以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、第1の実施形態の電子写真用感光体1の基本的構成を説明するための切り欠け断面図を示している。また、図2は、電子写真用感光体の層構成について説明する概略断面図である。かかる図において、アルミニウムなどから構成された導電性基体10が、基材として備えてある。また、その導電性基体10上に、非晶質材料からなる複数の層が積層されている。本実施形態では、導電性基体10の表面に、アモルファスシリコン等から構成された電荷注入阻止層12が形成されている。また、その電荷注入阻止層12の上に、アモルファスシリコン等から構成された光導電層14が備えてある。
また、その光導電層14の上に、アモルファスシリコンと、炭素原子と、水素原子とを含有したSiC:Hから構成された中間層16が備えてある。
また、その中間層の上に、アモルファスシリコンと、炭素原子と、水素原子を含有する表面層が備えてある。電子写真用感光体1では、表面層18は、単位体積当たりの炭素の原子数をaとし、シリコンの原子数をbとしたときに、式A=a/(b+a)で表される原子数比Aが0.75以上かつ0.81未満を満たす第1の領域18aと、第1の領域18a上に積層した、原子数比Aが0.81以上かつ0.95以下を満たす第2の領域18bと、第2の領域18b上に積層した、原子数比Aが0.95より大きくかつ1.0以下を満たす第3の領域18cとを有している。電子写真用感光体1では、表面層18における原子数比Aが光導電層14から遠ざかるに従って漸次増加しているとともに、第1の領域18aと第2の領域18bと第3の領域18cとの合計の厚さに対する、第2の領域1
8bの厚さの割合が5%以上かつ25%以下である。
なお、本発明の目的が達成される範囲内において、かかる電子写真用感光体1の基本的構成を適宜変更することができる。
導電性基体10の構成材料としては特に制限されるものではないが、Al、SUS、Zn、Cu、Fe、Ti、Ni、Cr、Ta、Sn、Au、Ag等の金属材料や、それらの合金材料から構成することが好ましい。
また、樹脂やガラス・セラミック等の電気絶縁体の表面に、上述した金属やITOやSnO2などの透明導電性材料を蒸着して、導電処理した材料も用いることができる。Al合金を用いると、低コストとなり、しかも、軽量化でき、その上、後述する光導電層や電荷注入阻止層との密着性が高くなって信頼性が向上するという点で好適である。
電荷注入阻止層12は、導電性基体10と、光導電層14との間に必要に応じて設けられ、導電性基体10からの電荷の注入を阻止するために設けることが好ましい。すなわち、電荷注入阻止層12によって、所定方向の電荷の流れを制御し、ひいては、表面層18における電子の横流れ等をさらに厳密に制御して、解像度にさらに優れた電子写真用感光体1とすることができる。
また、電荷注入阻止層は、上述のようにアモルファスシリコン(a−Si)などのアモルファスシリコン系材料(以下、a−Si系材料と称する場合がある)により形成されるが、特にアモルファスシリコンに、C、N、O等を加えた合金のアモルファスシリコン系材料を用いるのが好ましい。そうすれば、高い光導電性特性、高速応答性、繰り返し安定性、耐熱性、耐久性などに優れた電子写真特性が安定して得られ、さらにアモルファスシリコン系材料により形成される表面層との整合性に優れたものとなる。
ここで、a−Siに、C、N、O等を加えた合金のa−Si系材料としては、a−SiC、a−SiN、a−SiO、a−SiGe、a−SiCN、a−SiNO、a−SiCO及びa−SiCNOなどを挙げることができる。これらのa−Si系材料による光導電膜は、たとえば、グロー放電分解法、各種スパッタリング法、各種蒸着法、ECR法、光CVD法、触媒CVD法、及び反応性蒸着法などにより成膜形成し、その成膜形成に当たってダングリングボンド終端用に水素(H)やハロゲン元素(FやCl)を、膜全体を100原子%としたときに、1〜40原子%の範囲で含有させることにより形成することができる。
また、光導電膜の成膜にあたっては、各層の暗導電率や光導電率などの電気的特性及び光学的バンドギャップなどについて所望の特性を得るために、周期律表第13族元素(以下、「第13族元素」と略す)や周期律表第15族元素(以下、「第15族元素」と略す)を含有させたり、C、N、Oなどの元素の含有量を調整したりして、上述した諸特性を調整することもできる。また、第13族元素及び第15族元素としては、共有結合性に優れて半導体特性を敏感に変え得る点、及び優れた光感度が得られるという点でホウ素(B)及びリン(P)を用いるのが望ましい。第13族元素及び第15族元素をC、O等の元素とともに含有させる場合には、第13族元素の含有量は0.1〜20000ppm、第15族元素の含有量は0.1〜10000ppmであるのが好ましい。
また、C、O等の元素を含有させないか、または微量含有させる場合は、第13族元素の含有量は0.01〜200ppm、第15族元素の含有量は0.01〜100ppmの範囲であることが好ましい。さらに、これらの元素は、層厚方向にわたって勾配を設けてもよく、その場合には層全体の平均含有量が上記範囲内であればよい。
