JPH05276923A - 細胞培養用基材およびその製造方法 - Google Patents

細胞培養用基材およびその製造方法

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JPH05276923A
JPH05276923A JP3057764A JP5776491A JPH05276923A JP H05276923 A JPH05276923 A JP H05276923A JP 3057764 A JP3057764 A JP 3057764A JP 5776491 A JP5776491 A JP 5776491A JP H05276923 A JPH05276923 A JP H05276923A
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cells
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collagen
cell culture
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Manabu Yamazaki
学 山崎
Michiko Tsuchida
路子 土田
Toshiaki Takezawa
俊明 竹澤
Yuichi Mori
森  有一
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WR Grace and Co
Original Assignee
WR Grace and Co
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Publication date
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  • Immobilizing And Processing Of Enzymes And Microorganisms (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Apparatus Associated With Microorganisms And Enzymes (AREA)

Abstract

(57)【要約】 [目的] 回収時や継代時の細胞機能の劣化、操作の煩
雑さ、汚染の危険性といった従来の細胞培養技術の問題
点を解決した細胞培養用基材およびその製造方法を提供
することを目的とする。また、コラーゲンの使用量を少
なくして、製造コストを抑えた細胞培養用基材を提供す
ることをも目的とする。 [構成] LCSTを有する温度感応性高分子化合物と
一部または全部が架橋されている細胞接着性物質とから
なる細胞培養用基材を開示する。また、(a)細胞接着
性物質と温度感応性高分子化合物を含有する層を形成す
る工程と、(b)この層に架橋を導入する工程からなる
前記細胞培養基材の製造方法をも開示する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、細胞培養に適した基材
に関する。さらに詳しくは、細胞産生物を生産させるた
めに継代培養が必要な細胞の培養に適した基材に関す
る。また、本発明は細胞培養基材の製造方法にも関す
る。
【0002】
【従来の技術】今日の細胞培養技術は、1)細胞産生物
の産生、2)生体の病変部や欠損部への補綴材、3)薬
剤の毒性および薬理活性評価用のシュミレーターなどに
利用されている。
【0003】以下に上記の応用分野を中心として従来技
術について概観する。
【0004】今日、細胞培養に使用されている動物細胞
は2種類に分類される。即ち、接着非依存性細胞(anch
orage independent cells)と接着依存性細胞(anchora
ge dependent cells)である。前者の接着非依存性細胞
は、生存、増殖、物質産生能などの細胞機能が細胞の足
場である基質が存在しなくても正常に発現される細胞で
ある。典型的な例としてミエローマ細胞、リンホーマ細
胞などから形成されるハイブリドーマがあげられる。
【0005】一方、後者の接着依存性細胞は、生存、増
殖、物質産生能などの細胞機能が細胞の足場である基質
が存在しなくては正常に発現されない細胞である。初代
培養細胞をはじめとした正常二倍体細胞の大部分は接着
依存性である。さらに無限に増殖可能な樹立細胞系に
も、接着依存性を示すものが数多く知られている。例え
ば、インターフェロン、インターロイキンなどのサイト
カイン類、エリスロポエチン、コロニー・ステュミレイ
ティング・ファクター、トロンボボエチンなどの各種分
化成長ホルモン、組織プラスミノーゲンアクチべータ
ー、ワクチンなどの有用な細胞産生物を生産する樹立細
胞系にも接着依存性を示すものが多く知られている。従
って、これら有用な細胞産生物の生産のためにも接着依
存性細胞の培養技術の確立は非常に重要である。
【0006】一般に細胞を物質生産のために利用する場
合、細胞を高機能を維持した状態で大量にかつ高密度に
培養することが重要である。ところが、動物細胞は微生
物細胞と比較して老廃物の蓄積および酸素をはじめとし
た栄養物の供給不足の影響を受け易く、高密度で大量に
培養する時にその機能を維持することが極めて困難であ
る。
