JP5643093B2 - リグニン分解用触媒 - Google Patents

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Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、リグニン分解用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
21世紀に入って地球上の温暖化が加速度的に進行し、二酸化炭素が産業界、ひいては世界経済をコントロールする鍵となっている。地中或いは海底に封じ込まれた化石燃料をエネルギー源にする限り、大気中の二酸化炭素を減少させることはおろか、増加を抑制することすら困難である。そこで注目されているのが、植物から製造するバイオエタノールなどのアルコール類であり、これは、エネルギー源として有望である。しかし、この場合、従来技術の殆どは糖類を原料としているため、人類の食料源とエネルギー源が競合するという問題が発生している。最近では、ようやく食料源と競合しない、例えばセルロースなどを炭素源としたアルコール類の製造技術が進歩してきている。
【0003】
木材や、食料にならない草類は、主にセルロースとリグニンとからなる。廃材や、チップ状の、建築資材としては不適切ないわゆる廃棄物に近い木材や、草類のセルロースを炭素源とすることで、二酸化炭素排出を抑制し、産業界、経済界に貢献することができる。
【0004】
セルロースの利用が上記のごとく進歩していることに比べ、セルロース同様豊富な炭素源であるリグニンの有効利用はまだ極めて限られている。実用段階にあるものとしては、例えば熱源として単純に燃焼させるか、防腐剤や、コンクリートに混ぜる構造強化剤などがある。
【0005】
また、科学技術および産業が発展するに従って、自然界では本来高濃度では存在しない化合物である産業廃棄物の蓄積が生じ、人類にとって、大きなマイナス資産となっている。これらの化合物の多くは、ベンゼン環を形成する炭素原子に酸素原子が結合した芳香族炭化水素を含む化合物である。例えば、ダイオキシン類などが挙げられる。ダイオキシン類に関しては、発生源であるゴミの燃焼段階での高温処理により、かなり改善されているが、既に拡散してしまった有害化合物も少なくない。従って、これらの有害化合物を、本来自然界に存在する、有害化合物分解触媒を用い、さらに、無限に地表に降り注ぐ太陽光を利用して分解することができれば、自然の浄化および人類の健康維持に貢献できるものである。しかし、いまだ有用な分解触媒は提案されていない。
【0006】
さらに、近年、エネルギー源として注目されているのが、水素イオンの移動によって起電力を得る燃料電池である。しかしながら、水素ガスを水素イオン源とする場合、水素ガスの殆どを化石燃料から製造しているのが現状である。また、水の電気分解によって水素ガスを得ることができるが、この場合も電力を供給する必要がある。
【0007】
また、電力を太陽光から得る太陽電池の場合、半導体装置の製造が必要で、そのための資源とコストは、現行のエネルギー需要を太陽電池に依存しようとする場合、莫大なものになる。色素増感型太陽電池についても、ナノサイズの酸化チタンが必要で、かつある程度の起電力が得られる合成色素は高価である。
【0008】
従来、光照射下でリグニン系物質を機能水に接触させて分解するリグニン系物質の分解方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この従来技術には、機能水として水酸化ナトリウムを含むという記載はあるが、分解物が何であるかについては具体的に記載されておらず、アルコール類が得られることついての記載もない。また、多数個のClおよびFを含むポルフィリンについて、リグニンの酸化、アルカンからアルコールへの転化などの反応に活性であることが知られている(例えば、特許文献2参照)。しかし、この従来技術には、アルカリ化合物、光触媒の使用に関する記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】 特開2000−144592号公報(特許請求の範囲、段落:0030)
【特許文献2】 特表平2−503086号公報(第4頁左上欄)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、従来技術にはないポルフィリンからなるリグニン分解用触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のリグニン分解用触媒は、ポルフィリン環の中心に遷移金属が配位していないポルフィリンであって、光照射により触媒機能を発現するか、アルカリ溶液中で触媒機能を発現するか、または光照射下のアルカリ溶液中で触媒機能を発現するポルフィリンを含んでなることを特徴とする。
【0012】
本発明のリグニン分解用触媒において、ポルフィリンが、遺伝子ypjD(b2611)が変異により発現できなくなった大腸菌を培地で培養して得られたポルフィリン環構造を有する化合物であって、ポルフィリン環の中心に遷移金属が配位していないポルフィリンであることを特徴とする。
【0013】(削除)
【0014】
大腸菌を培養して得られた本発明のリグニン分解用触媒において、このリグニン分解用触媒が、遺伝子ypjD(b2611)が変異により発現できなくなった大腸菌を培地で培養して得られたポルフィリン環構造を有する化合物であって、ポルフィリン環の中心に遷移金属が配位していないポルフィリンを含有する培地からなることを特徴とする。
【0015】(削除)
【0016】
大腸菌を培養して得られた本発明のリグニン分解用触媒において、大腸菌が、遺伝子ypjD(b2611)のトランスポゾン挿入変異株であることを特徴とする。
【0017】
大腸菌を培養して得られた本発明のリグニン分解用触媒において、ポルフィリンが、ポルフィリン環にメチル基およびエチルエステルまたは酢酸基またはプロピオン酸基を含む化合物であることを特徴とする。
【0018】
大腸菌を培養して得られた本発明のリグニン分解用触媒において、ポルフィリンが、ポルフィリン環に4つのメチル基および4つのエチルエステルまたは酢酸基またはプロピオン酸基を含む化合物であることを特徴とする。
【0019】
大腸菌を培養して得られた本発明のリグニン分解用触媒において、ポルフィリンが、C3638であることを特徴とする。
【0020】
本発明のリグニン分解用触媒において、ポルフィリンはまた、ポルフィリン環の中心に遷移金属が配位していない化学合成ポルフィリンであることを特徴とし、この化学合成ポルフィリンが、分子中にカルボキシル基を有するポルフィリンであることを特徴とする。
【0021】
本発明のリグニン分解用触媒において、化学合成ポルフィリンが、分子中に合計2個、4個または8個のカルボキシル基を有するポルフィリンであることを特徴とする。
【0022】
本発明のリグニン分解用触媒において、化学合成ポルフィリンが、ウロポルフィリン、プロトポルフィリン、およびコプロポルフィリンから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする。
【0023】(削除)
【0024】(削除)
【0025】(削除)
【0026】(削除)
【0027】(削除)
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ポルフィリン、例えば大腸菌を用いて生物学的に製造したポルフィリン構造を有するテトラピロール化合物であって、ポルフィリン環の中心に遷移金属が配位していないポルフィリンが、および化学合成ポルフィリンであって、ポルフィリン環の中心に遷移金属が配位していないポルフィリンが、有効なリグニン分解用触媒としての効果を達成できる。
【0029】
本発明によれば、リグニンに対して、本発明のリグニン分解用触媒と共に、アルカリ化合物および/または光照射を作用させることにより、リグニンからアルコール類および有機酸類を製造することができるという効果を達成できる。なお、本発明のリグニン分解用触媒を用いれば、低分子量の分解生成物を得ることがき、さらに水素イオンを遊離することができるという効果を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例1で得られた産生物の構造式である。
【図2】実施例1で得られた産生物に対する、吸光度分析結果を示すスペクトルである。
【図3】実施例1で得られた試料1に対する1H NMRスペクトルである。
【図4】実施例1で得られた試料1対する13C NMRスペクトルである。
【図5】実施例1で得られた試料1に対するHSQCスペクトルである。
【図6】実施例1で得られた試料1に対するCOSYスペクトルである。
【図7】実施例1で得られた試料1に対するHMBCスペクトルである。
【図8】実施例1で得られた試料1に対するNOESYスペクトルである。
【図9】実施例1で得られた試料1に対するNOESYスペクトルである。
【図10】実施例1で得られた試料2に対する1H NMRスペクトルである。
【図11】実施例1で得られた試料2に対する13C NMRスペクトルである。
【図12】実施例1で得られた試料2に対するNEOSYスペクトルを拡大して示す。
