以下、添付図面を参照して、本願の開示する剥離装置、剥離システム、剥離方法および剥離プログラムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
(第1の実施形態)
<1.剥離システム>
まず、第1の実施形態に係る剥離システムの構成について、図1および図2を参照して説明する。図1は、第1の実施形態に係る剥離システムの構成を示す模式平面図であり、図2は、重合基板の模式側面図である。なお、以下においては、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。
図1に示す第1の実施形態に係る剥離システム1は、被処理基板Wと支持基板Sとが接着剤Gで接合された重合基板T(図2参照)を、被処理基板Wと支持基板Sとに剥離する。
以下では、図2に示すように、被処理基板Wの板面のうち、接着剤Gを介して支持基板Sと接合される側の板面を「接合面Wj」といい、接合面Wjとは反対側の板面を「非接合面Wn」という。また、支持基板Sの板面のうち、接着剤Gを介して被処理基板Wと接合される側の板面を「接合面Sj」といい、接合面Sjとは反対側の板面を「非接合面Sn」という。
被処理基板Wは、たとえば、シリコンウェハや化合物半導体ウェハなどの半導体基板に複数の電子回路が形成された基板であり、電子回路が形成される側の板面を接合面Wjとしている。また、被処理基板Wは、たとえば非接合面Wnが研磨処理されることによって薄型化されている。一方、支持基板Sは、被処理基板Wと略同径の基板であり、被処理基板Wを支持する。支持基板Sとしては、シリコンウェハの他、たとえば、化合物半導体ウェハまたはガラス基板などを用いることができる。
剥離システム1は、図1に示すように、搬入出ステーション10と、第1搬送領域20と、剥離処理ステーション30と、第2搬送領域40と、制御装置50とを備える。搬入出ステーション10および剥離処理ステーション30は、第1搬送領域20を介してY軸方向に並べて配置される。また、搬入出ステーション10、第1搬送領域20および剥離処理ステーション30のX軸負方向側には、第2搬送領域40が配置される。
剥離システム1では、搬入出ステーション10へ搬入された重合基板Tが第1搬送領域20を介して剥離処理ステーション30へ搬送され、剥離処理ステーション30において被処理基板Wと支持基板Sとに剥離される。そして、剥離後の被処理基板Wは第2搬送領域40を介して後処理ステーションMへ搬送され、剥離後の支持基板Sは第1搬送領域20を介して搬入出ステーション10へ搬送される。なお、剥離システム1では、不良となった被処理基板Wを第1搬送領域20を介して搬入出ステーション10へ搬送することもできる。
搬入出ステーション10では、複数の被処理基板Wが収容されるカセットCw、複数の支持基板Sが収容されるカセットCsおよび複数の重合基板Tが収容されるカセットCtが剥離システム1の外部との間で搬入出される。かかる搬入出ステーション10には、カセット載置台11が設けられており、このカセット載置台11に、カセットCw,Cs,Ctのそれぞれが載置される複数のカセット載置板12a〜12cが設けられる。
なお、カセットCwには、たとえば、不良品として剥離処理ステーション30から搬送されてきた被処理基板Wが収容される。
また、搬入出ステーション10には、仮置台13が設けられる。仮置台13は、後述する第1搬送装置200が、第1フォーク210および第2フォーク220間において基板の持ち替えを行う場合に、基板が一時的に載置される台である。かかる仮置台13には、鉛直上向きに突出する3本の支持ピン13aが設けられる。仮置台13を用いた基板の持ち替え動作については、後述する。なお、仮置台13は、搬入出ステーション10以外の場所に設置されてもよい。
第1搬送領域20では、搬入出ステーション10および剥離処理ステーション30間における被処理基板W、支持基板Sおよび重合基板Tの搬送が行われる。第1搬送領域20には、被処理基板W、支持基板Sおよび重合基板Tの搬送を行う第1搬送装置200が設置される。
第1搬送装置200は、水平方向への移動、鉛直方向への昇降および鉛直方向を中心とする旋回が可能な搬送アーム部と、この搬送アーム部の先端に取り付けられた基板保持部とを備える基板搬送装置である。かかる第1搬送装置200は、基板保持部を用いて基板を保持するとともに、基板保持部によって保持された基板を搬送アーム部によって所望の場所まで搬送する。なお、第1搬送装置200は、基板保持部として第1フォーク210および第2フォーク220の2つのフォークを備えるが、かかる点については後述する。