【0007】接着非依存性細胞の場合には、浮遊培養法
が最も適当であると考えられている。撹拌下に浮遊培養
法を行えば、細胞老廃物の速やかな除去および栄養物の
効率的な供給が可能であり、大量かつ高密度化を目的と
した装置のスケール・アップが容易だからである。しか
し、接着依存性細胞の場合には、細胞の足場としての基
質が必要なために浮遊培養法を適用することができな
い。そこで従来、種々の接着依存性細胞の培養器が開発
されてきた。例えば実験室的に少量の細胞を培養する場
合には、一般的にはデイッシュ型、フラスコ型、プレー
ト型などの細胞培養器が広く使用されている。しかし、
これらの容器は細胞を大量に効率良く培養したい場合に
は不適当である。このため、細胞が接着する基質面積を
全体の容積に対して大きくすることによって大量培養を
可能にするために、以下のような工夫が行われてきた。
【0008】 細胞培養用のガラスビンを回転させ壁
面全体に細胞を増殖させるローラーびん法: 細胞接着用の板を培養溶液中に平行に並べその間に
培養液を循環させるマルチトレー法: プラスチックフィルムを渦巻状にしたものを円筒内
に挿入し横に回転させながら細胞を接着させた後にフィ
ルム間に培養液を循環させるコイル培養法。
【0009】 半透過性を有する中空糸膜を用いて中
空糸の外面に細胞を接着させ内側に培養液を循環させる
ことにより、中空糸膜から栄養物を補給し、老廃物を除
去する中空糸培養法: 充填したガラスビーズに細胞を接着させその間隙に
培養液を循環させる充填ガラスビーズ法: マイクロビーズを培養液中に浮遊させマイクロビー
ズ表面に細胞を接着させて撹拌下に培養を行う疑似浮遊
培養法(マイクロビーズ培養法)である。
【0010】以上のように、細胞を高密度で大量培養す
ることにより有用な細胞産生物を効率良く大量に生産さ
せるために、培養装置および培養基材の形状に重点をお
いた開発が従来進められてきた。しかし近年、接着依存
性細胞の活性あるいは機能維持および発現には培養基材
の性質が著しく関連していることがわかってきて、上述
したように培養基材の形状により酸素をはじめとした栄
養素の効率的供給あるいは細胞老廃物の効率的除去のみ
では細胞を長期間にわたり、その活性および特異的な機
能を維持した状態で培養することがほとんど不可能であ
るということがわかってきた。そこで培養基材の性質を
種々変えることにより細胞の活性、機能維持を向上させ
る試みが近年活発に行われはじめた。現在、細胞培養容
器の材質として光学的透明性、無毒性、良好な機械的物
性および成型性、低コストなどの点からポリスチレンが
広く使用されている。しかしポリスチレン表面は疎水性
が強く、細胞活性維持のために細胞の接着が著しく阻害
されるという重大な欠点を有している。そこでポリスチ
レン表面をコロナ放電処理することにより表面にのみ陰
イオン基を導入し親水性を付与することにより細胞の接
着性、増殖性を改善した細胞培養基材が開発され広く使
用されている。しかしこの程度の改善では細胞の特異的
な機能を発現させそれを維持することが困難であること
がわかってきて最近では培養細胞の環境を細胞が生体内
に存在する状態に出来るだけ近づけることにより細胞の
接着、増殖、分化、物質産生能などの機能を向上させる
研究が行われてきた。即ち、細胞外マトリックスを細胞
基材に組合せる方法である。
【0011】ところで、生体内での細胞外マトリックス
の機能についての研究が近年急速に進み、従来から知ら
れていた細胞を支持、固定化するという単純な受動的な
役割だけではなく、細胞機能を能動的に制御する機能も
有していることが分かってきた。
【0012】例えば、細胞外マトリックスの主成分であ
るコラーゲンには10種以上あることが発見されてお
り、それぞれのコラーゲンは決まった細胞によって合成
され、一定の組織に局在し、そして異なる細胞機能を制
御する役割を有していることが解明されつつある。ま
た、同一タイプのコラーゲンでも、高次構造の変性ある
いは種々の官能基を導入するなどの改質によっても細胞
機能に影響があることがわかってきた。
【0013】また、細胞外マトリックスの第2成分であ
る、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、プ
ロテオグリカン、グリコサミノグリカンなどは、コラー
ゲンおよび細胞膜に対して特異的な結合部位を有し、細
胞の基質への接着に重要な役割を果たしている。なお、
接着性タンパク質はそれぞれ一定種の細胞、コラーゲン
に特異的に結合する。例えば、フィブロネクチンは主と
して繊維芽細胞およびI型、II型のコラーゲンに、ラミ
ニンは上皮、内皮細胞およびIV型コラーゲンにそれぞれ
特有の結合部位を有している。更に上記の細胞外マトリ
ックス以外にも細胞機能に大きな影響を与えるものとし
てコラーゲンの熱変性物であるゼラチン、細胞膜上の糖
鎖に特異的に結合するレクチン、フィブロネクチンなど
の結合部位である接着性オリゴペプチド、イガイから得
られた細胞接着蛋白等が知られている。上記の細胞の接
着、増殖を制御する因子を培養基材に組合せた例として
は、コラーゲンをコーティングした培養基材(K.Yoshiz
ato.et al..Annals of Plastic Surgery.13.9.1984)、
またフィブロネクチンをコーティングした基材(F.Grin
nell.Expl.Cell Res.102.51.1976)、またイガイから得
