JP5641851B2 - 光学膜製造用塗布液、その製造方法および光学膜の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、光学膜製造用塗布液、その製造方法および反射防止効果に優れた光学膜の製造方法に関するものである。
光学機器を構成する光学部品表面には、光透過率を向上させることを目的に、反射防止膜が設けられている。
空気中に対し、基材屈折率ngに対し、屈折率(nc)が、
nc=√ng (式1)
である低屈折率材料を波長λに対し、λ/4の光学膜厚でコーティングすることで反射率は理論上ゼロとなる。
nc=√ng (式1)
である低屈折率材料を波長λに対し、λ/4の光学膜厚でコーティングすることで反射率は理論上ゼロとなる。
より低反射効果を必要とする光学素子の反射防止膜としては、前記単層ではなく、高屈折率膜と低屈折率膜を交互に積層した、多層膜が用いられる。この場合も空気側である最上層としては低屈折率材料が重要となる。一方、低屈折率材料膜として、多孔質化することで、低屈折率化する試みが広く行われている。
多孔質膜を作成する手段として、真空蒸着といった乾式プロセスではなく、湿式プロセスが有効である。湿式の場合、コーティング材料を溶媒に溶解あるいは分散した後、各種コーティング手段で成膜するため、多孔質膜を得易いという利点がある。
特許文献1および非特許文献1には、フッ化マグネシウムを熱不均化反応(thermal disproportional reaction)で作成する方法が示されている。フッ素含有マグネシウム化合物あるいは前駆体としてマグネシウムフッ化カルボン酸化合物を、基板上に塗布後、熱不均化反応することでフッ化マグネシウムを作成する方法が記載されている。
これらの化合物およびフッ化カルボン酸は一般的に吸湿性が高く、マグネシウム化合物とトリフルオロ酢酸を混合してなる塗布液を塗布する際、塗布膜の湿潤により膜欠陥が発生するため、均一な塗布膜が得られないという問題が発生する。
マグネシウム化合物に安定化剤を付加することで塗布液を安定的に作成する方法が特許文献2あるいは特許文献3に記載されている。しかしながら塗布液を塗布する際に発生する膜欠陥の発生に対する対策については記載が無い。
M.Tada et al.,J.Mater.Res.,Vol.14,No.4,Apr 1999、1610から1616
マグネシウムは最大で6配位をとることが知られている。一方、マグネシウムは2価金属である。マグネシウム化合物の例を挙げると、酢酸マグネシウムの場合、酢酸マグネシウム4水和物(Mg(CH3COO)2・4H2O)と結晶水として4つの水分子を有する。その他、アセチルアセトンマグネシウム(II)2水和物(Mg(C5H7O2)・2H2O)のようにマグネシウム化合物は結晶水を有し、これらは潮解性を呈する。
フッ化マグネシウムを熱不均化反応で作成する前駆体としてのフッ化カルボン酸マグネシウム化合物においても、同様に結晶水を含有する。
フッ化カルボン酸マグネシウムを作成する過程において、結晶水を含まない原材料から作成する、あるいは金属マグネシウムを直接フッ化カルボン酸と反応させることで、結晶水を含まないフッ化カルボン酸マグネシウムを得ることができる。
しかしながらこの場合においてもフッ化カルボン酸マグネシウムを塗布、成膜する過程において、雰囲気中の水分を塗布膜中に取り込むことで、塗布膜にピンホール状の膜欠陥が発生する。
潮解性に起因する塗布欠陥は、フッ化カルボン酸マグネシウム塗布後、時間の経過と共に欠陥個数が増加する。そのため、塗布から焼成までの工程を短くすることで、膜欠陥の数を減らすことは可能であるが、いまだ満足した結果が得られていない。
本発明の目的は、フッ化カルボン酸マグネシウムを含有する塗布液を塗布、焼成することでフッ化マグネシウム膜を得るに際し、塗布膜における膜欠陥の発生を防止することができ、かつ経時安定性が向上した光学膜製造用塗布液およびその製造方法を提供するものである。
また、本発明は、上記の光学膜製造用塗布液を用いた光学膜の製造方法を提供するものである。
上記の課題を解決する光学膜製造用塗布液は、(CF3−X−COO)2Mg(式中、Xは単結合、フッ素原子で置換されても良い−CH2−を表す)で表されるマグネシウム化合物と、
前記マグネシウム化合物1molに対し、0.1mol以上5mol以下の範囲で、下記一般式(1)で表される化合物と、を含むことを特徴とする。
前記マグネシウム化合物1molに対し、0.1mol以上5mol以下の範囲で、下記一般式(1)で表される化合物と、を含むことを特徴とする。
