以下、実施形態及び例示物等を示して本発明について詳細に説明するが、本発明は以下に説明する実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
〔第一実施形態〕
図1及び図2はいずれも本発明の第一実施形態に係る発光装置を説明する図であって、図1は発光装置を模式的に示す斜視図であり、図2は図1に示す発光装置を線1a−1bを通り出光面に対して垂直な面で切断した断面を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、本発明の第一実施形態に係る発光装置10は、矩形の平板状の構造を有する装置であり、両面発光型の有機EL素子140と、この有機EL素子140の少なくとも片面に直接または間接的に設けられる出光面構造層100とを備える。有機EL素子140は、少なくとも第一電極である透明電極層141、発光層142及び第二電極である透明電極層143をこの順に備え、その表面144及び145の両方から発光できるようになっている。本実施形態では、透明電極層141及び透明電極層143が透明であるので、発光層142からの光が、透明電極層141及びその表面144を透過して、または透明電極層143及びその表面145を透過して、有機EL素子140の外部へ出て行くようになっている。そこで、以下の説明においては表面144及び145を「発光面」と呼ぶ。
前述したように、有機EL素子140の発光面144には出光面構造層100が設けられている。本実施形態では、出光面構造層100は発光面144に接するように直接に設けられているものとする。
さらに、本実施形態の発光装置10は上述した部材以外にも構成要素を備えていてもよい。本実施形態では、有機EL素子140の発光面145に封止基材151が設けられているものとする。
したがって、発光装置10は、封止基材151と、有機EL素子140と、出光面構造層100とをこの順に備える。このような発光装置10では、出光面構造層100における有機EL素子140とは反対側の表面10Uを通って発光装置10の外部へ光が射出し、また、封止基材151における有機EL素子140とは反対側の表面10Dを通って発光装置10の外部へ光が射出する。表面10U及び10Dは、発光装置10の最も外側に位置し、この表面10U及び10Dを通って光が射出するため、表面10U及び10Dを「出光面」と呼ぶ。
〔1.有機EL素子〕
例えば有機EL素子140として例示するように、有機EL素子は、通常、第一電極と、第二電極と、これらの電極間に設けられ、電極から電圧を印加されることにより発光する発光層と、を備える。
有機EL素子は、基板上に有機EL素子を構成する電極、発光層等の層を形成し、さらにそれらの層を覆う封止部材を設け、基板と封止部材で発光層等の層を封止した構成とされるのが一般的である。
前記発光層としては、特に限定されず既知のものを適宜選択できる。発光層中の発光材料は1種類に限らず、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、発光層は1層に限らず、光源としての用途に適合すべく、一種類の層単独又は複数種類の層の組み合わせとすることができる。これにより、白色又はそれに近い色の光を発光するものとし得る。
有機EL素子を構成する電極は、通常は第一電極及び第二電極のうち少なくとも一方が透明であり、好ましくは第一電極及び第二電極の両方が透明である。ここで「透明」であるとは、光学部材に用いるのに適した程度の光線透過率を有する意味である。例えば、発光装置10が全体として後述する所望の全光線透過率を有する程度に高い光線透過率を有する電極を、透明電極層として用いればよい。このように高い透明性を有する電極を備えることにより、発光層で発生した光の取出効率を向上できる。また、第一電極及び第二電極の両方を透明にすることにより、発光装置を通じて向こう側を明瞭に見通すことができる。なお、透明電極層の材料は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。さらに透明電極層は1層のみを備える単層構造の層であってもよく、2層以上の層を備える複層構造の層であってもよい。
有機EL素子140は、透明電極層141と透明電極層143との間に、発光層142に加えてホール注入層、ホール輸送層、電子輸送層及び電子注入層等の他の層(図示せず。)をさらに有していてもよい。また、有機EL素子140は、透明電極層141及び透明電極層143に通電するための配線、発光層142の封止のための周辺構造等の任意の構成要素をさらに備えていてもよい。
透明電極層及びその間に設ける層を構成する材料としては、特に限定されないが、具体例として下記のものを挙げることができる。
透明電極層の材料としては、例えばITO(酸化インジウムスズ)等を挙げることができる。
正孔注入層の材料としては、例えばスターバースト系芳香族ジアミン化合物等を挙げることができる。
正孔輸送層の材料としては、例えばトリフェニルジアミン誘導体等を挙げることができる。
黄色発光層のホスト材料としては、例えばトリフェニルジアミン誘導体等を挙げることができ、黄色発光層のドーパント材料としては、例えばテトラセン誘導体等を挙げることができる。
緑色発光層の材料としては、例えばピラゾリン誘導体等を挙げることができる。
青色発光層のホスト材料としては、例えばアントラセン誘導体等を挙げることができ、青色発光層のドーパント材料としては、例えばペリレン誘導体等を挙げることができる。
赤色発光層の材料としては、例えばユーロピウム錯体等を挙げることができる。
電子輸送層の材料としては、例えばアルミニウムキノリン錯体(Alq)等を挙げることができる。
上記のもの又はその他の発光層を適宜組み合わせて積層型又はタンデム型と呼ばれる、補色関係にある発光色を発生する発光層を得ることができる。補色関係の組み合わせは、黄/青、又は緑/青/赤等とすることができる。
〔2.出光面構造層〕
出光面構造層100は、少なくともレンズアレイシート110を含む層であり、複数の層からなるものとしうるが、単一の層からなってもよい。所望の特性を備えた出光面構造層100を容易に得る観点からは、複数の層からなることが好ましい。図1に示すように、本実施形態に係る出光面構造層100は、レンズアレイシート110と、基板としての支持基板131と、レンズアレイシート110及び支持基板131を接着する接着層121とを備える。これにより、性能の高い出光面構造層100を容易に得ることができる。
(2−1.レンズアレイシート)
レンズアレイシート110は、凹凸構造を有する層(即ち、凹凸構造層)111を少なくとも片面に備えるシートであり、単一の層からなるシートであってもよく、複数の層からなるシートであってもよい。本実施形態では、レンズアレイシート110は、凹凸構造層111及び基材フィルム層112を含む複層シートとなっている。また、レンズアレイシート110は、有機EL素子140の片面(即ち発光面144)に、支持基板131及び接着層121を介して間接的に設けられている。
(凹凸構造の説明)
凹凸構造層111は、有機EL素子140の発光装置10の片方の表面(即ち発光装置10の一方の出光面側の最外層。図中の上側)に位置する層であり、この凹凸構造層111の有機EL素子140とは反対側の表面が出光面10Uとなっている。出光面10Uは、巨視的に見ると、有機EL素子140の発光面144と平行な面であり、発光装置10の主面と平行である。しかし、出光面10Uは、微視的に見ると、凹凸構造を有するため、凹部又は凸部上の面は発光面144と非平行な角度をなしうる。そこで、以下の説明において、出光面に対して平行又は垂直であるとは、別に断らない限り、凹部又は凸部を無視して巨視的に見た出光面に対して平行又は垂直であることをいう。また、発光装置10は、別に断らない限り、かかる出光面10Uが水平方向と平行で且つ上向きになるよう載置した状態で説明する。
さらに、構成要素が「平行」又は「垂直」であるとは、本発明の効果を損ねない範囲、例えば±5°の範囲内で誤差を含んでいてもよい。
凹凸構造層111が出光面10Uに有する凹凸構造は、有機EL素子140の発光面144に対して平行な平坦面部113及び114と、これらの平坦面部113及び114に対して傾斜した斜面部115とにより構成されている。具体的には、凹凸構造層111の出光面10Uは、平坦面部114を底面とし、かつ斜面部115を側面とする複数の凹部116と、隣接する凹部116間の隙間部分に相当する平坦面部113とを備えて構成される。ここで、斜面部が平坦面部に対して傾斜するとは、斜面部が平坦面部と平行でないことを表す。
なお、本明細書においては、図面は模式的な図示であるため、出光面10U上には僅かな個数の凹部116のみを示しているが、実際の発光装置及びレンズアレイシートにおいては、一枚の発光装置10の出光面10Uに、これよりも遥かに多い数の凹部を設けてもよい。
図3は、凹凸構造層111の出光面10Uの一部を、発光装置10の厚み方向から見た様子を拡大して模式的に示す部分平面図である。また、図4は、凹凸構造層111を、図3の線3aを通り出光面10Uに対して垂直な面で切断した断面を模式的に示す部分断面図である。なお、前記の線3aは、一列の凹部116の全ての平坦面部114の上を通る線であるものとする。また、以下の説明において「厚み方向」とは、特に断らない限り、発光装置10の厚み方向を指す。さらに、発光装置10の厚み方向は、通常はレンズアレイシート110の厚み方向に一致する。
