JP5652757B2 - 1−メチレンインダン重合体及びその製造方法、ブロック共重合体及びその製造方法、並びに、光学フィルム。 - Google Patents

1−メチレンインダン重合体及びその製造方法、ブロック共重合体及びその製造方法、並びに、光学フィルム。 Download PDF

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本発明は、1−メチレンインダン重合体及びその製造方法、ブロック共重合体及びその製造方法、並びに、光学フィルムに関する。
非特許文献1には、1−メチレンインダンの重合方法として、重合開始剤としてトリフルオロボラン・ジエチルエーテル(BFOEt)を用いたカチオン重合反応、重合開始剤としてn−ブチルリチウム(n−BuLi)を用いたアニオン重合反応、及び、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を用いたラジカル重合反応が記載されている。
Journal of Plymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol. 29, 1779−1787(1991)
しかしながら、非特許文献1記載の重合方法で得られた重合体は、いずれも分子量分布(Mw/Mn)が1.9以上と広いものであった。
そこで本発明は、分子量分布が狭い1−メチレンインダン重合体を提供することを目的とする。また本発明は、1−メチレンインダン重合体の新規な製造方法を提供することを目的とする。さらに本発明は、1−メチレンインダン重合鎖を含有する新規なブロック共重合体、及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、下記式(1)で表される繰り返し単位からなり、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比Mw/Mnが1.5以下である、1−メチレンインダン重合体を提供する。
Figure 0005652757
本発明に係る1−メチレンインダン重合体は、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比Mw/Mnで表される分子量分布が狭いため、非特許文献1に記載の重合方法により得られる1−メチレンインダン重合体と比較して、光学特性に優れ、光学材料として好適に用いることができる。具体的には、例えば、本発明に係る1−メチレンインダン重合体を含有する組成物を成膜してなるフィルムは、光学特性としてネガティブA性を有するものとなる。なお、ここでいうネガティブA性とは、フィルムを一軸延伸した際に発生する屈折率変化から求められ、延伸方向の屈折率が延伸方向に対して垂直方向の屈折率より小さくなる性質をいう。
本発明はまた、下記式(1)で表される繰り返し単位からなる重合鎖と、アニオン重合性モノマー由来の繰り返し単位からなる重合鎖とを有する、ブロック共重合体を提供する。本発明に係るブロック共重合体は、式(1)で表される繰り返し単位からなる重合鎖を含有しているため、優れた光学特性を有し、光学材料として好適に用いることができる。
Figure 0005652757
本発明はまた、sec−ブチルリチウム、リチウムナフタレン及びカリウムナフタレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合開始剤を用いて、1−メチレンインダンを重合する工程を備える、1−メチレンインダン重合体の製造方法を提供する。このような製造方法によれば、1−メチレンインダンのリビングアニオン重合が進行し、分子量分布が狭い1−メチレンインダン重合体を得ることができる。
本発明はまた、sec−ブチルリチウム、リチウムナフタレン及びカリウムナフタレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合開始剤を用いて、1−メチレンインダンを重合して重合鎖を得る第一工程と、上記重合鎖の少なくとも一方の末端に、さらにアニオン重合性モノマーを重合させる第二工程と、を備える、ブロック共重合体の製造方法を提供する。
本発明に係るブロック共重合体の製造方法によれば、第一工程において1−メチレンインダンのリビングアニオン重合が進行すると考えられる。そのため、形成された重合鎖は少なくとも一方の末端に活性部位を有するものとなる。そして、第二工程においては、当該重合鎖の末端の活性部位を始点として、アニオン重合性モノマーをさらに重合させることができる。
本発明に係るブロック共重合体の製造方法における上記重合鎖は、1−メチレンインダンのリビングアニオン重合により形成される。そのため、当該重合鎖は、分子量分布が狭いものとなる。また、本発明に係る製造方法によれば、第一工程及び第二工程における重合がリビングアニオン重合であると考えられ、分子量分布が狭いブロック共重合体を得ることができる。