られた細胞接着蛋白をコーティングした基材(P.T.Picc
iano.et all..In Vitro Cellular and Developmental B
iology 22(3).24A.1986)などが開発され、細胞接着お
よび増殖効果の改善が認められている。さらには生体由
来の細胞外基質のかわりにガラクトース末端を側鎖に有
するポリスチレンをコーティングした基材(赤池敏宏
ら、人工臓器、17.227.1988)が開発され特に肝細胞の
接着性の向上および生存性の維持が認められている。従
来、培養条件が厳しく接着が非常に困難であった細胞も
上記したような方法で表面を処理した培養した基材を用
いることによって培養が可能になってきた。以上述べた
ように、栄養素への効率的な補給および老廃物の効率的
な除去が可能な細胞培養法の開発、細胞の特異的な機能
を維持することを目的として細胞接着・増殖因子をくみ
こんだ培養基材の開発が進んできたにも拘らず、現在の
技術には下記のような重大な問題点が残されていた。
【0014】接着依存性細胞の重要な特徴は、細胞が培
養基材に接着し、増殖し、基材表面を完全に覆ってしま
うとコンタクト・インヒビションという機能が働きそれ
以上の細胞増殖が停止してしまうという性質である。し
たがって細胞を更に増殖させるためには細胞を新しい培
養基材に植え替える継代操作が必要となる。
【0015】従来、基材表面に接着し、増殖した細胞を
脱離させる継代操作にはトリプシン、コラゲナーゼ、な
どの蛋白分解酵素、カルシウムイオンの錯体化合物であ
るEDTAなどが一般的に用いられてきたがこれらの細
胞脱離剤は下記のように細胞機能および細胞培養工程に
重大な障害をもたらす。
【0016】1)従来の細胞脱離剤は培養基材と細胞の
間の結合を破壊するのみならず細胞と細胞の間のあらゆ
る結合を破壊してしまう。細胞間の結合にはタイトジャ
ンクション、ギャップジャンクション、デスモゾームと
呼ばれる3種類の結合様式があることがわかっていて、
細胞同士が集合してタイトジャンクションが形成される
と細胞集合体としての物質透過に対してのバリヤーとし
ての働き生体内部の特異的環境が維持される。またギャ
ップジャンクションが形成されるとその結合を通じて隣
り合う細胞間の情報および物質の交換が行われる。一
方、デスモゾームはタイトジャンクション、ギャップジ
ャンクションの結合が維持されるように細胞集合体を機
械的に保持する。したがって細胞はそれ自身単独では活
性、機能の発現は困難であり上述した細胞間結合によっ
て社会を形成してはじめて機能が発現するものと考えら
れている(B.Alberts.et al.゛Molecular Bioloby of t
he Cell″.3rd edn.Garland Publishing.Inc..New York
&London P.673.1983)。したがって従来の細胞脱離剤は
高度に機能が維持された状態で培養された細胞に対して
も継代時に致命的な障害を与えてしまう。
【0017】2) 細胞膜上にはホルモン、神経伝達物
質などの種々の信号物質に対するリセプターが存在し、
細胞はこれらの信号物質とリセプターの特異的反応によ
り遠隔制御を受けかつ行っている。蛋白分解酵素などの
従来の細胞脱離剤はこれらの細胞膜リセプターを破壊し
てしまうことがわかっている(C.Sung.et al..Biochem
Pharmocol.38.696.1989)。したがって従来の技術によ
って継代された細胞を特異的生理活性を有する信号物質
によりその機能をコントロールすることはほとんど不可
能である。
【0018】3) 一般的に細胞培養液中には栄養素と
して血清が添加されていて血清中には強力なトリプシン
阻害物質が存在する。このため、トリプシン処理の継代
時には、あらかじめ緩衝液で充分細胞を洗浄しトリプシ
ン阻害物質を除去しておくことが必要である。この洗浄
工程は操作を煩雑にするばかりでなく細胞培養にとって
致命的な汚染の重大な原因にもなる。すでに述べたよう
に細胞外マトリックスなどの細胞の接着、増殖、分化な
どの機能の発現を促進させる因子を用いた培養基材の進
展にもかかわらず、細胞を回収、継代する際に従来の細
胞脱離剤を用いれば上述(1)、(2)の理由によりせ
っかく維持された細胞の高機能性が著しく損なわれるこ
とになる。この問題が高機能性を維持した細胞を培養す
る技術の大きな障害になっている。
【0019】一方、従来の細胞脱離操作は大量培養技術
にも致命的な欠点をもたらす。即ち接着依存性細胞は培
養液中の初期細胞濃度が低すぎると細胞は基質に接着し
ても増殖および物質産生機能を十分に発揮することがで
きないといわれている。特に採取が困難な初代培養細胞
あるいは正常二倍体細胞などの場合は、初めから大容量
の培養液中で培養することは細胞濃度が低くなりすぎる
ので、小容量の培養装置を用いて段階的に細胞継代を繰
り返しながら大容量化しなければならない。即ち通常、
大量培養時には数回の細胞回収、継代の操作が必要にな
る。したがって(3)の理由により従来の細胞脱離法は
特に大量培養時の致命的欠隔である操作装置の煩雑化お
よび汚染の大きな危険性にもつながることになる。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、回収時や継
代時の細胞機能の劣化、操作の煩雑さ、汚染の危険性と
