JP5638173B1 - 基材の被膜形成方法 - Google Patents

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Abstract

プラスチック等の熱変形し易い基材に対しても適性を有し、簡便で生産性に優れ、また、機能性の持続性にも優れた、基材の表面を改質して機能性を付与するための被膜形成方法を提供することを課題とする。イソシアネート基含有不飽和化合物によるプライマー層を形成し、ついで機能性付与基含有不飽和化合物及び光重合開始剤を含有する機能性付与層を形成した後、活性エネルギー線を照射することを特徴とする被膜形成方法により前記課題を解決する。

Description

[関連出願]
本出願は、2013年2月25日に出願された、日本国特許出願第2013−034530号明細書、及び、2013年7月18日に出願された、日本国特許出願第2013−149636号明細書(それらの開示全体が参照により本明細書中に援用される)に基づく優先権を主張する。
本発明は、基材の表面を改質して機能性を付与するための被膜形成方法に主に関する。
従来、無機基材、プラスチック基材等の有機基材等に様々な機能を付与する試みがなされてきた。例えば、プラスチック基材表面を親水化するには、火炎処理、コロナ処理、プラズマ処理等を行って基材表面に極性基を導入する方法が知られている。
しかしながら、このような物理的処理により極性基を導入する方法では、導入された極性基により付与された親水性等の機能性が経時劣化し、持続性の点において問題があった。
特許文献1には、フッ素系シランカップリング剤と、非水系の溶媒と、気液界面の表面張力を下げる界面活性剤とを含むことを特徴とする防汚塗料が開示されている。しかしながらこの防汚塗料を用いる方法は、無機系の基材に比して、有機系の基材に適用する場合に付着性が不十分であるという問題があった。
特許文献2には、基材密着性の良好な表面層を有する物品を製造する方法として、基材上に積層された、光重合開始部が化学的に結合した高分子からなる下塗り層の表面に、機能性モノマーを接触させた状態で紫外線を照射し、該下塗り層に機能性モノマーをグラフト重合させることを特徴とする方法が開示されている。
しかしながら、この方法は、下塗り層の厚みが厚く(乾燥状態で0.1〜20μm)、基材本来の質感等が損なわれるため、仕上がり外観が低下しやすく好ましくない。
また、特許文献3には、無機または有機基材上に、優れた密着性を有する被覆を製造する方法として、光硬化性塗料を用いた特に優れた密着性を有する被覆である、少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する光開始剤を、被覆しようとする基材表面にグラフト反応させ、このようにしてグラフト層を付与した基材に光硬化性塗料を塗布し、そしてこれを硬化させるという方法が開示されている。
しかしながら、この方法は、上記光開始剤のグラフト反応時のラジカルが有効に存在可能な時間が極めて短時間であり、酸素による硬化阻害の影響を受けやすく、また、気相反応を用いるものであるため、大きい基材や固定化された基材において、作業性の面において難点があった。
また、グラフト反応時に発生する熱により、プラスチック等の熱に弱い基材に適用した場合、基材が熱変形するという問題もあった。
特開2011−207924号公報 特開平9−77891号公報 特表2002−528568号公報
本発明は上記事情を勘案してなされたものであり、プラスチック等の熱変形し易い基材に対しても適性を有し、簡便で生産性に優れ、また、機能性の持続性にも優れた、基材の表面を改質して機能性を付与するための被膜形成方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、基材にイソシアネート基含有不飽和化合物によるプライマー層を形成し、ついで機能性付与基含有不飽和化合物及び光重合開始剤を含有する機能性付与層を形成した後、活性エネルギー線を照射する被膜形成方法によれば、上記目的を達成できることを見出した。中でも、イソシアネート基含有不飽和化合物による層を形成する基材として、プラズマ、コロナ放電、火炎、研磨等による処理を行ったものが好適に使用できることを見出した。斯かる発見に基づきさらに鋭意工夫を重ねることで、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
項1、基材上に、
工程(1):イソシアネート基含有不飽和化合物を含有する組成物(1)を使用して、プライマー層を形成する工程、
工程(2):前記工程(1)でプライマー層が形成された基材上に、機能性付与基含有不飽和化合物及び光重合開始剤を含有する組成物(2)を使用して、機能性付与層を形成する工程、及び
工程(3):前記工程(1)及び(2)により、プライマー層及び機能性付与層が形成された基材上に、活性エネルギー線を照射する工程、
を順次行うことを特徴とする基材の被膜形成方法。
項2、基材が、表面上にイソシアネート基と反応性を有する基を有する、項1に記載の方法。
項3、イソシアネート基と反応性を有する基が水酸基である、項2に記載の方法。
項4、工程(1)の前に、下記の工程(0)を含み、
工程(1)において、工程(0)で処理された基材上にプライマー層を形成する、項1に記載の方法:
工程(0):プラズマ、コロナ放電、活性エネルギー線、火炎処理及び研磨処理から選ばれる少なくとも1種の処理を行う工程。
項5、イソシアネート基含有不飽和化合物の重量平均分子量が、100〜4000である、項1〜4のいずれか1項に記載の被膜形成方法。
項6、イソシアネート基含有不飽和化合物が、分子内に不飽和基を2個以上有することを特徴とする、項1〜5のいずれか1項に記載の被膜形成方法。
項7、工程(3)より前は、プライマー層は、未硬化状態であることを特徴とする、項1〜6のいずれか1項に記載の被膜形成方法。
項8、組成物(2)がさらに、機能性付与基含有不飽和化合物以外の不飽和化合物を含有する、項1〜7のいずれか1項に記載の被膜形成方法。
項9、項1〜8のいずれか1項に記載の被膜形成方法により被膜が形成された基材。
本発明の被膜形成方法は、特に表面に水酸基などのイソシアネート基と反応性を有する基を有する基材に対して好適な方法である。本発明の好ましい態様においては、基材の表面上の水酸基(特に、プラズマ、コロナ放電、火炎、研磨等による処理により生成したもの。)と、工程(1)のプライマー層のイソシアネート基含有不飽和化合物のイソシアネート基との反応により、比較的低温(室温〜120℃程度)で、基材との付着性が良好な付着層(接着層)を形成させることができる。
さらに、機能性付与基含有不飽和化合物及び光重合開始剤を含有する機能性付与層を形成し、活性エネルギー線を照射することにより、機能性付与基含有不飽和化合物の不飽和基とプライマー層のイソシアネート基含有不飽和化合物の不飽和基とが反応することにより、機能性付与層はプライマー層と強固に結合される。機能性の付与は、所望の機能性に応じた機能性付与基を有する機能性付与基含有不飽和化合物を選択して適用することにより、容易に基材の表面を改質して所望の機能性を付与することができるという効果を奏することができる。
また、本発明の被膜形成方法により形成された被膜は、付着性が良好であり、強固に基材に付着することとなるので、基材表面に対し、均一且つ持続性に優れた改質を簡便に行うことが可能となる。
以下、本発明の基材の皮膜形成方法について、さらに詳細に説明する。
本発明の被膜形成方法(以下、「本方法」と略称する場合がある)は、
基材上に、
工程(1):イソシアネート基含有不飽和化合物を含有する組成物(1)を使用して、層(A)(プライマー層)を形成する工程、
工程(2):前記工程(1)でプライマー層が形成された基材上に、機能性付与基含有不飽和化合物及び光重合開始剤を含有する組成物(2)を使用して、機能性付与層を形成する工程、及び
工程(3):前記工程(1)及び(2)により、プライマー層及び機能性付与層が形成された基材上に、活性エネルギー線を照射する工程、を順次行うことを特徴とするものである。
本発明の好ましい態様の1つは、
工程(0):プラズマ、コロナ放電、活性エネルギー線、火炎処理及び研磨処理から選ばれる少なくとも1種の処理を行う工程、
工程(1):前記工程(1)で処理された基材上に、イソシアネート基含有不飽和化合物を含有する組成物(1)を使用して、プライマー層を形成する工程、
工程(2):前記工程(1)でプライマー層が形成された基材上に、機能性付与基含有不飽和化合物及び光重合開始剤を含有する組成物(2)を使用して、機能性付与層を形成する工程、及び
工程(3):前記工程(1)及び(2)により、プライマー層及び機能性付与層が形成された基材上に、活性エネルギー線を照射する工程、を順次行うことを特徴とする被膜形成方法である。
基材
本発明において、基材は表面を改質して機能性を付与する対象となる。基材としては、特に制限はなく、有機材料、無機材料、或いは、有機と無機とのハイブリッド材料のいずれであってもよい。本発明における基材としては、有機高分子化合物を含む基材であることが好ましい。
基材を構成する有機材料としては、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−1、4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1、2−ジフェノキシエタン−4、4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレートなどのようなポリエステル樹脂、エピコート(商品名:油化シェルエポキシ(株)製)などの市販品に代表されるエポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリウレタン樹脂等、各種の繊維強化プラスチック材料(Fiber Reinforced Plastics:以下FRP材料又は単にFRPという。)などのプラスチック材料等を挙げることができる。
