JP4814835B2 - 体液吸収性物品 - Google Patents
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Description
この場合における、体液吸収性部の構成は、種々のものが知られているが、吸収性素材として、高吸収性ポリマー、綿状パルプ(フラッフパルプ)、クレープ紙などの吸収紙を主体とし、綿状パルプ内に高吸収性ポリマーを分散させる、あるいはこれらを層構造にしたものが一般に用いられている。近年の高吸収性ポリマー技術の進展に伴い、より薄型化した体液吸収性部の形成が可能となり、したがって製品の吸収部分の身体へのフィット性が向上し、モレが少なくなってきている。
この製品の吸収特性の改善は、需要者にとって、薄型でありながら、吸収容量が大きく、さらに長時間の着用にも耐えるさらに新たな製品開発の要求となってあらわれている。
この問題点を解決するための試みとして、吸収体の両側に起立カフス(一般に立体ギャザーともいわれている)をそれぞれ設け、体液を吸収体上に一時的に貯留し、吸収遅延による横漏れ防止を図ることが知られている。
他の試みとしては、長手方向への濡れ広がり性の良い素材を吸収体中に組み入れる工夫も提案されている。
さらに別の工夫としては、主吸収体の長手方向両側に補助吸収体を設け、主吸収体により吸収しきれなかった分を補助吸収体により吸収させるものも提案されている。
さらに他の試みとして、前述の補助吸収体と起立カフスとを組み合わせることも提案されている。
しかしながら、いずれの先行技術も、体液の長手方向拡散機能と横漏れ防止機能(換言すれば幅方向の拡散抑止機能)の両方を発揮しうるものではなかった。
そこで、本発明の主たる課題は、拡散性に顕著な方向性をもたせる、すなわちある方向に沿って体液の拡散を助長しながらも別の方向に沿っては拡散を防止または抑制できるようにすることにある。
<請求項1記載の発明>
身体の肌に面する側に設けられた透液性表面層、身体の肌から遠ざかる側に設けられた防漏層、およびこれらの間に設けられた体液吸収保持層を備えており、
高吸収性ポリマーを含みかつ体液を吸収保持すると難透液性または不透液性となる難拡散吸収体と、体液を吸収しても前記難拡散吸収体よりも優れた透液性を示す可拡散吸収体との両者が前記体液吸収保持層内に設けられており、
前記難拡散吸収体は、身体側が非体液透過性若しくは難体液透過性とされ且つ身体側と反対側が体液透過性とされた細長形状の密閉袋体と、その内部に移動可能なように封入された高吸収性ポリマーとからなる細長形状のものであり、
前記袋体は長手方向に複数の隔室に区画されており、各隔室内に前記高吸収性ポリマーが封入されており、前記高吸収性ポリマーの膨潤に伴って、前記隔室相互の区画部分が解除されて隣接隔室相互が一体となるとともに、各隔室の高吸収性ポリマー相互も一体をなして膨潤し、一体となった隔室内全体にわたり連続的なゲルブロッキングが発生するように構成されており、
前記難拡散吸収体は、少なくとも前記可拡散吸収体の内部に設けられ、かつ前記可拡散吸収体の下には設けられておらず、
前記難拡散吸収体が前記防漏層に対して液密に接合されている、
ことを特徴とする体液吸収性物品。
この種の吸収性物品において、従来からゲルブロッキングといわれる現象が知られている。この現象は、吸収体に含まれる高吸収性ポリマーが体液吸収により膨潤したとき、高吸収性ポリマー相互の密着が主要因となって、吸収体が難透液性または不透液性になり、吸収体内における体液の拡散が阻害されるというものであり、従来から体液の拡散性を阻害するものとされてきた。本発明はこれを逆手にとったものであり、体液の吸収によりゲルブロッキング状態となる吸収体を敢えて設けることにより、その周方向に沿って体液の拡散を助長・促進させながらも、横断方向においては体液の流通を堰き止めて拡散の防止または抑制が可能となるところにポイントを有するものである。
特に、密閉袋体内に高吸収性ポリマーを所定量以上封入することにより、ポリマーの膨潤可能体積が袋体容積によって制限されるため、容易にゲルブロッキングを発生させることができる。