以上述べたa−Si系材料は、後述の光導電層においてもその構成元素、構成比率の適正範囲は同じであるものの、電荷注入阻止層は、光導電層よりもより多くの第13族元素や第15族元素を含有させて導電性を調整したり、より多くのC、N、Oを含有させて高抵抗化させるとよい。
また、電荷注入阻止層の膜厚は0.5〜12μmの範囲内の値とされている。電化注入阻止層の膜厚をこの範囲にしておけば、比較的容易に均一な厚さに形成することができるとともに、導電性基体に対する十分な電荷注入阻止効果を発揮することができる。
図1に示すように、光導電層(第1の層)14は、アモルファスシリコン系材料を主成分とし、光導電性材料から構成されている。したがって、アモルファスシリコン系材料以外に、例えば、水素原子及びハロゲン原子からなる群から少なくとも1つ選択された元素を含有することが好ましい。すなわち、このような原子を添加することにより、光導電層における電荷移動度を、所定範囲に正確に制御することができるためである。
また、前述の電荷注入阻止層同様、必要に応じてa−Siに、C、N、O等を加えた合金のa−Si系材料を用いたり、第13族元素や第15族元素を含有させて導電性や光導電率などの電気的特性及び光学的バンドギャップなどを調整することもできる。
さらに、光導電層については、a−Si系材料に微結晶シリコン(μc−Si)を含んでいてもよく、このμc−Siを含ませた場合には、暗導電率・光導電率を高めることができるので、光導電層の設計自由度が増すといった利点がある。このようなμc−Siは、先に説明した成膜方法を採用し、その成膜条件を変えることにより形成することができる。
たとえば、グロー放電分解法では、導電性基体の温度及び高周波電力を高めに設定し、希釈ガスとしての水素流量を増すことによって形成できる。また、μc−Siを含む光導電層においても、先に説明したのと同様な不純物元素を添加してもよい。
また、光導電層の膜厚は、例えば1〜100μmの範囲内の値とされている。光導電層の膜厚をこの範囲とすることで、比較的容易に均一な厚さに形成することができるとともに、十分な光導電性を発揮することができる。かかる点で、光導電層の膜厚は、5〜50μmの範囲内の値とすることがより好ましく、8〜20μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、中間層は、アモルファスシリコン系材料と、炭素原子と、水素原子とを含有したa−SiC:Hを含むことが好ましい。この理由は、このような中間層とすることにより、後述する表面層との相乗効果によって、解像度に優れるとともに、ヒータレスシステムを採用した場合であっても、像流れが少ないa−Si感光体を得ることができるためである。
なお、中間層を構成するにあたり、構成材料に、電気特性の調整用として13族元素や15族を含有させてもよい。
また、中間層は、アモルファスシリコン(a−Si)以外に、種々の材料を用いることができる。例えば、a−Si系材料として、アモルファスシリコンナイトライド(a−SiN)、アモルファスシリコンオキサイド(a−SiO)、アモルファスシリコンオキシカーバイド(a−SiCO)、アモルファスシリコンオキシナイトライド(a−SiNO)などの高抵抗材料を用いてもよい。これらは、a−Siと同様の薄膜形成手段により成
膜し、その成膜形成に当たっては、ダングリングボンド終端用、もしくは硬度あるいは抵抗値調整用として水素やハロゲン(F、Cl)を、膜中にシリコン原子と炭素原子の総数に対して、1〜160原子%含有させるとよい。
表面層18は、例えば膜厚が1000〜1500Åの範囲とされている。表面層18の第1の領域18aおよび第2の領域18bは、アモルファスシリコン系材料と、炭素原子と、水素原子とを含有したa−SiC:Hを含み、表面層18の第3の領域18cは、アモルファスカーボン系材料と、水素原子とを含有したa−C:Hを含んでいる。
具体的には、電子写真用感光体1では、表面層18は、単位体積当たりの炭素の原子数をaとし、シリコンの原子数をbとしたときに、式A=a/(b+a)で表される原子数比Aが0.75以上かつ0.81未満を満たす第1の領域18aと、第1の領域18a上に積層した、原子数比Aが0.81以上かつ0.95以下を満たす第2の領域18bと、第2の領域18b上に積層した、原子数比Aが0.95より大きくかつ1.0以下を満たす第3の領域18cとを有している。電子写真用感光体1では、表面層18における原子数比Aが光導電層14から遠ざかるに従って漸次増加しているとともに、第1の領域18aと第2の領域18bと第3の領域18cとの合計の厚さに対する、第2の領域18bの厚さの割合が5%以上かつ25%以下である。
すなわち、電子写真用感光体1では、表面層18の自由表面近傍において、炭素の原子数比が比較的少ない第1の領域18aと、炭素の原子数比が比較的大きくシリコンの原子数比が小さい第3の領域18cとの間に、第3の領域18aに近づくにつれて炭素原子数比が増加する第2の領域18bが配置されている。
この第2の領域18bは、第1の領域18aと第2の領域18bと第3の領域18cとの合計の厚さに対し、第2の領域18bの厚さの割合が25%以下と、比較的小さくされている。第2の領域18bでは、厚さに対するC原子数比の変化の割合(以下、C原子量の傾きとする)が比較的大きく、かつ厚さが小さくされている。
第3の領域18cは、炭素の原子数比を示す原子数比Aの値が、0.95より大きくかつ1.0以下と、1.0に近い値を有しており、アモルファスカーボンを主成分とする層となっている。