各種のFRPは公知であり、プラスチック(マトリックス樹脂)に強化繊維を含めることにより、強度を向上させた材料を主に指す。マトリックス樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂;アクリル樹脂などの熱可塑性樹脂不飽和を用いることができる。強化繊維としては、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維などを単独で又は2種以上併用して用いることができる。FRPの成形方法としては、公知のものを使用することができ、金型を用いて製造するシートモールディングコンパウンド(SMC)成形法、レジンインフュージョン(RIMP)成形法、プリプレグ/オートクレーブプレス法、スプレーアップ/RTM(Resin Transfer Molding)成形法等が挙げられる。
また、その他の有機材料としては、セルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリアミド、ポリスチレン(例、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、及びポリエーテルケトン等を挙げることができる。
基材の厚みは、使用目的に応じて選択され、特に限定されないが、一般的には、10μm〜10cm程度である。
基材はさらに表面上(基材の1の面、あるいは2以上の面(例えば、表面、裏面、存在する場合は1または複数の側面から選択される2以上の面))に塗膜、ゲルコート層等が形成されたものであってもよい。本明細書においては、基材の表面上に形成された塗膜、ゲルコート層等を含めて「基材」と呼ぶ。
基材の表面上に塗膜が形成されている場合、塗膜は1層であっても、2層以上の複層であってもよい。上記基材上に形成される塗膜としては、例えば、公知の熱硬化性塗料組成物、活性エネルギー線硬化性塗料組成物、活性エネルギー線及び熱硬化性塗料組成物等をいずれも使用できる。
熱硬化性塗料組成物としては、例えば、架橋性官能基を有する基体樹脂及び硬化剤を含有する有機溶剤型、水性、粉体型等の形態の塗料組成物を挙げることができる。基体樹脂が有する架橋性官能基としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、シラノール基等を挙げることができ、基体樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂などを挙げることができる。硬化剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、カルボキシル基含有化合物、カルボキシル基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、エポキシ基含有化合物などを挙げることができる。なかでも、水酸基含有樹脂と架橋剤とを構成成分とする塗料、酸基含有樹脂とエポキシ基含有樹脂とを構成成分とする塗料等から得られる塗膜が好ましい。
ゲルコートとは、基材の表面の凹凸などの平滑化、意匠性の向上、紫外線の遮断等に用いられるものである。ゲルコートを形成するための樹脂(ゲルコート樹脂)としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、硝化綿(ニトロセルロース)系樹脂、またはそれに適宜顔料、染料、離型剤等を混合したものなどを好適に使用することができる。
ゲルコート層が表面に形成された基材の具体例として、ゲルコート層が形成されたFRPが例示される。ゲルコート層の塗布方法としては、特に制限されず、例えば、ハンドレイアップ法、スプレーアップ法、型内被覆方法(インモールドコート法)により一体成形体をとして製造する方法など公知の方法が挙げられる。具体的には、型(例えば、金型)の内面に、予め外板の表面となりうるゲルコート樹脂材を塗布し、その後にFRP基材を積層させて硬化させて得る方法や、FRP基材を作成してからゲルコート樹脂材を塗布して硬化させる方法などが例示される。
基材は、その表面にイソシアネート基と反応性を有する基を有する。イソシアネート基と反応性を有する基としては、水酸基、カルボキシル基等が例示され、水酸基が特に好ましい。イソシアネート基と反応性を有する基は、1種であっても2種以上であってもよい。
上記イソシアネート基と反応性を有する基は、基材が元来有するものであっても、別途の処理により生成するものであってもよい。無論、基材が元来有するものと、別途の処理により生成するものとの両方が混在することも妨げられない。基材の表面上に塗膜、ゲルコート層などが形成されている場合は、イソシアネート基と反応性を有する基は、塗膜、ゲルコート層等が元来有する、あるいは、後記の工程(0)などの別途の処理により生成するものであってもよい。無論、塗膜、ゲルコート層等が元来有するものと、別途の処理により生成するものとの両方が混在することも妨げられない。
工程(0)
本発明の皮膜形成方法において、必須工程である工程(1)の前に、表面を改質して機能性を付与する対象となる基材に対し、プラズマ、コロナ放電、活性エネルギー線、火炎処理、研磨処理などから選択された少なくとも1種の物理的方法による処理(物理的処理)を行うことができる。これらの物理的処理は必要に応じて2種以上を併用して行うこともできる。
本発明の皮膜形成方法において、工程(1)の前に工程(0)を行うことは、基材と後述のプライマー層との付着性が向上するとの観点、基材の濡れ性が向上するとの観点などから好ましい。本発明を束縛するものではないが、以下の点に起因すると考えられる:(i)基材に対し上記物理的処理(特に、プラズマ、コロナ放電、活性エネルギー線及び火炎処理。)を行うことにより、当該基材の表面が活性化され、付着性及び/又は濡れ性が向上する。具体的には、例えば、官能基(水酸基、カルボキシル基等)が生成する。官能基は、好ましくはイソシアネート基と反応性を有し、かつ、基材表面の濡れ性向上に寄与する基である。(ii)基材に対し上記物理的処理(特に、研磨処理。)を行うことにより、プライマー層との付着を阻害するものが除去され、基材の濡れ性が向上する。
なお、プラズマ、コロナ放電、活性エネルギー線、火炎などの表面処理により、大気に接する表面の高分子層の結合の主鎖や側鎖を切り離され、切り離された高分子表層はラジカル状態となり、他のラジカル種(例えば、空気中であれば酸素ラジカルやオゾン)が主鎖や側鎖と再結合することにより、水酸基、カルボニル基等が生成すると考えられる。
工程(0)で適用される物理的処理は、プラズマ、コロナ放電、活性エネルギー線、火炎処理及び研磨処理から選択され、いずれの物理的処理を行うかについては、処理を行う基材の材質に応じて適宜選択することができる。
以下、本工程に適用することができる各物理的処理について詳細に説明する。
<プラズマ処理>
プラズマ処理は、具体的には、例えば、東芝メカニクス(株)社製のマイクロプラズマ処理装置TMP−7048A、TMW−7407、TMZ−9602−A、IPC社製の200S高周波プラズマ処理装置、ヤマト科学(株)社製のPR−510、PDC210、及びウェッジ(株)社製のPS−1200AW等を用いて行うことができる。
プラズマ処理を行う場合の処理量は、単位面積当たりのエネルギー(J/m)で表すことができる。本発明における処理量としては、プライマー層との付着性及び濡れ性向上の観点から、30〜3000J/m、特に、40〜2000J/mの範囲内であることが好ましい。
プラズマ処理を行う場合の処理量は、基材の種類等に応じて設定することができる。
<コロナ放電処理>
コロナ放電処理は、市販のコロナ処理機、具体的には例えば、ピラー社製のソリッドステートコロナ処理機、SOFTAL社製のTreating Generator、及びVETAPHONE高周波インパルス表面処理機(例えば、T−2000、T−4000)等を用いて行うことができる。
コロナ放電処理を行う場合の処理量は、単位面積当たりのエネルギー(J/m)で表すことができる。本発明における処理量としては、プライマー層との付着性及び濡れ性向上の観点から、30〜3000J/m、特に、40〜2000J/mの範囲内であることが好ましい。
コロナ放電処理を行う場合の処理量は、基材の種類等に応じて設定することができる。
<活性エネルギー線処理>
活性エネルギー線処理の活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、電磁波等を挙げることができる。
(紫外線処理)
紫外線処理は、具体的には例えば、エキシマーレーザー、高圧水銀灯、アーク灯等の光源を用いて行うことができる。
紫外線処理を行う場合の処理量は、深さ方向のエッチング量Åで表すことができる。本発明における処理量としては、プライマー層との付着性及び濡れ性向上の観点から、10〜100Å、特に、30〜70Åの範囲内であることが好ましい。
紫外線処理を行う場合、露光エネルギー、露光時間、照射距離等を、上記処理量とするための条件は、基材の種類等に応じて設定することができる。
(電子線処理)
電子線処理は、市販の電子線描写装置、具体的には例えば、日立製作所(株)製のHL750等を用いて行うことができる。
電子線処理を行う場合の処理量は、加速電圧と電子流とにより表すことができる。本発明における処理量としては、プライマー層との付着性の観点から、加速電圧は10kV〜300kV、特に、20kV〜200kVの範囲内であることが好ましい。また、電子流は5〜500mA、特に、10〜300mAの範囲内であることが好ましい。
電子線処理を行う場合の処理量は、基材の種類等に応じて設定することができる。
<火炎処理>
バーナーなど火炎噴射装置を使用して火炎を基材表面に吹き付けることにより行うことができる。処理の程度は、プライマー層との付着性及び濡れ性向上の観点から、基材の水接触角が、50°以下となる程度に行うことが好ましい。
<研磨処理>
