以下、本発明の吸収性物品について、その好ましい一実施形態である使い捨ておむつに基づき図面を参照しながら説明する。本実施形態のおむつ1Aは、いわゆる展開型の使い捨ておむつであり、図1及び図2に示すように、肌対向面1aを形成する液透過性の表面シート2、非肌対向面1bを形成する液不透過性ないし撥水性(以下、これらを総称して液不透過性という)の外層シート3、及び両シート2,3間に介在する吸収体収容部40に収容された吸収体4を具備する縦長の吸収性本体5と、吸収性本体5の肌対向面1a側における長手方向Xの両側部それぞれに形成された防漏壁6,6とを備えている。吸収体収容部40は、表面シート2と外層シート3とが貼り合わされて、吸収体4が収容される空間が形成されたものであり、この空間が吸収体4の収容部になっている。
本明細書において、長手方向は、吸収性物品(例えば使い捨ておむつ、生理用ナプキン)又はその構成部材(例えば吸収性本体、防漏壁)の長辺に沿う方向であり、幅方向は、該長手方向と直交する方向である。図中、符号Xで示す方向は、吸収性本体5の長手方向(本体長手方向)であり、符号Yで示す方向は、吸収性本体5の幅方向(本体幅方向)である。また、肌対向面は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面であり、非肌対向面は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に肌側とは反対側(着衣側)に向けられる面である。
おむつ1A(吸収性本体5)は、図1に示すように、長手方向Xに、着用時に着用者の背側に配される背側部A(後方領域)と、着用時に着用者の腹側に配される腹側部B(前方領域)と、着用時に着用者の股下の配される股下部Cとを有している。股下部Cは、着用時に着用者の排泄部と対向する排泄部対向領域であり、おむつ1A(吸収性本体5)の長手方向Xの中央部に位置している。おむつ1A(吸収性本体5)は、股下部Cの両側縁が内向きの円弧状に湾曲しており、図1に示す如き平面視において、長手方向Xの中央部が内方に括れた砂時計状の形状となっている。
表面シート2、外層シート3及び吸収体4は、何れも一方向Xに長い縦長の形状を有している。表面シート2及び外層シート3は、長手方向Xに関しては、何れも、吸収体4の長手方向Xの前後端から長手方向外方に延出し、それらの延出部において、ホットメルト型接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって互いに接合されている。一方、幅方向Yに関しては、図2に示すように、表面シート2は、その幅方向Yの長さが吸収体4と略同じで、吸収体4の肌対向面の全域を被覆しているのに対し、外層シート3は、表面シート2よりも幅広で、吸収体4の非肌対向面の全域を被覆し、更に吸収体4の長手方向Xに沿う左右両側縁4s,4sから幅方向Yの外方に延出している。この外層シート3の吸収体4からの延出部は、防漏壁6を構成する伸縮性シート7に、第2接合部9その他公知の接合手段によって接合されて、両シート3,7からなるサイドフラップ部を形成している。
股下部Cの左右両側部における外層シート3と伸縮性シート7との積層部分(前記サイドフラップ部)は、着用者の脚周りに配される一対のレッグ部を構成している。各レッグ部における両シート3,7間には、図2に示すように、ホットメルト型接着剤等の公知の接合手段により、糸状のレッグ弾性部材11が長手方向Xに沿って伸長状態で挟持固定されており、着用時における各レッグ部には、レッグ弾性部材11の収縮によりレッグギャザーが形成される。また、背側部A及び腹側部Bそれぞれのウエスト部(長手方向Xの端部)には、ウエスト弾性部材12が幅方向Yに沿って配されてウエストギャザーが形成されている。ウエスト弾性部材12は帯状の形態を有し、表面シート2及び伸縮性シート7それぞれと外層シート3との間に公知の接合手段により伸長状態で挟持固定されている。
また、図1に示すように、おむつ1Aの背側部Aの長手方向Xに沿う両側縁部には、一対のファスニングテープ13,13が設けられている。より具体的には、背側部A及び腹側部Bそれぞれの左右一対の前記サイドフラップ部(外層シート3と伸縮性シート7との積層部分)それぞれに、ファスニングテープ13が幅方向Yの外方に延出して取り付けられている。ファスニングテープ13には、機械的面ファスナーのオス部材からなる止着部14が取り付けられている。また、おむつ1Aの腹側部Bの非肌対向面1bには、機械的面ファスナーのメス部材からなる被止着領域15が形成されている。被止着領域15は、外層シート3の非肌対向面に、機械的面ファスナーのメス部材を公知の接合手段で接合固定して形成されており、ファスニングテープ13の止着部14を着脱自在に止着可能である。
