JP4339397B2 - テトラピロール化合物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、テトラピロール化合物の製造方法およびテトラピロール化合物に関する。
ポルフィリンやクロロフィルなどのテトラピロール化合物は、抗ガン剤などの医薬品として重要な化合物であり、その他に、食品添加物や、エレクトロニクス分野における酸化還元触媒などにも用いられている。このようなテトラピロール化合物は、一般には、化学的な合成法によって製造されている。しかしながら、この化学的合成法では、特定の製造装置や触媒などが必要になるという問題があり、また、化学的合成法によっては、使用する溶剤などが原因となって、環境に悪影響を及ぼす恐れもあった。
これに対して、微生物を用いてテトラピロール化合物を製造する方法が提案されている。例えば、光合成細菌であるプレクトネマ属に属する変異株微生物を培養し、培養物からプロトクロロフィリドを採取する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、光合成細菌を培養することによってテトラピロール化合物を回収する方法が知られている(例えば、特許文献2および3参照)。さらに、アースロバクター属に属する微生物を特定の化合物を含有する培地において培養し、培養物からウロポルフィリンを採取する方法が知られている(例えば、特許文献4参照)。
特開平5−91866号公報 特開平5−244937号公報 特開2000−23691号公報 特開平5−38295号公報
しかしながら、特許文献1の方法では、プロトクロロフィリドを菌体から採取しなければならず、具体的には、菌体の細胞を破砕した後、抽出法などによって分離、精製することが必要であった。また、特許文献2〜4記載の方法では、培地にテトラピロール化合物の前駆体である5−アミノレブリン酸を含有させなければならなかった。
本発明の課題は、上述の従来技術の問題点を解決することにあり、大腸菌を用いて、テトラピロール化合物の前駆体を使用することなく、簡便にテトラピロール化合物を製造する方法を提供することにある。
本発明のテトラピロール化合物の製造方法は、遺伝子ypjD(b2611)が変異により発現できなくなった大腸菌を培地で培養し、該培地からポルフィリン環構造を有するテトラピロール化合物を得ることを特徴とする。
本発明の製造方法において、前記培地中でイオンとなる金属元素またはイオンとして解離される金属元素を含んだ化合物を原料として該培地に添加し、該金属が含まれたテトラピロール化合物を得ることを特徴とする。
前記テトラピロール化合物が、ポルフィリン環に4つのメチル基、4つのエチルエステルまたは酢酸基(プロピオン酸基)を含む化合物であることを特徴とする。
本発明のテトラピロール化合物の製造方法はまた、遺伝子ypjD(b2611)が変異により発現できなくなった大腸菌を、培地中でイオンとなるMnまたはイオンとして解離されるMnを含んだ化合物を原料として添加した培地で培養し、該培地からMnが中心に配位されたポルフィリン環構造を有するテトラピロール化合物を得ることを特徴とする。
上記方法により、式:[C36H36O8N4・Mn(III)]+を有するテトラピロール化合物を製造することができる。
本発明によれば、大腸菌、特に遺伝子ypjD(b2611)が変異により発現できなくなった大腸菌を培地で培養し、この培地からポルフィリン環構造を有するテトラピロール化合物を回収することができるので、前駆体を使用することなく、簡便にテトラピロール化合物を提供することができるという効果を奏する。
本発明に係るテトラピロール化合物の製造方法の実施の形態によれば、大腸菌を好ましくは貧栄養培地で培養し、この貧栄養培地からテトラピロール化合物を分離・回収することによって、ポルフィリン環構造を有するテトラピロール化合物が製造される。すなわち、本発明は、培地中で大腸菌を培養、増殖させる過程で大腸菌にテトラピロール化合物を産生させ、培地中に分泌されたテトラピロール化合物を回収することにより、テトラピロール化合物を製造するものである。培地として貧栄養培地を用いることが好ましいのは、培地中にある天然物等の成分がテトラピロール化合物を分離する際の障害となるのを防ぐためである。貧栄養培地としては、グルコースまたはラクトースを含むものが好ましく用いられるが、これに限定されるものではない。