本発明はさらに、上記1−メチレンインダン重合体を含有する組成物を成膜してなる、光学フィルムを提供する。本発明に係る光学フィルムは、上記1−メチレンインダン重合体を含有するため、光学特性としてネガティブA性を有する。
本発明によれば、分子量分布が狭い1−メチレンインダン重合体を提供することができる。また、本発明によれば、1−メチレンインダン重合体の新規製造方法を提供することができる。さらに本発明によれば、1−メチレンインダン重合鎖を含有する新規なブロック共重合体、及びその製造方法を提供することができる。
実施例1で得られた1−メチレンインダン重合体のHNMRスペクトルを示す図である。 実施例1で得られた1−メチレンインダン重合体の13CNMRスペクトルを示す図である。 実施例6で得られたブロック共重合体のHNMRスペクトルを示す図である。
以下、本発明の好適な一実施形態について説明する。
本実施形態に係る1−メチレンインダン重合体は、下記式(1)で表される繰り返し単位からなる重合体である。
Figure 0005652757
本実施形態に係る1−メチレンインダン重合体は、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比Mw/Mnが1.5以下であり、1.3以下であることが好ましく、1.2以下であることがより好ましい。比Mw/Mnは、分子量分布を表し、比Mw/Mnが小さいことは分子量分布が狭いことを示す。
本実施形態に係る1−メチレンインダン重合体は、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比Mw/Mnで表される分子量分布が狭いため、非特許文献1に記載の重合方法により得られる1−メチレンインダン重合体と比較して、光学特性に優れ、光学材料として好適に用いることができる。具体的には、例えば、1−メチレンインダン重合体を含有する組成物を成膜してなるフィルムは、光学特性としてネガティブA性を有するものとなる。なお、ここでいうネガティブA性とは、フィルムを一軸延伸した際に発生する屈折率変化から求められ、延伸方向の屈折率が延伸方向に対して垂直方向の屈折率より小さくなる性質をいう。
なお、本実施形態に係る1−メチレンインダン重合体は、末端のいずれか一方に重合開始剤由来の部分構造を有していてもよい。また、末端のいずれか一方または両末端に重合停止剤由来の部分構造を有していてもよい。
本実施形態に係る1−メチレンインダン重合体の重量平均分子量Mwは、5000以上であることが好ましく、10000以上であることがより好ましく、30000以上であることがさらに好ましい。また、数平均分子量Mnは、5000以上であることが好ましく、10000以上であることがより好ましく、30000以上であることがさらに好ましい。1−メチレンインダン重合体の平均分子量が上記下限値より大きいと、成型性が良好となる点で好ましい。
また、本実施形態に係る1−メチレンインダン重合体の重量平均分子量Mwは、1000000以下であることが好ましく、500000以下であることがより好ましい。また、数平均分子量Mnは、1000000以下であることが好ましく、500000以下であることがより好ましい。1−メチレンインダン重合体の平均分子量が上記上限値より小さいと、溶剤への溶解性が良好となる点で好ましい。
本実施形態において、重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、RALLS−GPC法(Right Angle Laser Light Scattering GPC)により測定された値を示す。なお、上記以外の方法で測定された重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn、分子量分布(Mw/Mn)が、上記数値範囲外であっても、上記の方法で測定された値が上記数値範囲内であればよい。なお、RALLS−GPC法としては、実施例に記載の方法が好適である。
本実施形態に係る1−メチレンインダン重合体は、上述のように光学材料として好適に用いることができる。具体的には、例えば、1−メチレンインダン重合体を含有する組成物を成膜して、光学フィルムとすることができる。
上記組成物は、1−メチレンインダン重合体以外に、スチレン系重合体、ビニルピリジン系重合体、エチレンオキシド系重合体、ε−カプロラクトン系重合体、ポリジメチルシロキサン系重合体、ブタジエン系重合体、イソプレン系重合体、アクリレート系重合体、メタクリレート系重合体等を含有していてもよい。
上記組成物の成膜方法としては、キャスト法、熱プレス法等が挙げられる。
