以下、本発明の親水化処理剤及び親水性被膜形成方法について、さらに詳細に説明する。
本発明の親水化処理剤は、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)、重合開始剤(B)及び溶媒(C)を含有することを特徴とするものである。
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)
本発明の親水化処理剤は、親水成分として、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)を含有する。
本発明の親水化処理剤において、例えば、前記溶媒(C)が少なくともその一部として水を含有する場合、上記2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)は、該親水化処理剤中で解離していてもよい。
上記2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)は、例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を、リチウム原子を有する塩基性化合物で中和する方法;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩を、リチウム原子を有する塩基性化合物でイオン交換する方法等によって得ることができる。該2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩としては、例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム等を使用することができる。
上記リチウム原子を有する塩基性化合物としては、例えば、水酸化リチウム、炭酸リチウム等が挙げられ、なかでも水酸化リチウムを好適に使用することができる。
上記2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)は、より具体的には、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を水酸化リチウムで中和する方法によって得られるものであることが好ましい。
本発明の親水化処理剤は、例えば、1)上述のように2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)を得た後、得られた2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)と、前記重合開始剤(B)及び溶媒(C)とを混合する方法、2)2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、重合開始剤(B)及び溶媒(C)を混合した後、さらに前記リチウム原子を有する塩基性化合物で中和する方法、3)2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩、重合開始剤(B)及び溶媒(C)を混合した後、さらに前記リチウム原子を有する塩基性化合物でイオン交換する方法、等によって得ることができる。
なかでも、得られる親水性被膜の均一性等の観点から、本発明の親水化処理剤が、上記1)又は2)の方法で得られるものであることが好ましく、方法1)の方法で得られるものであることがさらに好ましい。
なお、本明細書において、上記2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸には、親水化処理剤中において脱プロトン化しているものを含むものとし、上記2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩には、親水化処理剤中において解離しているものを含むものとする。
重合開始剤(B)
重合開始剤(B)としては、例えば、活性エネルギー線の吸収によりフリーラジカル(中間体の形態でも)を発生する光重合開始剤、加熱によりフリーラジカル(中間体の形態でも)を発生する熱重合開始剤等を使用することができる。
なかでも、有機材料等の熱変形し易い被塗物に対しては、上記重合開始剤(B)として光重合開始剤を使用し、親水化処理剤塗布後に活性エネルギー線照射によって重合を行なうことが、被塗物の熱変形を抑制しつつ親水性を付与することができるため、好ましい。
光重合開始剤
光重合開始剤は、活性エネルギー線を吸収して、フリーラジカル(中間体の形態でも)を発生する化合物又はこれらの化合物の混合物である。
光重合開始剤としては、光化学的に活性化可能な化合物(たとえばベンゾイン);発色団と共開始剤(たとえばベンゾフェノン及び第三級アミン)との組合せ及びこれらの混合物;増感剤と、共開始剤との(たとえばチオキサントンと第三級アミン)または発色団との(たとえばチオキサントンとアミノケトン)の組合せ;H2O2と鉄(II)塩との組合せ等のレドックス系;染料及びホウ酸塩及び/又はアミン等の電子輸送ペアー等を挙げることができる。
光重合開始剤として具体的には、例えば、ベンジル、ジアセチル等のα−ジケトン化合物;ベンゾイン等のアシロイン化合物;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のアシロインエーテル化合物;チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、チオキサントン−4−スルホン酸等のチオキサントン化合物;ベンゾフェノン、o−メチルベンゾイルベンゾエート、4−メチルベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物;ミヒラーケトン化合物;アセトフェノン、2−(4−トルエンスルホニルオキシ)−2−フェニルアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、α,α’−ジメトキシアセトキシベンゾフェノン、2,2’−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−メトキシアセトフェノン、2−メチル〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、α−イソヒドロキシイソブチルフェノン、α,α’−ジクロル−4−フェノキシアセトフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン等のアセトフェノン化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(アシル)フォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;アントラキノン、1,4−ナフトキノン等のキノン;フェナシルクロライド、トリハロメチルフェニルスルホン、トリス(トリハロメチル)−s−トリアジン等のハロゲン化合物;ジ−t−ブチルパーオキサイド等の過酸化物等を挙げることができる。
光重合開始剤の市販品としては、例えば、イルガキュア(IRGACURE)−127、イルガキュア−184、イルガキュア−261、イルガキュア−369、イルガキュア−500、イルガキュア−651、イルガキュア−754、イルガキュア−819、イルガキュア−907、イルガキュア−CGI−1700、イルガキュア−2959、イルガキュア−TPO、ダロキュア(Darocur)−1173(以上、BASF社製、商品名);カヤキュアー(KAYACURE)−MBP、カヤキュアー−DETX−S、カヤキュアー−DMBI、カヤキュアー−EPA、カヤキュアー−OA(以上、日本化薬社製、商品名);ビキュア(VICURE)−10、ビキュア−55(以上、ストウファー社(STAUFFER Co., LTD.)製、商品名);トリゴナル(Trigonal)P1(アクゾ社(AKZO Co., LTD.)製、商品名);サンドレイ(SANDORAY)1000(サンドズ社(SANDOZ Co., LTD.)製、商品名);ディープ(DEAP)(アプジョン社(APJOHN Co., LTD.)製、商品名);カンタキュア(QUANTACURE)−PDO、カンタキュア−ITX、カンタキュア−EPD(以上、ウォードブレキンソプ社(WARD BLEKINSOP Co., LTD.)製、商品名)、ESACURE KIP 150、ESACURE ONE(LAMBERTI社製、商品名)等を挙げることができる。