以下に、本実施形態のおむつ1Aの主たる特長部分であるループ状の防漏壁6について説明する。防漏壁6は、図1及び図2に示すように、疎水性の伸縮性シート7を、吸収性本体5の長手方向Xに延びる第1接合部8及び第2接合部9で吸収性本体5に接合すると共に、排泄部対向領域(股下部C)の前方(腹側部B)及び後方(背側部A)において伸縮性シート7を吸収性本体5に接合して起立阻害部61を形成することで形成され、股下部Cにおいて、中空部60を有するループ状をなして起立している。
防漏壁6について更に説明すると、本実施形態のおむつ1Aでは、図1及び図2に示すように、帯状の疎水性の伸縮性シート7が、吸収性本体5の肌対向面1aにおける長手方向Xの両側部それぞれに、長手方向Xに沿って配設及び接合されており、伸縮性シート7の収縮により、肌対向面1a側に凸に起立した中空部60を有するループ状の防漏壁6が形成される。ここで、「起立」とは、防漏壁6の最も上方に位置する部位(頂部6a)が、表面シート2の表面(肌対向面)よりも上方に位置する状態を意味する。後述する第2の防漏壁20の「起立」についても同様である。
防漏壁6は、股下部C(排泄部対向領域)及びその前後に位置する領域(背側部A及び腹側部Bそれぞれの股下部C寄りの部分)において、図2に示すように、中空のループ状をなして肌対向面1a側に凸に起立しており、防漏壁6のループ状をなして起立している部分は、排泄部対向領域よりも長手方向Xに広い領域である。一方、背側部A及び腹側部Bに属する、おむつ1A(吸収性本体5)の長手方向端部においては、図示していないが、防漏壁6(伸縮性シート7)は、肌対向面1a側に凸に起立した中空のループ状を形成しないように積極的に折り曲げられており、その折り曲げられた伸縮性シート7は、ホットメルト型接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって吸収性本体5に接合されて、防漏壁6の起立が阻害された起立阻害部61を形成している。起立阻害部61は、防漏壁6の前方側(腹側部Bに位置する部位)及び後方側(背側部Aに位置する部位)それぞれの内部からの防漏を図る手段としても機能する。
防漏壁6を構成する疎水性の伸縮性シート7は、本実施形態のおむつ1Aにおいては、弾性部材73により伸縮性が付与された複合シートである。伸縮性シート7は、図1〜図3に示すように、肌対向面側のシート71と、非肌対向面側のシート72と、それらのシート71,72間に、複数本の弾性部材73を配置して形成されている。肌対向面側のシート71と非肌対向面側のシート72とは、連続した1枚の疎水性シートであり、図3に示すように、吸収性本体5の長手方向Xに延びる折曲線L1で2つ折りされてシート71,72とされ、両シート71,72が互いに重ね合わされている。互いに重ね合わされたシート71,72間は、公知の接合手段により接合されていても良い。伸縮性シート7は、こうして互いに重ね合わされた肌対向面側のシート71と非肌対向面側のシート72との間に、複数本の糸状の弾性部材73を、公知の接合手段によって、シート71,72の長手方向Xに伸長状態で配置固定して形成されている。本実施形態における複数本の弾性部材73それぞれは、図1に示すように、吸収性本体5の長手方向Xの全長に亘って配置されているが、少なくとも股下部C(排泄部対向領域)よりも長く配置されていれば良い。
本実施形態における伸縮性シート7では、疎水性のシート71,72間に、3本の弾性部材73が吸収性本体5の長手方向Xに延びて配置されている。図3に示すように、3本の弾性部材73のうちの1本は、ループ状をなして起立している防漏壁6の頂部6aに配置され、他の2本は、防漏壁6の内側部6A及び外側部6Bそれぞれに1本ずつ配置されている。頂部6aを境界として、防漏壁6における、頂部6aよりもおむつ1A(吸収性本体5)の幅方向Yの内方側が、防漏壁6の内側部6Aであり、頂部6aよりもおむつ1A(吸収性本体5)の幅方向Yの外方側が、防漏壁6の外側部6Bである。