また、特に、袋体に対して長手方向に複数の隔室を設け、各隔室内に高吸収性ポリマーを封入すると、高吸収性ポリマーは隔室内に拘束される。よって、高吸収性ポリマーを袋体内の全体に偏り無く均一に分布させることができる。しかも、高吸収性ポリマーが体液を吸収して膨潤したときには、区画の解除により隣接隔室相互が一体となるため、各隔室の高吸収性ポリマー相互も一体をなして膨潤し、一体となった隔室内全体にわたり連続的なゲルブロッキングが発生し、体液吸収部分全体が連続的な堰を形成するようになる。
さらに、一般的な体液吸収性物品は、身体の肌に面する側に設けられた透液性表面層、身体の肌から遠ざかる側に設けられた防漏層、およびこれらの間に設けられた体液吸収保持層を備えている。かかる場合に、吸収保持層内に本発明の難拡散吸収体を設けることにより、吸収保持層内において難拡散吸収体の周方向に沿って体液の拡散を助長・促進させながらも、横断方向には体液拡散の防止または抑制ができるようになる。
特に本発明は、従来一般的に使用されてきた体液拡散性を有する可拡散吸収体と、これとは拡散機能の異なる本発明の難拡散吸収体とを併用したものである。かくして、体液を吸収するに際し、可拡散吸収体により体液拡散を伴いながら吸収保持させる一方で、その拡散方向を難拡散吸収体に沿う方向に抑制することができるようになる。このことは、例えば難拡散吸収体を物品の長手方向に沿って設けることにより、長手方向の体液拡散性を助長促進させて吸収体の有効利用面積を拡大させつつ、幅方向の体液拡散性を抑制していわゆる横漏れを防止できるといった、従来不可能であった機能を可能にできることを意味する。
そして、難拡散吸収体が防漏層に対して液密に接合されていることにより、難拡散吸収体と防漏層との間を通じての体液流通を防ぐことができ、もって難拡散吸収体に沿う拡散助長作用および横断方向の拡散抑制作用を更に向上させることができる。
前記難拡散吸収体の配設部位全体にわたる連続線状または連続面状に、前記難拡散吸収体が防漏層に対して液密に接合されている、請求項1記載の体液吸収性物品。
防漏層に対する難拡散吸収体の接合は、特に本項記載のように構成するのが好ましい。
前記難拡散吸収体が、物品長手方向に沿い且つ物品幅方向に間隔を置いて、前記体液吸収保持層内における物品幅方向の両端部および物品幅方向の中間部のそれぞれに設けられている、請求項1または2記載の体液吸収性物品。
本項記載のように難拡散吸収体を配置することによって、物品長手方向の体液拡散性を助長促進させて吸収体の有効利用面積を拡大させつつ、幅方向の体液拡散性を抑制していわゆる横漏れを防止できるようになる。
前記難拡散吸収体が、物品の長手方向両端部の少なくとも一方に、物品幅方向に沿って設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の体液吸収性物品。
かかる構成を採ることによって、物品長手方向の体液拡散が物品端部において抑制されるため、いわゆる背漏れや腹漏れを防止できるようになる。
前記難拡散吸収体が、特定部位を環状又はコ字状に取り囲むように配置されている、請求項1または2記載の体液吸収性物品。
難拡散吸収体が本項記載のように配置されていると、体液は難拡散吸収体により取り囲まれる領域内に保持されるようになる。
袋体の容積をVとし、その内部に封入される高吸収性ポリマーの重量をWとし、高吸収性ポリマーの生理食塩水飽和吸収時の密度をk=1とし、高吸収性ポリマーの生理食塩水飽和吸収時の膨潤倍率をBとしたとき、前記難拡散吸収体が下記式(1)で定まる重量Wの110〜120%の重さの高吸収性ポリマーを含むように構成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の体液吸収性物品。
W=k×V/B ・・・(1)
高吸収性ポリマーは、袋体の容積(区画部分を除いた隔室容積を意味する)に対し少なくともかかる範囲の量を封入するのが望ましい。これによって、高吸収性ポリマーがその膨張により袋体内に比較的に密に充填された状態となるため、確実にゲルブロッキングを発生させることができる。
前述のように、本発明は使い捨ての紙おむつ、生理用ナプキンなどの体液吸収性物品一般に適用されるが、おむつ使用時(装着時)に背側の左右両側部を腹側の左右両側部に持ち込み、これらをテープファスナー(粘着剤テープファスナー及び面ファスナーを含む)により接合するタイプのいわゆるテープ式紙おむつに対する適用例を説明すれば、パンツ型使い捨ておむつやパッド型使い捨て吸収性物品での実施の形態や、生理用ナプキンでの実施の形態も直ちに推測できると思われるので、後二者の例についてはその説明を省略する。
