JP6344263B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、優れた磁気特性を有する方向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。
方向性電磁鋼板は、変圧器や発電機の鉄心材料として用いられる軟磁性材料で、鉄の磁化容易軸である<001>方位が鋼板の圧延方向に高度に揃った結晶組織を有するものである。このような集合組織は、方向性電磁鋼板の製造工程中、二次再結晶焼鈍の際にいわゆるゴス(Goss)方位と称される(110)[001]方位の結晶粒を優先的に巨大成長させる、二次再結晶を通じて形成される。
従来、このような方向性電磁鋼板は、4.5mass%以下程度のSiと、MnS,MnSe,AlNなどのインヒビター成分を含有するスラブを、1300℃以上に加熱し、インヒビター成分を一旦固溶させたのち、熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍を施して、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延によって最終板厚とし、ついで湿潤水素雰囲気中で一次再結晶焼鈍を施して一次再結晶および脱炭を行ったのち、マグネシア(MgO)を主剤とする焼鈍分離剤を塗布してから、二次再結晶およびインヒビター成分の純化のために、1200℃で5h程度の最終仕上焼鈍を行うことによって製造されてきた(例えば、特許文献1、特許文献2)。
上記したように、従来の方向性電磁鋼板の製造に際しては、MnS,MnSe,AlNなどの析出物(インヒビター成分)をスラブ段階で含有させ、1300℃以上の高温でのスラブ加熱によってこれらのインヒビター成分を一旦固溶させ、後工程で微細析出させることにより二次再結晶を発現させるという工程が採用されてきた。
すなわち、従来の方向性電磁鋼板の製造工程では、1300℃を超える高温でのスラブ加熱が必要であったため、その製造コストは極めて高いものにならざるを得ず、近年の製造コスト低減の要求に応えることができないというところに問題を残していた。
そこで、そもそもスラブにインヒビター成分を含有させずに二次再結晶を発現させる技術について検討が進められ、特許文献3では、インヒビター成分を含有させなくとも二次再結晶出来る技術(インヒビターレス法)が開示されている。
このインヒビターレス法は、より高純度化した鋼を利用し、テクスチャー(集合組織の制御)によって二次再結晶を発現させる技術である。インヒビターレス法では、高温のスラブ加熱が不要であり、低コストでの方向性電磁鋼板の製造が可能であるが、インヒビターを有しないが故に、製造時や、途中工程での温度ばらつきなどの影響を受け、製品での磁気特性にバラつきが生じやすいといった特徴があった。
また、集合組織の制御は本技術においては重要な要素であり、こうした集合組織制御が十分に行えない場合は、インヒビターを用いる技術に比べ二次再結晶後のゴス方位((110)[001])への集積度は低く、磁束密度も低くなる場合が多かった。
米国特許第1965559号明細書 特公昭56−21050号公報 特許第3707268号公報 特許第3551849号公報 特許第4123653号公報
それに対し、特許文献4では、Goss方位が二次再結晶するために有利な一次再結晶集合組織を開示している。さらに特許文献5では、集合組織を制御する方法の一つとして最終冷延前の結晶粒径と圧下率の範囲を組み合わせる技術が開示されている。このように、集合組織の制御については、多くの技術が提案されているが、得られる磁束密度の値およびそのばらつきの程度は十分なものではなかった。
本発明は、上記した問題を有利に解決するもので、Alを0.010mass%以下に抑制したインヒビターレス成分に準じた成分系で、高温スラブ加熱を回避しつつ、炭化物制御を積極的に行い、1回以上の冷間圧延を行う方向性電磁鋼板の製造方法において、製品長手方向の磁気特性のばらつきを抑えつつ、安定して良好な磁束密度を有する方向性電磁鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
発明者らは、上記課題の解決に向けて鋭意検討を重ねた。その結果、熱延板焼鈍を含むいずれかの冷間圧延前焼鈍の冷却途中もしくは焼鈍後に、ある温度範囲で一定時間以上の熱処理を行うことで、長手方向のばらつきが小さく優れた磁束密度を得られる、1回以上の冷間圧延を行う一連の方向性電磁鋼板の製造方法を開発するに至った。
以下、本発明を開発する契機となった実験について説明する。
<実験>