いった従来の細胞培養技術の問題点を解決した細胞培養
用基材およびその製造方法を提供することを目的とす
る。
【0021】かかる目的に沿った技術として、温度感応
性高分子化合物を用いた細胞培養技術が開発されている
(特願平2−41955および特願平2−9192
7)。しかし、これらの技術に使用するコラーゲンなど
の細胞接着性物質はいずれも非常に高価であるため、そ
の使用量をできるだけ少なくしてコストダウンを図るこ
とが求められていた。
【0022】そこで、本発明はコラーゲンの使用量を少
なくして、コストを抑えた細胞培養用基材を提供するこ
とをも目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】上記の目的は、LCST
を有する温度感応性高分子化合物と一部または全部が架
橋されている細胞接着性物質とからなる細胞培養用基材
を提供する本発明によって達成された。
【0024】本発明の細胞培養基材に使用する細胞接着
性物質は、試料として与えられた細胞を変性することな
く接着する物質を1以上含み、コラーゲンを50%以上
含有するものを意味する。細胞を変性することなく接着
する物質としては、コラーゲン、フィブロネクチン、ビ
トロネクチン、ラミニン、プロテオグリカン、グリコサ
ミノグリカンなどの細胞外マトリックス成分や、コラー
ゲンの熱変性物であるゼラチンやその他のコラーゲン誘
導体、細胞膜上の糖鎖に親和力を有するコンカナバリン
A(Con A)などのレクチン、イガイ由来の接着タンパ
ク質、フィブロネクチンと細胞との接着部位に対応する
接着性オリゴペプチドなどが挙げられる。一方、細胞接
着性物質に含有させることができるコラーゲンの種類
は、特に限定されない。したがって、各種タイプのコラ
ーゲン単体やそれらの混合物を広く用いることができ
る。
【0025】本発明の細胞培養基材に使用するLCST
を有する温度感応性高分子とは、水に対する溶解度温度
係数が負を示す高分子化合物であり、低温にて生成する
高分子化合物と水分子との水素結合に依存する水和物
(オキソニウムヒドロキシド)が、高温で分解し脱水和
することにより、高分子化合物同士が凝集し沈殿する特
徴を有する。LCST(Lower Critical Solution Temp
erature)とは、このような温度感応性高分子化合物の
水和と脱水和の転移温度をいう(例えば、ハスキンズ
(M. Haskins)らの J. Macromol, Sci.-Chem., A2
(8), 1441 (1968) 参照)。したがって、温度感応性高分
子化合物は、LCSTより高い温度では非水溶性で固体
状態であり、温度をLCSTより低くすることによって
可逆的に水溶性になる。
【0026】本発明では、培養温度より低いLCSTを
有する温度感応性高分子化合物を使用する。このような
高分子化合物であれば、その構造を問わず広く使用する
ことができる。該高分子化合物は、細胞培養温度では水
に不溶性の固体状態あるため、細胞接着性物質と温度感
応性高分子化合物とからなる層を足場として細胞が接
着、増殖することができる。また、温度をLCST以下
にすることによって高分子化合物は水に可溶性になるた
め増殖した細胞は足場を失い、細胞間の結合を損なわず
しかも細胞膜表面のタンパク質を損傷することなく増殖
細胞を回収することができる。したがって、細胞接着性
物質と温度感応性高分子化合物とからなる本発明の基材
を用いれば、トリプシンやEDTAといった脱離剤を使
用せずに、細胞の機能を損なうことなく細胞を簡単に剥
離して回収することができる。このため、本発明の細胞
培養用基材を使用すれば、脱離剤による細胞機能障害を
生ずることなく、汚染が少ない簡便な方法で細胞を回収
することが可能である。したがって、本発明は多くの有
用な細胞産生物の製造を可能にするものである。
【0027】本発明で使用することができる温度感応性
高分子化合物としては、ポリN置換アクリルアミド誘導
体、ポリN置換メタアクリルアミド誘導体およびこれら
の共重合体、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレン
オキサイド、エーテル化メチルセルロース、ポリビニル
アルコール部分酢化物などが挙げられる。特に好ましい
のは、ポリN置換アクリルアミド誘導体、ポリN置換メ
タアクリルアミド誘導体またはこれらの共重合体、ポリ
ビニルメチルエーテル、ポリビニルアルコール部分酢化
物である。
【0028】好ましい高分子化合物を以下にLCSTが
低い順に列挙する。
【0029】ポリ−N−アクリロイルピペリジン;ポリ
ーN−n−プロピルメタアクリルアミド;ポリーN−イ
ソプロピルアクリルアミド;ポリーN,N−ジエチルア
クリルアミド;ポリーN−イソプロピルメタアクリルア
ミド;ポリーN−シクロプロピルアクリルアミド;ポリ
ーN−アクリロイルピロリジン;ポリーN,N−エチル
メチルアクリルアミド;ポリーN−シクロプロピルメタ
アクリルアミド;ポリーN−エチルアクリルアミド 上記の高分子は、他の単量体と共重合したものであって
もよい。共重合する単量体は、親水性単量体、疎水性単
量体のいずれであってもよい。一般的には、親水性単量
体と共重合するとLCSTは上昇し、疎水性単量体と共
重合するとLCSTは下降する。したがって、これらを
選択することによって所望のLCSTを有する高分子化
