JP5652623B2 - 車体の後部構造 - Google Patents

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本発明は、自動車の車体の後部構造に関する。
自動車の車体の後部構造として、後部の床面から荷室に亘る部位の車体剛性を確保するため、床面と荷室上部のパネル部材とを2つのブレース部材により接続したものが従来から知られている。2つのブレース部材は、一端が床面の中央部寄りに取り付けられ、他端がパネル部材の車幅方向外側にそれぞれ取り付けられ、リヤシートのシートバックの荷室側にV字状に配されている(例えば、特許文献1)。
特許文献1に開示された技術では、ブレース部材により後輪用のホイールハウス付近の剛性を確保することができる。そして、2つのブレース部材は、リヤシートのシートバックの荷室側にV字状に配されているので、急制動時等に、荷室の収容物(荷物)が前方に移動しても、荷物がブレース部材に当接することでシートバックが保護され、乗員への衝撃を緩和することができる。
ブレース部材は、例えば、ハット形の断面の長尺部材で構成され、荷物が当接した際の剛性が確保されているが、荷物の重量や前方への移動速度によっては、大きな荷重がブレース部材の長手方向での中央部に加わることになる。一方で、ブレース部材は、その構造上、車体に固定される長手方向の端部側と比べて長手方向の中央部付近の剛性が弱くなる。
このため、リヤシートのシートバックを的確に保護するためには、ブレース部材の長手方向の中央部の剛性を向上させることが好ましい。ブレース部材の長手方向の中央部での剛性を確保するためには、ブレース部材全体の厚みを厚くするか、中央部分を補強部材で補強することが考えられるが、コストや重量の増加は避けられなかった。
特開2009−107387号公報
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、コストや重量の増加を抑えた簡単な構造で、荷室の収容物からリヤシートのシートバックを的確に保護することができる車体の後部構造を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の車体の後部構造は、リヤシートの後方において、床面と荷室上部のパネル部材とを連結する長尺の補強部材を備える車体の後部構造であって、前記補強部材は、車両前後方向を向いた底面と当該底面の長手方向に沿った両側縁から屈曲形成された一対の側面とを有して開断面に構成され、前記一対の側面の開口縁は、前記側面の端縁から前記底面までの高さが、当該補強部材の長手方向の両端部から長手方向の中央部に向かって高くなるよう湾曲状に形成されており前記補強部材は、前記補強部材の開断面が車両前方を向くように配置され、長手方向の両端部における前記底面が、前記床面、及び、前記パネル部材に接続されることを特徴とする。
請求項1に係る本発明では、補強部材の開断面を構成する側面の端縁(開口縁)から底面までの高さが、長手方向の両端部から長手方向の中央部に向かって高くされているので、補強部材の長手方向の中央部近傍における車両前後方向での剛性が高められる。このため、荷室の収容物が車室側に移動しても、補強部材で確実に受け止めることができ、リヤシートのシートバックを的確に保護することができる。また、材料の厚みを増加したり、別途補強等を追加する必要がないので、コストや重量の増加を抑えた簡単な構造とすることができる。
そして、開断面の底面を用いて補強部材を床面、及び、パネル部材に接続することができる。
そして、請求項2に係る本発明の車体の後部構造は、請求項1に記載の車体の後部構造において、前記補強部材は、前記一対の側面間の幅が、長手方向の両端部から長手方向の中央部に向かって狭くなるよう形成されていることを特徴とする。
請求項2に係る本発明では、補強部材の長手方向の中央部の一対の側面間の幅(開口の幅)が長手方向の中央部に向かって狭くなるよう形成されているため、長手方向の中央部の側面の端縁(開口縁)から底面までの高さを高くする分の材料を増加させずに中央部の車両前後方向での剛性を高めることができる。長手方向の端部の幅に合わせた既存の材料を成形することで、側面の端縁(開口縁)から底面までの高さが高い中央部を有する補強部材を作製することができる。
つまり、長手方向の中央部の高さを高くする分の材料を必要とせず、長手方向の中央部の開断面の一対の側面間の幅(開口の幅)を狭めることで、側面の端縁(開口縁)から底面までの高さが高い中央部を作製することができ、成形用の材料を大きくする必要がなく、歩留り及び剛性の向上を両立することができる補強部材となる。
また、請求項3に係る本発明の車体の後部構造は、請求項1又は請求項2に記載の車体の後部構造において、前記補強部材は2つ備えられ、2つの前記補強部材の長手方向の一端が車幅方向の中央部寄りの前記床面にそれぞれ接続され、一方の前記補強部材の長手方向の他端が車幅方向の一方の外側寄りの前記パネル部材に接続されると共に、他方の前記補強部材の長手方向の他端が車幅方向の他方の外側寄りの前記パネル部材に接続されていることを特徴とする。
請求項3に係る本発明では、床面、及び、パネル部材に亘り、2つの補強部材がV字状
