JP5651882B2 - 航空機搭載用風計測ライダー装置 - Google Patents
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Description
航空機搭載用のライダー装置において、期待される計測領域がライダー装置から少なくとも数キロメートル以上の範囲である場合には、テレスコープ(光学望遠鏡)の焦点を無限遠ないしは数キロメートル先の範囲内に調整する必要がある。
しかし、航空機の飛行高度によりライダー装置に加わる気圧が変動し、ライダー装置のテレスコープが形成するレーザ光の集光位置(焦点)が以下の理由により変動する。
先ず、大気の屈折率は、屈折率が1に近いため、グラッドストーン−デイル則により、屈折率をn、グラッドストーン−デイル定数をK、大気密度をρとすると、
n−1 = Kρ ・・・・(1)
と表すことができる。また、大気密度と大気圧は状態方程式より、大気圧をP、気体定数をR、絶対温度をTとすると、
P=RTρ(ρ=P/RT) ・・・・(2)
と表すことができる。
上記(1)および(2)式によって、大気の屈折率は
n=1+PK/RT=1+(K/R)(P/T)(=f(P,T)) ・・・・(3)
と表すことができ、大気の圧力Pおよび大気の絶対温度Tによって大気の屈折率nが変動する。
そのため、飛行高度により、風計測ライダー装置のテレスコープを構成する硝材と大気との比屈折率の変動が生じ、テレスコープのレーザ光の集光位置が変化することとなる。
上述したように、光は、屈折の法則(スネルの法則)に従い、大気とレンズとの境界で屈折しながら進行する。従って、飛行高度が変わると、大気とレンズとの間の比屈折率も変わり、その結果、レーザ光の集光位置にズレが生じる。これを、光路長(=屈折率×距離)の観点から見てみると、大気の屈折率が変わると、レーザ光の大気中における光路長が変化し、レーザ光の光出射端は固定されているので、その結像点であるレーザ光の集光位置は変動することになる。
そこで、上記航空機搭載用風計測ライダー装置では、飛行高度が変わりレーザ光の集光位置が変動する場合には、レーザ光の光出射端から集光点(結像点)に至るレーザ光の光路長を調整して、前記レーザ光の集光位置変動を防止するようにした。
上述したように、レーザ光の光路長は、媒質中における屈折率と距離によって特徴付けられる。
従って、上記航空機搭載用風計測ライダー装置では、上記フィルタ厚み可変手段、上記フィルタ屈折率可変手段、を駆動することにより、レーザ光の光出射端から集光点(結像点)に至るレーザ光の光路長を調整して、前記レーザ光の集光位置変動を防止する。また、レーザ光の送受信に係る光学系を上記構成とすることにより、飛行高度に応じて自動的にレーザ光の集光位置変動を補正することが可能となる。
上記航空機搭載用風計測ライダー装置では、演算処理装置を使用して、飛行高度における「大気の屈折率」を算出し、その算出された「大気の屈折率」に基づいて上記フィルタ厚み可変手段、上記フィルタ屈折率可変手段、または上記レンズ間距離可変手段の各駆動量を算出し、レーザ光の光出射端から集光点(結像点)に至るレーザ光の光路長を調整して、飛行高度に応じて自動的にレーザ光の集光位置変動を防止するようにした。
飛行高度における大気の温度については、「国際標準大気の大気圧と大気温の関係」を使用することにより、大気圧情報を基に算出することが可能である。
そこで、上記航空機搭載用風計測ライダー装置では、飛行高度における大気の温度については、温度センサを使用せずに、圧力センサからの計測信号と「国際標準大気の大気圧と大気温の関係」を使用し、大気の温度を算出して、飛行高度における「大気の屈折率」を求めるようにした。これにより、温度に係る計測信号の処理が不要となるため、演算処理装置の負荷が好適に軽減されることになる。また、ライダー装置の部品構成についても簡素化され、装置の軽量化の観点からも好ましい。
上記航空機搭載用風計測ライダー装置では、前記フィルタ厚み可変手段を上記構成とすることにより、レーザ光の光出射端から集光点(結像点)に至るレーザ光の光路長を好適に調整することが出来る。
上記航空機搭載用風計測ライダー装置では、前記フィルタ屈折率可変手段を上記構成とすることにより、レーザ光の光出射端から集光点(結像点)に至るレーザ光の光路長を好適に調整することが出来る。
上記航空機搭載用風計測ライダー装置では、前記レンズ間距離可変手段を上記構成とすることにより、レーザ光の光出射端から集光点(結像点)に至るレーザ光の光路長を好適に調整することが出来る。