上記光重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記光重合開始剤の量は、形成される親水性被膜の親水性等の観点から、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)100質量部に対して、0.1〜20質量部、好ましくは0.3〜15質量部、さらに好ましくは0.5〜12質量部の範囲内であることが好適である。
熱重合開始剤
熱重合開始剤は、加熱により、フリーラジカル(中間体の形態でも)を発生する化合物又はこれらの化合物の混合物である。
熱重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキシド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキシド、ステアロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(2−メチルプロピオンニトリル)、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、4、4’−アゾビス(4−シアノブタン酸)、ジメチルアゾビス(2−メチルプロピオネート)、アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等を挙げることができる。
熱重合開始剤の市販品としては、例えば、VA−044、VA−046B、V−50、VA−057、VA−061、VA−067、VA−086、V−60、V−70、V−65、V−601、V−59、V−40、VF−096、VAm−110(以上、和光純薬工業社製、商品名)、パーブチルH(日油社製、商品名)等を挙げることができる。
上記熱重合開始剤は、必要に応じて、糖、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、鉄錯体等の還元剤を併用して、レドックス開始剤としてもよい。
上記熱重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記熱重合開始剤の量は、形成される親水性被膜の親水性等の観点から、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)100質量部に対して、0.1〜20質量部、好ましくは0.3〜15質量部、さらに好ましくは0.5〜12質量部の範囲内であることが好適である。
溶媒(C)
溶媒(C)としては、塗装の分野で通常使用される溶媒を使用することができる。
該溶媒(C)としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(慣用名:イソプロピルアルコール)、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶媒;N,N’−ジメチルホルムアミド;水等が挙げられ、これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記溶媒(C)は、前記2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)の溶解安定性の観点から、少なくともその1種として、水(c1)を含有することが好ましい。
本発明の親水化処理剤が、上記水(c1)を含有する場合、該水(c1)の含有量は、溶媒(C)の合計量を基準として、7〜100質量%、好ましくは7〜95質量%、さらに好ましくは10〜80質量%、さらに特に好ましくは20〜65質量%の範囲内であることが好適である。
また、上記溶媒(C)は、形成される親水性被膜の親水性及び均一性等の観点から、少なくともその1種として、炭素数3以下のアルコール(c2)を含有することが好ましい。
上記炭素数3以下のアルコール(c2)としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、形成される親水性被膜の親水性及び均一性等の観点から、エタノール、2−プロパノールが好ましく、2−プロパノールが特に好ましい。
本発明の親水化処理剤が、上記炭素数3以下のアルコール(c2)を含有する場合、該炭素数3以下のアルコール(c1)の含有量は、溶媒(C)の合計量を基準として、5〜93質量%、好ましくは20〜90質量%、さらに好ましくは35〜80質量%の範囲内であることが好適である。
また、本発明の親水化処理剤は、形成される親水性被膜の親水性及び均一性等の観点から、上記溶媒(C)として、上記水(c1)及び炭素数3以下のアルコール(c2)の両方を含有することが好ましい。
本発明の親水化処理剤が、上記水(c1)及び炭素数3以下のアルコール(c2)を含有する場合、該水(c1)と炭素数3以下のアルコール(c2)との質量比は、形成される親水性被膜の親水性及び均一性等の観点から、(c1)/(c2)の比で7/93〜95/5、好ましくは10/90〜80/20、さらに好ましくは20/80〜65/35の範囲内であることが好適である。
親水化処理剤
本発明の親水化処理剤は、以上に述べた2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)、重合開始剤(B)及び溶媒(C)を含有する親水化処理剤である。
本発明の親水化処理剤における2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)、重合開始剤(B)及び溶媒(C)の配合割合は、形成される親水性被膜の親水性及び均一性等の観点から、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)100質量部を基準として、下記の範囲内であることが好適である。
重合開始剤(B):0.1〜20質量部、好ましくは0.3〜15質量部、さらに好ましくは0.5〜12質量部、
溶媒(C):40〜10,000質量部、好ましくは100〜5,000質量部、さらに好ましくは50〜2,000質量部。
本発明の親水化処理剤は、上記2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)、重合開始剤(B)及び溶媒(C)を必須成分とするものであるが、親水性被膜の強度向上、親水性の維持性向上等の観点から、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)以外の重合性不飽和化合物等も併用することができる。
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)以外の重合性不飽和化合物としては、単官能重合性不飽和基含有化合物、多官能重合性不飽和基含有化合物を挙げることができる。
単官能重合性不飽和基含有化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等を挙げることができる。
多官能重合性不飽和基含有化合物としては、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等が挙げられる。具体的には、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、イソソルバイドジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート化合物;グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等のトリ(メタ)アクリレート化合物;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールプロピレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンエチレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンプロピレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート化合物;その他、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
