以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。
本発明の静電潜像現像用磁性トナー(以下単にトナーともいう)は、少なくとも結着樹脂と磁性粉とを含むトナーコア粒子と、トナーコア粒子の全表面を被覆するシェル層と、からなる。そして、トナーコア粒子を被覆するシェル層は、球状の樹脂微粒子を用いて形成される。
また、本発明のトナーは、その表面を、走査型電子顕微鏡を用いて観察する場合に、粒子径が6μm以上8μm以下のトナー粒子について、シェル層の表面に球状の樹脂微粒子に由来する構造が観察されない。そして、本発明のトナーは、トナーの断面を、透過型電子顕微鏡を用いて観察する場合に、シェル層の内部に、トナーコア粒子の表面に対して略垂直方向の、樹脂微粒子同士の界面に由来するクラックが観察される。以下、トナーの構造と、トナーの材料とについて説明する。
[トナーの構造]
本発明のトナーは、トナーコア粒子がその全表面をシェル層により被覆されている。静電潜像現像用磁性トナーの表面のシェル層による被覆状態は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて確認できる。また、シェル層の平滑化の程度と、静電潜像現像用磁性トナーのシェル層の内部とは、トナーの断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することにより確認できる。本発明のトナーの好適な一態様について、TEMを用いて観察されるトナーの断面の模式図を図1に示す。
図1に示されるように、静電潜像現像用磁性トナー101では、シェル層103が、トナーコア粒子102の全表面を被覆している。また、シェル層は、トナーコア粒子に樹脂微粒子層を付着させて形成される樹脂微粒子層の外表面が、外力により平滑化されて形成されたものである。
シェル層103の厚さは、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、0.03μm以上1μm以下が好ましく、0.04μm以上0.7μm以下がより好ましく、0.05μm以上0.5μm以下が特に好ましく、0.05μm以上0.3μm以下が最も好ましい。なお、本発明のトナーは、シェル層が凸部を有するため、シェル層の厚さが不均一である。よって、本出願の、特許請求の範囲、及び明細書では、シェル層の最も厚い部分の厚さを、「シェル層の厚さ」とする。
シェル層が厚過ぎる場合、トナーを被記録媒体へ定着する際にトナーに加わる圧力によるシェル層の破壊が起こりにくい。この場合、トナーコア粒子に含まれる結着樹脂や離型剤の軟化又は溶融が速やかに進行せず、低温域でトナーを被記録媒体上に定着させにくい。一方、シェル層が薄すぎる場合、シェル層の強度が低くなる。シェル層の強度が低いと、輸送時等の衝撃によりシェル層が破壊される場合があり、高温でトナーを保存する場合に、シェル層が破壊された個所からの、トナー表面への離型剤の染み出し等によって、トナーが凝集しやすくなる。
シェル層103の厚さは、トナー101断面のTEM撮影像を市販の画像解析ソフトウェアを用いて解析することにより、計測することができる。市販の画像解析ソフトウェアとしては、WinROOF(三谷商事株式会社製)等を用いることができる。
本発明のトナーは、図1に示すようにシェル層103が、トナーコア粒子102とシェル層103との界面上、且つ、2つのクラック104間に、凸部105を有するのが好ましい。シェル層103がこのような凸部105を有することにより、シェル層が凸部105を有していない場合に比べて、トナーコア粒子102とシェル層103との接触面積を大きくすることができる。これにより、シェル層に凸部105を設けることで、トナーコア粒子102とシェル層103との密着性が向上し、シェル層103がトナーコア粒子102から剥離しにくくなる。このため、シェル層が凸部105を備える場合、耐熱保存性が良好なトナーを得ることができる。
本発明の静電潜像現像用磁性トナーの、樹脂微粒子を用いて形成されるシェル層は、より具体的には、
I)球状の樹脂微粒子を、トナーコア粒子の表面に対して垂直方向に重ならないように、トナーコア粒子の表面に付着させて、トナーコア粒子の全表面を被覆する樹脂微粒子層を形成する工程、及び
II)樹脂微粒子層の外表面への外力の印加によって、樹脂微粒子層中の樹脂微粒子を変形させることにより、樹脂微粒子層の外表面を平滑化させてシェル層を形成する工程、
を含む方法により形成されている。
シェル層の平滑化の程度は、本発明のトナーの表面を、走査型電子顕微鏡を用いて観察する場合に、粒子径6μm以上8μm以下のトナー粒子のシェル層の外表面に、シェル層の形成に用いる球状の樹脂微粒子に由来する構造が観察されない程度であればよい。粒子径6μm以上8μm以下のトナーのシェル層の状態がこのような状態であれば、トナーに含まれるトナー粒子の殆どで、コア粒子の表面が露出しないようにシェル層が形成されている。シェル層の外表面の状態を、走査型電子顕微鏡観察を用いて確認する場合の、トナー粒子の粒子径とは、電子顕微鏡画像上のトナーの投影面積から算出される円相当径である。
図1に示されるシェル層の好適な態様では、トナー101は、トナーコア粒子102の全表面がシェル層103により被覆されている。また、シェル層103は、その外表面が平滑であるようにトナーコア粒子102の全表面を被覆しているため、トナー101を高温で保存する際に、離型剤等のトナー101表面のへの染み出しが生じにくい。
さらに、トナー101は、シェル層103の内部に空隙(クラック)105が存在するため、トナーを被記録媒体上に定着させる際に、トナーに加わる圧力によって、クラックを基点とするシェル層の破壊が起こりやすい。これにより、トナー101は、トナーコア粒子102に含まれる結着樹脂や離型剤等の軟化又は溶融が速やかに進行するため、低温域で、トナーを被記録媒体上に定着させやすい。
また、本発明のトナー101は、図1に示すように、トナーコア粒子102中に磁性粉106が含まれるが、走査型電子顕微鏡を用いてトナー101を観察する場合に、シェル層103の表面に磁性粉106が観察されない。磁性粉106はトナーコア粒子102に必須に含まれる成分であり、トナーコア粒子102表面からは磁性粉106が露出している場合がある。磁性粉106がシェル層103の表面に露出しているトナーを用いる場合、長期間にわたって画像を形成する場合に、トナー表面に露出する磁性粉106の稜線や頂点からの帯電電荷の放出が生じやすく、トナーの帯電量が低下しやすい。長期間にわたって画像を形成する場合の、トナーの帯電量の低下の問題は、高温高湿条件下において顕著である。
しかし、本発明のトナーは、トナーコア粒子102の全表面がシェル層103により被覆されているため、シェル層103の表面に磁性粉106が露出していない。このため、本発明のトナーは、高温高湿環境下で長期間にわたって画像を形成する場合であっても、トナーの帯電状態が安定し、所望する画像濃度の画像を形成できる。
トナー粒子について、シェル層の表面に磁性粉が露出しているか否かは、下記方法に従って確認できる。
<磁性粉の露出の有無の確認方法>
トナーの試料について、少なくとも50個以上のトナー粒子の表面を、走査型電子顕微鏡に付属させたEDX(JSM−7600FA(日本電子株式会社製))を用いて、倍率10,000倍の視野で観察し、X線分光器による元素のマッピングを行う。50個以上のトナー粒子の表面を、元素マッピングした画像を取得し、解析する。
[トナー材料]
本発明のトナーは、少なくとも結着樹脂と、磁性粉と、を含むトナーコア粒子と、トナーコア粒子の全表面を被覆するシェル層と、からなる。トナーコア粒子は、結着樹脂中に、必要に応じ、離型剤、電荷制御剤、着色剤等を含んでいてもよい。また、本発明のトナーは所望によりその表面が、外添剤により処理されたものであってもよい。
以下、本発明の静電潜像現像用磁性トナーを構成する必須、又は任意の成分である、結着樹脂、磁性粉、離型剤、電荷制御剤、着色剤、シェル層を形成する樹脂微粒子、及び外添剤と、本発明の静電潜像現像用磁性トナーの製造方法とについて順に説明する。
〔結着樹脂〕
本発明のトナーにおけるトナーコア粒子は、結着樹脂を含む。トナーコア粒子に含まれる結着樹脂は、従来からトナー用の結着樹脂として用いられている樹脂であれば特に制限されない。結着樹脂の具体例としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、N−ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂のような熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの樹脂の中でも、結着樹脂中の着色剤の分散性、トナーの帯電性、用紙に対する定着性の面から、ポリスチレン系樹脂、及びポリエステル樹脂が好ましい。以下、ポリスチレン系樹脂、及びポリエステル樹脂について説明する。
