JP5654915B2 - 保護膜形成方法 - Google Patents
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Description
そして、このようなSOFC用セルでは、たとえば700〜900℃程度の作動温度で作動し、空気極側から燃料極側への電解質膜を介した酸化物イオンの移動に伴って、一対の電極の間に起電力が発生し、その起電力を外部に取り出し利用することができる。セル間接部材にはインターコネクタやインターコネクタを介してセル間を電気的に接続する部材が該当する。
近年の開発の進展に伴い、SOFCの作動温度が下がってきている。
従来の作動温度は1000℃程度であり、耐熱性の観点からランタンクロマイトに代表される金属酸化物が使用されていたが、最近は作動温度が700℃〜800℃まで下がっており、合金が使用できるようになってきた。合金使用により、コストダウン、ロバスト性の向上が期待できる。
たとえば、ウエットコーティング法あるいは、ドライコーティング法によって形成することができる。ウエットコーティング法としては、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、スプレーコート法、インクジェット法、スピンコート法、ディップコート、電気めっき法、無電解めっき法、電着塗装法等が例示できる。また、ドライコーティング法としては、たとえば蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相成長(CVD)法、電気化学気相成長(EVD)法、イオンビーム法、レーザーアブレーション法、大気圧プラズマ成膜法、減圧プラズマ成膜法、溶射法等が例示できる。
また、レーザーアブレーション法を採用すると、CVD・EVD法や溶射法に比べて、製造コストが高くなるため、現実的には、安価に保護膜を製造できる技術として、ウエットコーティング法が採用される場合が多い。
上記目的を達成するための本発明の保護膜形成方法の特徴構成は、
SOFC用セルに用いられるCrを含有する合金または酸化物の基材の表面に、保護膜を形成する保護膜形成方法であって、前記基材の表面に、金属酸化物微粒子と樹脂組成物との混合液を用いて、金属酸化物微粒子と樹脂からなる被膜を形成する被膜形成工程を行い、表面に前記被膜を形成してなる前記基材を前記樹脂が軟化流動化する上限温度よりも高く、前記樹脂を前記被膜から燃焼除去可能な樹脂焼失温度に保持された炉内に投入して前記被膜を焼成する焼成工程を行い、さらに前記焼成工程で得られた被膜を焼結させて金属酸化物からなる保護膜を形成する焼結工程を行う点にある。
上記被膜形成工程を行うことにより、基材の表面には金属酸化物微粒子と樹脂組成物との混合液が付着した被膜が形成される。この被膜は、金属酸化物微粒子と樹脂組成物主成分となり、前記樹脂成分の重合に伴い、前記金属酸化物微粒子が凝集一体化されることにより形成されている。この被膜から樹脂成分を除去することによって、金属酸化物微粒子同士が凝集して被膜を形成した保護膜を形成することができる。
また、SOFC用セルに用いられるCrを含有する合金または酸化物の基材表面に、保護膜を形成する保護膜形成方法であって、前記基材の表面に、金属酸化物微粒子と樹脂組成物との混合液を用いて、金属酸化物微粒子と樹脂からなる被膜を形成する被膜形成工程を行い、表面に前記被膜を形成してなる前記基材を前記樹脂が軟化流動化する下限温度よりも低い硬化状態維持温度から、前記樹脂が軟化流動化する上限温度よりも高く、前記樹脂が軟化流動化するよりもはやく、前記樹脂を前記被膜から燃焼除去可能な樹脂焼失温度に達するまで急速に昇温して前記被膜を焼成し、前記被膜中の樹脂を焼失させる焼成工程を行い、さらに前記被膜を焼結させて金属酸化物からなる保護膜を形成する焼結工程を行うことによっても上記作用効果を実現することができる。
上記のように、表面に前記被膜を形成してなる前記基材を前記樹脂が軟化流動化する上限温度よりも高く、前記樹脂を前記被膜から燃焼除去可能な樹脂焼失温度に保持された炉内に投入することによって、前記被膜中の樹脂成分が流動する時間を与えないように加熱することができるが、急速に昇温を行うことによっても同様の効果を得ることができる。