防漏壁6(伸縮性シート7)は、図2及び図3に示すように、吸収性本体5の長手方向Xに延びる第1接合部8及び第2接合部9にて吸収性本体5に接合されている。第1接合部8は、伸縮性シート7の長手方向Xの一側部、より具体的には、前記1枚の疎水性シートの折曲線L1近傍における、肌対向面側のシート71の表面が、吸収性本体5を構成する表面シート2の肌対向面に接合されて形成されている。また、第2接合部9は、伸縮性シート7の前記一側部(折曲線L1近傍)から幅方向Yの外方に所定距離離間した部位における、非肌対向面側のシート72の表面が、吸収体4の側縁4sの近傍にて、吸収性本体5を構成する外層シート3の肌対向面に接合されて形成されている。このように、帯状の伸縮性シート7を、吸収性本体5の長手方向Xの側部に、長手方向Xに沿って、配設及び接合しているため、伸縮性シート7の収縮により、中空部60を有するループ状に起立した部分を有する防漏壁6が形成される。
第1接合部8及び第2接合部9は、それぞれ、おむつ1Aにおける他の接合部と同様に、ホットメルト型接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって形成することができる。本実施形態においては、両接合部8,9は、ホットメルト型接着剤によって形成されている。両接合部8,9は、それぞれ、防漏壁6の長手方向Xの全長に亘って連続している。
図2及び図3に示すように、股下部C(排泄部対向領域)におけるループ状の防漏壁6において、第1接合部8と第2接合部9とは、幅方向Yに離間して配置されており、且つ両接合部8,9の間に空間10が形成され、空間10を介して該防漏壁6の中空部60と吸収体収容部40とが連通している。空間10は、防漏壁6の長手方向Xの全長に亘って連続しており、股下部Cのみならずその前後の領域にも形成されている。吸収体収容部40の長手方向Xに沿う左右両側部それぞれには、吸収体4が配されておらず、平面視して帯状の空間からなるポケット部41が形成されており、空間10の下方にはポケット部41が位置している。ポケット部41は、吸収体収容部40の長手方向Xの全長に亘って連続して形成されていても良いが、股下部C(排泄部対向領域)において形成され、股下部Cの前後領域(背側部A、腹側部B)では形成されないことが好ましい。このように、ポケット部41を股下部Cに局所的に形成することにより、股下部Cにおいてポケット部41に取り込まれた軟便等の排泄液が吸収体4により前後と横から取り囲まれて吸収されるために、より早く吸収体4に吸収させることが可能となる。ポケット部41は、後述するように、防漏壁6の中空部60に吸収され空間10を介して吸収体収容部40内に収容された軟便等の排泄液の、吸収体4に吸収させる前の一時的な貯蔵部として機能し得る。
股下部C(排泄部対向領域)におけるループ状の防漏壁6の幅方向Yに沿う断面視形状は、図3に示す如き円形形状である。更に説明すると、股下部Cにおけるループ状の防漏壁6の幅方向Yの断面視形状は、防漏壁6をそのループの頂部6a側から該頂部6aの反対側(空間10側)に向けて中空部60を潰すように押圧した場合に〔図5(b)参照〕、該防漏壁6の長手方向Xに延びる内側部6A(頂部6aよりもおむつ1Aの幅方向Yの内方側に位置する部位)の下方部6A1が、吸収性本体5の肌対向面1a(表面シート2)と接し得る形状であり、その具体例が図3に示す如き円形形状である。下方部6A1は、ループ状の防漏壁6の内側部6Aにおける下半分の領域である。
股下部Cにおいて中空部60を有するループ状をなして起立する、防漏壁6の幅方向Yの断面視形状が、図3に示す如き円形形状に代表される、押圧時に応力集中による座屈することなく前記特定形状に変形し得る形状であると、圧縮回復性が高いため、おむつ1Aの着用時において、ループ状をなして起立する防漏壁6が着用者の体圧等の外力によって潰されて変形しても(図5(b)参照)、その外力が取り除かれた後は速やかに元の形状に回復することができ、防漏壁6の起立安定性が向上する。更には、防漏壁6の座屈変形が生じないため、後述する開孔65が塞がれることがなく、液の透過性が低下しにくい。これに対し、防漏壁6の幅方向Yの断面視形状が、特許文献1に記載のバリヤーカフスの如き三角形形状あるいは四角形状等であると、円形形状等に比しバリヤーカフスを構成する頂点間の壁面に応力集中しやすく座屈することにより圧縮回復性に乏しいため、良好な起立安定性は得られない。また、バリヤーカフスを構成する壁面が座屈することで開孔が塞がれてしまい液の透過性が低下する。