原子数比Aが1.0に近い第3の領域18cは、高い硬度を有している。電子写真用感光体1では、第3の領域18cを最表面層に備えるので、表面の研磨量が著しく小さく抑制されている。また、原子数比Aが1.0に近い第3の領域18cは、最表面の酸化が抑制されている。これは、Si−O結合に比べてC−O結合のほうが結合エネルギが小さいためであり、膜中の特に最表面部分のC原子数比を大きくするほど、表面層13の表面が酸化することをより確実に抑制できる。第3の領域18cをa−C層として形成した場合には、印刷時のコロナ放電により発生するオゾンなどによって、表面層13の表面が酸化されることが適切に抑制されるため、高温高湿環境下などでの画像流れの発生を抑制することができる。
一方、第3の領域18cは、C原子の含有割合が高く、光透過性が比較的小さい。このため、第3の領域18cと同等の、原子数比Aが0.95より大きくかつ1.0以下の膜のみで1000〜1500Å厚の表面層を形成した場合、光導電層に到達する光量が小さくなり、形成される画像精度が低減する場合がある。電子写真用感光体1では、第1の領域18a、第2の領域18b、第3の領域18cと、C原子数比を段階的に大きくし、最表面の第3の領域18cの厚さを比較的低くしている。電子写真用感光体1において、第1の領域18aと第2の領域18bと第3の領域18cとの合計厚さに対する、第3の領
域の厚さの割合が45%以上かつ50%以下であることが好ましい。第3の領域の厚さの割合をこの範囲にしておくことで、表面層18における光透過性を高く確保しつつ、かつ表面層18の硬度を高くすることができる。同様に、第3の領域18cの厚さは、0.1μm以上かつ0.2μm以下であることが好ましい。
加えて、電子写真用感光体1では、第2の領域18bの、C原子量の傾きが比較的大きく、第2領域18bの厚さが小さくされている。このため電子写真用感光体1では、第1の領域18a、第2の領域18b、第3の領域18cの合計厚さが、比較的小さくされており、表面層18を通過する光の減衰を小さくしている。
また仮に、第1の領域18aと第3の領域18cとの間に、第2の領域18bが存在せず、C原子の原子数比Aが0.75以上かつ0.81未満を満たす第1の領域18aと、C原子の原子数比Aが0.95より大きくかつ1.0以下を満たす第3の領域18cとが連続している場合、第1の領域18aと第3の領域18cとの境界部分における、C原子数比の急激な変化に起因した、硬度や層構成の変化にともない、この境界部分に比較的大きな応力が発生する。第1の領域18aと第3の領域18cとの間隙に、第1の領域18aと第2の領域18bと第3の領域18cとの合計の厚さに対する、第2の領域18bの厚さの割合が5%以上と、厚さに対するC原子数比の変化の傾きが一定値以上ある第2の領域18bを設けておくことで、表面層18における内部応力を比較的低くすることができる。上述のように、第2の領域18bの膜厚は小さく、第1の領域18aと第2の領域18bと第3の領域18cとの合計厚さを小さくしつつ、表面層に発生する応力を低減させることができる。
表面層18における光透過性を高く確保しつつ、かつ表面層18の硬度を高くする点で、第1の領域18aと第2の領域18bと第3の領域18cとの合計厚さに対する、第1の領域18aの厚さの割合が10%以上かつ20%以下であることが好ましく、第1の領域18aと第3の領域18bとの厚さの合計が0.1μm以上かつ0.25μm以下であることが好ましい。
これらは、a−Siと同様の薄膜形成手段により成膜し、その成膜形成に当たっては、ダングリングボンド終端用、もしくは硬度あるいは抵抗値調整用として水素やハロゲン(F、Cl)を膜中に1〜160原子%含有させるとよい。
この理由は、表面層に、このような他の元素を含むことにより、表面層における表面硬度(kgf/mm2)や、移動度の値の制御がさらに容易にできる場合があるためである
。
電子写真用感光体1は、真空堆積膜形成法によって、所望特性が得られるように適宜成膜パラメーターの数値条件を設定しながら、製造することができる。本実施形態の電子写真用感光体1では、具体的には、DCパルスプラズマCVD法が採用される。なお、本発明の電子写真用感光体の製造方法は、特に限定されず、具体的には、グロー放電法(低周波プラズマCVD)、高周波プラズマCVD法、マイクロ波プラズマCVD法などの交流放電プラズマCVD法を用いてもよく、また、直流放電プラズマCVD法、ECRプラズマCVD法、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、光CVD法、触媒CVD(HOTワイヤーCVD)法等を用いてもよい。
電子写真用感光体1における電荷注入阻止層12、光導電層14、中間層16、および表面層18は、たとえば図3および図4に示したプラズマCVD装置2を用いることにより形成される。図3は、本発明の電子写真用感光体1の製造に用いるプラズマCVD装置の一実施形態の概略側断面図を示す。図4は、図3に示すプラズマCVD装置の概略上断
面図である。
プラズマCVD装置2は、支持体3を真空反応室4に収容したものであり、回転手段5、原料ガス供給手段6および排気手段7をさらに備えている。