本発明で用いる大腸菌は、遺伝子ypjD(b2611)が変異により発現できなくなったものであることが好ましい。例えば、K12株およびBL21株由来の大腸菌等が挙げられる。例えば、K12株由来の、遺伝子ypjD(b2611)が変異により発現できなくなった大腸菌が好ましく用いられる。遺伝子ypjD(b2611)が変異により発現できなくなった大腸菌株としては、例えば、遺伝子ypjD(b2611)のトランスポゾン挿入変異株がある。この変異株では、遺伝子ypjD(b2611)の発現が部分的または完全に欠失した状態にある。尚、K12株は、例えばナショナルバイオリソースから入手することができ、BL21株は、例えばタカラバイオから入手することができる。また、遺伝子ypjD(b2611)のトランスポゾン挿入変異株としては、例えば、ナショナルバイオリソースから入手可能なJD23504などがある。
本実施の形態においては、まず、大腸菌を貧栄養培地中で培養する。このとき、大腸菌を貧栄養培地以外の適当な培地、例えばLB培地などの培地中で前培養し、得られた前培養物を貧栄養培地に接種して本培養することが好ましい。
大腸菌の培養条件は、大腸菌に対する一般的な条件であればよい。これは、大腸菌を前培養してから培地を変えて貧栄養培地中で本培養した場合、どちらの培養条件についても同様である。例えば、LB培地を用いて、15℃〜40℃の温度で6時間〜24時間かけて前培養した後、得られた細胞懸濁液を、貧栄養培地中において、20℃〜40℃の温度で12時間〜96時間かけて本培養する。これにより、培地中で細胞が増殖していき、目的とするテトラピロール化合物に特有な色調を帯びた培養物(産生物)が得られる。
次に、上記の培養物から、以下のようにして、目的とするテトラピロール化合物を分離する。
具体的には、培養物を遠心分離して得られた上澄み液を濾過した後、例えば、イオン交換樹脂カラムまたは逆相カラムなどを用いて、濾液からテトラピロール化合物を吸着、分離する。例えば、培養物を遠心分離器にかけて細胞を沈殿させ、培養物(産生物)を含む上澄み液を得る。次に、この上澄み液を、所定のポアサイズ(例えば、0.22μm)のフィルターで濾過した後、上記カラムを用いてイオン交換樹脂に吸着させる。次いで、例えば、20%アセトニトリル−0.1%トリフルオロ酢酸溶液などを用いてイオン交換樹脂から産生物を溶出した後、凍結乾燥する。尚、この場合の溶出には、有機溶媒に酸またはアルカリの溶液を含んだものを用いることもできる。本実施の形態によれば、1種類または2種類以上のテトラピロール化合物が得られ、例えば、500mLの細胞懸濁液から数〜数十mgのテトラピロール化合物を得ることが可能である。
上記の操作によって分離された産生物を、NMR(Nuclear Magnetic Resonance; 核磁気共鳴)などによって分析すると、テトラピロール化合物が含まれていることが確認できる。また、この産生物を吸光光度分析にかけると、色素に特有の波長域に吸収を持つ化合物であることが分かる。多くの場合、クロロフィル、ヘムまたはフタロシアニンに類似した二峰性のピークを示す色素化合物である。こうした色素化合物は、光によって電子が励起される光触媒や電子伝達体として有用である。また、水溶液中で、あるいは、細胞膜を介して酸化還元反応にかかわるので、電池においても機能すると考えられる。
