手順を示す。この処理は、イグニッションスイッチ32がオンされた後、起動信号が入力されることをトリガとして、スレーブDCDC12bにおいて実行される。なお、本実施形態では、上記走行準備期間において伝達異常判断処理が行われる。
この一連の処理では、まず、ステップS150において、スレーブDCDC12b側の処理に用いるデータの初期化処理を行う。
続くステップS152では、スレーブDCDC12bからマスタDCDC12aに対して出力される過電流制限信号の論理を強制的に「L」とする処理を行う。
続くステップS154では、車両ECU26から入力されるスレーブ動作許可信号NODSの論理が「L」から「H」に反転すると判断されるまで待機する。この処理は、スレーブDCDC12bから出力される過電流制限信号の論理を強制的に「L」とする期間の終了タイミングとなるか否かを判断するための処理である。
続くステップS156では、制御回路内のタイマのカウンタ値CNTSの初期化処理を行ってかつタイマによる計時を開始し、過電流制限信号の論理を「L」から「H」に強制的に反転させる処理を行う。
続くステップS158では、上記ステップS156の処理において計時が開始されてからのカウンタ値CNTS(経過時間)が閾値時間THとなるか否かを判断する。この処理は、過電流制限信号の論理を強制的に「H」とする期間の終了タイミングとなるか否かを判断するための処理である。
ステップS158において否定された場合には、伝達異常判断処理が未だ終了していないと判断し、ステップS160に進む。そして、ステップS160において、スレーブDCDC12bの通常の制御処理(上述した電圧フィードバック制御や、定電流制御としての電流フィードバック制御)を行う。
一方、上記ステップS158において肯定判断された場合には、伝達異常判断処理が終了したと判断し、ステップS162に進む。ステップS162では、過電流制限信号の論理を「H」から「L」に反転させる処理を行う。この処理は、その後、車両の走行制御が行われる状況下におけるスレーブDCDC12bの通常の制御処理に備えるための処理である。なお、ステップS162の処理が完了する場合、上記ステップS160に進む。
上記ステップS160の処理の後、続くステップS164では、イグニッションスイッチ32がオフされるか否かを判断する。このステップにおいて否定判断された場合には、上記ステップS158に戻る。
なお、上記ステップS164において肯定判断された場合には、その後起動信号の入力が停止されることを条件として、この一連の処理を終了する。
続いて、図13に、本実施形態にかかる伝達異常判断処理のうちマスタDCDC12a側で実行される処理の手順を示す。この処理は、イグニッションスイッチ32がオンされた後、起動信号が入力されることをトリガとして、マスタDCDC12aによって実行される。
この一連の処理では、まず、ステップS164において、マスタDCDC12a側の処理に用いるデータの初期化処理を行う。また、L側異常判断フラグFLの値及びH側異常判断フラグFHの値を「1」とする。ここで、L側異常判断フラグFLは、「1」によってL側固着異常が生じていることを示し、「0」によってL側固着異常が生じていないことを示す。また、H側異常判断フラグFHは、「1」によってH側固着異常が生じていることを示し、「0」によってH側固着異常が生じていないことを示す。
続くステップS166では、車両ECU26に対して出力する判定信号の論理を「H」とする。
続くステップS168〜S172では、ステップS166の処理が完了してからマスタ動作許可信号NODMの論理が「H」に反転されると判断されるまでの期間(スレーブDCDC12bから出力される過電流制限信号の論理が「L」に維持される期間)において、過電流制限信号の論理が「L」になるか否かを判断する。そして、この期間において過電流制限信号の論理が「L」になると判断された場合、H側固着異常が生じていないと判断し、H側異常判断フラグFHの値を「0」とする。
続くステップS174では、制御回路30内のタイマのカウンタ値CNTMの初期化処理を行ってかつタイマによる計時を開始する。
続くステップS176では、ステップS174の処理において計時が開始されてからのカウンタ値CNTM(経過時間)が上記閾値時間THとなるか否かを判断する。この処理は、先の図12のステップS158の処理と同様に、過電流制限信号の論理を強制的に「H」とする期間の終了タイミングとなるか否かを判断するための処理である。
ステップS176において上記経過時間CNTSが閾値時間THに達していないと判断された場合には、ステップS178に進み、過電流制限信号の論理が「L」から「H」に反転されるか否かを判断する。
上記経過時間CNTSが閾値時間THとなる前に(ステップS176,S178:NO、ステップS180、ステップS182:NO)、過電流制限信号の論理が「H」に反転されると判断された場合(ステップS178:YES)には、L側固着異常が生じていないと判断し、ステップS184に進む。ステップS184では、L側異常判断フラグFLの値を「0」とする。これにより、過電流制限信号の伝達異常が生じていない旨判断され、ステップS186において判定信号の論理を「H」から「L」に反転させる。
