JP5644154B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
その結果、特許文献1の技術は、一次再結晶組織が残留しやすく、連続焼鈍法で二次再結晶させるには、安定性の点で難があることが明らかとなった。これは、比較的ピン止め力の弱いMn(Se,S)をインヒビターとして用いていることと、未固溶のインヒビター成分が多く、分散が不均一であることに原因があると推定された。さらに、スキンパス圧延を利用すると、そのまま二次再結晶させる場合に比べて配向性が大きく低下しやすいという問題がある。また、特許文献2の技術は、二次再結晶を完了させるために、高温もしくは長時間の仕上焼鈍が必要であり、例えば、1000℃で二次再結晶を完了させるためには6〜10分間の均熱時間が必要とされているため実用的な技術ではない。
以上説明したように、上記従来技術はいずれも、製造コストや生産性、二次再結晶の安定性の点で工業的に実用可能な技術とは言い難いものでしかなかった。
表1に示した成分組成からなるA〜Dの鋼を実験室的に溶製し、鋼素材とし、1200℃に加熱後、熱間圧延し、板厚2.7mmの熱延板とし、その後、上記熱延板を2分割し、そのうちの一方については、熱延板焼鈍を施すことなく、また、残りの一方については、乾燥窒素中で1000℃×60secの熱延板焼鈍を施した後、冷間圧延して最終板厚0.35mmの冷延板とした。なお、上記冷間圧延は、1回の冷間圧延で最終板厚まで圧延する条件(中間焼鈍なし)と、1回目の冷間圧延で中間厚0.4〜2.0mmまで圧延し、800℃×60secの中間焼鈍を施した後、2回目の冷間圧延(最終冷間圧延)で最終板厚とする条件で行った。その後、上記最終冷延後の冷延板に、1000℃×2minの連続焼鈍(仕上焼鈍)を施し、製品板とした。
まず、連続焼鈍法で二次再結晶させる場合には、バッチ焼鈍法に比べて焼鈍温度が高くなるため、AlNが固溶してピン止め力(インヒビター効果)が低下するのを防ぐためには、最低限のAlとNが必要と考えられ、0.005mass%以上のAl、N:0.003mass%以上のNがその下限値であると考えられる。
また、短時間の連続焼鈍(仕上焼鈍)で安定して二次再結晶を起こさせるためには、熱間圧延中もしくは中間焼鈍で微細析出したAlNをできるだけ粗大化させずにおくことが必要であると考えられる。したがって、熱延板焼鈍しないこと、および中間焼鈍温度を950℃以下とすることは、AlNの粗大化を防止する効果があると考えられる。
C:0.12mass%以下
Cは、熱間圧延時のα/γ変態によって結晶組織を均一化する効果がある。また、冷間圧延時の変形帯の形成を促進し、一次再結晶組織中のGoss方位粒を増やすことで、二次再結晶を安定して起こさせる効果がある。しかし、製品鋼板中のCが0.005mass%を超えると、磁気時効を起こして磁気特性が経時劣化する。そのため、鋼素材にCが0.005mass%を超えて含まれる場合には、中間焼鈍や仕上焼鈍で脱炭除去することが望ましい。なお、脱炭処理は、コスト増加の原因となるため、Cの添加は必須ではない。一方、Cの含有量が0.12mass%を超えると、上記脱炭処理で0.005mass%以下に低減することが困難となる。よって、Cの含有量は0.12mass%以下とするが、好ましくは0.06mass%以下の範囲である。なお、Cは、脱炭焼鈍を行う場合は0.005mass%超えでもよいが、行わない場合は0.005mass%以下とするのが好ましい。
Siは、鋼の比抵抗を高めて鉄損を改善する効果があり、この効果を得るためには2.0mass%以上の添加が必要である。一方、4.5mass%を超えて添加すると、冷間圧延することが困難となる。よって、Siの含有量は2.0〜4.5mass%の範囲とする。好ましくは2.8〜3.8mass%の範囲である。
Mnは、Sによる熱間圧延時の割れを防止する効果がある。また、微細なS化合物、Se化合物を形成して一次再結晶組織の成長を阻害して、二次再結晶を促進する効果(インヒビター効果)もある。しかし、Mn含有量が0.005mass%以下では上記効果は小さく、一方、0.3mass%を超えて添加しても上記効果が飽和するだけである。よって、Mnの含有量は0.005〜0.3mass%の範囲とする。好ましくは0.02〜0.1mass%の範囲である。
Alは、Nと微細なAlNを形成し、一次再結晶組織の成長を阻害するインヒビター効果のある本発明における重要な元素である。しかし、Alが0.005mass%未満では十分なインヒビター効果が得られない。一方、Alが0.012mass%を超えると、AlNの微細分散が困難となるので、Alは0.005〜0.012mass%の範囲とする。好ましくは0.006〜0.09mass%の範囲である。
Nは、Alと微細なAlNを形成し、一次再結晶組織の成長を阻害するインヒビター効果のある本発明における重要な元素である。しかし、Nが0.0030mass%未満では十分なインヒビター効果が得られない。一方、Nが0.012mass%を超えると、ブリスターとよばれる表面欠陥が発生するようになる。よって、Nは0.0030〜0.012mass%の範囲とする。好ましくは0.0035〜0.0060mass%の範囲である。