ポリスチレン系樹脂は、スチレンの単独重合体でもよく、スチレンと共重合可能な他の共重合モノマーとの共重合体でもよい。スチレンと共重合可能な他の共重合モノマーの具体例としては、p−クロルスチレン;ビニルナフタレン;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンのようなエチレン不飽和モノオレフィン類;塩化ビニル、臭化ビニル、弗化ビニルのようなハロゲン化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル、酪酸ビニルのようなビニルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ドテシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、α−クロルアクリル酸メチル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸ブチルのような(メタ)アクリル酸エステル;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリルアミドのような他のアクリル酸誘導体;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルのようなビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、メチルイソプロペニルケトンのようなビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリデンのようなN−ビニル化合物等が挙げられる。これらの共重合モノマーは、2種以上を組み合わせてスチレン単量体と共重合できる。
ポリエステル樹脂は、2価又は3価以上のアルコール成分と2価又は3価以上のカルボン酸成分との縮重合や共縮重合によって得られるものを使用することができる。ポリエステル樹脂を合成する際に用いられる成分としては、以下のアルコール成分やカルボン酸成分が挙げられる。
2価又は3価以上のアルコール成分の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールのようなジオール類;ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールAのようなビスフェノール類;ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンのような3価以上のアルコール類が挙げられる。
2価又は3価以上のカルボン酸成分の具体例としては、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、或いはn−ブチルコハク酸、n−ブテニルコハク酸、イソブチルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸のようなアルキル又はアルケニルコハク酸のような2価カルボン酸;1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸のような3価以上のカルボン酸が挙げられる。これらの2価又は3価以上のカルボン酸成分は、酸ハライド、酸無水物、低級アルキルエステルのようなエステル形成性の誘導体として用いてもよい。ここで、「低級アルキル」とは、炭素原子数1から6のアルキル基を意味する。
結着樹脂がポリエステル系樹脂である場合の、ポリエステル系樹脂の軟化点は、70℃以上130℃以下であることが好ましく、80℃以上120℃以下がより好ましい。
本発明のトナーが、磁性1成分トナーとして用いられる場合、結着樹脂として、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基、及びエポキシ基(グリシジル基等)からなる群より選択される1以上の官能基を分子内に有する樹脂を使用するのが好ましい。これらの官能基を分子内に有する結着樹脂を用いることにより、結着樹脂中での磁性粉、電荷制御剤等の分散性を向上させることができる。なお、これらの官能基の有無は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いて確認することができる。また、樹脂中のこれらの官能基の量は、滴定等の公知の方法により測定することができる。
結着樹脂としては、用紙に対する定着性が良好であることから熱可塑性樹脂を用いることが好ましいが、熱可塑性樹脂単独で使用するだけでなく、熱可塑性樹脂に架橋剤や熱硬化性樹脂を添加することができる。架橋剤や熱硬化性樹脂を添加して、結着樹脂内に、一部架橋構造を導入することにより、トナーの定着性を低下させることなく、トナーの耐熱保存性、耐久性等を向上させることができる。なお、熱硬化性樹脂を用いる場合は、ソックスレー抽出器を用いて抽出される結着樹脂の架橋部分量(ゲル量)は、結着樹脂の質量に対して、10質量%以下が好ましく、0.1質量%以上10質量%以下がより好ましい。
熱可塑性樹脂と共に使用できる熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂やシアネート系樹脂が好ましい。好適な熱硬化性樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリアルキレンエーテル型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、シアネート樹脂が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、2種以上を組み合わせて使用できる。
結着樹脂のガラス転移点(Tg)は、40℃以上70℃以下が好ましい。ガラス転移点が高すぎる場合、トナーの低温定着性が低下する傾向がある。ガラス転移点が低すぎる場合、トナーの耐熱保存性が低下する傾向がある。
結着樹脂のガラス転移点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、結着樹脂の比熱の変化点から求めることができる。より具体的には、測定装置としてセイコーインスツルメンツ株式会社製示差走査熱量計DSC−6200を用い、結着樹脂の吸熱曲線を測定することで結着樹脂のガラス転移点を求めることができる。測定試料10mgをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを使用する。測定温度範囲25℃以上200℃以下、昇温速度10℃/分で常温常湿下にて測定して得られた結着樹脂の吸熱曲線より結着樹脂のガラス転移点を求めることができる。
結着樹脂の質量平均分子量(Mw)は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。典型的には、結着樹脂の質量平均分子量(Mw)は、20,000以上300,000以下が好ましく、30,000以上2,000,000以下がより好ましい。なお、結着樹脂の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン樹脂を用いて予め作成しておいた検量線を用いて求めることができる。
また、結着樹脂がポリスチレン系樹脂である場合、結着樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー等により測定される分子量分布上で、低分子量領域と、高分子量領域とにそれぞれピークを有するのが好ましい。具体的には、低分子量領域のピークを分子量3,000以上20,000以下の範囲に有するのが好ましく、高分子量領域のピークを分子量300,000以上1,500,000以下の範囲に有するのが好ましい。また、このような分子量分布のポリスチレン系樹脂について、数平均分子量(Mn)と質量平均分子量(Mw)との比(Mw/Mn)は、10以上が好ましい。結着樹脂が、分子量分布において、低分子量領域のピークと高分子量領域のピークをこのような範囲に有することで、低温定着性に優れ、高温オフセットを抑制できるトナーを得ることができる。
〔磁性粉〕
本発明の静電潜像現像用磁性トナーを構成するトナーコア粒子は、結着樹脂中に磁性粉を含む。磁性粉の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。好適な磁性粉の例としては、フェライト、マグネタイトのような鉄;コバルト、ニッケル等の強磁性金属;鉄、及び/又は強磁性金属を含む合金;鉄、及び/又は強磁性金属を含む化合物;熱処理等の強磁性化処理を施された強磁性合金;二酸化クロムが挙げられる。
磁性粉の粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されない。具体的な磁性粉の平均粒子径は、0.05μm以上1.00μm以下が好ましい。このような範囲の粒子径の磁性粉を用いる場合、結着樹脂中に磁性粉を均一に分散させやすく、シェル層の表面に磁性粉が露出しにくい。このため、常温常湿環境下や高温高湿環境下で長期間にわたって画像を形成する場合でも、トナーを所望の帯電量に帯電させやすいため、所望の濃度の画像を形成できる。