一方、上記経過時間CNTSが閾値時間THを経過する場合には(ステップS176:YES)、ステップS188に進み、L側異常判断フラグFLの値及びH側異常判断フラグFHの値の双方が「0」であるか否かを判断する。この処理は、過電流制限信号の伝達異常が生じているか否かを判断するための処理である。
ステップS188において否定判断された場合には、ステップS190に進み、上記DC異常時処理を行う。本実施形態では、この処理として、判定信号の論理を「H」とする処理を行う。なお、車両ECU26において、判定信号の論理が「H」であると判断された場合、車両ECU26において上述した報知処理や走行禁止処理が実行される。
なお、上記ステップS182において肯定判断された場合や、ステップS190の処理が完了する場合には、その後起動信号の入力が停止されることを条件として、この一連の処理を終了する。
次に、図14〜図16を用いて、本実施形態にかかる伝達異常判断処理の一例を示す。
まず、図14に、過電流制限信号の伝達異常が生じていない場合の伝達異常判断処理の一例について説明する。詳しくは、図14(c),図14(e)に、車両ECU26から出力されるマスタ動作許可信号NODM,スレーブ動作許可信号NODSの出力状態の推移を示し、図14(g)に、スレーブDCDC12bから出力される過電流制限信号の出力状態の推移を示し、図14(h)に、車両側の要求電流の推移を示し、図14(j)に、伝達異常判断処理の実行の有無の推移を示し、図14(k)に、マスタDCDC12aからの判定信号の出力状態の推移を示す。また、図14(a)、図14(b)、図14(d)、図14(f)及び図14(i)は、先の図6(a)、図6(b)、図6(d)、図6(f)及び図6(h)に対応している。なお、図14(i)において、「Vlb」は、低圧バッテリ24の電圧を示している。
図示される例では、時刻t1においてイグニッションスイッチ32がオンされた後、時刻t2において起動信号が入力されることで伝達異常判断処理が開始される。
そして、時刻t2からスレーブ動作許可信号NODSの論理が「H」とされる時刻t3までの期間において、スレーブDCDC12bから論理「L」の過電流制限信号の出力処理が行われる。時刻t2〜t3の期間において、マスタDCDC12aにて過電流制限信号の論理が「L」と認識されることで、H側固着異常が生じていないと判断され、H側異常判断フラグFHの値が「0」とされる。
その後、時刻t3から閾値時間THが経過する時刻t4までの期間において、スレーブDCDC12bから論理「H」の過電流制限信号の出力処理が行われる。時刻t3〜t4の期間において、マスタDCDC12aにて過電流制限信号の論理が「H」と認識されることで、L側固着異常が生じていない旨判断され、L側異常判断フラグFLの値が「0」とされる。これにより、マスタDCDC12aから車両ECU26に対して論理「L」の判定信号が出力される。
なお、その後、イグニッションスイッチ32がオフされる時刻t5までの期間において、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの通常の制御処理が行われる。その後、時刻t6において、起動信号の入力が停止されることでマスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bにおける一連の処理が終了される。
ここで、本実施形態において、走行準備期間において伝達異常判断処理を実行するのは、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bから車載負荷28等に対する電流供給が不足することを回避するためである。
つまり、例えば、車両の走行制御中において、マスタ制限値がIaからIcに増大される状況下、車両側の要求電流が増大前のマスタ制限値Ia及びスレーブ制限値Ibの加算値(115A)を超えているものとする。こうした状況下において、上述した伝達異常判断処理によって過電流制限信号の論理が「L」とされると、車両側の要求電流がマスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの供給可能な電流の最大値を上回ることとなり、車載負荷28等に対する電流の供給が不足することとなる。ここで、本実施形態では、走行準備期間において、車両側の要求電流をマスタ制限値Ia及びスレーブ制限値Ibの加算値未満とする供給制限処理が車両ECU26によって行われる。このため、走行準備期間における車両側の要求電流がマスタ制限値Ia及びスレーブ制限値Ibの加算値を下回ることとなる。これにより、伝達異常判断処理の実行に起因して車載負荷28等に対する電流の供給が不足する事態を回避する。
続いて、図15に、過電流制限信号の伝達異常としてL側固着異常(信号線38のGNDショート又は断線)が生じた場合の伝達異常判断処理の一例について説明する。詳しくは、図15(a)〜図15(k)は、先の図14(a)〜図14(k)に対応している。なお、図15(g)に破線にて示す波形は、L側固着異常が生じていない正常時における過電流制限信号の出力状態の推移である。
