JP5643612B2 - 画像処理装置およびその方法 - Google Patents

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Description

本発明は、画像形成における画像濃度の制御に関する。
電子写真方式などの画像形成装置は、感光体ドラムや感光体ベルトなどの像担持体をレーザ光などにより走査露光して画像信号に応じた静電潜像を形成し、静電潜像を現像し、現像した画像を記録紙などに転写することで画像を形成する。その際、レーザ光などを一次元方向(例えば左から右)へ主走査するとともに、主走査の方向と直交する方向(例えば上から下)に像担持体を副走査する方式を用いる。従って、像担持体には主走査方向の線分(走査線)が、副走査方向に一定の間隔(基準走査線間隔)で多数平行に形成される。
このような画像形成において、各種の原因により、画像濃度の濃淡による縞模様(バンディング)が発生すると、画像品質を著しく損う問題がある。例えば、像担持体の回転速度や移動速度(以下、像担持体の速度)の誤差により、走査線の間隔に誤差が生じ、バンディングが発生する。つまり、感光体全面に亘り一様に露光したいが、像担持体の速度が速ければ走査線の間隔が広がって単位面積当りの露光量が小さくなり画像濃度が低下する。一方、像担持体の速度が遅ければ走査線の間隔が狭まって単位面積当りの露光量が大きくなり画像濃度が増加する。
また、レーザ光の照射強度の誤差によってもバンディングが発生する。つまり、感光体全面に亘り一様に露光したいが、レーザ光の照射強度が弱ければ露光量が小さくなり画像濃度が低下し、レーザ光の照射強度が強ければ露光量が大きくなり画像濃度が増加する。
特許文献1は、像担持体の速度の誤差による走査線の位置の誤差を検出し、検出した誤差から直前の走査線との間隔を算出し、算出した間隔から露光量を調整する発明を開示する。
しかし、形成される画像の濃度は走査線の粗密の影響を受けるから、露光量の調整によるバンディングの補正は、現在の走査線の情報に加え、周辺の走査線の情報を必要とする。特許文献1の発明は、補正に用いる走査線の間隔を示す情報が、現在の走査線と直前の走査線の間隔を示す情報だけであり、バンディングを充分に補正することができない。
現在の走査線以降の走査線の位置を予測すれば、現在の走査線に加えて、周辺の走査線の情報を得ることができ、それら情報を用いて露光量を調整することが考えられる。しかし、走査線の予測位置や調整すべき露光量に誤差があれば、バンディングを適切に補正することができない。
特開平2-131956号公報
本発明は、走査線の疎密による濃度変動を抑制してバンディングを低減することを目的とする。
本発明は、前記の目的を達成する一手段として、以下の構成を備える。
本発明にかかる画像処理装置は、
像担持体の上における、現在のラインの走査線位置の副走査方向の誤差を算出する誤差の算出手段と、
前記像担持体の上における、現在のライン、並びに、前記現在のラインに対して以前の複数のラインの各走査線位置を示す情報を格納する格納手段と、
前記格納手段に格納された情報に基づいて、前記像担持体の上における、前記現在のラインの走査線位置と前記現在のラインの次に走査されるラインの走査線位置との間の距離を予測する予測手段と、
前記現在のラインの直前に走査されたラインの走査線位置と前記現在のラインの走査線位置との距離、及び前記現在のラインの走査線の走査線位置と前記現在のラインの次に走査されるラインの走査線位置との間の距離に基づいて、露光量の補正率を算出し、前記補正率によって前記現在のラインの露光量を制御する制御手段と、
前記格納手段に格納された情報を参照して、前記予測手段が、前記現在のラインの走査線位置と前記現在のラインの次に走査されるラインの走査線位置との間の距離を予測する際に用いる係数を設定する係数の設定手段とを有することを特徴とする。
本発明によれば、走査線の疎密による濃度変動を抑制してバンディングを低減することができる。
実施例の画像形成装置の構成例を説明する図。 走査線間隔の誤差を説明する図。 走査線間隔と画像濃度の関係を説明する模式図。 露光量制御を説明するフローチャート。 露光量制御を行う構成例を説明するブロック図。 センサの動作を説明する模式図。 走査線位置テーブルを説明する図。 走査線の間隔を算出する処理を説明する模式図。 予測濃度を説明する模式図。 画像形成装置が行う各処理の順序を説明する模式図。 キャリブレーションを説明するフローチャート。 走査線の位置誤差を説明する図。 予測関数sh()の算出を説明する図。