剥離処理ステーション30では、重合基板Tの剥離、剥離後の被処理基板Wおよび支持基板Sの洗浄等が行われる。この剥離処理ステーション30には、剥離室31、受渡室32、第1洗浄装置33および第2洗浄装置34が、X軸正方向に、第1洗浄装置33、受渡室32、剥離室31、第2洗浄装置34の順で並べて配置される。
剥離室31では、重合基板Tを被処理基板Wと支持基板Sとに剥離する剥離処理が行われる。剥離後の被処理基板Wは、受渡室32に設置される第2搬送装置35を介して第1洗浄装置33へ搬送され、剥離後の支持基板Sは、第1搬送装置200によって第2洗浄装置34へ搬送される。剥離室31において剥離処理を行う剥離装置の構成および剥離処理の具体的な内容については、たとえば図3等を用いて後述する。
受渡室32には、剥離室31において重合基板Tから剥離された被処理基板Wを第1洗浄装置33へ搬送する第2搬送装置35が設置される。第2搬送装置35は、ベルヌーイチャックを備え、かかるベルヌーイチャックを用いて被処理基板Wを非接触状態で第1洗浄装置33へ搬送する。
ベルヌーイチャックは、吸着面に設けられた噴射口から被処理基板Wの板面へ向けて気体を噴射させ、吸着面と被処理基板Wの板面との間隔に応じて気体の流速が変化することに伴う負圧の変化を利用して被処理基板Wを非接触状態で保持する。
第1洗浄装置33は、第2搬送装置35によって搬送された被処理基板Wの洗浄を行う。第1洗浄装置33によって洗浄された被処理基板Wは、第2搬送領域40を介して後処理ステーションMへ搬送され、後処理ステーションMにおいて所定の後処理が施される。なお、所定の後処理とは、たとえば被処理基板Wをマウントする処理や、被処理基板Wをチップ毎にダイシングする処理などである。
第2洗浄装置34は、剥離室31において重合基板Tから剥離された支持基板Sの洗浄を行う。第2洗浄装置34によって洗浄された支持基板Sは、第1搬送装置200によって搬入出ステーション10のカセット載置台11へ搬送される。
第2搬送領域40は、剥離処理ステーション30と後処理ステーションMとの間に設けられる。第2搬送領域40には、Y軸方向に延在する搬送路41上を移動可能な第3搬送装置42が設置され、この第3搬送装置42によって剥離処理ステーション30および後処理ステーションM間における被処理基板Wの搬送が行われる。第3搬送装置42は、第2搬送装置35と同様、ベルヌーイチャックを用いて被処理基板Wを非接触状態で搬送する。
制御装置50は、剥離システム1の動作を制御する装置である。この制御装置50は、たとえばコンピュータであり、図示しない制御部と記憶部とを備える。記憶部には、剥離処理等の各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部は記憶部に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって剥離システム1の動作を制御する。
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体に記録されていたものであって、その記録媒体から制御装置50の記憶部にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記録媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
以下では、剥離装置の具体的な構成および剥離装置を用いて行われる重合基板Tの剥離動作について説明する。
<2.剥離装置の構成>
まず、剥離装置の構成について図3および図4A〜図4Cを参照して説明する。図3は、第1の実施形態に係る剥離装置の構成を示す模式側面図であり、図4Aは、第2フォーク220の形状を示す模式平面図である。また、図4Bは、図4Aに示すA−A’線矢視の模式端面図であり、図4Cは、図4Aに示すH1部の模式拡大図である。
図3に示すように、剥離装置100は、保持部110と、規制部120と、第1搬送装置200とを備える。また、第1搬送装置200は、第2フォーク220と搬送アーム部230とを備える。
保持部110は、第1搬送装置200が備える第2フォーク220の上方に設けられ、第2フォーク220と対向する位置に配置される。また、第2フォーク220は、搬送アーム部230によって支持され、かかる搬送アーム部230によって鉛直方向および水平方向へ移動する。