図示される例では、起動信号の入力によって伝達異常判断処理が開始される時刻t1からスレーブ動作許可信号NODSの論理が「H」とされる時刻t2までの期間において、スレーブDCDC12bから論理「L」の過電流制限信号の出力処理が行われる。時刻t1〜t2の期間において、マスタDCDC12aにて過電流制限信号の論理が「L」と認識されることから、H側異常判断フラグFHの値が「0」とされる。
その後、時刻t2から閾値時間THが経過する時刻t3までの期間において、スレーブDCDC12bから論理「H」の過電流制限信号の出力処理が行われる。時刻t2〜t3の期間において、マスタDCDC12aにて過電流制限信号の論理が「L」と認識されることから、L側固着異常が生じている旨判断され、L側異常判断フラグFLの値が「1」とされる。これにより、過電流制限信号の伝達異常が生じている旨判断され、マスタDCDC12aから車両ECU26に対して論理「H」の判定信号の出力が継続される。
なお、L側固着異常が生じる状態で車両の走行制御が開始される場合の一例について説明する。L側固着異常が生じる場合、時刻t3以降において、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの合計出力電流がマスタ制限値Ia及びスレーブ制限値Ibの加算値を超える場合にマスタ制限値Iaを増大させることができない。このため、車両側の要求電流がマスタ制限値Ia及びスレーブ制限値Ibの加算値を超えるまではマスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの合計出力電流を要求電流とすることができるものの、要求電流が上記加算値を超える期間(時刻t4〜t5、t6〜t7)においては車載負荷28等に対する電流供給不足が生じることとなる。
ちなみに、本実施形態では、過電流制限信号の伝達異常によって判定信号の論理が「H」とされる場合、上述したようにDC異常時処理として走行禁止処理が実行されることから、実際には、時刻t3以降において車両の走行制御はなされない。
続いて、図16に、過電流制限信号の伝達異常としてH側固着異常(信号線38のBショート)が生じた場合の伝達異常判断処理の一例について説明する。詳しくは、図16(a)〜図16(k)は、先の図15(a)〜図15(k)に対応している。
図示される例では、時刻t1〜時刻t2の期間において、スレーブDCDC12bから論理「L」の過電流制限信号の出力処理が行われる。この期間において、マスタDCDC12aにて過電流制限信号の論理が「H」と認識されることから、H側固着異常が生じている旨判断され、H側異常判断フラグFHの値が「1」とされる。
その後、時刻t2から閾値時間THが経過する時刻t3までの期間において、スレーブDCDC12bから論理「H」の過電流制限信号の出力処理が行われる。時刻t2〜t3の期間において、マスタDCDC12aにて過電流制限信号の論理が「H」と認識されることから、L側異常判断フラグFLの値が「0」とされる。H側異常判断フラグFHの値が「1」とされるため、過電流制限信号の伝達異常が生じている旨判断され、マスタDCDC12aから車両ECU26に対して論理「H」の判定信号の出力が継続される。
なお、H側固着異常が生じる状態で車両の走行制御が開始される場合の一例について説明する。H側固着異常が生じると、時刻t3以降において、マスタ制限値が常に増大される(Ia=35A→Ic=80A)。このため、車両側の要求電流が増大後のマスタ制限値Icを超えるまでは、マスタDCDC12aから優先的に電流が出力されることとなり、スレーブDCDC12bの動作頻度と比較してマスタDCDC12aの動作頻度が高くなる。これにより、マスタDCDC12aの信頼性が大きく低下するおそれがある。
ちなみに、本実施形態では、過電流制限信号の伝達異常によって判定信号の論理が「H」とされる場合、上述したようにDC異常時処理として走行禁止処理が実行されることから、実際には、時刻t3以降において車両の走行制御はなされない。
このように、本実施形態では、過電流制限信号の伝達異常判断処理を行うことで、過電流制限信号の伝達異常が生じる場合に、この異常を適切に検出するとともに、DC異常時処理を行うことができる。このため、電源システムの信頼性が低下した状態で継続してこのシステムが使用されることを極力回避することができる。
さらに、走行準備期間において伝達異常判断処理を行ったため、伝達異常判断処理が実行されることに起因して、電源システムから車載負荷28等に対する電流の供給が不足することを回避することもできる。
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について、先の第3の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図17に、本実施形態にかかる電源システムの全体構成を示す。
図示されるように、本実施形態では、車両ECU26は、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bのそれぞれに対する起動信号として、上記マスタ動作許可信号NODM及びスレーブ動作許可信号NODSを出力する。
次に、本実施形態にかかる電源システムの異常判断処理について説明する。