【図13】実施例1で得られた試料2について相対存在量を示すスペクトルである。
【図14】ESI−MSで行った分析の結果を示す。
【図15】実施例1で得られた産生物を熱分解GC−MSで分析した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態およびその関連発明について詳細に説明する。
【0032】
本発明に係るリグニン分解用触媒およびその関連発明に係るベンゼン環を形成する炭素原子に酸素原子が結合した芳香族炭化水素分解用触媒の一実施の形態によれば、これら触媒は、光照射によりおよび/またはアルカリ溶液中で触媒機能を発現するポルフィリンを含んでなり、このポルフィリンは、大腸菌を培地で培養し、培地中に分泌されたポルフィリン環構造を有するテトラピロール化合物や合成ポルフィリンであることが好ましい。例えば、これらの触媒は、大腸菌を培地で培養して得られたポルフィリン環構造を有するテトラピロール化合物含有培地からなるものであってもよいし、培養して得られた細胞から回収したものであってもよいし、培養して得られた細胞から得られた抽出物であってもよい。これらのポルフィリンは、ポルフィリン環の中心に遷移金属が配位されていないものである。
【0033】
上記大腸菌は、遺伝子ypjD(b2611)が変異により発現できなくなった大腸菌のような遺伝子発現を変化させた大腸菌であることが好ましく、また、遺伝子ypjD(b2611)のトランスポゾン挿入変異株であることがより好ましい。上記ポルフィリンは、ポルフィリン環にメチル基(例えば、4つ)、エチルエステルまたは酢酸基(プロピオン酸基)(例えば、4つ)を含むテトラピロール化合物であることがより好ましい。
【0034】
本発明に係る大腸菌由来のリグニン分解用触媒およびその関連発明に係る芳香族炭化水素分解用触媒は、例えば、次のようにして製造できる。
【0035】
上記触媒を製造するための培地としては、大腸菌を培養できる培地であれば特に制限なく使用できる。大腸菌を貧栄養培地や富栄養培地で培養し、この培地からテトラピロール化合物を分離・回収することによって、リグニン分解用触媒および芳香族炭化水素分解用触媒を構成するポルフィリン環構造を有するテトラピロール化合物が製造できる。培地中で大腸菌を培養、増殖させる過程で大腸菌にテトラピロール化合物を産生させ、培地中に分泌されたテトラピロール化合物を回収することにより、テトラピロール化合物を製造する。培地中にある天然物などの成分がテトラピロール化合物を分離する際の障害となるのを防ぐためには、貧栄養培地を用いることが好ましいが、この培地に特に限定されるわけではない。貧栄養培地としては、グルコースまたはラクトースを含むものが好ましく用いられるが、これに限定されるものではない。
【0036】
リグニン分解用触媒および芳香族炭化水素分解用触媒を製造するのに用いる大腸菌は、遺伝子ypjD(b2611)が変異により発現できなくなったものであることが好ましい。例えば、K12株およびBL21株由来の大腸菌などが挙げられる。例えば、K12株由来の、遺伝子ypjD(b2611)が変異により発現できなくなった大腸菌が好ましく用いられる。遺伝子ypjD(b2611)が変異により発現できなくなった大腸菌株としては、例えば、遺伝子ypjD(b2611)のトランスポゾン挿入変異株がある。この変異株では、遺伝子ypjD(b2611)の発現が部分的または完全に欠失した状態にある。尚、K12株は、例えばナショナルバイオリソースから入手することができ、BL21株は、例えばタカラバイオから入手することができる。また、遺伝子ypjD(b2611)のトランスポゾン挿入変異株としては、例えば、ナショナルバイオリソースから入手可能なJD23504などがある。
【0037】
本実施の形態においては、まず、大腸菌を貧栄養培地中で培養する。このとき、大腸菌を貧栄養培地以外の適当な培地、例えばLB培地などの培地中で前培養し、得られた前培養物を貧栄養培地に接種して本培養することが好ましい。また、培地としては、貧栄養培地以外に富栄養培地や合成培養液などを用いることもできる。例えば、脱イオン水にKHPO、KHPO、(NHSO、クエン酸二水和物、グルコース、およびMgSOなどを加えて得られた水溶液である合成培養液であってもよい。いずれにしても、大腸菌細胞を増殖することができる培地であれば、特に制限はない。
【0038】
大腸菌の培養条件は、大腸菌に対する一般的な条件であればよい。これは、例えば、大腸菌を前培養してから培地を変えて貧栄養培地中で本培養した場合、どちらの培養条件についても同様である。例えば、LB培地を用いて、15℃〜40℃の温度で6時間〜24時間かけて前培養した後、得られた細胞懸濁液を、貧栄養培地中において、20℃〜40℃の温度で12時間〜96時間かけて本培養する。これにより、培地中で細胞が増殖していき、目的とするテトラピロール化合物に特有な色調を帯びた培養物(産生物)が得られる。
【0039】
次に、上記の培養物から、以下のようにして、目的とするテトラピロール化合物を分離する。
【0040】
具体的には、培養物を遠心分離して得られた上澄み液を濾過した後、例えば、イオン交換樹脂カラムまたは逆相カラムなどを用いて、濾液からテトラピロール化合物を吸着、分離する。例えば、培養物を遠心分離器にかけて細胞を沈殿させ、培養物(産生物)を含む上澄み液を得る。次に、この上澄み液を、所定のポアサイズ(例えば、0.22μm)のフィルターで濾過した後、上記カラムを用いてイオン交換樹脂に吸着させる。次いで、例えば、20%アセトニトリル−0.1%トリフルオロ酢酸溶液などを用いてイオン交換樹脂から産生物を溶出した後、凍結乾燥する。尚、この場合の溶出には、有機溶媒に酸またはアルカリの溶液を含んだものを用いることもできる。本実施の形態によれば、1種類または2種類以上のテトラピロール化合物が得られ、例えば、500mLの細胞懸濁液から数mg〜数十mgのテトラピロール化合物を得ることが可能である。
【0041】
上記の操作によって分離された産生物を、NMR(Nuclear Magnetic Resonance; 核磁気共鳴)などによって分析すると、テトラピロール化合物が含まれていることが確認できる。また、この産生物を吸光光度分析にかけると、色素に特有の波長域に吸収を持つ化合物であることが分かる。多くの場合、クロロフィル、ヘムまたはフタロシアニンに類似した二峰性のピークを示す色素化合物である。こうした色素化合物は、光によって電子が励起される光触媒や電子伝達体として有用である。また、水溶液中で、あるいは、細胞膜を介して酸化還元反応にかかわるので、電池においても機能すると考えられる。
【0042】
上記したように、大腸菌を用いて、ポルフィン、ポルフィリンなどのポルフィリン類といったテトラピロール化合物を製造することができるので、化学的合成法による場合のように、目的とする化合物の種類に応じた製造装置や触媒などを必要とせず、また、溶剤を使用する必要もなく、環境に悪影響を及ぼす恐れも少ない。また、大腸菌を培養する際には、培地中に5−アミノレブリン酸などのテトラピロール化合物の前駆体を加える(特開平5−244937号公報)必要がなく、さらに、テトラピロール化合物は、培地中に分泌されたものを回収すればよく、菌体から採取する(特開平5−91866号公報)必要はない。すなわち、大腸菌の培養やテトラピロール化合物の回収に特定の化合物や装置を必要としないため、簡便にテトラピロール化合物を製造することができる。こうして得られたテトラピロール化合物は、医療、食品およびエレクトロニクスなどの種々の産業分野における用途に利用され得る。
【0043】
上記においては、培養物からテトラピロール化合物を分離して、リグニン分解用触媒および芳香族炭化水素分解用触媒とした。培養物から回収した化合物を用いるのが好ましいが、培養物や培養して得られた細胞にはテトラピロール化合物が含まれているので、この培養物自体や細胞自体をリグニン分解用触媒および芳香族炭化水素分解用触媒として用いることができる。
【0044】
本発明に係るリグニン分解用触媒およびその関連発明に係る芳香族炭化水素分解用触媒としては、上記の他に合成ポルフィリンとして、例えば、プロトポルフィリン、ウロポルフィリン、コプロポルフィリン、およびエチオポルフィリンなどから選ばれた少なくとも1種を挙げることができる。但し、エチオポルフィリンは、リグニンを分解しない。これらのポルフィリンとして、以下の実施例では、分子内にカルボキシル基を2個含むプロトポルフィリンIX(ALDRICH社製)、分子内にカルボキシル基を8個含むウロポルフィリンI(SIGMA社製)、分子内にカルボキシル基を4個含むコプロポルフィリンI(ALDRICH社製)、および分子内にカルボキシル基を含まないエチオポルフィリン(ALDRICH社製)を用いた。このポルフィリンも、上記した大腸菌を培養して得られるポルフィリンと同様に、ポルフィリン環の中心に遷移金属原子は配位していない。
【0045】
次に、本発明に係るリグニン分解用触媒を用いるアルコール類および有機酸類の製造方法の実施の形態について説明する。アルコール類および有機酸類は、リグニンに対して、アルカリ化合物、光照射、上記リグニン分解用触媒を単独で或いは組み合わせて作用させることにより製造することができる。
【0046】