磁性粉の平均粒子径が過小である場合、トナー中に磁性粉が良好に分散されにくい。このため、トナーの帯電が不均一になりやすく、現像器の現像ローラーのスリーブ表面上にトナー薄層が均一に形成されにくい。一方、磁性粉の平均粒子径が過大である場合、シェル層の表面に磁性粉が露出しやすくなる。この場合、高温高湿環境下で、トナー表面に露出する磁性粉の稜線や頂点からトナーの帯電電荷が放出されやすく、トナーの帯電量が低下しやすいため、所望する画像濃度の画像を形成しにくい。
磁性粉は、結着樹脂中での分散性を改良する目的等で、チタン系カップリング剤やシラン系カップリング剤等の表面処理剤により表面処理されたものを用いることができる。
磁性粉の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的な磁性粉の使用量は、トナーコア粒子の全質量に対して、35質量%以上65質量%以下が好ましく、35質量%以上55質量%以下がより好ましい。磁性粉の使用量が過多である場合、長期間連続して画像を形成する場合に所望する画像濃度の画像を形成しにくくなったり、定着性が極度に低下したりする場合がある。また、磁性粉の使用量が過少である場合、形成画像にかぶりが発生しやすかったり、長期間にわたり印刷する場合に画像濃度が低下しやすかったりする場合がある。
〔離型剤〕
トナーコア粒子は、定着性や耐オフセット性を向上させる目的で、離型剤を含むのが好ましい。トナーコア粒子に含むことができる離型剤の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。離型剤としてはワックスが好ましく、ワックスの例としては、カルナウバワックス、合成エステルワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フッ素樹脂系ワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、モンタンワックス、ライスワックスが挙げられる。これらの離型剤は2種以上を組み合わせて使用できる。このような離型剤をトナーに添加することにより、オフセットや像スミアリング(画像をこすった際の画像周囲の汚れ)の発生をより効率的に抑制することができる。
結着樹脂としてポリエステル樹脂が用いられる場合は、相溶性の観点から、離型剤として、カルナバワックス、合成エステルワックス、及びポリエチレンワックスからなる群より選択される1以上の離型剤が好適に用いられる。また、結着樹脂としてポリスチレン系樹脂が用いられる場合は、同じく相溶性の観点から、離型剤として、フィッシャートロプシュワックス、及び/又はパラフィンワックスが好適に用いられる。
なお、フィッシャートロプシュワックスは、一酸化炭素の接触水素化反応であるフィッシャートロプシュ反応を利用して製造される、イソ(iso)構造分子や側鎖が少ない、直鎖炭化水素化合物である。
フィッシャートロプシュワックスの中でも、質量平均分子量が1,000以上であり、且つDSC測定により観測される吸熱ピークのボトム温度が、100℃以上120℃以下の範囲内であるものがより好ましい。このようなフィッシャートロプシュワックスとしては、サゾール社から入手できるサゾールワックスC1(吸熱ピークのボトム温度:106.5℃)、サゾールワックスC105(吸熱ピークのボトム温度:102.1℃)、サゾールワックスSPRAY(吸熱ピークのボトム温度:102.1℃)等が挙げられる。
離型剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的な離型剤の使用量は、トナーコア粒子の全質量に対して、1質量%以上10質量%以下が好ましい。離型剤の使用量が過少である場合、形成画像におけるオフセットや像スミアリングの発生の抑制について所望の効果が得られない場合があり、離型剤の使用量が過多である場合、トナー同士の融着によってトナーの耐熱保存性が低下する場合がある。
〔電荷制御剤〕
トナーコア粒子は、トナーの、帯電レベルや、所定の帯電レベルに短時間で帯電可能か否かの指標となる帯電立ち上がり特性を向上させ、耐久性や安定性に優れたトナーを得る目的で、電荷制御剤を含むのが好ましい。トナーを正帯電させて現像を行う場合、正帯電性の電荷制御剤が使用され、トナーを負帯電させて現像を行う場合、負帯電性の電荷制御剤が使用される。
トナーコア粒子に含有させることができる電荷制御剤の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来からトナーに使用されている電荷制御剤から適宜選択して使用できる。正帯電性の電荷制御剤の具体例としては、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オルトオキサジン、メタオキサジン、パラオキサジン、オルトチアジン、メタチアジン、パラチアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−オキサジアジン、1,3,4−オキサジアジン、1,2,6−オキサジアジン、1,3,4−チアジアジン、1,3,5−チアジアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、1,2,4,6−オキサトリアジン、1,3,4,5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリンのようなアジン化合物;アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリ−ンBH/C、アジンディ−プブラックEW、及びアジンディープブラック3RLのようなアジン化合物からなる直接染料;ニグロシン、ニグロシン塩、ニグロシン誘導体のようなニグロシン化合物;ニグロシンBK、ニグロシンNB、ニグロシンZのようなニグロシン化合物からなる酸性染料;ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩類;アルコキシル化アミン;アルキルアミド;ベンジルメチルヘキシルデシルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウムクロライドのような4級アンモニウム塩が挙げられる。これらの正帯電性の電荷制御剤の中では、より迅速な帯電立ち上がり性が得られる点で、ニグロシン化合物が特に好ましい。これらの正帯電性の電荷制御剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。
官能基として4級アンモニウム塩、カルボン酸塩、又はカルボキシル基を有する樹脂も正帯電性の電荷制御剤として使用できる。より具体的には、4級アンモニウム塩を有するスチレン系樹脂、4級アンモニウム塩を有するアクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するポリエステル樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン系樹脂、カルボン酸塩を有するアクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するポリエステル樹脂、カルボキシル基を有するスチレン系樹脂、カルボキシル基を有するアクリル系樹脂、カルボキシル基を有するスチレン−アクリル系樹脂、カルボキシル基を有するポリエステル樹脂が挙げられる。これらの樹脂の分子量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、オリゴマーであってもポリマーであってもよい。
正帯電性の電荷制御剤として使用できる樹脂の中では、帯電量を所望の範囲内の値に容易に調節することができる点から、4級アンモニウム塩を官能基として有するスチレン−アクリル系樹脂がより好ましい。4級アンモニウム塩を官能基として有するスチレン−アクリル系樹脂において、スチレン単位と共重合させる好ましいアクリル系コモノマーの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸iso−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸iso−ブチルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
また、4級アンモニウム塩としては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキル(メタ)アクリルアミド、又はジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドから第4級化の工程を経て誘導される単位が用いられる。ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレートが挙げられ、ジアルキル(メタ)アクリルアミドの具体例としてはジメチルメタクリルアミドが挙げられ、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの具体例としては、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドが挙げられる。また、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミドのようなヒドロキシ基含有重合性モノマーを重合時に併用することもできる。