上記光学フィルムは、本実施形態に係る1−メチレンインダン重合体を含有するため、光学特性としてネガティブA性を有する。そのため、上記光学フィルムは、液晶ディスプレイ用位相差フィルム等の用途に用いることができる。
本実施形態に係る1−メチレンインダン重合体は、例えば、以下に示す製造方法により得ることができる。
本実施形態に係る1−メチレンインダン重合体の製造方法は、sec−ブチルリチウム、リチウムナフタレン及びカリウムナフタレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合開始剤を用いて、1−メチレンインダンを重合する工程を備える。本実施形態に係る製造方法では、1−メチレンインダンのリビングアニオン重合が進行すると考えられる。そして本実施形態に係る製造方法によれば、分子量分布が狭い1−メチレンインダン重合体が得られる。
本実施形態に係る製造方法は、高真空下、又は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことができ、このような条件下とするための公知の方法を適用して行うことができる。例えば、10〜1mmHgの高真空下又は不活性ガス雰囲気下、ブレークシール法を用いて1−メチレンインダンを重合することにより、1−メチレンインダン重合体を製造することができる。なお、ブレークシール法を適用するにあたり、本発明では、反応容器を全てガラスで溶接し、高真空下或いは不活性ガス下で反応させた。
より具体的には、重合開始剤及び第一の溶媒を含有する第一の溶液と、1−メチレンインダン及び第二の溶媒を含有する第二の溶液とを混合することにより、1−メチレンインダンの重合を行うことができる。上記混合は、第二の溶液を第一の溶液に添加することにより行うことが好ましい。
第二の溶液を第一の溶液に添加する際、第一の溶液の温度は、例えば、−90〜0℃とすることができ、−78〜−40℃とすることもできる。また、第二の溶液を第一の溶液に添加したのち、例えば、−90〜0℃で重合することができ、−78〜−40℃で重合することもできる。重合の温度を上記範囲内とすることで、得られる重合体の分子量分布が容易に制御され、分子量分布が一層狭い1−メチレンインダン重合体を得ることができる。
第一の溶媒としては、n−ヘプタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられ、これらは1種を単独で、又は複数を混合して用いることができる。また第一の溶液中、重合開始剤の濃度は、例えば、0.01〜20質量%とすることができ、0.01〜15質量%とすることもできる。
第二の溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル等が挙げられ、これらは1種を単独で、又は複数を混合して用いることができる。また第二の溶液中、1−メチレンインダンの濃度は、例えば0.1〜70質量%とすることができ、5〜50質量%とすることもできる。
1−メチレンインダンの使用量A(モル)と重合開始剤の使用量B(モル)の比A/Bは、例えば、1〜10000とすることができる。また、1〜500としてもよい。
第一の溶液と第二の溶液とを混合することにより、1−メチレンインダンのリビングアニオン重合が進行し、上記式(1)で表される繰り返し単位からなる重合鎖(以下、場合により「1−メチレンインダン重合鎖」と称する。)を含有する第三の溶液が得られる。
リビングアニオン重合により生じる1−メチレンインダン重合鎖は、少なくとも一方の末端に、活性部位としてカルボアニオンを有すると考えられる。そのため、例えば、第三の溶液と重合停止剤とを混合することにより、上記式(1)で表される繰り返し単位からなる1−メチレンインダン重合体が得られる。なお、重合停止剤としては、プロトン性溶媒、エポキシド化合物、カルボニル化合物、サルトン化合物等が挙げられる。プロトン性溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール類;水;塩酸、酢酸等の酸を含有する溶液;等が挙げられる。エポキシド化合物としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等が挙げられる。カルボニル化合物としては、C=O結合を有している化合物であればよく、二酸化炭素、アセトン、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。サルトン化合物としては、プロパンサルトン等が挙げられる。
また、例えば、第三の溶液と、アニオン重合性モノマーを含有する第四の溶液とを混合することにより、1−メチレンインダン重合鎖の末端の活性部位を始点として、アニオン重合性モノマーを重合することができる。これにより、上記式(1)で表される繰り返し単位からなる重合鎖と、アニオン重合性モノマー由来の繰り返し単位からなる重合鎖とを有する、ブロック共重合体を得ることができる。