本実施形態では、上記伝達異常判断処理に加えて、上記第2の実施形態で説明した異常判断処理も行う。この異常判断処理において、上記第3の実施形態の図8で説明したマスタ異常フラグF1の値が「1」とされる異常(マスタDCDC12aから電流が出力できなくなる異常)を、本実施形態では、マスタ出力異常と称し、図8で説明したスレーブ異常フラグF2の値が「1」とされる異常(スレーブDCDC12bから電流が出力できなくなる異常)を、スレーブ出力異常と称すこととする。
また、本実施形態では、上記第2の実施形態に示したように、走行準備期間に加えて、待機準備期間及び車両の走行制御中においても電源システムの異常判断処理を行う。ここで、走行準備期間及び車両待機期間のマスタDCDC12aの制御処理は、上記第2の実施形態に示した処理に準ずる処理となる。詳しくは、車両ECU26から出力されるマスタ動作許可信号NODMの入力又は入力の停止を基準タイミングとして、マスタDCDC12aを動作させたり、マスタDCDC12aの動作を停止させたりする処理とする。また、走行準備期間及び車両待機期間のスレーブDCDC12bの制御処理は、上記マスタDCDC12aに関する処理と同様に、車両ECU26から出力されるスレーブ動作許可信号NODSの入力又は入力の停止を基準タイミングとして、スレーブDCDC12bを動作させたり、スレーブDCDC12bの動作を停止させたりする処理とする。以下、図18〜図22を用いて、上記異常判断処理について説明する。
まず、図18に、マスタ出力異常、スレーブ出力異常、及び過電流制限信号の伝達異常のいずれもが生じていない場合の電源システムの異常判断処理の一例について説明する。詳しくは、図18(a)〜図18(i)は、先の図14(a)、図14(c)〜図14(i)及び図14(k)に対応している。なお、図中、「S」にて示す期間は、先の図8及び図9に示すように、スレーブ出力異常の有無の判断処理が実行される期間であり、「M」にて示す期間は、先の図8及び図9に示すように、マスタ出力異常の有無の判断処理が実行される期間である。また、図中、「C」にて示す期間は、伝達異常判断処理が実行される期間である。
図示される例では、イグニッションスイッチ32がオンされた後、スレーブ動作許可信号NODSの論理が「H」とされる時刻t1において電源システムの異常判断処理が開始される。詳しくは、時刻t1から第1のスレーブ側規定時間Tsaが経過してスレーブDCDC12bの動作が停止される時刻t2までの期間において、先の図8のステップS64〜S68に示したように、走行準備期間のスレーブ出力異常の判断処理が行われ、スレーブ出力異常が生じていない旨判断される。
そして、スレーブDCDC12bの動作が停止された後、時刻t3から第1のマスタ側規定時間Tmaが経過する時刻t4までの期間において、先の図8のステップS70〜S74に示すように、走行準備期間のマスタ出力異常の判断処理が行われ、マスタ出力異常が生じていない旨判断される。なお、マスタ出力異常及びスレーブ出力異常の判断処理は、上記第2の実施形態で説明したように、車両ECU26によって行われる。
一方、時刻t1から時刻t4までの期間において、マスタ出力異常やスレーブ出力異常の判断処理とともに、伝達異常判断処理が行われ、過電流制限信号の伝達異常が生じていない旨判断される。
そしてその後、車両の走行制御が開始され、車両側の要求電流がマスタ制限値Ia以下であると判断される状況下において電源システムの異常判断処理が行われる。詳しくは、マスタ動作許可信号NODMの論理が「L」とされる時刻t5から第3のスレーブ側規定時間Tscが経過する時刻t6までの期間において、先の図9のステップS122〜S128に示したように、スレーブ出力異常の判断処理が行われ、スレーブ出力異常が生じていない旨判断される。
そして、スレーブDCDC12bの動作が停止され、マスタ動作許可信号NODMの論理が「H」とされた後の時刻t7から、先の図9のステップS136〜S142に示したように、マスタ出力異常の判断処理が行われ、マスタ出力異常が生じていない旨判断される。なお、本実施形態では、時刻t7から第3のマスタ側規定時間Tmcが経過する前の時刻t8において、車両側の要求電流がマスタ制限値Iaを超えることから、この時刻においてスレーブDCDC12bの動作が開始され、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの通常の制御処理が行われる。
一方、本実施形態では、時刻t5から、マスタ出力異常やスレーブ出力異常の判断処理とともに、伝達異常判断処理が行われる。そして、過電流制限信号の伝達異常が生じていない旨判断される。なお、車両の走行制御中において車両側の要求電流がマスタ制限値Iaを超える場合には、マスタ出力異常等の判断処理と同様に、伝達異常判断処理が中止される。これは、上記第3の実施形態で説明したように、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの合計出力電流がマスタ制限値Ia及びスレーブ制限値Ibの加算値を超える状態で伝達異常判断処理によって過電流制限信号の出力信号の論理が「L」とされることに起因して、車載負荷28等に対する電流供給が不足することを回避するためである。