このように、第1の実施形態に係る剥離システム1では、剥離室31に対して重合基板Tを搬入する第1搬送装置200が剥離装置100の一部として機能する。なお、ここでは、第1搬送装置200が備える構成のうち、重合基板Tの剥離動作に直接的には関係しない第1フォーク210等の構成については適宜省略して説明する。
保持部110および規制部120は、剥離室31の内部に設けられる。この剥離室31の第1搬送領域20側の側面には、図示しない搬入出口が設けられており、第1搬送装置200は、かかる搬入出口から剥離室31への入出を行う。なお、搬入出口には、開閉シャッタが設けられてもよい。
保持部110は、重合基板Tにおける被処理基板Wを吸着保持する保持部であり、たとえばポーラスチャックを用いることができる。かかる保持部110は、略円盤状の本体部111と、本体部111の下面に設けられる吸着面112とを備える。吸着面112は、重合基板Tと略同径であり、重合基板Tの上面、すなわち、被処理基板Wの非接合面Wnと当接する。この吸着面112は、たとえば炭化ケイ素等の多孔質体や多孔質セラミックで形成される。
本体部111の内部には、吸着面112を介して外部と連通する吸引空間113が形成される。吸引空間113は、吸気管114を介して真空ポンプなどの吸気装置115と接続される。そして、保持部110は、吸気装置115の吸気によって発生する負圧を利用し、被処理基板Wの非接合面Wnを吸着面112に吸着させることによって、被処理基板Wを保持する。
なお、保持部110として、ポーラスチャックを用いる例を示したが、ベルヌーイチャックや静電チャックといったポーラスチャック以外の保持部を第1保持部として用いてもよい。静電チャックは、静電気を利用して基板の吸着を行う保持部である。
保持部110の上方には、剥離室31の天井面に固定された支持板105が配置され、かかる支持板105によって保持部110の上面が支持される。なお、支持板105を設けずに、保持部110の上面を剥離室31の天井に直接当接させて支持させるようにしてもよい。
規制部120は、たとえば支持板105の下面に基端部が取り付けられ、先端部を鉛直下向きに突出させた部材である。かかる規制部120は、第2フォーク220の先端部に設けられる係止部226の上面と当接する。
かかる規制部120により、第2フォーク220は、後述する剥離動作中において先端部の上方への移動が規制されることとなるが、かかる点については図6B等を用いて後述する。なお、規制部120は、剥離室31の天井に直接設けてもよい。
第1搬送装置200の第2フォーク220は、フォーク本体部221に形成される吸着部222を用いて重合基板Tの下面を吸着保持する。
吸着部222は、フォーク本体部221の上面に形成された凹部である。吸着部222の底面には、吸気口が形成されており、かかる吸気口には、吸気管223を介して真空ポンプ等の吸気装置224が接続される。第2フォーク220は、吸気装置224を用いて吸着部222と対向する重合基板Tの下面を吸着することによって重合基板Tを保持する。
吸着部222は、フォーク本体部221の基端部221a側にのみ形成される。このため、重合基板Tは、フォーク本体部221の基端部221a側でのみ吸着保持され、その他の部分についてはフォーク本体部221によって下方から支持された状態となっている。
フォーク本体部221の基端部221a側および先端部221b側には、それぞれ鉛直上向きに突出する係止部225,226が設けられる。重合基板Tは、係止部225,226によって係止され、フォーク本体部221上での位置ずれ等が防止される。
ここで、第2フォーク220の形状について図4A〜図4Cを参照してより具体的に説明する。図4Aに示すように、フォーク本体部221は、平板状の基端部221aと、この基端部221aから二股に分岐して水平方向へ突出する一対の先端部221bとを備える略U字状の部材である。
一対の先端部221bは、仮置台13(図1参照)に設けられる3本の支持ピン13aを挿通可能な間隔を空けて形成される。先端部221bの上面と基端部221aの上面とは面一であり、先端部221bおよび基端部221aの上面に対して重合基板T等の基板が水平に載置される。かかるフォーク本体部221は、たとえばアルミニウムなどの金属体で形成される。
基端部221aには、吸着部222が形成される。吸着部222は、図4Aに示すように、重合基板Tの外周側へ向けて漸次幅広となる扇形に形成される。このように、吸着部222は、重合基板Tの外周側ほど吸着面積が広くなる形状に形成される。
なお、ここでは、吸着部222が扇形に形成される場合の例について示したが、吸着部222の形状は、重合基板Tの外周側に向けて漸次幅広となる形状であれば、他の形状であってもよい。