合物を得ることもできる。
【0030】親水性単量体としては、N−ビニルピロリ
ドン、ビニルピリジン、アクリルアミド、メタアクリル
アミド、N−メチルアクリルアミド、ヒドロキシエチル
メタアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒ
ドロキシメチルメタアクリレート、ヒドロキシメチルア
クリレート、酸性基を有するアクリル酸、メタアクリル
酸およびそれらの塩、ビニルスルホン酸、スチルスルホ
ン酸およびそれらの塩、ビニルスルホン酸、スチルスル
ホン酸など、並びに塩基性を有するN,N−ジメチルア
ミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエ
チルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル
アクリルアミドおよびそれらの塩などが挙げられるが、
これらに限定されるものではない。
【0031】一方、疎水性単量体としては、エチルアク
リレート、メチルメタクリレート、グリシジルメタクリ
レートなどのアクリレート誘導体およびメタクリレート
誘導体、N−n−ブチルメタアクリルアミドなどのN置
換アルキルメタアクリルアミド誘導体、塩化ビニル、ア
クリロニトリル、スチレン、酢酸ビニルなどが挙げられ
るが、これらに限定されるものではない。
【0032】本発明で使用する温度感応性高分子化合物
は、分子量が1.0x105以上であるのが好ましい。さ
らに好ましくは1.0x106以上である。分子量が小さ
いと、細胞接着性物質と温度感応性高分子化合物とを含
有する層をコーティングしたときにその一部が剥離して
しまうため、十分に細胞を脱離することができない。な
お、ここでいう分子量とは、粘度から求めた平均分子量
をさす。例えば、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミ
ドの平均分子量(Mn)と極限粘度([η])との関係
は、 [η] = 9.59x10-5 Mn0.65 (27℃テトラヒドロフラン溶液)(伊藤、R.T.Ger
onimo、繊維高分子材料研究所研究報告第159号、1
988)で表される。
【0033】本発明の細胞培養用基材の特徴は、コラー
ゲンまたはコラーゲンを主成分とする細胞接着性物質の
一部または全部に架橋が導入されている点にある。
【0034】一般に、コラーゲンは培養状態においては
線維を形成し、生体内に存在していたときと同様の構造
をとることが知られており、この状態では培養液に溶解
することはほとんどない。しかし、温度感応性高分子化
合物とコラーゲンが共存する系においては、コラーゲン
が有する本来の線維形成能力が十分に発揮されない。コ
ラーゲンの線維形成が不十分であると、細胞が基材に接
着する前に基材中のコラーゲンの一部が培養液中に溶解
してしまう。これに対処し、細胞の接着性や増殖性を向
上させるためには、本来細胞の接着、増殖のために必要
である量よりもかなり多量のコラーゲンを使用しなけれ
ばならなかった。しかし、本発明のように、コラーゲン
に架橋を導入すれば、コラーゲンを培養液に対して不溶
化することができる。したがって、本発明には、コラー
ゲンの使用量を大幅に減らすことができるとともに、コ
ストを低く抑えることができるという利点がある。
【0035】コラーゲンへの架橋の導入方法は、特に限
定されるものではなく、一般に用いられる方法であれば
いかなるものであってもよい。例えば、グルタルアルデ
ヒドなどを用いた化学処理法、オゾン処理法、紫外線処
理法、電子線処理法、プラズマ処理法などを用いること
ができる。経済的な面および操作が簡単な点を考慮する
と、紫外線処理法によるのが最も有効であると思われ
る。
【0036】本発明の細胞培養用基材に含有させる細胞
接着性物質と温度感応性高分子化合物との重量比は、
1:9から1:49の範囲内にすれば、細胞の接着、増
殖、剥離性が良好であるため好ましい。より好ましい範
囲は、1:9から1:39の範囲内である。
【0037】また、本発明の細胞培養用基材の構造は、
特に限定されるものではない。したがって、細胞接着性
物質と温度感応性高分子化合物は上下に層状構造を形成
していてもよいし、また海島構造、ラメラ構造や2層が
連結した変調構造を形成していてもよい。
【0038】本発明の細胞培養用基材は、このような細
胞接着性物質と温度感応性高分子化合物からなるコーテ
ィング層と支持体から形成されているのが一般的であ
る。しかし、支持体上にコーティングされていない基材
も本発明の範囲に含まれる。乾燥後のコーティング層の
厚みは0.5μm以上であるのが好ましく、1.0μm以上
であればより好ましい。コーティング層の厚みは、基材
を形成する物質の密度を1.0と考えて、混合物溶液の
濃度と乾燥前のコーティング層の厚みから計算して求め
る。コーティング層の厚みが0.5μm以下であると、細
胞の脱離性が悪くなったり、脱離までの時間が非常に長
くなったりして、性能が不安定になる。細胞接着性物質
と温度感応性高分子化合物からなる層のコーティング
は、支持体の全表面にわたってもよいし、一部であって
もよい。
【0039】本発明において、コーティングされる支持
体は、透明または半透明であるのが好ましい。とくに、
細胞を顕微鏡下で観察するのに十分な透明性を有してい