図3に示すように、出光面10Uは、複数の凹部116と、これらの凹部116間の隙間部分である平坦面部113とを備えている。各凹部116は、それぞれ正四角錐の頂部を底面と平行に切り取った形状(角錐台形状)である。各凹部116は、その底部分に相当する四角形状の平坦面部114と、前記平坦面部114の四角形の四辺からそれぞれ延びる四面の斜面部115とにより構成されている。より具体的には、凹部116の底面である平坦面部114は正方形状である。また、凹部116を構成する四面の斜面部115は、いずれも同一の台形状である。さらに、斜面部115と平坦面部113との境界線117は、正方形を構成している。すなわち、本実施形態では、凹部116は、正四角錐台形状である。
凹部116は、通常、位置が離散的になるように設けられる。ここでは、複数の凹部116は、出光面10Uに対して平行で互いに直交する2方向X及びYに沿って配列されている。具体的には、凹部116は、一定の間隔Lを空けて、直交する2方向X及びYに沿って連続して配置されている。前記の2方向X及びYにおいて、隣り合う凹部116の間には隙間が設けられていて、この隙間が平坦面部113を構成している。したがって、出光面10Uにおいては、通常、平坦面部114の周囲には斜面部115が位置し、斜面部115の周囲(ひいては、凹部116の周囲)には平坦面部113が位置している。
図5は、発光装置10の出光面10Uの斜面部115を、平坦面部113及び114に対して垂直な方向に、平坦面部113及び114に対して平行な平面900へと投影した様子を模式的に示す投影図である。なお、本実施形態では、平坦面部113及び114に対して垂直な方向は、出光面10Uに対して垂直な方向、及び、発光装置10の厚み方向に対して平行な方向に一致する。また、平坦面部113及び114に対して平行な平面900は、出光面10Uに対して平行な平面となる。ただし、前記の平坦面部113及び114に対して平行な平面900は、発光装置10が有する平面ではなく、斜面部115の投影面積を測定するために設定される投影平面である。また、図5において、発光装置10の出光面10Uの斜面部115を、平坦面部113及び114に対して垂直な方向に、平坦面部113及び114に対して平行な平面900へと投影した投影像901には斜線を付して示す。
図5に示すように、本実施形態においては、斜面部115を、平坦面部113及び114に対して垂直な方向に、平坦面部113及び114に対して平行な平面900へと投影して形成される投影面積が、平坦面部113及び114の合計面積の、通常0.1倍以下、好ましくは0.05倍以下、より好ましくは0.01倍以下である。また、平坦面部113及び114の合計面積に対する斜面部115の投影面積の比の下限は、通常0.0001倍以上、好ましくは0.0005倍以上、より好ましくは0.001倍以上である。
出光面10Uが前記のような凹凸構造を有することにより、本実施形態の発光装置10は、以下の(i)〜(iii)のような効果を奏することができる。
(i)凹凸構造を有さない場合と比較して、発光装置10では、出光面10Uを通した光の取出効率を高めることができる。すなわち、平坦面部113及び114で内部反射することにより取り出すことができなかった光であっても、斜面部115を通してであれば取り出すことができるので、光の取出効率を向上させることができる。
(ii)発光装置10の向こう側を見通せるようになる。従来の片面発光型の発光装置に設けられる凹凸構造を両面発光型の発光装置に適用した場合、通常は斜面部の割合が大きくなることによりヘイズが大きくなり、発光装置の向こう側を見通せなくなる。これに対し、平坦面部113及び114の合計面積に対する斜面部115の投影面積の割合を前記の範囲に収めると、出光面10Uに対して垂直な方向から見た場合の凹凸構造によるヘイズの向上を抑制できる。したがって、本実施形態の発光装置10によれば、凹凸構造を有しながらもヘイズの上昇を抑制できるので、シースルーを損なわないようになっている。
(iii)外部衝撃により凹凸構造の欠け等が生じることを防止でき、ひいては出光面10Uの機械的強度を向上させることができる。一般に、面に凹凸構造があると、その面に衝撃が加えられた場合に当該凹凸構造の一部に力が集中し、破損を招きやすくなる傾向がある。ところが、本実施形態の発光装置10では、平坦面部113の厚み方向の位置(以下、適宜「高さ位置」という。)を揃えて均一で平坦な面としているため、外部から出光面10Uに加えられる力又は衝撃によって凹凸構造層111の一部に力が集中することを抑制できるようになっている。このため、凹凸構造層111の破損を防止し、良好な光取出効率と、発光装置10の出光面10Uの高い機械的強度とを両立させることができるようになっている。
さらに、図4に示すように、出光面10Uにおける平坦面部113及び平坦面部114の高低差(本実施形態では、凹部116の深さ)Hの最大値は、好ましくは12μm以下であり、11μm以下もしくは10μm以下としてもよい。なお、下限は、通常0.1μm以上であり、0.15μm以上もしくは0.2μm以上としてもよい。
平坦面部113及び114の高低差Hの最大値をこのような範囲に収めることにより、出光面10Uの法線方向に対して傾斜した方向(斜め方向)から見た場合にも発光装置10の向こう側を見通すことができるようになる。斜面部115の面積割合が大きいと、斜め方向から出光面10Uを見た場合のヘイズが大きくなる傾向がある。これに対し、平坦面部113及び114の合計面積(全面積)に対する斜面部115の投影面積の割合が前記の範囲に収まり、且つ、平坦面部113及び114の高低差Hの最大値が前記の範囲に収まることにより、斜め方向から見た場合のヘイズの向上を抑制できるので、斜め方向から発光装置10を見た場合でもシースルーを損なわないようにできる。
さらに、前記の平坦面部113及び114の高低差Hの最大値は、凹凸構造層111の厚みTとの関係で、適切な範囲にすることが好ましい。例えば、凹凸構造層111の材料として、凹凸構造層111の耐久性の維持に有利な硬質の材料を用いた場合、凹凸構造層111の厚みTを薄くしたほうが発光装置10の可撓性を高めることが可能となり、発光装置10の製造工程における凹凸構造層111の取り扱いが容易となるので、好ましい。具体的には、平坦面部113及び114の高低差Hの最大値と凹凸構造層111の厚みTとの差は、0〜30μmであることが好ましい。なお、本実施形態では、凹凸構造層111の厚さTとは、凹凸構造が形成されていない基材フィルム層112側の面と、平坦面部113との距離のことである。
図4に示すように、斜面部115は、平坦面部113及び114に対して、通常80°以上、好ましくは81°以上、より好ましくは82°以上、また、通常90°未満、好ましくは89°以下、より好ましくは88°以下の傾斜角度θで傾斜していることが好ましい。すなわち、斜面部115はいずれも平坦面部113及び114に対して平行でない面であるが、これらの斜面部115と平坦面部113及び114とがなす角度θが前記の範囲に収まることが好ましい。このように斜面部115の傾斜角度θが大きいことにより、光の取出効率を安定して高めることができる。また、傾斜角度θが小さい場合と比べ、傾斜角度θが大きいと斜面部115一つあたりの前記投影面積を小さくできるので、出光面10Uに対して垂直な方向から見た場合に発光装置10の向こう側をより明瞭に見通しやすくなる。出光面10Uに対して垂直な方向は発光装置10の正面方向に当たり、通常はこの正面方向から発光装置10の向こう側を見通す頻度が高いと想定されるため、前記の利点は実用上、有用である。
また、本実施形態では、全ての斜面部115の傾斜角度θは、同じ大きさに設定されているが、特に限定されず異なっていてもよい。
図3に示すように、出光面10Uは、平坦面部113及び114並びに2つの斜面部115を含む繰り返し構造が、2方向X及びYそれぞれに沿って繰り返し並んだ形状となっている。例えば方向Xにおいては、図4に示すように、平坦面部113、斜面部115、平坦面部114及び斜面部115がこの順に並んだ繰り返し構造118が繰り返し並んだ形状となっている。このような繰り返し構造118のピッチPは、通常0.1μm以上、好ましくは0.15μm以上、より好ましくは0.2μm以上であり、通常500μm以下、好ましくは450μm以下、より好ましくは400μm以下である。ピッチPが前記範囲の下限値以上となることにより取出効率が向上するという利点がある。また、ピッチPが前記範囲の上限値以下となることにより透明性がよくなるという利点がある。
凹凸構造層111の厚さTは、1μm〜70μmであることが好ましい。また、基材フィルム層112の厚さは、20μm〜300μmであることが好ましい。
(防曇性の説明)
本実施形態に係る凹凸構造層111は、防曇性を有する。ここで防曇性とは、曇り難い性質のことを意味する。この防曇性は、「JIS k 2399:自動車用くもり止め剤」のくもり止め性評価試験方法に準拠して、0.7mm厚のガラスにレンズアレイシートを固定して、凹凸構造層の表面(即ち、出光面10U)に70℃の水蒸気を3分間吹き付けた後のくもりによって評価できる。