防漏壁6の幅方向Yの断面視形状を、図3に示す如き円形形状に代表される、押圧時に前記特定形状に変形し得る形状とする上で、防漏壁6を構成する弾性部材73の数及び配置形態並びに防漏壁6(伸縮性シート7)の吸収性本体5との接合形態は重要である。本実施形態においては、図2及び図3に示すように、弾性部材73の数及び配置形態に関しては、中空部60を有するループ状をなして起立している防漏壁6の頂部6a並びに頂部6aから幅方向Yの内方及び外方それぞれに等距離離間した位置の計3箇所に計3本の弾性部材73を配置し、また、防漏壁6の吸収性本体5との接合形態に関しては、長手方向Xに延びる互いに平行な2本の第1接合部8及び第2接合部9にて防漏壁6を吸収性本体5に接合することで、防漏壁6の幅方向Yに沿う断面視形状を、図3に示す如き円形形状とし、良好な起立安定性を確保している。
そして、股下部C(排泄部対向領域)におけるループ状の防漏壁6は、幅方向Yの断面視形状が、前述の如き円形形状に代表される特定形状であることに加えて、図2〜図4に示すように、その内側部6Aの下方部6A1に、開孔65が形成され、開孔65を介して防漏壁6の中空部60と外部とが連通している。開孔65は、平面視して楕円形形状で、伸縮性シート7(シート71,72)を厚み方向に貫通しており、少なくとも股下部Cにおける防漏壁6の下方部6A1に多数形成されている。開孔65は、軟便等の排泄液を防漏壁6の中空部60内に吸収する透液孔として機能する。
防漏壁6の多数の開孔65は、図4に示すように、個々の開孔65の長手方向Xにおける位置が一致しないように配置されている。ここで、「個々の開孔の長手方向における位置」とは、吸収性本体5の長手方向Xに沿う方向における、個々の開孔65の中心Pの位置を意味する。即ち、多数の開孔65から任意に2つを選択し、その2つの開孔65それぞれについて、開孔65の中心Pを通って防漏壁6の起立高さ方向(垂直方向)に延びる仮想直線L3を引いた場合に、その2本の仮想直線L3が互いに重ならないように、多数の開孔65は配置されている。防漏壁6における多数の開孔65の配置形態を、このように長手方向Xにおいて互いに異ならせることで、おむつ1Aの着用時に着用者の体圧が防漏壁6にかかっても、開孔65が潰れにくくなり、開孔65の透液孔としての機能が維持されやすくなる。
股下部C(排泄部対向領域)におけるループ状の防漏壁6は、幅方向Yの断面視形状が、前述の如き円形形状に代表される特定形状であることに加えて、図3に示すように、内側部6Aの下方部6A1の外面における任意の1本の接線L2(図3では2本の接線L2を図示している)と吸収性本体5の肌対向面1a(表面シート2の肌対向面)とのなす角度θが、90°未満であることが好ましく、5〜45°であることが特に好ましい。角度θが90°未満であると、ループ状の防漏壁6が着用者の体圧を受けて潰れたときに、開孔65が形成されている内側部6Aの下方部6A1が、吸収性本体5の肌対向面1a(表面シート2)と接しやすく、それにより、防漏壁6の内側部6A近傍に存する排泄液を、開孔65を介して防漏壁6内の中空部60に吸収しやすくなる(図5(b)参照)。
本実施形態に係る防漏壁6の作用効果について説明すると、股下部Cにおけるループ状の防漏壁6は、前述した、弾性部材73の数及び配置形態並びに接合部8,9での吸収性本体5との接合等の工夫により、その幅方向Yの断面視形状が、図3に示す如き円形形状に代表される、押圧時に前記特定形状に変形し得る形状となっているため、圧縮回復性が高く、良好な起立安定性を有する。また、防漏壁6の内部が中空部60となっているためクッション性が良好であり、良好な起立安定性と相俟って、おむつ1Aのフィット性を向上させる。
また、防漏壁6は、尿等の低粘性の排泄液のみならず、軟便等の高粘性の排泄液に対しても、優れた横漏れ防止性及び液吸収性を発揮する。即ち、おむつ1Aの着用時において、股下部C(排泄部対向領域)の中央部における表面シート2上に軟便等の排泄液が排泄され、該排泄液の一部が該表面シート2等を通過するのに時間がかかり下方の吸収体4に吸収されずに、該表面シート2上を幅方向Yに流れた場合、股下部Cにおいて中空部60を有するループ状をなして起立する防漏壁6が、その排泄液の幅方向Yへの更なる流動を堰き止め、横漏れを防止する。図5(a)には、符号Uで示す軟便等の排泄液が、防漏壁6によって堰き止められて防漏壁6の内側部6Aの近傍に存している状態が示されている。図5(a)に示す状態から、図5(b)に示すように、おむつ1Aの着用者の体圧等の外力Fにより防漏壁6が押し潰された場合、内側部6Aの下方部6A1が、その近傍の排泄液U側に倒れ、排泄液Uと接触する。このとき、排泄液Uは、下方部6A1と接触しつつ、外力Fによって押圧された状態となり、ポンプの如き作用により、下方部6A1に形成されている多数の開孔65を介して、防漏壁6の中空部60に吸収される。