その後、時刻t9においてイグニッションスイッチ32がオフされた後の車両待機期間において、上記第3の実施形態で説明した供給制限処理とともに、電源システムの異常判断処理が行われる。詳しくは、スレーブ動作許可信号NODSの論理が「L」とされる時刻t10から第2のマスタ側規定時間Tmbが経過する時刻t11までの期間において、マスタ出力異常の判断処理が行われ、マスタ出力異常が生じていない旨判断される。
そして、マスタ動作許可信号NODMの論理が「L」とされてかつスレーブDCDC12bの動作が開始される時刻t12から第2のスレーブ側規定時間Tsbが経過する時刻t13までの期間において、スレーブ出力異常の判断処理が行われ、スレーブ出力異常が生じていない旨判断される。
一方、本実施形態では、時刻t10〜t13の期間において、マスタ出力異常やスレーブ出力異常の判断処理とともに、伝達異常判断処理が行われ、過電流制限信号の伝達異常が生じていない旨判断される。
なお、待機準備期間に伝達異常判断処理を行うのは、上記第3の実施形態の車両準備期間に伝達異常判断処理を行う場合と同様に、車載負荷28に対する電流供給不足の発生を回避するためである。
続いて、図19に、マスタ出力異常が生じる場合の電源システムの異常判断処理の一例について説明する。詳しくは、図19(a)〜図19(i)は、先の図18(a)〜図18(i)に対応している。なお、図19(h)に破線にて示す波形は、マスタ出力異常が生じていない場合の出力電圧の推移である。
図示される例では、時刻t1〜時刻t4において走行準備期間における電源システムの異常判断処理が行われる。詳しくは、時刻t1〜t2の期間においてスレーブ出力異常の判断処理が行われ、スレーブ出力異常が生じていない旨判断される。
そしてその後、時刻t3〜t4の期間において、マスタ出力異常の判断処理が行われる。ここでは、マスタDCDC12aの出力電圧が第2の規定値βを大きく下回ると判断されることから、マスタ出力異常が生じている旨判断される。
なお、その後、車両の走行制御中の時刻t5〜t6の期間や、待機準備期間の時刻t7〜t8の期間においても、マスタ出力異常が生じている旨判断される。
なお、マスタ出力異常が生じる場合、車両側の要求電流がスレーブ制限値Ibを超えるまでは、スレーブDCDC12bの出力電流を要求電流とすることができる。
続いて、図20に、スレーブ出力異常が生じる場合の電源システムの異常判断処理の一例について説明する。詳しくは、図20(a)〜図20(i)は、先の図19(a)〜図19(i)に対応している。
図示される例では、時刻t1〜時刻t4において走行準備期間における電源システムの異常判断処理が行われる。詳しくは、時刻t1〜t2の期間において、スレーブ出力異常の判断処理が行われる。本実施形態では、スレーブDCDC12bの出力電圧が第1の規定値αを大きく下回ると判断されることから、スレーブ出力異常が生じている旨判断される。
そしてその後、時刻t3〜t4の期間において、マスタ出力異常の判断処理が行われ、マスタ出力異常が生じていない旨判断される。なお、その後、車両の走行制御中の時刻t5〜t6の期間や、待機準備期間の時刻t7〜t8の期間においても、スレーブ出力異常が生じている旨判断される。
ちなみに、スレーブ出力異常が生じる場合、車両側の要求電流がマスタ制限値Iaを超えるまでは、マスタDCDC12aの出力電流を要求電流とすることができる。
続いて、図21に、L側固着異常(信号線38のGNDショート又は断線)が生じる場合の電源システムの異常判断処理の一例について説明する。詳しくは、図21(a)〜図21(i)は、先の図18(a)〜図18(i)に対応している。なお、図21(f)に破線にて示す波形は、L側固着異常が生じていない場合の過電流制限信号の出力状態の推移であり、図21(h)に破線にて示す波形は、L側固着異常が生じていない場合の出力電圧の推移である。
図示される例では、時刻t1〜t3の期間において伝達異常判断処理が行われる。本実施形態では、時刻t2〜t3の期間においてスレーブDCDC12bから論理「H」の過電流制限信号の出力処理が行われるものの、マスタDCDC12aにおいて過電流制限信号の論理が「L」と認識される。このため、L側固着異常が生じている旨判断される。
なお、その後、車両の走行制御中の時刻t4〜t5の期間や、待機準備期間の時刻t6〜t7の期間においても、伝達異常判断処理によってL側固着異常が生じている旨判断される。
ちなみに、上記第3の実施形態で説明したように、実際には、時刻t3以降においてDC異常時処理によって車両の走行が禁止されることとなる。
続いて、図22に、H側固着異常(信号線38のBショート)が生じる場合の電源システムの異常判断処理の一例について説明する。詳しくは、図22(a)〜図22(i)は、先の図21(a)〜図21(i)に対応している。
図示される例では、時刻t1〜時刻t3において走行準備期間における伝達異常判断処理が行われる。本実施形態では、時刻t1〜t2の期間においてスレーブDCDC12bから論理「L」の過電流制限信号の出力処理が行われるものの、マスタDCDC12aにおいて過電流制限信号の論理が「H」と認識される。このため、H側固着異常が生じている旨判断される。
なお、その後、車両の走行制御中の時刻t4〜t5の期間や、待機準備期間の時刻t6〜t7の期間においても、伝達異常判断処理によってH側固着異常が生じている旨判断される。