ることが好ましい。材料は、ガラス、ポリスチレン、ポ
リプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミ
ド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリメチル
メタクリレート、アクリル系樹脂などの透明または半透
明の材料を広く用いることができる。また、物質透過性
を有する膜を使用するのも好ましい。そのような膜の例
として、再生セルロース、セルロースアセテート、コラ
ーゲン、キトサンなどの半透膜や、ポリプロピレン、セ
ルロースアセテート、テフロンTM、ポリフッ化ビニリデ
ンなどの多孔質膜などを挙げることができるが、これら
に限定されるものではない。支持体の形状は、ディッシ
ュ、プレート、ボトル、チューブ、フラスコ、フィルム
などが一般的であるがこれらに限定されるものではな
い。
【0040】本発明の細胞培養用基材は、通常用いられ
ている当業者に自明な方法で製造することができ、その
方法は特に制限されない。例えば、溶媒キャスティング
法やディップ法を用いれば簡便に製造することができ
る。
【0041】しかし、本発明の方法によって製造すれ
ば、安定した性能を有する細胞培養用基材を極めて効率
的に製造することができる。本発明の方法は、(a)細
胞接着性物質と温度感応性高分子化合物を含有する層を
形成する工程、(b)この層に架橋を導入する工程から
なる。
【0042】工程(a)では、キャスト法やディップ法
など層を形成させることができる方法を広く採用するこ
とができる。したがって、細胞接着性物質と温度感応性
高分子化合物の層を別々に形成させるような方法を採る
こともできる。
【0043】工程(b)でも、架橋を導入しうる方法を
広く採用することができる。経済性を考慮すれば紫外線
による方法を採るのが好ましい。紫外線の照射量(照射
強度x時間:254nm)は、100〜5000J/m2
するのが好ましく、500〜4000J/m2とすればよ
り好ましい。100J/m2以下では紫外線照射の効果が
ほとんどなく、また、5000J/m2以上では細胞がま
ったく剥離しない。なお、254nm以外の波長の紫外線
を使用する場合は、254nmの紫外線を上記の範囲で照
射したときと同程度の架橋を生じる量を照射する。紫外
線照射は1回であっても、複数回であってもよい。
【0044】以上述べたように、本発明の培養基材は、
細胞の回収、継代操作の重大な問題点である、トリプシ
ンなど細胞脱離用酵素を始めとする脱離剤による細胞機
能障害、洗浄操作などの工程の繁雑さ、工程複雑化に伴
う汚染の危険性などをすべて解決している。すなわち、
本発明は、単純な工程で細胞を高機能下に維持したまま
回収、継代することができるものであり、多くの有用な
細胞産生物の製造を可能にするものである。また本発明
は、これらの効果を安定に奏し、再現性が高い点にも特
徴がある。しかも、コラーゲンや細胞接着性物質の使用
量を減少させることもできるので、本発明の基材を市場
に安い値段で提供することができる。さらに、本発明の
培養基材の製造方法によれば、性能が安定化した培養基
材を簡便な方法で製造することができる。
【0045】
【実施例】以下に実施例などを示し、本発明をさらに具
体的に説明するが本発明の範囲は特許請求の範囲の記載
により定まるものであり、以下の実施例により制限を受
けるものではない。
【0046】なお、実施例で使用する、温度感応性高分
子の合成方法の一例を以下に示す。 (合成例)N−イソプロピルアクリルアミドモノマ−
(NIPAAm、Eastman Kodak Co.)50gをベンゼ
ン500mlに溶解し、2,2'−アゾビスイソブチルニト
リル(AIBN)0.2gを重合開始剤として使用し
て、60℃で12時間、窒素気流中で撹拌しながら重合
を行った。重合物はベンゼン中で沈澱するため、デカン
テーションした。その後、沈澱物をテトラヒドロフラン
(THF)に溶解し、エチルエーテルを用いて沈澱精製
を行うことにより、ポリ−N−イソプロピルアクリルア
ミド(以下PNIPAAmという)を得た。 (実施例1)0.5%(W/V)、牛真皮ペプシン可溶
化タイプIコラーゲン溶液(pH3)(KOKEN CELLGEN
I-PC、(株)高研 製)と0.5%(W/V)PNIP
AAm(Mn=3.5×106)水溶液(塩酸でpH3
に調整、この溶液はオートクレーブ処理後、再溶解した
もの)を、コラーゲンとPNIPAAmの混合比が1対
9になるように混合し、キャスティング溶液を調整し
た。このキャスティング溶液の400μmを、市販のφ
35ディッシュ(Falcon #3001、日本ベクトン製)に分
注し、すばやく均一にのばしてコーティングした。その
後、10℃のインキュベータ内で5時間乾燥させた。乾
燥後のコーティング層の厚みは約2μmであった。イン
キュベーターからディッシュを取り出し、クリーンベン
チ内の殺菌用紫外線ランプ(NEC、15W、254m
m)から50cm離れた位置で、ディッシュに20分間紫
外線を照射した。この時の紫外線の強度は、約170μ
W/cm2であった。またこの時、ディッシュ表面の約半
分をアルミホイルでおおい、紫外線があたらないように
した。これらの操作は無菌的な環境で行われた。このデ
ィッシュにpH3の蒸留水(37℃)を2ml加え、37
℃で2時放置した。その後、この蒸留水をとり除き、ク