凹凸構造層111が防曇性を有することによって、出光面10Uは高湿度下でも曇り難くなっている。このため、高湿度下において出光面10Uが曇って光の取出効率が低下することを防止できる。また、高湿度下において出光面10Uのヘイズが上昇してシースルーが損なわれることを防止することもできる。
前記のように防曇性を高める手段に制限はない。例えば、出光面10Uにおいて水が濡れ広がり易くすることによって防曇性を高めてもよい。水が濡れ広がり易いと、水蒸気が付着しても出光面10Uに水滴が形成され難くなるので、凹凸構造層111に優れた防曇性をもたせることができる。
水の濡れ広がり易さを高めるには、通常、水接触角が低い材料によって凹凸構造層111を形成する。具体的には、ある材料で凹凸の無い面(平坦面)を形成した場合に、当該平坦面で測定した水接触角が、通常65°以下、好ましくは50°以下、より好ましくは40°以下となる材料によって凹凸構造層111を形成することにより、出光面10Uの水の濡れ広がり易さを高めることができる。なお、前記の水接触角の下限は通常0°であるが、10°以上であってもよい。
(レンズアレイシートの材料の説明)
レンズアレイシート110は、通常、透明樹脂により形成する。本実施形態においては、レンズアレイシート110を構成する凹凸構造層111及び基材フィルム層112それぞれが、光学部材として用いるのに適した光線透過率を有するものとする。例えば、レンズアレイシート110全体として、80%以上の全光線透過率を有するものとしてもよい。
透明樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等を挙げることができる。本実施形態の場合、これらの透明樹脂を基材フィルム層の表面に塗布し、塗布された透明樹脂を硬化させることにより、凹凸構造層111を作製できる。なかでも、熱可塑性樹脂は熱による変形が容易であるため、また紫外線硬化性樹脂は硬化性が高く効率が良いため、凹凸構造層111の効率的な形成が可能となり、それぞれ好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル系、ポリアクリレート系、シクロオレフィン系等の樹脂が挙げられる。また、紫外線硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系、エン/チオール系、イソシアネート系等の樹脂が挙げられる。
転写性の観点から、熱転写により凹凸構造を形成する熱可塑性樹脂の粘度は、100℃の条件で、1000cP以下が好ましく、500cP以下がより好ましく、100cP以下がさらに好ましい。同様に、紫外線硬化により凹凸構造を形成する紫外線硬化樹脂の粘度は、25℃の条件で、1000cP以下が好ましく、500cP以下がより好ましく、100cP以下がさらに好ましい。
ただし、前記のように防曇性を高める観点から、凹凸構造層111の材料としては、当該材料により形成した平坦面の水接触角を小さくできる材料を用いることが好ましい。そこで、前記の水接触角を小さくする観点からは、凹凸構造層111は、重合性不飽和基を有する反応性界面活性剤を含む樹脂を硬化させた層が好ましい。
凹凸構造層111を製造する際、例えば基材フィルム層112に樹脂を塗布すると、塗膜の表面は、通常、空気に露出するか、又は、型等に接触することになる。そのため、塗膜の表面は、通常、樹脂と空気との界面、または、樹脂と型の材料との界面となる。このため、樹脂の塗膜において界面活性剤は塗膜の表面付近に密に存在する傾向がある。したがって、界面活性剤を含む樹脂を用いれば、樹脂を硬化させた後の凹凸構造層111の表面に界面活性剤を集めて親水性を高めることにより、水に対する接触角を小さくすることができる。
また、硬化前の樹脂に含まれる反応性界面活性剤は、樹脂を硬化させる際に重合性不飽和基が樹脂に含まれるモノマー又はポリマーと反応する。このため、硬化後の樹脂においては、反応性界面活性剤に由来する構造がポリマー鎖の一部(通常は、側鎖)として含まれることになる。すなわち、凹凸構造層111において反応性界面活性剤は、硬化後の樹脂においては遊離した分子として存在するのではなく、樹脂に含まれるポリマー鎖に結合した状態で存在する。したがって、出光面10Uに水が付着したり、その水を拭き取ったりしりしても界面活性剤が失われないようになっているので、凹凸構造層111を形成する材料の水接触角の変化を抑制し、長期間にわたって防曇性を維持することができる。
反応性界面活性剤においては、通常、重合性不飽和基が疎水性基として作用する。反応性界面活性剤が有する重合性不飽和基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ビニリデン基、プロペニル基、イソプロペニル基、イソブチリデン基等が挙げられる。なお、反応性界面活性剤が有する重合性不飽和基の種類は、1種類でもよく、2種類以上でもよい。
また、反応性界面活性剤は、親水性を発現する部分として、通常は親水性基を有する。反応性界面活性剤は、親水性基の種類により、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤に分類される。また、この親水性基は、重合性を有さないことが好ましい。親水性基が重合性を有すると、樹脂の硬化時に親水性基がモノマー又はポリマーと重合し、凹凸構造層111の出光面10Uの親水性を高めることができなくなる可能性がある。
アニオン系の親水性基としては、例えば、−SO3M、−COOM、−PO(OH)2等が挙げられる。ここでMは、水素原子又はカチオンを示す。カチオンとしては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属イオン;アンモニウムイオン;モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミンのアンモニウムイオン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンのアンモニウムイオンなどが挙げられる。
カチオン系の親水基としては、例えば、−Cl、−Br、−I、−SO3OR等が挙げられる。ここでRは、アルキル基を示す。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などが挙げられる。
ノニオン系の親水基としては、例えば、−OHが挙げられる。
これらの中でも、親水性基が塗膜表面に偏在しやすい特性を有するため、特にアニオン系の反応性界面活性剤が好ましい。なお、反応性界面活性剤が有する親水性基の種類は、1種類でもよく、2種類以上でもよい。
好適な反応性界面活性剤の例を挙げると、下記の式(I)で表される化合物が挙げられる。
式(I)において、Rは2価の結合基を表し、例えば−Si−O−基、メチレン基及びフェニレン基等が挙げられる。
また、式(I)において、R1は親水性基を表し、例えば−SO3NH4等が挙げられる。
さらに、式(I)において、nは1以上100以下の整数である。
なお、反応性界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
硬化前の樹脂に含まれる反応性界面活性剤の量は、硬化前の樹脂に含まれるモノマー100重量部に対して、通常1.0重量部以上、好ましくは3.0重量部以上、より好ましくは5.0重量部以上であり、通常20重量部以下、好ましくは15重量部以下、より好ましくは10重量部以下である。反応性界面活性剤の量を前記範囲の下限値以上とすることにより凹凸構造層111に防曇性を安定して発現させることができ、また上限値以下とすることにより膜強度を適切な範囲とすることができる。
また、凹凸構造層111は、水溶性アクリレートを含む樹脂を硬化させた層であることが好ましく、親水性の官能基であるエチレンオキサイド基、水酸基及びカルボキシル基からなる群より選ばれる一種類以上の基を分子内に有する水溶性アクリレートを含む樹脂を硬化させた層であることが特に好ましい。ここで水溶性とは、25℃において、その化合物0.5gを100gの水に溶解した際に、不溶分が0.5重量%未満であることをいう。また、水溶性アクリレートは、硬化前の樹脂に含まれていることが好ましく、硬化後の樹脂には通常、ポリアクリレートとして含まれる。
上述したように、水接触角の小さい材料で凹凸構造層111を形成することにより、凹凸構造層111は高い防曇性を備える。しかし、例えば出光面10Uに水が付着することにより凹凸構造層111が1回水に濡れると、その後で当該凹凸構造層111を乾燥させても、再び高湿度環境におかれた場合に凹凸構造層111の防曇性が低下することがある。しかし、硬化前の状態において前記の水溶性アクリレートを含む樹脂を硬化させて凹凸構造層111を形成すると、その凹凸構造層111は前記のように防曇性が低下し難くなる。このように防曇性の低下を抑制できる理由は定かではないが、前記の水溶性アクリレートに由来する構造を含むポリマーは吸水性を有するため、この吸水性の作用により防曇性が維持されているものと推察される。