上記したように、本発明によれば、大腸菌を用いて、ポルフィン、ポルフィリンおよびポルフィリン錯体などのポルフィリン類といったテトラピロール化合物および金属を含むテトラピロール化合物または錯体を製造することができるので、化学的合成法による場合のように、目的とする化合物の種類に応じた製造装置や触媒などを必要とせず、また、溶剤を使用する必要もなく、環境に悪影響を及ぼす恐れも少ない。また、大腸菌を培養する際には、培地中に5−アミノレブリン酸などのテトラピロール化合物の前駆体を加える必要がなく、さらに、テトラピロール化合物は、培地中に分泌されたものを回収すればよく、菌体から採取する必要はない。すなわち、本発明によれば、大腸菌の培養やテトラピロール化合物の回収に特定の化合物や装置を必要としないため、簡便にテトラピロール化合物を製造することができる。こうして得られたテトラピロール化合物は、医療、食品およびエレクトロニクスなどの種々の産業分野における用途に利用され得る。
本実施の形態においては、貧栄養培地に、この培地中でイオンとなる金属元素またはイオンとして解離される金属元素を含んだ化合物を添加し、この金属を含むテトラピロール化合物または錯体を得ることもできる。金属としては、培地中でイオンになるものであればよい。このような金属を含む化合物は、酸性、アルカリ性または中性の水溶液に可溶である。上記金属元素としては、例えば、金(Au)、銅(Cu)、カリウム(K)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)およびルテニウム(Ru)からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属を挙げることができる。また、金属は、無機金属化合物または有機金属化合物の状態で添加することもできる。無機金属化合物としては、例えば、上記金属の硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩、チオ硫酸塩、酸化物、窒化物またはハロゲン化物などを挙げることができる。また、有機金属化合物としては、例えば、金チオリンゴ酸ナトリウムおよびリンゴ酸亜鉛などを挙げることができる。
このように、貧栄養培地に、この培地中でイオンとなる金属元素またはイオンとして解離される金属元素を含んだ化合物を添加することにより、金属の種類に応じた色調のテトラピロール化合物または錯体が得られる。つまり、培地中で大腸菌を培養すると、大腸菌の細胞内に取り込まれた金属元素または金属化合物が、大腸菌の遺伝子の働きによって、それぞれの金属がもたらす色調を帯びた化合物に変化する。その後、この化合物は、細胞から産生物として吐き出されるので、培地中から回収することにより色素として有用な化合物を得ることができる。所望の色調の化合物を得るには、その色調に応じた金属を選択すればよく、化学的合成法による場合のように、目的とする化合物の種類毎に新たな方法を開発する必要がない。尚、得られた化合物は、光触媒や電池などの分野の他、光記憶媒体、情報記憶媒体、電子移動媒体、半導体素子および電極などにも適用可能である。
尚、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。
以下、本発明の実施例について述べる。
実施例1
遺伝子ypjD(b2611)のトランスポゾン挿入変異株(ナショナルバイオリソース JD23504)を、2mLのLB培地(Bacto-tryptone: 1%, Bacto-yeast extract: 0.5%, NaCl: 0.5%)において、37℃の温度で12時間かけて前培養した。得られた細胞懸濁液1mLを、1Lの脱イオン水の中にKH2PO4を9g、K2HPO4を21g、(NH4)2SO4を2g、クエン酸二水和物を1g、グルコースを3.6gおよびMgSO4を100mg溶解させた水溶液の中に加え、37℃の温度で24時間かけて本培養した。
培養液の色は、本培養を開始した時点で無色であったが、24時間経過後にはピンク色になった。この培養液を遠心分離器にかけて細胞を沈殿させ、得られた上澄み液をポアサイズ0.22μmのフィルターで濾過した。次いで、濾液を陰イオン交換樹脂を充填したカラムに通した後、樹脂に吸着した培養物を、20%アセトニトリル−0.1%トリフルオロ酢酸溶液で溶出し、溶出物を凍結乾燥した。これにより、ピンク色を帯びた産生物が得られた。