以下、本発明にかかる実施例の画像処理を図面を参照して詳細に説明する。
[装置の構成]
図1により実施例の画像形成装置の構成例を説明する。
プリンタコントローラ11は、例えばパーソナルコンピュータなどの外部装置13から印刷命令および印刷すべき画像を表す画像データの受信する。そして、受信した画像データに、カラーマッチング、色分解、ガンマ補正、ハーフトーン処理などの各種画像処理を施して印刷用の画像データを生成する。さらに、プリンタコントローラ11は、制御命令および印刷用の画像データをプリンタエンジン12に送信して、画像を形成させる。また、プリンタコントローラ11は、後述する露光量の制御を行う。
プリンタエンジン12は、制御部201、各種デバイス、各種センサを有する。各種デバイスには、感光体ドラム(像担持体)401の回転や記録紙の搬送に用いる各種モータが含まれる。また、各種センサには、エンコーダ、光学式位置センサなどが含まれる。制御部201は、プリンタコントローラ11から入力される制御命令、各種センサによって取得した情報に基づき、各種デバイスの動作を制御する。
感光体ドラム401の表面は、帯電器402によって帯電される。制御部201は、印刷用の画像データに応じてレーザスキャナ403内の半導体レーザを駆動する。半導体レーザが出力するレーザ光は、レーザスキャナ403内のポリゴンミラーによって偏向され、感光体ドラム401上を走査する。現像器404は、感光体ドラム401上に形成された静電潜像をトナーによって現像し、トナー像を形成する。転写器405は、感光体ドラム401上のトナー像を記録紙などに転写する。定着器406は、記録紙などに転写されたトナー像を熱と圧力によって記録紙に定着する。
また、エンコーダ501は、感光体ドラム401の回転位置を検出する。センサ502、BDセンサ503は、レーザスキャナ403によって照射されるレーザ光の副走査方向の位置を検出する光学式位置センサである。
なお、以上の説明では、簡単化のために、単一の画像形成ステーション(感光体ドラム401、帯電器402、現像器404などを含む)のみを示した。しかし、カラー画像を形成する装置においては、例えばシアンC、マゼンタM、イエローYおよびブラックKの各色に対応する画像形成ステーションが記録紙の搬送方向に沿って順次配置される。あるいは、一つの感光体ドラムの周囲に各色の現像器を配置し、または、回転可能な筐体に各色の現像器を配置して、現像すべき色に対応する現像器を感光体ドラムに対向させて当該色のトナー像を現像する。そして、一つの転写器によって各色のトナー像を記録紙に転写する構成も可能である。
[走査線間隔]
画像形成ステーションは、感光体ドラム401の回転速度が一定になるよう制御し、かつ、レーザ光による各走査線の書き出しタイミングの時間間隔が一定になるよう制御して、基準走査線間隔を維持する。
感光体ドラム401の半径をr、感光体ドラム401の回転角速度をω、各走査線の書き出しタイミングの間隔をt0とする。そして、1ライン目の走査線(走査線1)の書き出しタイミングを0とすると、2ライン目の走査線(走査線2、以下、nライン目の走査線を走査線nと呼ぶ)の書き出しタイミングはt0である。また、感光体ドラム401表面における走査線1の走査線位置を0とすると、走査線2における感光体ドラム401の回転角度はt0・ωであるから、角度と円弧長の関係から、走査線2の走査線位置はr・t0・ωである。さらに、走査線3における書き出しタイミングは2・t0、走査線位置は2・r・t0・ωになる。従って、基準走査線間隔における、走査線nの書き出しタイミングt(n)と走査線位置Db(n)は下式で表される。
t(n) = (n - 1)・t0
Db(n) = (n - 1)・r・t0・ω …(1)
つまり、基準走査線間隔はr・t0・ωであり、画像形成ステーションはr・t0・ωが一定になるように感光体ドラム401の回転を制御する。
しかし、様々な原因により走査線間隔に誤差が発生する。主な原因として、感光体ドラム401の回転速度変動、および、ポリゴンミラーの面倒れ(複数ある反射面の角度のばらつき)によるレーザ照射の位置誤差が挙げられる。図2により走査線間隔の誤差を説明する。図2(a)に示すように、感光体ドラム401の回転速度ωが変動すると、走査線nの走査線位置Da(n)は、基準走査線間隔における走査線位置Db(n)からずれる(誤差Dx(n))。また、図2(b)に示すように、ポリゴンミラーの面倒れによりレーザ光Lの反射角が変動すると、レーザ光Lの走査位置が走査線位置Db(n)からずれる(誤差Lx(n))。