負帯電性の電荷制御剤の具体例としては、例えば、有機金属錯体、キレート化合物、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸系の金属錯体、芳香族モノカルボン酸、及び芳香族ポリカルボン酸、及びその金属塩、無水物、エステル類、並びにビスフェノール等のフェノール誘導体類が挙げられる。これらの中でも有機金属錯体、キレート化合物が好ましい。有機金属錯体、及びキレート化合物としては、アルミニウムアセチルアセトナートや鉄(II)アセチルアセトナートのようなアセチルアセトン金属錯体、及び、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸クロムのようなサリチル酸系金属錯体又はサリチル酸系金属塩がより好ましく、サリチル酸系金属錯体又はサリチル酸系金属塩が特に好ましい。これらの負帯電性の電荷制御剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。
正帯電性又は負帯電性の電荷制御剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。正帯電性又は負帯電性の電荷制御剤の使用量は、典型的には、トナーコア粒子の全質量に対し、0.1質量%以上10質量%以下が好ましい。電荷制御剤の使用量が過少である場合、所定の極性にトナーを安定して帯電させにくいため、形成画像の画像濃度が所望する値を下回ったり、画像濃度を長期にわたって維持することが困難になったりすることがある。また、電荷制御剤が均一に分散し難いため、形成画像にかぶりが生じやすくなったり、トナー成分による潜像担持部の汚染が起こりやすくなったりする。電荷制御剤の使用量が過多である場合、耐環境性の悪化による、高温高湿下での帯電不良に起因する形成画像における画像不良や、トナー成分による潜像担持部の汚染等が起こりやすくなる。
〔着色剤〕
本発明のトナーは、磁性粉を必須の成分として含むため、通常黒色である。このため、トナーは、本発明の目的を阻害しない範囲で、本発明のトナーを用いて形成した形成画像をより好ましい黒色の色相に調整する目的で、着色剤として、公知の染料又は顔料を含んでいてもよい。具体的には、顔料としてはカーボンブラック等が挙げられ、染料としてはアシッドバイオレット等が挙げられる。
着色剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的には、着色剤の使用量は、トナーコア粒子の全質量に対して、1質量%以上10質量%以下が好ましく、2質量%以上7質量%以下がより好ましい。
なお、熱可塑性樹脂等の樹脂材料中に予め着色剤が分散されたマスターバッチとして、着色剤を用いることもできる。着色剤をマスターバッチとして用いる場合、マスターバッチに含まれる樹脂は、結着樹脂と同種の樹脂であるのが好ましい。
〔樹脂微粒子〕
本発明の静電潜像現像用磁性トナー中のシェル層を形成する樹脂微粒子は、トナーコア粒子を被覆できる限り特に限定されない。所定の構造のシェル層を形成しやすいことから、シェル層を形成する樹脂微粒子は、不飽和結合を有するモノマーの重合体が好ましい。また、樹脂微粒子は、ソープフリー乳化重合により合成可能な樹脂が好ましい。ソープフリー乳化重合で樹脂微粒子を製造すれば、粒子径が揃っており、界面活性剤を含まないか、殆ど含まない樹脂微粒子を調製できるからである。
不飽和結合を有するモノマーの種類は、シェル層として十分な物理的性質を有する樹脂を合成可能であれば特に限定されない。不飽和結合を有するモノマーとしては、ビニル系単量体が好ましい。ビニル系単量体に含まれるビニル基は、α位をアルキル基により置換されていてもよい。また、ビニル系単量体に含まれるビニル基は、ハロゲン原子により置換されていてもよい。ビニル基が有していてもよいアルキル基は、炭素数1以上6以下のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。また、ビニル基が有していてもよいハロゲン原子は、塩素原子、又は臭素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
ビニル系単量体は、含窒素極性官能基を有するものであってもよく、フッ素置換された炭化水素基を有するものであってもよい。樹脂を製造する際に、含窒素極性官能基を有するビニル系単量体を用いる場合、得られる樹脂に正帯電性を付与することができる。また、樹脂を製造する際に、フッ素置換された炭化水素基を有するビニル系単量体を用いる場合、得られる樹脂に負帯電性を付与することができる。樹脂微粒子として、上記の正帯電性の樹脂、又は負帯電性の樹脂を用いる場合、トナーコア粒子中に電荷制御剤を配合しないか、トナーコア粒子中への電荷制御剤の配合量を減らしても、所望する帯電量に帯電可能なトナーを得ることができる。
ビニル系単量体のうち、含窒素極性官能基、及びフッ素置換された炭化水素基を持たない単量体の具体例としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレンのようなスチレン類;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンのようなエチレン性不飽和モノオレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニルのようなハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニルのようなビニルエステル類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、α−クロロアクリル酸メチルのような(メタ)アクリル酸エステル類;アクリロニトリルのような(メタ)アクリル酸誘導体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルのようなビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンのようなビニルケトン類;ビニルナフタリン類が挙げられる。これらの中でも、スチレン類が好ましく、スチレンがより好ましい。これらのモノマーは2種以上を組み合わせて使用できる。
含窒素極性官能基を持つビニル系単量体の例としては、N−ビニル化合物や、アミノ(メタ)アクリル系単量体や、メタクリロニトリル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。N−ビニル化合物の具体例としては、N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、及びN−ビニルピロリドンのようなN−ビニル化合物が挙げられる。また、アミノ(メタ)アクリル系単量体の好適な例としては、下式で表される化合物が挙げられる。
CH2=C(R1)−(CO)−X−N(R2)(R3)
(式中、R1は水素又はメチル基を示す。R2及びR3は、それぞれ水素原子又は炭素数1以上20以下のアルキル基を示す。Xは−O−、−O−Q−又は−NHを示す。Qは炭素数1以上10以下のアルキレン基、フェニレン基、又はこれらの基の組合せを示す。)
上記式中、R2及びR3の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基(ラウリル基)、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基(ステアリル基)、n−ノナデシル基、及びn−イコシル基が挙げられる。
上記式中、Qの具体例としては、メチレン基、1,2−エタン−ジイル基、1,1−エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、ノナン−1,9−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、p−フェニレン基、m−フェニレン基、o−フェニレン基、及びベンジル基に含まれるフェニル基の4位から水素を除いた二価基が挙げられる。