C:0.04mass%、Si:3.0mass%、酸可溶性Al:0.006mass%、N:0.004mass%、Mn:0.03mass%、S:0.002mass%、Cu:0.02mass%、Cr:0.02mass%、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼を溶製し、1250℃に加熱し、熱間圧延して板厚:2.4mmの熱延板とし、1030℃×40秒で熱延板焼鈍し、700℃×1分〜480時間の熱処理を施しもしくは施さず、冷間圧延を行って最終板厚:0.27mmの冷延板とした。ついで、55vol%H2-45vol%N2の湿潤雰囲気下で860℃×100秒の脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を実施した。その後、MgOを主体とする焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布し、乾燥した後、水素雰囲気下で1200℃×5時間の純化処理と二次再結晶とを含む仕上げ焼鈍を施した。さらに、コイルを4分割し、元のコイルの端部2箇所と分割点3箇所の合計5箇所から幅:100mmの試験片を10枚ずつ採取して、各々JIS C 2556に記載の方法で磁束密度Bを測定した。測定した磁束密度Bの平均値を図1に示す。
同図より、熱延板焼鈍後の熱処理によって、長手方向のばらつきが少なく優れた磁束密度が得られ、その熱処理時間には最適な範囲があることが分った。また、その最適時間範囲で700℃の熱処理を施して析出した炭化物は、SEM-EDX分析スペクトル強度比で、XFeKα/XCKα≦12の関係を満たしていた。ただし、XCKα、XFeKαはそれぞれC、FeのKα線に対するSEM-EDX分析スペクトル強度の最大値である。また、装置は、JEOL製JSM−7001Fを用い、加速電圧15kVにおいて、30秒積算の点分析を行った。
本発明は、上記知見に基づいて更に検討を重ねて完成したものである。
本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.C:0.02〜0.08mass%、Si:2.0〜5.0mass%、酸可溶性Al:0.001〜0.010mass%およびMn:0.005〜0.50mass%を含有し、Nを0.005mass%未満並びにSeおよび/またはSを合計で0.005mass%未満に抑制し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる方向性電磁鋼板用のスラブを、1300℃以下の温度で加熱後、熱間圧延をし、熱延板焼鈍をし、1回の冷間圧延もしくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延をし、脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍をし、仕上げ焼鈍をする方向性電磁鋼板の一連の製造方法において、熱間圧延後から最終の冷間圧延前までの間のいずれかの冷間圧延前の鋼組織中に、SEM-EDX分析スペクトル強度比で、XFeKα/XCKα≦12の関係を満たす析出物を析出させることを特徴とする、方向性電磁鋼板の製造方法。
なお、XCKα、XFeKαはそれぞれC、FeのKα線に対するSEM-EDX分析スペクトル強度の最大値である。
2.前記方向性電磁鋼板の一連の製造方法において、熱延板焼鈍を含むいずれかの冷間圧延前焼鈍の冷却過程もしくは焼鈍後に、600〜800℃での15分以上の熱処理を行うことを特徴とする、前記1記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
3.上記スラブが、さらに、Cu:0.01〜0.50mass%、Sb:0.005〜0.50mass%、P:0.005〜0.50mass%、Sn:0.01〜0.50mass%、Mo:0.01〜0.50mass%、Ni:0.005〜1.50mass%、Cr:0.01〜1.50mass%、Bi:0.005〜0.50mass%、B:0.0002〜0.0025mass%、Te:0.0005〜0.010mass%、Nb:0.001〜0.010mass%、V:0.001〜0.010mass%およびTa:0.001〜0.010mass%のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする、前記1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
4.前記一次再結晶焼鈍において、昇温過程の200〜700℃の区間を50℃/s以上で急速加熱することを特徴とする、前記2または3に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