さらに、上記多官能重合性不飽和基含有化合物としては、例えば、エチレンオキサイド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリルアミド化合物、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。
上記多官能(メタ)アクリルアミド化合物としては、例えば、N,N'−メチレンビスアクリルアミド、N−[トリス(3−アクリルアミドプロポキシメチル)メチル]アクリルアミド等が挙げられる。
また、前記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、例えばポリイソシアネート化合物、ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレート及びポリオール化合物を原料として用い、イソシアネート基に対してヒドロキシル基が等モル量もしくは過剰になるような量で反応させて得ることができる。
上記2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)以外の重合性不飽和化合物は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)以外の重合性不飽和化合物としては、親水性被膜の強度向上、親水性の維持性向上等の観点から、多官能重合性不飽和基含有化合物を好適に使用することができる。
また、上記2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)以外の重合性不飽和化合物は、親水性被膜の強度向上、親水性の維持性向上等の観点から、不飽和基当量が30〜700、特に70〜700、さらに特に100〜700の範囲内であることが好ましい。
本発明の親水化処理剤において、上記2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)以外の重合性不飽和化合物の含有量は、形成される親水性被膜の親水性等の観点から、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)100質量部を基準として、80質量部以下、好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下の範囲内であることが好適である。
また、上記2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)以外の重合性不飽和化合物を使用する場合、その使用量は、親水性被膜の強度向上、親水性の維持性向上等の観点から、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)100質量部を基準として、0.3〜80質量部、好ましくは0.5〜50質量部、さらに好ましくは0.8〜30質量部の範囲内であることが好適である。
なかでも、上記2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)以外の重合性不飽和化合物として前記多官能重合性不飽和基含有化合物を使用する場合、該多官能重合性不飽和基含有化合物の使用量は、親水性被膜の強度向上、親水性の維持性向上等の観点から、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)100質量部を基準として、0.3〜70質量部、好ましくは0.5〜40質量部、さらに好ましくは0.8〜20質量部の範囲内であることが好適である。
本発明の親水化処理剤は、本発明の効果を損なわないことを限度として、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)、重合開始剤(B)、溶媒(C)及び必要に応じて使用される2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)以外の重合性不飽和化合物の他、表面調整剤、消泡剤、乳化剤、界面活性剤、防汚剤、湿潤剤、増粘剤、顔料、染料、ツヤ調整剤等の塗装の分野で通常使用される他の添加成分を適宜含有させることができる。
親水化処理剤の調整
本発明の親水化処理剤は、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)、重合開始剤(B)、溶媒(C)ならびに、必要に応じて、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)以外の重合性不飽和化合物及びその他の塗料用添加剤を、それ自体既知の方法で混合することによって調製することができる。
本発明の親水化処理剤の調整方法としては、例えば、以下の1)〜4)の方法等を挙げることができる。
1) 2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を、リチウム原子を有する塩基性化合物で中和して2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)を得た後、得られた2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)と、前記重合開始剤(B)及び溶媒(C)とを混合する方法、
2) 2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩を、リチウム原子を有する塩基性化合物でイオン交換して2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)を得た後、得られた2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)と、前記重合開始剤(B)及び溶媒(C)とを混合する方法、
3) 2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、重合開始剤(B)及び溶媒(C)を混合した後、さらにリチウム原子を有する塩基性化合物で中和する方法、
4) 2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩、重合開始剤(B)及び溶媒(C)を混合した後、さらにリチウム原子を有する塩基性化合物でイオン交換する方法。
なかでも、得られる親水性被膜の均一性等の観点から、本発明の親水化処理剤が、上記1)又は3)の方法で得られるものであることが好ましく、1)の方法で得られるものであることがさらに好ましい。
また、本発明の親水化処理剤は、一般に1〜60質量%、好ましくは3〜40質量%、さらに好ましくは5〜25質量%の範囲内の固形分含有率を有することができる。
本明細書において、「固形分」は、110℃で1時間乾燥させた後に残存する、組成物中に含有される2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)、重合開始剤(B)等の不揮発性成分を意味する。このため、例えば、本発明の親水化処理剤の固形分含有率は、アルミ箔カップ等の耐熱容器に親水化処理剤を量り取り、容器底面に親水化処理剤を塗り広げた後、110℃で1時間乾燥させ、乾燥後に残存する親水化処理剤中の成分の質量を秤量して、乾燥前の親水化処理剤の全質量に対する乾燥後に残存する成分の質量の割合を求めることにより、算出することができる。
親水性被膜
本発明の親水性被膜は、上記親水化処理剤を用いてなる被膜である。
被膜形成方法
本発明の親水化処理剤から親水性被膜を形成する工程は、本発明の親水化処理剤を被塗物に塗布する塗布工程と、活性エネルギー線照射及び/又は加熱を行なうことにより、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)を重合させる重合工程とを含む。
被塗物
