JP5641669B2 - 細胞表層蛋白修復方法 - Google Patents

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Description

本発明は、生物学、医学等の分野における細胞表層蛋白質の修復方法に関するものである。
今日、動物細胞培養技術が著しく進歩し、動物細胞を対象とした研究開発もさまざまな分野に広がって実施されるようになってきた。対象となる動物細胞の使われ方も、開発当初の細胞そのものを製品化したり、その産生物を製品化したりするだけでなく、今や細胞やその細胞表層蛋白質を分析することで有効な医薬品を設計したり、患者本人の細胞を生体外で再生したり、或いはその機能を高めたりしてから生体内へ戻し治療する等ということも実施されつつある。現在、動物細胞を培養する技術、並びに評価、解析、利用する技術は、研究者が注目している一分野である。
ところで、ヒト細胞を含め動物細胞の多くは付着依存性のものである。すなわち、動物細胞を生体外で培養しようとするときは、それらを一度、どこかに付着させる必要性がある。そのような背景のもと、以前より多くの研究者らによって細胞にとってより好ましい基材表面の設計、考案がなされてきたが、これらの技術は何れも細胞培養時に関係するものばかりであった。付着依存性の培養細胞は何かに付着する際、自ら接着性蛋白質を産生する。従ってその細胞を剥離させるときには、従来技術ではその接着性蛋白質を破壊しなければならず、通常酵素処理が行われる。その際、細胞が培養中に産生した各種細胞固有の細胞表層蛋白も同時に破壊されてしまうという重大な課題であったにもかかわらず、現実には解決する手段が全くなく、特に検討されていなかった。この細胞回収時の課題の解決こそが、今後動物細胞を対象とした研究開発を飛躍的に発展させる上で強く求められるものと考えられる。
上記課題は、培養細胞からその細胞固有の抗原を利用して解析、分離しようとするフローサイトメトリー技術分野においても同様である。培養細胞が産生した細胞固有の細胞表層抗原が回収する際の酵素処理により破壊され、その表面抗原をターゲットにする抗体の結合の効率が悪くなり、結果としてフローサイトメトリーによる分離も効率が悪くなっていた。
このような背景のもと、例えば、特表2006−522173号公報では、細胞に結合した蛍光色素の吸収強度を増強することを目的に、色素を塩基や界面活性剤と混合することで標識効率を上げる方法が提案されている。また、特開2005−77398号公報では、データの積算回数、並びにS/N比を向上させ見かけ上の感度を上げる方法が提案されている。しかしながら、何れの方法も細胞表層の蛋白質をいかに保持させるかという本質的な課題の解決になっておらず、それらの改善には限界があった。
一方、特開平2−211865号公報には、水に対する上限若しくは下限臨界溶解温度が0〜80℃である高分子で基材表面を被覆した細胞培養支持体上にて、細胞を上限臨界溶解温度以下または下限臨界溶解温度以上で培養し、その後上限臨界溶解温度以上または下限臨界溶解温度以下にすることにより酵素処理なくして培養細胞を剥離させる新規な細胞培養法が記載されている。同様に、特開平05−192138号公報には、水に対する上限若しくは下限臨界溶解温度が0〜80℃であるポリマーで基材表面を被覆した細胞培養支持体上にて、皮膚細胞を上限臨界溶解温度以下又は下限臨界溶解温度以上で培養し、その後上限臨界溶解温度以上又は下限臨界溶解温度以下にすることにより培養皮膚細胞を低損傷で剥離させることが記載されている。何れの方法においても温度応答性ポリマーを被覆した培養基材から温度処理することで器材表面から細胞を剥離させている。しかしながら、この基材を本件特許に示すような細胞表層蛋白の修復用基材として利用することについては何ら記載されていなかった。
本発明は、上述したような例えばフローサイトメトリーによる解析時に起こる問題点を解決することを意図してなされたものである。すなわち、本発明は、従来技術と全く異なった発想からの新規な細胞表層蛋白修復方法を提供するものである。