前記基材を前記樹脂が軟化流動化する下限温度よりも低い硬化状態維持温度から、前記樹脂が軟化流動化する上限温度よりも高く、前記樹脂を前記被膜から燃焼除去可能な樹脂焼失温度に達するまでの昇温過程において前記被膜が保持される時間が0分を超え15分以下であることが好ましい。
前記焼成工程は、たとえば、前記昇温過程において被膜が軟化したとしても流動化しない程度に急速に昇温されればよいが、一般的に用いられる樹脂材料は、前記昇温過程に保持される時間は0分を超え15分以下とすることにより流動化よりもはやく焼失をはじめるので好ましい。
前記樹脂としては、熱可塑性樹脂一般に同様の現象が発生するものと考えられ、バインダ、あるいは、電着塗装用の混合液に含まれる樹脂として軟化流動化するもの全般に対して適用することができるが、電着塗装用途で汎用されているアクリル樹脂が好適に用いられる。
また、前記樹脂が軟化流動化する下限温度が200℃以上250℃未満の温度であり、上限温度が300℃以上350℃未満の温度であり、前記樹脂焼失温度の下限が350℃以上500℃以下の温度であってもよい。
金属酸化物微粒子を焼結させるためには、通常前記金属酸化物微粒子を高熱に晒して前記微粒子どうしの表面が順次互いに接合させる(焼結させる)必要があるが、前記樹脂焼失温度の下限が350℃以上500℃以下であると、金属微粒子焼結を焼結させることなく前記樹脂成分のみを焼失させることができ、その後焼結させることにより、残った金属酸化物だけを焼結させることができる。また、この場合、軟化流動化する下限温度が200℃以上250℃未満であり、上限温度が300℃以上350℃未満であれば、樹脂成分の焼失に際して、前記被膜が記樹脂成分の軟化流動化する温度域に保持される時間が少なくなるように急速に温度上昇させることが容易であるので好ましい。
また、前記被膜形成工程を電着塗装法により行うことが好ましい。
つまり、被膜形成工程を電着塗装法により行うと、電着塗装用の金属酸化物微粒子と樹脂組成物との混合液により最初に生成する被膜は緻密で膜厚の均一性が高く、簡便にかつ耐久性の高い皮膜を形成することができる。
本発明にかかるSOFC用セル接続部材およびその製造方法の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1および図2に示すSOFC用セルCは、酸化物イオン電導性の固体酸化物の緻密体からなる電解質膜30の一方面側に、酸化物イオンおよび電子電導性の多孔体からなる空気極31を接合するとともに、同電解質膜30の他方面側に電子電導性の多孔体からなる燃料極32を接合してなる単セル3を備える。
このセルスタックにおいて、積層方向の両端部に配置されたセル接続部材1は、燃料流路2bまたは空気流路2aの一方のみが形成されるものであればよく、その他の中間に配置されたセル接続部材1は、一方の面に燃料流路2bが形成され他方の面に空気流路2aが形成されるものを利用することができる。なお、かかる積層構造のセルスタックでは、上記セル接続部材1をセパレータと呼ぶ場合がある。
このようなセルスタックの構造を有するSOFCを一般的に平板型SOFCと呼ぶ。本実施形態では、一例として平板型SOFCについて説明するが、本願発明は、その他の構造のSOFCについても適用可能である。
前記セル接続部材1は、図1、図3に示すように、セル接続部材用の基材11の表面に保護膜12を設けて構成してある。そして、前記各単セル3の間に空気流路2a、燃料流路2bを形成しつつ接続可能にする溝板状に形成してある。
前記保護膜12は、たとえば、Crを22%、Mnを約0.5%含むフェライト系ステンレス鋼等からなる前記基材11の表面に、たとえば、ZnCo2O4等の金属酸化物微粒子と樹脂とを含んでなる被膜を形成し、その被膜を焼成して前記電着塗膜中の樹脂成分を焼失させた焼成被膜を形成する焼成工程を行い、さらに前記焼成被膜を焼結させて金属酸化物からなる保護膜12を形成する焼結工程を行うことにより形成されている。前記被膜を形成するにはアニオン電着塗装法により電着塗膜を形成する電着工程を採用することができ、樹脂としてはポリアクリル酸等のアニオン型樹脂を、金属酸化物微粒子との混合比(質量比)で(金属酸化物微粒子:アニオン型樹脂)=(0.5:1)〜(1.7:1)の割合で含有している混合液を用いることができる。
