JP3970644B2 - 体液吸収性物品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、体液を吸収処理する、使い捨ての紙おむつ、生理用ナプキンなどの体液吸収性物品に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の体液吸収性物品は、基本的に、身体の肌に面する側に設けられた液透過性の表面層、身体の肌から遠ざかる側に設けられた防漏層、および両者の間に設けられた体液吸収性部を有する。
【0003】
この場合における、体液吸収性部の構成は、種々のものが知られているが、吸収性素材として、高吸収性ポリマー、綿状パルプ(フラッフパルプ)、クレープ紙などの吸収紙を主体とし、綿状パルプ内に高吸収性ポリマーを分散させる、あるいはこれらを層構造にしたものが一般に用いられている。近年の高吸収性ポリマー技術の進展に伴い、より薄型化した体液吸収性部の形成が可能となり、したがって製品の吸収部分の身体へのフィット性が向上し、モレが少なくなってきている。
【0004】
この製品の吸収特性の改善は、需要者にとって、薄型でありながら、吸収容量が大きく、さらに長時間の着用にも耐えるさらに新たな製品開発の要求となってあらわれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし従来のものは、体液の長手方向拡散が不十分なために未吸収部分が残り、吸収体全体の効率的な利用が困難であることや、幅方向への濡れ広がり面積が小さいために所謂横漏れもしくは股漏れが発生することが問題であった。
【0006】
この問題点を解決するための試みとして、吸収体の両側に起立カフス(一般に立体ギャザーともいわれている)をそれぞれ設け、体液を吸収体上に一時的に貯留し、吸収遅延による横漏れ防止を図ることが知られている。
【0007】
他の試みとしては、長手方向への濡れ広がり性の良い素材を吸収体中に組み入れる工夫も提案されている。
【0008】
さらに別の工夫としては、主吸収体の長手方向両側に補助吸収体を設け、主吸収体により吸収しきれなかった分を補助吸収体により吸収させるものも提案されている。
【0009】
さらに他の試みとして、前述の補助吸収体と起立カフスとを組み合わせることも提案されている。
【0010】
しかしながら、いずれの先行技術も、体液の長手方向拡散機能と横漏れ防止機能(換言すれば幅方向の拡散抑止機能)の両方を発揮しうるものではなかった。
【0011】
そこで、本発明の主たる課題は、拡散性に顕著な方向性をもたせる、すなわちある方向に沿って体液の拡散を助長しながらも別の方向に沿っては拡散を防止または抑制できるようにすることにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
身体の肌に面する側に設けられた透液性表面層、身体の肌から遠ざかる側に設けられた防漏層、およびこれらの間に設けられた体液吸収保持層を備えており、
高吸収性ポリマーを含みかつ体液を吸収保持すると難透液性または不透液性となる難拡散吸収体が、物品長手方向に沿い且つ物品幅方向に間隔を置いて、前記体液吸収保持層内における物品幅方向の両端部および物品幅方向の中間部のそれぞれに設けられている、体液を吸収保持する体液吸収性物品であって、
前記難拡散吸収体は、少なくとも一部が体液透過性とされた細長形状の密閉袋体と、その内部に移動可能なように封入された高吸収性ポリマーとからなる細長形状のものであり、
前記袋体は長手方向に複数の隔室に区画されており、各隔室内に前記高吸収性ポリマーが封入されており、前記高吸収性ポリマーの膨潤に伴って、前記隔室相互の区画部分が解除されて隣接隔室相互が一体となるとともに、各隔室の高吸収性ポリマー相互も一体をなして膨潤し、一体となった隔室内全体にわたり連続的なゲルブロッキングが発生するように構成されている、
ことを特徴とする体液吸収性物品。
【0013】
(作用効果)