こうして、防漏壁6の中空部60に吸収された排泄液Uは、防漏壁6の第1接合部8と第2接合部9との間の空間10を介して、空間10の下方に位置する吸収体収容部40のポケット部41に速やかに収容され、吸収体4に吸収される。ポケット部41は、排泄液を一時的に収用するバッファタンクとして機能し、吸収体4の液吸収能を効果的に補助する。このような防漏壁6の作用効果により、おむつ1Aは、特に軟便等の高粘性の排泄液に対して有効であり、横漏れを起こし難く、液吸収性に優れる。
前述した防漏壁6による作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、防漏壁6の各部の寸法等は次のように設定することが好ましい。
防漏壁6の外径R1(図5(a)参照)は、好ましくは10〜50mm、更に好ましくは10〜30mmである。
防漏壁6の起立高さR2(図5(a)参照、表面シート2からの起立高さ)は、好ましくは10〜50mm、更に好ましくは25〜30mmである。
第1接合部8と第2接合部9との離間距離R3(図5(a)参照)、即ち空間10の幅方向Yの長さ(幅)R3は、好ましくは5〜30mm、更に好ましくは5〜15mmである。
ポケット部41の幅方向Yの長さ(幅)R4(図5(a)参照)は、好ましくは5〜30mm、更に好ましくは5〜15mmである。
開孔65の最大径(開孔65が円形形状の場合は直径、図4に示す如き楕円形形状の場合は長径)は、好ましくは0.5〜10mm、更に好ましくは2〜5mmである。
開孔65の数は、防漏壁6の長手方向Xの長さ1cm当たり、好ましくは4〜50個、更に好ましくは4〜9個である。
おむつ1Aにおける各部の形成材料について説明すると、表面シート2及び外層シート3としては、当該技術分野において従来用いられている各種のものを用いることができる。表面シート2としては、不織布や開孔フィルム等の各種液透過性のシート材を用いることができる。外層シート3としては、透湿性を有しない樹脂フィルムや、微細孔を有し、透湿性を有する樹脂フィルム、撥水不織布等の不織布、これらと他のシートとのラミネート体等の各種液不透過性ないし撥水性のものを用いることができる。吸収体4としては、パルプ繊維等からなる繊維集合体(不織布であっても良い);該繊維集合体に吸水性ポリマーの粒子を保持させてなる吸収性コアを、透水性の薄紙や不織布からなるコアラップシートで被覆したもの;各種公知のポリマーシート等を用いることができる。
防漏壁6(伸縮性シート7)を構成する疎水性のシート71,72としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスッチックフィルム;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成繊維を用いたスパンボンド、メルトブロー等の不織布等を用いることができる。特にポリプロピレン製の合成繊維を用いたスパンボンドとメルトブローとの多層不織布が好ましく、スパンボンド/メルトブロー/スパンボンド(SMS)不織布が好適である。ポリプロピレンは吸水による座屈がなく安定しておりSMSにすることで吸収性物品の防漏壁としてソフトタッチで、圧縮回復性が高く、良好な起立安定性を得ることができる。また、防漏壁6(伸縮性シート7)を構成する弾性部材73としては、この種の吸収性物品において弾性部材として用いられている糸状又は帯状のものを特に制限無く用いることができる。
本発明に係る防漏壁は、前記実施形態に制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の形態のものを採用することができる。図6〜図8には、それぞれ、本発明に係る防漏壁の他の実施形態が示されている。尚、後述する他の実施形態(図9のナプキン1Bを含む)については、前記実施形態と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、前記実施形態についての説明が適宜適用される。また、後述する防漏壁の他の実施形態については、主として左側の構成について説明し、右側の構成については、特に説明しない限り、左側の構成についての説明が適宜適用される。