(式中、R1、R2は水素原子、アルキル基あるいはアルコキシ基、R3は−O−あるいは−CH2−を表す。)
上記の課題を解決する光学膜製造用塗布液の製造方法は、少なくとも(CF3−X−COO)2Mg(式中、Xは単結合、フッ素原子で置換されても良い−CH2−を表す。)で表されるマグネシウム化合物および上記一般式(1)で表される化合物を混合した後に溶媒で濃度を調整する工程を有することを特徴とする。
上記の課題を解決する光学膜の製造方法は、上記の光学膜製造用塗布液を基材に塗布する工程、前記光学膜製造用塗布液を塗布した基材を加熱する工程を有することを特徴とする。
本発明によれば、フッ化カルボン酸マグネシウムを含有する塗布液を塗布、焼成することでフッ化マグネシウム膜を得るに際し、塗布膜における膜欠陥の発生を防止することができ、かつ経時安定性が向上した光学膜製造用塗布液およびその製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、上記の光学膜製造用塗布液を用いた光学膜の製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、上記の光学膜製造用塗布液を用いた光学膜の製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明に係る光学膜製造用塗布液は、少なくとも(CF3−X−COO)2Mg(式中、Xは単結合、フッ素原子で置換されても良い−CH2−を表す。)で表されるマグネシウム化合物および下記一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする。
(式中、R1、R2は水素原子、アルキル基あるいはアルコキシ基、R3は−O−あるいは−CH2−を表す。)
本発明者らは、フッ化カルボン酸マグネシウムを湿式塗布する際、上記一般式(1)に示す化合物を安定化剤として用いることで、吸湿に起因する、塗布膜における膜欠陥の発生を防止することが可能であることを見出した。
マグネシウムは最大6配位とることが可能である。マグネシウムに配位しやすい原子として酸素が考えられるが、水分子の場合、水素原子部分に更に水分子が付くことになり、膜全体が潮解してしまう結果となる。
不均化反応によってフッ化マグネシウムを生成する化合物として、マグネシウムとトリフルオロ酢酸からなる化合物を例に挙げる。トリフルオロ酢酸マグネシウムにおける吸湿の状態を、下記の構造式(A)から(C)に示す。
構造式(A)は、初期、あるいは水が配位していない状態である。これに対し、結晶水あるいは水が配位した場合は、構造式(B)の状態になる。この状態から更に雰囲気中の水が吸着することで構造式(C)のようになると予想される。
マグネシウムに対し水ではなく、非水系化合物を予め配位させておくことで、下記の構造式に示す状態となり、雰囲気中の水分に影響されないと考えられる。
非水系化合物として無水酢酸を用いた場合には、下記の構造式に示すような形で安定化しており、水の吸着が防止されることで、吸湿に起因する、塗布膜における膜欠陥の発生を防止することができる。
本発明は、フッ化マグネシウム前駆体である、上記のマグネシウム化合物を含有する光学膜製造用塗布液を塗布、焼成等の手段で、不均化反応させることでフッ化マグネシウムからなる光学膜を形成する。この場合において、フッ化マグネシウム前駆体に、一般式(1)で表される化合物の非水系安定化剤を加えることで、塗布、成膜工程における雰囲気からの吸湿の影響を無くすことが可能となり、塗膜の膜欠陥の発生を抑えることができる。また、塗料自体の経時安定性が向上するため、得られた光学膜の屈折率が長期にわたって安定し、作成した塗料が長期に渡って安定的に使用することができる。
本発明における基材としては、ガラス、プラスチック等が挙げられる。プラスチック基材の代表的なものとしては、ポリエステル、トリアセチルセルロース、酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ABS樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂のフィルムや成形品;不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、架橋型ポリウレタン、架橋型のアクリル樹脂、架橋型の飽和ポリエステル樹脂など各種の熱硬化性樹脂から得られる架橋フィルムや架橋した成形品等が挙げられる。