マジーブリリアントブルー(R−250)(37℃)
(第一化学薬品(株)製)でコラーゲンを染色した。一
時間後、37℃の脱色液(酢酸:メタノール:水=1:
1:8)で洗浄し、未反応の染色液を取り除いた。37
℃で乾燥した後、紫外線照射部分と未照射部分の染色の
程度を比較した。その結果は図1に示す通りであった。
未照射部分は非常に淡く青色に染色されただけだが、照
射部分は濃紺に染色されており、コラーゲンに架橋が導
入されて不溶化されていることが証明された。 (比較例1)実施例1と同様の操作でPNIPAAmだ
けの0.5%溶液を400μmコーティングし、同様の条
件で紫外線照射して培養評価を行った。
【0047】以下には、培養評価実験の内容を示す。ヒ
ト真皮由来の線維芽細胞をダルヘッコ改変イーグル培地
(以下D−MENという;GIBCO社製、10%牛胎
児血清含有)を用いて、最終濃度が約2×105細胞/m
lになるような細胞分散液を作製し、37℃に保温し
た。あらかじめ保温プレート(マイクロウォームプレー
TM、(株)北里サプライ社製)を用いて約37℃に保
温しておいたコーティングしたディッシュ中に、該37
℃の細胞分散液を2ml注入し、37℃の空気/5%炭酸
ガスインキュベータ中で3日間培養した。3日後、イン
キュベータからディッシュをとりだし、あらかじめ37
℃に保温しておいた保温プレート上に移し、位相差顕微
鏡下で細胞の接着、増殖性について観察を行った。
【0048】また、剥離性についてはディッシュを氷上
に移し、約3分放置した後、位相差顕微鏡によって観察
した。
【0049】この実験に用いたディッシュには、細胞は
まったく接着していなかった。
【0050】またこのPNIPAAmの溶解性も、未照
射のものとまったく差異がなかった。(実施例2)実施
例1に示した方法と同様の方法で、コラーゲンとPNI
PAAmの混合比が1対19になるようにφ35ディッ
シュにコーティングした。乾燥後のコーティング層の厚
みは約2μmであった。このディッシュに実施例1と同
様の条件で紫外線を照射し、比較例1と同様の条件で培
養評価実験を行った。細胞の接着、培養性は非常に良好
で、コンフルエントの状態であった。
【0051】このディッシュをただちに氷の上にのせ、
約3分間培地を冷却した。すると細胞は基材より剥離
し、細胞のシートとして回収することができた。
【0052】コントロール実験として、コーティングな
しの市販の組織培養プラスチックディッシュを用いて、
上記と全く同様の細胞培養実験を行った。細胞はコンフ
ルエントに増殖していたが、ディッシュを冷却しても、
細胞のディッシュ底面からの剥離は全く認められなかっ
た。 (比較例2)実施例2と全く同様にコーティングしたデ
ィッシュを、紫外線を照射しないで培養評価実験に使用
した。実験条件は比較例1と同様にした。細胞は基材に
まったく接着していなかった。 (実施例3)実施例1に示したコーティング方法と紫外
線照射条件で、コラーゲンとPNIPAAmの比だけ
を、1対1から1対199まで変化させ、培養評価実験
に用いて評価を行った。結果は図2に示すとおりであっ
た。なお、表に示した結果は目視による観察結果に基づ
き、以下の式を用いて算出した。
【0053】
【数1】 この紫外線の照射条件では、コラーゲンとPNIPAA
mの混合比は1対12から1対49の範囲で細胞の接
着、増殖性と剥離性が良好であった。 (実施例4)実施例1に示したコーティング方法と同様
にコラーゲンとPNIPAAmの混合比1対9のディッ
シュを多数作製し、紫外線の照射量を変化させて培養評
価実験に用いた。ここで言う照射量とは、照射強度×照
射時間で求めた値を言う。
【0054】結果は図3に示す通りであった。このコラ
ーゲンとPNIPAAmの混合比では紫外線照射量50
0〜1500[J/m2]の範囲で細胞の接着、増殖性と剥
離性が良好であった。 (実施例5)実施例4と同様の実験を、コラーゲンとP
NIPAAmの混合比1対19のディッシュについても
行った。コーティング方法は、実施例1と同様にした。
結果を図4に示す。この混合比では紫外線照射量700
〜4000[J/m2]の範囲で細胞の接着、培養性と剥離
性が良好であった。 (実施例6)実施例2と全く同様の方法で、分子量の異
なる3種類(Mn=2.0×10、3.5×10
6.8×10)のPNIPAAmを用い、コラーゲン
とPNIPAAmの混合比1対19で、ディッシュにコ
ーティングした。紫外線照射条件は実施例1と同様にし
た。
【0055】比較例1の条件で培養評価実験を行った。
結果は表1に示す通りであった。
【0056】 (表1) PNIPAAmの分子量 細胞の接着、増殖性 細胞の剥離性 2.0×10 100% 100% 3.5×10 100% 70%1) 6.8×10 100% 20%2) 1)オンアイス3分後、室温で約15分放置するとすべ
て剥離した。
【0057】2)オンアイス3分後、室温で約30分放
置しても、これ以上剥離しなかった。 このように、分子量、6.8×10のものは、細胞の
剥離性が非常に悪かったが、2.0×10と3.5×
10のものは、非常に良好な結果が得られた。 (実施例7)実施例2とまったく同様の方法でコーティ
ングし、紫外線を照射した。ただし、コラーゲンとPN
IPAAmの混合比は1対19で、乾燥後のコーティン
グ層の厚みが0.2、0.5、1.0、1.5、2.0、3.