股下部C(排泄部対向領域)におけるループ状の防漏壁6には、図6(a)〜図6(c)に示すように、その外側部6B(頂部6aよりもおむつ1Aの幅方向Yの外方側に位置する部位)に、液不透過性の防漏フィルム75が配置されていても良い。股下部C以外の防漏壁6に防漏フィルム75が配置されていても構わない。防漏壁6の外側部6Bに防漏フィルム75を配置することで、防漏壁6の防漏性がより向上し、横漏れがより効果的に防止される。図6(a)に示す防漏壁6においては、防漏壁6(伸縮性シート7)を構成する肌対向面側のシート71と非肌対向面側のシート72との間に防漏フィルム75が介在配置されており、図6(b)に示す防漏壁6においては、シート71の表面に防漏フィルム75が配されて防漏壁6の最外層を形成しており、図6(c)に示す防漏壁6においては、シート72の表面に防漏フィルム75が配されて防漏壁6の最内層を形成している。これらの3つの形態の何れにおいても、防漏フィルム75は、ループ状の防漏壁6の外側部6Bの下半分6B1に配されており、隣接するシートとホットメルト型接着剤等の公知の接合手段により接合されている。防漏フィルム75としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスッチックフィルム、又はこれらの樹脂を用いた微細孔を有し透湿性を有する樹脂フィルム等を用いることができる。
また、股下部C(排泄部対向領域)におけるループ状の防漏壁6の中空部60には、図7(a)〜図7(d)に示すように、中空部60よりも中空部内の容積(当該中空部に他の部材が入っている場合はその他の部材を除いた場合の容積であり、当該中空部が本来有している容積を意味する)が小さい、小中空部21を有するループ状をなして起立する第2の防漏壁20が配置されていても良い。股下部C以外の防漏壁6の中空部60に第2の防漏壁20が配置されていても構わない。防漏壁6の中空部60は、その下部に空間10が形成されて開放されているが、第2の防漏壁20の小中空部21は、その下部が閉鎖されていて閉鎖空間となっている。
図7(a)及び図7(b)に示す第2の防漏壁20は、防漏壁6と同様に、複数本(3本)の弾性部材73により伸縮性が付与された複合シート(疎水性シート)である、伸縮性シート7とは別体の帯状の伸縮性シート22を含んで構成されている。伸縮性シート22は、1枚の疎水性シートがその長手方向Xに延びる折曲線(図示せず)で2つ折りされ互いに重ね合わされて形成されており、伸縮性シート22の全体が2層構造となっている。伸縮性シート22における重ね合わされた疎水性シートどうしは、ホットメルト型接着剤等の公知の接合手段により接合されている。伸縮性シート22としては、伸縮性シート7と同様のものを用いることができる。尚、伸縮性シート22は、疎水性でなくても良いが、第2の防漏壁20により防漏性を向上させる場合には疎水性であることが好ましい。
図7(a)に示す防漏壁6においては、第2の防漏壁20を構成する伸縮性シート22の長手方向Xに延びる図示しない一側部及び他側部は、互いに重ね合わされた状態で、防漏壁6の外側部6B側に位置する第2接合部9よりも更におむつ1(吸収性本体5)の幅方向Yの外方に配置されており、第1接合部8が位置する防漏壁6の内側部6A側には配置されていない。伸縮性シート22の両側部の外側部6B側への斯かる偏在により、第2の防漏壁20は、防漏壁6の外側部6B側に偏在している。伸縮性シート22は、防漏壁6を構成する伸縮性シート7(非肌対向面側のシート72)と後述する外側外層シート3Bとの間に、第2接合部9その他の公知の接合手段により挟持固定されている。このように、防漏壁6の中空部60に第2の防漏壁20が外側部6B側に偏在して配置されていると、おむつ1Aの着用中に体圧等によって防漏壁6が図5(b)に示す如く押し潰されたときに、その内部の第2の防漏壁20が、おむつ1Aの内方側に空間10を塞ぐように倒れるようになる。第2の防漏壁20の斯かる倒れ込み動作により、防漏壁6の中空部60にある排泄液は、ポケット部41へ押し込められ、それにより液吸収性が一層向上する。また、第2の防漏壁20が存在することによって、防漏壁6の起立性が向上し、更には圧縮回復性が向上することにより、防漏壁6の身体への追従性が良好になる。特に、防漏壁6の内側部6Aの下方部6A1に形成されている多数の開孔65の数あるいは大きさによらず、防漏壁6の良好な圧縮回復性を得ることができる。
図7(a)に示す防漏壁6においては、第1接合部8は、伸縮性シート7の長手方向Xの一側部における、非肌対向面側のシート72の表面が、吸収性本体5を構成する表面シート2の肌対向面に接合されて形成されている。また、外層シート3が、吸収体4から相対的に近い内側外層シート3Aと相対的に遠い外側外層シート3Bとを含んで構成されている。内側外層シート3Aは、吸収体4よりも若干幅広か又は吸収体4と略同幅で且つ外側外層シート3Bよりも幅狭であり、吸収体4の非肌対向面の全域を被覆している。内側外層シート3Aと吸収体4及び外側外層シート3Bとの間は、それぞれ、ホットメルト型接着剤等の公知の接合手段により接合されていても良い。内側外層シート3Aと外側外層シート3Bとは、組成、厚み、特性等が同じであっても良く、異なっていても良い。