本発明の親水化処理剤を適用することができる被塗物としては、特に制限されず、例えば、自動車、二輪車、鉄道等の車体又はその部品等の車両関連部材;防音壁、トンネル内装板、ガードレール等の道路周辺部材;サイディング材、タイル、ガラス、サッシ、網戸、門扉、カーポート、サンルーム、ベランダ部材、屋根用部材、住宅外壁部材、浴室鏡、浴室壁、浴槽、化粧鏡、衛生陶器等の住宅関連部材;ショーウィンドウ、冷蔵商品ケース、冷凍商品ケースなどの店舗関連部材等を挙げることができる。
これらの被塗物の基材の材質としては、特に制限はなく、無機材料、有機材料、或いは、有機と無機とのハイブリッド材料のいずれであってもよい。
上記無機材料としては、例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ブリキ、ステンレス鋼、亜鉛メッキ鋼、亜鉛合金(Zn−Al、Zn−Ni、Zn−Fe等)メッキ鋼等の金属材料;ガラス;セメント;コンクリート等が挙げられる。
前記有機材料としては、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−1、4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1、2−ジフェノキシエタン−4、4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレートなどのようなポリエステル樹脂、エピコート(商品名:油化シェルエポキシ(株)製)などの市販品に代表されるエポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリアミド、ポリスチレン(例、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、各種の繊維強化プラスチック材料(Fiber Reinforced Plastics:以下FRP材料又は単にFRPという。)等を挙げることができる。
各種のFRPは公知であり、プラスチック(マトリックス樹脂)に強化繊維を含めることにより、強度を向上させた材料を主に指す。マトリックス樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂等を用いることができる。強化繊維としては、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維、セルロース繊維等を単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。FRPの成形方法としては、公知のものを使用することができ、金型を用いて製造するシートモールディングコンパウンド(SMC)成形法、レジンインフュージョン(RIMP)成形法、プリプレグ/オートクレーブプレス法、スプレーアップ/RTM(Resin Transfer Molding)成形法等が挙げられる。
本発明において、被塗物が上記有機材料等の熱変形し易い材料の場合は、前記重合開始剤(B)として光重合開始剤を使用し、親水化処理剤塗布後に活性エネルギー線照射によって重合を行なうことが、被塗物の熱変形を抑制することができるため、好ましい。
また、本発明に係る被塗物は、上記基材の表面上(基材の1の面、あるいは2以上の面(例えば、表面、裏面、存在する場合は1または複数の側面から選択される2以上の面))にゲルコート層、塗膜等が形成されたものであってもよい。
上記ゲルコートとは、基材の表面の凹凸などの平滑化、意匠性の向上、紫外線の遮断等のために用いられるものである。ゲルコートを形成するための樹脂(ゲルコート樹脂)としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、硝化綿(ニトロセルロース)系樹脂、またはこれらの樹脂に適宜顔料、染料、離型剤等を混合したものなどを好適に使用することができる。ゲルコート層が表面に形成された基材の具体例として、ゲルコート層が形成されたFRPが例示される。
また、被塗物は、上記ゲルコート層上に、前記塗膜が形成されたものであってもよい。
上記被塗物は、形成される親水性被膜の親水性等の観点から、該被塗物表面に重合性不飽和基を有することが好ましい。
本明細書において、重合性不飽和基とは、ラジカル重合しうる不飽和基を意味する。かかる重合性不飽和基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、マレイミド基、ビニルエーテル基等が挙げられる。
上記被塗物表面に重合性不飽和基が存在する場合に、形成される被膜の親水性が優れる理由としては、本発明の親水性被膜形成方法における活性エネルギー線照射及び/又は加熱によって、該被塗物上の重合性不飽和基と、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)中の重合性不飽和基であるアクリロイル基とが反応し、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)が被塗物と強固に結合することが推察される。
上記表面に重合性不飽和基を有する被塗物は、例えば、被塗物の最表面に、重合性不飽和基を含有する組成物(1)を塗装し、該被塗物表面に重合性不飽和基を有する被膜を形成せしめることにより得ることができる。
組成物(1)
上記重合性不飽和基を含有する組成物(1)としては、例えば、被塗物上の官能基との反応性を有する重合性不飽和化合物を含有する組成物(1−1)、基体樹脂及び重合性不飽和化合物を含有する組成物(1−2)、重合性不飽和基を有する基体樹脂を含有する組成物(1−3)等を使用することができる。
被塗物上の官能基との反応性を有する重合性不飽和化合物を含有する組成物(1−1)
組成物(1−1)は、被塗物上の官能基との反応性を有する重合性不飽和化合物を含有する。
上記被塗物上の官能基との反応性を有する重合性不飽和化合物としては、例えば、上記被塗物が、水酸基、カルボキシル基等の活性水素基を有する被塗物である場合に、イソシアネート基含有重合性不飽和化合物を使用することができる。
上記水酸基、カルボキシル基等の活性水素基を有する被塗物は、例えば、被塗物に対し、プラズマ処理、コロナ処理、活性エネルギー線処理、火炎処理等を行なうことによって、得ることができる。
また、上記イソシアネート基含有重合性不飽和化合物としては、例えば、イソシアネートメチル(メタ)アクリレート、イソシアネートエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネートアルキル基を有する(メタ)アクリレート;ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の一部を水酸基含有重合性不飽和化合物と反応させることにより得られる化合物;カルボジイミド基含有イソシアネート化合物のカルボジイミド基の一部又は全部をカルボキシル基含有重合性不飽和化合物と反応させることにより得られる化合物;オルネクス社製の「Desmolux D100」、「Desmolux D200」、「Desmolux VP LS 2396」、「Desmolux XP2510」、「Desmolux XP2765」;BASF社製の「Laromer LR9000」等を使用することができる。
基体樹脂及び重合性不飽和化合物を含有する組成物(1−2)
組成物(1−2)に使用される基体樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ・ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。なかでも、上記基体樹脂は、親水性の維持性、耐加水分解性等の観点から、アクリル樹脂であることが好ましい。
また、形成される親水性被膜の親水性等の観点から、上記基体樹脂及び重合性不飽和化合物が官能基を有し、組成物(1−2)を塗装することによって、上記基体樹脂と重合性不飽和化合物が結合した架橋塗膜が形成されることが好ましい。