支持体3は、導電性基体10を支持するためのものであるとともに、第1導体として機能するものである。この支持体3は、フランジ部30を有する中空状に形成されているとともに、導電性基体10と同様な導電性材料により全体が導体として形成されている。支持体3は、2つの導電性基体10を支持できる長さ寸法に形成されており、導電性支柱31に対して着脱自在とされている。そのため、支持体3では、支持した2つの導電性基体10の表面に直接触れることなく、真空反応室4に対して2つの導電性基体10の出し入れを行なうことができる。
導電性支柱31は、導電性基体10と同様な導電性材料により全体が導体として形成
されており、真空反応室4(後述する円筒状電極40)の中心において、後述するプレート42に対して絶縁材32を介して固定されている。
導電性支柱31には、導板33を介して直流電源34が接続されている。この直流電源34は、制御部35によってその動作が制御されている。制御部35は、直流電源34を制御することにより、導電性支柱31を介して、支持体3にパルス状の直流電圧を供給させるように構成されている(図5および図6参照)。
導電性支柱31の内部には、セラミックパイプ36を介してヒータ37が収容されている。セラミックパイプ36は、絶縁性および熱伝導性を確保するためのものである。ヒータ37は、導電性基体10を加熱するためのものである。ヒータ37としては、たとえばニクロム線やカートリッジヒーターを使用することができる。
ここで、支持体3の温度は、たとえば支持体3あるいは導電性支柱31に取り付けられた熱電対(図示略)によりモニタされており、この熱電対におけるモニタ結果に基づいて、ヒータ37をオン・オフさせることにより、導電性基体10の温度が目的範囲、たとえば200℃以上400℃以下から選択される一定の範囲に維持される。
真空反応室4は、導電性基体10に対して堆積膜を形成するための空間であり、円筒状電極40および一対のプレート41,42により規定されている。円筒状電極40は、第2導体として機能するものであり、支持体3の周囲を囲む円筒状に形成される。この円筒状電極40は、導電性基体10と同様な導電性材料により中空に形成されており、絶縁部材43,44を介して一対のプレート41,42に接合されている。
円筒状電極40は、支持体3に支持させた導電性基体10と円筒状電極40との間の距離D1が10mm以上100mm以下となるような大きさに形成されている。
円筒状電極40は、ガス導入口45および複数のガス吹き出し孔46が設けられているとともに、その一端において接地されている。なお、円筒状電極40は、必ずしも接地する必要はなく、直流電源34とは別の基準電源に接続してもよい。円筒状電極40を直流電源34とは別の基準電源に接続する場合、基準電源における基準電圧は、支持体3(導電性基体10)に対して負のパルス状電圧(図5参照)を印加する場合には、−1500V以上1500V以下とされ、支持体3(導電性基体10)に対して正のパルス状電圧(図6参照)を印加する場合には、−1500V以上1500V以下とされる。
ガス導入口45は、真空反応室4に供給すべき原料ガスを導入するためのものであり
、原料ガス供給手段6に接続されている。複数のガス吹き出し孔46は、円筒状電極40の内部に導入された原料ガスを導電性基体10に向けて吹き出すためのものであり、図の上下方向等間隔で配置されているとともに、周方向にも等間隔で配置されている。複数のガス吹き出し孔46は、同一形状の円形に形成されており、その孔径は、たとえば0.5mm以上2.0mm以下とされている。
もちろん、複数のガス吹き出し孔46の孔径、形状および配置については、適宜変更可能である。プレート41は、真空反応室4が開放された状態と閉塞された状態とを選択可能とするめのものであり、プレート41を開閉することによって真空反応室4に対する支持体3の出し入れが可能とされている。プレート41は、導電性基体10と同様な導電性材料により形成されているが、下面側に防着板47が取着されている。
これにより、プレート41に対して堆積膜が形成されるのが防止されている。この防着板47もまた、導電性基体10と同様な導電性材料により形成されているが、防着板47はプレート41に対して着脱自在とされている。そのため、防着板47は、プレート41から取り外することにより洗浄が可能であり、繰り返し使用することができる。
プレート42は、真空反応室4のベースとなるものであり、導電性基体10と同様な導電性材料により形成されている。プレート42と円筒状電極40との間に介在する絶縁部材44は、円筒状電極40とプレート42との間にアーク放電が発生するのを抑える役割を有するものである。
プレート42および絶縁部材44には、ガス排出口42A,44Aおよび圧力計49が設けられている。排気口42A,44Aは、真空反応室4の内部の気体を排出するためのものであり、排気手段7に接続されている、圧力計49は、真空反応室4の圧力をモニタリングするためのものであり、公知の種々のものを使用することができる。
図3に示したように、回転手段5は、支持体3を回転させるためのものであり、回転モータ50および回転力伝達機構51を有している。回転手段5により支持体3を回転させて成膜を行なった場合には、支持体3とともに導電性基体10が回転させられるために、導電性基体10の外周に対して均等に原料ガスの分解成分を堆積させることが可能となる。