ちなみに、上記第3の実施形態で説明したように、実際には、時刻t3以降においてDC異常時処理によって車両の走行が禁止されることとなる。
このように、本実施形態では、走行準備期間に加えて車両の走行制御中及び待機準備期間に伝達異常判断処理を含む電源システムの異常判断処理を行った。これにより、過電流制限信号の伝達異常を含む電源システムの異常の有無を適切に判断することができる。
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・上記各実施形態では、電源システムに異常(マスタ出力異常、スレーブ出力異常)が生じているか否かを車両ECU26によって判断したがこれに限らない。例えば、マスタDCDC12aの制御回路30によってマスタDCDC12aに関する異常が生じているか否かを判断し、スレーブDCDC12bの制御回路30によってスレーブDCDC12bに関する異常が生じているか否かを判断してもよい。この場合、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12b内の出力側電圧センサ22の検出値を用いて異常判断すればよい。そして、マスタDCDC12aやスレーブDCDC12bに関する異常が生じている旨判断されたとき、その旨を車両ECU26に通知する処理を行うことが望ましい。
・上記各実施形態では、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの目標電圧を互いに相違させたがこれに限らない。例えば、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの双方を同時に動作させる場合にこれらの出力電圧を目標電圧に正確に一致させることができるならば、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの目標電圧を同一としてもよい。この場合、車両側の要求電流をマスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bによって均等に負担する構成を採用すればよい。
なお、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの目標電圧を同一としてかつ、これらDCDCコンバータの出力電圧を目標電圧に正確に一致させることができない場合、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bのうちいずれの出力電流が先に制限値に到達するか否かを把握することはできない。このため、こうした構成においては、過電流制限信号を出力する機能と、過電流制限信号の入力によって制限値を増大させる機能とをマスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの双方に持たせてもよい。すなわち、この場合、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bのそれぞれが過電流制限信号の入出力機能を有することとなる。このため、上記第3の実施形態で説明した過電流制限信号の伝達異常の有無の判断を、マスタDCDC12a側だけではなくスレーブDCDC12b側でも行えばよい。
・上記第1の実施形態において、走行準備期間及び待機準備期間のうちいずれかで異常判断処理を行ってもよい。ただし、ユーザが車両を使用する場合に、電源システムに異常が生じている旨がユーザに速やかに報知されることが望ましいため、異常判断処理を走行準備期間において実行することが望ましい。
・マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bのうちいずれか1つによって車両側の要求電流を低圧バッテリ24や車載負荷28等に供給可能であるか否かを判断する手法としては、上記各実施形態に例示したものに限らない。例えば、車載負荷28の動作状態に基づき、上記供給可能であるか否かを判断してもよい。具体的には、例えば、車載負荷28のうちいずれが動作しているかを把握することで上記供給可能であるか否かを判断してもよい。これは、車載負荷28のそれぞれの動作時の消費電力を予め把握可能であることに鑑みた手法である。
・上記各実施形態では、DCDCコンバータの出力電圧に基づき電源システムの異常の有無を判断したがこれに限らず、例えばDCDCコンバータの出力電流に基づき判断してもよい。この場合、例えば、先の図1(又は図7)において、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bのそれぞれの制御回路30から車両ECU26に入力側電流センサ20の検出値を出力する信号線を備え、車両ECU26において入力側電流センサ20の検出値に基づき各DCDCコンバータの出力電流を算出する。そして、走行準備期間等において、先の図5のステップS64,S70,S88,S94にて各DCDCコンバータの出力電流が規定電流以上にならないと判断された場合、電源システムに異常が生じていると判断すればよい。ここで、上記規定電流は、DCDCコンバータが正常に動作しているか否かを判断可能な値として設定され、例えば、車両側の要求電流よりもやや小さい値とすればよい。