図4Bに示すように、吸着部222の周縁には、たとえばOリング等のシール部材227が設けられる。これにより、重合基板Tの吸着状態をより確実なものとすることができる。また、図4Cに示すように、先端部221bに設けられる係止部226には、重合基板Tの側面へ向けて突出する突起部226aが形成されるが、かかる突起部226aの役割については、後述する。なお、図4Cには、突起部226aが見える方向から係止部226を見た場合の係止部226の形状を模式的に示している。
図3に戻り、第1搬送装置200が備える搬送アーム部230について説明する。第1搬送装置200は、X軸方向に延びるレール21上を走行する走行部231と、走行部231の上面に設けられ、鉛直方向に昇降する昇降部232と、昇降部232の上部に設けられる基台233とを備える。昇降部232は、鉛直軸を中心に回転自在である。
また、第1搬送装置200は、基台233上に設けられ、基台233上を水平方向に移動するフォーク支持部234と、フォーク支持部234の先端部に設けられ、フォーク支持部234の先端部とフォーク本体部221の基端部221aとを連結する連結部235とを備える。
また、連結部235には、スプリング235aが設けられる。かかるスプリング235aを設けることにより、第2フォーク220を上昇させて重合基板Tの上面を保持部110の吸着面112へ当接させた場合に、重合基板Tに伝わる衝撃を抑えることができるが、かかる点については、後述する。
なお、図3に示した第1搬送装置200の構成は、必ずしも図示の如く構成されることを要しない。たとえば、図3では、フォーク支持部234が、基台233上をスライドすることによって第2フォーク220をY軸方向に沿って移動させる場合の例について説明した。しかし、第1搬送装置200は、フォーク支持部234に代えて、たとえば、水平方向に伸縮することによって第2フォーク220を直線的に移動させるスカラーアームを備えてもよい。
<3.剥離装置の動作>
次に、剥離システム1の動作について説明する。剥離システム1の動作は、制御装置50によって制御され、剥離装置100による剥離動作を含む。図5は、剥離システム1による剥離処理手順を示すフローチャートである。
また、図6Aは、保持部110に対して重合基板Tを吸着保持させる動作の説明図であり、図6Bは、図6Aに示すH2部の模式拡大図である。また、図7Aおよび図7Bは、重合基板Tの剥離動作の説明図であり、図7Cは、図7Aに示すH3部の模式拡大図である。
まず、第1搬送装置200は、制御装置50の制御に基づき、重合基板Tを搬入出ステーション10から剥離室31へ搬入する処理を行う(図5のステップS101)。
このステップS101の処理において、第1搬送装置200は、まず、搬入出ステーション10においてカセットCtに収容された重合基板Tを第2フォーク220によって取り出す。そして、第1搬送装置200は、カセットCtから取り出した重合基板Tを第2フォーク220によって剥離処理ステーション30の剥離室31内へ搬入する。
このように、第1搬送装置200は、搬入出ステーション10から第2フォーク220を用いて取り出した重合基板Tを第2フォーク220によって剥離室31へ搬送する。すなわち、第1搬送装置200は、重合基板Tを搬入出ステーション10から剥離室31へ搬送する場合に、第2フォーク220から第1フォーク210への重合基板Tの持ち替えを行わない。この点について具体的に説明する。
第1搬送装置200は、通常、搬入出ステーション10におけるカセット載置台11へのアクセスを第2フォーク220によって行い、剥離処理ステーション30へのアクセスを第1フォーク210によって行う。このため、カセット載置台11および剥離処理ステーション30間における基板の搬送動作は、通常、第1フォーク210および第2フォーク220間での基板の持ち替え動作を伴う。
たとえば、剥離処理ステーション30の第2洗浄装置34から取り出した支持基板Sをカセット載置台11へ搬送する場合、第1搬送装置200は、取り出した支持基板Sを仮置台13(図1参照)へ搬送し、仮置台13において持ち替え動作を行う。
具体的には、第1搬送装置200は、第1フォーク210を用いて仮置台13の支持ピン13a上へ基板を載置した後、支持ピン13a上へ載置された基板を第2フォーク220を用いて下からすくい上げる。そして、第1搬送装置200は、第1フォーク210から第2フォーク220へ支持基板Sを持ち替えた後、第2フォーク220を用いて支持基板Sをカセット載置台11へ搬送する。