回転モータ50は、導電性基体10に回転力を付与するものである。この回転モータ50は、たとえば導電性基体10を1rpm以上10rpm以下で回転させるように動作制御される。回転モータ50としては、公知の種々のものを使用することができる。
回転力伝達機構51は、回転モータ50からの回転力を導電性基体10に伝達・入力するためのものであり、回転導入端子52、絶縁軸部材53および絶縁平板54を有している。回転導入端子52は、真空反応室4内の真空を保ちながら回転力を伝達するためのものである。このような回転導入端子52としては、回転軸を二重もしくは三重構造としてオイルシールやメカニカルシール等の真空シール手段を用いることができる。
図3に示したように、原料ガス供給手段6は、複数の原料ガスタンク60,61,62,63、複数の配管60A,61A,62A,63A、バルブ60B,61B,62B,63B,60C,61C,62C,63C、および複数のマスフローコントローラ60D,61D,62D,63Dを備えたものであり、配管64およびガス導入口45を介して円筒状電極40に接続されている。
各原料ガスタンク60〜63は、たとえばB2H6、H2(またはHe)、CH4ある
いはSiH4が充填されたものである。バルブ60B〜63B,60C〜63Cおよびマ
スフローコントローラ60D〜63Dは、真空反応室4に導入する各原料ガス成分の流量、組成およびガス圧を調整するためのものである。
もちろん、原料ガス供給手段6においては、各原料ガスタンク60〜63に充填すべきガスの種類、あるいは複数の原料タンク60〜63の数は、導電性基体10に形成すべき膜の種類あるいは組成に応じて適宜選択すればよい。
排気手段7は、真空反応室4のガスをガス排出口42A,44Aを介して外部に排出するためのものであり、メカニカルブースタポンプ71およびロータリーポンプ72を備えている。これらのポンプ71,72は、圧力計49でのモニタリング結果により動作制御されるものである。すなわち、排気手段7では、圧力計49でのモニタリング結果に基づいて、真空反応室4を真空に維持できるとともに、真空反応室4のガス圧を目的値に設定することができる。真空反応室4の圧力は、たとえば1.0Pa以上100Pa以下とされる。
次に、プラズマCVD装置2を用いた堆積膜の形成方法について、電子写真用感光体1(図1参照)を作製する場合を例にとって説明する。
まず、導電性基体10に堆積膜(a−Si膜)を形成にあたっては、プラズマCVD装置2のプレート41を取り外した上で、複数の導電性基体10(図面上は2つ)を支持させた支持体3を、真空反応室4の内部にセットし、再びプレート41を取り付ける。
支持体3に対する2つの導電性基体10の支持に当たっては、支持体3の主要部を外套した状態で、フランジ部30上に、下ダミー基体38A、導電性基体10、中間ダミー基体38B、導電性基体10、および上ダミー基体38Cが順次積み上げられる。
各ダミー基体38A〜38Cとしては、製品の用途に応じて、導電性または絶縁性基体の表面に導電処理を施したものが選択されるが、通常は、導電性基体10と同様な材料により円筒状に形成されたものが使用される。
次いで、真空反応室4の密閉状態とし、回転手段5により支持体3を介して導電性基体10を回転させるとともに、導電性基体10を加熱し、排気手段7により真空反応室4を減圧する。
導電性基体10の加熱は、たとえばヒータ37に対して外部から電力を供給してヒータ37を発熱させることにより行なわれる。このようなヒータ37の発熱により、導電性基体10が目的とする温度に昇温される。導電性基体10の温度は、その表面に形成すべき膜の種類および組成によって選択されるが、たとえばa−Si膜を形成する場合には250℃以上300℃以下の範囲に設定され、ヒータ37のオン・オフすることにより略一定に維持される。
一方、真空反応室4の減圧は、排気手段7によってガス排出口42A,44Aを介して真空反応室4からガスを排出させることにより行なわれる。真空反応室4の減圧の程度は、圧力計49(図2参照)での真空反応室4の圧力をモニタリングしつつ、メカニカルブースタポンプ71(図2参照)およびロータリーポンプ72(図2参照)の動作を制御することにより、たとえば10−3Pa程度とされる。
次いで、導電性基体10の温度が所望温度となり、真空反応室4の圧力が所望圧力となった場合には、原料ガス供給手段6により真空反応室4に原料ガスを供給するとともに、
円筒状電極40と支持体3との間にパルス状の直流電圧を印加する。
これにより、円筒状電極40と支持体3(導電性基体10)との間にグロー放電が起こり、原料ガス成分が分解され、原料ガスの分解成分が導電性基体10の表面に堆積される。一方、排気手段7においては、圧力計49のモニタリングしつつ、メカニカルブースタポンプ71およびロータリーポンプ72の動作を制御することにより、真空反応室4におけるガス圧を目的範囲に維持する。
真空反応室4への原料ガスの供給は、バルブ60B〜63B,60C〜63Cの開閉状態を適宜制御しつつ、マスフローコントローラ60D〜63Dを制御することにより、原料ガスタンク60〜63の原料ガスを、所望の組成および流量で、配管60A〜63A,64およびガス導入口45を介して円筒状電極40の内部に導入することにより行なわれる。円筒状電極40の内部に導入された原料ガスは、複数のガス吹き出し孔46を介して導電性基体10に向けて吹き出される。