本実施形態にかかるブロック共重合体の製造方法は、sec−ブチルリチウム、リチウムナフタレン及びカリウムナフタレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合開始剤を用いて、1−メチレンインダンを重合して重合鎖を得る第一工程と、上記重合鎖の少なくとも一方の末端に、さらにアニオン重合性モノマーを重合させる第二工程と、を備える。
上記第一工程においては、上述の方法と同様にして1−メチレンインダン重合鎖を得ることができる。第一工程によれば、上記の重合開始剤を用いることにより、分子量分布が狭い1−メチレンインダン重合鎖が得られる。
上記第二工程は、第一の工程で得た1−メチレンインダン重合鎖とアニオン重合性モノマーとを混合することにより行うことができる。ここで、第二工程は、例えば、上述のように、第三の溶液とアニオン重合性モノマーを含有する第四の溶液とを混合することにより行うことができる。
また、第二工程において、アニオン重合性モノマーの重合は−90〜50℃で行うことができ、−78〜0℃で行うこともできる。
第二工程において使用するアニオン重合性モノマーの量C(モル)と、1−メチレンインダン重合鎖の量D(モル)との比(C/D)は、例えば、0.01〜500とすることができ、0.1〜300としてもよい。
アニオン重合性モノマーとしては、アニオン重合性基を有する化合物が挙げられる。アニオン重合性基としては、エチレン性不飽和基、開環重合性化合物に由来する基等が挙げられる。また、アニオン重合性モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、イソプレン、ブタジエン、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ビニルピリジン、エチレンオキシド、ε−カプロラクトン、ジメチルシロキサン等が挙げられる。
本実施形態に係るブロック共重合体は、例えば上記ブロック共重合体の製造方法により製造される共重合体であり、上記式(1)で表される繰り返し単位からなる重合鎖(1−メチレンインダン重合鎖)と、アニオン重合性モノマー由来の繰り返し単位からなる重合鎖(以下、場合により「アニオン重合性モノマー重合鎖」と称する。)とを有する。
本実施形態に係るブロック共重合体の重量平均分子量Mwは、10000以上であることが好ましく、20000以上であることがより好ましい。また、数平均分子量Mnは、10000以上であることが好ましく、20000以上であることがより好ましい。ブロック共重合体の平均分子量が上記下限値より大きいと、成型性が良好となる点で好ましい。
また、本実施形態に係るブロック共重合体の重量平均分子量Mwは、1000000以下であることが好ましく、500000以下であることがより好ましい。また、数平均分子量Mnは、1000000以下であることが好ましく、500000以下であることがより好ましい。ブロック共重合体の平均分子量が上記上限値より小さいと、溶剤への溶解性が良好となる点で好ましい。
また、本実施形態に係るブロック共重合体の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比Mw/Mnは、1.5以下であることが好ましく、1.3以下であることがより好ましく、1.2以下であることがより好ましい。比Mw/Mnが小さいと、光学特性がより良好となる点、及びブロック共重合体のポリマー性状(成型性等)が良好となる点で好ましい。
本実施形態に係るブロック共重合体は、例えば、下記式(2)で表される。
Figure 0005652757
式中、Rは、アニオン重合性モノマー由来の繰り返し単位を示し、nは2以上の整数を示し、mは1以上の整数を示す。nは、例えば、10〜5000とすることができる。また、mは、例えば、1〜5000とすることができる。
本実施形態に係るブロック共重合体は、式(1)で表される繰り返し単位からなる重合鎖を含有しているため、光学特性を有し、光学材料として好適に用いることができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
下記実施例、比較例で得られた重合体の物性値は、以下に示す方法により求めた。
(1)数平均分子量Mnの計算値
重合体の末端に存すると考えられる重合開始剤及び重合停止剤由来の部分構造の分子量と、モノマーの使用量(モル)と重合開始剤の使用量(モル)の比(モノマーの使用量/重合開始剤の使用量)を基に算出した重合鎖の分子量を、合計した値を、数平均分子量の計算値とした。
(2)重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn
重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnを、Right Angle Laser Light Scattering GPC(RALLS−GPC)を用いて測定した。
より具体的には、屈折率計、散乱強度計及び粘度計を検出器として有するViscotek Model 302 Triple Detector Array(旭テクネイオン(株)製)を使用し、流量は1.0ml/min、カラムオーブンを30℃に設定して測定を行った。流出溶媒にはTHFを用い、分析カラムはTOSOH G5000HXL+G4000 HXL+G3000 HXLを使用した。
(3)分子量分布
上記(2)により得られた重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比Mw/Mnを、分子量分布を示す値とした。
(4)核磁気共鳴分光法(NMR)
BLUKER製GPX(300MHz)を用い、ケミカルシフトはCDClH:7.26ppm、13C:77.1ppm)を基準として、NMRスペクトルを求めた。
(実施例1:1−メチレンインダン重合体の製造)
1−メチレンインダンのアニオン重合を、パイレックス(登録商標)製反応容器を用いてブレークシール法にて実施した。
具体的には、パイレックス(登録商標)製反応容器にブレークシールによって封じられたsec−ブチルリチウム10.6mg(0.166mmol)を含むヘプタン溶液3ml(関東化学(株)製)のアンプル、1−メチレンインダン1.02g(7.85mmol)とテトラヒドロフラン(THF)10mlを含むアンプルを溶接した。なお、1−メチレンインダンとしては、1−インダノンを原料とするWittig反応で合成し蒸留精製して得たもので、純度99.7質量%のものを用いた。その後、反応容器を高真空ライン(10−6mmHg)に接続して、高真空下で脱気とベーキングを2回繰り返し、反応容器を溶封した。次いで、sec−ブチルリチウム溶液が収容されている容器のブレークシールを割り、反応容器にsec−ブチルリチウム溶液を移したのち、−78℃に冷却した。
sec−ブチルリチウム溶液を含む反応溶液を激しく攪拌し、同じく−78℃に冷却した1−メチレンインダンとTHFを含む容器のブレークシールを割り、反応溶液に添加し、そのまま1時間反応させた。なお、1−メチレンインダンとTHFを含む溶液を加えた際、瞬時に溶液の色が薄い黄色から濃赤色に変化し、反応系の粘度の上昇が見られた。
重合終了後、反応容器を開封し、重合停止剤であるメタノール5mlを添加し、重合を停止した。
その反応溶液を200mlのメタノールに注ぎ込んだところ、白色の固体が沈殿した。その固体を桐山ロートおよび桐山ろ紙を用いた減圧ろ過によってろ別した後に、20mlのベンゼンに溶解させ、凍結乾燥を行うことで1−メチレンインダン重合体918mgを得た。ポリマー収率は仕込んだ1−メチレンインダンに対して90質量%であった。得られた1−メチレンインダン重合体について、上述の方法で構造と物性値を求めた。得られた物性値は、表1に示す通りであった。
実施例1で得られた1−メチレンインダン重合体のHNMRスペクトルを図1に、13CNMRスペクトルを図2に、それぞれ示す。
図1におけるa〜gのピーク、図2におけるa〜jのピークは、それぞれ同図に示す化学式において、同じ記号が付された水素又は炭素に帰属するものである。HNMR及び13CNMRの結果から、1−メチレンインダンの1−メチレン部位の二重構造に由来するシグナルが消失していることから、1−メチレン部位にて反応が進行して、カルド構造を有する1−メチレンインダン重合体が生成したことが確認された。
(実施例2:1−メチレンインダン重合体の製造)
sec−ブチルリチウムの使用量を5.2mg(0.0817mmol)とし、1−メチレンインダンの使用量を1.10g(8.46mmol)としたこと以外は、実施例1と同様にアニオン重合を行い、1−メチレンインダン重合体を得た。ポリマー収率は、仕込んだ1−メチレンインダンに対して100%であった。得られた1−メチレンインダン重合体について、上述の方法で構造と物性値を求めた。得られた物性値は、表1に示す通りであり、Mnの実測値は23400であった。また、分子量分布を示すMw/Mnは1.04と小さく、分子量分布の狭い1−メチレンインダン重合体が得られた。
また、実施例2で得られた1−メチレンインダン重合体について、実施例1と同条件で核磁気共鳴測定を行ったところ、図1及び図2に示すHNMRスペクトル及び13CNMRスペクトルと同様のスペクトルが得られ、1−メチレン部位にて反応が進行して、カルド構造を有する1−メチレンインダン重合体が生成したことが確認された。
(実施例3:1−メチレンインダン重合体の製造)