また、上記入力側電流センサ20とは別に、DCDCコンバータからの出力電流を検出して且つこの検出値を車両ECU26に直接入力する出力側電流センサ(低圧システム側に設けられる電流センサ)を更に備え、出力側電流センサの検出値に基づき、上記手法と同様の手法にて電源システムに異常が生じているか否かを判断することも可能である。
・マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bのうちいずれか1つによって車両側の要求電流を車載負荷28等に供給可能であるか否かを判断する手法としては、上記各実施形態に例示したものに限らない。例えば、プラグインハイブリッド車両(PHV)に本願発明を適用する場合、停車時において高圧バッテリ10に外部電源(例えば商用電源)から充電中であると判断されることをもって上記供給可能であると判断してもよい。これは、外部電源からの充電中においては、車両側の要求電流が小さいことに鑑みたものである。
・車両の走行がユーザによって許可されたか否かや、車両の走行がユーザによって禁止されたか否かの判断手法としては、上記第1の実施形態に例示したもの(ユーザの手動操作によりなされる手法)に限らない。例えば、ユーザによって所持される携帯用無線装置と車両との距離が規定の距離未満になると判断されることで車両の走行がユーザによって許可されたと判断したり、携帯用無線装置と車両との距離が規定の距離以上になると判断されることで車両の走行がユーザによって禁止されたと判断したりしてもよい。
・並列接続されるDCDCコンバータは、2台に限らず、3台以上であってもよい。この場合、複数のDCDCコンバータのうち1つをマスタDCDCとし、それ以外をスレーブDCDCとすればよい。この場合、走行準備期間等において、これらDCDCコンバータが順次単独で動作されて異常判断処理が行われることとなる。
なお、並列接続されるDCDCコンバータが3台以上の電源システムにおける上記規定値の増大手法について説明すると、例えば、スレーブDCDCのうち目標電圧が最も低いスレーブDCDCの出力電流がこのスレーブDCDCに対応する規定値を超える場合、全てのスレーブDCDCのうち目標電圧が最も低いスレーブDCDC以外のスレーブDCDCの規定値を順次増大させた後、マスタDCDCに対応する規定値を増大させてもよい。
より具体的には、例えば、スレーブDCDCのうち目標電圧が最も低いスレーブDCDCの出力電流がこのスレーブDCDCに対応する規定値を超える場合、その後、目標電圧が最も低いスレーブDCDC以外のスレーブDCDCについて目標電圧の低い方から順に、出力電流が規定値を超えるときに規定値を増大させる。そして、目標電圧が最も低いスレーブDCDC以外のスレーブDCDCに対応する規定値を全て増大させた後、マスタDCDCに対応する規定値を増大させる。なお、上記構成において、DCDCコンバータの出力電流がこのDCDCコンバータに対応する規定値を超える場合、このDCDCコンバータの目標電圧よりも次に目標電圧の高いDCDCコンバータに対して過電流制限信号が出力されることとなる。
・上記第1の実施形態では、マスタ制限値Iaをスレーブ制限値Ibよりも小さく設定したがこれに限らず、例えば、スレーブ制限値Ibよりも大きく設定してもよい。これは、例えば、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bが互いに相違するDCDCコンバータを備える電源システムにおいて、マスタDCDC12aの平均電流がスレーブDCDC12bの平均電流よりも大きい場合に採用され得る構成である。
・上記第1の実施形態では、走行準備期間において、電源システムの備える全てのDCDCコンバータ(マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12b)のそれぞれを順次動作させて異常判断処理を行ったがこれに限らない。例えば、走行準備期間においてスレーブDCDC12bのみを動作させた場合の異常判断処理を行ってもよい。この手法は、車両の走行中においては、マスタDCDC12aの動作頻度が高くなり、スレーブDCDC12bの動作頻度が少なくなる傾向にあるため、スレーブDCDC12bの異常判断の機会を確保することを目的としたものである。これにより、例えば走行準備期間の短縮を図ることなどが期待できる。
・上記第3の実施形態において、車両の走行制御中に過電流制限信号の伝達異常判断処理を行う場合、例えば以下の手法が考えられる。まず、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bのそれぞれが備える入力側電流センサの検出値に基づき、これらDCDCコンバータの合計出力電流を算出する。そして、上記算出された合計出力電流が増大前のマスタ制限値Ia及びスレーブ制限値Ibの加算値以下になると判断されてかつ車両の走行制御がなされる期間において、上記伝達異常判断処理を行う。なお、異常判断を行う状況であるか否かの判断に用いる上記合計出力電流は、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bのそれぞれに各別に備えられる電流センサの検出値から算出されるものに限らない。例えば、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの並列接続体の出力電流を検出する単一の出力側電流センサを電源システムに備え、出力側電流センサの検出値を上記合計出力電流としてもよい。