研磨には、それ自体既知の、研磨紙や、研磨布又はこれらを器具に取り付けたもの(サンダー)やバフ等を使用することができる。研磨時に研磨剤などを使用してもよい。研磨処理は、基材が成形体である場合に、表面に残存する離型剤などを除去するための研磨処理であってもよい。
研磨の程度は、プライマー層との付着性及び濡れ性向上の観点から、基材の水接触角が、50°以下となる程度に行うことが好ましい。
本明細書において、水接触角の測定は、例えば、JIS R3257(1999)に記載の静滴法に準じて行うことができる。具体的には、協和界面科学社製のCA−X型接触角計を用いて、23℃、65%RHの雰囲気下で脱イオン水10mgの水滴を試験板上に滴下し、滴下から1分後の接触角を測定することにより行うことができる。
工程(0)における物理的処理としては、生産性及び処理の簡便さの観点から、プラズマ処理、コロナ放電処理、火炎処理、研磨処理であることが好ましい。特にプラズマ処理、コロナ放電処理等の処理に比して、基材に対して、比較的距離のある状態でも処理を行うことができ、作業性の面で有利であるという観点からは、火炎処理を好適に使用することができる。
工程(1)
工程(1)では、基材上に、イソシアネート基含有不飽和化合物を含有する組成物(1)を使用して、プライマー層を形成する。工程(1)に先立ち前記工程(0)を行う場合は、前記工程(0)の物理的処理が施された基材上に、プライマー層を形成する。
工程(1)で形成されるプライマー層は、後記工程(2)で形成される機能性付与層と基材の中間層として、及び、基材と機能性付与層との接着層として形成されるものである。
イソシアネート基含有不飽和化合物中のイソシアネート基が、基材が表面に有する水酸基等(前記工程(0)の物理的処理により生成したものが例示される。)の、イソシアネート基と反応性を有する官能基と反応することにより、基材とプライマー層が結合し、さらに、最終工程である後記工程(3)により、本発明の被膜形成方法を完結させることにより、イソシアネート基含有不飽和化合物中の不飽和基が、後記工程(2)で形成される機能性付与層の構成成分である不飽和化合物中の不飽和基と反応することにより、プライマー層と機能性付与層とが結合する。
以上により、基材、プライマー層及び機能性付与層が一体となって強固に結合されることとなる。
(イソシアネート基含有不飽和化合物)
イソシアネート基含有不飽和化合物は、分子内に1個以上のイソシアネート基及び1個以上の不飽和基を有する化合物である。
不飽和基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基等の重合性不飽和基を挙げることができる。重合性不飽和基とは、ラジカル重合しうる不飽和基を意味する。
これらの不飽和基のうち、反応性に優れる観点から、アクリロイル基、メタクリロイル基が好ましい。
上記イソシアネート基含有不飽和化合物(以下、「イソシアネート基含有重合性不飽和モノマー」と記載する場合がある)としては、例えば、以下の化合物を挙げることができる。
イソシアネート基と重合性不飽和基とをそれぞれ1個有する化合物としては、例えば、イソシアネートメチル(メタ)アクリレート、イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、イソシアネートプロピル(メタ)アクリレート、イソシアネートブチル(メタ)アクリレート、イソシアネートオクチル(メタ)アクリレート、p−メタクリロキシ−α,α’−ジメチルベンジルイソシアネート、m−アクリロキシ−α,α’−ジメチルベンジルイソシアネート、等のイソシアネートアルキル基を有する(メタ)アクリレート、m−又はp−イソプロペニル−α,α’−ジメチルベンジルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工社製、商品名「カレンズMOI」)、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工社製、商品名「カレンズAOI」)、商品名「カレンズMOI−EG」(昭和電工社製)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート1モルとジイソシアネート化合物1モルとの反応生成物、具体的には例えば、イソホロンジイソシアネートの如き(反応性の異なる)2つのイソシアネート基を有する化合物と(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等の水酸基含有重合性不飽和モノマーとの等モル付加反応により得られる化合物等を挙げることができる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの総称であり、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸の総称である。
イソシアネート基又は不飽和基を2個以上有する化合物としては、例えば、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の一部を水酸基含有不飽和化合物と反応させることにより得られる化合物を挙げることができる。
具体的には、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート及び多価アルコールと(メタ)アクリル酸の部分エステル(1個の水酸基を有するエステル)等の、水酸基含有(メタ)アクリレートと、ポリイソシアネート化合物あるいはイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーとの反応物等を挙げることができる。
より具体的には、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート2モルとトリイソシアネート化合物1モルとの反応生成物、トリオールのジ(メタ)アクリレート1モルとジイソシアネート化合物1モルとの反応生成物、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート1モルと、ジオールとジイソシアネート化合物を反応させて得られるイソシアネート基末端プレポリマー1モルとの反応生成物、等を挙げることができる。
上記水酸基含有不飽和化合物としては、
1分子中に水酸基及び重合性不飽和基をそれぞれ1個以上有する化合物であって、具体的には、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール、さらに、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート化合物;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート化合物等を挙げることができる。
上記ポリイソシアネート化合物としては、
1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であって、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート化合物及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物、アロファネート付加物;イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、1,3−ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ジ(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート化合物及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物、アロファネート付加物;キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトフェニル)スルホン、イソプロピリデンビス(4−フェニルイソシアネート)等の芳香族ジイソシアネート化合物及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアナトベンゼン、2,4,6−トリイソシアナトトルエン、4,4’−ジメチルジフェニルメタン−2,2’,5,5’−テトライソシアネート等の1分子中に3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキシレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、ポリアルキレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、グリセリン、ペンタエリスリトール等のポリオールの水酸基にイソシアネート基が過剰量となる比率でポリイソシアネート化合物を反応させてなるウレタン化付加物及びこれらのポリイソシアネートのビューレットタイプ付加物、イソシアヌレート環付加物等を挙げることができる。
これらは単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
イソシアネート基含有不飽和化合物として、原材料コストの観点から、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート環付加物と水酸基含有不飽和化合物とを反応させて得られる化合物を好適に使用することができる。
前記ポリイソシアネート化合物と水酸基含有不飽和化合物との反応は、ポリイソシアネート化合物と水酸基含有化合物とを反応させる際の公知の方法によって行うことができる。
上記反応は、通常有機溶液中で行うことができる。有機溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
反応温度は、通常、常温〜100℃程度、反応時間は1〜10時間程度で行うことができる。