そして、バルブ60B〜63B,60C〜63Cおよびマスフローコントローラ60D〜63Dによって原料ガスの組成を適宜切り替えることにより、導電性基体10の表面には、電荷注入阻止層11、光導電層12および表面保護層13が順次積層形成される。
円筒状電極40と支持体3との間へのパルス状の直流電圧を印加は、制御部35によって直流電源34を制御することにより行なわれる。一般に、13.56MHzのRF帯域以上の高周波電力を使用した場合、空間で生成されたイオン種が電界によって加速され、正・負の極性に応じた方向に引き寄せられることになるが、高周波交流により電界が連続して反転することから、前記イオン種が導電性基体10あるいは放電電極に到達するより前に、空間中で再結合を繰り返し、再度ガスまたはポリシリコン粉体などのシリコン化合物となって排気される。
これに対して、導電性基体10側が正負いずれかの極性になるようなパルス状の直流電圧を印加してカチオンを加速させて導電性基体10に衝突させ、その衝撃によって表面の微細な凹凸をスパッタリングしながら成膜を行った場合には、極めて凹凸の少ない表面をもった膜が得られる。
このようなプラズマCVD法において、効率よくイオンスパッタリング効果を得るには、極性の連続的な反転を避けるような電力を印加することが必要であり、前記パルス状の矩形波の他には、三角波、直流電力、直流電圧が有用である。また、全ての電圧が正負いずれかの極性になるように調整された交流電力等でも同様の効果が得られる。印加電圧の極性は、原料ガスの種類によってイオン種の密度や堆積種の極性などから決まる成膜速度などを考慮して自由に調整できる。
ここで、パルス状電圧により効率よくイオンスパッタリング効果を得るには、支持体3(導電性基体10)と円筒状電極40との間の電位差は、たとえば50V以上3000V以下の範囲内とされ、成膜レートを考慮した場合、好ましくは500V以上3000V以下の範囲内とされる。
より具体的には、制御部35は、円筒状電極40が接地されている場合には、支持体(導電性支柱31)に対して、−3000V以上−50V以下の範囲内の負のパルス状直流電位V1を供給し(図5参照)、あるいは50V以上3000V以下の範囲内の正のパルス状直流電位V1を供給する(図6参照)。
一方、円筒状電極40が基準電極(図示略)に接続されている場合には、支持体(導電
性支柱31)に対して供給するパルス状直流電位V1は、目的とする電位差ΔVから基準電源により供給される電位V2を差分した値(ΔV−V2)とされる。基準電源により供給する電位V2は、支持体3(導電性基体10)に対して負のパルス状電圧(図5参照)を印加する場合には、−1500V以上1500V以下とされ、支持体3(導電性基体10)に対して正のパルス状電圧(図6参照)を印加する場合には、−1500V以上1500V以下とされる。
制御部35はまた、直流電圧の周波数(1/T(sec))が300kHz以下に、duty比(T1/T)が20%以上90%以下となるように直流電源34を制御する。
なお、本発明におけるduty比とは、図5および図6に示したようにパルス状の直流電圧の1周期(T)(導電性基体10と円筒状電極40との間に電位差が生じた瞬間から、次に電位差が生じた瞬間までの時間)における電位差発生T1が占める時間割合と定義される。たとえば、duty比20%とは、パルス状の電圧を印加する際の、1周期に占める電位差発生(ON)時間が1周期全体の20%であることを言う。
このイオンスパッタリング効果を利用して得られたa−Si膜や、a−SiC膜、a−C膜は、比較的小さな膜厚であっても、表面の微細凹凸が小さく平滑性が高い。
ここで、電荷注入阻止層12、光導電層14、中間層16、および表面層13の形成に当たっては、原料ガス供給手段6におけるマスフローコントローラ60D〜63Dおよびバルブ60B〜63B,60C〜63Cを制御し、目的とする組成の原料ガスが真空反応室4に供給されるのは上述の通りである。
たとえば、電荷注入阻止層12の形成では、原料ガスとして、SiH4(シランガス)などのSi含有ガス、B2H6などのドーパント含有ガス、および水素(H2)やヘリウム
(He)などの希釈ガスの混合ガスが用いられる。ドーパント含有ガスとしては、ホウ素(B)含有ガスの他に、窒素(N)あるいは酸素(O)含有ガスを用いることもできる。
光導電層12の形成では、原料ガスとして、SiH4(シランガス)などのSi含有ガ
スおよび水素(H2)やヘリウム(He)などの希釈ガスの混合ガスが用いられる。光導電層12においては、ダングリングボンド終端用に水素(H)やハロゲン元素(F、Cl)を膜中に1原子%以上40原子%以下含有させるように、希釈ガスとして水素ガスを用い、あるいは原料ガス中にハロゲン化合物を含ませておいてもよい。
また、原料ガスには、暗導電率や光導電率などの電気的特性及び光学的バンドギャップなどについて所望の特性を得るために、周期律表第13族元素(以下「第13族元素」と略す)や周期律表第15族元素(以下「第15族元素」と略す)を含有させてもよく、上記諸特性を調整するために炭素(C)、酸素(O)などの元素を含有させてもよい。
第13族元素および第15族元素としては、それぞれホウ素(B)およびリン(P)が共有結合性に優れて半導体特性を敏感に変え得る点、および優れた光感度が得られるという点で望ましい。