すなわち、メタノールなどのアルコール類は、例えば、(1)リグニンにKOHおよびNaOHなどから選ばれた少なくとも1種のアルカリ化合物を含む溶液を加え、このリグニン−アルカリ化合物溶液から例えば蒸留などによりアルコール類を分離させることにより、(2)リグニンに上記アルカリ化合物を含む溶液を加え、このリグニン−アルカリ化合物溶液に対して紫外線(紫外線として、例えば、スペクトロニクス社製のENF型(260c/jや、280c/j等)やUVP社製のUVL−56Hand Held等の紫外線ランプからの紫外線を使用できる)や太陽光などの広い波長域を有する光を所定の時間照射した後、照射後のリグニン−アルカリ化合物溶液から例えば蒸留などにより、効率よくアルコール類を分離させることにより、(3)リグニンに上記アルカリ化合物を含む溶液を加え、このリグニン−アルカリ化合物溶液に対して上記したリグニン分解用触媒を所定の温度で、所定の時間作用させた後、この溶液から例えば蒸留などにより、効率よくアルコール類を分離させることにより、(4)リグニンに上記アルカリ化合物を含む溶液を加え、このリグニン−アルカリ化合物溶液に対して上記したリグニン分解用触媒を所定の温度で所定の時間作用させた後、この溶液に対して紫外線や太陽光などの広い波長域を有する光を所定の時間照射し、次いで照射後のリグニン−アルカリ化合物溶液から例えば蒸留などにより、効率よくアルコール類を分離させることにより、(5)リグニンに対して上記したリグニン分解用触媒を所定の温度で所定の時間作用させた後、この溶液から例えば蒸留などにより、効率よくアルコール類を分離させることにより、(6)リグニンに対して紫外線や太陽光などの広い波長域を有する光を所定の時間照射し、次いでこの溶液から例えば蒸留などにより、効率よくアルコール類を分離させることにより、そして(7)リグニンに対して上記したリグニン分解用触媒を所定の温度で所定の時間作用させた後、この溶液に対して紫外線や太陽光などの広い波長域を有する光を所定の時間照射し、次いで照射後のリグニン溶液から例えば蒸留などにより、効率よくアルコール類を分離させることにより製造できる。上記光照射を行う場合には、リグニンを含む反応液を空気や酸素、酸素及び/又は窒素を含むガス等に接触させた雰囲気中で行うことが、効率よくポルフィリンの触媒機能を発揮させ得るので、好ましい。例えば、リグニン濃度2.5mg/mL、ポルフィリン50μg/mL(質量比50:1)とした場合、リグニン1mg当たり0.2〜0.5mL程度の酸素を用いることができる。
【0047】
また、ギ酸、酢酸、リンゴ酸、コハク酸およびピルビン酸などの有機酸類は、上記したアルコール類の場合と同様にして、リグニンから分離させることができる。
【0048】
本発明のリグニン分解用触媒により分解し得るリグニンとしては、特に制限はなく、例えば、還元糖やセルロースなどの不純物を含まない、純度の高い製品(例えば、SIGMA社製、カタログNo.471003、分子量60,000;ALDRICH社製、カタログNo.471046、分子量12,000)、還元糖を含みやや純度が低い製品(例えば、SIGMA社製、カタログNo.471038、分子量52,000)、および水に溶けない製品(例えば、ALDRICH社製、カタログNo.370967)などを用いることができる。本発明のリグニン分解用触媒によれば、これらリグニン全てから、ほぼ同程度のメタノールなどのアルコール類ならびにギ酸、酢酸、リンゴ酸、コハク酸およびピルビン酸などの有機酸類を分離することができる。すなわち、不純物の存在や、平均分子量、水への溶解性にかかわらず、リグニンであれば本発明のリグニン分解用触媒によりアルコール類および有機酸類を分離、製造することができる。
【0049】
アルカリ化合物の溶液としては、特に制限はなく、例えば、0.0025M〜0.05M程度のKOHおよび/またはNaOHなどを用いることが好ましい。アルコールおよび有機酸の分離効率に高低が見られるものの、アルカリ化合物の溶液はこの濃度範囲内には限らない。
【0050】
本発明の関連発明に係るベンゼン環を形成する炭素原子に酸素原子が結合した芳香族炭化水素分解用触媒の一実施の形態によれば、この触媒は上記したポルフィリンを含んでなるリグニン分解用触媒と同じ構成を有するものであるので、詳細な説明は省略する。
【0051】
上記触媒を作用せしめる芳香族炭化水素としては、例えば、ダイオキシン類やダイオキシン類似化合物などを挙げることができる。このダイオキシン類には、例えば、ポリ塩化ジベンゾ−パラ−ジオキシン(PCDD)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)などが含まれ、ダイオキシン類似化合物には、例えば、コプラナ−ポリ塩化ビフェニル(ダイオキシン様PCB)などが含まれる。上記芳香族炭化水素分解用触媒によれば、これらのダイオキシン類は分解されて、無毒化され得る。
【0052】
さらに、本発明の関連発明に係る別の実施の形態によれば、リグニンから水素イオンを遊離させる方法において、リグニン−アルカリ化合物溶液に、上記した大腸菌由来のピロール化合物からなるポルフィリンを含んでなる本発明のリグニン分解用触媒や、合成ポルフィリンを含んでなるリグニン分解用触媒を添加することによって、水素イオンを遊離させると共に、リグニンの光分解を行うことができる。
【0053】
さらにまた、本発明のリグニン分解用触媒を用いる別の実施の形態によれば、上記アルコール類および有機酸類の製造方法に従ってアルコール類および有機酸類を分離する際に生じるリグニン分解生成物である低分子量の炭素含有化合物を回収することができる。
【0054】
本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。以下、本発明の実施例および参考例について詳細に説明する。
【実施例1】
【0055】
上記したように、リグニンに、リグニン分解用触媒として、ポルフィリン(ピロール化合物)を添加することによって、アルコール類および有機酸類を製造でき、リグニンの光分解を行って分解生成物を得ることができると共に、水素イオンを遊離することができる。また、ポルフィリン構造を有するテトラピロール化合物や合成ポルフィリンが、ダイオキシンなどの芳香族炭化水素に対する分解用触媒として有効である。この場合に、ポルフィリンとして、例えば、大腸菌を用いて生物学的に製造したものを用いることができる。本実施例では大腸菌を用いるピロール化合物の製造例について説明する。
【0056】
まず、大腸菌由来の遺伝子ypjD(b2611)のトランスポゾン挿入変異株(ナショナルバイオリソースJD23504)の細胞を、2mLのLB培地(Bacto-tryptone: 1%, Bacto-yeast extract: 0.5%, NaCl: 0.5%)において、37℃で12時間前培養した。得られた細胞懸濁液1mLを、脱イオン水1LにKHPOを9g、KHPOを21g、(NHSOを2g、クエン酸二水和物を1g、グルコースを3.6g、およびMgSOを200mg加えて得た水溶液500mL中に加え、37℃で24時間本培養した。
【0057】
かくして得られた培養液の色は、本培養を開始した時点で無色であったが、24時間経過後にはピンク色になった。この培養液を遠心分離器にかけて細胞を沈殿させ、得られた上澄み液をポアサイズ0.22μmのフィルターで濾過した。次いで、濾液を陰イオン交換樹脂充填カラムに通した後、樹脂に吸着した培養物を、20%アセトニトリル−0.1%トリフルオロ酢酸溶液で溶出し、溶出物を凍結乾燥した。これにより、ピンク色を帯びた産生物が得られた。
【0058】
この産生物について、以下記載する各種機器分析を行ったところ、図1に示す構造を有しているテトラピロール化合物であることが確認された。図1中の記号A〜Gは、図4に示す13C NMRスペクトルの記号に対応し、その他の図面においても同じである。また、産生物をNMRによって分析したところ、テトラピロール化合物が含まれていることが確認された。さらに、ICP(Inductively Coupled Plasma)質量分析によってカリウム(K)が検出されたことから、Kとイオン結合あるいは錯体を形成する化合物として回収される。さらにまた、吸光光度分析を行ったところ、図2に示すように、ソーレー帯を含むポルフィリン特有の二峰性のピークが確認された。図2では、波長395nmと波長549nmとにそれぞれピークがある。このことから、産生物は、自由電子が移動可能な有機色素であることが確認できた。
【0059】
上記で得られたテトラピロール化合物を異なる溶媒に溶かし(試料1および試料2)、二次元NMR測定(COSY、NOESY、HSQC、HMBC)を行い、そのスペクトルを解析し、構造解析を行った。
【0060】
試料1に関しては、試料をCDODに溶解し、以下の条件でNMR測定を実施した。
・装置: INOVA500型(varian社製)
・共鳴周波数: 499.8MHz(1H)
・基準: 3.31ppm(CDHOD、H NMR)
49.421ppm(CDOD、13C NMR)
【0061】
・積算回数: H NMR(16回)、13C NMR(53428)、COSY(16回)、NOESY(8回)、HSQC(32回)、HMBC(128回)
・その他: NOESYの混合時間は400msecに設定した。
【0062】