上記反応においては、必要に応じてジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルヘキソエート、ジブチルスズサルファイト等の触媒を使用することができる。触媒量は、反応原料の総量に対して0.01〜1質量%、特に0.1〜0.5質量%であることが好ましい。
また、必要に応じてハイドロキノンモノメチルエーテル等の重合禁止剤を使用することもできる。重合禁止剤量は、反応原料の総量に対して0.01〜1質量%であることが好ましい。
イソシアネート基含有不飽和化合物はイソシアネート基を有するため、水酸基含有不飽和化合物とポリイソシアネート化合物との反応における両者の混合比は、通常、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基が水酸基含有不飽和化合物の水酸基に対して、当量比で過剰(イソシアネート基/ヒドロキシキル基>1.0)となる混合比となる。該混合比を調節することによりイソシアネート基含有不飽和化合物のイソシアネート基の濃度(イソシアネート当量)を調節することができる。
イソシアネート基含有不飽和化合物のイソシアネート当量は、基材との付着性向上等の観点から、50〜400の範囲内であることが好ましい。
ここで、本明細書において、イソシアネート当量とは、イソシアネート基1個あたりのモル質量である。イソシアネート基含有不飽和化合物の分子量をM、当該化合物1分子中に含まれるイソシアネート基の数をνとすると、イソシアネート当量とは、M/νで表わされる値である。
また、本明細書においてイソシアネート当量は、ジブチルアミンを用いた逆滴定により求められるイソシアネート当量である。逆滴定は、試料に過剰のジブチルアミンを加えて反応させ、滴定指示薬としてブロモフェノールブルーを用い残余のジブチルアミンを塩酸水溶液で滴定することにより行うことができる。
イソシアネート基含有不飽和化合物は機能性付与層との付着性向上等の観点から、不飽和基当量が30〜400、特に40〜200、さらに特に40〜150であることが好ましい。
ここで、本明細書において、不飽和基当量とは、不飽和基1個あたりのモル質量をいう。当該化合物の分子量をM、当該化合物1分子中に含まれる不飽和基の数をσとすると、不飽和基当量はM/σで表される値である。
また、本明細書において不飽和基当量は、不飽和基にドデシルメルカプタンを付加し、残余のドデシルメルカプタンをヨウ素溶液で逆滴定することにより求めることができる。
イソシアネート基含有不飽和化合物の分子量は、プライマー層の強度向上等の観点から、重量平均分子量が100〜4000、特に500〜2500であることが好ましい。
ここで本明細書において重量平均分子量は、溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(東ソー(株)社製、「HLC8120GPC」)で測定した保持時間(保持容量)を、ポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算した値である。カラムは、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」、「TSKgel G−2000XL」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1ml/分、検出器;RIの条件で行ったものである。
また、イソシアネート基含有不飽和化合物は、機能性付与層との付着性向上等の観点から、分子内に不飽和基を2個以上有する多官能のものを好適に使用することができる。
上記イソシアネート基含有不飽和化合物は単独であるいは2種以上を使用することができる。
組成物(1)は、上記イソシアネート基含有不飽和化合物を必須成分とするものである。
本発明において、組成物(1)は、基材と機能性付与層との接着層として寄与するものである。そのため、工程(1)において、組成物(1)によるプライマー層自体は、硬化していない状態(未硬化状態)であることが、最終的な仕上り外観及び意匠性の観点から好ましい。
したがって、組成物(1)においては、不飽和化合物として、イソシアネート基含有不飽和化合物以外の不飽和化合物は含有しないことが好ましい。
工程(1)において、プライマー層自体を未硬化状態とするための手段として、組成物(1)中に含まれるイソシアネート基含有不飽和化合物などの不飽和化合物の重合の進行が抑制される条件下で行うことが例示される。特に、不飽和化合物の重合が実質的に進行しない条件下であることが好ましい。
組成物(1)には、本発明の効果を損なわないことを限度として、イソシアネート基含有不飽和化合物の他、触媒、溶媒、消泡剤、乳化剤、界面活性剤、防汚剤、湿潤剤等の塗装の分野で通常使用される他の添加成分を適宜含有させることができる。
上記触媒は、組成物(1)によるプライマー層自体の硬化反応ではなく、基材の水酸基等のイソシアネート基と反応性を有する基と組成物(1)のイソシアネート基含有不飽和化合物のイソシアネート基との反応を促進し、基材と化学的に結合させ、付着性を向上させる目的で好適に使用されるものである。
このような触媒としては、通常のウレタン化反応の触媒を使用することができ、具体的には、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルヘキソエート、ジブチルスズサルファイト、ヘキソエートカルシウム、オクチル酸亜鉛等の触媒を挙げることができる。
触媒を使用する場合、触媒量としては、イソシアネート基含有不飽和化合物に対して、0.01〜0.5質量%、特に0.01〜0.1質量%の範囲内であることが好ましい。
組成物(1)は、溶融物、溶液、懸濁液、エマルションのいずれの形態であってもよいが、溶媒中にイソシアネート基含有不飽和化合物が溶解した溶液の形態であることが、生産性及び作業性の観点から好ましい。この場合、組成物(1)は、イソシアネート基含有不飽和化合物及び溶媒を含有する。
上記溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、石油系炭化水素等を挙げることができる。
上記溶媒のうち、イソシアネート基含有不飽和化合物の溶解性の観点からはエステル類を好適に使用することができる。基材がプラスチック等である場合は、石油系炭化水素を好適に使用することができる。
組成物(1)中のイソシアネート基含有不飽和化合物の含有量は、組成物(1)の総量に対して、0.01〜30質量%、特に、0.1〜20質量%、さらに特に、1〜15質量%の範囲内であることが好ましい。
組成物(1)によるプライマー層の形成は、蒸着、浸漬、噴霧、コーティング、ブラシ塗布、ナイフ塗布、ローリング、ローラー塗布、印刷、スピンコーティング及び流し込み等により行うことができる。
組成物(1)により形成されたプライマー層の乾燥状態での厚さは、付着性及び最終的な仕上り外観の観点から、1μm以下であることが好ましい。
形成されたプライマー層は、生産性及び作業性の観点から、加熱処理を施し、迅速に乾燥させて基材とプライマー層を結合(すなわち、基材の水酸基等、イソシアネート基と反応性を有する官能基とイソシアネート基含有不飽和化合物のイソシアネート基とを反応させる。)させることが好ましい。加熱処理によるプライマー層の乾燥は、この分野において公知の手法を適宜使用することができる。
具体的には、例えば、熱風、熱ガス、赤外線ヒーター、IRラジエータ、オーブン、熱ローラーおよびマイクロ波等を使用して行うことができる。
本発明においては、作業の容易性及び低温で行うことができること等の観点から、熱風、赤外線ヒーターなどにより乾燥、焼付を行うことが好ましい。
プライマー層に施す加熱処理の温度、すなわち乾燥の温度は、生産性、作業性及び基材の熱安定性等の観点から決定される。比較的低温の条件で乾燥を行うという観点から、室温〜120℃、特に室温〜100℃、さらに特に、室温〜90℃程度の温度で、15分間〜24時間、特に15〜30分間程度の時間で乾燥を行うことが好ましい。
上記加熱処理による乾燥等を行うことにより、基材とプライマー層とが化学的に結合を形成し、基材に結合した接着層であるプライマー層の形成が促進される。
必要に応じて基材と化学的に結合が形成されずに残存したイソシアネート基含有不飽和化合物等を除去することもできる。
上記残存物の除去は、例えば、溶剤浸漬、水やアセトン等による洗浄、乾燥等により行うことができる。残存物除去性の観点から、上記洗浄時に超音波などの手段を採用することもできる。
残存物の除去を行うことにより、基材と強固に結合したイソシアネート基含有不飽和化合物等のみが存在することとなり、基材との付着性がより強固なプライマー層を形成させることができる。
かくして、基材上にプライマー層が形成される。形成されたプライマー層は、乾燥状態であることが好ましい。本明細書において、乾燥状態とは、溶媒を除去した状態の硬化塗膜のことをいう、なお、硬化塗膜とは、JIS K 5600−1−1に規定された硬化乾燥状態、すなわち、塗面の中央を親指と人差指とで強く挟んで、塗面に指紋によるへこみが付かず、塗膜の動きが感じられず、また、塗面の中央を指先で急速に繰り返しこすって、塗面にすり跡が付かない状態の塗膜である。
工程(2)
工程(2)では、前記工程(1)で基材上に形成されたプライマー層上に、機能性付与基含有不飽和化合物及び光重合開始剤を含有する組成物(2)を使用して、機能性付与層を形成する。
機能性付与基含有不飽和化合物中の不飽和基は、プライマー層との付着と機能性付与層との共重合に寄与する。所望の機能性は、機能性付与基含有不飽和化合物中の機能性付与基を適宜選択することにより、最終的に基材に所望の機能性を付与することができる。
最終工程である後記工程(3)により、本発明の被膜形成方法を完結させることにより、基材、プライマー層及び機能性付与層が一体となって強固に結合した、表面が改質され新たに機能性が付与された基材を得ることができる。
(機能性付与基含有不飽和化合物)
機能性付与基含有不飽和化合物は、分子内に1個以上の不飽和基及び機能性付与基として1以上の不飽和基以外の官能基を有する化合物である。