電荷注入阻止層11に対して第13族元素および第15族元素を炭素(C)、酸素(O)などの元素とともに含有させる場合には、第13族元素の含有量は0.1ppm以上20000ppm以下、第15族元素の含有量は0.1ppm以上10000ppm以下となるように調整される。
また、光導電層12に対して第13族元素および第15族元素を炭素(C)、酸素(O
)等の元素とともに含有させる場合、あるいは、電荷注入阻止層11および光導電層12に対して炭素(C)、酸素(O)等の元素を含有させない場合には、第13族元素は0.01ppm以上200ppm以下、第15族元素は0.01ppm以上100ppm以下となるように調整される。なお、原料ガスにおける第13属元素あるいは第15属元素の含有量を経時的に変化させることにより、これらの元素の濃度について層厚方向にわたって勾配を設けるようにしてもよい。この場合には、光導電層12における第13族元素および第15族元素の含有量は、光導電層12の全体における平均含有量が上記範囲内であればよい。
また、光導電層12については、a−Si系材料に微結晶シリコン(μc−Si)を含んでいてもよく、このμc−Siを含ませた場合には、暗導電率・光導電率を高めることができるので、光導電層22の設計自由度が増すといった利点がある。
このようなμc−Siは、先に説明した成膜方法を採用し、その成膜条件を変えることにより形成することができる。たとえば、グロー放電分解法では、導電性基体10の温度および直流パルス電力を高めに設定し、希釈ガスとしての水素流量を増すことによって形成できる。
また、μc−Siを含む光導電層12においても、先に説明したのと同様な元素(第13族元素、第15族元素、炭素(C)、酸素(O)など)を添加してもよい。
表面層13の形成においては、表面層18の形成においては、第1の領域18a、第2の領域18b、第3の領域18cと連続して成膜する過程において、原料ガスにおけるSiとCとの組成比について、時系列に変化させる。
第1の領域18aの形成においては、a−SiC系の原料ガスとして、SiH4(シランガス)などのSi含有ガスおよびCH4などのC含有ガスの混合ガスを供給する。第1の領域18aでは、例えば、SiH4ガスの流量とCH4ガスの流量の比は、第1の領域18aの成膜開始当初でSiH4:CH4=1:2に設定し、成膜の最中にCH4の比率を徐々に大きくしていき、第1の領域18aの成膜が終了する直前の時点ではSiH4:CH4=1:60としている。
SiH4:CH4=1:60と設定し第1の領域18aの成膜が終了した後、SiH4の流量を一旦0(ゼロ)にし、CH4ガスのみを流した状態とするとともに、電圧の印加を一時的に停止してプラズマの発生を停止する。このプラズマの停止時間は、例えば30sec〜15minの間隔とする。このように、CH4ガスのみを流すとともに、プラズマの停止時間を設けることで、第1の領域18aが成膜された状態で、真空反応室4内のSiH4ガスの濃度が十分に低減する。
上記プラズマの停止時間が所定時間だけ経過した後、電圧を再度印加してプラズマを発生させて、第2の領域18bから第3の領域18cを、連続して形成する。このプラズマ停止時間から、再度のプラズマの印加までの間、真空反応室4を開放することなく、基体温度等の制御も連続して行われている。このプラズマが発生したタイミングでは、真空反応室4内のSiH4ガス濃度は十分に低減されて、CH4ガス濃度が十分に高くされている。この停止時間が経過した後にプラズマを発生させると、第1の領域18aの上にC原子数比が比較的大きい反応種が到達し、C原子数比が比較的大きい膜(第2の領域18bと第3の領域18c)が形成される。
このように第1の領域18aの成膜後に、CH4ガスのみを流しつつプラズマを停止した時間を経て連続して成膜することで、第2の領域18bが形成される。第2の領域18
bには、このプラズマ停止時間を経て真空反応室4に残留したSi元素が取り込まれたり、第1の領域18aの最表面のSi原子が拡散することで、第1の領域18aの側から第3の領域18cの側にわたってSi原子が分布している。本実施形態では、プラズマ停止時間によって、真空反応室4内のSi原子が十分に低減されているので、第2の領域18bでは、厚さに対するC原子数比の変化の割合(以下、C原子量の傾きとする)が比較的大きく、かつ厚さが小さくされている。
表面層18を形成する際、パルス状電圧の大きさは、例えば−300V〜−450Vと比較的高くされる。電圧の大きさを比較的高くすることで、C原子数比が比較的大きい表面層の硬さを、比較的大きくすることができる。
導電性基体10に対する膜形成が終了した場合には、支持体3から導電性基体10を抜き取ることにより、図1に示した電子写真用感光体1を得ることができる。
そして、成膜後は、成膜残渣を取り除くため、真空反応室4内の各部材を分解し、酸、アルカリ、ブラスト等の洗浄を行い、次回成膜時に欠陥不良となる発塵が無いようウエットエッチングを行う。ウエットエッチングに代えて、ハロゲン系(ClF3、CF4、O2、NF3、SiF6またはこれらの混合ガス)のガスを用いてガスエッチングを行うことも有効である。
本発明によれば、成膜速度を落とすことなく成膜時におけるアーク放電を抑制し、特性ムラおよび欠陥の少ない良好な堆積膜(電荷注入阻止層11、光導電層12および表面層13)を高速で形成することができる。