この種の吸収性物品において、従来からゲルブロッキングといわれる現象が知られている。この現象は、吸収体に含まれる高吸収性ポリマーが体液吸収により膨潤したとき、高吸収性ポリマー相互の密着が主要因となって、吸収体が難透液性または不透液性になり、吸収体内における体液の拡散が阻害されるというものであり、従来から体液の拡散性を阻害するものとされてきた。本発明はこれを逆手にとったものであり、体液の吸収によりゲルブロッキング状態となる吸収体を敢えて設けることにより、その周方向に沿って体液の拡散を助長・促進させながらも、横断方向においては体液の流通を堰き止めて拡散の防止または抑制が可能となるところにポイントを有するものである。
特に、密閉袋体内に高吸収性ポリマーを所定量以上封入することにより、ポリマーの膨潤可能体積が袋体容積によって制限されるため、容易にゲルブロッキングを発生させることができる。
また、特に、袋体に対して長手方向に複数の隔室を設け、各隔室内に高吸収性ポリマーを封入すると、高吸収性ポリマーは隔室内に拘束される。よって、高吸収性ポリマーを袋体内の全体に偏り無く均一に分布させることができる。しかも、高吸収性ポリマーが体液を吸収して膨潤したときには、区画の解除により隣接隔室相互が一体となるため、各隔室の高吸収性ポリマー相互も一体をなして膨潤し、一体となった隔室内全体にわたり連続的なゲルブロッキングが発生し、体液吸収部分全体が連続的な堰を形成するようになる。
【0014】
【0015】
そして、一般的な体液吸収性物品は、身体の肌に面する側に設けられた透液性表面層、身体の肌から遠ざかる側に設けられた防漏層、およびこれらの間に設けられた体液吸収保持層を備えている。かかる場合に、吸収保持層内に本発明の難拡散吸収体を設けることにより、吸収保持層内において難拡散吸収体の周方向に沿って体液の拡散を助長・促進させながらも、横断方向には体液拡散の防止または抑制ができるようになる。
また、本項記載のように難拡散吸収体を配置することによって、物品長手方向の体液拡散性を助長促進させて吸収体の有効利用面積を拡大させつつ、幅方向の体液拡散性を抑制していわゆる横漏れを防止できるようになる。
【0016】
【0017】
【0018】
<請求項2記載の発明>
前記難拡散吸収体と、体液を吸収しても前記難拡散吸収体よりも優れた透液性を示す可拡散吸収体との両者が設けられている、請求項1記載の体液吸収性物品。
【0019】
(作用効果)
本項記載の発明は、従来一般的に使用されてきた体液拡散性を有する可拡散吸収体と、これとは拡散機能の異なる本発明の難拡散吸収体とを併用したものである。かくして、体液を吸収するに際し、可拡散吸収体により体液拡散を伴いながら吸収保持させる一方で、その拡散方向を難拡散吸収体に沿う方向に抑制することができるようになる。このことは、例えば難拡散吸収体を物品の長手方向に沿って設けることにより、長手方向の体液拡散性を助長促進させて吸収体の有効利用面積を拡大させつつ、幅方向の体液拡散性を抑制していわゆる横漏れを防止できるといった、従来不可能であった機能を可能にできることを意味する。
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
<請求項3記載の発明>
前記難拡散吸収体が、物品の長手方向両端部の少なくとも一方に、物品幅方向に沿って設けられている、請求項1記載の体液吸収性物品。
【0025】
(作用効果)
かかる構成を採ることによって、物品長手方向の体液拡散が物品端部において抑制されるため、いわゆる背漏れや腹漏れを防止できるようになる。
【0026】
【0027】
【0028】
<請求項4記載の発明>
袋体の容積をVとし、その内部に封入される高吸収性ポリマーの重量をWとし、高吸収性ポリマーの生理食塩水飽和吸収時の密度をk=1とし、高吸収性ポリマーの生理食塩水飽和吸収時の膨潤倍率をBとしたとき、前記難拡散吸収体が下記式(1)で定まる重量Wの110〜120%の重さの高吸収性ポリマーを含むように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の体液吸収性物品。
W=k×V/B ・・・(1)
【0029】
(作用効果)