また、本発明の航空機搭載用風計測ライダー装置は、所望の計測領域の風流を精度良く計測することが出来るため、パイロットが本装置を使用することにより、飛行前方の乱気流を事前に検知し、危険を回避するための適切な措置を取ることが出来るようになる。従って、本航空機搭載用風計測ライダー装置は、航空機の乱気流事故を防止することが好適に期待される。
このドップラーライダー装置100は、大気中に浮遊するエアロゾルに対しレーザ光を送信光として照射して、エアロゾルからのレーザ散乱光を受信光として受信する光学系10と、その受信光と送信光との波長変化量(ドップラーシフト量)に基づいて風速を計測する本体20とを具備して構成されている。
この光学望遠鏡4は、レーザ光を所望の計測領域へ集光させるレンズ部41と、大気の屈折率の変動がレーザ光の集光位置に与える影響を補正するように、レンズ部41を駆動するレンズ駆動装置42と、大気の圧力を計測する圧力センサ43と、大気の温度を計測する温度センサ44と、温度情報および圧力情報に基づいて、レンズ駆動装置42の駆動量を算出しレンズ駆動装置42へ制御信号を出力する演算処理装置45とを備えている。
図3(a)は、光軸上のレンズ端aから距離L1の位置にレーザ光源Pが配設され、レーザ光源を出射した光が、屈折率n1の大気中を通り、更に屈折率n2の集光レンズ(曲率半径:R1,R2)中を通り、再び大気中を通り、最終的にレンズ端bから距離L2の位置Qに結像される光学モデルを示している。レーザ光源を出射しP→a→b→Qと進む光1(直進光)と、P→a'→b'→Qと進む光2(屈折光)は、光路長は等しく、従って光路長差はゼロである。すなわち、
LP-a+La-b+Lb-Q=LP-a'+La'-b'+Lb'-Q ・・・・(4)
が成立する。また、図から明らかなように、LP-a<LP-a'、且つLb-Q<Lb'-Qであるから、集光レンズ中ではLa-b>La'-b'となる。このことは、光2は、集光レンズにおける光1に対する光路長差を、大気における光1に対する光路長差を長く確保することにより補償しているとも考えることが出来る(大雑把に言えば、光2は、集光レンズ中における光1に対する光路長差のマイナス分を、大気中を光1よりも大回りして、光路長差をプラスマイナスのゼロにしているとも考えられる。)。さて、航空機の飛行高度が変化して、大気の屈折率n1が変動する場合、大気中における光2の光1に対する光路長差が変動する。一般に、レーザ光源の位置は固定されているため、集光点(結像点)Qが変動することになる。従って、レンズ端bから結像点Qまでの距離L2を一定に保持したい場合は、何らかの方法により、光2の光1に対する大気中における光路長差の変動分を補償する必要がある。
光1および光2の出射点を、各々C、C'とし、CC'間の距離をh(hは十分小さいとする。)とすると、媒質中における光1の光路長はn3×dであり、同光2の光路長はn3×(d2+h2)1/2である。
従って、媒質中における光2の光1に対する光路長差ΔLは、
ΔL=n3×〔(d2+h2)1/2−d〕=n3×d×〔(1+(h/d)2)1/2−1〕≒n3×d×〔(1+(1/2)(h/d)2)−1〕=n3h2/(2d) ・・・・(5)
となる(∵(h/d)は十分に小さいため、(1+(h/d)2)1/2=1+(1/2)(h/d)2が成立する。)。
(5)式から、上記光路長差ΔLは、屈折率n3または厚みdによって変わることが分かる。例えば、屈折率n3を固定して、厚みdを大きくすると、それに反比例して上記光路長差ΔLは小さくなる。他方、厚みdを固定して、屈折率n3を大きくすると、それに比例して上記光路長差ΔLも大きくなる。従って、航空機の飛行高度が変わり、大気の屈折率n1が変動する場合、厚みdまたは屈折率n3、或いは双方を適切に調整することにより、光2(屈折光)の光1(直進光)に対する大気中における光路長差の変動分を、上記光路長差ΔLによって補償することが可能となる。従って、航空機の飛行高度が変わり、大気の屈折率が変動する場合であっても、上記光路長差ΔLによってレーザ光の集光位置(結像点)を安定に保持することが可能となる。
となる。つまり、屈折率の異なる媒質を設けなくても、dを変えることにより、すなわち、レーザ光源Pの位置を変えることにより、光2の光1に対する大気中における光路長差の変動分を、上記光路長差ΔLによって補償することが出来る。例えば、航空機の飛行高度が高くなり、大気の屈折率n1が小さくなる場合は、レーザ光源Pを集光レンズ側に移動させることにより、大気の屈折率の変動による光2の光1に対する光路長差の変動分を補償することが出来る。