前記の水溶性アクリレートの例としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及びブチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及びジブチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及びトリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のトリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及びテトラブチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のテトラアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及びポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエーテルトリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、水溶性アクリレートは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートを意味する。
また、膜の硬度、強度を適切な範囲にするために、硬化前の樹脂は、非水溶性多官能(メタ)アクリレートを含有してもよい。非水溶性多官能(メタ)アクリレートの例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリアルキレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリカプロラクトネートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンポリアルキレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールヘキサントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールヘキサンポリアルキレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールオクタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールオクタンポリアルキレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリヒドロキシベンゼン(ピロガロール等)ポリアルキレンオキサイド付加体トリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリアルキレンオキサイドテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラカプロラクトネートテトラ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンポリアルキレンオキサイドテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールエタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールエタンポリアルキレンオキサイドテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールブタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールブタンポリアルキレンオキサイドテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールヘキサンポリアルキレンオキサイドテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールオクタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールオクタンポリアルキレンオキサイドテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリアルキレンオキサイドペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリアルキレンオキサイドヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサカプロラクトネートヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールポリアルキレンオキサイドヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールポリアルキレンオキサイドヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールポリアルキレンオキサイドオクタ(メタ)アクリレート、等の各種(メタ)アクリレート;ジトリメチロールプロパンテトラカプロラクトネート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート等が挙げられる。
また、凹凸構造層111は、出光面10Uの凹凸構造を形成しやすく且つ凹凸構造の耐擦傷性を得やすいという観点から、硬化時の硬度が高い材料によって形成することが好ましい。具体的には、7μmの膜厚の樹脂層を基材上に凹凸構造が無い状態で形成した際に、鉛筆硬度で、好ましくはHB以上、更に好ましくはH以上、特に好ましくは2H以上になる材料で凹凸構造層111を形成することが望ましい。
一方、基材フィルム層112は、凹凸構造層111の形成に際しての取り扱い、並びに、レンズアレイシート110の取り扱いを容易とするために、ある程度の柔軟性がある材料で形成することが好ましい。このように、硬い凹凸構造層111と柔軟な基材フィルム層112とを組み合わせることにより、取り扱いが容易で且つ耐久性に優れるレンズアレイシート110を得ることができ、その結果、高性能の発光装置10を容易に製造することができる。
このような組み合わせは、それぞれの層を形成する樹脂として、上に例示した透明樹脂を適切に選択することにより得ることができる。具体的には、凹凸構造層111を上述した水溶性アクリレート等を含む紫外線硬化性樹脂によって形成し、一方、基材フィルム層112として脂環式オレフィンポリマー製のフィルム(例えば、日本ゼオン社製「ゼオノアフィルム」等)、ポリエステルフィルム又はポリカーボネートフィルムを用いることが好ましい。これらのフィルムには、凹凸構造を形成する樹脂との密着性を高めるために、あらかじめ易接着層を形成しておくことが好ましい。
また、レンズアレイシート110が凹凸構造層111と基材フィルム層112とを含む場合、凹凸構造層111と基材フィルム層112との屈折率はできるだけ近くするようにしてもよい。この場合、凹凸構造層111と基材フィルム層112との屈折率差は、好ましくは0.1以内、さらに好ましくは0.05以内である。
さらに、凹凸構造層111、基材フィルム層112等のレンズアレイシート110の構成要素となる層には、シースルーを阻害しない範囲で、光拡散性のある材料を用いてもよい。これにより、シースルーを維持しつつ、レンズアレイシート110を透過する光を拡散させることができ、観察角度による色味の変化等の不具合を低減し得る。
光拡散性のある材料としては、例えば、粒子を含んだ材料、2種類以上の樹脂を混ぜ合わせて光を拡散させるアロイ樹脂、等を挙げることができる。なかでも、光拡散性を容易に調節できるという観点から、粒子を含んだ材料が好ましい。
粒子は、透明であってもよく、不透明であってもよい。粒子の材料としては、例えば、金属及び金属化合物、並びに樹脂等が挙げられる。金属化合物としては、例えば、金属の酸化物及び窒化物を挙げることができる。金属及び金属化合物の具体例を挙げると、銀、アルミニウムのような反射率が高い金属;酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、窒化珪素、錫添加酸化インジウム、酸化チタン等の金属化合物;などを挙げることができる。一方、樹脂としては、例えば、メタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂等を挙げることができる。なお、粒子は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
また、粒子の形状は、例えば、球状、円柱状、立方体状、直方体状、角錐状、円錐状、星型状等の形状としてもよい。
さらに、樹脂は、必要に応じて任意の成分を含んでいてもよい。当該任意の成分としては、例えば、光重合開始剤;フェノール系、アミン系等の劣化防止剤;界面活性剤系、シロキサン系等の帯電防止剤;トリアゾール系、2−ヒドロキシベンゾフェノン系等の耐光剤;などの添加剤を挙げることができる。
(2−2.支持基板)