高吸収性ポリマーは、袋体の容積(区画部分を除いた隔室容積を意味する)に対し少なくともかかる範囲の量を封入するのが望ましい。これによって、高吸収性ポリマーがその膨張により袋体内に比較的に密に充填された状態となるため、確実にゲルブロッキングを発生させることができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しつつ詳説する。
前述のように、本発明は使い捨ての紙おむつ、生理用ナプキンなどの体液吸収性物品一般に適用されるが、おむつ使用時(装着時)に背側の左右両側部を腹側の左右両側部に持ち込み、これらをテープファスナー(粘着剤テープファスナー及び面ファスナーを含む)により接合するタイプのいわゆるテープ式紙おむつに対する適用例を説明すれば、パンツ型使い捨ておむつやパッド型使い捨て吸収性物品での実施の形態や、生理用ナプキンでの実施の形態も直ちに推測できると思われるので、後二者の例についてはその説明を省略する。
【0031】
(使い捨ておむつの基本構造例)
図1及び図2は、本発明に係る使い捨ておむつ例を示している。このものでは、現在広く採用されている基本構造、すなわち身体の肌に面する側に設けられた液透過性の不織布、あるいは孔開きフィルムなどからなり、着用者の肌に直接触れる長方形の表面層2、身体の肌から遠ざかる側に設けられたポリエチレンプラスチックフィルムなどからなる長方形の不透液性バックシートなどからなる防漏層3、および両者の間に設けられた体液吸収保持層1を有する構造が採用されている。
【0032】
最近では、防漏層3の裏面側に、1枚の不織布または複数枚の通気・撥水性の不織布を積層固定したものからなる可撓性の外装シートを積層固定し、製品の表面を形成することが多く、本発明でもこれを採用することができる。
【0033】
また図示のように、製品の両側部には、使用面側に突出する脚周り起立カフスC,Cをそれぞれ形成することもできる。起立カフスCは、実質的に幅方向に連続した起立シート8と、たとえば糸ゴムからなる一本のまたは複数本の伸縮部材9とにより形成できる。図示例の起立カフスCでは、起立シート8の固定部を製品両側部の使用面側(内側)にホットメルト接着剤などにより固着し、自由部分は固定部の幅方向中央側を起立始端として折り返すとともに、その先端部を二重に折り返し、この先端折り返し部間に糸ゴム等の伸縮部材9を包みホットメルト接着剤などにより固着している。一方、二重の起立シート8の長手方向前後端部は、ホットメルト接着剤などにより、自由部分がその先端を物品の中央側に向かう状態で物品に、具体的には表面層2外面に固定されている。かくして、伸縮部材9の収縮作用により起立カフスC,Cが製品両側部において使用面側に突出する。左右の起立カフスC,Cで囲まれる空間は、尿または軟便の閉じ込め空間を形成する。この空間内に排尿されると、その尿は透液性表面層2を通って体液吸収保持層1内に吸収されるとともに、軟便の固形分については、起立カフスCがバリヤーとなり、その乗り越えが防止される。
【0034】
各起立カフスC,Cを形成する起立シート8は、透液性でなく不透液性もしくは疎水性であるのが望ましい。さらに、通気もしくは蒸気透過性を有しているのが望ましい。起立シート8の間に不透液性フィルムシートを挟み込み、さらに防漏性を高めることができる。
【0035】
図示例では、起立カフスC,Cの外側には、糸ゴム等の伸縮部材10が長手方向に沿って伸張下に固定されており、その収縮作用によって脚周りのフィット性が向上するようになっている。また、背側の左右両側部にはテープファスナー11が設けられており、これを腹側の左右両側部に持ち込み、接合することにより身体への装着が可能となっている。
【0036】
なお、図示しないが、テープ式紙おむつの分野において公知の機能を発揮させる他の構成も採ることができる。また、他の種類の体液吸収性物品への適用に際しては、当該分野において公知の機能を発揮させるための構成を採ることができる。例えばパンツタイプ使い捨ておむつへの適用に際し、ウエスト周りのフィット性を高めるために、前身頃及び後身頃の長手方向端部にウエスト開口部の端縁に平行に間隔を置いて細い糸ゴムからなるウエスト伸縮部材を配置したりすることができる。