上記式で表されるアミノ(メタ)アクリル系単量体の具体例としては、例えば、N,N−ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、2−(N,N−メチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート、4−(N,N−ジメチルアミノ)ブチル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジメチルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジエチルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジプロピルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジ−n−ブチルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N−ラウリルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N−ステアリルアミノフェニル(メタ)アクリレート、(p−N,N−ジメチルアミノフェニル)メチル(メタ)アクリレート、(p−N,N−ジエチルアミノフェニル)メチル(メタ)アクリレート、(p−N,N−ジ−n−プロピルアミノフェニル)メチル(メタ)アクリレート、(p−N,N−ジ−n−ブチルアミノフェニル)メチルベンジル(メタ)アクリレート、(p−N−ラウリルアミノフェニル)メチル(メタ)アクリレート、(p−N−ステアリルアミノフェニル)メチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジメチルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジエチルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジ−n−プロピルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジ−n−ブチルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N−ラウリルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N−ステアリルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、(p−N,N−ジメチルアミノフェニル)メチル(メタ)アクリルアミド、(p−N,N−ジエチルアミノフェニル)メチル(メタ)アクリルアミド、(p−N,N−ジ−n−プロピルアミノフェニル)メチル(メタ)アクリルアミド、(p−N,N−ジ−n−ブチルアミノフェニル)メチル(メタ)アクリルアミド、(p−N−ラウリルアミノフェニル)メチル(メタ)アクリルアミド、(p−N−ステアリルアミノフェニル)メチル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
フッ素置換された炭化水素基を持つビニル系単量体は、含フッ素樹脂の製造に使用されるものであれば特に限定されない。フッ素置換された炭化水素基を有するビニル系単量体の具体例としては、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロアミルアクリレート、1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアクリレートのようなフルオロアルキル(メタ)アクリレート類、トリフルオロクロルエチレン、フッ化ビニリデン、三フッ化エチレン、四フッ化エチレン、トリフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロペン、ヘキサフルオロプロピレンが挙げられる。これらの中でも、フルオロアルキル(メタ)アクリレート類が好ましい。
不飽和結合を有するモノマーの付加重合方法は本発明の目的を阻害しない範囲で限定されず、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合のような方法を選択できる。これらの製造方法の中では、粒子径のそろった樹脂微粒子を得やすいことから、乳化重合法が好ましい。
以上説明したビニル系単量体の重合に使用できる重合開始剤としては過硫酸カリウム、過酸化アセチル、過酸化デカノイル、過酸化ラウロイル、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリルのような公知の重合開始剤を使用できる。これらの重合開始剤の使用量は、モノマーの総質量に対して0.1質量%以上15質量%以下が好ましい。
上記のビニル系単量体の重合方法は本発明の目的を阻害しない範囲で限定されず、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合のような任意の方法を選択できる。これらの製造方法の中では、粒子径のそろった樹脂微粒子を得やすいことから、乳化重合法が好ましい。
樹脂微粒子を乳化重合法により製造する方法としては、乳化剤(界面活性剤)を使用しないソープフリー乳化重合法が好ましい。ソープフリー乳化重合法では、水相で発生した開始剤のラジカルが水相にわずかに溶けているモノマーを結合させてゆき、重合が進むにつれて、不溶化した樹脂微粒子の粒子核が形成される。ソープフリー乳化重合法によれば、粒度分布の幅が狭い樹脂微粒子が得られ、また、樹脂微粒子の平均粒子径を0.03μm以上1μm以下の範囲に制御しやすい。このため、ソープフリー乳化重合法によれば、粒子径が均一な樹脂微粒子が得られる。
後述する、シェル層の好適な形成方法では、樹脂微粒子を用いてシェル層を形成する。この場合、ソープフリー乳化重合法で得られる粒子径の均一な樹脂微粒子を用いることで、トナーコア粒子に対する樹脂微粒子の付着力のバラツキを減らすことによって、厚さが均一であり均質なシェル層を形成できる。また、ソープフリー乳化重合法により製造される樹脂微粒子は、乳化剤(界面活性剤)を用いることなく形成されるので、ソープフリー乳化重合法により得られる樹脂微粒子を用いることにより、湿気による影響を受けにくいシェル層を形成できる。
樹脂微粒子は、必要に応じて、前述の着色剤、及び電荷制御樹脂等を含有するように調製されてもよい。樹脂微粒子に十分な量の電荷制御剤を含有させる場合には、トナーコア粒子に電荷制御剤を含有させなくてもよい。
樹脂微粒子を構成する樹脂のガラス転移点は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。典型的には、ガラス転移点は45℃以上90℃以下が好ましく、50℃以上80℃以下がより好ましい。また、樹脂微粒子を構成する樹脂の軟化点は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。典型的には、軟化点は100℃以上250℃以下が好ましく、110℃以上240℃以下がより好ましい。また、樹脂の軟化点は、トナーコア粒子に含まれる結着樹脂の軟化点よりも高いのが好ましく、10℃以上140℃以下高いのがより好ましい。樹脂微粒子を構成する樹脂の温度特性をこのような範囲とすることで、樹脂微粒子がトナーコア粒子に埋め込まれる際に、樹脂微粒子のトナーコア粒子と接触する部分が変形しにくいため、シェル層の内表面に、シェル層に変化する前の樹脂微粒子の形状に由来する凸部が形成されやすい。
樹脂微粒子を構成する樹脂の質量平均分子量(Mw)は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。典型的には、質量平均分子量は20,000以上1,500,000以下が好ましい。樹脂微粒子の材料である樹脂の質量平均分子量(Mw)は、従来知られる方法に従って、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定できる。
樹脂微粒子の平均粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、0.03μm以上1μm以下が好ましく、0.04μm以上0.7μm以下がより好ましく、0.05μm以上0.5μm以下が特に好ましく、0.05μm以上0.3μm以下が最も好ましい。このような粒子径の樹脂微粒子を用いる場合、トナーコア粒子の表面を、樹脂微粒子により単層で均一に被覆しやすく、所望の構造のシェル層を形成しやすい。樹脂微粒子の平均粒子径が過小である場合、トナーコア粒子表面に好ましい厚さのシェル層を形成しにくく、耐熱保存性に優れるトナーを得にくい。一方、樹脂微粒子の平均粒子径が過大である場合、トナーコア粒子表面に均一に樹脂微粒子を付着させにくい。このため、所定の構造のシェル層を形成しにくく、耐熱保存性に優れるトナーを得にくい。
樹脂微粒子の平均粒子径は、重合条件の調整や、公知の粉砕方法、分級方法により調整することができる。樹脂微粒子の平均粒子径については、フィールドエミッション走査電子顕微鏡(JSM−6700F(日本電子株式会社製))を用いて撮影した電子顕微鏡写真から、50個以上の樹脂微粒子の粒子径を測定して、個数平均粒径を測定できる。