図1に示すように、本実施形態の発光装置10は、有機EL素子140とレンズアレイシート110との間に、支持基板131を備える。支持基板131を備えることにより、発光装置10に、たわみを抑制する剛性を与えることができる。また、支持基板131として、有機EL素子140を封止する性能に優れるものを用いれば、発光装置10の耐久性を向上させることができる。さらに、支持基板131として、有機EL素子140を構成する層を製造工程において支持基板131の上に順次容易に形成しうる基板を用いれば、発光装置10の製造を容易にすることができる。
支持基板131を構成する材料の例としては、通常、透明な材料を用いる。その例を挙げると、ガラス、樹脂などが挙げられる。なお、支持基板131の材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
支持基板131を構成する材料の屈折率は、特に制限されないが、1.4〜2.0とすることが好ましい。
支持基板131の厚さは、特に限定されないが、0.1mm〜5mmであることが好ましい。
(2−3.接着層)
本実施形態の発光装置10は、レンズアレイシート110と支持基板131との間に接着層121を備える。接着層121は、レンズアレイシート110の基材フィルム層112と支持基板131との間に介在して、これらの2層を接着する層である。
接着層121の材料である接着剤は、狭義の接着剤(23℃における剪断貯蔵弾性率が1〜500MPaであり、常温で粘着性を示さない、いわゆるホットメルト型の接着剤)のみならず、23℃における剪断貯蔵弾性率が1MPa未満である粘着剤をも包含する。具体的には、支持基板131あるいは基材フィルム層112に近い屈折率を有し、且つ透明な材料を適宜用いうる。より具体的には、例えばアクリル系接着剤あるいは粘着剤が挙げられる。接着層の厚さは、5μm〜100μmであることが好ましい。
〔3.封止基材〕
本実施形態の発光装置10は、発光面145に封止基材151を備える。封止基材151は、発光面145に直接接するように設けてもよい。また、発光面145と封止基材151との間に、充填材や接着剤等の任意の物質が存在していてもよいし、空隙が存在していてもよい。空隙には、発光層142の耐久性を大きく損なう等の不都合がない限りは空気やその他の気体が存在してもよいし、空隙内を真空としてもよい。
封止基材151としては、有機EL素子140を封止でき、発光面145から発せられる光を透過させる任意の部材を用いてもよい。例えば、支持基材131と同様の部材を用いてもよい。
〔4.製造方法〕
発光装置10の製造方法は、特に限定されないが、例えば、支持基板131の一方の面に有機EL素子140を構成する各層を積層する工程と、凹凸構造層111及び基材フィルム層112を有するレンズアレイシート110を用意する工程と、用意したレンズアレイシート110を接着層121を介して支持基板131の他方の面に貼付する工程と、有機EL素子140の支持基板131とは反対側の面に封止基材151を設ける工程とを行うことにより製造してもよい。なお、前記の各工程は、所望の発光装置10が得られる限り順番に制限はない。
凹凸構造層111及び基材フィルム層112を有するレンズアレイシート110の製造は、例えば、所望の形状を有する金型等の型を用意し、この型を凹凸構造層111を形成する材料の層に転写することにより行ってもよい。より具体的な方法としては、例えば、
(方法1)基材フィルム層112を構成する樹脂Aの層及び凹凸構造層111を構成する樹脂Bの層(凹凸構造はまだ形成されていない)を有する未加工レンズアレイシートを用意し、かかる未加工レンズアレイシートの樹脂B側の表面に、凹凸構造を形成する方法;及び
(方法2)基材フィルム層112の上に、液体状態の樹脂Bを塗布し、塗布された樹脂Bの層に型を当て、その状態で樹脂Bを硬化させ、凹凸構造層111を形成する方法
などを挙げることができる。
方法1において、未加工レンズアレイシートは、例えば樹脂A及び樹脂Bを共押出する押出成形により得てもよい。未加工レンズアレイシートの樹脂B側の表面に、所望の表面形状を有する型を押し当てることにより、凹凸構造を形成することができる。
より具体的には、長尺の未加工レンズアレイシートを押出成形により連続的に形成し、所望の表面形状を有する転写ロールとニップロールとで未加工レンズアレイシートを加圧し、それにより、連続的な製造を効率的に行うことができる。転写ロールとニップロールとによる挟み圧力は、好ましくは数MPa〜数十MPaである。また転写時の温度は、樹脂Bのガラス転移温度をTgとすると、好ましくはTg以上(Tg+100℃)以下である。未加工レンズアレイシートと転写ロールとの接触時間はフィルムの送り速度、すなわちロール回転速度によって調整でき、好ましくは5秒以上600秒以下である。
方法2において、凹凸構造層111を構成する樹脂Bとしては、紫外線等のエネルギー線により硬化しうる組成物を用いることが好ましい。かかる樹脂Bを、基材フィルム層112上に塗布し、型を当てた状態で、塗布面の裏側(基材フィルム層の、樹脂Bを塗布した面とは反対側)に位置する光源から、紫外線等のエネルギー線を照射し、樹脂Bを硬化させ、その後型を剥離することにより、樹脂Bの塗膜を凹凸構造層111とし、レンズアレイシート110を得ることができる。
〔5.主な利点の説明〕
本実施形態の発光装置10は上述したように構成されているため、有機EL素子140の発光面144から発せられる光は出光面構造層100を透過して出光面10Uを通って出光し、発光面145から発せられる光は封止基材151を透過して出光面10Dを通って出光する。この際、出光面10Uが平坦面部113及び114並びに斜面部115を含む凹凸構造を有するため、出光面10Uを通して光を高効率で取り出すことができる。
また、凹凸構造層111が防曇性を有するので、出光面10Uは高湿度下でも曇り難くなっている。このため、高湿度下において出光面10Uが曇って光の取出効率が低下することを防止できる。また、高湿度下において出光面10Uのヘイズが上昇してシースルーが損なわれることを防止することもできる。
さらに、発光装置10が備える層がいずれも透明であるため、発光装置10では、一方の出光面10Uに入射した光は発光装置10を透過して他方の出光面10Dを通って出光できるようになっており、また、他方の出光面10Dに入射した光も発光装置10を透過して一方の出光面10Uを通って出光できるようになっている。さらに、本実施形態では、平坦面部113及び114の合計面積に対する斜面部115の投影面積の割合を所定の範囲に収めてあるので、ヘイズを抑制できる。したがって、発光装置10を通じて反対側を肉眼で明瞭に見通すことができるようになり、シースルー型の発光装置を実現できる。
具体的には、発光装置10は、発光装置10全体として、通常60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上の全光線透過率を有する。なお、上限は理想的には100%であるが、通常は90%以下である。
さらに、発光装置10では凹凸構造の形状を適切に設定してあるので、発光装置10のヘイズは、発光装置10全体として、通常10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下と小さい値になっている。なお、下限値は理想的にはゼロであるが、通常は0.1%以上である。
〔第二実施形態〕
第一実施形態においては出光面に凹部を設け、この凹部により凹凸構造を構成したが、例えば、凹部の代わりに凸部を設けてもよい。以下、その例を、図面を用いて説明する。
図6〜図9はいずれも本発明の第二実施形態に係る発光装置を説明する図である。図6は発光装置を模式的に示す斜視図である。図7は図6に示す発光装置を線6a−6bを通り出光面の面方向に対して垂直な面で切断した断面を模式的に示す断面図である。図8は発光装置の出光面の一部を、発光装置の厚み方向から見た様子を拡大して模式的に示す部分平面図である。図9は凹凸構造層を、図8の線8aを通り出光面に対して垂直な面で切断した断面を模式的に示す部分断面図である。
図6〜図9に示すように、本発明の第二実施形態に係る発光装置20は、凹凸構造層111の代わりに凹凸構造層211を備えていること以外は、第一実施形態に係る発光装置10と同様である。この凹凸構造層211は、形状以外は凹凸構造層111と同様であり、凹凸構造層111と同様に防曇性を有する。すなわち、第二実施形態に係る発光装置20は、出光面構造層200を構成するレンズアレイシート210において、凹凸構造層211の表面である出光面20Uの形状が異なる他は、第一実施形態と同様の構成を有している。
出光面20Uの凹凸構造は、第一実施形態に係る出光面10Uの凹凸構造の凹凸を反転させたような形状であり、平坦面部213、平坦面部214及び斜面部215が、第一実施形態に係る平坦面部113、平坦面部114及び斜面部115にそれぞれ対応する。このため、出光面20Uは凹部116の代わりに凸部216を有し、凸部216は、正四角錐の頂部を底面と平行に切り取った形状を有する。また、凸部216は、それぞれ、発光面144に対して平行な平坦面部214を上面として有し、平坦面部214に対して傾斜した斜面部215を側面として有する。さらに、隣り合う凸部216の間には隙間が設けられていて、この隙間が、発光面144に対して平行な平坦面部213を構成している。なお、図9において符号「218」は平坦面部213、斜面部215、平坦面部214及び斜面部215を含む繰り返し単位を表す。