【0037】
<本発明のポイントとなる構成>
さて、本発明では上述のような体液吸収性物品に対して、高吸収性ポリマーを含みかつ体液を吸収保持すると難透液性または不透液性となる難拡散吸収体4,4…を設ける。すなわち、透液性表面層2、防漏層3および体液吸収保持層1を備えた体液吸収性物品において、難拡散吸収体4,4…を図示のように吸収保持層1内に設ける。特に図示のように、体液を吸収しても難拡散吸収体4よりも優れた透液性を示す可拡散吸収体5を、吸収保持層1全体にわたり設けるとともに、その内部の所望の位置に難拡散吸収体4,4…を設けるのが好ましい。
【0038】
難拡散吸収体4としては、例えば図4及び図5に示すように、少なくとも一部が体液透過性とされた細長形状の密閉袋体Bと、その内部に封入された高吸収性ポリマーPとからなる細長形状のものを使用する。密閉袋体Bは、図示のように、帯状の体液透過性シートを幅方向に折り返して二重にし、端縁部相互をヒートシール等により固着することにより形成できる。この固着部がB1で示されている。二枚の帯状シートの周縁部相互を固着して袋状となしても良い(図示せず)。なおこの場合における端部相互の固着部B1は、高吸収性ポリマーPの膨張力を受けても解離しない程度の接着力を有するものとする。
【0039】
また本発明における密閉袋体Bは少なくとも一部が体液透過性であり、内部の高吸収性ポリマーPに体液が供給されるものであれば良く、例えば体液供給効率を重視するときには袋体Bの体液受入側面の一部または全部については体液透過性シートにより形成し、その反対側面の一部または全部については非体液透過性シートまたは難体液透過性シートにより形成することができる。反対に、体液供給効率を低下させる場合には、袋体Bの身体側を非−若しくは難−体液透過性とし、側部や裏面側(身体側と反対側)を体液透過性とすることもできる。
【0040】
この袋体Bに用いる体液透過性シートとしては、特に端縁部を接合することを考慮すると、坪量15〜20g/m2程度の繊維集合体シート、より具体的には熱可塑性合成繊維を含む坪量15〜20g/m2程度の液透過性親水性不織布(公知の、スパンボンド不織布、カードウエブを接着した不織布、メルトブローン不織布、それらの混成不織布等)や、合成パルプ(三井石油化学社製のSWPなど)を含む坪量15〜20g/m2程度のティッシュペーパーなどが好ましく使用できる。かかる坪量の繊維集合体シートを用いることにより、体液透過性が良好となるとともに、ポリマーPの膨張力に耐えてその膨張体積を抑制でき、かつコストも低く抑えることができる。
【0041】
かかる袋体Bに対して封入される高吸収性ポリマーPとしては、この種の吸収性物品において用いられる、自重のたとえば10〜20倍以上の体液を吸収して保持するものを使用できる。この例として、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系などのものがあり、でんぷん−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体などを挙げることができる。高吸収性ポリマーPの吸収特性としては10秒間で10倍以上吸収し膨潤するものが望ましい。また特にゲルブロッキングとすることによる体液透過性の低減作用を高めるためには、膨張力の強い高吸収性ポリマーPが好ましい。高吸収性ポリマーPは袋体B内面に接着(粘着)させておくこともできる。ポリマーPの形態としては図示のような粒子状のものの他、繊維状のものも用いることができる。
【0042】
また本発明では、ゲルブロッキング状態とすることによる体液拡散抑制機能を発揮しうる限りにおいて高吸収性ポリマーPに加えて、例えばこの種の吸収性物品の吸収材料として良く知られたフラッフパルプのほか、公知の添加剤・機能付与剤を加えることができる。
【0043】
さらに袋体Bに高吸収性ポリマーPを封入した場合において、ゲルブロッキング状態とすることによる体液拡散抑制機能を確実に発揮させるためには、ポリマー使用量(重量)を下記式(1)で定まる重量Wの110〜120%とする。