に配されるので、荷室周りの剛性を高めた状態で、荷室の収容物が車室側に移動した場合
に、リヤシートのシートバックをより的確に保護することができる。
本発明の車体の後部構造は、荷室から移動する部材に対して、リヤシートのシートバックを的確に保護することが可能になる。
本発明の一実施例に係る車体の後部構造を表す骨格の外観図である。 車体の後部構造を表す骨格を後側から見た後面視図である。 車体の後部構造を側面から見た側面視図である。 補強部材の斜視図である。 図4中のV−V線矢視図である。 図4中のVI−VI線矢視図である。
本実施例の車体の後部構造は、リヤシートの下部の床面と荷室上部のシェルフパネルとが補強部材(ブレース)により連結された構造である。そして、ブレースは、車両前後方向を向いた(前後方向に対面する)底面と底面の長手方向に沿った両側縁から屈曲形成された一対の側面とを有して開断面に構成され、側面の端縁(開口縁)から底面までの高さ(深さ)が、ブレースの長手方向の両端部から長手方向の中央部に向かって次第に高く(深く)なるよう形成されている。
これにより、車体側に固定された長手方向の両端部に対し比較的剛性が低くなる長手方向の中央部での、ブレースの側面の端縁(開口縁)から底面までの高さ(深さ)が高く(深く)され、荷室の荷物に対応する位置であるブレースの長手方向の中央部での車両前後方向での剛性が高められる。このため、荷室から車室側に荷物が移動しても、荷物は、高い剛性が確保された部位のブレースに当接し、リヤシートのシートバックが的確に保護され、シートバックに着座している乗員に対する衝撃を緩和することができる。
図面を参照して車体の後部構造を具体的に説明する。
図1には本発明の一実施例に係る車体の後部構造を表す骨格を車両の斜め前方側から見た外観状況、図2には車体の後部構造を表す骨格を車両の荷室側から見た状況を示してある。
また、図3には荷室の状況との関係を説明するための車体の後部構造を側面から見た側面視、図4には補強部材の単品の外観状況、図5には補強部材の端部の断面を説明する図4中のV−V線矢視、図6には補強部材の中央部の断面を説明する図4中のVI−VI線矢視を示してある。
図1、図2に示すように、車体1にはフロアパネル2が備えられ、後部の荷室3の部位の上部にはシェルフパネル4が車幅方向に亘り設けられている。シェルフパネル4の車体1の前方側におけるフロアパネル2にはリンフォース5が設けられ、リンフォース5の部位が車室と荷室3の境界部位となっている。リンフォース5の前側のフロアパネル2に後述するリヤシートが配される。
リンフォース5(フロアパネル2)と荷室3のシェルフパネル4の前側とに亘りブレース6が接続されている。ブレース6は開断面(ハット型断面)を有する長尺部材であり、ハット型断面の側面12の端縁(開口縁)から底面11に向かう高さ方向(深さ方向)が車体1の前後方向に向けられて配されている。ブレース6は、長手方向の一端がフロアパネル2のリンフォース5に接続され、長手方向の他端が車体1の側方側のシェルフパネル4の側方側に接続されている。ブレース6は2つ備えられ、フロアパネル2と荷室3に亘りV字状に配されている。
詳細は後述するが、ブレース6は、車両の前後方向を向いた(前後方向に対面する)底面11と、底面11の長手方向に沿った両側縁から屈曲形成された一対の側面12とを有して開断面に構成され、側面12の端縁(開口縁)から底面11と平行に延びてフランジ15が形成されている。
ブレース6は、側面12の端縁から底面11までの高さ(深さ)dが、ブレース6の長手方向の両方の端部6aから長手方向の中央部6bに向かって漸次高く(深く)なるよう形成されている。そして、ハット型断面の一対の側面12間の幅(開断面の開口の幅)hが、長手方向の端部6aに対し長手方向の中央部6bに向かって漸次狭くなるように形成されている。
上述した車体の後部構造では、リヤシート7の下部のフロアパネル2(リンフォース5)と、荷室3の上部のシェルフパネル4とがブレース6により連結された構造となっている。そして、図3に示すように、荷室3の収容物である荷物8の位置に対応するブレース6の長手方向の中央部6bの近傍は車両前後方向に対する剛性が高められているので、荷物8が前方に移動しても(図中左側に移動しても)、荷物8はブレース6の長手方向の中央部6bに当接して車室側への侵入が阻止される。これにより、リヤシート7のシートバック7aが的確に保護され、リヤシート7に着座している乗員への衝撃が緩和される。
図4から図6に基づいてブレース6を具体的に説明する。
図4に示すように、ブレース6は、長方形状の板金が成形されて開断面(ハット型断面)の部材として作製される。上側の長手方向の端部6aは、ハット型断面の底面11がシェルフパネル4に接合され、下側の長手方向の端部6aは、ハット型断面の底面11がリンフォース5に接合されている。
尚、長手方向の端部6aの底面11をシェルフパネル4、及び、リンフォース5に接合することによりブレース6を車体1側に取り付けているが、開断面に連続するフランジ15をシェルフパネル4、及び、リンフォース5に接合することでブレース6を車体1側に取り付けることも可能である。