この産生物について、以下記載する各種機器分析を行ったところ、図1に示す構造を有しているテトラピロール化合物であることが確認された。図1中の記号A〜Gは、図4に示す13C NMRスペクトルの記号に対応し、その他の図面においても同じである。また、産生物をNMRによって分析したところ、テトラピロール化合物が含まれていることが確認された。さらに、ICP(Inductively Coupled Plasma)質量分析によってカリウム(K)が検出されたことから、Kとイオン結合あるいは錯体を形成する化合物として回収される。さらにまた、吸光光度分析を行ったところ、図2に示すように、ソーレー帯を含むポルフィリン特有の二峰性のピークが確認された。図2では、波長395nmと波長549nmとにそれぞれピークがある。このことから、産生物は、自由電子が移動可能な有機色素であることが確認できた。
上記で得られたテトラピロール化合物を異なる溶媒に溶かし(試料1および試料2)、二次元NMR測定(COSY、NOESY、HSQC、HMBC)を行い、そのスペクトルを解析し、構造解析を行った。
試料1に関しては、試料をCD3ODに溶解し、以下の条件でNMR測定を実施した。
・装置: INOVA500型(varian社製)
・共鳴周波数: 499.8MHz(1H)
・基準: 3.31ppm(CD2HOD、1H NMR)
49.421ppm(CD3OD、13C NMR)
・積算回数: 1H NMR(16回)、13C NMR(53428)、COSY
(16回)、NOESY(8回)、HSQC(32回)、HMBC(128回)
・その他: NOESYの混合時間は400msecに設定した。
また、試料2に関しては、試料をCD3CN:D2O:CD3COOD=90:10:0.1の溶媒に溶解し、以下の条件でNMR測定を実施した。
・装置: INOVA600型(varian社製)
・共鳴周波数: 599.8MHz(1H)
・基準: 1.92ppm(CD2HCN、1H NMR)
1.28ppm(CD3CN、13C NMR)
・積算回数: 1H NMR(64回)、13C NMR(50000)、COSY
(16回)、NOESY(16回)、HSQC(32回)、HMBC(128回)
・その他: NOESYの混合時間は400msecに設定した。
試料1に関する構造解析:
図3に1H NMRスペクトルを示した(溶媒:CD3OD)。その結果、10.0〜10.5ppm付近(d)、4.3ppm付近(f)、3.6ppm付近(g)、および3.2ppm付近(e)に、目的成分に由来すると推測されるシグナルが観測された。それぞれのシグナル強度比は、およそ1:2:3:2であった。このd〜gはその他の図面においても同じである。
図4に13C NMRスペクトルを示した。B、Cのシグナルから芳香族であることが推定された。
ここで、1H NMRのdシグナルは、化学シフト値から見て、通常では見られない特徴的なシグナルであり、かつ、芳香族化合物であることを考慮すると、ポルフィリン骨格が候補として考えられた。以下述べるように、二次元NMRスペクトル(図5〜9)をポルフィリンとして解析すると矛盾なく解析できた。また、図1の推定構造と類似の化合物は、J. org. Chem. Vol. 164, No. 21, 1999 (7973-7982)に報告されており、1H NMRの化学シフト値は、かなり良い一致を示していることからも、ポルフィリン構造は妥当であった。
以下、二次元NMRの解析について説明する。
図5にHSQCスペクトルを示した。HSQCスペクトルは、J1 CHを検出する測定法である。解析結果を図中に記した。プロトンシグナルについて、直接結合する炭素の番号の大文字で番号付けを行った。
図6にCOSYスペクトルを示した。COSYスペクトルは、1H−1H間のスピン結合を検出する測定法である。解析の結果、fとeとがスピン結合していることが分かり、シグナル強度比およびFとEとの化学シフト値から、−CH2−CH2−Xである可能性が高いと考えられた。ここでXは、構造不明の未確定成分である。