図7(b)に示す防漏壁6においては、第2の防漏壁20が防漏壁6の外側部6B側に偏在している点は図7(a)に示す防漏壁6と同様であるが、第2の防漏壁20を構成する伸縮性シート22の長手方向Xに延びる両側部のうち、図示しない一側部が、防漏壁6を構成する伸縮性シート7(非肌対向面側のシート72)と外側外層シート3Bとの間に、第2接合部9その他の公知の接合手段により挟持固定され、伸縮性シート22の他側部22Aが、伸縮性シート7と外側外層シート3Bとの間に介在配置されずに、シート72の表面に公知の接合手段により接合されている点で異なる。
図7(c)及び図7(d)に示す防漏壁6においては、第2の防漏壁20が、防漏壁6を構成する伸縮性シート7、即ち、複数本(3本)の弾性部材73により伸縮性が付与された複合シート(疎水性シート)から構成されており、より具体的には、防漏壁6を構成する伸縮性シート7を折り返すことにより構成されており、防漏壁6と第2の防漏壁20とが連続した1枚の伸縮性シート7によって一体的に形成されている。図7(c)及び図7(d)に示す防漏壁6においても、第2の防漏壁20は防漏壁6の外側部6B側に偏在している。
図7(c)に示す第2の防漏壁20においては、該防漏壁20の肌対向面側(外面側)は、防漏壁6の非肌対向面側(内面側)を形成するシート72によって形成され、該防漏壁20の非肌対向面側(内面側)は、防漏壁6の肌対向面側(外面側)を形成するシート71によって形成されている。図7(c)に示す防漏壁6においては、ループ状をなして起立する第2の防漏壁20の起立基端部を構成する、伸縮性シート7の長手方向Xに延びる一側部7Aが、空間10又はポケット部41においてシート71の表面に接着剤等の接合手段により接合固定されている。
図7(d)に示す第2の防漏壁20においては、該防漏壁20の肌対向面側(外面側)は、防漏壁6の肌対向面側(外面側)を形成するシート71によって形成され、該防漏壁20の非肌対向面側(内面側)は、防漏壁6の非肌対向面側(内面側)を形成するシート72によって形成されている。図7(d)に示す防漏壁6においては、伸縮性シート7の一側部7Aが、対向する伸縮性シート7どうし(シート72どうし)の間に挟持固定されている。
図7(c)及び図7(d)に示すように、防漏壁6と第2の防漏壁20とを1枚の連続した伸縮性シート7から構成することにより、防漏壁の材料構成を簡略化することが可能となる。
一方、図7(a)及び図7(b)に示すように、防漏壁6と第2の防漏壁20とをそれぞれ別体の伸縮性シート7,22から構成することにより、各防漏壁6,20に異なる特性を付与することが可能となり、それによって防漏壁6全体の特性をより一層向上させることが可能となる。例えば、第2の防漏壁20を構成する伸縮性シート22として、ポリエチレンテレフタレート製の合成繊維を含んで構成される反発性の高い不織布を用い、且つ防漏壁6を構成する伸縮性シート7として、ポリエチレン製の合成繊維を含んで構成される柔軟な不織布を用いることにより、肌触りが柔らかく且つ圧縮回復性が良好な防漏壁6を得ることが可能となる。また、防漏壁6を構成する伸縮性シート7として、比較的目開きの大きな不織布を用いて高粘性液体の取り込み性を向上させる場合、第2の防漏壁20を構成する伸縮性シート22として、比較的目の詰まった不織布を用いることで、防漏壁6全体としての防漏性の低下を防止できる。また、防漏壁6を構成する伸縮性シート7と第2の防漏壁20を構成する伸縮性シート22とで、坪量を異ならせることもでき、例えば、伸縮性シート7を相対的に低坪量に、伸縮性シート22を相対的に高坪量にした場合にも、肌触りが柔らかく且つ圧縮回復性が良好な防漏壁6を得ることが可能となる。
第2の防漏壁20は、図8(a)、図8(b)及び図8(c)に示すように、内側外層シート3A及び/又は外側外層シート3Bを含んで構成されていても良い。図8(a)〜図8(c)に示す第2の防漏壁20は、何れも防漏壁6の外側部6B側に偏在している。図8(a)〜図8(c)に示す第2の防漏壁20を構成するシート3A,3Bは、弾性部材73により伸縮性が付与された複合シートであり疎水性(液不透過性)のシートである。