本発明の光学膜製造用塗布液には、不均化反応によってフッ素源として作用するCF3基を有する化合物として、(CF3−X−COO)2Mgで表されるマグネシウム化合物および下記一般式(1)で表される化合物を含有する。
マグネシウム化合物は、(CF3−X−COO)2Mgで表される。Xは単結合、フッ素原子で置換されても良い−CH2−を表す。例えば単結合、−CH2−が好ましい。マグネシウム化合物は、酢酸マグネシウム、アセチルアセトンマグネシウムといったマグネシウムの化合物と各種フッ化カルボン酸を溶媒中で混合させたもの、あるいは金属マグネシウムとフッ化カルボン酸を反応させて得られたものを用いることができる。
一般式(1)で表される化合物は、安定化剤として用いられ、下記の構造式で表される。
式中、R1、R2は水素原子、アルキル基あるいはアルコキシ基を示す。R3は−O−あるいは−CH2−を表す。アルキル基あるいはアルコキシ基は、炭素数1から3のアルキル基が好ましい。
一般式(1)で表される化合物としては、アセチルアセトン(AcAc)、ジピロバイルメタン、トリフルオロアセチルアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、ジベンゾイルメタンなどのβ−ジケトン化合物類;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル(EAcAc)、アセト酢酸アリル、アセト酢酸ベンジル、アセト酢酸−iso−プロピル、アセト酢酸−tert−ブチル、アセト酢酸−iso−ブチル、アセト酢酸−2−メトキシエチル、3−ケト−n−バレリック酸メチルなどのβ−ケトエステル化合物類;無水酢酸(Ac2O)が挙げられる。
本発明の光学膜製造用塗布液に含有されるマグネシウム化合物および一般式(1)で表される化合物の含有割合は、マグネシウム化合物1molに対し、一般式(1)で表される化合物が0.1mol以上5mol以下、好ましくは0.5mol以上2mol以下が望ましい。0.1molより少ない場合、膜欠陥防止効果が十分でなく、反対に5molより多い場合、塗料自体は安定するが、得られる膜の屈折率が高くなる。
本発明の光学膜製造用塗布液の製造方法は、マグネシウム化合物および一般式(1)で表される化合物を混合した後に溶媒で濃度を調整する工程を有することを特徴とする。マグネシウム化合物および一般式(1)で表される化合物を溶媒に溶解することで、光学膜製造用塗布液を得る。
塗布液を作成するにあたって、マグネシウム化合物および一般式(1)で表される化合物を混合した後、溶媒で希釈することが、マグネシウム化合物を安定化させる上で重要である。マグネシウム化合物を溶剤で溶解した後、一般式(1)で表される化合物を添加する場合、一般式(1)で表される化合物が有効に作用せず、塗布膜におけるピンホールの抑止効果が十分に得られない、あるいは一般式(1)で表される化合物の添加量を増やす必要が生じる。
溶媒は有機溶媒が好ましい。有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、エチレングリコールもしくはエチレングリコール−モノ−n−プロピルエーテルなどのアルコール類;n−ヘキサン、n−オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロオクタンのような各種の脂肪族系ないしは脂環族系の炭化水素類;トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの各種の芳香族炭化水素類;ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどの各種のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどの各種のケトン類;ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジイソプロピルエーテルのような各種のエーテル類;クロロホルム、メチレンクロライド、四塩化炭素、テトラクロロエタンのような、各種の塩素化炭化水素類;N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、エチレンカーボネートのような、非プロトン性極性溶剤等が挙げられる。本発明で使用される塗布液を調製するに当たり、溶液の安定性の点から上述した各種の溶剤類のうちアルコール類を使用することが好ましい。