図7にHMBCスペクトルを示した。HMBCスペクトルは、Jn CH(n=2〜4程度)を検出する測定法で、異種核遠隔結合相関スペクトルが得られる。このスペクトルを解析した結果、(e,A)、(e,B)、(e,F)、(g,B)、(g,C)、(f,A)、(f,B)、(f,C)、(f,E)等の相関が得られた。これらの相関は、図1に示す推定構造と矛盾しなかった。
図8および図9にNOESYスペクトルを示した。NOESYスペクトルは、磁化の交換を検出する測定法であり、交差緩和による磁化移動から、核スピン間の距離に関する情報を得ることができる。スペクトルを解析した結果、(g,e)、(f,g)、(f,e)、(d,f)、(d,e)、(d,g)にNOE相関が観測された。これらのNOE相関は、図1に示す推定構造を支持するものであった。
試料2に関する構造解析:
図10に1H NMRスペクトルを、図11に13C NMRスペクトルを示した(溶媒:CD3CN:D2O:CD3COOD=90:10:0.1)。図10中で四角の枠で囲ったシグナルは不純物である。上記した試料1のスペクトルと比較した結果、主成分の構造が同じであると推測された。このことは、COSY、NOESY、HSQC、およびHMBCの各スペクトルの解析結果からも支持された。
図12に、試料2のNOESYスペクトルを拡大して示した。dプロトンが4種に分離して観測されていることから、低磁場(数字の小さい方)の方からd1からd4と番号付けした。NOE相関を以下に纏めた。
・d1およびd4はメチル基と−CH2−CH2−XともにNOE相関があった。
・d2は−CH2−CH2−XのみとNOE相関があった。
・d3はメチル基のみとNOE相関があった。
このことと、メチル基同士や−CH2−CH2−X同士にNOE相関が明確に観測されていないことから、図1の側鎖の配置が得られた。
13Cシグナルおよび1Hシグナルの番号付けでは、ほぼ同じ領域に観測されているシグナルを一まとめにして番号付けした。これは、ポルフィリンの骨格が繰り返し構造であるため、細かい帰属が困難であるからである。繰り返しの個数に関しては、メチル基(g)が4本観測されていることから、4個と推測される。
以上のように、試料1および2の分析結果から、図1の構造を得ることができた。ただし、側鎖であるメチル基および−CH2−CH2−Xのそれぞれは合計4つであればよく、付加部位は図1に示した8ケ所のうちいずれの場所でもデータと矛盾はなく、図1に示した付加位置に限定されない。
次に、−CH2−CH2−XにおけるXに相当する部分について検討した。
上記で得られた産生物に対して、以下の分析を行った。
(1)熱分解GC/MSによる定性分析:
TFA等の除去のため、試料を加熱炉内で、280℃×10min加熱した後、600℃で熱分解させ、分解物を、以下に記載するガスクロマトグラフ/質量分析装置(以下、「GC/MS」と称す。)で分離分析した。
装置名:Agilent Technologies製 HP5973型 質量選択型検出器つき
HP6890型 ガスクロマトグラフ
FRONTIER LAB製 PY-2020iD 加熱炉式熱分解装置
測定試料:試料2mgにAcCNを1mL添加した溶液を試料カップに0.5mL注入
し、窒素パージでAcCNを除去した。
(2)エレクトロスプレー−質量分析装置による分析:
溶液中成分の分子量を調査するために、以下に記載するエレクトロスプレー−質量分析装置(以下、「ESI−MS」と称す。)による分析を行った。
装置名:Applied Biosystems製 Qstar
導入溶媒:AcCN/0.05%ギ酸水溶液(50/50)
導入方法:30μLのループを用いて測定溶液を直接導入した。
測定モード:Positive mode
測定溶液:試料2mgにAcCNを1mL加えた溶液をバイアル瓶に少量採取後、導
入溶媒で約100ppmに希釈した。