ただし、第1搬送装置200は、上述したように重合基板Tを剥離室31へ搬送する場合には、例外的に、剥離室31へのアクセスを第2フォーク220によって行う。このように、第1搬送装置200は、第2フォーク220を用いてカセット載置台11から取り出した重合基板Tを、第1フォーク210へ持ち替えることなく、直接剥離室31へ搬送する。このため、第2フォーク220から第1フォーク210への基板の受け渡しを行う場合と比較して、重合基板Tの搬送に要する時間を短縮することができる。
また、第1搬送装置200は、第2フォーク220を用いて重合基板Tを剥離室31へ搬送した後、さらに、第2フォーク220を用いて重合基板Tの剥離動作を行うが、かかる点については、図7A〜図7C等を用いて後述する。
なお、重合基板Tは、被処理基板Wが上面に位置し、支持基板Sが下面に位置した状態で第1搬送装置200の第2フォーク220に保持される。
次に、剥離装置100は、制御装置50の制御に基づき、重合基板Tを上方と下方から吸着保持する処理を行う(図5のステップS102)。このステップS102の処理において、搬送アーム部230は、図6Aに示すように、第2フォーク220を上昇させて重合基板Tの上面を保持部110の吸着面112に当接させる。
ここで、連結部235には、上述したようにスプリング235aが設けられている(図3参照)。このため、第2フォーク220を上昇させて重合基板Tの上面を保持部110の吸着面112へ当接させた場合に、重合基板Tへ伝わる衝撃を緩和することができる。したがって、剥離システム1では、昇降部232の厳密な制御を行うことなく、重合基板Tの上面を保持部110の吸着面112へ当接させることができる。
重合基板Tの上面が保持部110の吸着面112に当接すると、保持部110は、吸気装置115による吸気動作によって重合基板Tの上面を吸着面112に吸着させる。これにより、重合基板Tは、保持部110および第2フォーク220によって上下面がそれぞれ吸着された状態となる。
具体的には、重合基板Tは、保持部110によって被処理基板Wが保持され、第2フォーク220によって支持基板Sが保持された状態になる。かかる状態において、被処理基板Wは、保持部110によって非接合面Wnのほぼ全面が吸着されるが、支持基板Sは、第2フォーク220によって非接合面Snの一部すなわち第2フォーク220の吸着部222と対向する面のみが吸着される。
また、図6Bに示すように、第2フォーク220の係止部226は、第2フォーク220によって吸着保持された重合基板Tの上面が保持部110の吸着面112と当接する位置において規制部120と当接する。これにより、第2フォーク220は、先端部221bの上方への移動が規制部120によって規制された状態となる。
また、係止部226に形成された突起部226aは、重合基板Tの上面が保持部110の吸着面112と当接する位置において、被処理基板Wと支持基板Sとの接合部分、すなわち、接着剤Gに対して先端部が当接する位置に配置される。
次に、剥離装置100は、制御装置50の制御に基づき、第2フォーク220を鉛直下向きに移動させることによって支持基板Sを被処理基板Wから剥離させる処理を行う(図5のステップS103)。
このステップS103の処理において、搬送アーム部230は、第2フォーク220を鉛直下向きに移動させる。
第2フォーク220は、フォーク本体部221の基端部221a側において搬送アーム部230に支持されている。このため、搬送アーム部230によって第2フォーク220が引き下げられることにより、第2フォーク220には、搬送アーム部230による鉛直下向きの力が基端部221a側に対してかけられることとなる。
一方、第2フォーク220は、この鉛直下向きの力がかかる位置よりも先端部221b側に位置する吸着部222において、支持基板Sから鉛直上向きに引っ張られた状態となっている。
このため、第2フォーク220は、上記した2つ力によってフォーク本体部221の基端部221a側が鉛直下向きに撓み、かかる撓みによって生じる反力によって、フォーク本体部221の先端部221bが、上方へ向かおうとする。しかし、第2フォーク220の先端部221bは、係止部226が規制部120によって係止されており、上方への移動が規制された状態となっている。
この結果、第2フォーク220は、フォーク本体部221の先端部221b側が支点となり、フォーク本体部221の基端部221a側が、搬送アーム部230によって保持部110から離れる方向へ移動することとなる。かかる動作により、重合基板Tは、フォーク本体部221の基端部221a側の側面から剥離し始める(図7A参照)。