上記架橋塗膜を形成しうる組成物としては、例えば、基体樹脂の少なくともその一部として水酸基含有樹脂を含有し、重合性不飽和化合物の少なくともその一部としてイソシアネート基含有重合性不飽和化合物を含有する組成物(1−2−1)、基体樹脂の少なくともその一部として水酸基含有樹脂を含有し、重合性不飽和化合物の少なくともその一部として水酸基含有重合性不飽和化合物を含有し、さらに水酸基との反応性を有する架橋剤を含有する組成物(1−2−2)等を好適に使用することができる。
組成物(1−2−1)
組成物(1−2−1)は、基体樹脂の少なくともその一部として水酸基含有樹脂を含有し、重合性不飽和化合物の少なくともその一部として前記イソシアネート基含有重合性不飽和化合物を含有する組成物である。
上記組成物(1−2−1)において使用される水酸基含有樹脂は、1分子中に少なくとも1個の水酸基を有する樹脂である。該水酸基含有樹脂としては、親水性の維持性、耐加水分解性等の観点から、水酸基含有アクリル樹脂を好適に使用することができる。
水酸基含有アクリル樹脂は、通常、水酸基含有重合性不飽和モノマー及び該水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーを、それ自体既知の方法、例えば、有機溶媒中での溶液重合法、水中でのエマルション重合法等の方法により共重合せしめることによって製造することができる。
水酸基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ1個以上有する化合物であって、具体的には、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール、さらに、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
また、水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製)、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等のアルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート;イソボルニル(メタ)アクリレート等のイソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー;アダマンチル(メタ)アクリレート等のアダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等のフッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー;マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー;N−ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン化合物との付加物等の含窒素重合性不飽和モノマー;アリル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオ−ルジ(メタ)アクリレート等の重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマー;分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム塩、スルホエチルメタクリレート及びそのナトリウム塩、アンモニウム塩等のスルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー;2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート等のリン酸基を有する重合性不飽和モノマー;2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等の紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマー;4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−クロトノイル−4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の紫外線安定性重合性不飽和モノマー;アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等のカルボニル基を有する重合性不飽和モノマー化合物等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレート又はメタクリレートを意味する。「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。また、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド又はメタクリルアミドを意味する。
また、上記組成物(1−2−1)において使用されるイソシアネート基含有重合性不飽和化合物としては、例えば、前記組成物(1−1)の説明欄において記載した化合物を使用することができる
組成物(1−2−2)
組成物(1−2−2)は、基体樹脂の少なくともその一部として水酸基含有樹脂を含有し、重合性不飽和化合物の少なくともその一部として水酸基含有重合性不飽和化合物を含有し、さらに水酸基との反応性を有する架橋剤を含有する組成物である。
組成物(1−2−2)において使用される水酸基含有樹脂としては、例えば、前記組成物(1−2−1)の説明欄において記載した水酸基含有樹脂を使用することができる
また、組成物(1−2−2)において使用される前記水酸基含有重合性不飽和化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール;分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリアクリレート;イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート等を使用することができる。
なかでも、親水性の維持性の観点から、上記水酸基を有する重合性不飽和化合物が、水酸基を有する多官能重合性不飽和化合物であることがより好ましい。該水酸基を有する多官能重合性不飽和化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート等が挙げられる。
また、上記水酸基を有する重合性不飽和化合物としては市販品を使用できる。市販品の商品名としては、例えば、「アロニックスM−215」、「アロニックスM−303」、「アロニックスM−305」、「アロニックスM−306」、「アロニックスM−5700」(以上、東亞合成社製)等が挙げられる。
また、組成物(1−2−2)において使用される前記水酸基との反応性を有する架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂等を使用することができる。
重合性不飽和基を有する基体樹脂を含有する組成物(1−3)
組成物(1−3)において、重合性不飽和基を有する基体樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ・ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
また、上記重合性不飽和基を有する基体樹脂が官能基を有し、さらに、上記組成物(1−3)中に該官能基との反応性を有する架橋剤を含有することが好ましい。具体的には、組成物(1−3)が、水酸基及び重合性不飽和基を有する基体樹脂と、前記水酸基との反応性を有する架橋剤とを含有する組成物であることが好ましい。
上記水酸基及び重合性不飽和基を有する基体樹脂は、親水性の維持性、耐加水分解性等の観点から、水酸基を有する重合性不飽和基含有アクリル樹脂であることが好ましい。
上記水酸基を有する重合性不飽和基含有アクリル樹脂は、例えば、1)エポキシ基含有アクリル樹脂にカルボキシル基含有重合性不飽和化合物を付加反応させる方法、2)カルボキシル基含有アクリル樹脂にエポキシ基含有重合性不飽和化合物を付加反応させる方法、3)水酸基含有アクリル樹脂にイソシアネート基含有重合性不飽和化合物を付加反応させる方法、等によって得ることができる。