上記GC/MSで行った分析の結果、試料から二酸化炭素が検出された。また、上記ESI−MSで行った分析の結果(図14)、分子量59のフラグメントイオン(ピークは4本)が検出されたことより、このフラグメントは、エチルエステルまたは酢酸基(プロピオン酸基)を含むことが確認された。
さらに上記産生物を熱分解GC−MSで分析したところ、図15に示すごとく、主たる成分はピロール化合物であった。このことは各成分の質量スペクトルをデータベースと照合することによって確認でき、分子中にピロール環の構造を含んでいることが確認できた。また、詳細な分子量については、図13に示すごとく、水素イオンが付加したイオンとして検出され、分子量655.2760−1.0078=654.2682が得られた。以上により、側鎖にエチルエステルあるいは酢酸基(プロピオン酸基)を4つと、メチル基を4つ含む分子量654、分子式C36H38O8N4のポルフィリン化合物であることが確認できた。
実施例2
遺伝子ypjD(b2611)のトランスポゾン挿入変異株(ナショナルバイオリソース JD23504)を、2mLのLB培地(Bacto-tryptone: 1%, Bacto-yeast extract: 0.5%, NaCl: 0.5%)において、37℃の温度で12時間かけて前培養した。得られた細胞懸濁液1mLを、1Lの脱イオン水の中にMnCl2を20mg、クエン酸二水和物を1g、グルコースを3.6gおよびMgSO4を100mg溶解させた水溶液の中に加え、37℃の温度で24時間かけて本培養した。
培養液の色は、本培養を開始した時点で無色であったが、24時間経過後には赤褐色になった。この培養液を遠心分離器にかけて細胞を沈殿させ、得られた上澄み液をポアサイズ0.22μmのフィルターで濾過した。次いで、濾液を陰イオン交換樹脂を充填したカラムに通した後、樹脂に吸着した培養物を、20%アセトニトリル−0.1%トリフルオロ酢酸溶液で溶出し、溶出物を凍結乾燥した。これにより、赤褐色を帯びた産生物が得られた。
さらに、上記産生物を熱分解GC−MSで分析したところ、図16に示すごとく、主たる成分はピロール化合物であった。このことは各成分の質量スペクトルをデータベースと照合することによって確認でき、分子中にピロール環の構造を含んでいることが確認できた。また、ESI−MS質量分析の結果から、この化合物の分子量が707であり(図17)、さらにMS/MS測定で分子量59のフラグメントが順次4つ検出されたこと(図18)、実施例1と同様に、熱分解GC/MS分析でCO2が検出されたことから、エチルエステル或いは酢酸基(プロピオン酸基)が合計4つ含まれていることが分かった。オレンジ色の色調を呈する同産生物の吸光スペクトルを図19に示す。
また、XPS元素分析から(図20)、Mnが含まれていることが分かり、以上に示した詳細な質量分析の結果から、本実施例の産生物は、実施例1の産生物と共通のポルフィリン化合物構造を持つ化合物であることが確認され、実施例1の産生物の質量654.2682と本実施例の産生物の質量(図17に示すごとく、分子量707.1905が得られる)との詳細な質量差から、本実施例の産生物は、実施例1の産生物から中央の水素2個が脱離し、そこに3価のMnイオンが配位したもの(分子量654.2682−1.0078×2+54.9380(Mnの質量数)=707.1906が得られ、実測値とほぼ一致する)であることが明らかになった。
以上により、側鎖に−CH2−CH2−COOH(プロピオン酸基)を4つと、メチル基を4つ含む分子量(イオン質量):707、イオン式:[C36H36O8N4・Mn(III)]+のポルフィリン化合物であることが確認できた。
実施例3
遺伝子ypjD(b2611)のトランスポゾン挿入変異株(ナショナルバイオリソース JD23504)を、2mLのLB培地(Bacto-tryptone: 1%, Bacto-yeast extract: 0.5%, NaCl: 0.5%)において、37℃の温度で12時間かけて前培養した。得られた細胞懸濁液1mLを、1Lの脱イオン水の中に金チオリンゴ酸ナトリウムを25mg、クエン酸二水和物を1g、グルコースを3.6gおよびMgSO4を100mg溶解させた水溶液の中に加え、37℃の温度で24時間かけて本培養した。