塗布液に含有されるマグネシウム化合物および一般式(1)で表される化合物の含有量は、1重量%以上40重量%以下、好ましくは5重量%以上20重量%以下が望ましい。
本発明の光学膜の製造方法は、上記の光学膜製造用塗布液を基材に塗布する工程、前記光学膜製造用塗布液を塗布した基材を加熱する工程を有することを特徴とする。
上記で調製した塗布液は、光学素子上に塗布することで成膜される。塗布膜を形成する方法として、例えばディッピング法、スピンコート法、スプレー法、印刷法、フローコート法、ならびにこれらの併用等、既知の塗布手段を適宜採用することができる。膜厚は、ディッピング法における引き上げ速度やスピンコート法における基板回転速度などを変化させることと、塗布溶液の濃度を変えることにより制御することが可能である。
これら溶媒は塗布方法に応じて適時選択される。蒸発速度が速すぎる場合、塗布ムラが発生しやすい。その場合、蒸気圧の低い溶媒を用いることで改善される。
塗布膜の膜厚は、熱および/または電磁波による不均化反応により、1/2から1/10程度まで減少する。減少の度合いは、不均化反応の条件により変化する。
いずれの場合も加熱による不均化反応後の膜厚dが、設計波長λにおける光学膜厚λ/4の整数倍となるように、塗布膜の膜厚は調整されることが好ましい。
加熱による不均化反応において、温度は用いるフッ素含有有機マグネシウム化合物によって異なる。
トリフルオロ酢酸マグネシウムの場合、250℃で加熱による不均化反応が起こる。その際、雰囲気がフッ素化合物を有することで、よりフッ素化が促進、更に多孔質化することで低屈折率化する。その際、多孔質化は加熱により進行するため、加熱時間は10分から2時間が好ましく、より好ましくは30分から1時間である。
不均化する工程における雰囲気中にフッ素化合物を増やすために、塗布液中に更にフッ素化合物を添加することも有効である。
金属Mの含フッ素前駆体を(M−X−F)とすると、不均化反応は単純化して以下の式で表される。
F−X−M → F−M + X
ここで、(A)加熱によりフッ素原子が外れること、(B)該フッ素原子がM−X間の結合を切断し、(C) M−Fになる反応が進行する。
F−X−M → F−M + X
ここで、(A)加熱によりフッ素原子が外れること、(B)該フッ素原子がM−X間の結合を切断し、(C) M−Fになる反応が進行する。
しかしながらフッ素原子は反応性が高いため、必ずしも(B)の反応になるとは限らず、(A)により発生したフッ素原子が系外に散逸してしまうことにより、期待される反応(C)が得られないことが考えられ、不均化工程におけるフッ素化が必ずしも上記式通りに行われている訳ではないことを示唆している。
そのため、(A)により発生したフッ素原子を散逸させないようにすることで、不均化によるフッ素化反応をより効率良く反応させることが可能になる。
フッ素原子を散逸させない方法としては、遮蔽物を設けること、反応を促進させるために他にフッ素源を導入することも有効である。また、基材形状によっては基材そのものを遮蔽物として利用することが可能である。例えば凹レンズのような形状の場合、凹面を下側にして設置することで同様の効果が得られる。
前記M−F以外の部分、すなわち化学量論的に、フッ素化されていない部分は、フッ素以外のその他の官能基(例えば−O−や−OH)が存在すると考えられる。
同時に、このようなフッ素以外の部分が存在することで、環境特性が悪化すると考えられ作成されたフッ化物に対し、フッ素以外の部分と親和性の良い、更には反応性を有する酸化ケイ素バインダーを塗布、硬化することで強度に優れた、低屈折率光学膜を作成する。
酸化ケイ素前駆体としては各種ケイ素アルコキシド、シラザンおよびそれらの重合物を用いることが可能である。これらのうち、より反応性に富む、ポリシラザンが好ましい。
ケイ素アルコキシドとして、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等の同一または異なる低級アルキル基を有するものが挙げられる。
ポリシラザンとして、実質的に有機基を含まないポリシラザン(ペルヒドロポリシラザン)、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、またはこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部を置換基で置換した基がケイ素原子に結合したポリシラザン、アルコキシ基などの加水分解性基がケイ素原子に結合したポリシラザン、窒素原子にアルキル基などの有機基が結合したポリシラザンなどが挙げられる。