図3の模式図により走査線間隔と画像濃度の関係を説明する。図3(a)に示すように、レーザ光Lの強度が一定で、走査線が等間隔であれば、濃度が均一な画像を形成することができる。しかし、上述するように、走査線は等間隔ではなく走査線間隔には変動(誤差)があり、図3(b)に示すような、走査線間隔の粗密が生じる。従って、レーザ光Lの強度が一定であれば、走査線間隔が密の部分において画像濃度が増加し、走査線間隔が疎の部分において画像濃度が減少する。この画像濃度の変化がバンディングである。
図3(c)は、レーザ光Lの強度を制御してバンディングを補正する様子を示している。つまり、走査線間隔が密の部分はレーザ光Lの強度を弱め、走査線間隔が疎の部分はレーザ光の強度を強めることで、走査線間隔の粗密による画像濃度の変化を打ち消してバンディングを抑制する。なお、レーザ光Lの強度は一定にし、一ドット当りのレーザ光Lの発光時間を、走査線間隔が密の部分は短くし、走査線間隔が疎の部分は長く制御してもよい。
ただし、上述したように、レーザ光Lの強度(または発光時間)の制御(以下、露光量制御)は、現在の走査線の情報だけではなく、周辺の走査線の情報を考慮する必要がある。
[露光量制御]
図4のフローチャートにより露光量制御を説明する。なお、図4に示す処理は、レーザ光の走査ごとに行われ、一画像の副走査方向の画素数(ライン数)分、回繰り返される。また、図5のブロック図により露光量制御を行う構成例を説明する。
プリンタコントローラ11の走査線位置算出部104は、走査線nにおける走査線位置の誤差を算出し、当該誤差を走査線位置格納部105に出力する(S401)。
走査線位置算出部104は、まず、エンコーダ501が発生する感光体ドラム401の回転に対応するパルス信号を積算して、感光体ドラム401の回転角θ'を取得する。そして、回転角θ'から走査位置Da(n)を式(2)によって算出し、式(1)によって算出される誤差がない場合の走査線位置Db(n)と走査線位置Da(n)の差分Dx(n)を式(3)により算出する。
Da(n) = r・θ' …(2)
Dx(n) = Db(n)- Da(n) …(3)
続いて、走査線位置算出部104は、センサ502からレーザ光Lの照射位置のずれLx(n)を取得する。図6の模式図によりセンサ502の動作を説明する。センサ502は、受光素子を三角形のスリット601で覆った構成を有し、レーザ光Lの検出期間に相当する幅のパルス信号を出力する。同じ速度で走査されるレーザ光Lの照射位置が異なると、その位置に応じてパルス信号の幅が変化するため、パルス信号の幅から照射位置のずれLx(n)を算出することができる。図6に示すように、レーザ光Lが基準照射位置603にあればセンサ502が出力するパルス信号の幅はw1であるが、照射位置604のようにLx(n)ずれるとセンサ502が出力するパルス信号の幅はw2になる。
センサ502が出力するパルスの幅の変化から、レーザ光Lの照射位置のずれLx(n)を算出することができる。スリット601の形状を直角三角形とし、直角を挟む一辺がレーザ走査方向に平行とすると、パルス幅w2と基準パルス幅w1の差分に比例係数を掛けることで、照射位置のずれLx(n)が求まる。比例係数は直角三角形の斜辺の傾きにより決まり、傾きが45度の場合は比例係数は1であり、パルス幅の差分に相当する距離が照射位置のずれLx(n)である。そして、走査線位置の誤差Px(n)は次式で表される。
Px(n) = Dx(n) + Lx(n) …(4)
次に、走査線位置格納部105は、走査線nにおける走査線位置の誤差Px(n)を入力すると、格納する走査線位置テーブルを順次更新する(S402)。
図7により走査線位置テーブルを説明する。走査線位置テーブルは、図7(a)に示すように、現在の走査線より以前の各走査線の、本来の走査線位置を基準とする位置誤差Px(n)を格納する。これらの情報は、nがインクリメントされる度に、以下の式により最新の情報に更新される。
Px(n-m) = Px'(n-m+1);

Px(n-2) = Px'(n-1);
Px(n-1) = Px'(n);
Px(n) = Px(n); …(5)
ここで、Px'は前回までの処理で得られた誤差、
Pxは現在の処理で得られた誤差。
m+1は走査線位置の誤差情報の格納数(例えば201)。
また、一つの画像のプリントを開始する前に、図7(b)に示すように、走査線位置テーブルが格納する誤差を零に初期化する。これは、プリントの開始時の走査線の位置情報は、前回のプリントとの連続性をもたないためである。なお、本実施例では、初期値として、走査位置の誤差が零を設定する例を説明するが、レーザ光Lで画像形成領域外を走査して、走査線位置の情報を取得して、実際の誤差を初期設定してもよい。