本発明者らは、上記課題を解決するために、種々の角度から検討を加えて研究開発を行ってきた。その結果、0〜80℃の温度範囲で水和力が変化するポリマーを表面に被覆した細胞培養支持体上で、ポリマーの水和力の弱い温度域で各種細胞を特定期間培養し、その後、培養液をポリマーの水和力の強い状態となる温度に変化させることで培養した細胞を剥離させると、細胞表層蛋白が修復されていることが分かった。その細胞をフローサイトメトリーで分析したところ、トリプシン処理時に確認できなかったような細胞表層抗原を保持していることが判明した。本発明はかかる知見に基づいて完成されたものである。
すなわち、本発明は、0〜80℃の温度範囲で水和力が変化するポリマーを表面に被覆した細胞培養支持体上で、ポリマーの水和力の弱い温度域で細胞を培養し、その後、培養液をポリマーの水和力の強い状態となる温度に変化させることで培養した細胞を剥離することを特徴とする細胞表層蛋白修復方法を提供する。
また、本発明は、細胞表層蛋白修復方法の利用方法についても提供する。
本発明に記載される細胞表層蛋白修復方法であれば、培養細胞を剥離させる際に酵素処理を行わないため、培養中に産生された細胞表層蛋白をそのまま保持した状態で回収できるようになり、その後、その回収した細胞に対して、例えばフローサイトメトリーによる分離などが効率良く実施できるようになる。
本発明は、0〜80℃の温度範囲で水和力が変化する温度応答性ポリマーを被覆した基材表面を利用した細胞表層蛋白修復方法である。本発明においては、上記細胞を0〜80℃の温度範囲で水和力が変化するポリマーを表面に被覆した細胞培養支持体上で、ポリマーの水和力の弱い温度域で培養される。その温度とは通常、細胞を培養する温度である37℃が好ましい。本発明に用いる温度応答性高分子はホモポリマー、コポリマーのいずれであってもよい。このようなポリマーとしては、例えば、特開平2−211865号公報に記載されているものが挙げられる。具体的には、例えば、以下のモノマーの単独重合または共重合によって得られる。使用し得るモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド化合物、N−(若しくはN,N−ジ)アルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体、またはビニルエーテル誘導体が挙げられ、コポリマーの場合は、これらの中で任意の2種以上を使用することができる。更には、上記モノマー以外のモノマー類との共重合、ポリマー同士のグラフトまたは共重合、あるいはポリマー、コポリマーの混合物を用いてもよい。また、ポリマー本来の性質を損なわない範囲で架橋することも可能である。各種ポリマーの基材表面への被覆方法は、特に制限されないが、例えば、特開平2−211865号公報に記載されている方法に従ってよい。すなわち、かかる被覆は、基材と上記モノマーまたはポリマーを、電子線照射(EB)、γ線照射、紫外線照射、プラズマ処理、コロナ処理、有機重合反応のいずれかにより、または塗布、混練等の物理的吸着等により行うことができる。
本発明における温度応答性ポリマーの固定化量は、細胞を培養させられ、かつ温度処理することだけで基材表面から剥離できるに十分な量が固定化されていれば良く特に限定されるものではないが、0.8〜3.0μg/cm、好ましくは1.3〜2.5μg/cm、さらに好ましくは1.5〜2.0μg/cmが良い。ポリマー量が3.0μg/cmより多いと細胞の付着性が悪くなり、逆に0.8μg/cmより少ないと温度を変えても剥離せず、本発明の技術を十分に達成できず好ましくない。ポリマーの固定化量の測定は常法に従えば良く、例えばFT−IR−ATRを用いて直接測る方法、あらかじめラベル化したポリマーを同様な方法で固定化しラベル化ポリマー量より推測する方法などが挙げられるがいずれの方法を用いても良い。