このフィルタ厚み可変手段は、光学フィルタの厚みdを変えることにより、光2(屈折光)の光1(直進光)に対する大気中における光路長差の変動分を補償し、大気の屈折率変動に起因するレーザ光の集光位置変動を防止する集光位置変動防止手段である。
従って、その構成は、周方向に沿ってその厚みdが変化するように構成された回転光学フィルタ41bと、回転光学フィルタ41bを回転駆動する動力源としての回転モータ42aと、その回転動力を回転光学フィルタ41bへ伝達する回転軸42bと、回転光学フィルタ41bの回転角を検出するエンコーダ42cとから成る。なお、回転光学フィルタ41bの詳細については、図5を参照しながら後述する。
この回転光学フィルタ41bは、基準位置からの回転角θk(k=1,2,・・・,n)に応じて、その光軸方向の厚みd(θk)が変化するように、厚みの異なる複数の扇形状の光学フィルタF(θk)によって構成されている。なお、図5は、回転光学フィルタ41bが18個の扇形状の光学フィルタ{F(θk)|(k=1,2,・・・,18)}によって、d(θ1)<・・・<d(θ5)<・・・<d(θ10)<・・・<d(θ18)となるように構成されている例を示している。
このフィルタ屈折率可変手段は、光学フィルタの屈折率nを変えることにより、光2(屈折光)の光1(直進光)に対する大気中における光路長差の変動分を補償し、大気の屈折率変動に起因するレーザ光の集光位置変動を防止する集光位置変動防止手段である。
このレンズ間距離可変手段は、レーザ光出射端41cから集光レンズ41aに至る距離L1(以下、「レンズ間距離L1」という。)を変えることにより、光2(屈折光)の光1(直進光)に対する大気中における光路長差の変動分を補償し、大気の屈折率変動に起因するレーザ光の集光位置変動を防止する集光位置変動防止手段である。
また、本発明のドップラーライダー装置100は、所望の計測領域の風流を精度良く計測することが出来るため、パイロットが本装置を使用することにより、飛行前方の乱気流を事前に検知し、危険を回避するための適切な措置を取ることが出来るようになる。従って、本航空機搭載用風計測ライダー装置は、航空機の乱気流事故を防止することが好適に期待される。
Claims (5)
- レーザ光を大気中に放射し、大気からのレーザ散乱光を受信することにより、所望の遠隔領域の風速をドップラー効果に基づき計測するライダー装置において、
レーザ光を所望の遠隔領域に集光させるレンズ部と、該レンズ部を駆動する駆動装置と、該駆動装置を制御する演算処理装置と、大気圧または大気温を計測する計測センサと、
前記レーザ光の光出射端の前段に配設される光学フィルタの光軸方向の厚みを変えるフィルタ厚み可変手段、又は同光学フィルタの屈折率を変えるフィルタ屈折率可変手段によって前記レーザ光の光出射端から集光点(結像点)に至るレーザ光の光路長を調整する集光位置変動防止手段を備えることにより、
飛行高度に応じて変化する前記レーザ光の集光位置変動を補正することを特徴とする航空機搭載用風計測ライダー装置。 - 前記演算処理装置は、前記計測センサの信号を取り込んで、飛行高度における大気の屈折率を新たに算出し、その大気の屈折率に基づいて、前記フィルタ厚み可変手段、又は前記フィルタ屈折率可変手段の各駆動量を算出し、その各駆動量に係る制御信号を前記駆動装置に送信する請求項1に記載の航空機搭載用風計測ライダー装置。
- 前記演算処理装置は、前記計測センサからの大気圧情報と「国際標準大気の大気圧と大気温の関係」に基づいて、前記大気の屈折率を算出する請求項1又は2に記載の航空機搭載用風計測ライダー装置。
- 前記フィルタ厚み可変手段は、周方向に沿ってその厚みが可変する回転可能な光学フィルタと、該光学フィルタを回転駆動するモータと、該モータの回転角を検出するエンコーダとを備える請求項1又は2に記載の航空機搭載用風計測ライダー装置。
- 前記フィルタ屈折率可変手段は、周方向に沿ってその屈折率が可変する回転可能な光学フィルタと、該光学フィルタを回転駆動するモータと、該モータの回転角を検出するエンコーダとを備える請求項1又は2に記載の航空機搭載用風計測ライダー装置。
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