また、試料2に関しては、試料をCDCN:DO:CDCOOD=90:10:0.1の溶媒に溶解し、以下の条件でNMR測定を実施した。
・装置: INOVA600型(varian社製)
・共鳴周波数: 599.8MHz(1H)
【0063】
・基準: 1.92ppm(CDHCN、H NMR)
1.28ppm(CDCN、13C NMR)
・積算回数: H NMR(64回)、13C NMR(50000)、COSY(16回)、NOESY(16回)、HSQC(32回)、HMBC(128回)
・その他: NOESYの混合時間は400msecに設定した。
【0064】
試料1に関する構造解析:
図3にH NMRスペクトルを示した(溶媒:CDOD)。その結果、10.0〜10.5ppm付近(d)、4.3ppm付近(f)、3.6ppm付近(g)、および3.2ppm付近(e)に、目的成分に由来すると推測されるシグナルが観測された。それぞれのシグナル強度比は、およそ1:2:3:2であった。このd〜gはその他の図面においても同じである。
【0065】
図4に13C NMRスペクトルを示した。B、Cのシグナルから芳香族であることが推定された。
【0066】
ここで、H NMRのdシグナルは、化学シフト値から見て、通常では見られない特徴的なシグナルであり、かつ、芳香族化合物であることを考慮すると、ポルフィリン骨格が候補として考えられた。以下述べるように、二次元NMRスペクトル(図5〜9)をポルフィリンとして解析すると矛盾なく解析できた。また、図1の推定構造と類似の化合物は、J. org. Chem. Vol. 164, No. 21, 1999 (7973-7982)に報告されており、H NMRの化学シフト値は、かなり良い一致を示していることからも、ポルフィリン構造は妥当であった。
【0067】
以下、二次元NMRの解析について説明する。
図5にHSQCスペクトルを示した。HSQCスペクトルは、J CHを検出する測定法である。解析結果を図中に記した。プロトンシグナルについて、直接結合する炭素の番号の大文字で番号付けを行った。
【0068】
図6にCOSYスペクトルを示した。COSYスペクトルは、H−H間のスピン結合を検出する測定法である。解析の結果、fとeとがスピン結合していることが分かり、シグナル強度比およびFとEとの化学シフト値から、−CH−CH−Xである可能性が高いと考えられた。ここでXは、構造不明の未確定成分である。
【0069】
図7にHMBCスペクトルを示した。HMBCスペクトルは、J CH(n=2〜4程)を検出する測定法で、異種核遠隔結合相関スペクトルが得られる。このスペクトルを解析した結果、(e,A)、(e,B)、(e,F)、(g,B)、(g,C)、(f,A)、(f,B)、(f,C)、(f,E)などの相関が得られた。これらの相関は、図1に示す推定構造と矛盾しなかった。
【0070】
図8および図9にNOESYスペクトルを示した。NOESYスペクトルは、磁化の交換を検出する測定法であり、交差緩和による磁化移動から、核スピン間の距離に関する情報を得ることができる。スペクトルを解析した結果、(g,e)、(f,g)、(f,e)、(d,f)、(d,e)、(d,g)にNOE相関が観測された。これらのNOE相関は、図1に示す推定構造を支持するものであった。
【0071】
試料2に関する構造解析:
図10にH NMRスペクトルを、図11に13C NMRスペクトルを示した(溶媒:CDCN:DO:CDCOOD=90:10:0.1)。図10中で四角の枠で囲ったシグナルは不純物である。上記した試料1のスペクトルと比較した結果、主成分の構造が同じであると推測された。このことは、COSY、NOESY、HSQC、およびHMBCの各スペクトルの解析結果からも支持された。
【0072】
図12に、試料2のNOESYスペクトルを拡大して示した。dプロトンが4種に分離して観測されていることから、低磁場(数字の小さい方)の方からd1からd4と番号付けした。NOE相関を以下に纏めた。
【0073】
・d1およびd4はメチル基と−CH−CH−XともにNOE相関があった。
・d2は−CH−CH−XのみとNOE相関があった。
・d3はメチル基のみとNOE相関があった。
このことと、メチル基同士や−CH−CH−X同士にNOE相関が明確に観測されていないことから、図1の側鎖の配置が得られた。
【0074】
13CシグナルおよびHシグナルの番号付けでは、ほぼ同じ領域に観測されているシグナルを一まとめにして番号付けした。これは、ポルフィリンの骨格が繰り返し構造であるため、細かい帰属が困難であるからである。繰り返しの個数に関しては、メチル基(g)が4本観測されていることから、4個と推測される。
【0075】
以上のように、試料1および2の分析結果から、図1の構造を得ることができた。ただ
し、側鎖であるメチル基および−CH−CH−Xのそれぞれは合計4つであればよく、付加部位は図1に示した8ケ所のうちいずれの場所でもデータと矛盾はなく、図1に示した付加位置に限定されない。
【0076】
次に、−CH−CH−XにおけるXに相当する部分について検討した。
上記で得られた産生物に対して、以下の分析を行った。
【0077】
(1)熱分解GC/MSによる定性分析:
TFAなどの除去のため、試料を加熱炉内で、280℃×10min加熱した後、600℃で熱分解させ、分解物を、以下に記載するガスクロマトグラフ/質量分析装置(以下、「GC/MS」と称す。)で分離分析した。
装置名:Agilent Technologies製 HP5973型 質量選択型検出器つき
HP6890型 ガスクロマトグラフ
FRONTIER LAB製 PY-2020iD 加熱炉式熱分解装置
測定試料:試料2mgにAcCNを1mL添加した溶液を試料カップに0.5mL注入し、窒素パージでAcCNを除去した。
【0078】
(2)エレクトロスプレー−質量分析装置による分析:
溶液中成分の分子量を調査するために、以下に記載するエレクトロスプレー−質量分析装置(以下、「ESI−MS」と称す。)による分析を行った。
装置名:Applied Biosystems製 Qstar
導入溶媒:AcCN/0.05%ギ酸水溶液(50/50)
導入方法:30μLのループを用いて測定溶液を直接導入した。
測定モード:Positive mode
測定溶液:試料2mgにAcCNを1mL加えた溶液をバイアル瓶に少量採取後、導入溶媒で約100ppmに希釈した。
【0079】
上記GC/MSで行った分析の結果、試料から二酸化炭素が検出された。また、上記ESI−MSで行った分析の結果(図14)、分子量59のフラグメントイオン(ピークは4本)が検出されたことより、このフラグメントは、エチルエステルまたは酢酸基(プロピオン酸基)を含むことが確認された。
【0080】
さらに上記産生物を熱分解GC−MSで分析したところ、図15に示すごとく、主たる成分はピロール化合物であった。このことは各成分の質量スペクトルをデータベースと照合することによって確認でき、分子中にピロール環の構造を含んでいることが確認できた。また、詳細な分子量については、図13に示すごとく、水素イオンが付加したイオンとして検出され、分子量655.2760−1.0078=654.2682が得られた。以上により、側鎖にエチルエステルあるいは酢酸基(プロピオン酸基)を4つと、メチル基を4つ含む分子量654、分子式C3638のポルフィリン化合物であること、また、ポルフィリン環の中心に遷移金属はないことが確認できた。
【実施例2】
【0081】
リグニンとして、還元糖やセルロースなどの不純物を含まない、純度の高い製品(シグマ社製、カタログNo.471003、分子量60,000)を用いた。このリグニン:2.5mg/mL、0.05M KOH、および上記実施例1に従って得られた、分子中にカルボキシル基を4個持つポルフィリン:50μg/mLを含有する溶液1mLを、ポリプロピレン製エッペンドルフチューブ程度の光透過性を持つ円筒形チューブに入れ、スペクトロニクス社製のENF型紫外光ランプを用いて紫外光を12時間照射した。その後、80℃で60分間加熱し、揮発したガスを島津GC/MS QP−2010、カラムDB−WAXを用いて分析したところ、170μg/mLのメタノールが測定された。この際、ギ酸が140μg/mL、リンゴ酸が25μg/mL、酢酸が19μg/mL、コハク酸が5.4μg/mL、ピルビン酸が6.2μg/mL得られた。この場合、乾燥リグニン重量基準で、6.8重量%に当たるメタノール、5.6重量%に当たるギ酸を得ることができた。
【0082】
また、リグニンとして、還元糖やセルロースなどの不純物を含まない、純度の高い製品(アルドリッチ社製、カタログNo.471046、分子量12,000)、還元糖を含みやや純度が低い製品(シグマ社製、カタログNo.471038、分子量52,000)、および水に溶けない製品(アルドリッチ社製、カタログNo.370967)を用いて上記プロセスを繰り返したところ、メタノール量および上記有機酸量として同程度の結果が得られた。すなわち、使用するリグニン中の不純物の存在や、リグニンの平均分子量や、リグニンの水への溶解性に拘わらず、リグニンからアルコール類および有機酸類を分離製造することができることが分かる。
【0083】
さらに、紫外光の代わりに太陽光を用いて上記プロセスを繰り返したところ、メタノール量および有機酸量として同様な結果が得られた。