本発明における培養基材の形状は特に制約されるものではないが、例えばディッシュ、マルチプレート、フラスコ、セルインサートのような形態のもの、或いは平膜状のものなどが挙げられる。被覆を施される基材としては、通常細胞培養に用いられるガラス、改質ガラス、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等の化合物を初めとして、一般に形態付与が可能である物質、例えば、上記以外の高分子化合物、セラミックス類など全て用いることができる。
本発明の細胞培養支持体において、基材に被覆されている温度応答性ポリマーは温度を変えることで水和、脱水和を起こすものであり、その温度域は0℃〜80℃、好ましくは10℃〜50℃、さらに好ましくは20℃〜45℃であることが判明した。80℃を越えると細胞が死滅する可能性があるので好ましくない。また、0℃より低いと一般に細胞増殖速度が極度に低下するか、または細胞が死滅してしまうため、やはり好ましくない。
本発明とは、細胞を、細胞が本来産生する細胞表層蛋白を保持させた状態で剥離させることを目的とする。培養細胞の状態は、例えば細胞が一つ一つ分離された状態でも良く、2個以上の細胞が結合した状態でも良く、さらにはコロニーを形成している状態でも良い。しかしながら、細胞表層蛋白修復後に実施される工程がフローサイトメトリーである場合、剥離された細胞は一つ一つ分離されたものでなくてはならず、その場合、細胞を当該基材表面上に播種後、その培養される細胞の倍化時間の80%以内、好ましくは70%以内、さらに好ましくは65%以内が良い。培養する時間が倍化時間の80%より多いと細胞が分裂してしまい複数個の細胞が結合した状態になっているものが多くなり好ましくない。
本発明に使用される細胞は、付着依存性細胞であれば特に制約されるものではない。また、使用する培地も、培養しようとする細胞に対し通常使われているもので良く、特に限定されるものではない。さらに、培養開始時の細胞播種数についても通常実施される量で良く、例えば1×10個/cm以下が良く、好ましくは5×10個/cm以下、さらには8×10個/cm以下であると良い。
本発明において移植される動物としてはヒト、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、ヌードマウス、マウス、モルモット、ブタ、ヒツジ等が挙げられるが特に限定されるものではない。
本発明における培養癌細胞は培養時にディスパーゼ、トリプシン等で代表される蛋白質分解酵素による損傷を受けていないものである。そのため、基材から剥離された細胞は各種抗原、各種受容体、さらには各種接着性因子等の細胞表層蛋白質を有したものとして得られることとなり、このような技術は、従来技術からでは全く考案されなかったものである。
以上のことを温度応答性ポリマーとしてポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)を例にとり説明する。ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)は31℃に下限臨界溶解温度を有するポリマーとして知られ、遊離状態であれば、水中で31℃以上の温度で脱水和を起こしポリマー鎖が凝集し、白濁する。逆に31℃以下の温度ではポリマー鎖は水和し、水に溶解した状態となる。本発明では、このポリマーがシャーレなどの基材表面に被覆、固定されたものである。したがって、31℃以上の温度であれば、基材表面のポリマーも同じように脱水和するが、ポリマー鎖が基材表面に被覆、固定されているため、基材表面が疎水性を示すようになる。逆に、31℃以下の温度では、基材表面のポリマーは水和するが、ポリマー鎖が基材表面に被覆、固定されているため、基材表面が親水性を示すようになる。このときの疎水的な表面は細胞が付着、増殖できる適度な表面であり、また、親水的な表面は細胞が付着できないほどの表面となり、培養中の細胞も冷却するだけで剥離させられることになる。細胞表層蛋白の修復は、細胞を培養している間、常に行われる必要性はないが、少なくとも培養終了時には本発明で示す基材表面上で培養し、表層蛋白を修復する必要がある。