図1及び図2は、本発明に係る使い捨ておむつ例を示している。このものでは、現在広く採用されている基本構造、すなわち身体の肌に面する側に設けられた液透過性の不織布、あるいは孔開きフィルムなどからなり、着用者の肌に直接触れる長方形の表面層2、身体の肌から遠ざかる側に設けられたポリエチレンプラスチックフィルムなどからなる長方形の不透液性バックシートなどからなる防漏層3、および両者の間に設けられた体液吸収保持層1を有する構造が採用されている。
さて、本発明では上述のような体液吸収性物品に対して、高吸収性ポリマーを含みかつ体液を吸収保持すると難透液性または不透液性となる難拡散吸収体4,4…を設ける。すなわち、透液性表面層2、防漏層3および体液吸収保持層1を備えた体液吸収性物品において、難拡散吸収体4,4…を図示のように吸収保持層1内に設ける。特に図示のように、体液を吸収しても難拡散吸収体4よりも優れた透液性を示す可拡散吸収体5を、吸収保持層1全体にわたり設けるとともに、その内部の所望の位置に難拡散吸収体4,4…を設けるのが好ましい。
W=k×V/B ・・・(1)
ただし、
V:袋体の容積(区画部分を除いた隔室容積を意味する)、
W:袋体内部に封入される高吸収性ポリマーの重量、
k=1:高吸収性ポリマーの生理食塩水飽和吸収時の密度、
B:高吸収性ポリマーの生理食塩水飽和吸収時の膨潤倍率。
本発明に含まれる、難拡散吸収体4の平面形態(物品を平面状態としたときの平面配置形態)を多数例示すると、図6〜図8に示すようになる。もちろん、本発明の範囲内において他の形態をとることもできる。
図6は、難拡散吸収体4を線状に配置する形態の例である。同図(a)は、前述した図1〜5に示す形態であり、難拡散吸収体4を製品長手方向に沿って四列直線状に配置したものである。これを基本として、同図(b)に示すように長方形をなす可拡散吸収体5内の両端部にのみ難拡散吸収体4,4を配置することもできる。また、同図(c)に示すように可拡散吸収体5の両脇(外側)に難拡散吸収体4,4を配置することもできる。また、同図(d)に示すように難拡散吸収体4,4…の長さを短くして、排泄予定領域のみに集中的に設けることもできる。また、同図(e)に示すように、中間の難拡散吸収体4,4の長さを両側部4,4のものより短くしても、難拡散吸収体4,4…を排泄予定領域に集中させることができる。このように本発明では、難拡散吸収体4,4…を複数設ける場合にはサイズを異ならしめることができる。この場合、排泄予定領域においても他の部位(製品長手方向両端部)においても、幅方向拡散抑制作用が奏せられるが、前者の部位のほうがより抑制作用が強くなる。
難拡散吸収体4は、図7(k)〜(o)に示すように特定部位を取り囲むように配置することもできる。特に同図(k)および(l)に示すものは体液の吸収・拡散が想定される部分の周囲を環状に採り囲む形態である。取り囲み形状は適宜定めることができ、多角形、円形、楕円形、瓢箪状(長手方向中間部に幅の狭いくびれがある形状)等とすることができる。これに対して、同図(m)及び(n)に示すように、コ字状に難拡散吸収体4を配置して所定方向のみを開放した取り囲み形態とすることもできる。これらの配置形態によれば、体液は難拡散吸収体4により取り囲まれる領域内に保持される。
難拡散吸収体4は、図7(o)に示すように交差する形態で配置しても良い。この場合、複数本の細長状の難拡散吸収体4,4…を重ねる、編む等しても良いが、一体的な吸収体として形成しても良い。具体的な難拡散吸収体4の配置としては、図7(o)に示すように碁盤目状に配置しても良いし、図示しないがハニカム状等に配置しても良い。編んでも良いし、一体的に袋体を形成しても良い。
図8は、上記の各平面配置形態を適宜選択して組み合わせたり、各形態に含まれる部分的な形状を他の形態に組み入れたりすることができる。図8(p)は、図6(a)の基本形態に対して、中間の一対の難拡散吸収体4,4を背側に延在させ、その端部相互を接続し、幅方向中央にコ字状取り囲み形態の難拡散吸収体4,4を形成したものである。また、図8(q)は吸収拡散予定部分を取り囲む環状難拡散吸収体4,4…の内側に長手方向に沿って線状の難拡散吸収体4,4を設けたものである。図8(r)は、図6(a)に示す製品長手方向に沿う難拡散吸収体4,4…を有する基本形態に対して、その製品長手方向両脇に製品幅方向に沿う線状難拡散吸収体4,4をそれぞれ設けたものである。さらにまた、図8(s)は、製品両側に長手方向に沿う線状難拡散吸収体4,4をそれぞれ設けるとともに、それらの間に製品幅方向に沿う線状難拡散吸収体4,4…を多数列設けたものである。