W=k×V/B ・・・(1)
ただし、
V:袋体の容積(区画部分を除いた隔室容積を意味する)、
W:袋体内部に封入される高吸収性ポリマーの重量、
k=1:高吸収性ポリマーの生理食塩水飽和吸収時の密度、
B:高吸収性ポリマーの生理食塩水飽和吸収時の膨潤倍率。
【0044】
他方、高吸収性ポリマーPが移動可能なように袋体B内に封入されている場合、袋体Bの容積が大きくなると(例えば袋体の幅または長さが3cmを超えると)、ゲルブロッキングを起こすほどに高吸収性ポリマーPを使用したとしても、体液未吸収時には袋体B内においてポリマーPが偏在してしまう可能性が高くなる。これを解決するために、複数の隔室r,r…を有するように袋体を区画するとともに、区画B2,B2…が高吸収性ポリマーPの膨潤に伴って解除されるように構成する。
【0045】
この場合、区画B2,B2…を体液との接触により解除される構成とするか、体液と接触しただけでは解除されないがポリマーの膨張力によって解除される構成とするか、あるいは両機能により解除される構成とすることができる。前者の区画B2は、袋体Bの内面相互を体液解離性接着剤を用いて接着することにより形成できる。体液解離性接着剤としては、ポリビニルアルコール、ポリアルキレンオキサイドなどを主成分とする水分散型ホットメルト接着剤や、でんぷんのり、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性ホットメルト接着剤を用いることができる。なお、本発明の用語「体液解離性接着剤」における「接着」とは一般的な意味での接着固定と粘着固定の両方を含むものである。後者の区画B2,B2…は、ポリマーPの膨張力によって剥離する程度の接着力で、袋体Bの内面相互を接着(粘着含む)することにより形成できる。
【0046】
このように構成することによって、体液未吸収時において、高吸収性ポリマーPを各隔室r内に拘束できるため、高吸収性ポリマーPを袋体B内の全体に偏り無く均一に分布させることができる一方で、高吸収性ポリマーPが体液を吸収して膨潤したときには、区画B2の解除により隣接隔室r,r相互が一体となるため、隔室rの異なる高吸収性ポリマーP相互も一体的に膨潤し、連続的な堰を形成することができる。
【0047】
【0048】
かくして形成される難拡散吸収体4は、本発明では、図1に示されるように、物品長手方向に沿い且つ物品幅方向に間隔を置いて、体液吸収保持層1内における物品幅方向の両端部および物品幅方向の中間部のそれぞれに設けられる。特に少なくとも吸収機能を付与する領域の両側部に、当該領域の長手方向全体にわたるように難拡散吸収体4をそれぞれ設けるのが好ましい。幅方向拡散作用を更に低減するためには、図示のように更に難拡散吸収体4の列数を増加させることができる。
【0049】
難拡散吸収体4は、好適には図示のように防漏層3に対して液密に接合する(液体が接合部分を横断通過しないように接合する)。この接合は、体液を通さず且つ液体により溶解しないホットメルト接着剤等を用いて形成できる。図2中にはこの接合部を符号6として示してある。かくして、難拡散吸収体4と防漏層3との間を通じての体液流通を防ぐことができる。よって、この作用効果を奏するのであれば、難拡散吸収体4は防漏層3に対して図示例のように直接接合しても良いし、他の部材を介して間接的に接合しても良い。またこの接合範囲は、難拡散吸収体4により拡散を抑制または防止を望む部位全体にわたり、連続線状または連続面状に接合するのが望ましいが、間欠的に接合することもできる。
【0050】
他方、本実施形態のように難拡散吸収体4と可拡散吸収体5とを併用する場合、可拡散吸収体5としては、本物品の技術分野で公知のもの、例えば従来から良く使用されているフラッフパルプと高吸収性ポリマーとの混合物、またはこれらの各々を層状に積層してなる層状体を採用できる。
【0051】