本発明で得られる細胞は、その表層蛋白が損傷なく保持されているものである。従ってこの技術によって得られる細胞は、フローサイトメトリー、ハイスループット評価に有用なものだけではなく、治療法としての行われる細胞療法用の細胞として、さらにはワクチン製造用の細胞としても有用である。また、本発明で示す細胞処理方法であれば、有用細胞生産の際のスケールアップ時の生産性低下を抑制する技術としても有用である。
以下に、本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
実施例1、比較例1
温度応答性ポリマーを被覆した基材表面を利用した骨髄間葉系細胞、脂肪前駆細胞、軟骨細胞、羊膜由来間葉系細胞の細胞表面抗原の保持例:
1.細胞培養
市販の3.5cmφ培養皿(ベクトン・ディッキンソン・ラブウェア(Becton Dickinson Labware)社製ファルコン(FALCON)3001)上に、N−イソプロピルアクリルアミドモノマーを52%になるようにイソプロピルアルコールに溶解させたものを0.07ml塗布した。0.25MGyの強度の電子線を照射し、培養皿表面にN−イソプロピルアクリルアミドポリマー(PIPAAm)を固定化した。照射後、イオン交換水により培養皿を洗浄し、残存モノマーおよび培養皿に結合していないPIPAAmを取り除き、クリーンベンチ内で乾燥し、エチレンオキサイドガスで滅菌することで細胞培養培養基材材料を得た。基材表面における温度応答性高分子量を測定したところ、それぞれ1.7μg/cm被覆されていることが分かった(実施例1)。比較として、通常の細胞培養用ディッシュ(コーニング社、Cat.No.430165)を使用した(比較例1)。この基材表面に、37℃に保温した細胞培養液を8ml入れ、37℃の炭酸ガス培養装置内で15分間以上静置した。その後、上記、骨髄間葉系細胞、脂肪前駆細胞、軟骨細胞、羊膜由来間葉系細胞それぞれを別の基材表面に6×10〜1×10個/cmの細胞同士が接触しない範囲の細胞密度で播種し、37℃、5%炭酸ガス雰囲気下で24時間炭酸ガス培養装置内で培養した。
2.細胞回収
(実施例1)基材を炭酸ガス培養装置から取り出し、25℃で、20分静置し、基材側面を液がこぼれない程度にタッピングことで培養細胞を基材表面から剥離させ、その後、50mlの遠心管に入れ、300G、5分間遠心して細胞を沈殿させた。
(比較例1)ディッシュを炭酸ガス培養装置から取り出し、細胞培養液を除去し、6mlのリン酸緩衝液で洗浄した。0.25%トリプシンを含むリン酸緩衝液をディッシュに加えて37℃で2〜3分間静置し、細胞をディッシュから剥離させ、6mlの細胞培養液を加えてトリプシンによる消化反応を止めた。その後、50mlの遠心管に入れ、300G、5分間遠心して細胞を沈殿させた。
3.回収した細胞の表面抗原の検出
PDGFR−alpha(platelet−derived growth factor receptor−alpha)/CD140a:
回収した細胞を0.2mlのリン酸緩衝液に懸濁し、2mgのPhycoerythrin(PE)標識したCD140a抗体(human CD140a specific monoclonal mouse IgG2a,phycoerythrin conjugated,BD Biosciences Pharmingen,556002,clone aR1)と4℃で1時間反応させた。ネガティブコントロールとしてPE標識したmouse IgG2a アイソタイプコントロール抗体(mouse IgG2a,phycoerythrin conjugated,BD Biosciences Pharmingen,553457,clone G155−178)を使用し、4℃で1時間反応させた。4倍容量のリン酸緩衝液で2回洗浄後、0.5mlのリン酸緩衝液に細胞を再懸濁し、FC500フローサイトメーター(ベックマン・コールター社)でPEの蛍光強度を検出した。結果を図1に示す。白のピークがネガティブコントロールの蛍光強度を示し、黒のピークがPE標識したCD140a抗体の蛍光強度を示す。