不飽和基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基等の重合性不飽和基を挙げることができる。
これらの不飽和基のうち、反応性に優れる観点から、アクリロイル基、メタクリロイル基が好ましい。
本発明において、機能性付与基とは、基材に所望の表面特性を付与することができる機能を有する官能基のことである。
具体的には、例えば、
1)親水性を付与するための、親水性基、
2)撥水性/撥油性を付与するための、撥水性/撥油性基、
3)屈折率変動を付与するための、高い増分または低い増分の屈折を有する官能基、
4)紫外線吸収特性を付与するための、紫外線吸収性を有する官能基、
5)光安定性を付与するための、光安定性を有する官能基、
6)生物特性を付与するための、生物特性を有する官能基、
7)難燃性を付与するための、難燃性基、
8)帯電防止性を付与するための、帯電防止性基、
等を挙げることができる。
すなわち、本発明により基材に付与される機能性としては、1)親水性、2)撥水性/撥油性、3)屈折率変動、4)紫外線吸収特性、5)光安定性、6)生物特性、7)難燃性、8)帯電防止性等を挙げることができる。
上記の親水性基としては、例えばカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等の酸基;カルボキシベタイン、スルホベタイン、ホスホベタイン等のべタイン構造含有基;
ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシエチレン(オキシプロピレン)基等のポリオキシアルキレン基;
水酸基、アミド;
3級アミノ基、4級アンモニウム塩等を挙げることができる。
親水性基含有不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ金属塩、アミン塩及びアンモニウム塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ金属塩、アミン塩及びアンモニウム塩、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピルアクリレート、これらスルホン酸のアルカリ金属塩、アミン塩及びアンモニウム塩、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、これらリン酸のアルカリ金属塩、アミン塩及びアンモニウム塩;メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチル−N−(3−スルホプロピル)アンモニウムベタイン、メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−メチルカルボキシベタイン;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムブロマイド、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムジメチルホスフェート等を挙げることができる。
撥水性/撥油性基含有不飽和化合物としては、例えば、下記一般式(I)、(II)、(III)、(IV)及び(V)よりなる群から選ばれる少なくとも1種のフッ素含有不飽和化合物を挙げることができる。
CH=CRCOORRf・・・(I)
〔式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは−C2P−、−C(C2P+1)H−、−CHC(C2P+1)H−又は−CHCHO−、Rfは−C2n+1、−(CF)nH、−C2n−CF、−(CF)pOC2n2j+1、−(CF)pOC2m2iH、−N(C2P+1)COC2n+1、−N(C2P+1)SO2n+1である。但し、pは1〜10、nは1〜16、mは0〜10、iは0〜16、jは0〜10の整数である。〕
CF=CFOR ・・・(II)
(式中Rは炭素数1〜20のフルオロアルキル基を表わす。)
CH=CHR・・・(III)
(式中Rは炭素数1〜20のフルオロアルキル基を表わす。)
CH=CRCOOROCOCR=CH ・・・(IV)
〔式中、R、Rは水素原子又はメチル基、R、Rは−C2q−、−C(C2q+1)H−、−CHC(C2q+1)H−又は−CHCHO−、Rjは−C2tである。但し、qは1〜10、tは1〜16の整数である。〕
CH=CHRCOOCH(CH)CHOCOCR=CH・・・(V)
(式中、R、Rは水素原子又はメチル基、Rは−C2y+1である。但し、yは1〜16の整数である。)
上記のフッ素含有不飽和化合物としては、以下の具体例を挙げることができる。
一般式(I)で示されるモノマーとしては、例えば、CF(CFCHCHOCOCH=CH、CFCHOCOCH=CH、CF(CFCHCHOCOC(CH)=CH、C15CON(C)CHOCOC(CH)=CH、CF(CFSON(CH)CHCHOCOCH=CH、CF(CFSON(C)CHCHOCOCH=CH、CSON(CFCHCHOCOC(CH)=CH、(CFCF(CF(CHOCOCH=CH、(CFCF(CF10(CHOCOC(CH)=CH、CF(CFCH(CH)OCOC(CH)=CH、CFCHOCHCHOCOCH=CH、C(CHCHO)CHOCOCH=CH、(CFCFO(CHOCOCH=CH、CF(CFOCHCHOCOC(CH)=CH、CCON(C)CHOCOCH=CH、CF(CFCON(CH)CH(CH)CHOCOCH=CH、H(CFC(C)OCOC(CH)=CH、H(CFCHOCOCH=CH、H(CFCHOCOCH=CH、H(CF)CHOCOC(CH)=CH、CF(CFSON(CH)CHCHOCOC(CH)=CH、CF(CFSON(CH)(CH10OCOCH=CH、CSON(C)CHCHOCOC(CH)=CH、CF(CFSON(CH)(CHOCOCH=CH、CSON(C)C(C)HCHOCOCH=CH等が挙げられる。
また、一般式(II)及び(III)で表わされるフルオロアルキル化オレフィンとしては、例えばCCH=CH、CCH=CH、C1021CH=CH、COCF=CF、C15OCF=CF及びC17OCF=CFなどが挙げられる。
一般式(IV)及び(V)で表わされるモノマーとしては例えば、CH=CHCOOCH(CFCHOCOCH=CH、CH=CHCOOCHCH(CH17)OCOCH=CHなどを挙げることができる。
撥水/撥油性基含有不飽和化合物としては、また、Si−CH基もしくは−O−Si−CH基を有する不飽和化合物を挙げることができる。具体的には、ポリシロキサン鎖(分岐構造を有するものであってもよい)を有するアクリレートやメタクリレートであり、市販品では、例えば「サイラプレーンFM−0711」、「サイラプレーンFM−0721」、「サイラプレーンFM−0725」(いずれもJNC社製)等を挙げることができる。
屈折率変動基としては、ベンジル基、部分的もしくは完全にハロゲン化されたベンジル基、または部分的もしくは完全にハロゲン化されたアルカン、アルケンまたはアルキン基を挙げることができ、屈折率変動基含有不飽和化合物としては、例えば、ベンジルアクリレート、ペンタブロモベンジルアクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルメタクリレート、1H,1H−ヘプタフルオロブチルアクリレートおよびトリフルオロエチルアクリレート等を挙げることができる。
紫外線吸収性官能基含有不飽和化合物としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2´−ジヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2´−ジヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−(2´−ヒドロキシ−5´−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。
光安定性官能基含有不飽和化合物としては、例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等を挙げることができる。
生物特性を付与する官能基としては、例えば、防汚特性を有する基、生体系の成長を促進する基を挙げることができる。
防汚特性を有する基を含有する不飽和化合物としては、例えば、銅(II)メタクリレート、ジブチルスズマレエート、スズ(II)メタクリレート、亜鉛ジメタクリレート等を挙げることができる。
生体系の成長を促進する基としては、例えば、スクシンイミド、グルコシドおよび糖基を挙げることができる。生体系の成長を促進する基を有する不飽和化合物としては、N−アシルオキシスクシンイミドおよび2−メタクリルオキシエチルグルコシド等を挙げることができる。
難燃性基としては、完全にもしくは部分的に塩素化もしくは臭素化されたアルカンまたは窒素もしくはリン含有基を挙げることができる。
難燃性基含有不飽和化合物としては、フェニルトリブロモメチルスルホン、2,2,2−トリクロロ−1−[4−(1,1−ジメチルエチル)フェニル]エタノン、トリブロモネオペンチルメタクリレート、ビス(2−メタクリルオキシエチル)ホスフェートまたはモノアクリルオキシエチルホスフェート等を挙げることができる。
帯電防止性基としては、第三級アミノ、エトキシル化アミノ、アルカノールアミド、グリセロールステアレート、ソルビタンおよびスルホネート基等を挙げることができる。
帯電防止性基含有不飽和化合物としては、例えば、2−ジイソプロピルアミノエチルメタクリレート、3−ジメチルアミノネオペンチルアクリレートまたはオレイルビス(2−ヒドロキシエチル)アミン、ステアリルアクリレートおよび/またはビニルステアレート等を挙げることができる。
機能性付与基含有不飽和化合物が、前記組成物(1)の構成成分であるイソシアネート基含有不飽和化合物であることも妨げられない。