培養液の色は、本培養を開始した時点で無色であったが、24時間経過後には黄色になった。この培養液を遠心分離器にかけて細胞を沈殿させ、得られた上澄み液をポアサイズ0.22μmのフィルターで濾過した。次いで、濾液を陰イオン交換樹脂を充填したカラムに通した後、樹脂に吸着した培養物を、20%アセトニトリル−0.1%トリフルオロ酢酸溶液で溶出し、溶出物を凍結乾燥した。これにより、黄色を帯びた産生物が得られた。この産生物に対して、ICP質量分析を行ったところ、金(Au)が含まれていることが確認された。さらに、この産生物を熱分解GC−MSで分析したところ、主たる成分はピロール化合物であり、分子中にピロール環の構造を含んでいることが確認できた。
実施例4
遺伝子ypjD(b2611)のトランスポゾン挿入変異株(ナショナルバイオリソース JD23504)を、2mLのLB培地(Bacto-tryptone: 1%, Bacto-yeast extract: 0.5%, NaCl: 0.5%)において、37℃の温度で12時間かけて前培養した。得られた細胞懸濁液1mLを、1Lの脱イオン水の中にCuCl2を20mg、クエン酸二水和物を1g、グルコースを3.6gおよびMgSO4を100mg溶解させた水溶液の中に加え、37℃の温度で24時間かけて本培養した。
培養液の色は、本培養を開始した時点で無色であったが、24時間経過後には青緑色になった。この培養液を遠心分離器にかけて細胞を沈殿させ、得られた上澄み液をポアサイズ0.22μmのフィルターで濾過した。次いで、濾液を陰イオン交換樹脂を充填したカラムに通した後、樹脂に吸着した培養物を、20%アセトニトリル−0.1%トリフルオロ酢酸溶液で溶出し、溶出物を凍結乾燥した。これにより、緑色を帯びた産生物が得られた。この産生物に対して、ICP質量分析を行ったところ、銅(Cu)が含まれていることが確認された。さらに、この産生物を熱分解GC−MSで分析したところ、主たる成分はピロール化合物であり、分子中にピロール環の構造を含んでいることが確認できた。
実施例5
遺伝子ypjD(b2611)のトランスポゾン挿入変異株(ナショナルバイオリソース JD23504)を、2mLのLB培地(Bacto-tryptone: 1%, Bacto-yeast extract: 0.5%, NaCl: 0.5%)において、37℃の温度で12時間かけて前培養した。得られた細胞懸濁液1mLを、1Lの脱イオン水の中にZnCl2を17mg、クエン酸二水和物を1g、グルコースを3.6gおよびMgSO4を100mg溶解させた水溶液の中に加え、37℃の温度で24時間かけて本培養した。
培養液の色は、本培養を開始した時点で無色であったが、24時間経過後には赤みを帯びた緑色になった。この培養液を実施例1記載の方法に従って処理することにより、緑色を帯びた産生物が得られた。
この緑色の色調を帯びた培養産生物は、TOF−MS法による質量分析の結果、図21に示すように分子量が307〜1294の範囲に入る混合物であり、また、ICP質量分析法により産生物が亜鉛を含んでいることが確認できた。図22に示す吸光光度曲線から明らかなように、372nmおよび445nmに2つのピークを示した。さらに、この産生物を熱分解GC−MSで分析したところ、主たる成分はピロール化合物であり、分子中にピロール環の構造を含んでいることが確認できた。
実施例6
遺伝子ypjD(b2611)のトランスポゾン挿入変異株(ナショナルバイオリソース JD23504)を、2mLのLB培地(Bacto-tryptone: 1%, Bacto-yeast extract: 0.5%, NaCl: 0.5%)において、37℃の温度で12時間かけて前培養した。得られた細胞懸濁液1mLを、1Lの脱イオン水の中にRuCl3を10mg、クエン酸二水和物を1g、グルコースを3.6gおよびMgSO4を100mg溶解させた水溶液の中に加え、37℃の温度で24時間かけて本培養した。