5.前記冷間圧延後のいずれかの段階で、鋼板表面に圧延方向と交差する方向に溝を形成する、もしくは連続的または断続的に電子ビームあるいはレーザーを照射する磁区細分化処理を施すことを特徴とする、前記1〜4のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明によれば、冷間圧延前の炭化物制御によって冷間圧延後、さらには一次再結晶焼鈍後の集合組織を改善することができるので、高温スラブ加熱をしなくとも、優れた磁束密度を有する方向性電磁鋼板が得られる。
熱処理時間と磁束密度との関係を示した図である。 熱処理で析出したグラファイトのSEM-EDX分析スペクトルを示す図である。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明を適用する方法性電磁鋼板の鋼素材(スラブ)が有す必要成分組成について説明する。
C:0.02〜0.08mass%
Cは、0.02mass%に満たないと、炭化物そのものが減少し、炭化物制御による効果が表れにくくなる。一方、0.08mass%を超えると、脱炭焼鈍で、磁気時効の起こらない0.005mass%以下に低減することが困難となる。よって、Cは0.02〜0.08mass%の範囲とする。好ましくは0.025〜0.05mass%の範囲である。
Si:2.0〜5.0mass%
Siは、鋼の比抵抗を高め、鉄損を低減するのに必要な元素である。上記効果は、2.0mass%未満の添加では十分ではない。一方、5.0mass%を超えると、加工性が低下し、圧延して製造することが困難となる。よって、Siは2.0〜5.0mass%の範囲とする。好ましくは2.5〜4.0mass%の範囲である。
酸可溶性Al:0.001〜0.010mass%
Alは、表面に緻密な酸化膜を形成し、脱炭を阻害することがあるため、酸可溶性Al量で0.010mass%以下とし、望ましくは0.007mass%以下に抑制する。但し、酸素親和力の高いAlは、製鋼段階で微量添加することにより鋼中の溶存酸素量を低減し、特性劣化につながる酸化物系介在物の低減などを見込めるため、0.001mass%以上とし、望ましくは0.003mass%以上の範囲とする。
Mn:0.005〜0.50mass%
Mnは、鋼の熱間加工性を改善するために必要な元素である。上記効果は、0.005mass%未満の添加では十分ではない。一方、0.5mass%を超えると、製品板の磁束密度が低下するようになる。よって、Mnは0.005〜0.50mass%の範囲とする。好ましくは0.02〜0.20mass%の範囲である。
N:0.005mass%未満
Nは、スラブ加熱時フクレなどの欠陥の原因となることもあるため、0.005mass%未満に抑制する必要がある。
Seおよび/またはSを合計で0.005mass%未満
SeおよびSはインヒビター形成成分であるため、本発明では、両者の合計を0.005mass%未満に低減した鋼素材とする。
以上、本発明の鋼板の必要成分について述べたが、さらに上記成分以外に、磁気特性の改善を目的として、Cu:0.01〜0.50mass%、Sb:0.005〜0.50mass%、P:0.005〜0.50mass%、Sn:0.01〜0.50mass%、Mo:0.01〜0.50mass%、Ni:0.005〜1.50mass%、Cr:0.01〜1.50mass%、Bi:0.005〜0.50mass%、B:0.0002〜0.0025mass%、Te:0.0005〜0.010mass%、Nb:0.001〜0.010mass%、V:0.001〜0.010mass%およびTa:0.001〜0.010mass%のうちから選んだ1種または2種以上を適宜添加してもよい。
次に、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法について説明する。
本発明では、前述した成分組成を有する鋼を、常法の精錬プロセスで溶製した後、従来公知の造塊−分塊圧延法または連続鋳造法で鋼素材(スラブ)を製造してもよいし、あるいは、直接鋳造法で100mm以下の厚さの薄鋳片を製造してもよい。上記スラブは、常法に従い、1300℃以下の温度に加熱した後、熱間圧延に供する。なお、鋳造後、加熱することなく直ちに熱間圧延してもよい。また、薄鋳片の場合には、熱間圧延してもよいし、熱間圧延を省略してそのまま以後の工程に進んでもよい。
ついで、熱間圧延して得た熱延板は、必要に応じて熱延板焼鈍を施す。ただし、熱延板焼鈍は、冷間圧延を1回のみ行う場合は必ず施す。この熱延板焼鈍の焼鈍温度は、良好な磁気特性を得るために、800〜1150℃の範囲とするのが好ましい。800℃未満では、熱間圧延で形成されたバンド組織が残留し、整粒の一次再結晶組織を得ることが難しくなり、二次再結晶の発達が阻害される。一方、1150℃を超えると、熱延板焼鈍後の粒径が粗大化し過ぎて、やはり、整粒の一次再結晶組織を得ることが難しくなるからである。