機能性付与基含有不飽和化合物は、プライマー層との付着性(プライマー層に含まれるイソシアネート基含有不飽和化合物との反応性)及び機能性付与層の硬化性の観点から、不飽和基当量が30〜500、特に100〜500であることが好ましい。
機能性付与基含有不飽和化合物の分子量は、不飽和基の反応性の観点から、重量平均分子量が100〜3000、特に100〜1000であることが好ましい。
また、機能性付与基含有不飽和化合物は、重合反応性の観点から、化合物中に機能性付与基を1個有するものを好適に使用することができる。
上記機能性付与基含有不飽和化合物は単独であるいは2種以上を使用することができる。
(光重合開始剤)
光重合開始剤は、活性エネルギー線を吸収して、フリーラジカル(中間体の形態でも)を発生する化合物の全て又は化合物の混合物である。
光重合開始剤としては、光化学的に活性化可能な化合物(たとえばベンゾイン)、発色団と共開始剤(たとえばベンゾフェノン及び第三級アミン)との組合せ及びこれらの混合物、増感剤と、共開始剤との(たとえばチオキサントンと第三級アミン)または発色団との(たとえばチオキサントンとアミノケトン)の組合せ、Hと鉄(II)塩との組合せ等のレドックス系、染料及びホウ酸塩及び/又はアミン等の電子輸送ペアー等を挙げることができる。
光重合開始剤として具体的には、例えば、ベンジル、ジアセチル等のα−ジケトン化合物;ベンゾイン等のアシロイン化合物;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のアシロインエーテル化合物;チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、チオキサントン−4−スルホン酸等のチオキサントン化合物;ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物;ミヒラーケトン化合物;アセトフェノン、2−(4−トルエンスルホニルオキシ)−2−フェニルアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、α,α’−ジメトキシアセトキシベンゾフェノン、2,2’−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−メトキシアセトフェノン、2−メチル〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、α−イソヒドロキシイソブチルフェノン、α,α’−ジクロル−4−フェノキシアセトフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン等のアセトフェノン化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(アシル)フォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;アントラキノン、1,4−ナフトキノン等のキノン;フェナシルクロライド、トリハロメチルフェニルスルホン、トリス(トリハロメチル)−s−トリアジン等のハロゲン化合物;ジ−t−ブチルパーオキサイド等の過酸化物等を挙げることができる。
光重合開始剤の市販品としては、例えば、イルガキュア(IRGACURE)−127、イルガキュア−184、イルガキュア−261、イルガキュア−369、イルガキュア−500、イルガキュア−651、イルガキュア−754、イルガキュア−819、イルガキュア−907、イルガキュア−CGI−1700、イルガキュア−2959(以上、BASF社製、商品名);ダロキュア(Darocur)−1173、ダロキュア−1116、ダロキュア−2959、ダロキュア−1664、ダロキュア−4043(以上、メルクジャパン社製、商品名);カヤキュアー(KAYACURE)−MBP、カヤキュアー−DETX−S、カヤキュアー−DMBI、カヤキュアー−EPA、カヤキュアー−OA(以上、日本化薬社製、商品名);ビキュア(VICURE)−10、ビキュア−55(以上、ストウファー社(STAUFFER Co., LTD.)製、商品名);トリゴナル(Trigonal)P1(アクゾ社(AKZO Co., LTD.)製、商品名);サンドレイ(SANDORAY)1000(サンドズ社(SANDOZ Co., LTD.)製、商品名);ディープ(DEAP)(アプジョン社(APJOHN Co., LTD.)製、商品名);カンタキュア(QUANTACURE)−PDO、カンタキュア−ITX、カンタキュア−EPD(以上、ウォードブレキンソプ社(WARD BLEKINSOP Co., LTD.)製、商品名)等を挙げることができる。
上記光重合開始剤は、単独で又は2種以上を使用することができる。
光重合開始剤は、重合反応により機能性付与基含有不飽和化合物のポリマー鎖に組込まれるとの観点から、不飽和基を含有する光重合開始剤が好ましい。
上記不飽和基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、ビニリデン基、アリル基及びビニルエーテル基等を挙げることができる。
光重合開始剤の量は、硬化性等の観点から、機能性付与基含有不飽和化合物の総量に対して、0.1〜20質量%、特に0.5〜5質量%の範囲内であることが好ましい。
組成物(2)は、上記機能性付与基含有不飽和化合物及び光重合開始剤を必須成分とするものであるが、機能性付与層の硬化性向上等の観点から、プライマー層との付着性及び機能性発現効果を阻害しない範囲で、機能性付与基含有不飽和化合物以外の不飽和化合物等も使用することができる。
機能性付与基含有不飽和化合物以外の不飽和化合物としては、単官能不飽和基含有化合物、多官能不飽和基含有化合物を挙げることができる。
単官能不飽和基含有化合物としては、例えば、一価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等が挙げられる。具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、α−クロルスチレン等のビニル芳香族化合物等を挙げることができる。
多官能不飽和基含有化合物としては、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等が挙げられる。具体的には、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート化合物;グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等のトリ(メタ)アクリレート化合物;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート化合物;その他、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。さらに、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、例えばポリイソシアネート化合物、ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレート及びポリオール化合物を原料として用い、イソシアネート基に対してヒドロキシル基が等モル量もしくは過剰になるような量で反応させて得ることができる。
上記機能性付与基含有不飽和化合物以外の不飽和化合物は単独で又は2種以上を使用することができる。
上記機能性付与基含有不飽和化合物以外の不飽和化合物のうち、機能性付与層の硬化性向上等の観点から、多官能不飽和基含有化合物を好適に使用することができる。
上記機能性付与基含有不飽和化合物以外の不飽和化合物は、機能性付与層の硬化性向上等の観点から、不飽和基当量が30〜700、特に100〜700の範囲内であることが好ましい。
機能性付与基含有不飽和化合物以外の不飽和化合物を使用する場合、その使用量は、機能性付与基含有不飽和化合物の総量に対して、5〜100質量%、特に、5〜50質量%の範囲内であることが好ましい。
組成物(2)は、溶融物、溶液、懸濁液、エマルションのいずれの形態であってもよいが、溶媒中に機能性付与基含有不飽和化合物及び光重合開始剤が溶解した溶液の形態であることが、生産性及び作業性の観点から好ましい。この場合、組成物(2)は、機能性付与基含有不飽和化合物、光重合開始剤及び溶媒を含有する。
組成物(2)には、本発明の効果を損なわないことを限度として、機能性付与基含有不飽和化合物、光重合開始剤及び必要に応じて使用される機能性付与基含有不飽和化合物以外の不飽和化合物の他、溶媒、消泡剤、乳化剤、界面活性剤、防汚剤、湿潤剤等の塗装の分野で通常使用される他の添加成分を適宜含有させることができる。
上記溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、水等を挙げることができる。
組成物(2)中の機能性付与基含有不飽和化合物の含有量は、組成物(2)の総量に対して、0.01〜30質量%、特に、0.1〜20質量%、さらに特に、1〜15質量%の範囲内であることが好ましい。
組成物(2)による機能性付与層の形成は、蒸着、浸漬、噴霧、コーティング、ブラシ塗布、ナイフ塗布、ローリング、ローラー塗布、印刷、スピンコーティング及び流し込み等により行うことができる。
組成物(2)により形成される機能性付与層の硬化後の厚さは、機能性付与、付着性及び最終的な仕上り外観の観点から、1μm以下であることが好ましい。
工程(3)
工程(2)の後、プライマー層及び機能性付与層が形成された基材上に、活性エネルギー線を照射することにより、基材、プライマー層及び機能性付与層が一体となって強固に結合した、表面が改質され新たに機能性が付与された基材を得ることができる。
活性エネルギー線としては、公知のものを使用することができる。具体的には、紫外線、可視光線、レーザー光(近赤外線レーザー、可視光レーザー、紫外線レーザー等)、マイクロ波、電磁波等を挙げることができる。
これらの活性エネルギー線のうち、経済性の観点から、紫外線を好適に使用することができる。