【0084】
上記したように紫外光を照射して得られた反応液のサンプルをHPLC(高速液体クロマトグラフィー)にて、ゲル濾過カラムを用いて分析した。対照として紫外線照射前の溶液についても分析した。分析の結果、照射前の場合、リグニンは、310nmの吸光において、7−9minで溶出されるピークとして検出されるが、上記したようにリグニンにポルフィリンを添加し、紫外光を照射してメタノールや有機酸類に変換させた場合は、310nmの吸光において、7−9minで溶出されるリグニンのピークの面積が20%に縮小した。すなわち、リグニンにポルフィリンを添加し、紫外光を照射することによって、80%のリグニンが分解されたことが分かる。この分解生成物は、ゲル濾過にて、より低分子量のフラクションに溶出された。従って、分解されたリグニン基準で、約8.5重量%に当たるメタノール、約7重量%に当たるギ酸を得ることができた。
【0085】
【実施例3】
リグニンとして、還元糖やセルロースなどの不純物を含まない、純度の高い製品(シグマ社製、カタログNo.471003、分子量60,000)を用いた。このリグニン:2.5mg/mL、0.05M KOH、および合成ポルフィリンとして、分子内にカルボキシル基を2個含むプロトポルフィリンIX(ALDRICH社製)、分子内にカルボキシル基を8個含むウロポルフィリンI(SIGMA社製)、分子内にカルボキシル基を4個含むコプロポルフィリンI(ALDRICH社製)のそれぞれ50μg/mLを含有する各溶液1mLを、ポリプロピレン製エッペンドルフチューブ程度の光透過性を持つ円筒形チューブに入れ、スペクトロニクス社製のENF型紫外光ランプを用いて紫外光を12時間照射した。かくして得られた反応液を80℃で60分間加熱し、揮発したガスを島津GC/MS QP−2010、カラムDB−WAXを用いて分析した。上記操作を複数回繰り返したところ、プロトポルフィリンIX、ウロポルフィリンI、およびコプロポルフィリンIのそれぞれの場合において、乾燥リグニン重量基準で、実施例2の場合とほぼ同等な量のメタノール及びギ酸が得られた。すなわち、乾燥リグニン重量基準で、約6〜9重量%がメタノールに、約2〜4重量%がギ酸に変換されていた。
【0086】
上記のようにして得られた各反応液のサンプルをHPLC(高速液体クロマトグラフィー)にて、ゲル濾過カラムを用いて分析した。対照として紫外線照射前の溶液についても分析した。分析の結果、照射前の場合、リグニンは、310nmの吸光において、7−9minで溶出されるピークとして検出されるが、リグニンに上記各ポルフィリンを添加し、紫外光を照射してアルコールおよび有機酸類(ギ酸など)に変換させた反応液では、プロトポルフィリンIXの場合、約60%に、ウロポルフィリンIの場合、約15%に、コプロポルフィリンIの場合、約20%に縮小した。すなわち、リグニンにポルフィリンを添加し、紫外光を照射することによって、プロトポルフィリンIXの場合、約40%、ウロポルフィリンIの場合、約85%、コプロポルフィリンIの場合、約80%のリグニンが分解されたことが分かる。この分解生成物は、ゲル濾過にて、より低分子量のフラクションに溶出された。
【0087】
また、リグニンとして、還元糖やセルロースなどの不純物を含まない、純度の高い製品(アルドリッチ社製、カタログNo.471046、分子量12,000)、還元糖を含みやや純度が低い製品(シグマ社製、カタログNo.471038、分子量52,000)、および水に溶けない製品(アルドリッチ社製、カタログNo.370967)を用いて上記プロセスを繰り返したところ、合成ポルフィリンを用いた場合も、リグニンの分解に対して同程度の結果が得られた。すなわち、使用するリグニン中の不純物の存在や、リグニンの平均分子量や、リグニンの水への溶解性に拘わらず、リグニンを同程度に分解することができる。
【0088】
さらに、紫外光の代わりに太陽光を用いて上記プロセスを繰り返したところ、リグニンの分解に対して同様な結果が得られた。
【0089】
【実施例4】
リグニンとして、還元糖やセルロースなどの不純物を含まない、純度の高い製品(シグマ社製、カタログNo.471003、分子量60,000)を用いた。このリグニン:1.8mg/mL、0.05M KOH、およびシグマ社製のプロトポルフィリンIV(カタログNo.258385−1G):50μg/mLを含有する溶液1mLを、ポリプロピレン製エッペンドルフチューブ程度の光透過性を持つ円筒形チューブに入れ、スペクトロニクス社製のENF型紫外光ランプを用いて紫外光を12時間照射した。その後、80℃で60分間加熱し、揮発したガスを島津GC/MS QP−2010、カラムDB−WAXを用いて分析したところ、54μg/mLのメタノールが測定された。すなわち、乾燥リグニン重量基準で3.0重量%のメタノールを得ることができた。
【0090】
また、リグニンとして、還元糖やセルロースなどの不純物を含まない、純度の高い製品(アルドリッチ社製、カタログNo.471046、分子量12,000)、還元糖を含みやや純度が低い製品(シグマ社製、カタログNo.471038、分子量52,000)、および水に溶けない製品(アルドリッチ社製、カタログNo.370967)を用いて上記プロセスを繰り返したところ、メタノール量として同程度の結果が得られた。すなわち、使用するリグニン中の不純物の存在や、リグニンの平均分子量や、リグニンの水への溶解性に拘わらず、リグニンからアルコール類を分離製造することができることが分かる。
【0091】
さらに、紫外光の代わりに太陽光を用いて上記プロセスを繰り返したところ、メタノール量として同様な結果が得られた。
【0092】
(参考例1)
リグニンとして、還元糖やセルロースなどの不純物を含まない、純度の高い製品(シグマ社製、カタログNo.471003、分子量60,000)を用いた。このリグニン:7.5mg/mLおよび0.05M KOHを含有する溶液1mLを、ポリプロピレン製エッペンドルフチューブ程度の光透過性を持つ円筒形チューブに入れ、80℃で60分間加熱し、揮発したガスを島津GC/MS QP−2010、カラムDB−WAXを用いて分析したところ、93μg/mLのメタノールが測定された。すなわち、乾燥リグニン重量基準で1.24重量%のメタノールを得ることができた。
【0093】
また、リグニンとして、還元糖やセルロースなどの不純物を含まない、純度の高い製品(アルドリッチ社製、カタログNo.471046、分子量12,000)、並びに水に溶けない製品(アルドリッチ社製、カタログNo.370967)を用いて上記プロセスを繰り返したところ、メタノール量として同程度の結果が得られた。すなわち、使用するリグニン中の不純物の存在や、リグニンの平均分子量や、リグニンの水への溶解性に拘わらず、リグニンからメタノールを同程度に製造することができることが分かる。
【0094】
(参考例2)
リグニンとして、還元糖やセルロースなどの不純物を含まない、純度の高い製品(シグマ社製、カタログNo.471003、分子量60,000)を用いた。このリグニン:7.5mg/mLおよび0.05M KOHを含有する溶液1mLを、ポリプロピレン製エッペンドルフチューブ程度の光透過性を持つ円筒形チューブに入れ、スペクトロニクス社製のENF型紫外光ランプを用いて紫外光を24時間照射した。その後、80℃で60分間加熱し、揮発したガスを島津GC/MS QP−2010、カラムDB−WAXを用いて分析したところ、150μg/mLのメタノールが測定された。すなわち、乾燥リグニン重量基準で2重量%のメタノールを得ることができた。
【0095】
また、リグニンとして、還元糖やセルロースなどの不純物を含まない、純度の高い製品(アルドリッチ社製、カタログNo.471046、分子量12,000)、並びに水に溶けない製品(アルドリッチ社製、カタログNo.370967)を用いて上記プロセスを繰り返したところ、メタノール量として同程度の結果が得られた。すなわち、使用するリグニン中の不純物の存在や、リグニンの平均分子量や、リグニンの水への溶解性に拘わらず、リグニンからメタノールを同程度に製造することができることが分かる。
【0096】
さらに、紫外光の代わりに太陽光を用いて上記プロセスを繰り返したところ、メタノール量として同様な結果が得られた。
【実施例5】
【0097】
リグニンとして、還元糖やセルロースなどの不純物を含まない、純度の高い製品(シグマ社製、カタログNo.471003、分子量60,000)を用いた。このリグニン:2.5mg/mL、0.05M KOH、および上記実施例1に従って得られたポルフィリン:25μg/mLを含有する溶液1mLを、ポリプロピレン製エッペンドルフチューブ程度の光透過性を持つ円筒形チューブに入れ、スペクトロニクス社製のENF型紫外光ランプを用いて紫外光を12時間照射した。その後、80℃で60分間加熱し、揮発したガスを島津GC/MS QP−2010、カラムDB−WAX、を用いて分析したところ、160μg/mLのメタノールが測定された。すなわち、乾燥リグニン重量基準で6.4重量%のメタノールを得ることができた。リグニン−アルカリ化合物溶液に、さらに光触媒としてポルフィリンを添加することによって、リグニンからのメタノールの製造量が飛躍的に促進することが分かる。
【0098】