本実施形態の発光装置20は上述したように構成されているため、有機EL素子140の発光面144から発せられる光は出光面20Uを通って出光し、発光面145から発せられる光は出光面10Dを通って出光することになる。この際、凹凸構造層211が防曇性を有するので、出光面20Uは高湿度下でも曇り難くなっているため、出光面20Uが曇って光の取出効率が低下したり、ヘイズが上昇してシースルーが損なわれたりすることを防止できる。さらに、シースルーであることを維持しながら、高効率で光を取り出すことができる。また、第一実施形態と同様の効果を奏することができる。
〔第三実施形態〕
第一及び第二実施形態においては、有機EL素子の2つの発光面のうち片面にレンズアレイシートを設けるようにしたが、両方の発光面にレンズアレイシートを設けるようにしてもよい。以下、その例を、図面を用いて説明する。
図10は本発明の第三実施形態に係る発光装置を模式的に示す斜視図である。図10に示すように、本発明の第三実施形態に係る発光装置30は、封止基材151の代わりに出光面構造層100を備えること以外は、第一実施形態に係る発光装置10と同様である。これにより、発光装置30は、有機EL素子140の2つの発光面144及び145の両方に、出光面構造層100を備えることになる。したがって、発光装置30は、2つの出光面10U及び10Dの両方に、防曇性を有する凹凸構造層111を有するレンズアレイシート110を備えることになる。なお、本実施形態では、2つの発光面144及び145に、それぞれ同じ形状の凹凸構造層111を有するレンズアレイシート110を設けているが、必ずしもこのような形態には限定されず、一方の発光面144のレンズアレイシート110の凹凸構造層111の凹凸構造の形状と、他方の発光面145のレンズアレイシート110の凹凸構造層111の凹凸構造の形状を異なるものとしてもよい。
本実施形態の発光装置30は上述したように構成されているため、有機EL素子140の発光面144から発せられる光は出光面10Uを通って出光し、発光面145から発せられる光は出光面10Dを通って出光することになる。この際、凹凸構造層111が防曇性を有するので、出光面10U及び10Dの両方が高湿度下でも曇り難くなっているため、出光面10U及び10Dが曇って光の取出効率が低下したり、ヘイズが上昇してシースルーが損なわれたりすることを防止できる。さらに、シースルーであることを維持しながら、高効率で光を取り出すことができる。また、第一実施形態と同様の効果を奏することができる。
〔第四実施形態〕
第一〜第三実施形態においては、凹部及び凸部並びに当該凹部又は凸部に含まれる斜面部を、出光面に対して平行で互いに直交する2方向に沿って配列するようにしたが、これらは、直交しない2方向に沿って配列してもよく、3方向以上の方向に沿って配列してもよく、ランダムに配置してもよい。以下、その例を、図面を用いて説明する。
図11及び図12は、いずれも本発明の第四実施形態に係る発光装置を説明する図であって、図11は、発光装置を厚み方向から見た様子を模式的に示す上面図であり、図12は、図11に示す発光装置を、図11中の線11aを通る、出光面40Uと垂直な面で切断した断面を示す断面図である。
図11及び図12に示すように、本発明の第四実施形態に係る発光装置40は、凹凸構造層111の代わりに凹凸構造層411を備えていること以外は、第一実施形態に係る発光装置10と同様である。この凹凸構造層411は、形状以外は凹凸構造層111と同様であり、凹凸構造層111と同様に防曇性を有する。すなわち、第四実施形態にかかる発光装置40は、出光面構造層400を構成するレンズアレイシート410において、凹凸構造層411の表面である出光面40Uの形状が異なる他は、第一実施形態と同様の構成を有している。
凹凸構造層411の表面である出光面40Uには、円錐の頂部を底面と平行に切り取った形状(円錐台形状)の凹部416が複数形成されている。円錐台形状であるため、凹部416は、発光面144に対して平行な平坦面部414を底面として有し、平坦面部414に対して傾斜した斜面部415を側面として有する。また、出光面40U上において凹部416は、一定の間隔をおいて、線11a、11b及び11cに平行な3つの面内方向に沿って連続して配置されている。ここで、線11a、11b及び11cは、互いに60°の角度をなしている。したがって、隣り合う凹部416の間には、線11a、11b及び11cに沿って隙間が設けられ、この隙間が、発光面144に対して平行な平坦面部413を構成している。
本実施形態の発光装置40は上述したように構成されているため、有機EL素子140の発光面144から発せられる光は出光面40Uを通って出光し、発光面145から発せられる光は出光面10Dを通って出光することになる。この際、凹凸構造層411が防曇性を有するので、出光面40Uは高湿度下でも曇り難くなっているため、出光面40Uが曇って光の取出効率が低下したり、ヘイズが上昇してシースルーが損なわれたりすることを防止できる。さらに、シースルーであることを維持しながら、高効率で光を取り出すことができる。また、第一実施形態と同様の効果を奏することができる。
〔第五実施形態〕
第一〜第四実施形態においては、同じ出光面に形成される凹部又は凸部の寸法を一定にし、ひいては凹凸構造が有する平坦面部及び斜面部の寸法もそれぞれ一定に形成したが、寸法を不揃いにして寸法差を設けるようにしてもよい。中でも、出光面を通って出光する出射光及び出光面で反射した反射光の一方又は両方の干渉をもたらす差異を超える寸法差を設けると、前記の出射光及び反射光の一方又は両方の干渉による虹ムラを抑制できるため、好ましい。例えば、凹部又は凸部の深さ又は高さに当たる平坦面部の高低差に、前記の寸法差があることが好ましい。なお、出光面を通って出光する出射光には、有機EL素子が発した光だけでなく、当該出光面の反対側から発光装置へ入射して発光装置を透過した透過光も含む。以下、このような凹凸構造の例を、図面を用いて説明する。
図13は本発明の第五実施形態に係る凹凸構造層の断面を模式的に示す断面図である。図13に示すように、本発明の第五実施形態に係る凹凸構造層511の表面である出光面50Uには、平坦面部514を底面とし斜面部515を側面とする凹部516と、平坦面部517を底面とし斜面部518を側面とする凹部519とが、それぞれ複数設けられている。また、凹部516及び519の間には隙間が設けられていて、この隙間が平坦面部513を構成している。
ここで、凹部516の深さ(すなわち、平坦面部513と平坦面部514との高低差)H516は、凹部519の深さ(すなわち、平坦面部513と平坦面部517との高低差)H519よりも小さくなっている。この場合、凹部516の深さH516と凹部519の深さH519との間に、出射光及び反射光の一方又は両方の干渉をもたらす差異を超える寸法差H519−H516があると、干渉による虹ムラを抑制できる。この際、前記の寸法差H519−H516は、出射光の干渉をもたらす差異を超える寸法差であってもよいが、出射光よりも反射光の方が虹ムラへの影響が大きい傾向があるので、反射光の干渉をもたらす差異を超える寸法差であることが好ましく、出射光及び反射光の両方の干渉をもたらす差異を超える寸法差であることがより好ましい。より具体的には、前述した寸法差が無い場合には、例えば、凹凸構造層511の上面における平坦面部513、514および517での反射光と凹凸構造層511の下面での反射光との間で干渉が起こり虹ムラが生じていた。しかしながら、凹凸構造に前記所定の寸法差を備えることにより、反射光間の干渉を抑えることができ、出光面50Uにおける虹ムラを抑えることができる。
前記の干渉をもたらす差異を超える寸法差とは、有機EL素子140から発せられた出射光の干渉を例に挙げると、例えば、出射光の中心波長の、通常0.62倍以上、好ましくは1.5倍以上の寸法差である。この寸法差を設けることにより、虹ムラの発生を抑制することができる。かかる寸法差の上限は特に限定されないが、好ましくは、出射光の中心波長の60倍以下である。
上記数値範囲は、以下に示す知見から確認している。すなわち、凹部の深さを全て揃える態様で設計した凹凸構造層において、凹部の深さに170nm以上の誤差が生じると干渉が発生して虹ムラが現れるという場合に、かかる虹ムラを発生させる誤差の最小値の2倍以上の高さの寸法差を敢えて設けると、虹ムラの発生を抑制することができることが分かっている。さらに、凹部の深さを全て揃える態様で設計した凹凸構造層において、凹部の深さに標準偏差でσ1nm(≒60nm)のバラツキが生じると干渉が発生し虹ムラが現れるという場合、6×σ1nm(=360nm)以上の寸法差を敢えて設けることにより、虹ムラの発生を抑制することができることが分かっている。上記2つの知見により、出射光の干渉をもたらす差異を超える寸法差は、発光装置が出光する光の中心波長の0.62倍以上であると示すことができる。