(電着塗装)
ZnCo2O4[粒子径0.5μm]等の金属酸化物微粒子を電着液1リットル当り100gになるように分散し、ポリアクリル酸等のアニオン型樹脂とを含有している混合液を用いて電着塗装を行った。ここでは、(金属酸化物微粒子:アニオン型樹脂)=(1:1)(質量比)とした。
電着塗装条件も特に制限されず、基材11である金属の種類、前記混合液の種類、通電槽の大きさおよび形状、得られるインターコネクタ1の用途などの各種条件に応じて広い範囲から適宜選択できるが、通常は、浴温度(前記混合液温度)10〜40℃程度、印加電圧10〜450V程度、電圧印加時間1〜10分程度、前記混合液の液温10〜40℃とすればよい。
なお、電着電圧、電着時間を変更することにより電着塗膜の膜厚をコントロールできる。また、基材に対して、種々前処理を行うこともできる。
前記混合液としてZnCo2O4微粒子:樹脂=1:1(質量比)のものを用いて形成した電着塗膜を、350℃の電気炉に投入し、1hr保持し、前記電着塗膜を乾燥硬化させた。次に500℃まで1hrで昇温し、2hr保持して、前記電着塗膜中の樹脂成分を焼失させた(焼成工程)。さらに、1000℃まで2hrで昇温し、2hrその温度で保持して前記電着塗膜中の金属酸化物微粒子を焼結させて、その後電気炉電源をOFFして徐冷した。すなわち、図4(1)に太実線で示す昇温過程を経て、加熱処理、焼成工程および焼結工程を行った。これにより、基材11に対して密着力があり、かつ緻密な保護膜12を形成したセル接続部材試験片を得た。この場合、前記基材を前記樹脂が軟化流動化する下限温度よりも低い硬化状態維持温度から、前記樹脂が軟化流動化する上限温度よりも高く、前記樹脂を前記被膜から燃焼除去可能な樹脂焼失温度に達するまでに極めて短時間(1分以内)で昇温過程が完了し、前記樹脂成分が焼失しはじめることになっている。
保護膜12の厚さの評価は、図3に示すように、保護膜12を形成した基材11の試験片を横断し、面部に相当する図中a,bの保護膜12の厚さの平均(x)を圧延面膜厚、角部に相当するc,d,e,fの保護膜12の厚さの平均(z)をエッジ膜厚として、x/zを求めた。また、この面部の焼成前の保護膜の厚さをx0とし、角部の焼成前の保護膜の厚さをz0として、前記x/zを(x0/z0)と比較して焼結工程時の樹脂成分の流動性を評価した。結果を表1に示す。
実施例1と同様に<電着塗装>の工程を行って作成した電着塗膜に対して、(加熱処理、焼成工程および焼結工程)の工程に代え、以下に示す従来の加熱処理、焼成工程および焼結工程に供し、保護膜12を形成したセル接続部材試験片を得、その膜厚を評価した。
前記混合液としてZnCo2O4微粒子:樹脂=1:1(質量比)のものを用いて形成した電着塗膜を、室温の電気炉に投入し、130℃まで20分で昇温して2hr保持し、前記電着塗膜を乾燥硬化させた。次に500℃まで2hrで昇温し、2hr保持して、前記電着塗膜中の樹脂成分を焼失させた(焼成工程)。さらに、1000℃まで2hrで昇温し、2hrその温度で保持して前記電着塗膜中の金属酸化物微粒子を焼結させて、その後電気炉電源をOFFして徐冷した。すなわち、図4(2)に太破線で示す昇温過程を経て、加熱処理、焼成工程および焼結工程を行った。これにより、基材11に対して保護膜12を形成したセル接続部材試験片を得た。保護膜12の厚さの評価結果を表1に示す。この場合、前記基材を前記樹脂が軟化流動化する下限温度よりも低い硬化状態維持温度から、前記樹脂が軟化流動化する上限温度よりも高く、前記樹脂を前記被膜から燃焼除去可能な樹脂焼失温度に達するまでに約30分で昇温過程が完了し、前記樹脂成分が焼失しはじめることになっている。
実施例1と同様に<電着塗装>の工程を行って作成した電着塗膜に対して、(加熱処理、焼成工程および焼結工程)の工程に代え、以下に示す比較の加熱処理、焼成工程および焼結工程に供し、保護膜12を形成し、その膜厚を評価した。