活性エネルギー線の照射は、前記工程(2)により形成された機能性付与層に存在する光重合開始剤が吸収することができる波長の電磁波を発する任意の光源を用いて行うことができる。このような光源は通常、波長200nm〜2000nmの範囲の電磁波を発するものである。通常のラジエータおよびランプに加えて、レーザーおよびLED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)も使用することができる。照射は電子ビームを用いて行うこともできる。全領域および/または一部を、例えば、マスクを介して照射してもレーザービームを用いて照射してもよい。その手段によって特定の領域だけの被膜の硬化を行うことも可能である。
活性エネルギー線の照射源としては、従来から使用されているもの、例えば超高圧、高圧、中圧、低圧の水銀灯、FusionUV社製無電極ランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯、蛍光灯、タングステン灯、太陽光等の各光源により得られる光源、紫外カットフィルターによりカットした可視領域の光線、可視領域に発振線を持つ各種レーザー等を使用することができる。また、パルス発光型の活性エネルギー線照射装置も使用することができる。
活性エネルギー線の照射量は、機能性付与層の硬化及びプライマー層と機能性付与層との結合を完結させることができる範囲で行えばよく、通常、例えば、高圧水銀灯の場合は、50〜3000mJ/cm、メタルハライドランプの場合は、100〜5000mJ/cm、特に高圧水銀灯の場合は、100〜1000mJ/cm、メタルハライドランプの場合は、500〜2000mJ/cmの範囲内であることが好ましい。
活性エネルギー線の照射は、空気中または不活性ガス下で行うことができる。不活性ガスとしては、窒素ガス、他の不活性ガス、例えばCOおよびアルゴン、ヘリウム等又はこれらの混合物を使用することができる。
活性エネルギー線による硬化と併せて、熱硬化による硬化も併用することができる。
熱硬化は、工程(1)で例示した方法と同様にして行うことができる。加熱手段としては、熱風、熱ガス、赤外線ヒーター、IRラジエータ、オーブン、及び熱ローラー等を使用することができる。
加熱硬化を併用する場合、加熱温度は、生産性、作業性及び基材の熱安定性等の観点から決定されるが、硬化性の観点から、30〜120℃、特に、50〜90℃程度の温度で、1〜60分間、特に1〜20分間程度の時間で加熱を行うことが好ましい。
熱硬化を併用する場合、活性エネルギー線照射及び加熱の順序は特に限定されず、活性エネルギー線照射の後に加熱を行ってもよく、加熱の後に活性エネルギー線照射を行ってもよく、活性エネルギー線照射と加熱とを同時に行ってもよい。
また、活性エネルギー線照射と加熱とを同時に行う際には、活性エネルギー線の照射源からの熱(例えばランプが発する熱)を熱源としてもよい。さらに、加熱の後に活性エネルギー線照射を行う際には、被膜形成基材が熱を帯びた状態(余熱を持った状態)で活性エネルギー線照射を行ってもよい。
必要に応じて、(反応することなく、)残存した機能性付与基含有不飽和化合物、光重合開始剤等を除去することもできる。
上記残存物の除去は、例えば、溶剤浸漬、水やアセトン等による洗浄、乾燥等により行うことができる。残存物除去性の観点から、上記洗浄時に超音波などの手段を採用することもできる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。
組成物(1)の製造
製造例1
イソシアネート基含有不飽和化合物(1)(*)10部、ネオスタンU−100(ジブチルスズジラウレート、日東化成社製、固形分100%)0.05部及び酢酸ブチル90部を混合して組成物(1−1)を得た。
(*)イソシアネート基含有不飽和化合物(1):スミジュールN−3300(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート環付加物、住化バイエルウレタン社製、固形分100%)1molとプラクセルFA−2(2−ヒドロキシエチルアクリレートのε−カプロラクトン変性水酸基含有不飽和化合物(2−ヒドロキシエチルアクリレート1molに対し、ε−カプロラクトン2molを開環付加重合反応した化合物)2molの付加反応物。1分子中に、平均してイソシアネート基を1個、不飽和基を2個有する。
製造例2
イソシアネート基含有不飽和化合物(1)10部及び酢酸ブチル90部を混合して組成物(1−2)を得た。
製造例3
イソシアネート基含有不飽和化合物(1)10部、ネオスタンU−100 0.05部及びスワゾール1000(石油系炭化水素溶剤、丸善石油化学社製)90部を混合して組成物(1−3)を得た。
製造例4
イソシアネート基含有不飽和化合物(1)10部、ヘキサエートカルシウム 0.05部及びスワゾール1000 90部を混合して組成物(1−4)を得た。
製造例5
イソシアネート基含有不飽和化合物(2)(*)10部、ネオスタンU−100 0.05部及びスワゾール1000 90部を混合して組成物(1−5)を得た。
(*)イソシアネート基含有不飽和化合物(2):イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート環付加物と2−ヒドロキシエチルアクリレートとの等モル付加物。1分子中に、平均してイソシアネート基を2個、不飽和基を1個有する。
製造例6
イソシアネート基含有不飽和化合物(3)(*)10部、ネオスタンU−100 0.05部及びスワゾール1000 90部を混合して組成物(1−6)を得た。
(*)イソシアネート基含有不飽和化合物(3):DESMOLUX XP2765(バイエル社製)。1分子中に、平均してイソシアネート基を2.5個、不飽和基を2個有する。重量平均分子量2300。
製造例7
スミジュールN−3300(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート環付加物、住化バイエルウレタン社製、固形分100%)10部、ネオスタンU−100 0.05部及び酢酸ブチル90部を混合して組成物(1−7)を得た。
製造例8
ペンタエリスリトールテトラアクリレート10部、ネオスタンU−100 0.05部及び酢酸ブチル90部を混合して組成物(1−8)を得た。
なお、製造例7及び8の組成物(1−7)及び組成物(1−8)は比較例用である。
組成物(2)の製造
製造例9
メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−メチルカルボキシベタイン10部、IRGACURE184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、光重合開始剤、B.A.S.F.社製)1部、エタノール80部及び脱イオン水10部を混合して組成物(2−1)を得た。
製造例10
メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチル−N−(3−スルホプロピル)アンモニウムベタイン10部、IRGACURE184 1部、エタノール80部及び脱イオン水10部を混合して組成物(2−2)を得た。
製造例11
ビニルスルホン酸10部、IRGACURE184 1部、エタノール80部及び脱イオン水10部を混合して組成物(2−3)を得た。
製造例12
アリルスルホン酸ソーダ10部、IRGACURE184 1部、エタノール80部及び脱イオン水10部を混合して組成物(2−4)を得た。
製造例13
ファンクリルFA−400M(メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、日立化成工業社製)10部、IRGACURE184 1部、エタノール80部及び脱イオン水10部を混合して組成物(2−5)を得た。
製造例14
ノストラSA(親水基含有UV硬化コート剤、三井化学社製、固形分80%)12.5部、IRGACURE184 1部、エタノール77.5部及び脱イオン水10部を混合して組成物(2−6)を得た。
製造例15
ビニルスルホン酸10部、IRGACURE184 1部、エタノール80部、脱イオン水10部及び水酸化ナトリウム3.7部を混合して組成物(2−7)を得た。
製造例16
ビニルスルホン酸10部、IRGACURE184 1部、エタノール80部、脱イオン水10部及びジメチルエタノールアミン8.2部を混合して組成物(2−8)を得た。
製造例17
ビニルスルホン酸10部、IRGACURE184 1部、エタノール80部、脱イオン水6部及び28%アンモニア水5.6部を混合して組成物(2−9)を得た。
製造例18
フルオレスター(2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、分子量168.12 、東ソーエフテック社製、固形分100%)10部、IRGACURE184 1部及びスワゾール1000 90部を混合して組成物(2−10)を得た。
製造例19
サイラプレーンFM−0711(α−ブチル−ω−(3−メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、重量平均分子量1000、JNC(株)社製、固形分100%)10部、IRGACURE184 1部及びスワゾール1000 90部を混合して組成物(2−11)を得た。
製造例20
サイラプレーンFM−0711 8部、ライトアクリレートMPD−A(3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、共栄社化学社製、固形分100%)2部、IRGACURE184 1部及びスワゾール1000 90部を混合して組成物(2−12)を得た。
なお、製造例9〜17の組成物(2−1)〜(2−9)は親水性付与機能を有する組成物であり、製造例18〜20の組成物(2−10)〜(2−12)は撥水性付与機能を有する組成物である。
基材の被膜形成
<基材>
使用した基材は以下のとおりである。