次に、走査線間隔算出部106は、更新された走査線位置テーブルを参照して、現在の走査線n(現ライン)と周辺の走査線(周辺ライン)の間隔を算出する(S403)。つまり、現在の走査線n(現ライン)と前の走査線n-1(前ライン)の間隔G(n, n-1)、および、現ラインnと後の走査線n+1(後ライン)の間隔G(n, n+1)を算出する。
図8の模式図により走査線の間隔を算出する処理を説明する。図8において破線は、プリンタの解像度から決まる基準走査線間隔Xの走査線位置を示す。また、実線は実際の走査線位置に対応する。間隔G(n, n-1)は、現ラインの誤差Px(n)と前ラインの誤差Px(n-1)が既知であるから下式より算出される。
G(n, n-1) = X + Px(n) - Px(n-1) …(6)
一方、間隔G(n, n+1)は、現ラインnの走査時においてはPx(n+1)が未取得であるから単純に計算することができない。そこで、既知の走査線の誤差Px(n-i)を用いる線形予測(次式)により、間隔の推定値G'(n, n+1)を算出する。
G'(n, n+1) = X + Px'(n+1) - Px(n)
Px'(n+1) = ΣaiPx(n-i) …(7)
ここで、Px'(n+1)は後ラインn+1の誤差の推定値、
aiは予測係数(例えば、i=0〜4)。
線形予測法は、事前の観測値の線形写像として将来の値を予測する手法であり、一般に、下式で記述される。
x'(k) = Σaix(k-i) …(8)
ここで、x'(k)は予測値、
x(k-i)は事前に観測された値、
aiは予測係数。
なお、予測係数aiと推定値Px'の関係については後述する。また、上記では、線形予測法を用いる例を説明したが、カルマンフィルタや、画像形成装置の動きを模したシミュレータを利用するなど他の予測手法を用いることが可能である。
次に、補正率算出部107は、詳細は後述するが、補正率Rを算出する(S404)。そして、露光量補正部108は、露光量保持部103が保持するレーザ光Lの強度Eを補正率Rにより補正し、補正後のレーザ光Lの強度E'をプリンタエンジン12の制御部201に入力する(S405)。
E' = R・E …(9)
ステップS406の判定により、画像の末尾に達するまで、ステップS401からS405の処理が繰り返される。
一方、ハーフトーン(HT)処理部102は、カラーマッチング、色分解、ガンマ補正などの画像処理が施され、画像データ格納部101に格納された画像データにハーフトーン処理を施して印刷用の画像データ(例えば二値画像データ)を生成する。HT処理部102が生成した二値画像データは、プリンタエンジン12の制御部201に入力される。
●補正率Rの算出
補正率算出部107は、走査線間隔の誤差により発生するバンディングを低減するように補正率Rを算出する。言い換えれば、以下に説明する予測濃度OD101と予測濃度OD102が等しくなるように補正率Rを定める。
OD101は、走査線間隔の誤差がなく本来のレーザ光Lの強度Eで露光した場合の現在の走査線nにおける予測濃度である。また、OD102は、走査線間隔の誤差があり、補正後のレーザ光Lの強度E'で露光した場合の走査線nにおける予測濃度である。OD101とOD102は、間隔G(n, n-1)、G'(n, n+1)から次のように予測される。
OD101 = sh(0) + Σish(iX) …(10)
OD102 = R×sh(0) + Σish{G(n, n+i)} …(11)
ここで、sh()は本来のレーザ光Lの強度Eで孤立ドットを印刷した場合の濃度分布を表す関数、
Xは基準走査線間隔、
iの範囲は{-1, 1}。
図9の模式図により予測濃度を説明する。なお、図9には、簡易化のために、隣接する3ラインのドットのみが形成されている例を示す。ドットは広がりをもち、隣接するドットに重なるように印刷される。従って、注目位置の濃度は、注目位置に対応するドットと、その周辺ドットの、注目位置における濃度の和として認識される。
図9(a)は、走査線位置の変動がなく、ドットを本来のレーザ光Lの強度Eで露光した場合の濃度変化を示す。従って、図9(a)に示す注目位置の濃度は、注目ラインのドットの濃度901と、隣接するラインのドットの濃度(二つとも濃度902)の和に相当する。式(10)の右辺の第一項は図9(a)に示す注目位置の濃度901に対応し、第二項は図9(a)に示す注目位置の濃度902の和に対応する。