熱延後あるいは熱延板焼鈍後の熱延板は、1回の冷間圧延または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延をして最終板厚の冷延板とする。上記中間焼鈍の焼鈍温度は、900〜1200℃の範囲とするのが好ましい。900℃未満では、中間焼鈍後の再結晶粒が細かくなる上に、一次再結晶組織におけるGoss核が減少して製品板の磁気特性が低下する傾向がある。一方、1200℃を超えると、熱延板焼鈍のときと同様に、結晶粒が粗大化し過ぎて、整粒の一次再結晶組織を得ることが難しくなるからである。
また、最終板厚とする冷間圧延(最終冷間圧延)では、<111>//ND方位を十分発達させるため、圧下率を80〜95%とすることが好ましい。
ここで、本発明では、熱延板焼鈍を含むいずれかの冷間圧延前焼鈍の冷却過程もしくは焼鈍後に、600〜800℃で15分以上焼鈍する熱処理を行う。その際、熱延板焼鈍後のパーライト組織中、もしくは結晶粒内に微細に析出している炭化物は、準安定相のセメンタイトから安定相のグラファイトへ変化、凝縮し、析出物個数が減少する。すなわち、冷間圧延で鋼板に不均一な歪をもたらす原因となった炭化物の個数を効果的に低減することができるのである。
さらに、グラファイトはセメンタイトよりも柔らかいため、存在していても、圧延でもたらされる不均一な歪は減少する。その結果、一次再結晶焼鈍後の集合組織は、Goss方位の集積度を高めるのに最適な{111}<112>方位や、{12 4 1}<014>方位の結晶粒が増加する。
上記熱処理を、800℃を超えた温度で熱処理を行うとα-γ変態が起こり、グラファイトが析出しないため、それ以下の温度で処理することが重要である。望ましくは760℃以下で行う。一方、600℃未満の温度で上記熱処理を行うと、Cの拡散速度が遅く、グラファイトの析出までに莫大な時間が必要となる。そのため、上記した熱処理は600℃以上、望ましくは650℃以上で行う。
また、上記熱処理は、グラファイトを長手方向均一に十分析出させるために、熱処理時間として15分未満では不十分であり、15分以上、望ましくは30分以上で行う。さらに、この熱処理は、熱延板焼鈍もしくは冷間圧延後の中間焼鈍の冷却過程で行っても良いが、操業の面から、一旦冷却後、バッチ式の焼鈍炉で、10時間以下の時間で焼鈍することとしてもよい。
そして、その際、セメンタイトからのグラファイト化の程度として、SEM-EDXによる点分析を、加速電圧15kV、30秒積算で行い、SEM-EDX分析スペクトル強度比が、XFeKα/XCKα≦12の関係を満たすことが、本発明では、特に重要である(図2)。ただし、XCKα、XFeKαはそれぞれC、FeのKα線に対するSEM-EDX分析スペクトル強度の最大値である
なお、XFeKα/XCKαの下限は特に限定されず、ゼロであっても良い。
さらに、最終板厚とした冷延板は、その後、脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施す。この一次再結晶は、脱炭性の観点からは、焼鈍温度は800〜900℃の範囲とするのが好ましく、また、雰囲気は湿潤雰囲気とするのが好ましい。
なお、一次再結晶焼鈍の昇温過程の200〜700℃の区間を50℃/s以上で急速加熱することによって、Goss方位粒の再結晶核が増加して、鋼板の低鉄損化を達成することができるので、本発明では、高磁束密度と低鉄損を兼ね備えた方向性電磁鋼板の製造が可能となる。
一次再結晶焼鈍を施した鋼板は、MgOを主体とする焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布して、乾燥した後、仕上焼鈍を施し、Goss方位に高度に集積させた二次再結晶組織を発達させるとともに、フォルステライト被膜を形成させる。この仕上焼鈍の焼鈍温度は、二次再結晶を発現のためには800℃以上で行うことが、また、二次再結晶を完了させるためには800℃以上の温度で20時間以上保持することがそれぞれ有利である。さらに、良好なフォルステライト被膜を形成させるためには、鋼板を1200℃程度の温度まで昇温し、1時間以上保定するのが好ましい。
さらに、仕上焼鈍後の鋼板は、その後、鋼板表面に付着した未反応の焼鈍分離剤を除去するための水洗やブラッシング、酸洗等を行った後、平坦化焼鈍を施して形状矯正することが、鉄損の低減には有効である。これは、仕上焼鈍は一般的にコイル状態で行うため、コイルの巻き癖が付き、それが原因で鉄損測定時に特性が劣化する場合があるためである。