図8(a)に示す第2の防漏壁20は、外側外層シート3Bを含んで構成されている。第2の防漏壁20を構成する外側外層シート3Bは、長手方向Xに延びる折曲線L5で2つ折りされ互いに重ね合わされて2層構造とされており、外側外層シート3Bの長手方向Xに沿う両側部(図示せず)は、第2接合部9よりもおむつ1Aの幅方向Yの外方に位置している。第2の防漏壁20の小中空部21の下部において、相対向する外側外層シート3Bどうしが、ホットメルト型接着剤を塗布してなる接合部25によって接合されており、それによって小中空部21は閉鎖空間となっている。
図8(b)に示す第2の防漏壁20は、内側外層シート3Aを含んで構成されている。第2の防漏壁20を構成する内側外層シート3Aは、長手方向Xに延びる折曲線L6で2つ折りされ互いに重ね合わされて2層構造とされており、内側外層シート3Aの長手方向Xに沿う両側部(図示せず)は、第1接合部8よりもおむつ1Aの幅方向Yの内方に位置している。第2の防漏壁20の小中空部21の下部において、相対向する内側外層シート3Aどうしが接合部25によって接合されており、それによって小中空部21は閉鎖空間となっている。
図8(c)に示す第2の防漏壁20は、内側外層シート3A及び外側外層シート3Bを含んで構成されており、より具体的には、内側外層シート3Aを含んで構成され且つ小中空部27を有するループ状をなして起立する外側防漏壁26と、外側外層シート3Bを含んで構成され且つ外側防漏壁26の小中空部27に配置される内側防漏壁28とから構成されており、内側防漏壁28は第2の小中空部29を有するループ状をなして起立している。中空部内の容積(中空部内の空間体積)は、大きい順に、中空部60、小中空部27、第2の小中空部29となっている。第2の小中空部29の下部において、相対向する外側外層シート3Bどうしが接合部25によって接合されており、それによって第2の小中空部29は閉鎖空間となっている。外側防漏壁26を構成する内側外層シート3A及び内側防漏壁28を構成する外側外層シート3Bは、それぞれ、長手方向Xに延びる折曲線(図示せず)で2つ折りされ互いに重ね合わされて2層構造とされている。内側外層シート3Aと外側外層シート3Bとの間は、それぞれ、所定箇所においてホットメルト型接着剤等の公知の接合手段により接合されていても良い。
本発明の吸収性物品は、図1に示す如きファスニングテープを有する展開型の使い捨ておむつの他、予めパンツ型に形成されたパンツ型の使い捨ておむつ、吸収パッド、生理用ナプキン等であっても良い。図9には、本発明の吸収性物品の一実施形態である生理用ナプキンが示されている。
本実施形態のナプキン1Bは、図9に示すように、表面シート2、外層シート3、及び両シート2,3間に介在する吸収体収容部(図示せず)に収容された吸収体4を具備する縦長の吸収性本体5と、吸収性本体5の肌対向面1a側における長手方向Xの両側部それぞれに形成された防漏壁6,6とを備えている。防漏壁6を含む、ナプキン1Bの主たる構成は、前述したおむつ1Aと略同じであり、図9のII−II線断面は、図示していないが、おむつ1Aの幅方向Yに沿う断面(図2参照)と略同じであり、主として、レッグ弾性部材11が設けられていない点、並びに後述するウイング部16及びエンボス溝17が設けられている点で、図2に示すおむつ1Aの断面と異なる。
ナプキン1Bは、図9に示すように、着用時に着用者の排泄部(膣口)に対向配置される排泄部対向領域Cと、着用時に排泄部対向領域Cより着用者の腹側に配される前方領域Bと、着用時に排泄部対向領域Cより着用者の背中側に配される後方領域Aとを、長手方向Xに有している。排泄部対向領域Cは、左右に一対のウイング部16,16を有する部分である。ウイング部16は、吸収体4の幅方向Yの外方に位置する、外層シート3と伸縮性シート60との積層部分(サイドフラップ部)が、排泄部対向領域Cにおいて幅方向Yの外方に更に延出して形成されている。ナプキン1Bの肌対向面1aには、表面シート2と吸収体4とを固定する一対のエンボス溝17が形成されている。エンボス溝17は、ナプキン1Bの両側部に、長手方向Xに延びて延在している。図示しないナプキン1Bの非肌対向面(外層シート3の非肌対向面)の所定箇所には、粘着剤が塗布されてズレ止め部(図示せず)が形成されている。ナプキン1Bによっても、おむつ1Aと同様の効果が奏され、経血の如き高粘性の排泄液であっても、横漏れを起こし難く、高い液吸収性が得られる。
本発明は、前記実施形態に制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。例えば、前記実施形態では、伸縮性シート7,22は、1枚の疎水性シートが折り重ねられて形成されていたが、2枚の疎水性シートが積層されて形成されていても良い。前述した一の実施形態のみが有する部分は、すべて適宜相互に利用できる。