一方、図9(b)は、走査線位置の変動があり、注目位置の走査線を補正後のレーザ光Lの強度E'で露光した場合の濃度変化を示す。従って、隣接するラインの濃度は濃度903と904のように異なった値を示す。式(11)の右辺の第一項は図9(b)に示す補正後のレーザ光Lの強度E'で露光した注目位置の濃度901に対応し、第二項は図9(b)に示す注目位置の濃度903と904の和に対応する。
なお、周辺走査線のドットの濃度は、注目位置の濃度に対して影響する。従って、厳密には画像の全走査線のドットの濃度の影響を考慮する必要があるが、注目位置からある程度遠い走査線のドットの濃度の影響は充分に小さく、無視することができる。そこで、本実施例においては、注目位置(現ライン)の前後の走査線のドットの濃度について、その影響を考慮する。
予測濃度を一致させる条件(OD101=OD102)により、補正率Rは下式で算出される。下式において、G(n, n+1)には、走査線間隔算出部106が算出したG(n, n-1)およびG(n, n-1)が代入される。
R = 1 + 1/sh(0)×Σi[sh(iX) - sh{G(n, n+i)}] …(12)
●各処理の順序
図10の模式図により画像形成装置が行う各処理の順序を説明する。領域1001は像形成が可能な領域を示し、領域1002は形成する画像の領域を示す。
プリンタエンジン12の制御部201は、図6に示すレーザ素子411にレーザ信号1004を供給する。レーザ素子411はレーザ信号1004に従いレーザ光Lを出力する。レーザ光Lは、ポリゴンミラー412によって偏向され、BDセンサ503、センサ502が配置された領域および領域1001を走査する。
レーザ信号1004は、BDセンサ503に水平同期信号(BD信号1005)を出力させるための信号部1007と、領域1002に画像を形成するための画像部1008に区分される。信号部1007は、少なくとも、BD信号1005が出力され、レーザ光Lがセンサ502の位置を走査する(レーザ位置検出信号1006が出力される)までの期間1009においてアクティブである。そして、BD信号1005が出力され、所定時間1010が経過すると、画像部1008がアクティブになる。
また、エンコーダ501のドラム位置検出信号1011は、レーザ位置検出信号1006とほぼ同じタイミングで出力される。レーザ位置検出信号1006とドラム位置検出信号1011が出力され、所定時間1010が経過する前に、露光量補正部108は、補正後のレーザ光Lの強度E'を出力し、その後、画像部1008がアクティブになる。
このように、現ラインnと周辺ラインn-1、n+1の走査位置の誤差情報からレーザ光Lの強度Eの補正率R(言い換えれば露光量の補正率)を算出して、レーザ光Lの強度Eを補正(言い換えれば露光量を補正)する。従って、走査線位置の変動に起因する走査線の疎密による画像濃度の変動に対応して走査線の露光量を制御することができる。その結果、走査線の疎密による濃度変動を抑制してバンディングを効果的に低減することができる。
[予測のキャリブレーション]
上記の露光量制御においては、後ラインの位置の誤差Px'を予測し、走査線間隔に誤差があることを前提に現ラインにおける濃度OD102を予測し、これらの予測に基づき露光量Eの補正率Rを算出した。もし、これら予測に大きな誤差があれば、露光量Eを適切に補正することができない。そこで、予測のキャリブレーションを行う。なお、キャリブレーションは、図1に示す画像形成装置の電源投入直後、所定数の画像形成を行った後、ユーザが指定する場合など、所定のタイミングで行う。
図1、図5に示す濃度検出センサ504、並びに、図5に示す予測係数算出部109および濃度予測モデル調整部110がキャリブレーションを実行するための構成例である。図11のフローチャートによりキャリブレーションを説明する。
予測係数算出部109は、走査線位置格納部105の走査線位置テーブルから最新の誤差情報を読み込む(S411)。なお、電源投入直後など、走査線位置テーブルが格納する情報が現在の画像形成装置の状態を反映していない場合は、感光体ドラム401上にテスト画像を露光・現像するなどして最新の誤差情報を取得する。
次に、予測係数算出部109は、誤差情報から算出した予測係数a(予測パラメータ)を走査線間隔算出部106に出力する(S412)。走査線間隔算出部106は、入力した予測係数aを保持し、以降、予測係数aを使用して走査線の間隔Gを算出する。