また、鋼板を積層して使用する場合には、上記平坦化焼鈍の前もしくは後で、鋼板表面に絶縁被膜を被成することが有効であり、特に、鉄損の低減を図るためには、絶縁被膜として、鋼板に張力を付与することができる張力付与被膜を適用するのが好ましい。なお、張力付与被膜の形成には、バインダーを介して張力被膜を塗布する方法や、物理蒸着法や化学蒸着法により無機物を鋼板表層に蒸着させる方法を採用すると、被膜密着性に優れかつ鉄損低減効果が極めて大きい絶縁被膜を形成することができる。
さらに、鉄損をより低減するため、本発明では磁区細分化処理を施すことができる。なお、その処理方法としては、一般的に実施されているような、最終製品板に溝を形成したり、電子ビーム照射、レーザー照射、プラズマ照射等により、線状または点列状に熱歪や衝撃歪を導入する方法、最終板厚に冷間圧延した鋼板等、中間工程の鋼板表面にエッチング加工を施して溝を形成したりする方法等を用いることができる。
次に、本発明の実施例について説明する。
<実施例1>
C:0.050mass%、Si:2.8mass%、酸可溶性Al:0.007mass%、N:0.003mass%、Mn:0.006mass%、Se:0.001mass%、S:0.002mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを連続鋳造法で製造し、1250℃に加熱したのち、熱間圧延して板厚:2.4mmの熱延板とし、ついで、1000℃×30秒で熱延板焼鈍したのち、表1に記載の熱処理を施し、冷間圧延を行って最終板厚:0.27mmの冷延板とした。
次いで、55vol%H2-45vol%N2の湿潤雰囲気下で840℃×100秒の脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍をした。その後、MgOを主体とする焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布し、乾燥した後、水素雰囲気下で1200℃×5時間の純化処理と二次再結晶とを含む仕上げ焼鈍を施した。コイルを4分割し、元のコイルの端部2箇所と分割点3箇所の合計5箇所から幅:100mmの試験片を10枚ずつ採取して、各々JIS C 2556に記載の方法で磁束密度B(T)を測定し全体(50枚)の平均値と箇所毎(10枚)の平均値を求めた。測定箇所毎の測定値の最大値と最小値の差をΔB(T)としてコイル長手方向の磁性ばらつきの指標とした。その結果を表1に併記する。
同時に、熱処理後の鋼板における炭化物の加速電圧15kVでのSEM-EDX分析スペクトル強度比:XFeKα/XCKαを表1に併記する。ただし、XCKα、XFeKαはそれぞれC、FeのKα線に対するSEM-EDX分析スペクトル強度の最大値である。
同表から、本発明を適用することでコイル長手方向の磁性のばらつきが小さく、優れた磁束密度の方向性電磁鋼板が得られることがわかる。
<実施例2>
表2に記載の成分と残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼を溶製し、1280℃に加熱し、熱間圧延して板厚:2.0mmの熱延板とし、1030℃×30秒で熱延板焼鈍し、バッチ炉で700℃×1時間の熱処理を行い、冷間圧延を行って最終板厚:0.27mmの冷延板とした。次いで55vol%H2-45vol%N2の湿潤雰囲気下で840℃×100秒の脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍をした。その後、MgOを主体とする焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布し、乾燥した後、水素雰囲気下で1200℃×5時間の純化処理と二次再結晶とを含む仕上げ焼鈍を施した。上記のようにして得た鋼板から、幅:100mmの試験片を各条件で10枚ずつ採取し、JIS C 2556に記載の方法で磁束密度B(T)を測定し平均値を求めた。その結果を表2に併記する。
同時に、熱処理後の鋼板における炭化物の加速電圧15kVでのSEM-EDX分析スペクトル強度比:XFeKα/XCKαを表2に併記する。ただし、XCKα、XFeKαはそれぞれC、FeのKα線に対するSEM-EDX分析スペクトル強度の最大値である。
同表から、本発明を適用することで優れた磁束密度の方向性電磁鋼板が得られることがわかる。
<実施例3>