なお、規制部120によってフォーク本体部221の先端部221b側の移動を規制することで、第2フォーク220を降下させた場合にフォーク本体部221の先端部221bが重合基板Tに食い込むことを防止することもできる。
図7Bに示すように、搬送アーム部230は、第2フォーク220を引き続き降下させる。これにより、支持基板Sは、被処理基板Wから完全に剥離される。剥離後の被処理基板Wは、保持部110によって吸着保持され、剥離後の支持基板Sは、第2フォーク220によって吸着保持された状態となる。
ここで、被処理基板Wの接合面Wjには電子回路が形成されているため、被処理基板Wおよび支持基板Sを一度に剥離しようとすると、接合面Wj,Sjに対して大きな負荷がかかり、接合面Wj上の電子回路が損傷するおそれがある。これに対し、第1の実施形態に係る剥離システム1では、重合基板Tを外周側の一端から他端へ向けて徐々に剥離するため、接合面Wj,Sjに対して大きな負荷がかかることがない。したがって、剥離動作中における電子回路の損傷を抑えることができる。
また、第1の実施形態に係る剥離システム1では、搬送アーム部230によって第2フォーク220が引き下げられた場合に、第2フォーク220にかかる応力が連結部235に設けられたスプリング235a(図3参照)によって吸収される。これにより、重合基板Tに対して急激に力が加わることを抑制することができる。したがって、被処理基板Wの接合面Wjに形成される電子回路の損傷をさらに抑制することができる。
また、第1の実施形態に係る剥離システム1では、吸着部222が、重合基板Tの外周側ほど吸着面積が広くなる形状に形成される(図4A参照)。したがって、第1の実施形態に係る剥離システム1のように重合基板Tを外周側から剥離させる場合において、重合基板Tをより確実に保持しておくことができる。
また、図7Cに示すように、係止部226は、重合基板T側へ向かって傾倒し、係止部226に形成された突起部226aが接着剤Gへめり込む。これにより、剥離装置100は、突起部226aがめり込んだ場所からも重合基板Tを剥離させることができる。
このように、第1の実施形態に係る剥離システム1によれば、係止部226に対して突起部226aを設けることで、重合基板Tをより簡単に剥離することができ、重合基板Tの剥離に要する時間を短縮することができる。
ここで、上述したステップS103の処理についてさらに具体的に説明する。剥離装置100は、ステップS103の処理において、たとえば、重合基板Tを一度に引っ張る「継続モード」と、重合基板Tの外周部を断続的に繰り返し引っ張る「繰り返しモード」とを実行することができる。剥離装置100は、制御装置50の制御に基づき、継続モードによる処理と繰り返しモードによる処理とを選択的に実行する。
継続モードによる処理の場合、剥離装置100は、搬送アーム部230を継続的に動作させて第2フォーク220を継続的に鉛直下向きに移動させ続ける。これにより、支持基板Sを鉛直下向きに引っ張る力が次第に大きくなり、重合基板Tが剥離する。この継続モードでは、第2フォーク220を継続的に鉛直下向きに移動させるため、剥離処理を迅速に行うことができる。
一方、繰り返しモードによる処理の場合、剥離装置100は、重合基板Tが剥離するまで、搬送アーム部230を繰り返し動作させて第2フォーク220を鉛直方向に上下移動させる。すなわち、剥離装置100は、第2フォーク220の基端部221a側を保持部110から離す方向へ移動させる動作と、第2フォーク220の基端部221a側を保持部110へ近づける方向へ移動させる動作とを繰り返し行う。
かかる繰り返し動作によって重合基板Tの接合力が次第に弱くなり、最終的に重合基板Tが剥離する。この繰り返しモードでは、継続モードによる処理に比べ、支持基板Sを鉛直下向きに引っ張る力を抑えることができるため、接合面Wj,Sjにかかる負荷をより抑えることができる。
なお、剥離装置100は、重合基板Tが剥離し始めたことを条件として、繰り返しモードから継続モードへ移行してもよい。重合基板Tが剥離し始めたか否かは、たとえば、搬送アーム部230にロードセルを設け、かかるロードセルを用いて第2フォーク220にかかる負荷を検出することによって判定することができる。
次に、第1搬送装置200および第2搬送装置35は、制御装置50の制御に基づき、剥離後の被処理基板Wおよび支持基板Sを剥離室31から搬出する処理を行う(図5のステップS104)。
ステップS104の処理において、第1搬送装置200は、剥離後の支持基板Sを第2フォーク220によって剥離室31から取り出す。すなわち、剥離後の支持基板Sは、第2フォーク220によって吸着保持された状態であり、かかる第2フォーク220によって剥離室31から取り出される。