樹脂微粒子の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。樹脂微粒子の使用量は、典型的には、トナーコア粒子100質量部に対して1質量部以上20質量部以下が好ましく、3質量部以上15質量部以下がより好ましい。樹脂微粒子の使用量が過少であると、トナーコア粒子の全表面を樹脂微粒子により被覆できない場合がある。トナーコア粒子の全表面を樹脂微粒子により被覆できない場合、高温での保存時にトナーが凝集しやすく、耐熱保存性が低下しやすい。樹脂微粒子の使用量が過多であると、シェル層が厚くなりやすい。この場合、定着性に優れるトナーを得にくい。
〔外添剤〕
本発明のトナーは、トナーコア粒子の表面にシェル層を形成した後に、所望により外添剤により処理することができる。以下、外添剤により処理される粒子を、「トナー母粒子」とも記載する。
外添剤の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来からトナー用に使用されている外添剤から適宜選択できる。好適な外添剤の具体例としては、シリカや、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムのような金属酸化物が挙げられる。これらの外添剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。
外添剤の粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、典型的には0.01μm以上1.0μm以下が好ましい。
外添剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。外添剤の使用量は、典型的には、トナーコア粒子の表面にシェル層を形成して製造したトナー母粒子の全質量に対して、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.2質量%以上5質量%以下がより好ましい。外添剤の使用量が過少であると、トナーの疎水性が低下しやすい。その結果、高温高湿環境下において空気中の水分子の影響を受けやすくなり、トナーの帯電量の極端な低下に起因した形成画像の画像濃度の低下、及びトナーの流動性の低下等の問題が起こりやすくなる。また、外添剤の使用量が過多であると、トナーの過度のチャージアップにより画像濃度低下を招くおそれがある。
[静電潜像現像用磁性トナーの製造方法]
以上説明した静電潜像現像用磁性トナーの製造方法は、トナーコア粒子とシェル層とが、それぞれ所定の構造となるように形成される限り特に限定されない。また、必要に応じて、シェル層で被覆されたトナーコア粒子をトナー母粒子として用いて、トナー母粒子の表面に、外添剤を付着させる外添処理を施してもよい。以上説明した静電潜像現像用磁性トナーの好適な製造方法として、以下に、トナーコア粒子の製造方法と、シェル層の形成方法と、外添処理方法とを順に説明する。
〔トナーコア粒子の製造方法〕
トナーコア粒子を製造する方法は、結着樹脂中に、必要に応じて磁性粉の他に、着色剤、離型剤、電荷制御剤のような任意の成分を良好に分散できる限り特に限定されない。トナーコア粒子の好適な製造方法の具体例としては、結着樹脂、及び磁性粉と、着色剤、離型剤、及び電荷制御剤等の成分とを、混合機を用いて混合した後、一軸又は二軸押出機のような混練機を用いて結着樹脂と結着樹脂に配合される成分とを溶融混練し、冷却された混練物を粉砕・分級する方法が挙げられる。トナーコア粒子の平均粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、一般的には5μm以上10μm以下が好ましい。
〔シェル層の形成方法〕
シェル層は、球状の樹脂微粒子を用いて形成される。そして、より具体的には、
I)球状の樹脂微粒子を、トナーコア粒子の表面に対して垂直方向に重ならないように、トナーコア粒子の表面に付着させて、トナーコア粒子の全表面を被覆する樹脂微粒子層を形成する工程、及び
II)樹脂微粒子層の外表面への外力の印加によって、樹脂微粒子層中の樹脂微粒子を変形させることにより、樹脂微粒子層の外表面を平滑化させてシェル層を形成する工程、
を含む方法により形成されている。
このように、樹脂微粒子によりシェル層を形成させる方法としては、乾式条件でトナーコア粒子と樹脂微粒子とを混合できる混合装置を用いる方法が好ましい。具体例には、トナーコア粒子の表面に樹脂微粒子を付着させつつ、表面に樹脂微粒子が付着したトナーコア粒子に対して機械的外力を与えることができる混合装置を用いて、トナーコア粒子の表面にシェル層を形成させる方法が挙げられる。機械的外力としては、混合装置内の狭小な空間をトナーコア粒子が高速で移動する際に、トナーコア粒子同士のずりや、トナーコア粒子と、装置内壁、ローター、又はステーター等との間に生じるずりによって、トナーコア粒子に与えられる剪断力や、トナーコア粒子同士の衝突又はトナーコア粒子の装置内壁等との衝突等によって、トナーコア粒子に与えられる撃力が挙げられる。
より具体的な方法について説明する。まず、混合装置内で、トナーコア粒子と、樹脂微粒子とを、混合することによって、トナーコア粒子の表面に対して垂直方向に樹脂微粒子が重ならないように、トナーコア粒子の表面に樹脂微粒子を均一に付着させる。粒子径の大きなトナーコア粒子と、粒子径の小さな樹脂微粒子とが接触する場合、微視的には平面とみなせるトナーコア粒子の表面と、樹脂微粒子の表面との間で、面と面との接触が起こるため、樹脂微粒子はトナーコア粒子に付着しやすい。他方、樹脂微粒子同士が接触する場合、二つの樹脂微粒子の曲面である表面が接触するため、点と点との接触が起こる。このため、トナーコア粒子に樹脂微粒子を付着させる過程で、トナーコア粒子表面に付着する樹脂微粒子にさらに樹脂微粒子が付着しても、混合装置によって、樹脂微粒子が付着したトナーコア粒子に与えられる機械的外力によって、樹脂微粒子に付着する樹脂微粒子は、樹脂微粒子から容易に剥離する。このような理由から、以下説明する方法では、トナーコア粒子の表面に対して垂直方向に樹脂微粒子が重ならないように、トナーコア粒子が樹脂微粒子により被覆される。
樹脂微粒子をトナーコア粒子に付着させる際、トナーコア粒子表面の樹脂微粒子層に、前述の機械的外力が加えられる。トナーコア粒子表面の樹脂微粒子層に、機械的外力が加えられることにより、樹脂微粒子がトナーコア粒子に埋め込まれつつ変形し、トナーコア粒子の全表面を被覆する樹脂微粒子層外表面が平滑化され、樹脂微粒子層がシェル層に変化する。このように、シェル層の外表面では平滑化が進行するのに対し、シェル層内部では、樹脂微粒子間の境界面が残されたままとなる。このため、樹脂微粒子を用いて形成されるシェル層の内部には、トナーコア粒子の表面に対して略垂直方向のクラックが形成される。
このとき、トナーコア粒子の材質がシェル層を形成する樹脂微粒子と同等の硬さか、やや硬い材質である場合、シェル層の内表面(トナーコア粒子側の表面)が平滑になる場合がある。他方、トナーコア粒子の材質がシェル層を形成する樹脂微粒子よりも柔らかい材質である場合、樹脂微粒子がトナーコア粒子に埋め込まれる際に、樹脂微粒子のトナーコア粒子と接触する部分が変形しにくいため、シェル層の内表面に、シェル層に変化する前の微粒子の形状に由来する凸部が形成されやすい。なお、この場合、凸部は、シェル層が備える2つのクラック間に形成される。
上記方法では、機械的外力が弱いと、所望する程度の樹脂微粒子の変形が起こらず、所定の形状のシェル層を形成できない場合がある。シェル層の形成に用いる装置によって、所定の形状のシェル層を形成するための条件は異なるが、樹脂微粒子により被覆されたトナーコア粒子に与えられる機械的外力が強くなるように、段階的に運転条件を変更し、各条件で得られるトナーのシェル層の構造を確認することによって、種々の装置についての、所定のシェル層を形成するための好適な条件を定めることができる。しかし、機械的外力が強すぎる場合、例えば、樹脂微粒子が激しく変形しすぎ、シェル層の内部にトナーコア粒子に対して略垂直方向のクラックが形成されなかったり、機械的外力が熱に変換されることによって、トナーコア粒子や、樹脂微粒子の溶融が生じたりする等の不具合が生じる場合がある。
樹脂微粒子によりトナーコア粒子を被覆しつつ、樹脂微粒子により被覆されたトナーコア粒子に対して機械的外力を与えることができる装置としては、例えば、ハイブリダイザーNHS−1(株式会社奈良機械製作所製)、コスモスシステム(川崎重工業株式会社製)、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)、マルチパーパスミキサー(日本コークス工業株式会社製)、コンポジ(日本コークス工業株式会社製)、メカノフュージョン装置(ホソカワミクロン株式会社製)、メカノミル(岡田精工株式会社製)、ノビルタ(ホソカワミクロン株式会社製)等が挙げられる。
また、本発明のトナーは、トナーの表面を、走査型電子顕微鏡を用いて観察する場合に、トナー粒子のシェル層の表面に磁性粉が観察されないように、トナーコア粒子がシェル層により被覆されている。トナーの表面を、走査型電子顕微鏡を用いて観察する場合に、シェル層の表面に磁性粉が観察される場合、磁性粉の粒子径を小さくする方法、磁性粉の使用量を減らす方法、及びシェル層の形成に用いる樹脂微粒子の粒子径を大きくする方法等により、シェル層の表面に磁性粉が観察されないようにすることができる。