sec−ブチルリチウムの使用量を4.9mg(0.0761mmol)とし、1−メチレンインダンの使用量を2.00g(15.36mmol)としたこと以外は、実施例1と同様にアニオン重合を行い、1−メチレンインダン重合体を得た。ポリマー収率は、仕込んだ1−メチレンインダンに対して71%であった。得られた1−メチレンインダン重合体について、上述した方法で構造と物性値を求めた。得られた物性値は、表1に示す通りであり、Mnの実測値は129000であった。また、分子量分布を示すMw/Mnは1.04と小さく、分子量分布の狭い1−メチレンインダン重合体が得られた。
また、実施例3で得られた1−メチレンインダン重合体について、実施例1と同条件で核磁気共鳴測定を行ったところ、図1及び図2に示すHNMRスペクトル及び13CNMRスペクトルと同様のスペクトルが得られ、1−メチレン部位にて反応が進行して、カルド構造を有する1−メチレンインダン重合体が生成したことが確認された。
(実施例4:1−メチレンインダン重合体の製造)
sec−ブチルリチウムに代えてリチウムナフタレン36mg(0.267mmol)を使用し、1−メチレンインダンの使用量を1.21g(9.30mmol)としたこと以外は、実施例1と同様にアニオン重合を行い、1−メチレンインダン重合体を得た。ポリマー収率は、仕込んだ1−メチレンインダンに対して100%であった。得られた1−メチレンインダン重合体について、上述の方法で構造と物性値を求めた。得られた物性値は、表1に示す通りであり、Mnの実測値は21400であった。また、分子量分布を示すMw/Mnは1.12と小さく、分子量分布の狭い1−メチレンインダン重合体が得られた。
また、実施例4で得られた1−メチレンインダン重合体について、実施例1と同条件で核磁気共鳴測定を行ったところ、図1及び図2に示すHNMRスペクトル及び13CNMRスペクトルと同様のスペクトルが得られ、1−メチレン部位にて反応が進行して、カルド構造を有する1−メチレンインダン重合体が生成したことが確認された。
(実施例5:1−メチレンインダン重合体の製造)
sec−ブチルリチウムに代えてカリウムナフタレン19mg(0.113mmol)を使用し、1−メチレンインダンの使用量を901mg(6.92mmol)としたこと以外は、実施例1と同様にアニオン重合を行い、1−メチレンインダン重合体を得た。ポリマー収率は、仕込んだ1−メチレンインダンに対して86%であった。得られた1−メチレンインダン重合体について、上述の方法で構造と物性値を求めた。得られた物性値は、表1に示す通りであり、Mnの実測値は15800であった。また、分子量分布を示すMw/Mnは1.07と小さく、分子量分布の狭い1−メチレンインダン重合体が得られた。
また、実施例5で得られた1−メチレンインダン重合体について、実施例1と同条件で核磁気共鳴測定を行ったところ、図1及び図2に示すHNMRスペクトル及び13CNMRスペクトルと同様のスペクトルが得られ、1−メチレン部位にて反応が進行して、カルド構造を有する1−メチレンインダン重合体が生成したことが確認された。
Figure 0005652757
なお、表1中、s−BuLiはsec−ブチルリチウムを示し、LiNaphはリチウムナフタレンを示し、KNaphはカリウムナフタレンを示し、比A/Bは1−メチレンインダンの使用量A(モル)と重合開始剤の使用量B(モル)の比A/Bを示し、Mnの計算値は上記「(1)数平均分子量Mnの計算値」で得られる値を示し、MnのRALLSは上記「(2)重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn」で得られる数平均分子量Mnの値を示し、Mw/Mnは上記「(3)分子量分布」で得られる比Mw/Mnを示す。
(実施例6:ブロック共重合体の製造)
メチレンインダンとスチレンのブロック共重合は、パイレックス(登録商標)製反応容器を用いてブレークシール法にて実施した。
具体的には、パイレックス(登録商標)製反応容器にブレークシールによって封じられたsec−ブチルリチウム4.6mg(0.0724mmol)を含むヘプタン溶液1.3mlのアンプル、メチレンインダン703mg(5.40mmol)とテトラヒドロフラン(THF、ダイアケミカル(株)製)7mlを含むアンプルおよびスチレン882mg(8.47mmol、東京化成工業(株)製)とテトラヒドロフラン(THF)8mlを含むアンプルを溶接した。その後、反応容器を高真空ライン(10−6mmHg)に接続して、高真空下で脱気とベーキングを2回繰り返し、反応容器を溶封した。次いで、sec−ブチルリチウム溶液が収容されているブレークシールを割り、反応容器にsec−ブチルリチウム溶液を移したのち、−78℃に冷却した。