このように、第1の実施形態に係る剥離システム1では、剥離室31への重合基板Tの搬入、重合基板Tの剥離、剥離後の支持基板Sの取り出しといった一連の動作を第1搬送装置200が備える第2フォーク220を用いて行う。したがって、上記一連の動作において他の装置との基板の受け渡しが不要となるため、剥離処理に要する時間を短縮することができる。
なお、第1搬送装置200は、剥離後の支持基板Sを剥離室31から取り出すと、取り出した支持基板Sを搬入出ステーション10の仮置台13へ搬送し、仮置台13において支持基板Sを第2フォーク220から第1フォーク210へ持ち替える。そして、第1搬送装置200は、第1フォーク210を用いて保持した支持基板Sを第2洗浄装置34へ搬送する。
第2洗浄装置34へ搬送された支持基板Sは、第2洗浄装置34によって洗浄され、接合面Sjに残存する接着剤Gが除去される。そして、洗浄後の支持基板Sは、第1搬送装置200によって搬入出ステーション10へ搬送され、搬入出ステーション10から回収される。
一方、剥離後の被処理基板Wは、受渡室32に配置される第2搬送装置35によって剥離室31から取り出され、第1洗浄装置33へ搬送される。第1洗浄装置33へ搬送された被処理基板Wは、第1洗浄装置33によって洗浄され、接合面Wjから接着剤Gが除去される。
洗浄後の被処理基板Wは、第2搬送領域40に配置された第3搬送装置42によって第1洗浄装置33から取り出され、後処理ステーションMへ搬送される。そして、被処理基板Wは、後処理ステーションMにおいてマウントやダイシングといった後処理が施される。
上述してきたように、第1の実施形態に係る剥離装置100は、保持部110と、第2フォーク220と、搬送アーム部230とを備える。保持部110は、被処理基板Wを吸着保持する。第2フォーク220には、被処理基板Wに対して接合された支持基板Sの一部を吸着保持する吸着部222が基端部221a側に設けられる。搬送アーム部230は、保持部110によって被処理基板Wが保持された状態で、支持基板Sを保持した第2フォーク220の先端部221b側を支点として基端部221a側を保持部110から離す方向へ移動させる。
したがって、第1の実施形態に係る剥離装置100によれば、基板の剥離処理を適切に行うことができる。
ところで、上述した第1の実施形態では、剥離装置の構成および動作の一例を例示した。しかしながら、剥離装置の構成および動作には種々のバリエーションが存在する。そこで、以下に示す各実施形態では、その他のバリエーションについて示す。なお、以下に示す各実施形態においては、上述した第1の実施形態の構成要素に対応する構成要素には同一の符合を付し、第1の実施形態と重複する説明については適宜、省略する。
(第2の実施形態)
剥離装置では、重合基板Tの剥離を促進させるために、たとえば刃物等の鋭利部材を用いて重合基板Tの側面に切り込みを入れてもよい。以下では、鋭利部材を用いて重合基板Tの側面に切り込みを入れる場合の例について説明する。
図8は、第2の実施形態に係る剥離装置の構成を示す模式側面図である。図8に示すように、第2の実施形態に係る剥離装置100aは、第1の実施形態に係る剥離装置100が備える構成に加え、切込部130と、撮像部140とをさらに備える。切込部130は、たとえば保持部110を挟んで搬送アーム部230と対向する位置に設けられる。
切込部130は、Y軸方向に延びるレール131と、このレール131に沿って移動する移動部132と、移動部132の重合基板Tと対向する側の端面に設けられる鋭利部材133と、レール131を鉛直方向に昇降させる昇降部134とを備える。
鋭利部材133は、たとえば刃物であり、先端が重合基板Tへ向けて突出するように移動部132に設けられる。刃物としては、たとえば、カミソリ刃やローラ刃あるいは超音波カッター等を用いることができる。なお、セラミック樹脂系の刃物あるいはフッ素コーティングされた刃物を用いることで、重合基板Tに対して切り込みを入れた際のパーティクルの発生を抑えることができる。
撮像部140は、たとえばCCD(Charge Coupled Device)カメラであり、切込部130が設けられる側の重合基板Tの側面を撮像する。撮像部140の撮像データは、制御装置50(図1参照)へ出力される。
制御装置50は、撮像部140から入力された撮像データに基づいて昇降部134を駆動させることで、接着剤Gの高さ範囲に含まれるように鋭利部材133を配置させる。その後、制御装置50は、鋭利部材133を重合基板Tにおける接着剤Gへ挿入させる。