PET:ポリエチレンテレフタレート樹脂。
FRP(1):ゲルコート樹脂層が形成された繊維強化プラスチック、
ガラス板にワックス系離型剤を塗布し、下記のゲルコート樹脂材を乾燥膜厚300μmとなるように塗布し、その後常温で1時間放置後、60℃で30分更に硬化させた。次に、前記ゲルコート塗装した上に、下記のガラス繊維マット3枚とマトリックス用樹脂を用いてガラス繊維強化材を積層し、常温で18時間放置した後、ガラス板よりFRP成形品を剥離し繊維強化プラスチックFRP(1)を得た:
〔ゲルコート樹脂材〕
ユピカ6424(テレフタル酸系不飽和ポリエステル樹脂、日本ユピカ社製) 28部、スチレン 47部、エピコート152(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン社製) 17部、無水マレイン酸 8.0部、水酸化アルミニウム(無機充填剤) 150部、コロイダルシリカ(平均一次粒子径16μm,比表面積120±30m/g) 50部、メチルエチルケトンパーオキサイド 1.5部、ナフテン酸コバルト 2.0部を均一になるまで混合撹拌した後に、脱泡処理したものをゲルコート樹脂材とした。
〔マトリックス樹脂液〕サンドーマ5595(不飽和ポリエステル樹脂、DHマテリアル社製)、メチルエチルケトンパーオキサイド(硬化剤)、
〔ガラス繊維〕 日東防製ガラス繊維マット。
FRP(2):Fiber Reinforced Plastic、繊維強化プラスチック、
繊維強化プラスチック板の作成は、JIS K 6919−5.3.2項に準拠して作成した。下記のマトリックス樹脂液とガラス繊維を用いて圧縮成型して成型板を得た。得られた成型板をイソプロピルアルコールで脱脂して被塗物FRP(2)とした:
〔マトリックス樹脂液〕
エピコート828(製品名、ジャパンエポキシレジン(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、固形分100%) 82部、セイカキュア−S(製品名、和歌山精化(株)製、ジアミノジフェニルスルフォン、固形分100%) 6部、フェニルジメチルウレア(平均粒径 50μm、固形分100%) 5.0部、ジシアンジアミド(平均粒径 7μm)7部加えて、均一になるまで混合した。
〔ガラス繊維〕
日東防製ガラス繊維マット。
PU:ポリウレタン樹脂、
ABS:アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂。
塗膜形成基材:「パルボンド#3020」(日本パーカライジング社製、りん酸亜鉛処理)を施した冷延鋼板(大きさ400×300×0.8mm)に、カチオン電着塗料(エレクロンGT10、関西ペイント社製)、溶剤型中塗塗料(TP65、ポリエステルメラミン中塗塗料、関西ペイント社製)、水性ベースコート塗料(WBC−713T、アクリルメラミン系上塗ベースコート塗料、関西ペイント社製)及びクリヤコート塗料(KINO6500Tクリヤー、水酸基含有アクリル樹脂イソシアネート硬化型クリヤ塗料、関西ペイント社製)を順次塗装し、電着〜中塗〜上塗の4層塗膜が形成された基材。
<基材の表面処理(物理的処理)>
基材の表面処理は、以下の条件で行った。
(コロナ処理)
コロナ装置(CG−102型コロナ放電発生装置、春日電機(株)社製)に基材と放電管の距離を2mmに設定し、電流設定値3Aで放電させながら、基材を1m/秒の速度で10パスさせた。水接触角が50°以下になっていることを確認してから各組成物(1)を塗布した。
(火炎処理)
ブタンガスのカートリッジがついたガスバーナーの火炎を基材との距離を2cmに設定して、基材上を速度5cm/秒で2パスさせた。水接触角が50°以下になっていることを確認してから各組成物(1)を塗布した。
(研磨処理)
塗膜層あるいはゲルコート層表面を、#1000〜3000の耐水ペーパーと水とを用いて研いだ。次にシングルポリッシャーに3M社製「セパレートソフトスポンジバフ5764」をとりつけ、3M社製超微粒子コンパウンド「ハード2L」を塗膜あるいはゲルコート表面にのせ、艶出し研磨を行った。水接触角が50°以下になっていることを確認してから各組成物(1)を塗布した。
<プライマー層の乾燥(赤外線ヒーター加熱)>
組成物(1)塗布後の乾燥は、赤外線ヒーターを用いて、後記表に記載の温度及び時間の条件でそれぞれ行った。
なお、25℃24時間の条件は、室温(25℃)で24時間放置したことを意味する。
<機能層の硬化(工程(3))(紫外線(UV)照射)>
組成物(2)塗布後、UV照射装置(CV−1200−G、フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製)を使用して、基材と高圧水銀灯との距離を15cmに設定し、放射照度120mW/cm、放射エネルギー量500mJ/cmの条件で、速度3m/分で2パスさせてUV照射を行った。
<被膜形成基材の作製>
実施例1−1
コロナ処理を行ったPET基材に、組成物(1−1)を、マイクロワイプ(不織布)を用いて塗り伸ばした後、別の清浄なクロスでむらがなくなるまでふき取った後、赤外線ヒーターを用いて80℃で30分間加熱を行った。
次にさらに組成物(2−1)を、マイクロワイプを用いて塗り伸ばした後、別の清浄なクロスでむらがなくなるまでふき取った。
最後に前記(<機能層の硬化(工程(3))(紫外線(UV)照射)>)に記載した条件でUV照射を行い、水洗して室温で自然乾燥させることにより、被膜が形成された基材を得た。
実施例1−2〜1−92及び2−1〜2−84、比較例1〜12
基材、組成物(1)及び(2)として、表1に記載のものを使用し、基材の処理及び組成物(1)塗布後の加熱条件を、表1〜5に記載のとおりに変更する以外は、実施例1−1と同様にして、各被膜形成基材を得た。組成物(2)の塗布を行わない比較例1、2、7及び8では、UV照射は行わなかった。
なお、組成物(2)として組成物(2−1)〜(2−9)を用いた実施例1−1〜1−38及び2−1〜2−33は、親水性付与被膜形成基材の製造例であり、組成物(2)として組成物(2−10)〜(2−12)を用いた実施例1−39〜1−92及び2−34〜2−84は、撥水性付与被膜形成基材の製造例である。
被膜形成基材の評価
得られた被膜形成基材の親水性及び撥水性を、水接触角を測定することにより評価した。
水接触角の測定は、協和界面科学社製のCA−X型接触角計を用いて、23℃、65%RHの雰囲気下で脱イオン水10mgの水滴を試験板上に滴下し、滴下から1分後の接触角を測定することにより行った。
各被膜形成基材につき、初期、テープ剥離試験後及び温水浸漬試験後の3条件で水接触角を測定した。
テープ剥離試験:セロハン粘着テープを密着させ、急激に剥がした。その試験部につき、水接触角の測定を行った。
温水浸漬試験:被膜形成基材を40℃の温水に10日間浸漬し、乾燥させた後、水接触角の測定を行った。
初期の接触角に対して、テープ剥離試験後の水接触角の値の変化が小さいほど、付着性が優れていることを、また、温水浸漬試験後の水接触角の値の変化が小さいほど、持続性が優れていることを示していることとなる。
水接触角の評価結果も併せて表1〜5に示す。
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Claims (7)

  1. 基材上に、
    工程(1):イソシアネート基含有重合性不飽和化合物を含有する組成物(1)を使用して、プライマー層を形成する工程、
    工程(2):前記工程(1)でプライマー層が形成された基材上に、機能性付与基含有重合性不飽和化合物及び光重合開始剤を含有する組成物(2)を使用して、機能性付与層を形成する工程、及び
    工程(3):前記工程(1)及び(2)により、プライマー層及び機能性付与層が形成された基材上に、活性エネルギー線を照射する工程、
    を順次行うことを特徴とする基材の被膜形成方法であって、
    前記機能性付与基が、
    1)親水性を付与するための、親水性基、
    2)撥水性/撥油性を付与するための、撥水性/撥油性基、
    3)屈折率変動を付与するための、高い増分または低い増分の屈折を有する官能基、
    4)紫外線吸収特性を付与するための、紫外線吸収性を有する官能基、
    5)光安定性を付与するための、光安定性を有する官能基、
    6)生物特性を付与するための、生物特性を有する官能基であって、防汚特性を有する基又は生体系の成長を促進する基、
    7)難燃性を付与するための、難燃性基、又は
    8)帯電防止性を付与するための、帯電防止性基である、方法
  2. 工程(1)の前に、下記の工程(0)を含み、
    工程(1)において、工程(0)で処理された基材上にプライマー層を形成する、請求項1に記載の方法:
    工程(0):プラズマ、コロナ放電、活性エネルギー線、火炎処理及び研磨処理から選ばれる少なくとも1種の処理を行う工程。
  3. イソシアネート基含有重合性不飽和化合物の重量平均分子量が、100〜4000である、請求項1又は2に記載の被膜形成方法。
  4. イソシアネート基含有重合性不飽和化合物が、分子内に不飽和基を2個以上有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の被膜形成方法。
  5. 工程(3)より前は、プライマー層は、未硬化状態であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の被膜形成方法。
  6. 組成物(2)がさらに、機能性付与基含有重合性不飽和化合物以外の重合性不飽和化合物を含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の被膜形成方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の被膜形成方法により被膜が形成された基材。
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