かくして構成された製品において、図3に示すように、吸収体4,5と対応する位置に体液の排泄があると、体液は表面層2を通過し、吸収保持層1に到達する。吸収保持層1の下側には体液不透過性の防漏層3が存在するため、体液は吸収保持層1内において拡散される。そしてこの吸収保持層1内の体液は、可拡散吸収体5により体液拡散を伴いながら吸収保持されるとともに、難拡散吸収体4によっても吸収される。この際、難拡散吸収体4内では高吸収性ポリマーPが袋体Bの容積の制限内で膨張し、これに伴い袋体Bも膨張して堰状をなし、しかもその内部では主にポリマー相互の密着により体液の拡散が抑制される状態が発生する。よって、難拡散吸収体4の延在方向と直行する横断方向への体液の拡散が防止され、その分だけ難拡散吸収体4の延在方向に沿っての体液の拡散が助長される。したがって、本実施形態の場合、製品長手方向の体液拡散性が助長促進されて吸収体4,5の有効利用面積が拡大されるとともに、幅方向の体液拡散性が抑制されいわゆる横漏れが防止されるようになる。
【0052】
特に、内部に高吸収性ポリマーPが封入された複数の隔室r,r…を有する難拡散吸収体4は、体液を吸収していない状態では、高吸収性ポリマーPは隔室r,r…内に拘束される。よって、高吸収性ポリマーPを袋体B内の全体に偏り無く均一に分布させることができる。しかも、高吸収性ポリマーPが体液を吸収して膨潤したときには、その膨張力や接着剤の溶解によって区画部分B2のシート相互が解離し、隣接隔室相互r,rが一体となるため、各隔室rの高吸収性ポリマーP相互も一体をなして膨潤し、一体となった隔室r内全体にわたりゲルブロッキングが発生する。よって、体液吸収部分全体が連続的な堰を形成するようになる。
【0053】
さらに図示形態のように難拡散吸収体4が防漏層3に対して液密に接合されていると、難拡散吸収体4と防漏層3との間を通じての体液流通を防ぐことができ、もって難拡散吸収体4に沿う拡散助長作用および横断方向の拡散抑制作用を更に向上させることができる。
【0054】
<平面配置形態の例>
本発明に含まれる、難拡散吸収体4の平面形態(物品を平面状態としたときの平面配置形態)を多数例示すると、図6〜図8に示すようになる。もちろん、本発明の範囲内において他の形態をとることもできる。
【0055】
(線状配置形態)
図6は、難拡散吸収体4を線状に配置する形態の例である。同図(a)は、前述した図1〜5に示す形態であり、難拡散吸収体4を製品長手方向に沿って四列直線状に配置したものである。また、同図(b)に示すように難拡散吸収体4,4…の長さを短くして、排泄予定領域のみに集中的に設けることもできる。また、同図(c)に示すように、中間の難拡散吸収体4,4の長さを両側部4,4のものより短くしても、難拡散吸収体4,4…を排泄予定領域に集中させることができる。このように本発明では、難拡散吸収体4,4…を複数設ける場合にはサイズを異ならしめることができる。この場合、排泄予定領域においても他の部位(製品長手方向両端部)においても、幅方向拡散抑制作用が奏せられるが、前者の部位のほうがより抑制作用が強くなる。
【0056】
難拡散吸収体4は、上述のように直線状に配置することのほか、同図(d)に示すようにジグザグ状に配置したり、同図(e)に示すように波状に配置したりすることもできる。
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
(交差配置形態)
難拡散吸収体4は、図7(f)に示すように交差する形態で配置しても良い。この場合、複数本の細長状の難拡散吸収体4,4…を重ねる、編む等しても良いが、一体的な吸収体として形成しても良い。具体的な難拡散吸収体4の配置としては、図7(f)に示すように碁盤目状に配置しても良いし、図示しないがハニカム状等に配置しても良い。編んでも良いし、一体的に袋体を形成しても良い。
【0061】
(組み合わせ配置形態)