〔外添処理方法〕
外添剤によるトナー母粒子の処理方法は特に限定されず、従来知られている方法に従ってトナー母粒子を処理できる。具体的には、外添剤の粒子がトナー母粒子中に埋没しないように処理条件を調整し、ヘンシェルミキサーやナウターミキサーのような混合機によって、外添剤によるトナー母粒子の処理が行われる。
以上説明した本発明の静電潜像現像用磁性トナーは、定着性、及び耐熱保存性に優れ、常温常湿環境下や高温高湿環境下で長期間にわたって画像を形成する場合に、トナーを所望の帯電量に帯電させることができるので、所望の濃度の画像を形成できる。このため、本発明の静電潜像現像用磁性トナーは、種々の画像形成装置において好適に使用できる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
[製造例1]
(ポリエステル樹脂の製造)
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物1960g、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物780g、ドデセニル無水コハク酸257g、テレフタル酸770g、及び酸化ジブチル錫4gを反応容器に仕込んだ。次に、反応容器内を窒素雰囲気とし、撹拌しながら反応容器内部の温度を235℃まで上昇させた。次いで、同温度において8時間反応を行った後、反応容器内を8.3kPaに減圧して1時間反応を行った。その後、反応混合物を180℃に冷却し、所望の酸化となるようにトリメリット酸無水物を反応容器に添加した。次いで、10℃/時間の速度で反応混合物の温度を210℃まで昇温させて、同温度で反応を行った。反応終了後、反応容器の内容物を取り出し、冷却してポリエステル樹脂を得た。
[製造例2]
(磁性粉A〜Dの製造)
下記方法に従って、表1に記載の磁性粉A〜Dを調製した。
まず、1.5mol/lのFe2+を含む硫酸第一鉄塩水溶液26.7リットルと、表1に記載の量の3.4mol/lの水酸化ナトリウム水溶液と、を反応容器に加えて混合した。硫酸、又は水酸化ナトリウムにより混合液のpHを10.5に調整した後、反応容器内の混合物を90℃に加熱して、水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄塩懸濁液を生成させた。
次いで、同温度で、懸濁液に毎分100リットルの空気を80分間吹き込んで、酸化反応を開始した。第一鉄塩の酸化反応が、反応率60%まで進行した後、硫酸水溶液により懸濁液のpHを6.5に調整した。pH調整後、再度、90℃で、懸濁液に毎分100リットルの空気を50分間吹き込んで、懸濁液中にマグネタイト粒子を生成させた。その後、硫酸、又は水酸化ナトリウムにより懸濁液のpHを表1に記載の値に調整した。次いで、再度、90℃で、懸濁液に毎分100リットルの空気を20分間吹き込んで、マグネタイト粒子を含むスラリーを得た。
マグネタイト粒子を含むスラリーから、常法により、マグネタイト粒子を濾別した。濾別されたマグネタイト粒子を洗浄・乾燥した後、粉砕することで表1に記載の形状、及び平均粒子径の磁性粉A〜Dを得た。
磁性粉A〜Dの形状を、走査型電子顕微鏡(JSM−7600(日本電子株式会社製))を用いて撮影した写真(倍率範囲:10,000倍より50,000倍まで)にて確認した。磁性粉A、及びC〜Dの形状は、8個の三角形で囲まれた凸多面体である八面体であった。磁性粉Bの形状は、球形であった。
<平均粒子径測定方法>
磁性粉を水に分散させた磁性粉分散液を試料として用いて、粒度分布測定装置(LA−700(株式会社堀場製作所製))を用いて、磁性粉の平均粒子径を測定した。
[製造例3]
(樹脂微粒子の製造)
撹拌装置、温度計、冷却管、及び窒素導入装置を備えた1000mlの反応容器に、蒸留水450mlと、ドデシルアンモニウムクロライド0.52gとを仕込んだ。反応器の内容物を、窒素雰囲気下で撹拌しながら、反応容器内温を80℃まで昇温させた。昇温後、反応容器に、濃度1質量%の過硫酸カリウム(重合開始剤)水溶液120gとイオン交換水200gとを加えた。次いで、アクリル酸ブチル15g、メタクリル酸メチル165g、及びn−オクチルメルカプタン(連鎖移動剤)3.6gからなる混合物を1.5時間かけて反応容器に滴下した後、さらに2時間かけて重合を行い、樹脂微粒子の水性分散液を得た。得られた樹脂微粒子の水性分散液を、フリーズドライにより乾燥して、樹脂微粒子を得た。樹脂微粒子の個数平均粒子径は、0.10μmであった。なお、個数平均粒子径の測定方法は、まず、フィールドエミッション走査電子顕微鏡(JSM−6700F(日本電子株式会社製))を用いて、倍率100,000倍の樹脂微粒子の写真を撮影した。撮影した電子顕微鏡写真を必要に応じてさらに拡大し、50個以上の樹脂微粒子について定規、ノギス等を用いて、個数平均粒子径を測定した。
[実施例1〜3、比較例1、及び比較例3]
(トナーコア粒子の製造)
結着樹脂(製造例1で得たポリエステル樹脂)51質量部、表2に記載の種類の磁性粉45質量部、離型剤(ポリプロピレンワックス 660P(三洋化成株式会社製))3質量部、及び電荷制御剤(P−51(オリヱント化学工業株式会社製))1質量部を、混合機を用いて混合し混合物を得た。次に、混合物を、2軸押出機を用いて溶融混練して混練物を得た。混練物を、粉砕機(ロートプレックス(株式会社東亜機械製作所製))を用いて粗粉砕した後に、粗粉砕物を機械式粉砕機(ターボミル(ターボ工業株式会社製))を用いて微粉砕して微粉砕物を得た。分級機(エルボージェット(日鉄鉱業株式会社製))によって微粉砕物を分級して、体積平均粒子径(D50)が7.0μmのトナーコア粒子を得た。トナーコア粒子の体積平均粒子径は、コールターカウンターマルチサイザー3(ベックマンコールター社製)を用いて測定した。
(トナー母粒子の調製)
得られたトナーコア粒子100gに対して、製造例3で得た樹脂微粒子10gを用い、トナーコア粒子を樹脂微粒子により被覆し、トナーコア粒子表面にシェル層を形成した。シェル化処理には粉体処理装置(マルチパーパスミキサー MP型(日本コークス工業株式会社製))を用いた。粉体処理装置の処理槽内にトナーコア粒子と樹脂微粒子とを投入し、表2に記載の回転数、及び処理時間で処理してトナー母粒子を得た。
(外添処理)
得られたトナー母粒子に、トナー母粒子の質量に対して、2.0質量%の酸化チタン(EC−100(チタン工業株式会社製))と、1.0質量%の疎水性シリカ(RA−200H(日本アエロジル株式会社製))とを加え、ヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)にて、回転周速30m/秒にて5分間、撹拌・混合して、トナーを得た。
[比較例2]
実施例1と同様にして得られたトナーコア粒子100gに対して、製造例3で得た樹脂微粒子10gを用い、トナーコア粒子をシェル層により被覆した。
シェル層の形成には表面改質装置(微粒子コーティング装置 SFP−01型(株式会社パウレック製))を用いた。トナーコア粒子を、表面改質装置の流動層中に、給気温度80℃で循環させた。製造例3で得た樹脂微粒子の水性分散液の樹脂微粒子の濃度を調整して得た、樹脂微粒子10gを含む水性分散液300gを、スプレー速度5g/分で、60分間、表面改質装置の流動層中に噴霧し、トナー母粒子を得た。得られたトナー母粒子を、実施例1と同様に外添処理し、比較例2のトナーを得た。
≪シェル層の構造の確認≫
下記方法に従って、実施例1〜3、及び比較例1〜3のトナーの表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、トナーコア粒子のシェル層による被覆状態と、シェル層の表面の状態と、シェル層の外表面での磁性粉の露出の有無とを確認した。さらに、下記方法に従って実施例1〜3、及び比較例1〜3のトナーの断面の写真を、透過型電子顕微鏡(TEM)にて撮影した。得られたTEM写真により、シェル層の表面状態と、シェル層の内部の状態と、シェル層の内表面の形状とを確認した。実施例1のトナーの断面のTEM写真を図2に示し、比較例1のトナーの断面のTEM写真を図3に示し、比較例2のトナーの断面のTEM写真を図4に示す。
<トナーの表面の観察方法>
走査型電子顕微鏡(JSM−6700F(日本電子株式会社製))を用いて、トナー粒子表面を、倍率10,000倍にて観察した。
<磁性粉の露出の有無の確認方法>
トナーの試料について、少なくとも50個以上のトナー粒子の表面を、走査型電子顕微鏡に付属させたEDX(JSM−7600FA(日本電子株式会社製))を用いて、倍率10,000倍の視野で観察し、X線分光器による元素のマッピングを行った。50個以上のトナー粒子の表面を、元素マッピングした画像を取得し、解析した。
<トナーの断面の撮影方法>