そのため、膜厚ムラが少なく良質な堆積膜を提供できるとともに、このような良質な堆積膜を備えた電子写真用感光体1を提供できるようになる。
図7及び図8に、電子写真用感光体1を備えた画像形成装置100の模式図及び電子写真用感光体1を含む現像装置120の部分拡大図を示す。
まず、図7及び図8において示すように、画像形成装置100は、現像装置120、電子写真用感光体121、現像ローラ122、転写ローラ123、クリーナー125、126、帯電器127、現像器128、光源(LED)130、転写材搬送手段112、定着手段113を基本的に備えている。画像形成装置100は、4色に対応した現像装置120a、120b、120c、120dを備えており、タンデム式カラープリンタの例である。
画像形成装置100では、図7及び図8に示す電子写真用感光体121を矢印方向に回転させ、この電子写真用感光体121の表面上に、主帯電器127によって均一なコロナ帯電を行い、これに光源130により発した光を、図示しない原稿に照射する。次いで、その反射光をミラー系、レンズ系、フィルター等を介して、電子写真用感光体121の表面上に導き、それが投影されて静電潜像が形成される。
したがって、この静電潜像に対して、現像器120におけるトナーコンテナ111からトナー125が供給されてトナー像を形成することができる。一方、転写材通路およびレジストローラーよりなる転写材搬送手段112を通って、電子写真用感光体121に供給される紙やプラスチックなどの転写材は、転写・分離帯電器を備えた転写ローラ123と、電子写真用感光体121の間隙において、背面からトナーとは反対極性の電界を与えられ、これによって、電子写真用感光体121の表面のトナー像は、転写材に転移するとともに、電子写真用感光体121側から分離される。
次いで、分離された転写材は、定着装置113に至って、トナー像が定着されるととも
に、転写材は装置外に排出される。なお、転写部位において、転写に寄与せず電子写真用感光体121の表面に残る残留トナーについては、クリーナー125、126に至り、そこに備えられたクリーニングブレード等によってクリーニングされる。電子写真用感光体121は、クリーニングブレードでのクリーニングや、転写ローラ123との摺動し、表面は研磨され易い状態となる。
こうして、上記クリーニングにより更新された電子写真用感光体121は、更に除電光源(図示せず)から除電露光を与えられた後、再び同様のサイクルに供せられることになる。
導電性基体としてアルミニウム合金からなる外径30mm、長さ359mm、厚さ1.5mmの引き抜き管の外周面を鏡面加工して洗浄したものを用意した。
これを図2に示す成膜装置にセットして、上記実施形態の成膜条件によって、表面層のカーボン含有量の異なる感光体のサンプルA、B、C、D、E、Fを作製した。表1に示す各感光体のち、サンプルD、E、Fは、本発明の実施例となっている。サンプルA、B、Cは、最表面層の成膜時の電圧を比較的低くして成膜したサンプルであり、Siの含有量が比較的大きく、炭素の原子数比を示す原子数比Aの値が比較的小さくなっており、本発明の範囲外のサンプルである。最表面層における炭素の原子数比を示す原子数比Aの値は、サンプルA、B、C、D、E、Fの順に大きくなっている。サンプルD、E、Fは、炭素の原子数比を示す原子数比Aの値が0.95以上1.0以下になっている。
次いで、作成したa−Si感光体を、京セラミタ(株)製のモノクロプリンターLS−4020DN改造装置に搭載し、後述する評価に供した。これらのドラムを通常環境下(室温23℃、相対湿度60%)で、連続印刷を10万枚行い、その際の研磨量を測定した。結果、サンプルD、E、Fの研磨量は250Å以下であったのに対し、サンプルA、B、Cの研磨量は500Å以上となった。
また、上記装置を用い、特定の評価パターンを印刷出力し、出力した画像の評価を行ったところ、サンプルC、D、E、Fでは画像流れが視認されなかったのに対し、サンプルA〜Cを用いて出力した画像に、画像流れを確認した。
また、図9は、上記電子写真用感光体Dと同一条件で作製した感光体の1つについて、ESCA装置を用いて成分分析を行った結果を示している。装置は、アルバック・ファイ社製、ESCA 5800を用いた。エッチングガスとして、Arを用いた。エッチング時の印加電流値は3.589〜3.610μAであった。
図9に示すように、良好な特性を示す感光体Dは、原子数比Aが0.75以上かつ0.81未満を満たす第1の領域と、第1の領域上に積層した、原子数比Aが0.81以上かつ0.95以下を満たす第2の領域と、第2の領域上に積層した、原子数比Aが0.95より大きくかつ1.0以下を満たす第3の領域とを有している。加えて、表面層における原子数比Aが光導電層から遠ざかるに従って漸次増加しているとともに、第1の領域と第2の領域と第3の領域との合計の厚さに対する、第2の領域の厚さの割合が20%以上か
つ25%以下となっている。かかる特徴を備える電子写真用感光体は、耐研磨性が高く、画像流れ等の発生も少ない。
以上、本発明の電子写真用感光体および画像形成装置について説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行ってもよいのはもちろんである。