0、4.0になるようにコーティングした。これらのデ
ィッシュを比較例1の条件で培養評価実験を行った。結
果は表2に示す通りであった。
【0058】 (表2) コーティング層の厚み 細胞の接着、増殖性 細胞の剥離性 0.2μm 100% 20% 0.5μm 100% 60% 1.0μm 100% 100% 1.5μm 100% 100% 2.0μm 100% 100% 3.0μm 100% 100% 4.0μm 100% 100% このようにコーティング層の厚みが、0.5以上であれ
ば、ほぼ良好な結果となった。 (実施例8)実施例2の方法と同様にコラーゲンとPN
IPAAmの混合比1対19のキャスト溶液を作った。
これらのキャスティング溶液をオートマチックフィルム
アプリケーター((株)安田精機製作所製)とベーカー
式アプリケーター((株)安田精機製作所製)で、コロ
ナ処理したポリエステルフィルム(厚さ100μm、ユ
ニチカ製)上に、乾燥後のコーティング厚みが2.0μ
mになるようにコーティングした。コーティングされた
フィルムは10℃に設定した、低温インキュベーター
(LIT−600D、東京理化器機(株)製)中で乾燥
を行った。乾燥後、実施例2と同じ条件で紫外線照射し
た後、φ34に打ち抜き、ファルコンTM組織培養用プラ
スチックディッシュ(3001、日本ベクトン・デイキ
ンソン(株)製)に入れ、さらに、φ33のポリカーボ
ネート製リング(滅菌済)でコーティングフィルムを押
えて培養評価実験に用いた。結果は細胞の接着、増殖、
剥離性ともに非常に良好であった。 (実施例9)実施例8と同じキャスティング溶液を同様
の方法で、セルロースの透析膜(VISKASE SALES CORP
製)にコーティングした。この膜を同様に紫外線照射
し、同様に処理して培養評価実験に用いた。結果は細胞
の接着、増殖、剥離性ともに非常に良好であった。 (実施例10)実施例2と比較例1と2と同様の例を、
PNIPAAmの代わりにN−イソプロピルアクリルア
ミドとブチルメタクリレート(90/10)のランダム
共重合体(LCST=15.5℃、Mn=1.6×1
)を用いて行い、同様の結果を得た。 (実施例11)実施例2と比較例1と2と同様の例をP
NIPAAmのかわりにN−イソプロピルアクリルアミ
ドとブチルメタクリレートとN,N−ジメチルアミノエ
チルメタクリレート(74/5/21)のランダム共重
合体(LCST=23℃、Mn=3.2×10)を用
いて行い、同様の結果を得た。 (実施例12)実施例8と同様の方法を行い、まずPN
IPAAmのみのコーティング層を形成させ、その上
に、コラーゲンのコーティング層を形成させた。各コー
ティング層の厚みは約1.9μmと0.1μmになるように
した。このフィルムを実施例8と同様に処理し、培養評
価実験に用いた。
【0059】結果は細胞の接着、増殖、剥離性ともに良
好であった。 (実施例13)0.3%(W/V)タイプIVコラーゲ
ン溶液(牛胎盤由来、(株)高研製)と、ラミニン溶液
(マウス由来、(株)高研製)と実施例1で用いたPN
IPAAmの溶液を、重量比が1対0.1対19になる
ように混合し、実施例2と同様にディッシュにコーティ
ングし、紫外線照射(ただし照射時間10分とした)
し、培養評価実験に用いた。
【0060】ヒト臍帯静脈由来血管内皮細胞と199培
地(GIBCO社製20%血清含有)を用い、その他の
条件は、比較例1と同様に行った。
【0061】結果は細胞の接着、増殖、剥離性ともに良
好であった。
【0062】
【発明の効果】本発明の細胞培養用基材を用いることに
よって、細胞の回収、継代操作の重大な問題であった脱
離剤による細胞機能障害や、洗浄操作などによる工程の
複雑化に伴う汚染の危険性を回避できるようになった。
したがって、本発明の細胞培養用基材を用いれば、細胞
を高機能下に維持したままで簡便な操作により再現性よ
く回収、継代することができるため、多くの有用な細胞
産生物の製造が可能になった。
【0063】また、本発明の製造方法を用いれば、性能
が安定した細胞培養用基材を簡便な方法で製造すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】コラーゲンとPNIPAAmの混合比が1:9
のコーティングに、紫外線を部分的に照射して、クマジ
ーブリリアントブルー(R−250)で染色したもので
ある。
【図2】コラーゲンとPNIPAAmの混合比と、細胞
の接着、増殖性および剥離性の関係を示すグラフであ
る。
【図3】コラーゲンとPNIPAAmの混合比が1:9
の試料に対する紫外線照射量と、細胞の接着、増殖性お
よび剥離性の関係を示すグラフである。
【図4】コラーゲンとPNIPAAmの混合比が1:1
9の試料に対する紫外線照射量と、細胞の接着、増殖性
および剥離性の関係を示すグラフである。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年3月4日
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正内容】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12N 11/06 11/08 A (72)発明者 土田 路子 神奈川県厚木市戸室671−1 SAT I II ATSUGI 306 (72)発明者 竹澤 俊明 神奈川県伊勢原市東成瀬31−15 ニフティ 34−302 (72)発明者 森 有一 神奈川県横浜市金沢区釜利谷町1642−212 B−4

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】LCSTを有する温度感応性高分子化合物
    と一部または全部が架橋されている細胞接着性物質とか
    らなる細胞培養用基材。
  2. 【請求項2】(a)細胞接着性物質と温度感応性高分子
    化合物を含有する層を形成する工程 (b)この層に架橋を導入する工程 からなる請求項1の細胞培養基材の製造方法。
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