図8は、上記の各平面配置形態を適宜選択して組み合わせたり、各形態に含まれる部分的な形状を他の形態に組み入れたりすることができる。図8(g)は、図6(a)の基本形態に対して、中間の一対の難拡散吸収体4,4を背側に延在させ、その端部相互を接続し、幅方向中央にコ字状取り囲み形態の難拡散吸収体4,4を形成したものである。また、図8(h)は吸収拡散予定部分を取り囲む環状難拡散吸収体4,4…の内側に長手方向に沿って線状の難拡散吸収体4,4を設けたものである。図8(i)は、図6(a)に示す製品長手方向に沿う難拡散吸収体4,4…を有する基本形態に対して、その製品長手方向両脇に製品幅方向に沿う線状難拡散吸収体4,4をそれぞれ設けたものである。
【0062】
(難拡散吸収体の連続性)
図6〜図8中の難拡散吸収体4が連続する部分は、複数の難拡散吸収体により構成しても良い。この場合、難拡散吸収体相互を接続し連続性が保たれるようにするのが望ましい。
【0063】
【0064】
【0065】
<その他>
(イ)本発明においては、可拡散吸収体を設けずに、難拡散吸収体のみを設けることもできる。
【0066】
【0067】
【0068】
(ロ)本発明が対象とする体液吸収性物品としては、生理用ナプキン、失禁者用おむつ、ベビー用おむつ、成人用おむつなどを挙げることができる。形態としては、パッドタイプ、テープ止着タイプ、パンツタイプのものを挙げることができる。
【0069】
【発明の効果】
以上のとおり本発明によれば、ある方向に沿って体液の拡散を助長しながらも別の方向に沿っては拡散を防止または抑制できる等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る使い捨て紙おむつ例の展開状態平面図である。
【図2】 図1のII-II断面図である。
【図3】 体液吸収状態における図1のII-II断面図である。
【図4】 本発明に係る難拡散吸収体例の平面図である。
【図5】 図4のV-V断面図である。
【図6】 難拡散吸収体の各種配置例を示す図である。
【図7】 難拡散吸収体の各種配置例を示す図である。
【図8】 難拡散吸収体の各種配置例を示す図である。
【符号の説明】
1…吸収保持層、2…表面層、3…防漏層、4…難拡散吸収体、5…可拡散吸収体、B…袋体、P…高吸収性ポリマー。
Claims (4)
- 身体の肌に面する側に設けられた透液性表面層、身体の肌から遠ざかる側に設けられた防漏層、およびこれらの間に設けられた体液吸収保持層を備えており、
高吸収性ポリマーを含みかつ体液を吸収保持すると難透液性または不透液性となる難拡散吸収体が、物品長手方向に沿い且つ物品幅方向に間隔を置いて、前記体液吸収保持層内における物品幅方向の両端部および物品幅方向の中間部のそれぞれに設けられている、体液を吸収保持する体液吸収性物品であって、
前記難拡散吸収体は、少なくとも一部が体液透過性とされた細長形状の密閉袋体と、その内部に移動可能なように封入された高吸収性ポリマーとからなる細長形状のものであり、
前記袋体は長手方向に複数の隔室に区画されており、各隔室内に前記高吸収性ポリマーが封入されており、前記高吸収性ポリマーの膨潤に伴って、前記隔室相互の区画部分が解除されて隣接隔室相互が一体となるとともに、各隔室の高吸収性ポリマー相互も一体をなして膨潤し、一体となった隔室内全体にわたり連続的なゲルブロッキングが発生するように構成されている、
ことを特徴とする体液吸収性物品。 - 前記難拡散吸収体と、体液を吸収しても前記難拡散吸収体よりも優れた透液性を示す可拡散吸収体との両者が設けられている、請求項1記載の体液吸収性物品。
- 前記難拡散吸収体が、物品の長手方向両端部の少なくとも一方に、物品幅方向に沿って設けられている、請求項1記載の体液吸収性物品。
- 袋体の容積をVとし、その内部に封入される高吸収性ポリマーの重量をWとし、高吸収性ポリマーの生理食塩水飽和吸収時の密度をk=1とし、高吸収性ポリマーの生理食塩水飽和吸収時の膨潤倍率をBとしたとき、前記難拡散吸収体が下記式(1)で定まる重量Wの110〜120%の重さの高吸収性ポリマーを含むように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の体液吸収性物品。
W=k×V/B ・・・(1)
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