トナーを樹脂に包埋した試料を作成した。ミクロトーム(EM UC6(ライカ株式会社製))を用いて、得られた試料から厚さ200nmのトナーの断面観察用の薄片試料を作成した。得られた薄片試料を、透過型電子顕微鏡(TEM、JSM−6700F(日本電子株式会社製))を用いて倍率50,000倍にて観察し、任意のトナーの断面の画像を撮影した。
実施例1〜3、及び比較例3のトナーは、その表面に対して走査型電子顕微鏡観察(SEM)を行った際に、粒子径6μm以上8μm以下のトナー粒子について、シェル層の表面に、シェル層の形成に使用された樹脂微粒子に由来する略球状の粒子が観察されなかった。図2に示す実施例1のトナーの断面のTEM写真からも、実施例1のトナーのシェル層は、略球状の粒子を含まず、その外表面が平滑であることが確認された。実施例1のトナーの断面のTEM写真から、実施例1のトナーのシェル層の内部には、トナーコア粒子の表面に対して略垂直方向のクラックが存在することが確認された。また、実施例1のトナーの断面のTEM写真から、実施例1のトナーのシェル層が、その内表面側に、2つのクラック間に凸部を有することが確認された。実施例2及び3のトナーの断面を、TEMを用いて観察したが、実施例2及び3のトナーのシェル層の構造は、実施例1のトナーのシェル層の構造と同様であった。
比較例1のトナーは、SEMを用いてその表面を観察した際に、粒子径6μm以上8μm以下のトナー粒子について、トナーコア粒子の表面が略球状の樹脂微粒子により被覆されていることが確認された。また、図3に示す比較例1のトナーの断面のTEM写真からも、比較例1のトナーについて、トナーコア粒子の表面が略球状の樹脂微粒子により被覆されていることが確認された。
比較例2のトナーは、SEMを用いてその表面を観察した際に、粒子径6μm以上8μm以下のトナー粒子について、シェル層の表面に、シェル層の形成に使用された樹脂微粒子に由来する略球状の粒子が観察されなかった。また、図4に示す比較例2のトナーの断面のTEM写真からも、比較例2のトナーのシェル層は、略球状の粒子を含まず、その外表面が平滑であることが確認された。しかし、比較例2のトナーの断面のTEM写真から、比較例2のトナーのシェル層の内部には、トナーコア粒子の表面に対して略垂直方向のクラックが存在しないことが確認された。
実施例1〜3、比較例1、及び比較例2のトナーは、トナー粒子を、SEMを用いて観察した際に、シェル層の表面に磁性粉が観察されなかった。また、比較例3のトナーは、トナー粒子を、SEMを用いて観察した際に、シェル層の表面に磁性粉が観察された。
図5に示す比較例3の断面のTEM写真から、比較例3のトナーでは、シェル層の外表面に、磁性粉が露出していることが確認された。
≪評価≫
下記方法に従って、実施例1〜3、及び比較例1〜3のトナーの定着性と、耐熱保存性と、所定環境下の画像濃度、及びトナー帯電量とを評価した。各トナーの評価結果を表2に記す。評価に用いる評価機として、評価用に温度を調節できるように改造したページプリンター(FS−C4020N(京セラドキュメントソリューションズ製))を用い、定着温度を200℃に設定して、常温常湿(20℃、65%RH)環境下にて評価画像を得た。評価機は、電源を切った状態で10分間静置した後、電源を入れて用いた。
<定着性>
評価機を用い、評価画像を得た。得られた評価画像の、摩擦前の画像濃度を、グレタグマクベススペクトロアイ(グレタグマクベス社製)を用いて測定した。
次いで、布帛により覆った1kgの分銅を用いて、分銅の自重のみが画像にかかるように10往復させて摩擦し、摩擦後の評価画像の画像濃度を測定した。下式に従って、摩擦前後の画像濃度から定着率を算出した。算出した定着率から、下記基準に従って定着性を評価した。○評価を合格とした。
定着率(%)=(摩擦後画像濃度/摩擦前画像濃度)×100
○:定着率が95%以上。
△:定着率が90%以上95%未満。
×:定着率が90%未満。
<耐熱保存性>
トナーを、50℃にて100時間保存した。次いで、パウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製)のマニュアルに従い、レオスタッド目盛り5、時間30秒の条件で、140メッシュ(目開き105μm)の篩によりトナーを篩別して、下式により凝集度(%)を求め、下記基準により評価した。○評価を合格とした。
(凝集度算出式)
凝集度(%)=篩上に残留したトナー質量/篩別前のトナーの質量×100
○:凝集度が20%以下。
△:凝集度が20%超、50%以下
×:凝集度が50%超。
<所定環境下の画像濃度、及びトナー帯電量>
下記方法に従って、常温常湿(20℃、65%RH)、及び高温高湿(32.5℃、80%RH)のそれぞれの環境下にて、初期のトナー帯電量、及び画像濃度と、連続画像形成後のトナー帯電量、及び画像濃度とを評価した。
(画像濃度)
評価機を用いて、被記録媒体に画像評価パターンを形成して初期画像を得た。その後、印字率4%で10万枚連続の画像形成を行った後に、被記録媒体に画像評価パターンを形成して連続画像形成後の画像を得た。初期、及び連続画像形成後の画像評価パターン中のソリッド画像の画像濃度を、反射濃度計(RD914、グレタグマクベス社製)を用いて測定した。画像濃度を以下の基準により評価した。○を合格と判定した。
○:1.22以上。
△:1.22未満、1.20以上。
×:1.20未満。
(帯電量)
初期画像の形成後、初期のトナーの帯電量を測定した。次いで、印字率4%で10万枚連続の画像形成を行った後に、連続画像形成後のトナーの帯電量を測定した。帯電量の測定は帯電量測定装置(Q/M Meter 210HS(TRek社製))を用いて行った。
実施例1〜3によれば、トナーが、少なくとも結着樹脂と、磁性粉とを含むトナーコア粒子と、トナーコア粒子の全表面を被覆する、樹脂微粒子を用いて形成される所定の構造のシェル層と、からなり、走査型電子顕微鏡を用いて観察する場合に、シェル層の表面に磁性粉が観察されず、且つ、特定の範囲の粒子径のトナー粒子についてシェル層の表面に樹脂微粒子に由来する略球状の粒子が見られず、透過型電子顕微鏡を用いてその断面を観察する場合に、シェル層の内部に、トナーコア粒子の表面に対して略垂直方向のクラックが多数観察される場合、トナーの定着性及び耐熱保存性が優れており、常温常湿環境下や高温高湿環境下で、長期間にわたって画像を形成する場合に、トナーを所望の帯電量に帯電させることができるので、所望の濃度の画像を形成できることが分かる。
比較例1によれば、トナーコア粒子のシェル層の表面に樹脂微粒子に由来する略球状の粒子が観察される場合、耐熱保存性が良好なトナーを得にくいことが分かる。比較例1のトナーは、シェル層の表面に樹脂微粒子に由来する略球状の粒子が観察されるものであって、シェル層の内部に、シェル層の形成過程である程度変形した樹脂微粒子間に隙間が残っている。このため、比較例1のトナーでは、シェル層内部の隙間を通じて、トナーコア粒子に含まれる離型剤等の成分の、トナー表面への染み出しが生じやすい。これにより、比較例1のトナーは、耐熱保存性に劣ると推察できる。
また、比較例1のトナーは、常温常湿環境下や高温高湿環境下で長期間にわたって画像を形成する場合、所望の濃度で画像を形成できなかった。この不具合は、以下の理由によると考えられる。比較例1のトナーは、シェル層の表面に樹脂微粒子に由来する略球状の粒子が存在しているため、長期間にわたって画像を形成する場合、トナーに過度のストレスが加わることで、シェル層がトナーから剥離しやすい。このため、比較例1のトナーを用いて長期間にわたって画像を形成する場合、トナー表面に磁性粉が露出してしまう。
また、実施例1及び比較例1のトナーのSEM観察により、シェル層の形成に用いる装置の回転数を上昇させることにより、シェル層の表面に樹脂微粒子に由来する略球状の粒子が観察されなくなることが分かった。つまり、実施例1及び比較例1によれば、シェル層の形成に用いる装置の回転数を上昇させることにより、樹脂微粒子の変形が進み、シェル層の外表面が平滑されることが分かる。
比較例2によれば、シェル層の内部に、トナーコア粒子の表面に対して略垂直方向のクラックが観察されない場合、定着性が良好なトナーを得にくいことが分かる。比較例2のトナーのシェル層は、このような構造であるために、トナーを用紙に対して定着させる際にトナー加わる圧力によってシェル層の破壊が起こりにくい。このため、比較例2のトナーは、定着性に劣ると推察される。
比較例3によれば、トナー表面に磁性粉が露出すると、耐熱保存性が良好であり、高温高湿環境下で長期間にわたって画像形成する場合に、所望する画像濃度の画像を形成できるトナーを得にくいことが分かる。トナーの耐熱保存性の低下は、シェル層の磁性粉が露出した箇所の周囲に空隙が生じ、この空隙から、トナーコア粒子に含まれる離型剤等の成分の、トナー表面への染み出しが生じやすくなるためと推察される。また、比較例3のトナーは、トナー表面に露出する磁性粉からトナーの帯電電荷の放出が生じやすい。そのため、高温高湿環境下で長期間にわたって画像形成する場合、トナーを所望する帯電量に帯電させにくく、所望する画像濃度の画像を形成しにくいこと考えられる。