図12により走査線の位置誤差を説明する。図12(a)は走査線位置テーブルから取得した200本分の走査線の位置誤差の一例を示し、走査線数換算で約63本周期、振幅2μmの正弦波状の位置誤差の変動と微小なノイズがある。図12(a)に示す位置誤差系列の予測誤差を最小にする予測係数aは、下式から求めることができる。
Xa = b
X\Xa = X\b
a = X\b …(13)
ここで、┌ ┐
│Px(n-m) 0 … 0 │
│ : Px(n-m) … : │
│Px(n-1) : … 0 │
X = │ P(x) Px(n-1) … Px(n-m)│
│ 0 P(x) … : │
│ : : … Px(n-1)│
│ 0 … 0 P(x) │
└ ┘
┌ ┐ ┌ ┐
│ 1 │ │ 1│
│-a0│ b = │ 0│
a = │-a1│ │:│
│-a2│ │ 0│
│-a3│ └ ┘
│-a4│
└ ┘
演算記号「\」は左除算。
式(13)においてXは(走査線位置テーブルが格納する誤差情報の数)+(予測係数の数)分の行数と、(予測係数の数)+(一列)分の列数をもつ行列である。なお、誤差情報の数はm+1、予測係数の数は五である。一列目は係数により予測される位置誤差系列の正解であり、二列目以降は一列目を予測するための位置誤差系列である。
また、aは(予測係数の数)+(一行)分の行数と、一列の列数をもつ行列であり、一行目に「1」、以降の行に予測係数aを有する。
Xの任意の行に注目すると、Xaは下式と等価で、予測係数aを用いてPx(n-1), …, Px(n-5)からPx(n)を予測した場合の予測誤差を表す。
Xa = Px(n) - a0・Px(n-1) - a1・Px(n-2) - a2・Px(n-3)
- a3・Px(n-4) - a4・Px(n-5) …(14)
また、bは予測誤差の目標値を示す、(誤差情報の数)+(予測係数の数)分の行数と、一列の列数をもつ行列であり、一行目に「1」、以降の行に予測誤差の目標値0を有する。なお、一行目に対応するXaにおいては、予測は行われず走査線位置テーブルに格納された最初の誤差情報を返すのみであるから、一行目は定数「1」にする。
また、式(13)に示す演算記号「\」は左除算として知られ、Xが正方行列である場合、X\はの逆行列を表す。つまり、X\Xは単位行列になり、式(13)により予測係数aを算出することができる。また、式(13)は、一般に、最小二乗法として知られるものである。従って、式(13)によって求められる係数aは、位置誤差系列の連続した五点から次の一点を予測する場合の予測誤差を最小にする係数である。式(13)から算出される予測係数aから、予測される位置誤差と予測誤差を図12(a)に示す。
画像形成装置は、構成部材などの劣化、経時変化により、位置誤差の変動周期が変化する場合がある。図12(b)は、図12(a)に示す約63本周期の位置誤差の変動に加え、画像形成装置の経時変化に伴う、走査線数換算で約16本周期、振幅2μmの誤差が重畳した位置誤差系列を示す。また、図12(a)に示す位置誤差系列から求めた予測係数aを用いて予測した位置誤差と予測誤差を図12(b)にも示す。つまり、予測係数aは、状態が変化した後の画像形成装置に適合しないため、約16本周期、振幅1μm程度の予測誤差が発生する。
図12(c)は、図12(b)に示す位置誤差系列に対して予測係数aを算出し、予測した位置誤差と予測誤差を示した図である。図12(c)に示すように、新たに算出した予測係数aを用いれば予測誤差を低減することが可能である。
つまり、予測係数算出部109がステップS412において、最新の誤差情報を用いて予測係数aを設定することで、現在の画像形成装置の状態に則した位置誤差の予測が可能になる。
次に、濃度予測モデル調整部110は、感光体ドラム上に濃度変動を検出するためのパッチを露光・現像する(S413)。このパッチは所定サイズの面積率100%の画像パターンであり、このパッチを形成する際は露光量Eの補正を行わない。
次に、補正率算出部107は、パッチ作成時の走査線位置に基づき式(11)により予測したパッチの濃度OD102を濃度予測モデル調整部110へ出力する(S414)。なお、パッチの形成時、露光量Eの補正を行わないため、式(11)によるパッチの濃度OD102の予測には補正率R=1を用いる。補正率算出部107の処理に並行して、濃度予測モデル調整部110は、濃度検出センサ504からパッチの濃度ODrealを取得する(S415)。そして、予測したパッチの濃度OD102と取得した実際のパッチ濃度ODreal(測定結果)に基づき、ドットの濃度分布を示す関数sh()を算出する(S416)。