また、同様の理由から、透過光及び反射光の干渉では、干渉をもたらす差異を超える寸法差は、透過光及び反射光の中心波長の、通常0.62倍以上、好ましくは1.5倍以上の寸法差であり、また通常60倍以下の寸法差である。ただし、通常は、透過光及び反射光は自然光であり、任意の波長を含む光であるため、反射する光の中心波長を決定することは難しい。そこで、虹ムラの原因となる光が可視光であることに鑑みて、通常は、可視光の中心波長である550nmを反射する光の中心波長として、前記の寸法差を設定する。
さらに、本実施形態のように凹凸構造が寸法差を有するようにした場合でも、凹凸構造層511が防曇性を有するので、出光面50Uは高湿度下でも曇り難くなっているため、出光面50Uが曇って光の取出効率が低下したり、ヘイズが上昇してシースルーが損なわれたりすることを防止できる。さらに、シースルーであることを維持しながら、高効率で光を取り出すことができる。また、第一実施形態と同様の効果を奏することができる。
なお、平坦面部の高低差以外の要素において、前記の寸法差を設けた場合でも、同様の効果を得ることができる。例えば、平坦面部の高低差、凹部又は凸部の間隔、繰り返し構造のピッチ、などの要素群のうち1つ以上の要素において前記の寸法差があれば、同様に虹ムラを抑制することができる。
〔第六実施形態〕
本発明に係るレンズアレイシートは、有機EL素子を備える発光装置であれば、任意のものに適用できる。したがって、有機EL素子に対して対称な層構造を有する発光装置に対して上述したレンズアレイシートを設けてもよく、有機EL素子に対して非対称な層構造を有する発光装置に対してレンズアレイシートを設けてもよい。例えば、第三実施形態では対称な層構造の発光装置の例を示したが、有機EL素子に対して非対称な層構造を有する発光装置にレンズアレイシートを適用してもよい。以下、その例を、図面を用いて説明する。
図14は本発明の第六実施形態に係る発光装置を模式的に示す斜視図である。図14に示すように、本発明の第六実施形態に係る発光装置60は、有機EL素子140の第二の透明電極層143と封止基材151との間に不活性ガス層661を備えること以外は第一実施形態に係る発光装置10と同様である。
不活性ガス層661は外部から浸入する酸素及び湿気が有機EL素子140を劣化させないように保護する層であり、窒素ガス等の不活性ガスが充填された層である。なお、通常は発光装置60の側面は図示しない封止部材で封止されるため、不活性ガス層661内のガスが外部に漏れ出すことは無い。
この発光装置60は、有機EL素子140の一方の発光面145側にだけ不活性ガス層661を有する点で、有機EL素子140に対して非対称な層構造を有する。このような発光装置60であっても、凹凸構造層111が防曇性を有するので、出光面60Uは高湿度下でも曇り難くなっているため、出光面60Uが曇って光の取出効率が低下したり、ヘイズが上昇してシースルーが損なわれたりすることを防止できる。さらに、シースルーであることを維持しながら、高効率で光を取り出すことができる。また、第一実施形態と同様の効果を奏することができる。
〔その他〕
本発明の発光装置及びレンズアレイシートについて実施形態を示して説明したが、本発明は更に変更して実施してもよい。
例えば、上述した実施形態ではレンズアレイシートを粘着層及び支持基板を介して有機EL素子の発光面に設けたが、発光面に他の層を介さずに直接に接するように設けてもよい。
また、例えば、上述した実施形態では発光面に直接に接するように出光面構造層を設けたが、出光面構造層は他の層を介して発光面に設けられていてもよい。他の層としては、例えば、有機EL素子を外気及び湿気から保護するガスバリア層、紫外線を遮断する紫外線カット層などが挙げられる。
また、例えば、上述した実施形態では、レンズアレイシートとしては、凹凸構造層及び基材フィルム層からなるものを示したが、出光面構造層は、これらよりも少ない層から構成されたものであってもよく、又は逆にこれらの層に加えて任意の層をさらに含むものであってもよい。
また、例えば、平坦面部及び斜面部の位置、向き、形状、数及びこれらの組み合わせは、実施形態のものに限られず、変更してもよい。
具体例を挙げると、平坦面部は、上述した実施形態のように高さ位置を2段階に揃えて設ける以外にも、図15に示すように1段階に揃えて設けてもよい。図15は、本発明の別の実施形態に係る凹凸構造層の断面を模式的に示す断面図である。図15に示す凹凸構造層711の出光面70Uにおいては、円錐、角錐等の錐形状の凹部716の側面として斜面部715が設けられ、隣り合う凹部716間の隙間に高さ位置を揃えて平坦面部713が設けられている。このように平坦面部の高さ位置を1段階に揃える場合でも、上述した実施形態と同様の利点が得られる。
また、例えば、図16に示すように、平坦面部の高さ位置を3段階以上に揃えるようにしてもよい。図16は、本発明の別の実施形態に係る凹凸構造層の断面を模式的に示す断面図である。図16に示す凹凸構造層811の出光面80Uにおいて凹部816は平坦面部814及び817並びに斜面部815及び818を有する。また、底面として平坦面部814の周囲に斜面部815が設けられ、斜面部815の周囲に平坦面部817が設けられ、平坦面部817の周囲に斜面部818が設けられ、隣り合う凹部816間の隙間に平坦面部813が設けられている。このように平坦面部の高さ位置を3段階以上の複数段階で揃える場合でも、上述した実施形態と同様の利点が得られる。なお、平坦面部の高さ位置を3段階以上の複数段階で揃える場合、厚み方向の平坦面部の高低差の最大値は、図16において符号HMAXで示す寸法となる。
また、上述した実施形態のように斜面部を平坦な平面とする以外にも、図17に示すように曲面としてもよい。図17は本発明の別の実施形態に係る構造層の断面を模式的に示す断面図である。図17に示す凹凸構造層911の出光面90Uにおいては、凹部916の底面として平坦面部914が設けられ、平坦面部914の周囲に、平坦面部914からの距離が離れるにつれて次第に傾斜角度が増加又は減少する曲面状の斜面部915が設けられ、斜面部915の周囲に平坦面部913が設けられている。このように斜面部が曲面となっている場合でも、上述した実施形態と同様の利点が得られる。
したがって、出光面に形成される凹部及び凸部の形状は、例えば、角錐台形状、円錐台形状、球面の一部の形状、及びこれらを組み合わせた形状など、様々な形状を有しうる。また、前記の角錐台形状の底面の形状は、三角、五角、六角、正方形以外の四角形などの形状とすることもできる。
また、上述した実施形態では、出光面の全面に分布する凹部又は凸部として、同一の形状からなるもののみが分布しているものを示したが、出光面には異なる形状の凹部又は凸部が混在していてもよく、また、凹部と凸部とが混在していてもよい。例えば、大きさの異なる凹部又は凸部が混在していたり、角錐台形状及び円錐台形状の凹部又は凸部が混在していたり、異なる傾斜角度の斜面部が混在していたりしてもよい。
また、例えば、上述した実施形態では、凹部及び凸部の幅、並びに、隣り合う凹部同士の間隔及び凸部同士の間隔については、一定のものを示したが、凹部及び凸部の幅が狭いものと広いものとが混在していてもよく、また、隣り合う凹部同士の間隔及び凸部同士の間隔が狭い箇所と広い箇所とが混在していてもよい。
さらに、例えば、シースルータイプ以外の発光装置に本発明に係るレンズアレイシートを適用してもよい。具体例を挙げると、上述した実施形態において、第二電極として透明電極層143の代わりに反射電極層を設けたり、透明電極層143と封止基材151との間に反射層を設けたりしてもよい。この場合でも、シースルー以外の点では上述した実施形態と同様の利点が得られる。
〔用途〕
本発明の発光装置は、例えば、照明器具、バックライト装置、表示装置等の用途に用いることができる。
照明器具は、本発明の発光装置を光源として有し、さらに、必要に応じて、光源を保持する部材、電力を供給する回路等の任意の構成要素を備える。
また、バックライト装置は、本発明の発光装置を光源として有し、さらに、必要に応じて、筐体、電力を供給する回路、出光する光をさらに均一にするための拡散板、拡散シート、プリズムシート等の任意の構成要素を含む。バックライト装置の用途は、液晶表示装置等、画素を制御して画像を表示させる表示装置、並びに看板等の固定された画像を表示させる表示装置のバックライト等が挙げられる。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。なお、以下の説明において、量を示す「部」及び「%」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
〔試薬の説明〕
(アクリルモノマーの説明)
テトラエチレングリコールジアクリレートとしては、東京化成工業社製の試薬を用いた。
エトキシ化フェニルアクリレートとしては、ダイセルサイテック社製「EBECRYL114」を用いた。
トリメチロールプロパントリアクリレートとしては、ダイセルサイテック社製「TEMPTA」を用いた。
トリシクロデカンジメタノールジアクリレートとしては、ダイセルサイテック社製「IRR214−k」を用いた。
(界面活性剤の説明)
ポリオキシエチレンアルキルエーテル基を含有する反応性界面活性剤として、第一工業製薬社製「アクアロンKH−10」を用いた。