また、リグニンとして、還元糖やセルロースなどの不純物を含まない、純度の高い製品(アルドリッチ社製、カタログNo.471046、分子量12,000)、並びに水に溶けない製品(アルドリッチ社製、カタログNo.370967)を用いて上記プロセスを繰り返したところ、メタノール量として同程度の結果が得られた。すなわち、使用するリグニン中の不純物の存在や、リグニンの平均分子量や、リグニンの水への溶解性に拘わらず、リグニンからメタノールを同程度に製造することができることが分かる。
【0099】
さらに、紫外光の代わりに太陽光を用いて上記プロセスを繰り返したところ、メタノール量として同様な結果が得られた。
【0100】
(参考例3)
リグニンとして、還元糖やセルロースなどの不純物を含まない、純度の高い製品(シグマ社製、カタログNo.471003、分子量60,000)を用いた。このリグニン:2.5mg/mLを含有する溶液1mLを、ポリプロピレン製エッペンドルフチューブ程度の光透過性を持つ円筒形チューブに入れ、スペクトロニクス社製のENF型紫外光ランプを用いて紫外光を24時間照射した。その後、80℃で60分間加熱し、揮発したガスを島津GC/MS QP−2010、カラムDB−WAXを用いて分析したところ、21μg/mLのメタノールが測定された。すなわち、乾燥リグニン重量基準で0.84重量%のメタノールを得ることができた。
【0101】
また、リグニンとして、還元糖やセルロースなどの不純物を含まない、純度の高い製品(アルドリッチ社製、カタログNo.471046、分子量12,000)、並びに水に溶けない製品(アルドリッチ社製、カタログNo.370967)を用いて上記プロセスを繰り返したところ、メタノール量として同程度の結果が得られた。すなわち、使用するリグニン中の不純物の存在や、リグニンの平均分子量や、リグニンの水への溶解性に拘わらず、リグニンからメタノールを同程度に製造することができることが分かった。
【0102】
さらに、紫外光の代わりに太陽光を用いて上記プロセスを繰り返したところ、メタノール量について同様な結果が得られた。
【0103】
(参考例4)
本参考例では、ベンゼン環に酸素原子が結合した芳香族炭化水素に対して、芳香族炭化水素分解用触媒を用いて分解処理する方法について説明する。
【0104】
ベンゼン環に酸素原子が結合した芳香族炭化水素を含む化合物であるレマゾールブリリアントブルー(RBBR;SIGMA社製)を用い、その光分解を行った。このRBBRはダイオキシン類を分解する指標として用いられる類似試薬である。
【0105】
RBBR:250μg/mL、0.05M KOH、および上記実施例1に従って得られたポルフィリン、プロトポルフィリンIX(ALDRICH社製)、ウロポルフィリンI(SIGMA社製)、およびコプロポルフィリンI(ALDRICH社製)のそれぞれ25μg/mLを含有する溶液(溶媒として、30%アセトニトリル、0.1%トリフルオロ酢酸、60%メタノールを用いた)1mLを、ポリプロピレン製エッペンドルフチューブ程度の光透過性を持つ円筒形チューブに入れ、スペクトロニクス社製のENF型紫外光ランプを用いて紫外光を2時間照射した。その結果、いずれのポルフィリンおよび溶媒を用いた場合も、RBBRの青い色調が消失し、RBBRが分解されたことが分かる。
【0106】
さらに、紫外光の代わりに太陽光を用いて上記プロセスを繰り返したところ、同様にRBBRの分解が確認できた。
【0107】
(参考例5)
本参考例では、ベンゼン環に酸素原子が結合した芳香族炭化水素を含む化合物であるキシレンシアノール(タカラ社製)およびブロモフェノールブルー(タカラ社製)を用い、その光分解を行った。
【0108】
キシレンシアノール:5mg/mLおよびブロモフェノールブルー:5mg/mL、0.05M KOH、ならびに上記実施例1に従って得られたポルフィリン、プロトポルフィリンIX(ALDRICH社製)、ウロポルフィリンI(SIGMA社製)、コプロポルフィリンI(ALDRICH社製)およびエチオポルフィリン(ALDRICH社製)のそれぞれ40μg/mLを含有する溶液(溶媒として、30%アセトニトリル、0.1%トリフルオロ酢酸を用いた)1mLを、ポリプロピレン製エッペンドルフチューブ程度の光透過性を持つ円筒形チューブに入れ、スペクトロニクス社製のENF型紫外光ランプを用いて紫外光を2時間照射した。その結果、いずれのポルフィリンおよび溶媒を用いた場合も、キシレンシアノールおよびブロモフェノールブルーの青色ならびに黄色の色調が消失し、キシレンシアノールおよびブロモフェノールブルーが分解されたことが分かる。
【0109】
さらに、紫外光の代わりに太陽光を用いて上記プロセスを繰り返したところ、同様にキシレンシアノールおよびブロモフェノールブルーの分解が確認できた。
【実施例6】
【0110】
本実施例では、本発明のリグニン分解用触媒を用いて、リグニンを分解して水素イオンを遊離させる方法において、リグニンとして、還元糖セルロースなどの不純物を含まない、純度の高い製品(シグマ社製、カタログNo.471003、分子量60,000)を用いた。
【0111】
このリグニン2.5mg/mL、および上記実施例1に従って得られたポルフィリン:50μg/mLを含有する溶液1mLを、ポリプロピレン製エッペンドルフチューブ程度の光透過性を持つ円筒形チューブに入れ、スペクトロニクス社製のENF型紫外光ランプを用いて紫外光を12時間照射した。その結果、リグニン反応液のpHが9.2から6.4に降下した。かくして、リグニンから水素イオンが遊離したことが分かる。
【0112】
また、リグニンとして、還元糖やセルロースなどの不純物を含まない、純度の高い製品(アルドリッチ社製、カタログNo.471046、分子量12,000)、還元糖を含みやや純度が低い製品(シグマ社製、カタログNo.471038、分子量52,000)、および水に溶けない製品(アルドリッチ社製、カタログNo.370967)を用いて上記プロセスを繰り返したところ、水素イオンが同様に遊離した。すなわち、使用するリグニン中の不純物の存在や、リグニンの平均分子量や、リグニンの水への溶解性に拘わらず、リグニンから水素イオンを同程度に遊離することができることが分かる。
【0113】
さらに、紫外光の代わりに太陽光を用いて上記プロセスを繰り返したところ、同様な結果が得られた。
【実施例7】
【0114】
リグニンとして、還元糖やセルロースなどの不純物を含まない、純度の高い製品(シグマ社製、カタログNo.471003、分子量60,000)を用いた。このリグニン:2.5mg/mL、2.5mM KOH、および上記実施例1に従って得られたポルフィリン:50μg/mLを含有する溶液1mLを、ポリプロピレン製エッペンドルフチューブ程度の光透過性を持つ円筒形チューブに入れ、スペクトロニクス社製のENF型紫外光ランプを用いて紫外光を12時間照射した。このサンプルをHPLC(高速液体クロマトグラフィー)にて、ゲル濾過カラムを用いて分析した。対照として紫外線照射前の溶液についても分析した。分析の結果、照射前の場合は、波長310nmの吸光において、7−9minで溶出されるピークとして検出されるが、リグニンにポルフィリンを添加し、紫外光を照射した場合は、310nmの吸光において、7−9minで溶出されるリグニンのピークの面積が78%まで縮小した。すなわち、リグニンにポルフィリンを添加し、紫外光を照射することによって、22%のリグニンが分解されたことが分かる。また、リグニン反応液のpHが10.7から6.2に降下した。かくして、リグニンから水素イオンが遊離したことが分かる。
【0115】
また、リグニンとして、還元糖やセルロースなどの不純物を含まない、純度の高い製品(アルドリッチ社製、カタログNo.471046、分子量12,000)、還元糖を含みやや純度が低い製品(シグマ社製、カタログNo.471038、分子量52,000)、および水に溶けない製品(アルドリッチ社製、カタログNo.370967)を用いて上記プロセスを繰り返したところ、同様な結果が得られた。すなわち、使用するリグニン中の不純物の存在や、リグニンの平均分子量や、リグニンの水への溶解性に拘わらず、リグニンを同程度に分解すると共に、水素イオンを同程度に遊離することができることが分かる。
【0116】
さらに、紫外光の代わりに太陽光を用いて上記プロセスを繰り返したところ、同様な結果が得られた。
【実施例8】
【0117】
本発明のリグニン分解用触媒を用いて、リグニンを分解して水素イオンを遊離させる方法において、リグニンとして、還元糖を含みやや純度が低い製品(シグマ社製、カタログNo.471038、分子量52,000)を用いた。
【0118】
上記リグニン5mg/mLおよび上記実施例1に従って得られたポルフィリン化合物50μg/mLを含有する溶液1mLを、ポリプロピレン製エッペンドルフチューブ程度の光透過性を持つ円筒形チューブに入れ、スペクトロニクス社製のENF型紫外光ランプを用いて紫外光を12時間照射した。その結果、リグニン反応液のpHが6.2から4.8に降下した。かくして、リグニンから水素イオンが遊離したことが分かる。
【0119】