sec−ブチルリチウム溶液を含む反応溶液を激しく攪拌し、同じく−78℃に冷却したメチレンインダンとTHFを含むブレークシールを割り、反応溶液に添加し、そのまま2時間反応させた。なお、メチレンインダンとTHFを含む溶液を加えた際、瞬時に溶液の色が薄い黄色から濃赤色に変化し、反応系の粘度の上昇が見られた。
その後、スチレンとTHFを含むブレークシールを割り、反応溶液に添加し、そのまま30分間攪拌した。重合終了後、反応溶液を開封し、重合停止剤であるメタノール5mlを添加し、重合を停止した。
反応溶液を300mlのメタノールに注ぎ込んだところ、白色の固体が沈殿した。その固体を桐山ロートおよび桐山ろ紙を用いた減圧ろ過によってろ別した後に、30mlのベンゼンに溶解させ、凍結乾燥を行うことでブロック共重合体1.52gを得た。
ポリマー収率は、仕込んだ1−メチレンインダンとスチレンの合計量に対して96質量%であった。得られたポリマーについて、上述の方法で構造と物性値を求めた。物性値は、表2に示す通りであり、Mnの実測値は21700で計算値の21300と近い値であった。また、分子量分布を示すMw/Mnは1.08と小さく、分子量分布の狭いブロック共重合体が得られた。
実施例6で得られたブロック共重合体について、核磁気共鳴測定を行った。図3に、実施例6で得られたブロック共重合体のHNMRスペクトルを示す。該HNMRにおいては、1−メチレンインダンの1−メチレン部位の二重結合に由来するシグナル及びスチレンの側鎖オレフィンに由来するシグナルがいずれも消失していることから、1−メチレンインダンの1−メチレン部位にて反応が進行してカルド構造を有するポリマーが生成したこと、また、スチレンとの共重合体が生成していることが確認された。
Figure 0005652757
(実施例7:位相差フィルム(光学フィルム)の作製)
実施例3の条件で得られた1−メチレンインダン重合体を10wt%濃度含有するクロロベンゼン溶液を調製し、ガラス板上にキャスト法によってフィルム状に供給し、自然乾燥を24時間行った。次いで、得られたフィルムをガラス板から剥離した後、70℃の真空乾燥機で乾燥したところ、透明性の高いフィルムが得られた。
次に、得られたフィルムを、二軸延伸装置((株)柴山科学機械製作所製 SS−60型)を用いて、153℃の温度条件で、50mm/min.の引張り速度で120%(1.2倍)の一軸延伸を行い、実施例7の位相差フィルムを得た。
得られた延伸フィルムの延伸方向をY軸と定義し、且つ、Y軸と直交する方向でフィルム面内方向をX軸、Y軸と直行する方向でフィルム厚み方向をZ軸(X軸とZ軸も直行)と定義し、X軸の屈折率(n)、Y軸の屈折率(n)及びZ軸の屈折率(n)から求められるN(N=(n−n)/(n−n))の値を偏光・位相差測定装置(Axometrics社製、「AxoScan」)を用いて測定した。
その結果、N=0となった。
このことから、n=n>nの関係を満たしており、上記の延伸フィルムは良好な位相差フィルムとして機能するものであり、また、いわゆるネガティブA位相差フィルムとして機能するものであることが確認された。

Claims (5)

  1. 下記式(1)で表される繰り返し単位からなり、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比Mw/Mnが1.3以下である、1−メチレンインダン重合体。
    Figure 0005652757
  2. 下記式(1)で表される繰り返し単位からなる重合鎖と、アニオン重合性モノマー由来の繰り返し単位からなる重合鎖とを有し、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比Mw/Mnが1.3以下である、ブロック共重合体。
    Figure 0005652757
  3. 請求項1に記載の1−メチレンインダン重合体の製造方法であって、
    sec−ブチルリチウム、リチウムナフタレン及びカリウムナフタレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合開始剤を用いて、1−メチレンインダンを重合する工程を備える、1−メチレンインダン重合体の製造方法。
  4. 請求項2に記載のブロック共重合体の製造方法であって、
    sec−ブチルリチウム、リチウムナフタレン及びカリウムナフタレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の重合開始剤を用いて、1−メチレンインダンを重合して重合鎖を得る第一工程と、
    前記重合鎖の少なくとも一方の末端に、さらにアニオン重合性モノマーを重合させる第二工程と、を備える、ブロック共重合体の製造方法。
  5. 請求項1に記載の1−メチレンインダン重合体を含有する組成物を成膜してなる、光学フィルム。
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