また、上記組成物(1−1)〜(1−3)は、さらに、触媒、溶媒、顔料、光重合開始剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、表面調整剤、消泡剤、乳化剤、界面活性剤、防汚剤、湿潤剤、増粘剤、染料、ツヤ調整剤等の塗装の分野で通常使用される他の添加成分等を適宜含有することができる。
上記組成物(1)による被膜の形成は、蒸着、浸漬、噴霧、ブラシ塗布、ナイフ塗布、ローラー塗布、ロールコート、カーテンコート、印刷、スピンコーティング及び流し込み等により行うことができる。
形成された被膜は、生産性及び作業性の観点から、加熱処理を施し、迅速に乾燥させることが好ましい。
組成物(1)として前記組成物(1−1)を使用する場合、上記加熱処理により、通常、被塗物表面上の水酸基と、イソシアネート基含有重合性不飽和化合物中のイソシアネート基とが反応し、該被塗物表面に重合性不飽和基を有する被膜を形成することができる。
また、組成物(1)として前記組成物(1−2−1)を使用する場合、上記加熱処理により、通常、組成物(1−2−1)中の、水酸基含有樹脂の水酸基と、イソシアネート基含有重合性不飽和化合物のイソシアネート基とが反応し、被塗物表面に重合性不飽和基を有する架橋被膜を形成することができる。
また、組成物(1)として前記組成物(1−2−2)又は(1−3)を使用する場合、通常、上記加熱処理により、該組成物中の、水酸基含有樹脂の水酸基と、水酸基との反応性を有する架橋剤とが反応し、被塗物表面上に重合性不飽和基を有する架橋被膜を形成することができる。
加熱処理による上記被膜の乾燥は、この分野において公知の手法を適宜使用することができる。
具体的には、例えば、熱風、熱ガス、赤外線ヒーター、IRラジエータ、オーブン、熱ローラーおよびマイクロ波等を使用して、被膜の乾燥を行うことができる。
本発明においては、作業の容易性及び低温で行うことができること等の観点から、熱風、赤外線ヒーターなどにより乾燥を行うことが好ましい。
上記被膜に施す加熱処理の温度は、生産性、作業性及び基材の熱安定性等の観点から、40〜150℃、好ましくは50〜140℃、さらに好ましくは70〜130℃の範囲内であることが好適である。また、被膜に施す加熱処理の時間は、10分間〜24時間、好ましくは15分間〜180分間、さらに好ましくは20〜120分間の範囲内であることが好適である。
かくして、被塗物上に重合性不飽和基を有する被膜が形成される。形成された被膜は、硬化塗膜であることが好ましい。
塗布工程
被塗物上への本発明の親水化処理剤の塗布方法としては、特に制限されるものではなく、蒸着、浸漬、噴霧、ブラシ塗布、ナイフ塗布、ローラー塗布、ロールコート、カーテンコート、印刷、スピンコーティング及び流し込み等により行うことができる。
本発明の親水化処理剤により形成される親水性被膜の硬化後の厚さは、親水性付与、付着性及び最終的な仕上り外観の観点から、10μm以下、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下であることが好適である。
重合工程
上記被塗物上に塗布された親水性被膜を重合させる手段としては、活性エネルギー線照射、加熱、またはその組み合わせ等、重合性不飽和基含有化合物を重合させる公知の方法を使用することができる。
活性エネルギー線照射により重合を行なう場合は、前記重合開始剤(B)として光重合開始剤を使用する。また、加熱により重合を行なう場合は、該重合開始剤(B)として熱重合開始剤を使用する。
活性エネルギー線照射
照射される活性エネルギー線としては、公知のものを使用することができる。具体的には、紫外線、可視光線、レーザー光(近赤外線レーザー、可視光レーザー、紫外線レーザー等)、マイクロ波、電磁波等を挙げることができる。
これらの活性エネルギー線のうち、経済性の観点から、紫外線を好適に使用することができる。
活性エネルギー線の照射は、親水化処理剤により形成された親水性被膜に存在する光重合開始剤が吸収することができる波長の電磁波を発する任意の光源を用いて行うことができる。このような光源は通常、波長200nm〜2,000nmの範囲の電磁波を発するものである。
活性エネルギー線の照射源としては、公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、超高圧、高圧、中圧、低圧の水銀灯、無電極ランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯、蛍光灯、タングステン灯、LED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)、太陽光等を使用することができる。また、パルス発光型の活性エネルギー線照射装置も使用することができる。
活性エネルギー線の照射は電子ビームを用いて行うこともできる。
また、活性エネルギー線の照射は、全領域および/または一部を、例えば、マスクを介して行っても、レーザービームを用いて行ってもよい。その手段によって特定の領域だけの被膜の硬化を行うことも可能である。
活性エネルギー線の照射量は、親水性被膜の重合を行なうことができる範囲で行えばよく、通常、例えば、高圧水銀灯の場合は、50〜3,000mJ/cm2、メタルハライドランプの場合は、100〜5,000mJ/cm2、特に高圧水銀灯の場合は、100〜1,000mJ/cm2、メタルハライドランプの場合は、500〜2,000mJ/cm2の範囲内であることが好ましい。
活性エネルギー線の照射は、空気中または不活性ガス下で行うことができる。不活性ガスとしては、窒素ガス、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム等又はこれらの混合物を使用することができる。
加熱
前記加熱は、公知の手法を適宜使用することができる。具体的には、例えば、熱風、熱ガス、赤外線ヒーター、IRラジエータ、オーブン、熱ローラーおよびマイクロ波等を使用して行うことができる。
本発明においては、作業の容易性及び低温で行うことができること等の観点から、熱風、赤外線ヒーターなどにより加熱を行うことが好ましい。
上記加熱の温度は、生産性、作業性及び基材の熱安定性等の観点から、30〜150℃、好ましくは40〜140℃、さらに好ましくは50〜130℃の範囲内であることが好適である。
また、上記加熱の時間は、1〜60分間、好ましくは1〜40分間の範囲内であることが好適である。
また、上記活性エネルギー線照射及び加熱を組み合わせて行ってもよい。
この場合、活性エネルギー線照射及び加熱の順序は特に限定されず、活性エネルギー線照射の後に加熱を行ってもよく、加熱の後に活性エネルギー線照射を行ってもよく、活性エネルギー線照射と加熱とを同時に行ってもよい。
また、活性エネルギー線照射と加熱とを同時に行う際には、活性エネルギー線の照射源からの熱(例えばランプが発する熱)を熱源としてもよい。さらに、加熱の後に活性エネルギー線照射を行う際には、被膜形成基材が熱を帯びた状態(余熱を持った状態)で活性エネルギー線照射を行ってもよい。
活性エネルギー線照射及び/又は加熱後は、必要に応じて、(反応することなく、)残存した2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)、重合開始剤(B)等を除去することもできる。
上記残存物の除去は、例えば、溶剤浸漬、水やアセトン等による洗浄等により行うことができる。残存物除去性の観点から、上記洗浄時に超音波などの手段を採用することもできる。
本発明の親水化処理剤は、特に、前記塗布工程の後、該親水化処理剤中の溶媒の少なくとも一部を揮発させ、その後、重合工程を行なう場合に、高い親水性を有する親水性被膜を被塗物上に均一に形成することができる。
この場合の親水性被膜形成方法は、下記方法Iに従って行うことができる。
方法I:
工程(1):被塗物上に、本発明の親水化処理剤を塗布して、親水性被膜を形成する工程、
工程(2):前記工程(1)で形成された親水性被膜中の溶媒(C)の少なくとも一部を揮発させる工程、ならびに
工程(3):前記工程(1)及び(2)で形成された親水性被膜に、活性エネルギー線照射及び/又は加熱を行う工程、
を順次行うことを特徴とする親水性被膜形成方法。