酸化ケイ素前駆体は触媒を用いることで、硬化反応を促進することが可能である。ケイ素アルコキシドの場合、酸あるいは塩基触媒が挙げられる。シラザンの場合、各種アミン系化合物あるいは金属触媒およびその化合物が触媒として用いられる。
酸化ケイ素前駆体は溶媒で希釈された溶液を、前記多孔質フッ化マグネシウム上に塗布する。シラザンあるいはその重合物の場合、反応性が高いため、疎水系溶媒を用いることが重要である。疎水系溶媒として、キシレンあるいはトルエン等の石油系溶媒、ジブチルエーテルが挙げられる。
シラザンの場合、疎水系溶媒に希釈する際、あるいは希釈した後に触媒を添加することで、反応を抑制することが重要である。
フッ化物上に塗布する、酸化ケイ素前駆体を含む溶液は、シリカ換算で0.001≦SiO2≦0.1の範囲であることが好ましく、0.005≦SiO2≦0.05の範囲がより好ましい。SiO2<0.001では、バインダーとしての前駆体量が十分でなく、得られる膜の強度が十分でなく、SiO2>0.1では強度は増すものの、屈折率が高くなる。
ここでシリカ換算とは、酸化ケイ素前駆体を含む溶液を完全に反応させた後の固形分量を表す。シリカ換算10質量%の酸化ケイ素前駆体を含む溶液を、反応を完全に行なうと、10質量%のシリカ(SiO2)からなる焼成物を得ることができる。なお、有機修飾等、完全にSiO2とならない場合はこの限りでない。
酸化ケイ素前駆体は加熱することで硬化する。アルコキシドより反応性の高いシラザンでは、室温でシリカに転化するものもある。湿度を与えること、熱を加えることで、より緻密なシリカを形成する。
本発明における光学膜には、各種機能を付与するための層を更に設けることができる。例えば、透明基材とハードコート層との密着性を向上させるために接着剤層やプライマー層を設けたりすることができる。上記のように透明基材とハードコート層との中間に設けられるその他の層の屈折率は、透明基材の屈折率とハードコート層の屈折率の中間値とすることが好ましい。
このような低屈折率膜を、単独あるいは多層膜と組み合わせて光学部品に用いることで優れた反射防止性能を実現することが可能となる。また、低屈折率であるため、多層膜構成における最上層に用いた場合、界面反射の低下および斜入射特性が向上する。
本発明における光学膜は、各種光学部品に適用することができる。カメラレンズ、双眼鏡や、プロジェクターなどの表示装置あるいは窓ガラスなどにも用いることが出来る。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。
(実施例1)
直径30mm、厚さ1mmのソーダライムガラス基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄、乾燥した後、コーティング用ガラス基板とした。
直径30mm、厚さ1mmのソーダライムガラス基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄、乾燥した後、コーティング用ガラス基板とした。
マグネシウム粉末1質量部、1−ブタノール15質量部に対し、トリフルオロ酢酸を少しずつ加えて金属マグネシウムを溶解する。完全に溶解したのち、0.20μmフィルターを用いてろ過した後、真空乾燥することでトリフルオロ酢酸マグネシウムを得た。
前記トリフルオロ酢酸マグネシウム1molに対し、一般式(1)に示す化合物(以降、安定化剤と記す。)としてアセチルアセトン(AcAc)0.1molを加え、加熱溶解した後に溶媒としてイソプロピルアルコール50モルを加え、コーティング用塗料を作成した。
前記ガラス基板に前記コーティング用塗料をスピンコートした後、室内(23℃50%)で10分間放置した後、300℃に設定したホットプレートで1時間加熱することで不均化反応を行った。
作成した膜の表面に発生した膜欠陥を調べ、○=0個、△=1〜4個、×=5個以上と評価した。その結果を表1に示す。
作成した塗料を用いて、10日後に同様のサンプルを作成し、得られた光学膜の屈折率を測定し、調合初期との特性バラツキの評価を行った。初期(0日)と塗料作成から10日後に作製したサンプルの屈折率変動が○=±0.01以内、それ以上の場合を×とした。
〔膜欠陥の測定〕
目視により、膜表面に発生した膜欠陥の数を観察した。
目視により、膜表面に発生した膜欠陥の数を観察した。
〔屈折率の測定〕