その結果、実施例1の場合、ピーク位置が蛍光強度が強い側にシフトし、比較例1ではネガティブコントロールとピークのシフトは見られなかった。このことより、従来、骨髄間葉系細胞、脂肪前駆細胞、軟骨細胞を代表とする接着細胞は細胞増殖因子の受容体の一つであるPDGFR−alphaはフローサイトメトリー解析では検出できない、或いは発現量が低いとされていたが、細胞表面を損なわずに回収した細胞では検出できた。このことはPDGFR−alphaがトリプシンにより消化され、本発明で示す基材によって初めて接着細胞系におけるPDGFR−alphaの発現量を規定することが可能となったことを示している。
EGFR(Epidermal Growth Factor Receptor):
回収した細胞を0.2mlのリン酸緩衝液に懸濁し、2mgのEGFR抗体(human EGFR specific monoclonal mouse IgG2b,R&D Systems,MAB1095,clone 102618)と4℃で1時間反応させた。4倍容量のリン酸緩衝液で2回洗浄後、0.2mlのリン酸緩衝液に細胞を再懸濁し、PE標識した抗マウスIgGヤギ抗体(anti−mouse IgG polyclonal goat Ig,phycoerythrin conjugated,BD Biosciences Pharmingen,550589,lot 17891)と4℃で1時間反応させた。4倍容量のリン酸緩衝液で2回洗浄後、0.5mlのリン酸緩衝液に細胞を再懸濁した。ネガティブコントロールとしてPE標識した抗マウスIgGヤギ抗体(anti−mouse IgG polyclonal goat Ig,phycoerythrin conjugated,BD Biosciences Pharmingen,550589,lot 17891)を使用し、4℃で1時間反応させた。4倍容量のリン酸緩衝液で2回洗浄後、0.5mlのリン酸緩衝液に細胞を再懸濁し、FC500フローサイトメーター(ベックマン・コールター社)でPEの蛍光強度を検出した。白のピークがネガティブコントロールの蛍光強度を示し、黒のピークがPE標識したEGFR抗体の蛍光強度を示す。得られた結果を図1に示す。
その結果、実施例1の場合、ピーク位置が蛍光強度が強い側にシフトし、比較例1ではネガティブコントロールとピークのシフトは見られなかった。従来、羊膜由来間葉系細胞を代表とする接着細胞は細胞増殖因子の受容体の一つであるEGFRはフローサイトメトリー解析では検出できない、または発現量が低いとされていたが、細胞表面を損なわずに回収した細胞では検出できた。このことはEGFRがトリプシンにより消化され、本発明で示す基材によって初めて接着細胞系におけるEGFRの発現量を規定することが可能となったことを示している。
HB−EGF(Heparin−binding EGF−like growth factor):
回収した細胞を0.2mlのリン酸緩衝液に懸濁し、2mgのHB−EGF抗体(human heparin−binding EGF−like growth factor(HB−EGF)specific polyclonal goat IgG,R&D Systems,AF−259−NA,lot PX04)と4℃で1時間反応させた。4倍容量のリン酸緩衝液で2回洗浄後、0.2mlのリン酸緩衝液に細胞を再懸濁し、PE標識した抗ヤギIgGウサギ抗体(anti−goat IgG polyclonal rabbit Ig,phycoerythrin conjugated,Sigma,P9787,lot 065K4889)と4℃で1時間反応させた。4倍容量のリン酸緩衝液で2回洗浄後、0.5mlのリン酸緩衝液に細胞を再懸濁した。ネガティブコントロールとしてPE標識した抗マウスIgGヤギ抗体(anti−goat IgG polyclonal rabbit Ig,phycoerythrin conjugated,Sigma,P9787,lot 065K4889)を使用し、4℃で1時間反応させた。4倍容量のリン酸緩衝液で2回洗浄後、0.5mlのリン酸緩衝液に細胞を再懸濁し、FC500フローサイトメーター(ベックマン・コールター社)でPEの蛍光強度を検出した。得られた結果を図1に示す。