・上記第3,第4の実施形態では、マスタ制限値IaがIcに増大されていない期間(走行準備期間等)において伝達異常判断処理を行ったがこれに限らず、マスタ制限値が増大されている期間において伝達異常判断処理を行ってもよい。この場合、上述したように、車両側の要求電流が増大前のマスタ制限値Ia及びスレーブ制限値Ibの加算値を超える状況下において伝達異常判断処理によって過電流制限信号の論理が「L」とされることで、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bの供給可能な電流の最大値が要求電流を下回るものの、過電流制限信号の伝達異常の有無を判断することはできる。
・上記第3,第4の実施形態では、スレーブDCDC12bからマスタDCDC12aへと信号線38によって過電流制限信号を直接伝達させる構成としたがこれに限らない。例えば、スレーブDCDC12bから車両ECU26を介してスレーブDCDC12bに過電流制限信号を伝達させる構成としてもよい。この場合、車両ECU26において伝達異常判断処理を行ってもよい。具体的には、例えば、まず、走行準備期間に車両ECU26において、スレーブDCDC12bから過電流制限信号を取得してかつ、スレーブDCDC12bから出力された過電流制限信号のマスタDCDC12aにおける認識結果を取得する。そして、取得されたこれら過電流制限信号の論理を比較することで過電流制限信号の伝達異常の有無を判断すればよい。
・上記第3,第4の実施形態では、並列接続されるDCDCコンバータが2台であったがこれに限らず、3台以上であってもよい。この場合、複数のDCDCコンバータのそれぞれの目標電圧を互いに相違させ、複数のDCDCコンバータのうち目標電圧の最も高いものをマスタDCDCとし、それ以外をスレーブDCDCとすればよい。
こうした構成における上記規定値の増大手法について説明すると、目標電圧の最も低いスレーブDCDCの出力電流がこのスレーブDCDCに対応する規定値を超える場合、複数のDCDCコンバータのうち目標電圧の最も低いもの以外のDCDCコンバータに対して上記目標電圧の最も低いスレーブDCDCから過電流制限信号を出力する構成としてもよい。なお、この場合、過電流制限信号の伝達異常判断処理は、目標電圧の最も低いスレーブDCDCと、複数のDCDCコンバータのうち目標電圧の最も低いスレーブDCDC以外のDCDCコンバータのそれぞれとの間で行われることとなる。
・上記第3,第4の実施形態では、電源システムに備えられるDCDCコンバータの全てを過電流制限信号の伝達異常の有無の判断対象としたがこれに限らない。例えば、電源システムに備えられるDCDCコンバータが3台以上であってかつ、過電流制限信号を伝達する信号線が互いに接続された一対のDCDCコンバータが2組以上ある場合、これら組のうち一部であってかつ少なくとも1組を過電流制限信号の伝達異常判断処理の対象としてもよい。この場合、過電流制限信号の異常判断に起因する車載負荷等への電流供給不足を回避する観点から、判断対象となる一対のDCDCコンバータとして、規定値が増大されていないDCDCコンバータを選択するのが望ましい。
・上記第4の実施形態では、過電流制限信号の伝達異常の有無を判断する特定の期間として走行準備期間等を設定し、単一の走行準備期間等においてL側固着異常及びH側固着異常の双方の有無を判断する手法を採用したがこれに限らない。例えば以下の手法を採用してもよい。
まず、特定の期間として、車両側の要求電流が増大前のマスタ制限値Ia及びスレーブ制限値Ibの加算値以下になる期間である第1の期間(走行準備期間等を含む)と、車両側の要求電流が上記加算値を超える期間である第2の期間とを定める。そして、マスタDCDC12a及びスレーブDCDC12bのうち少なくとも1つに、車両側の要求電流を把握する機能と、上記要求電流に基づき伝達異常判断処理を行う旨を相手側のDCDCコンバータに通知する機能とを持たせる。
こうした構成において、第1の期間のうち所定の期間にて、スレーブDCDC12bから論理「L」の過電流制限信号の出力処理を行ってかつ、マスタDCDC12aでH側固着異常が生じているか否かのみ判断する。一方、第2の期間のうち所定の期間において、スレーブDCDC12bから論理「H」の過電流制限信号の出力処理を行ってかつ、マスタDCDC12aでL側固着異常が生じているか否かのみ判断する。なお、伝達異常が生じた状態で電源システムが継続して使用される事態を回避する観点から、上記伝達異常判断処理は、走行準備期間の開始後、極力速やかに行われることが望ましい。
・DCDCコンバータに備えられるスイッチング素子としては、MOSトランジスタに限らず、例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタであってもよい。また、DCDCコンバータとしては、降圧コンバータに限らず、昇圧コンバータであってもよい。