図5、図6に示すように、ブレース6の長手方向の中央部6bの開断面の一対の側面12の端縁(開口縁)から底面11までの深さd1は、端部6aの開断面の一対の側面12の端縁(開口縁)から底面11までの深さd2に対し、深くなっている(d1>d2)。
具体的には、一対の側面12の端縁(開口縁)が、ブレース6の長手方向の中央部6bで最も車両前方側に膨出する湾曲状とされ、一対の側面12の端縁(開口縁)から底面11までの深さdが、d2からd1となるまでブレース6の長手方向の両方の端部6aから長手方向の中央部6bに向かうに従って漸次深くなるよう形成されている。
また、ブレース6の長手方向の中央部6bの開断面の一対の側面12間の幅(開口の幅)h1は、端部6aの開断面の一対の側面12間の幅(開口の幅)h2に対し、狭くなっている(h1<h2)。
具体的には、ブレース6の長手方向の中央部で一対の側面12間の幅(開口の幅)hが最も狭くなるよう一対の側面12が車幅方向内側に膨出する湾曲状とされ、一対の側面12の幅(開口の幅)hが、h2からh1になるまでブレース6の長手方向の両方の端部6aから長手方向の中央部6bに向かうに従って漸次狭くなるよう形成されている。
従って、ブレース6は、長手方向の中央部6b近傍の車両の前後方向(側面12の深さ方向)での剛性を高めることができる。
そして、ブレース6の側面12の端縁(開口縁)から底面11までの深さdが、長手方向の中央部6bに向かってd2からd1になるまで漸次深くされるのに対応して、一対の側面12間の幅(開口の幅)hが長手方向の中央部6bに向かってh2からh1になるまで漸次狭くされているため、長手方向の中央部6bの深さを深くする分の材料を増加させずに、長手方向の中央部6bでの深さd1を深くすることができる。
従って、材料を大きくすることなく、長手方向の中央部6bの近傍での剛性を高めたブレース6を作製することができる。
尚、長手方向の中央部6bの深さd1が最も深くなるよう形成されると同時に、長手方向の中央部6bの開断面の開口の幅h1が最も狭くなるよう形成されたブレース6は、長手方向の端部6aの深さd2、開口の幅h2に合わせた長方形の材料を用いて成形により材料の必要な部位を延伸させることで作製される。
従って、ブレース6は、長手方向の端部6aの深さd2、開口の幅h2に合わせた長方形の材料を成形することで、底面11までの深さが長手方向の中央部6bで最も深くなる状態に作製することができる。これにより、歩留り及び剛性の向上を両立することができるブレース6となる。
尚、ブレース6の長手方向の端部6aから中央部6bにかけては、ブレース6の深さd、及び、開口の幅hが漸次変化して形成されるが、漸次寸法が変化する状況、即ち、側面12の端縁(開口縁)の車両前方側および車幅方向内側(開口内側)への湾曲状態を調整することで、剛性を所望の状態に調整することができる。
以上説明したように、本発明の車体の後部構造であれば、材料の厚みを増加したり、別途補強部材等を追加したりせずとも、ブレース6の長手方向の中央部近傍における車両前後方向での剛性を効率よく確保することができるので、コストや重量の増加を抑えた簡単な構造で、急制動時に車室側(車両前方側)へ移動される荷室3の収容物を確実に阻止して、リヤシート7のシートバック7aを的確に保護することができる。
本発明は、自動車の車体の後部構造の産業分野で利用することができる。
1 車両
2 フロアパネル
3 荷室
4 シェルフパネル
5 リンフォース
6 ブレース
7 リヤシート
8 荷物
11 底面
12 側面
15 フランジ

Claims (3)

  1. リヤシートの後方において、床面と荷室上部のパネル部材とを連結する長尺の補強部材を備える車体の後部構造であって、
    前記補強部材は、車両前後方向を向いた底面と当該底面の長手方向に沿った両側縁から屈曲形成された一対の側面とを有して開断面に構成され、
    前記一対の側面の開口縁は、前記側面の端縁から前記底面までの高さが、当該補強部材の長手方向の両端部から長手方向の中央部に向かって高くなるよう湾曲状に形成されており
    前記補強部材は、
    前記補強部材の開断面が車両前方を向くように配置され、
    長手方向の両端部における前記底面が、前記床面、及び、前記パネル部材に接続される
    ことを特徴とする車体の後部構造。
  2. 請求項1に記載の車体の後部構造において、
    前記補強部材は、
    前記一対の側面間の幅が、長手方向の両端部から長手方向の中央部に向かって狭くなる
    よう形成されている
    ことを特徴とする車体の後部構造。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の車体の後部構造において、
    前記補強部材は2つ備えられ、
    2つの前記補強部材の長手方向の一端が車幅方向の中央部寄りの前記床面にそれぞれ接
    続され、
    一方の前記補強部材の長手方向の他端が車幅方向の一方の外側寄りの前記パネル部材に
    接続されると共に、他方の前記補強部材の長手方向の他端が車幅方向の他方の外側寄りの
    前記パネル部材に接続されている
    ことを特徴とする車体の後部構造。
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