培養液の色は、本培養を開始した時点で無色であったが、24時間経過後には青緑色になった。この培養液を遠心分離器にかけて細胞を沈殿させ、得られた上澄み液をポアサイズ0.22μmのフィルターで濾過した。次いで、濾液を陰イオン交換樹脂を充填したカラムに通した後、樹脂に吸着した培養物を、20%アセトニトリル−0.1%トリフルオロ酢酸溶液で溶出し、溶出物を凍結乾燥した。これにより、緑色を帯びた産生物が得られた。この産生物に対して、ICP質量分析を行ったところ、ルテニウム(Ru)が含まれていることが確認された。さらに、この産生物を熱分解GC−MSで分析したところ、主たる成分はピロール化合物であり、分子中にピロール環の構造を含んでいることが確認できた。
本発明によって得られたテトラピロール化合物は、光触媒や電池などの分野の他、光記憶媒体、情報記憶媒体、電子移動媒体、半導体素子および電極などの技術分野で利用可能である。
実施例1で得られた産生物に対する、TOF−MS法による質量分析結果を示すスペクトルである。 実施例1で得られた産生物の構造式である。 実施例1で得られた試料1に対する1H NMRスペクトルである。 実施例1で得られた試料1対する13C NMRスペクトルである。 実施例1で得られた試料1に対するHSQCスペクトルである。 実施例1で得られた試料1に対するCOSYスペクトルである。 実施例1で得られた試料1に対するHMBCスペクトルである。 実施例1で得られた試料1に対するNOESYスペクトルである。 実施例1で得られた試料1に対するNOESYスペクトルである。 実施例1で得られた試料2に対する1H NMRスペクトルである。 実施例1で得られた試料2に対する13C NMRスペクトルである。 実施例1で得られた試料2に対するNEOSYスペクトルを拡大して示す。 実施例1で得られた試料2について相対存在量を示すスペクトルである。 ESI−MSで行った分析の結果を示す。 実施例1で得られた産生物を熱分解GC−MSで分析した結果を示す。 実施例2で得られた産生物を熱分解GM−MSで分析した結果を示す。 実施例2で得られた産生物をESI−MS質量分析した結果を示す。 実施例2で得られた産生物のMS/MS測定の結果を示す。 実施例2で得られた産生物の吸光スペクトルである。 実施例2で得られた産生物のXPS元素分析の結果を示す。 実施例5で得られた緑色の色調を帯びた培養産生物のTOF−MS法による質量スペクトルである。 実施例5で得られた緑色の色調を帯びた産生物の吸光光度曲線を示すグラフである。

Claims (4)

  1. 遺伝子ypjD(b2611)が変異により発現できなくなった大腸菌を培地で培養し、該培地からポルフィリン環構造を有するテトラピロール化合物を得ることを特徴とするテトラピロール化合物の製造方法。
  2. 前記培地中でイオンとなる金属元素またはイオンとして解離される金属元素を含んだ化合物を原料として該培地に添加し、該金属が含まれたピロール化合物を得ることを特徴とする請求項1に記載のピロール化合物の製造方法。
  3. 前記テトラピロール化合物が、ポルフィリン環に4つのメチル基、4つのエチルエステルまたは酢酸基(プロピオン酸基)を含む化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のテトラピロール化合物の製造方法。
  4. 遺伝子ypjD(b2611)が変異により発現できなくなった大腸菌を、培地中でイオンとなるMnまたはイオンとして解離されるMnを含んだ化合物を原料として添加した培地で培養し、該培地からMnが中心に配位されたポルフィリン環構造を有するテトラピロール化合物を得ることを特徴とするテトラピロール化合物の製造方法。
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