前記混合液としてZnCo2O4微粒子:樹脂=1:1(質量比)のものを用いて形成した電着塗膜を、室温の電気炉に投入し、16時間かけて1000℃まで昇温し、2時間1000℃にて保持し、乾燥、硬化のための加熱処理および焼成工程および焼結工程
を行った。その後電気炉電源OFFして徐冷した。すなわち、図4(3)に細破線で示す昇温過程を経て、加熱処理、焼成工程および焼結工程を行った。これにより、基材11に対して保護膜12を形成した。保護膜12の厚さの評価結果を表1に示す。この場合、前記基材を前記樹脂が軟化流動化する下限温度よりも低い硬化状態維持温度から、前記樹脂が軟化流動化する上限温度よりも高く、前記樹脂を前記被膜から燃焼除去可能な樹脂焼失温度に達するまでに100分間で昇温過程が完了し、前記樹脂成分が焼失しはじめることになっている。
表1より、実施例1においては、(3−3)の処理前後で膜厚の比率の変化がほとんどなく均一な膜厚を維持するのに寄与していることが分かる。一方、比較例1,2の(3−3a),(3−3b)の処理によっては、比率の変化度が大きく、焼成、焼結工程において樹脂成分が流動して均一な膜厚の形成を損なっていることが分かる。なお、上記で用いた樹脂成分は、軟化流動化する下限温度が約250℃、上限温度が約350℃となっており、約450℃で被膜中から焼失させられるものである。
すなわち、図4より、昇温過程で被膜が250℃〜350℃に保持される時間(図4中Aの領域にある時間)が15分よりも長ければ樹脂成分の流動化による保護膜の不均一化が進行するものと考えられる。
2 :溝
2a :空気流路
2b :燃料流路
3 :単セル
11 :基材
12 :保護膜
30 :電解質膜
31 :空気極
32 :燃料極
C :SOFC用セル
Claims (6)
- 固体酸化物形燃料電池用セルに用いられるCrを含有する合金または酸化物の基材の表面に、保護膜を形成する保護膜形成方法であって、
前記基材の表面に、金属酸化物微粒子と樹脂組成物との混合液を用いて、金属酸化物微粒子と樹脂からなる被膜を形成する被膜形成工程を行い、
表面に前記被膜を形成してなる前記基材を前記樹脂が軟化流動化する上限温度よりも高く、前記樹脂を前記被膜から燃焼除去可能な樹脂焼失温度に保持された炉内に投入して前記被膜を焼成する焼成工程を行い、
さらに前記焼成工程で得られた被膜を焼結させて金属酸化物からなる保護膜を形成する焼結工程を行う保護膜形成方法。 - 固体酸化物形燃料電池用セルに用いられるCrを含有する合金または酸化物の基材の表面に、保護膜を形成する保護膜形成方法であって、
前記基材の表面に、金属酸化物微粒子と樹脂組成物との混合液を用いて、金属酸化物微粒子と樹脂からなる被膜を形成する被膜形成工程を行い、
表面に前記被膜を形成してなる前記基材を前記樹脂が軟化流動化する下限温度よりも低い硬化状態維持温度から、前記樹脂が軟化流動化する上限温度よりも高く、前記樹脂を前記被膜から燃焼除去可能な樹脂焼失温度に達するまで急速に昇温して前記樹脂が軟化流動化するよりもはやく前記被膜を焼成し、前記被膜中の樹脂を焼失させる焼成工程を行い、
さらに前記被膜を焼結させて金属酸化物からなる保護膜を形成する焼結工程を行う保護膜形成方法。 - 前記基材を前記樹脂が軟化流動化する下限温度よりも低い硬化状態維持温度から、前記樹脂が軟化流動化する上限温度よりも高く、前記樹脂を前記被膜から燃焼除去可能な樹脂焼失温度に達するまでの昇温過程において前記被膜が保持される時間が0分を超え15分以下である請求項2記載の保護膜形成方法。
- 前記樹脂がアクリル樹脂である請求項1〜3のいずれか一項に記載の保護膜形成方法。
- 前記樹脂が軟化流動化する下限温度が200℃以上250℃未満の温度であり、上限温度が300℃以上350℃未満の温度であり、前記樹脂焼失温度の下限が350℃以上500℃以下の温度である請求項4に記載の保護膜形成方法。
- 前記被膜形成工程を電着塗装法により行う請求項1〜5のいずれか一項に記載の保護膜形成方法。
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