図13により予測関数sh()の算出を説明する。図13(a)は、濃度OD102を予測した際の走査線位置の一例を表す。図13(b)は、濃度予測に用いた関数sh()を表す。図13(c)は、図13(a)と図13(b)の畳み込み積分から予測される濃度OD102を示す。なお、予測濃度は式(11)から求まるものと等価である。図13(b)はドットサイズが異なる三つのドットの濃度分布(関数)shを示すが、それら濃度分布曲線がなす面積は等しい。関数sh()は下式により算出される。
sh(x) = {1/√(2π)σ}・exp{-x2/(2σ2)} …(15)
式(15)は正規分布として知られ、σは標準偏差を表しドットの濃度分布の幅に相当する。なお、本実施例では、ドットの濃度分布を有限にするため0.001以下を0に丸めて総ドット濃度の正規化を行うものとする。図13(b)に示す三つのドットの濃度分布は、σが異なるドットの濃度分布である。また、図13(c)に示す三つのパッチの濃度は、それぞれ図13(b)に示すドットの濃度分布に対応する。
図13(a)に示す走査線位置は、パッチ上端(0mm)から0.4mm離れた付近を中心に走査線間隔が詰り、走査線の密度が高くなっている。パッチの予測濃度において、走査線の疎密が少ない部分では、どの関数sh()を用いてもパッチの濃度分布の差はほとんど生じない。しかし、図13(c)に示すように、走査線の密度が変化する部分では、関数sh()の違いによりパッチの予測濃度に差が生じる。そこで、濃度予測モデル調整部110はステップS416において、実際のパッチの濃度分布ODrealと予測したパッチの濃度OD102の差を用いて、下式により関数sh()のσのずれ量Δσを推定する。
Δσ = ksh・Σ|ODreal - OD102| …(16)
ここで、kshは予め設定されているパッチ濃度の予測誤差とσの関係を示す係数。
濃度予測モデル調整部110は、下式により関数sh()の標準偏差σを更新する。
σ = σ' - Δσ …(17)
ここで、σ'は前回の関数sh()の算出に用いた標準偏差。
濃度予測モデル調整部110は、式(17)によって更新したσを用いて式(16)により算出した関数sh()を補正率算出部107に出力する。補正率算出部107は、入力した関数sh()を保持し、以降、の処理において保持する関数sh()を使用する。このキャリブレーションにより、画像形成装置の構成部材の劣化、経時変化、さらに画像形成条件などによるドットの濃度分布の変化に対して適切な露光量Eの補正率Rの設定が可能になる。
このように、現ラインと周辺ラインの位置の誤差情報を用いて露光量Eの補正率Rを算出する際の、後ラインの位置誤差Px'の予測や濃度OD102の予測の誤差を補正するためにキャリブレーションを行うことにより、適切な予測が可能になる。従って、精度のよいバンディング補正が可能になる。
[変形例]
上記では、走査線位置格納部105の走査線位置テーブルに、各走査線の、副走査方向の位置誤差を格納する例を説明したが、例えば、現在の走査線の基準位置を基準とする相対位置情報や、隣接する走査線間隔などを走査線位置テーブルに格納してもよい。
また、補正率Rの算出(S404)において、現ラインに対して前ラインと後ラインの二つの走査線間隔を用いる例を説明したが、さらに多数の周辺ラインとの走査線間隔を用いてもよい。また、補正率Rの算出において、ドット濃度の算出は露光量Eおよび補正率Rに比例するものとしたが、比例関係が成り立たない場合は、露光量とドット濃度の関係を示すルックアップテーブル(LUT)や関数を用いて同等の処理を行うことが可能である。また、走査線位置の予測濃度を孤立ドットの和から求める例を説明したが、この関係が成り立たない場合は、予め作成したLUTを用いて予測濃度や補正率Rを算出してもよい。さらに、式(12)においては、補正率Rは、周辺ラインの露光量Eの補正率Rに関わらず算出されるが、走査ごとに補正率Rを記憶して、補正率Rの算出に反映することも可能である。
また、走査線位置の予測(S403)において線形予測を用い、かつ、予測係数の算出(S412)において予測係数を算出した。しかし、例えば、制御工学の分野で知られる伝達関数、状態方程式などを用いて走査線位置を予測し、これに対応するオブザーバを併用することで、同様の効果を得ることができる。
また、ドットの濃度分布の算出(S416)において正規分布を用いたが、実際に計測したドットの濃度分布を示すLUTを用いる方法や、所定のドットの濃度分布の半値幅を変更する方法などを用いても、同様の効果を得ることができる。
また、図11に示すフローチャートにおいて、予測係数の算出(S411、S412)と、ドットの濃度分布の算出(S413-S416)を連続に行うと説明したが、個別のタイミングで独立に行う方法も考えられる。