図6〜図8中の難拡散吸収体4が連続する部分は、複数の難拡散吸収体により構成しても良い。この場合、難拡散吸収体相互を接続し連続性が保たれるようにするのが望ましい。
他方、難拡散吸収体4は、図9(a)にも示すように可拡散吸収体5の内部に設けられるが、同図(b)に示すように一部(図示例では両側部)の難拡散吸収体4,4を可拡散吸収体5の外部に設けることもできる。この場合、同図(b)の例では可拡散吸収体5の上(図示例では表面層の上)に難拡散吸収体4,4を配置しているが、同図(c)に示すように、難拡散吸収体4,4を可拡散吸収体5の両脇に配置することもできる。図示しないが、本発明には、可拡散吸収体5の下(図示例でいえば可拡散吸収体5と防漏層3との間に難拡散吸収体4を配置したり、表面層2と可拡散吸収体5との間に難拡散吸収体4を配置したりすることは含まれない。
本発明が対象とする体液吸収性物品としては、生理用ナプキン、失禁者用おむつ、ベビー用おむつ、成人用おむつなどを挙げることができる。形態としては、パッドタイプ、テープ止着タイプ、パンツタイプのものを挙げることができる。
Claims (6)
- 身体の肌に面する側に設けられた透液性表面層、身体の肌から遠ざかる側に設けられた防漏層、およびこれらの間に設けられた体液吸収保持層を備えており、
高吸収性ポリマーを含みかつ体液を吸収保持すると難透液性または不透液性となる難拡散吸収体と、体液を吸収しても前記難拡散吸収体よりも優れた透液性を示す可拡散吸収体との両者が前記体液吸収保持層内に設けられており、
前記難拡散吸収体は、身体側が非体液透過性若しくは難体液透過性とされ且つ身体側と反対側が体液透過性とされた細長形状の密閉袋体と、その内部に移動可能なように封入された高吸収性ポリマーとからなる細長形状のものであり、
前記袋体は長手方向に複数の隔室に区画されており、各隔室内に前記高吸収性ポリマーが封入されており、前記高吸収性ポリマーの膨潤に伴って、前記隔室相互の区画部分が解除されて隣接隔室相互が一体となるとともに、各隔室の高吸収性ポリマー相互も一体をなして膨潤し、一体となった隔室内全体にわたり連続的なゲルブロッキングが発生するように構成されており、
前記難拡散吸収体は、少なくとも前記可拡散吸収体の内部に設けられ、かつ前記可拡散吸収体の下には設けられておらず、
前記難拡散吸収体が前記防漏層に対して液密に接合されている、
ことを特徴とする体液吸収性物品。 - 前記難拡散吸収体の配設部位全体にわたる連続線状または連続面状に、前記難拡散吸収体が防漏層に対して液密に接合されている、請求項1記載の体液吸収性物品。
- 前記難拡散吸収体が、物品長手方向に沿い且つ物品幅方向に間隔を置いて、前記体液吸収保持層内における物品幅方向の両端部および物品幅方向の中間部のそれぞれに設けられている、請求項1または2記載の体液吸収性物品。
- 前記難拡散吸収体が、物品の長手方向両端部の少なくとも一方に、物品幅方向に沿って設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の体液吸収性物品。
- 前記難拡散吸収体が、特定部位を環状又はコ字状に取り囲むように配置されている、請求項1または2記載の体液吸収性物品。
- 袋体の容積をVとし、その内部に封入される高吸収性ポリマーの重量をWとし、高吸収性ポリマーの生理食塩水飽和吸収時の密度をk=1とし、高吸収性ポリマーの生理食塩水飽和吸収時の膨潤倍率をBとしたとき、前記難拡散吸収体が下記式(1)で定まる重量Wの110〜120%の重さの高吸収性ポリマーを含むように構成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の体液吸収性物品。
W=k×V/B ・・・(1)
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