上記工程(2)において、親水性被膜中の溶媒(C)の少なくとも一部を揮発させる工程は、室温で行なってもよく、加熱によって行なってもよい。加熱方法は、前述の公知の手法を適宜使用することができる。
また、上記工程(2)において、親水性被膜中の溶媒(C)の少なくとも一部を揮発させた後の該親水性被膜の固形分含有率は、形成される親水性被膜の親水性及び均一性の観点から、15〜80質量%、好ましくは20〜70質量%、さらに好ましくは30〜60質量%の範囲内であることが好適である。
本発明の親水化処理剤は、該親水化処理剤の塗布後、該親水化処理剤中の溶媒(C)の少なくとも一部を揮発させた場合においても、均一な親水性を有する被膜を形成することができるため、例えば、塗装面積が大きい等の理由により、親水化処理剤の塗布工程から重合工程までの時間が長く、溶媒(C)の少なくとも一部が揮発する工程でも、被塗物上に均一な親水性被膜を形成することができるという利点を有する。
本発明の親水化処理剤を使用することにより、該親水化処理剤の塗布後、該親水化処理剤中の溶媒(C)の少なくとも一部を揮発させた場合においても、均一な親水性を有する被膜を形成することができる理由は明確ではないが、本発明の親水化処理剤においては、親水成分である2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)が、溶媒(C)の揮発過程で被塗物上に局在化しにくく、形成される親水性被膜上に該2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム(A)が均一に存在することが推察される。
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、これらにより限定されない。各例において、「部」及び「%」は、特記しない限り、質量基準による。また、塗膜の膜厚は硬化塗膜に基づく。
親水化処理剤の製造
実施例1
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸10部及び5%水酸化リチウム水溶液23部を25℃で20分間混合して、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸リチウム水溶液を得た。その後、さらに「IRGACURE184」(商品名、BASF社製、光重合開始剤、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、固形分含有率100%)0.5部及び脱イオン水78部を混合して親水化処理剤(A−1)を得た。
実施例2〜6及び8〜21、比較例1〜7
製造例1において、配合組成を表1に示すものとする以外は、実施例1と同様にして、親水化処理剤(A−2)〜(A−6)及び(A−8)〜(A−28)を得た。
実施例7
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸10部、「IRGACURE184」0.5部、脱イオン水28部及び2−プロパノール50部を混合した。その後、さらに5%水酸化リチウム水溶液23部を配合し、25℃で20分間混合して親水化処理剤(A−7)を得た。
表1中における(注)は下記を意味する。
(注1)「V−50」:商品名、和光純薬工業社製、熱重合開始剤、固形分100%。
(注2)「アロニックスM−313」:商品名、東亞合成社製、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ及びトリアクリレート、固形分100%。
(注3)「アロニックスM−306」:商品名、東亞合成社製、ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート、固形分100%。
(注4)「A−GLY−9E」:商品名、新中村化学社製、グリセリンエチレンオキサイド変性トリアクリレート(エチレンオキサイド9mol)、固形分100%。
水酸基含有樹脂の製造
製造例1
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、酢酸ブチル45部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら115℃で攪拌し、この中に2−ヒドロキシエチルメタクリレート28部、スチレン30部、イソボルニルアクリレート15部、メチルメタクリレート27部、酢酸ブチル10部及び2,2'−アゾビスイソブチロニトリル2部からなるモノマー混合物を4時間かけて均一速度で滴下し、さらに同温度で1時間熟成した。その後さらに酢酸ブチル15部及び2,2'−アゾビスイソブチロニトリル1.0部の混合物を3時間かけて反応容器に滴下し、滴下終了後1時間熟成させたのち、酢酸ブチルで希釈し、固形分50%の水酸基含有アクリル樹脂(Ac−1)溶液を得た。
製造例2
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、酢酸ブチル45部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら115℃で攪拌し、この中に2−ヒドロキシエチルメタクリレート28部、スチレン20部、シクロヘキシルメタクリレート32部、n−ブチルアクリレート5部、メチルメタクリレート15部、酢酸ブチル10部及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル2部からなるモノマー混合物を4時間かけて均一速度で滴下し、さらに同温度で1時間熟成した。その後さらに酢酸ブチル15部及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル1.0部の混合物を3時間かけて反応容器に滴下し、滴下終了後1時間熟成させたのち、酢酸ブチルで希釈し、固形分50%の水酸基含有アクリル樹脂(Ac−2)溶液を得た。
水酸基を有する重合性不飽和基含有アクリル樹脂の製造
製造例3
攪拌機、サーモスタット、温度計、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、酢酸ブチル45部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら115℃で攪拌し、この中にエチルアクリレート20部、メチルメタクリレート20部、グリシジルメタクリレート60部、及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル2部からなるモノマー混合物を4時間かけて均一速度で滴下し、さらに同温度で1時間熟成した。その後、さらに酢酸ブチル10部及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.5部の混合物を1時間かけて反応容器に滴下し、滴下終了後1時間熟成させ、グリシジル基含有アクリル樹脂溶液を得た。さらに、反応容器内に空気を吹き込みながら、該グリシジル基含有アクリル樹脂溶液に、アクリル酸30部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.15部及びt−ブチルアンモニウムブロマイド0.5部を加えて、同温度で8時間反応させたのち、酢酸ブチルで希釈し、固形分50%の水酸基を有する重合性不飽和基含有アクリル樹脂(Ac−3)溶液を得た。
重合性不飽和化合物を含有する組成物(1)の製造
製造例4
イソシアネート基含有重合性不飽和化合物(B−1)(注5)10部(固形分10部)、「ネオスタンU−100」(商品名、ジブチルスズジラウレート、日東化成社製、固形分100%)0.05部及び酢酸ブチル90部を混合して組成物(1−a)を得た。得られた組成物(1−a)は、組成物(1)のうち、被塗物上の官能基との反応性を有する重合性不飽和化合物を含有する組成物(1−1)に相当する。
(注5)イソシアネート基含有重合性不飽和化合物(B−1):「スミジュールN−3300」(商品名、住化バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート環付加物、固形分含有率100%)と4−ヒドロキシブチルアクリレートとの等モル付加物。NCO当量323。重量平均分子量650。1分子中に、平均してイソシアネート基を2個、不飽和基を1個有する。