C:0.028mass%、Si:3.5mass%、酸可溶性Al:0.008mass%、N:0.003mass%、Mn:0.01mass%、S:0.003mass%、Ni:0.01mass%、Sb:0.02mass%、P:0.01mass%を含有し残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを連続鋳造法で製造し、1250℃に加熱し、熱間圧延して板厚:2.2mmの熱延板とし、1040℃×40秒で熱延板焼鈍し、冷間圧延を行い中間板厚:1.3mmとし、1100℃×30秒で中間焼鈍をし、冷間圧延を行い最終板厚:0.23mmの冷延板とした。ただし、表3に記載のタイミングでバッチ炉を用い700℃×10時間の熱処理を施した。次いで55vol%H2-45vol%N2の湿潤雰囲気下で840℃×100秒の脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍をした。ここで一次再結晶焼鈍の昇温速度は表3に記載したものとした。その後、MgOを主体とする焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布し、乾燥した後、水素雰囲気下で1200℃×5時間の純化処理と二次再結晶とを含む仕上げ焼鈍を施した。さらに、表3に記載の一部の鋼板にはレーザーもしくは電子ビームを用いた磁区細分化処理を施した。磁区細分化処理は、鋼板の圧延方向に垂直な方向に5mm間隔で、レーザーで列状にもしくは電子ビームで点列状に処理した。上記のようにして得た鋼板から、鋼板幅方向に幅:100mmの試験片を各条件で10枚ずつ採取し、JIS C 2556に記載の方法で磁束密度B(T)を測定し平均値を求めた。その結果を表3に併記する。
同時に、熱処理後の鋼板における炭化物の加速電圧15kVでのSEM-EDX分析スペクトル強度比:XFeKα/XCKαを表3に併記する。ただし、XCKα、XFeKαはそれぞれC、FeのKα線に対するSEM-EDX分析スペクトル強度の最大値である。
同表から、本発明を適用することで優れた磁性を有する方向性電磁鋼板が得られることがわかる。

Claims (4)

  1. C:0.02〜0.08mass%、Si:2.0〜5.0mass%、酸可溶性Al:0.001〜0.010mass%およびMn:0.005〜0.50mass%を含有し、Nを0.005mass%未満並びにSeおよび/またはSを合計で0.005mass%未満に抑制し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる方向性電磁鋼板用のスラブを、1300℃以下の温度で加熱後、熱間圧延をし、熱延板焼鈍をし、1回の冷間圧延もしくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延をし、脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍をし、仕上げ焼鈍をする方向性電磁鋼板の一連の製造方法において、熱延板焼鈍を含むいずれかの冷間圧延前焼鈍の冷却過程もしくは焼鈍後に、600〜800℃での15分以上の熱処理を行い、熱間圧延後から最終の冷間圧延前までの間のいずれかの冷間圧延前の鋼組織中に、SEM-EDX分析スペクトル強度比で、XFeKα/XCKα≦12の関係を満たす析出物を析出させることを特徴とする、方向性電磁鋼板の製造方法。
    なお、XCKα、XFeKαはそれぞれC、FeのKα線に対するSEM-EDX分析スペクトル強度の最大値である。
  2. 上記スラブが、さらに、Cu:0.01〜0.50mass%、Sb:0.005〜0.50mass%、P:0.005〜0.50mass%、Sn:0.01〜0.50mass%、Mo:0.01〜0.50mass%、Ni:0.005〜1.50mass%、Cr:0.01〜1.50mass%、Bi:0.005〜0.50mass%、B:0.0002〜0.0025mass%、Te:0.0005〜0.010mass%、Nb:0.001〜0.010mass%、V:0.001〜0.010mass%およびTa:0.001〜0.010mass%のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 前記一次再結晶焼鈍において、昇温過程の200〜700℃の区間を50℃/s以上で急速加熱することを特徴とする、請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  4. 前記冷間圧延後のいずれかの段階で、鋼板表面に圧延方向と交差する方向に溝を形成する、もしくは連続的または断続的に電子ビームあるいはレーザーを照射する磁区細分化処理を施すことを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。

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