[その他の実施例]
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

Claims (7)

  1. 像担持体の上における、現在のラインの走査線位置の副走査方向の誤差を算出する誤差の算出手段と、
    前記像担持体の上における、現在のライン、並びに、前記現在のラインに対して以前の複数のラインの各走査線位置を示す情報を格納する格納手段と、
    前記格納手段に格納された情報に基づいて、前記像担持体の上における、前記現在のラインの走査線位置と前記現在のラインの次に走査されるラインの走査線位置の間の距離を予測する予測手段と、
    前記現在のラインの直前に走査されたラインの走査線位置と前記現在のラインの走査線位置との距離、及び前記現在のラインの走査線の走査線位置と前記現在のラインの次に走査されるラインの走査線位置との間の距離に基づいて、露光量の補正率を算出し、前記補正率によって前記現在のラインの露光量を制御する制御手段と、
    前記格納手段に格納された情報を参照して、前記予測手段が前記現在のラインの走査線位置と前記現在のラインの次に走査されるラインの走査線位置との間の距離を予測する際に用いる係数を設定する係数の設定手段とを有することを特徴とする画像処理装置。
  2. 前記制御手段はさらに、前記現在のラインの直前に走査されたラインの走査線位置と前記直前に走査されたラインよりさらに前に走査されたラインの走査線位置との距離を算出し、当該算出された距離を前記補正率の算出に用いることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
  3. 前記制御手段は、前記現在のラインの直前の走査による前記現在のラインの走査線位置における記録濃度と、前記現在のラインの次の走査による前記現在のラインの走査線位置における記録濃度と、前記現在のラインの走査による前記現在のラインの走査線位置における記録濃度と、の和に基づいて、前記補正率を算出する請求項1又は2に記載の画像処理装置。
  4. さらに、前記像担持体の上に形成したパッチの濃度を測定し、前記濃度の測定結果および前記制御手段が予測する前記パッチの濃度から、前記制御手段が前記補正率を算出する際の濃度の予測関数を設定する関数の設定手段を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像処理装置。
  5. 前記予測手段は、前記現在のライン、並びに、前記現在のラインに対して以前の複数のラインの各走査線位置の誤差を用いた線形予測によって算出される、前記現在のラインの次に走査されるラインの走査線位置の誤差の推定値に基づいて、前記距離を予測することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の画像処理装置。
  6. 誤差の算出手段、格納手段、予測手段、制御手段、及び係数の設定手段を有する画像処理装置の画像処理方法であって、
    前記格納手段は、像担持体の上における、現在のライン、並びに、前記現在のラインに対して以前の複数のラインの各走査線位置を示す情報を格納し、
    前記画像処理方法では、
    前記誤差の算出手段が、前記像担持体の上における、現在のラインの走査線位置の副走査方向の誤差を算出し、
    前記予測手段が、前記格納手段に格納された情報に基づいて、前記像担持体の上における、前記現在のラインの走査線位置と前記現在のラインの次に走査されるラインの走査線位置との間の距離を予測し、
    前記制御手段が、前記現在のラインの直前に走査されたラインの走査線位置と前記現在のラインの走査線位置との距離、及び前記現在のラインの走査線の走査線位置と前記現在のラインの次に走査されるラインの走査線位置との間の距離に基づいて、露光量の補正率を算出し、前記補正率によって前記現在のラインの露光量を制御し、
    前記係数の設定手段が、前記格納手段に格納された情報を参照して、前記予測手段が前記現在のラインの走査線位置と前記現在のラインの次に走査されるラインの走査線位置との間の距離を予測する際に用いる係数を設定することを特徴とする画像処理方法。
  7. 画像処理装置を請求項1乃至5の何れか1項に記載された画像処理装置の各手段として機能させることを特徴とするプログラム。
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