製造例5
製造例1で得た水酸基含有アクリル樹脂(Ac−1)溶液200部(固形分100部)、イソシアネート基含有重合性不飽和化合物(B−1)(注5)34部(固形分34部)、「スミジュールN−3300」20部(固形分20部)、ジブチル錫ジアセテート0.001部、「IRGACURE184」(商品名、BASF社製、光重合開始剤、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、固形分含有率100%)3部及び「TINUVIN123」(商品名、BASF社製、光安定剤、固形分含有率100%)0.1部を均一に混合し、さらに固形分が30%になるように酢酸ブチルで希釈攪拌して、組成物(1−b)を得た。得られた組成物(1−b)は、組成物(1)のうち、基体樹脂及び重合性不飽和化合物を含有する組成物(1−2)に相当する。また、該組成物(1−b)は上記組成物(1−2)のうち、基体樹脂の少なくともその一部として水酸基含有樹脂を含有し、重合性不飽和化合物の少なくともその一部としてイソシアネート基含有重合性不飽和化合物を含有する組成物(1−2−1)に相当する。
製造例6
製造例2で得た水酸基含有アクリル樹脂(Ac−2)溶液200部(固形分100部)、「アロニックスM−305」(商品名、東亞合成社製、ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート)20部(固形分20部)、「スミジュールN−3300」49部、ジブチル錫ジアセテート0.001部、「IRGACURE184」3部、「TINUVIN123」0.1部及び「ディスパロン LF−1984」(商品名、楠本化成社製、表面調整剤、固形分含有率50%)0.1部(固形分0.05部)を均一に混合し、さらに固形分が30%になるように酢酸ブチルで希釈攪拌して、組成物(1−c)を得た。得られた組成物(1−c)は、組成物(1)のうち、基体樹脂の少なくともその一部として水酸基含有樹脂を含有し、重合性不飽和化合物の少なくともその一部として水酸基含有重合性不飽和化合物を含有し、さらに水酸基との反応性を有する架橋剤を含有する組成物(1−2−2)に相当する。
製造例7
製造例3で得た水酸基を有する重合性不飽和基含有アクリル樹脂(Ac−3)溶液200部(固形分100部)、「スミジュールN−3300」62部、ジブチル錫ジアセテート0.001部、「IRGACURE184」3部、「TINUVIN123」0.1部及び「ディスパロン LF−1984」0.1部(固形分0.05部)を均一に混合し、さらに固形分が30%になるように酢酸ブチルで希釈攪拌して、組成物(1−d)を得た。得られた組成物(1−d)は、組成物(1)のうち、重合性不飽和基を有する基体樹脂を含有する組成物(1−3)に相当する。
試験用被塗物の作製
製造例8
100mm×150mm×3.0mmのアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)板の表面を2−プロパノールで脱脂した。得られたABS板をコロナ処理(注2)した後、製造例4で得た組成物(1−a)を、マイクロワイプ(不織布)を用いて塗り伸ばし、その後、別の清浄なクロスでむらがなくなるまでふき取った。次いで、80℃で30分間加熱を行い、被塗物(a)を得た。被塗物(a)は、重合性不飽和化合物を含有する組成物(1−1)を塗装して得られる、表面に重合性不飽和基を有する被塗物である。
(注2)コロナ処理:コロナ装置(CG−102型コロナ放電発生装置、春日電機(株)社製)を使用して、ABS板と放電管との距離を2mmに設定し、電流設定値3Aで放電させながら、ABS板を1m/秒の速度で10パスさせた。ABS板表面の水接触角が50°以下になっていることを確認してから組成物(1−a)を塗布した。
製造例9
100mm×150mm×3.0mmのアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)板の表面を2−プロパノールで脱脂した。得られたABS板上に、製造例5で得た組成物(1−b)を、エアスプレーを用いて膜厚が20μmとなるように塗装し、常温で10分間セッティングを行った後、80℃で30分間加熱して、被塗物(b)を得た。被塗物(b)は、基体樹脂の少なくともその一部として水酸基含有樹脂を含有し、重合性不飽和化合物の少なくともその一部としてイソシアネート基含有重合性不飽和化合物を含有する組成物(1−2−1)を塗装して得られる、表面に重合性不飽和基を有する被塗物である。
製造例10
100mm×150mm×3.0mmのアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)板の表面を2−プロパノールで脱脂した。得られたABS板上に、製造例6で得た組成物(1−c)を、エアスプレーを用いて膜厚が20μmとなるように塗装し、常温で10分間セッティングを行った後、80℃で30分間加熱して、被塗物(c)を得た。被塗物(c)は、基体樹脂の少なくともその一部として水酸基含有樹脂を含有し、重合性不飽和化合物の少なくともその一部として水酸基含有重合性不飽和化合物を含有し、さらに水酸基との反応性を有する架橋剤を含有する組成物(1−2−2)を塗装して得られる、表面に重合性不飽和基を有する被塗物である。
製造例11
100mm×150mm×3.0mmのアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)板の表面を2−プロパノールで脱脂した。得られたABS板上に、製造例7で得た組成物(1−d)を、エアスプレーを用いて膜厚が20μmとなるように塗装し、常温で10分間セッティングを行った後、80℃で30分間加熱して、被塗物(d)を得た。被塗物(d)は、重合性不飽和基を有する基体樹脂を含有する組成物(1−3)を塗装して得られる、表面に重合性不飽和基を有する被塗物である。
試験板の作製
実施例22
23℃、65%RHの雰囲気下で、製造例8で得た被塗物(a)上に、実施例1で得た親水化処理剤(A−1)を、マイクロワイプを用いて塗り伸ばした後、15分間静置した。静置後の親水性被膜の固形分含有率は40質量%であった。次に、UV照射装置「CV−1200−G」(フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製)を使用して、被塗物と高圧水銀灯との距離を15cmに設定し、放射照度120mW/cm2、放射エネルギー量500mJ/cm2の条件で、速度3m/分で2パスさせてUV照射を行った。最後に、被膜が形成された面を水洗し、室温で自然乾燥させて、試験板を得た。
実施例23
23℃、65%RHの雰囲気下で、製造例8で得た被塗物(a)上に、実施例2で得た親水化処理剤(A−2)を、マイクロワイプを用いて塗り伸ばした後、15分間静置した。静置後の親水性被膜の固形分含有率は41質量%であった。次に、90℃で30分間加熱を行った。最後に、被膜が形成された面を水洗し、室温で自然乾燥させて、試験板を得た。
実施例24〜49、比較例8〜14
被塗物、親水化処理剤及び親水化処理剤塗布後の静置時間を、表2に記載の通りとする以外は、実施例22と同様にして、各試験板を得た。
実施例50〜51
被塗物、親水化処理剤及び親水化処理剤塗布後の静置時間を、表2に記載の通りとする以外は、実施例23と同様にして、各試験板を得た。
被膜形成基材の評価
得られた各試験板について、各種試験を行った。評価結果を表2に示す。
試験方法
親水性:各試験板について、水接触角を測定した。水接触角の測定は、協和界面科学社製のCA−X型接触角計を用いて、23℃、65%RHの雰囲気下で脱イオン水5mgの水滴を試験板上に滴下し、滴下から15秒後の接触角を測定することにより行った。水接触角が20゜以下であれば、親水性が良好である。
親水性被膜の均一性:各試験板を脱イオン水に5秒間浸漬し、引き上げ、垂直に10秒間静置した後の、水濡れ面積率を下記基準で評価した。水濡れ面積率が80%以上(A〜C評価)であれば、親水性被膜の均一性が良好である。
A:100%
B:90%以上、100%未満
C:80%以上、90%未満
D:30%以上、80%未満
E:30%未満。