また、リグニンとして、還元糖やセルロースなどの不純物を含まない、純度の高い製品(シグマ社製、カタログNo.471003、分子量60,000、およびアルドリッチ社製、カタログNo.471046、分子量12,000)、並びに水に溶けない製品(アルドリッチ社製、カタログNo.370967)を用いて上記プロセスを繰り返したところ、同様な結果が得られた。すなわち、使用するリグニン中の不純物の存在や、リグニンの平均分子量や、リグニンの水への溶解性に拘わらず、リグニンから水素イオンを同程度に遊離することができることが分かる。
【0120】
さらに、紫外光の代わりに太陽光を用いて上記プロセスを繰り返したところ、同様な結果が得られた。
【実施例9】
【0121】
リグニン分解用触媒を用いて、リグニンを分解して水素イオンを遊離させる方法において、リグニンとして、還元糖セルロースなどの不純物を含まない、純度の高い製品(シグマ社製、カタログNo.471003、分子量60,000)を用いた。
【0122】
上記リグニン:2.5mg/mL、2.5mM KOH、およびポルフィリン(シグマ社製のプロトポルフィリンIV、カタログ番号258385−1G):50μg/mLを含有する溶液1mLを、ポリプロピレン製エッペンドルフチューブ程度の光透過性を持つ円筒形チューブに入れ、スペクトロニクス社製のENF型紫外光ランプを用いて紫外光を12時間照射した。その結果、リグニン反応液のpHが10.7から7.4に降下した。かくして、リグニンから水素イオンが遊離したことが分かる。
【0123】
また、紫外光の代わりに太陽光を用いて上記プロセスを繰り返したところ、同様な結果が得られた。
【実施例10】
【0124】
リグニンとして、還元糖やセルロースなどの不純物を含まない、純度の高い製品(シグマ社製、カタログNo.471003、分子量60,000)を使用した。このリグニン:2.5mg/mL、0.05M KOH、および上記実施例1に従って得られたポルフィリン:50μg/mLを含有する溶液1mLを、ポリプロピレン製エッペンドルフチューブ程度の光透過性を持つ円筒形チューブに入れ、スペクトロニクス社製のENF型紫外光ランプを用いて紫外光を12時間照射した。得られたサンプルをHPLCにて、ゲル濾過カラムを用いて分析した。対照として紫外線照射前の溶液についても分析した。分析の結果、照射後のサンプルは、照射前のサンプルに比べ、310nmの吸光において、7minで溶出されるリグニンのピークの面積から、72%のリグニンが分解されていることが分かった。この分解生成物は、ゲル濾過にて、より低分子量のフラクションに溶出された。このリグニンの分解生成物の吸光度は低いため、310nmの吸光度では描出できなかったが、揮発性ではない分解生成物として、溶出サンプルを凍結乾燥したところ、同部に一致して分解生成物の沈殿が得られた。
【0125】
リグニンとして、還元糖やセルロースなどの不純物を含まない、純度の高い製品(アルドリッチ社製、カタログNo.471046、分子量12,000)、並びに水に溶けない製品(アルドリッチ社製、カタログNo.370967)を用いて上記プロセスを実施したところ、同程度の結果が得られた。すなわち、使用するリグニン中の不純物の存在や、リグニンの平均分子量や、リグニンの水への溶解性に拘わらず、リグニン−アルカリ化合物溶液に、さらに光触媒としてのポルフィリンを添加することにより、リグニンの光分解に関して同程度の結果が得られた。
【0126】
また、紫外光の代わりに太陽光を用いて上記プロセスを繰り返したところ、同様な結果が得られた。
【実施例11】
【0127】
リグニンとして、還元糖やセルロースなどの不純物を含まない、純度の高い製品(シグマ社製、カタログNo.471003、分子量60,000)を用いた。このリグニン205mg/mLに対して、0.05M KOH、および合成ポルフィリンとして、分子内にカルボキシル基を4個含むコプロポルフィリンI(ALDRICH社製)50μg/mLを含有する溶液0.5mLを、空気のスペースを残すようにして2mL容量のポリプロピレン製エッペンドルフチューブ程度の光透過性を持つ円筒形チューブに入れ、スペクトロニクス社製のENF型紫外光ランプを用いて紫外光を48時間照射した。かくして得られた反応液を実施例3の場合と同様に処理した。その結果、リグニンの80%以上が分解されていることが確認できた。
【0128】
また、空気のスペースに対して酸素を充填して、上記と同様にして紫外光を照射したところ、同様に、リグニンの80%以上が分解されていることが確認できた。
【0129】
さらに、空気のスペースに対して窒素を充填して、上記と同様にして紫外光を照射したところ、リグニンの10%程度が分解されていることが確認できた。
【0130】
さらにまた、上記におけるポルフィリン含有リグニン溶液を、エッペンドルフチューブ内に空気のスペースがないような量で充填して、上記と同様に紫外光を照射したところ、リグニンの分解は殆ど認められなかった。
【0131】
また、リグニンとして、還元糖やセルロースなどの不純物を含まない、純度の高い製品(アルドリッチ社製、カタログNo.471046、分子量12,000)、還元糖を含みやや純度が低い製品(シグマ社製、カタログNo.471038、分子量52,000)、および水に溶けない製品(アルドリッチ社製、カタログNo.370967)を用いて上記プロセスを繰り返したところ、リグニンの分解に対して同程度の結果が得られた。すなわち、使用するリグニン中の不純物の存在や、リグニンの平均分子量や、リグニンの水への溶解性に拘わらず、リグニンを同程度に分解することができる。
【0132】
さらに、紫外光の代わりに太陽光を用いて上記プロセスを繰り返したところ、リグニンの分解に対して同様な結果が得られた。
【0133】
以下、本発明およびその関連発明に関して纏めて記載する。
【0134】
本発明のリグニン分解用触媒は、遺伝子ypjD(b2611)が変異により発現できなくなった大腸菌を培地で培養し、該培地から得られたポルフィリン環構造を有するテトラピロール化合物であって、ポルフィリン環の中心に遷移金属が配位していないポルフィリンを含んでなることを特徴とする。
【0135】
上記リグニン分解用触媒において、この触媒が、大腸菌を培地で培養して得られたポルフィリン環構造を有するテトラピロール化合物含有培地からなることを特徴とする。
【0136】
本発明のリグニン分解用触媒において、大腸菌が、遺伝子ypjD(b2611)のトランスポゾン挿入変異株であることを特徴とする。
【0137】
上記リグニン分解用触媒において、ポルフィリンが、ポルフィリン環にメチル基およびエチルエステルまたは酢酸基またはプロピオン酸基を含むテトラピロール化合物であることを特徴とする。
【0138】
上記リグニン分解用触媒において、ポルフィリンが、ポルフィリン環に4つのメチル基および4つのエチルエステルまたは酢酸基またはプロピオン酸基を含むテトラピロール化合物であることを特徴とする。
【0139】
上記リグニン分解用触媒において、ポルフィリンが、C3638であることを特徴とする。
【0140】
上記リグニン分解用触媒において、ポルフィリンが、光照射で、アルカリ溶液中で、または光照射下のアルカリ溶液中で、触媒機能を発現することを特徴とする。
【0141】
本発明のポルフィリンは、遺伝子ypjD(b2611)が変異により発現できなくなった大腸菌を培地で培養して得られたものである。
【0142】
上記ポルフィリンにおいて、大腸菌が、遺伝子ypjD(b2611)のトランスポゾン挿入変異株であることを特徴とする。
【0143】
光照射により触媒機能を発現するポルフィリンを含んでなるリグニン分解用触媒。
【0144】
アルカリ溶液中で触媒機能を発現するポルフィリンを含んでなるリグニン分解用触媒。
【0145】
光照射下のアルカリ溶液中で触媒機能を発現するポルフィリンを含んでなるリグニン分解用触媒。
【0146】
上記リグニン分解用触媒において、ポルフィリンが、ポルフィリン環にメチル基およびエチルエステルまたは酢酸基またはプロピオン酸基を含むテトラピロール化合物である。
【0147】
上記リグニン分解用触媒において、ポルフィリンが、ポルフィリン環に4つのメチル基、4つのエチルエステルまたは酢酸基またはプロピオン酸基を含むテトラピロール化合物である。
【0148】
上記リグニン分解用触媒において、ポルフィリンが、分子中にカルボキシル基を有するポルフィリンである。
【0149】
上記リグニン分解用触媒において、ポルフィリンが、分子中に合計2個、4個または8個のカルボキシル基を有するポルフィリンである。
【0150】
上記リグニン分解用触媒において、ポルフィリンが、ウロポルフィリン、プロトポルフィリン、およびコプロポルフィリンから選ばれた少なくとも1種である。
【0151】
リグニンにアルカリ化合物を含む溶液を加え、このリグニン−アルカリ化合物溶液からアルコール類および有機酸類を分離させ、アルコール類および有機酸類を製造する方法が提供できる。
【0152】
上記アルコール類および有機酸類の製造方法において、リグニン−アルカリ化合物溶液に対して光照射(好ましくは、紫外線または太陽光などによる照射)した後に、このリグニン−アルカリ化合物溶液からアルコール類および有機酸類を分離させる。
【0153】
上記アルコール類および有機酸類の製造方法において、リグニン−アルカリ化合物溶液に対して、さらに上記リグニン分解用触媒を作用させた後に、このリグニン−アルカリ化合物溶液からアルコール類および有機酸類を分離させる。