分光エリプソメーター(ジェー・エー・ウーラム・ジャパン(株)M−2000D)を用いて、波長190から1000nmの範囲で偏光解析により、屈折率および膜厚の解析を行なった。
分光エリプソメーター(ジェー・エー・ウーラム・ジャパン(株)M−2000D)を用いて、波長190から1000nmの範囲で偏光解析により、屈折率および膜厚の解析を行なった。
(実施例2から6)
実施例1において、安定化剤としてアセチルアセトン(AcAc)をそれぞれ0.2,0.5,1,2,5molに代えた以外は実施例1と同様に作成、評価をおこなった。
実施例1において、安定化剤としてアセチルアセトン(AcAc)をそれぞれ0.2,0.5,1,2,5molに代えた以外は実施例1と同様に作成、評価をおこなった。
(実施例7から12)
安定化剤をアセト酢酸エチル(EAcAc)に代えた以外は、実施例1から6と同様に作成、評価をおこなった。
安定化剤をアセト酢酸エチル(EAcAc)に代えた以外は、実施例1から6と同様に作成、評価をおこなった。
(実施例13から18)
安定化剤を無水酢酸(Ac2O)に代えた以外は、実施例1から6と同様に作成、評価をおこなった。
安定化剤を無水酢酸(Ac2O)に代えた以外は、実施例1から6と同様に作成、評価をおこなった。
(実施例19)
トリフルオロ酢酸をペンタフルオロプロピオン酸(CF3CF2COOH、東京化成工業(株)製)に代えて、フッ化マグネシウム前駆体を作成した以外は実施例4と同様に作成、評価をおこなった。
トリフルオロ酢酸をペンタフルオロプロピオン酸(CF3CF2COOH、東京化成工業(株)製)に代えて、フッ化マグネシウム前駆体を作成した以外は実施例4と同様に作成、評価をおこなった。
(実施例20、21)
安定化剤をアセト酢酸エチル(EAcAc)、無水酢酸(Ac2O)に代えた以外は実施例4と同様に作成、評価をおこなった。
安定化剤をアセト酢酸エチル(EAcAc)、無水酢酸(Ac2O)に代えた以外は実施例4と同様に作成、評価をおこなった。
(比較例1)
安定化剤としてのアセチルアセトン(AcAc)を添加しなかった以外は、実施例1と同様に作成、評価をおこなった。
安定化剤としてのアセチルアセトン(AcAc)を添加しなかった以外は、実施例1と同様に作成、評価をおこなった。
(比較例2、3)
安定化剤としてのアセチルアセトン(AcAc)を0.05molあるいは10molに代えた以外は、実施例1と同様に作成、評価をおこなった。
安定化剤としてのアセチルアセトン(AcAc)を0.05molあるいは10molに代えた以外は、実施例1と同様に作成、評価をおこなった。
(比較例4)
安定化剤としてのアセチルアセトン(AcAc)を添加しなかった以外は、実施例19と同様に作成、評価をおこなった。
安定化剤としてのアセチルアセトン(AcAc)を添加しなかった以外は、実施例19と同様に作成、評価をおこなった。
(比較例5)
酢酸マグネシウム4水和物(キシダ化学製)1質量部、イソプロピルアルコール15質量部に対し、トリフルオロ酢酸10質量部を少しずつ加え、コーティング用塗料を作成した以外は、実施例1と同様にサンプル作成、評価を行った。
酢酸マグネシウム4水和物(キシダ化学製)1質量部、イソプロピルアルコール15質量部に対し、トリフルオロ酢酸10質量部を少しずつ加え、コーティング用塗料を作成した以外は、実施例1と同様にサンプル作成、評価を行った。
(比較例6)
マグネシウムエトキシド(ALDRICH社製)1質量部、イソプロピルアルコール15質量部に対し、トリフルオロ酢酸10質量部を少しずつ加え、コーティング用塗料を作成した以外は、実施例1と同様にサンプル作成、評価を行った。
マグネシウムエトキシド(ALDRICH社製)1質量部、イソプロピルアルコール15質量部に対し、トリフルオロ酢酸10質量部を少しずつ加え、コーティング用塗料を作成した以外は、実施例1と同様にサンプル作成、評価を行った。
上記の実施例および比較例の結果を、下記の表1に示す。
本発明によれば、熱不均化反応を用いた低屈折率を有する光学膜が得られるので、反射防止性能を有する光学部品の光学膜に利用することができる。
Claims (4)
- 前記一般式(1)で表される化合物が無水酢酸であることを特徴とする請求項1に記載の光学膜製造用塗布液。
- 請求項1または2に記載の光学膜製造用塗布液を基材に塗布する工程、前記光学膜製造用塗布液を塗布した基材を加熱する工程を有することを特徴とする光学膜の製造方法。
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