その結果、白のピークがネガティブコントロールの蛍光強度を示し、黒のピークがPE標識したHB−EGF抗体の蛍光強度を示す。実施例1の場合、ピーク位置が蛍光強度が強い側にシフトし、比較例1ではネガティブコントロールとピークのシフトは見られなかった。従来、脂肪前駆細胞を代表とする接着細胞は細胞増殖因子の受容体の一つであるHB−EGFはフローサイトメトリー解析では検出できない、または発現量が低いとされていたが、細胞表面を損なわずに回収した細胞では検出できた。このことはHB−EGFがトリプシンにより消化され、本発明で示す基材によって初めて接着細胞系におけるHB−EGFの発現量を規定することが可能となった。
実施例2、比較例2、3
温度応答性ポリマーを被覆した基材表面を利用した骨髄間葉系細胞の細胞表面抗原の保持の例
1.細胞培養
市販の3.5cmφ培養皿(ベクトン・ディッキンソン・ラブウェア(Becton Dickinson Labware)社製ファルコン(FALCON)3001)上に、N−イソプロピルアクリルアミドモノマーを54%になるようにイソプロピルアルコールに溶解させたものを0.07ml塗布した。0.25MGyの強度の電子線を照射し、培養皿表面にN−イソプロピルアクリルアミドポリマー(PIPAAm)を固定化した。照射後、イオン交換水により培養皿を洗浄し、残存モノマーおよび培養皿に結合していないPIPAAmを取り除き、クリーンベンチ内で乾燥し、エチレンオキサイドガスで滅菌することで細胞培養培養基材材料を得た。基材表面における温度応答性高分子量を測定したところ、それぞれ1.9μg/cm被覆されていることが分かった(実施例2)。比較として、通常の細胞培養用ディッシュ(コーニング社、Cat.No.430165)を使用した(比較例2、3)。
この基材表面に、37℃に保温した細胞培養液を8ml入れ、37℃の炭酸ガス培養装置内で15分間以上静置した。その後、上記、骨髄細胞を基材表面に6×10〜1×10個/cmの細胞同士が接触しない範囲の細胞密度で播種し、37℃、5%炭酸ガス雰囲気下で24時間炭酸ガス培養装置内で培養した。
2.細胞回収
(実施例2)基材を炭酸ガス培養装置から取り出し、25℃で、20分静置し、基材側面を液がこぼれない程度にタッピングことで培養細胞を基材表面から剥離させ、その後、50mlの遠心管に入れ、300G、5分間遠心して細胞を沈殿させた。
(比較例2)トリプシン処理。ディッシュを炭酸ガス培養装置から取り出し、細胞培養液を除去し、6mlのリン酸緩衝液で洗浄した。0.25%トリプシンを含むリン酸緩衝液をディッシュに加えて37℃で2〜3分間静置し、細胞をディッシュから剥離させ、6mlの細胞培養液を加えてトリプシンによる消化反応を止めた。その後、50mlの遠心管に入れ、300G、5分間遠心して細胞を沈殿させた。
(比較例3)トリプシン・コラゲナーゼ・EDTA処理。ディッシュを炭酸ガス培養装置から取り出し、細胞培養液を除去し、6mlのリン酸緩衝液で洗浄した。0.25%トリプシン・コラゲナーゼ・EDTAを含むリン酸緩衝液をディッシュに加えて37℃で2〜3分間静置し、細胞をディッシュから剥離させ、6mlの細胞培養液を加えてトリプシンによる消化反応を止めた。その後、50mlの遠心管に入れ、300G、5分間遠心して細胞を沈殿させた。
3.回収した細胞の表面抗原の検出
PDGFR−alpha(platelet−derived growth factor receptor−alpha)/CD140a:
回収した細胞を0.2mlのリン酸緩衝液に懸濁し、2mgのPhycoerythrin(PE)標識したCD140a抗体(human CD140a specific monoclonal mouse IgG2a,phycoerythrin conjugated,BD Biosciences Pharmingen,556002,clone aR1)と4℃で1時間反応させた。ネガティブコントロールとしてPE標識したmouse IgG2a アイソタイプコントロール抗体(mouse IgG2a,phycoerythrin conjugated,BD Biosciences Pharmingen,553457,clone G155−178)を使用し、4℃で1時間反応させた。4倍容量のリン酸緩衝液で2回洗浄後、0.5mlのリン酸緩衝液に細胞を再懸濁し、FC500フローサイトメーター(ベックマン・コールター社)でPEの蛍光強度を検出した。結果を図2に示す。白のピークがネガティブコントロールの蛍光強度を示し、黒のピークがPE標識したCD140a抗体の蛍光強度を示す。
その結果、実施例2の場合、ピーク位置が蛍光強度が強い側にシフトし、比較例2、3ではネガティブコントロールとピークのシフトは見られなかった。このことより、従来、骨髄細胞を代表とする接着細胞は細胞増殖因子の受容体の一つであるPDGFR−alphaはフローサイトメトリー解析では検出できない、或いは発現量が低いとされていたが、細胞表面を損なわずに回収した細胞では検出できた。このことはPDGFR−alphaがトリプシンにより消化され、本発明で示す基材によって初めて接着細胞系におけるPDGFR−alphaの発現量を規定することが可能となったことを示している。近年、従来の細胞回収方法であるトリプシン処理に比べ、細胞表面タンパク質に対する障害の少ない方法とされるトリプシン・コラゲナーゼ・EDTA処理が広まりつつある。しかしながら、トリプシン・コラゲナーゼ・EDTA処理した細胞でも、トリプシン処理と同様にCD140aの検出はできず、本発明で示す基材による細胞回収法の優位性が示された。
本発明に記載される細胞表層蛋白修復方法であれば、細胞を培養中に産生された細胞表層蛋白をそのまま保持した状態で回収できるようになり、その後、その回収した細胞の細胞表層蛋白に対して、例えばフローサイトメトリーによる解析などが効率良く実施できるようになる。
実施例1、比較例1で示すそれぞれの基材表面で培養した細胞をフローサイトメトリーを用いて解析した結果を示す図である。 実施例2、比較例2、3で示すそれぞれの基材表面で培養した細胞をフローサイトメトリーを用いて解析した結果を示す図である。

Claims (4)

  1. 0〜80℃の温度範囲で水和力が変化する温度応答性ポリマーを被覆した基材表面を利用する細胞表層蛋白修復方法であって、
    温度応答性ポリマーの被覆量が、0.8〜3.0μg/cmの範囲であり、かつ、
    細胞表層蛋白が酵素処理により損傷した細胞を、当該基材表面上に播種後、その細胞の倍化時間の80%以内に蛋白質加水分解酵素を使わずに、温度処理だけで細胞を当該基材表面から剥離することにより、細胞表層蛋白を修復する工程を含む
    ことを特徴とする方法。
  2. 細胞表層蛋白が抗原である、請求項1に記載の細胞表層蛋白修復方法。
  3. 0〜80℃の温度範囲で水和力が変化するポリマーがポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)である、請求項1又は2に記載の細胞表層蛋白修復方法。
  4. 0〜80℃の温度範囲で水和力が変化する温度応答性ポリマーを被覆した基材表面を利用する、細胞表層蛋白が修復された細胞の製造方法であって、
    温度応答性ポリマーの被覆量が、0.8〜3.0μg/cmの範囲であり、かつ、
    細胞表層蛋白が酵素処理により損傷した細胞を、当該基材表面上に播種後、その細胞の倍化時間の80%以内に蛋白質加水分解酵素を使わずに、温度処理だけで細胞を当該基材表面から剥離することにより、細胞表層蛋白を修復する工程を含む
    ことを特徴とする方法。
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