【0154】
上記アルコール類および有機酸類の製造方法において、リグニン−アルカリ化合物溶液に対して、上記リグニン分解用触媒を作用させた後に、さらに光照射(好ましくは、紫外線または太陽光などによる照射)し、このリグニン−アルカリ化合物溶液からアルコール類および有機酸類を分離する。
【0155】
リグニンに対して上記リグニン分解用触媒および本発明のリグニン分解用触媒を作用させた後、リグニンからアルコール類および有機酸類を分離させ、アルコール類および有機酸類を製造する方法も提供できる。
【0156】
上記アルコール類および有機酸類の製造方法はまた、リグニンに対して光照射(好ましくは、紫外線または太陽光などによる照射)し、リグニンからアルコール類および有機酸類を分離させる。
【0157】
上記アルコール類および有機酸類の製造方法において、リグニンに対して上記リグニン
分解用触媒を作用させた後に、光照射(好ましくは、紫外線または太陽光などによる照射)し、リグニンからアルコール類および有機酸類を分離させる。
【0158】
上記アルコール類および有機酸類の製造方法において、アルカリ化合物が、KOHおよびNaOHの少なくとも1種である。
【0159】
上記アルコール類および有機酸類の製造方法において、アルコール類がメタノールであり、有機酸類が、ギ酸、酢酸、リンゴ酸、コハク酸およびピルビン酸である。
【0160】
上記アルコール類および有機酸類の製造方法において、アルコール類の分離を蒸留により行う。
【0161】
上記アルコール類および有機酸類の製造方法に従ってアルコール類および有機酸類を分離する際に生じる低分子量の炭素含有化合物であるリグニン分解生成物を回収、製造することができる。
【0162】
ポルフィリンを含んでなるベンゼン環を形成する炭素原子に酸素原子が結合した芳香族炭化水素分解用触媒である。
【0163】
上記芳香族炭化水素分解用触媒において、ポルフィリンが、大腸菌を培地で培養し、該培地から得られたポルフィリン環構造を有するテトラピロール化合物である。
【0164】
上記芳香族炭化水素分解用触媒において、この触媒が、大腸菌を培地で培養して得られたポルフィリン環構造を有するテトラピロール化合物含有培地からなる。
【0165】
上記芳香族炭化水素分解用触媒において、大腸菌が、遺伝子ypjD(b2611)が変異により発現できなくなった大腸菌である。
【0166】
上記芳香族炭化水素分解用触媒において、大腸菌が、遺伝子ypjD(b2611)のトランスポゾン挿入変異株である。
【0167】
上記芳香族炭化水素分解用触媒において、ポルフィリンが、ポルフィリン環にメチル基およびエチルエステルまたは酢酸基またはプロピオン酸基を含むテトラピロール化合物である。
【0168】
上記芳香族炭化水素分解用触媒において、ポルフィリンが、ポルフィリン環に4つのメチル基、4つのエチルエステルまたは酢酸基またはプロピオン酸基を含むテトラピロール化合物である。
【0169】
上記芳香族炭化水素分解用触媒において、ポルフィリンが、ウロポルフィリン、プロトポルフィリン、コプロポルフィリン、およびエチオポルフィリンから選ばれた少なくとも1種である。
【0170】
上記芳香族炭化水素分解用触媒において、ポルフィリンが、分子中にカルボキシル基を有するポルフィリンである。
【0171】
上記芳香族炭化水素分解用触媒において、ポルフィリンが、分子中に合計2個、4個または8個のカルボキシル基を有するポルフィリンである。
【0172】
上記芳香族炭化水素分解用触媒において、芳香族炭化水素が、ダイオキシン類である。
【0173】
リグニンまたはリグニン−アルカリ化合物溶液に対して、上記リグニン分解用触媒及び本発明のリグニン分解用触媒および上記触媒を作用させ、この溶液に対して、光照射(好ましくは、紫外線または太陽光などによる照射)を行い、水素イオンを遊離させる方法を提供できる。
【0174】
リグニンをアルコール類及び有機酸類に変換する触媒機能を有するポルフィリンを提供できる。
【0175】
ベンゼン環を形成する炭素に酸素原子が結合した芳香族炭化水素を含む化合物を分解する触媒機能を有するポルフィリンを提供できる。
【0176】
遺伝子ypjD(b2611)が変異により発現できなくなった大腸菌を培養することにより得られたポルフィリンを提供できる。
【0177】
遺伝子ypjD(b2611)が変異により発現できなくなった大腸菌を培養して得られたポルフィリンを含んでなるリグニン分解用触媒を提供できる。
遺伝子ypjD(b2611)が変異により発現できなくなった状態にある、ポルフィリン環の中心に遷移金属が配位していないポルフィリンの産生機能を有する大腸菌。
上記大腸菌において、該大腸菌が遺伝子ypjD(b2611)のトランスポゾン挿入変異株である。
遺伝子ypjD(b2611)が変異により発現できなくなった状態にある大腸菌からポルフィリンを細胞外に分泌する機能を有する遺伝子ypjD(b2611)、遺伝子ypjD(b2611)のトランスポゾン挿入変異株である大腸菌からポルフィリンを細胞外に分泌する機能を有する遺伝子ypjD(b2611)。上記遺伝子ypjD(b2611)において、ポルフィリンがポルフィリン環の中心に遷移金属が配位していないポルフィリンである遺伝子ypjD(b2611)。
【産業上の利用可能性】
【0178】
本発明のリグニン分解用触媒は、白色腐朽菌などの酵素ではなく、非タンパク質からなる触媒である。この触媒を用いることによって、主に光エネルギーを用いてリグニンを分解し、木材の20〜30%に及ぶ非有効資源であるリグニンから、簡便な方法でメタノールなどのアルコール類やギ酸などの有機酸類や水素イオンを遊離できるので、自然界では分解困難なリグニンの利用分野を拡大することができる。すなわち、リグニンから取り出されたアルコール類は、ガソリンなどの化石燃料の代替燃料として燃料産業の分野で利用でき、有機酸類は各種産業分野で利用でき、また、リグニンから得られた水素イオンは、例えば燃料電池に利用できるので、電力産業の分野で利用できる。
【0179】
また、本発明の関連発明である芳香族炭化水素分解用触媒は、ベンゼン環に酸素原子が結合した芳香族炭化水素を分解するので、有害な産業廃棄物の処理や、既に汚染された土壌や地表の浄化を可能とする。従って、産業廃棄物処理分野や、土壌などの浄化分野で利用できる。

Claims (11)

  1. ポルフィリン環の中心に遷移金属が配位していないポルフィリンであって、光照射により触媒機能を発現するか、アルカリ溶液中で触媒機能を発現するか、または光照射下のアルカリ溶液中で触媒機能を発現するポルフィリンを含んでなることを特徴とするリグニン分解用触媒。
  2. 請求項1に記載のリグニン分解用触媒において、ポルフィリンが、遺伝子ypjD(b2611)が変異により発現できなくなった大腸菌を培地で培養して得られたポルフィリン環構造を有する化合物であって、ポルフィリン環の中心に遷移金属が配位していないポルフィリンであることを特徴とするリグニン分解用触媒。
  3. 請求項1に記載のリグニン分解用触媒において、リグニン分解用触媒が、遺伝子ypjD(b2611)が変異により発現できなくなった大腸菌を培地で培養して得られたポルフィリン環構造を有する化合物であって、ポルフィリン環の中心に遷移金属が配位していないポルフィリンを含有する培地からなることを特徴とするリグニン分解用触媒。
  4. 請求項2または3に記載のリグニン分解用触媒において、大腸菌が、遺伝子ypjD(b2611)のトランスポゾン挿入変異株であることを特徴とするリグニン分解用触媒。
  5. 請求項のいずれか1項に記載のリグニン分解用触媒において、ポルフィリンが、ポルフィリン環にメチル基およびエチルエステルまたは酢酸基またはプロピオン酸基を含むテトラピロール化合物であることを特徴とするリグニン分解用触媒。
  6. 請求項のいずれか1項に記載のリグニン分解用触媒において、ポルフィリンが、ポルフィリン環に4つのメチル基および4つのエチルエステルまたは酢酸基またはプロピオン酸基を含む化合物であることを特徴とするリグニン分解用触媒。
  7. 請求項のいずれか1項に記載のリグニン分解用触媒において、ポルフィリンが、C3638であることを特徴とするリグニン分解用触媒。
  8. 請求項1に記載のリグニン分解用触媒において、ポルフィリンが、ポルフィリン環の中心に遷移金属が配位していない化学合成ポルフィリンであることを特徴とするリグニン分解用触媒。
  9. 請求項に記載のリグニン分解用触媒において、化学合成ポルフィリンが、分子中にカルボキシル基を有するポルフィリンであることを特徴とするリグニン分解用触媒。
  10. 請求項9に記載のリグニン分解用触媒において、化学合成ポルフィリンが、分子中に合計2個、4個または8個のカルボキシル基を有するポルフィリンであることを特徴とするリグニン分解用触媒。
  11. 請求項9に記載のリグニン分解用触媒において、化学合成ポルフィリンが、ウロポルフィリン、プロトポルフィリン、およびコプロポルフィリンから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とするリグニン分解用触媒。
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