エーテル基とシロキサン基を含有する反応性界面活性剤として、ビックケミージャパン社製「BYK−UV3500」を用いた。
パーフルオロアルキル基を含有する反応性界面活性剤として、ネオス社製「フタージェント601A」を用いた。
(光重合開始剤の説明)
光重合開始剤としては、チバスペシャリティーケミカル社製「イルガキュアー184」を用いた。
〔配合液の調製〕
下記表1に示す組み合わせ及び量で試薬を混合して、配合液A〜Hを作製した。
得られた配合液の粘度を、液温度が25℃の条件で音叉型振動式粘度計(A&D社製「SV−10」)を用いて測定した。また、得られた配合液の屈折率を、アッベ屈折率計(アタゴ社製「DR−A1」)を用いて測定した。結果を表1に示す。
〔実施例1〕
(基材フィルムの製造)
ウレタン樹脂の水分散液(第一工業製薬社製「スーパーフレックス210」、固形分濃度35%)170部、アジピン酸ジヒドラジド(和光純薬社製)6部、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製「デナコールEX−521」)3部、および純水1800部からなる混合物を、均一に撹拌混合した後、孔径3μmのフィルターでろ過して、易接着用塗布液1を得た。
次いで、幅1300mm、長さ1000mのフィルム(日本ゼオン社製「ゼオノアフィルム ZF−14−100」、厚さ100μm、屈折率1.53)の表面に、コロナ放電処理装置(春日電機社製)を用いて、放電量500W・min/m2でコロナ放電処理を行った。コロナ放電処理を施した面に、グラビアコーターを用いて、乾燥膜厚が0.1μmになるように易接着用塗布液1を塗布し、95℃で乾燥させて易接着層を形成し、基材フィルムを得た。
(凹凸層の形成)
得られた基材フィルムの易接着層側の面に配合液Aを50μmの膜厚で塗布して塗膜を形成し、塗膜上に金属モールドを押し付けた。この状態で、紫外線を1.5mJ/cm2照射し塗膜を硬化させ、凹凸構造を有する凹凸構造層(厚み12μm)を形成した。凹凸構造を作製する金属モールドは、図18に示すように、頂角が15°、先端幅W0が5μmの切削バイト1を用いて、型とする金属板2の一方の表面において図18に示す繰り返し単位を面内のある方向に沿って切削し、続いてかかる方向に直交する方向に沿って切削して得た。切削は一定の切削ピッチPで行った。また、切削により形成される溝の深さはH1〜H5の5段階に変え、こうして形成される5本の溝を繰り返し単位として、繰り返し切削を行った。本実施例においては、切削ピッチPを35μmにし、繰り返し単位に含まれる溝の深さH1〜H5は、H1が7.6μm、H2が7.3μm、H3が7μm、H4が6.7μm、およびH5が6.4μmとなるようにした。また、こうして形成される5本の溝の幅W1〜W5は、W1が7.00μm、W2が6.92μm、W3が6.84μm、W4が6.76μm、およびW5が6.69μmであった。なお、評価用として、フィルム端面から50mmの幅で溝の彫られていない平坦な部分を設けた。
図19は、得られた凹凸構造層を、切削方向に垂直な平面で切った断面の様子を模式的に示す図である。図19に示すように、得られた凹凸構造層3の表面には、金属モールドに形成された溝に対応して四角錐台形状の凹部を多数有する凹凸構造が形成され、凹部の周囲には高さ位置およびピッチが異なる複数の平坦面が設けられた。この凹凸構造層3の凹凸構造が形成された面において、平坦面部に対する斜面部の平均傾斜角度は82.5°であった。また、平坦面部の合計面積(全面積)に対する斜面部の投影面積の比は0.1であり、平坦面部の高低差の最大は7.6μmであった。なお、四角錐台形状の凹部の底辺の長さの平均値は30μmであり、深さの平均値は7μmであった。
こうして、基材フィルムの表面に凹凸構造層を備えるレンズアレイシートを得た。
(透明有機EL素子の製造)
主面に透明電極層が形成されたガラス基板上に、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、ホール阻止層、電荷発生層、金属酸化物層及び陰極を、この順に形成した。各層を形成した材料と膜厚は下記の通りである。
・透明電極層:ITO 300nm
・ホール注入層:三酸化モリブデン(MoO3) 5nm
・ホール輸送層:NS−21[新日鉄化学株式会社製]及びMoO3 20nm、さらにNS21 5nm、合計25nm
・発光層:NS21及びEY52(e−Ray Optoelectronics Technology社(以下、e−Ray社とする)製)20nm、さらにEB43及びEB52(共にe−Ray社製)30nm、合計50nm
・ホール阻止層:ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム(BAlq) 5nm
・電荷発生層:Liq及びDPB 35nm、さらにアルミニウム 1.5nm、さらにNS21及びMoO3 10nm、合計37.5nm
・金属酸化物層:MoO3 5nm
・陰極:ITO 100nm
ホール注入層から金属酸化物層までの形成は、真空蒸着装置内に透明電極層を既に形成したガラス基板を設置し、上記のホール輸送層から金属酸化物層までの材料を抵抗加熱式により順次蒸着させることにより行なった。系内圧は5×10−3Paで、蒸発速度0.1nm/s〜0.2nm/sで行った。その後、陰極層のITOは、対向ターゲット型スパッタ法により製膜した。これを、UV硬化樹脂を用いて、別のガラス板により封止し、透明有機EL素子1を得た。得られた透明有機EL素子1に通電し駆動させたところ、良好な白色の発光が得られ、正面方向及び斜め方向共に、透明性が優れていた。なお、ここで正面方向とは発光面の法線方向に平行な方向を指し、斜め方向とは発光面に対して45°傾斜した方向を指す。
(発光装置1の製造)
得られた透明有機EL素子1にレンズアレイシートを粘着層(アクリル系樹脂、屈折率1.49、日東電工社製「CS9621」)を介して貼り合せ、透明有機EL素子1−粘着層−基材フィルム−凹凸構造層との層構成を有する発光装置1を得た。得られた発光装置1を通電して発光させ、発光装置1の透過性を目視で評価すると、正面方向及び斜め方向からの透明性が優れていた。
〔実施例2〜4及び比較例1〜4〕
実施例1の配合液Aを配合液B〜Hにそれぞれ変更した以外は実施例1と同様にして、発光装置2〜8を製造した。
〔評価〕
製造した発光装置1〜8をそれぞれ以下の評価方法で評価した。評価結果は表2に示す。
(水接触角の測定)
接触角計(協和界面化学社製「Drop Master DM301」)を用いて、凹凸構造層の表面の純水を滴下した5秒後の水接触角を測定した。測定には、フィルム端から50mmの、溝が形成されていない平坦面を用いた。
(防曇性の評価)
「JIS k 2399:自動車用くもり止め剤」のくもり止め性評価試験方法に準拠して、0.7mm厚のガラスにレンズアレイシートを固定して、凹凸構造層の表面に70℃の水蒸気を3分間吹き付けた後のくもりを評価した。繰り返し回数5回でくもりの無いものを「優」、2回ではくもりが発生しないが5回でくもりが発生するものを「良」、1回目からくもりの発生するものを「不良」とした。この結果を初期の防曇性とした。
(浸水試験後の防曇性の評価)
レンズアレイシートを40℃の純水に3分間浸し、浸水試験を実施した。浸水試験後の発光装置の凹凸構造層の表面に付着した水をエアーガンで除去した後、上記の防曇性の評価方法で評価した。この結果を浸水後防曇性1とした。
また、浸水試験後に、80℃のオーブンで5分間乾燥した後に、上記の防曇性の評価方法で評価した。この結果を浸水後防曇性2とした。
(光取り出し量の評価)
実施例1で得られた透明有機EL素子1、並びに、実施例1〜4及び比較例1〜4で得られた発光装置1〜8について、プログラムを用いた光学シミュレーションで、発光層の光度を1lmとし、両面からでてくる光度をそれぞれ算出した。プログラムとしては、Optical Reserch Associates社製「Light Tools」を用いた。レンズアレイシートが無い場合の光度(すなわち、透明有機EL素子1の光度)と比較して、面発光装置1〜8では、凹凸構造層が設けられた側の出光面(すなわち、凹凸構造層の表面)からの光取出量は約3.3倍、凹凸構造層の無い側の出光面(すなわち、ガラス板の表面)からの光取出量は約1.4倍であった。
(透明性、虹ムラ)
5mm×5mmサイズの文字を配列した表示面の50cm手前に、透明有機EL素子1および発光装置1〜8を非点灯状態で配置した。透明有機EL素子1および発光装置1〜8を通して、正面方向および斜め方向から文字を観察した。いずれも文字のにじみやゆがみが無くはっきり読み取れた。また、目視観で虹ムラの有無を確認したが、凹凸構造の高低差を所定範囲で不揃いとしているため、凹凸構造層の表裏面での反射光における干渉に基づく虹ムラがほとんど観察されなかった。
〔検討〕
実施例の結果から、水接触角が小さい材料を用いて凹凸構造層を形成すれば、優れた防曇性が得られることが分かる。凹凸構造層が防曇性を有すれば、高湿度下においても凹凸構造による光取出効率の向上効果が得られるので、光の取出効率が高く、高湿度下でも特性に優れる発光装置を実現できる。