Sb:0.005〜0.2mass%、Sn:0.005〜0.2mass%
SbおよびSnは、一次再結晶集合組織を改善し、二次再結晶を安定化する効果がある。また、焼鈍中の酸化を防止して、磁気特性の劣化を防ぐ効果もある。このような効果を得るためには、それぞれ0.005mass%以上添加するのが好ましい。しかし、0.2mass%を超えて添加すると、鋼板が脆化するようになる。よって、SbおよびSnを添加する場合は、それぞれ0.005〜0.2mass%の範囲とする。より好ましくは0.01〜0.1mass%の範囲である。
Cu,S,SeおよびBは、いずれも微細な析出物を形成して一次再結晶組織の成長を阻害するインヒビター効果のある元素であり、補助的なインヒビター元素として添加することができる。しかし、Cu:0.01mass%未満、S:0.001mass%未満、Se:0.001%未満およびB:0.0001mass%未満では、十分なインヒビター効果が得られず、一方、Cu:0.2mass%超え、S:0.02mass%超え、Se:0.02mass%超えおよびB:0.005mass%超えでは、析出物の微細分散が困難となる。よって、Cu,S,SeおよびBは、それぞれ上記範囲で添加するのが好ましい。より好ましい範囲は、それぞれCu:0.02〜0.1mass%、S:0.002〜0.01mass%、Se:0.002〜0.01mass%およびB:0.0002〜0.002mass%の範囲である。
本発明に適合する上記成分組成に調整した鋼を溶製し、連続鋳造法または造塊−分塊圧延法を用いて所定厚みの鋼素材(スラブ)とした後、このスラブを再加熱し、熱間圧延して熱延板とする。上記熱間圧延前のスラブ加熱は、インヒビターの固溶温度以上で行うのが好ましいが、生産性や製造コストの観点から、1250℃以下で行うのが好ましい。なお、スラブ加熱温度は、低温ほど熱延板のバンド組織の発達が抑制されるため、二次再結晶を安定化させる観点からも、低温度で行うのが好ましい。また、熱間圧延条件は、通常公知の条件であればよく、特に制限はない。
なお、2回以上の中間焼鈍を行う場合、すなわち、3回以上の冷間圧延を行う場合には、磁気特性を向上させる観点から、最終冷間圧延に限らず全ての冷延圧下率を30〜80%とするのが好ましく、50〜70%とするのがより好ましい。
なお、鋼素材のCが0.005mass%超えである場合には、湿潤H2/N2雰囲気中で850℃程度の温度で脱炭焼鈍を施してから、上記仕上焼鈍して二次再結晶させるのが好ましい。
上記の結果を表2に併記して示した。この結果から、AlおよびNを本発明の範囲で含有する鋼から製造された製品板は、粗大な二次再結晶粒が発現しており、優れた磁束密度B50が得られていることがわかる。
上記の結果を製造条件と共に表3に示した。この結果から、熱延板焼鈍温度、中間焼鈍温度および最終冷延圧下率が本発明の条件を満たして製造された鋼板は、いずれも粗大な二次再結晶粒が発現しており、優れたB50が得られていることがわかる。
上記の結果を、製造条件と共に表4に示した。この結果から、熱延板焼鈍温度、中間焼鈍温度および最終冷延圧下率が本発明の条件を満たして製造された鋼板は、いずれも粗大な二次再結晶粒が発現しており、優れたB50が得られていることがわかる。
Claims (3)
- C:0.12mass%以下、Si:2.0〜4.5mass%、Mn:0.005〜0.3mass%、Al:0.005〜0.012mass%、N:0.0030〜0.010mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブをインヒビター固溶温度以上に加熱した後、熱間圧延し、中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延で最終板厚の冷延板とし、その後、仕上焼鈍として1回以上の連続焼鈍を施す方向性電磁鋼板の製造方法において、上記中間焼鈍を750〜950℃の温度とし、最終冷間圧延を30〜80%の圧下率として行った後、均熱温度1020℃以下、均熱時間3分以下の連続焼鈍で二次再結晶させることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
- 熱間圧延後、950℃以下の温度で熱延板焼鈍を施すことを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
- 上記鋼スラブは、上記成分組成に加えてさらに、Sb:0.005〜0.2mass%、Sn:0.005〜0.2mass%、Cu:0.01〜0.2mass%、S:0.001〜0.02mass%、Se:0.001〜0.02mass%およびB:0.0001〜0.005mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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