ここで、制御装置50の制御に基づいて剥離装置100aが行う鋭利部材133の挿入動作について図9を用いて具体的に説明する。図9は、鋭利部材133の挿入動作の説明図である。なお、図9では、理解を容易にするために鋭利部材133の先端の形状を山型としたが、鋭利部材133の形状は図示のものに限られない。
図9に示すように、鋭利部材133は、第2フォーク220による重合基板Tの剥離の起点となるフォーク本体部221の基端部221aとは反対側、すなわち、フォーク本体部221の先端部221b側に配置される。
剥離装置100aは、移動部132を駆動させることによって、鋭利部材133の先端部が重合基板Tの側面に当接する位置まで鋭利部材133を移動させる。その後、剥離装置100aは、移動部132を重合基板T側に向かってさらに移動させる。これにより、鋭利部材133は、重合基板Tの中心pへ向かう方向D1に沿って、重合基板Tにおける接着剤Gへ挿入される。
このように、鋭利部材133が重合基板Tの側面に当接する位置で移動部132を一旦停止させた後、移動部132を再び移動させて鋭利部材133を重合基板Tへ挿入させることで、鋭利部材133の挿入の際に重合基板Tへ伝わる衝撃を緩和させることができる。
なお、剥離装置100aは、鋭利部材133を重合基板Tへ挿入させた後、重合基板Tの周方向D2に沿って鋭利部材133を移動させることもできる。このようにすることで、より大きな切り込みを重合基板Tに対して入れることができる。かかる場合、切込部130は、移動部132において鋭利部材133を重合基板Tの周方向D2に沿って移動させる構成をさらに備えていればよい。
また、鋭利部材133による切り込み処理は、重合基板Tが被処理基板Wと支持基板Sとに分離されるまでの何れのタイミングで行ってもよい。たとえば、剥離装置100aは、保持部110と第2フォーク220とによって重合基板Tを吸着保持した後、第2フォーク220を鉛直方向に移動させる前に切り込み処理を行ってもよい。
また、剥離装置100aは、保持部110と第2フォーク220とによって重合基板Tを吸着保持する前に切り込み処理を行ってもよい。また、剥離装置100aは、保持部110と第2フォーク220とを用いた剥離動作の結果、重合基板Tが剥離できなかった場合にのみ切り込み処理を行ってもよい。
上述してきたように、第2の実施形態に係る剥離装置100aは、被処理基板Wと支持基板Sとの接合部分に対して切り込みを入れる切込部130を備えることとしたため、重合基板Tの剥離処理をより確実に行うことができる。なお、ここでは、鋭利部材133がカッター等の刃物である場合の例について説明したが、鋭利部材は、ワイヤーなどの刃物以外の部材であってもよい。
また、ここでは、切込部130および撮像部140が、フォーク本体部221の先端部221b側に配置される場合の例について説明したが、切込部130および撮像部140は、他の場所に配置されてもよい。そこで、切込部130および撮像部140の他の配置例について図10を参照して説明する。図10は、切込部130および撮像部140の他の配置例を示す模式側面図である。
図10に示すように、剥離装置100bは、フォーク本体部221の基端部221a側に切込部130および撮像部140を備える。かかる場合、鋭利部材133は、フォーク本体部221の基端部221a側に位置する重合基板Tの側面に対して挿入されることとなる。
このように、重合基板Tの剥離の起点となる基端部221a側に位置する重合基板Tの側面に対して鋭利部材133による切り込みを入れることとすれば、重合基板Tの剥離をより効果的に促すことができる。
なお、剥離装置100bは、基端部221a側に位置する重合基板Tの側面まで鋭利部材133が到達できるように、係止部225aの高さを重合基板Tの接着剤Gよりも低くしている。
(第3の実施形態)
上述してきた各実施形態では、保持部110が剥離室31に対して固定的に設けられる場合の例について説明したが、保持部110を可動的に設け、第2フォーク220の降下に対して保持部110が倣い動作をするようにしてもよい。以下では、第2フォーク220の降下に対して保持部110が倣い動作をする場合の例について説明する。図11は、第3の実施形態に係る剥離装置100cの構成を示す模式側面図である。
図11に示すように、第3の実施形態に係る剥離装置100cは、複数の弾性部材150を備える。複数の弾性部材150は、たとえばばね等によって形成される部材であり、剥離室31と支持板105との間に設けられる。また、複数の弾性部材150は、保持部110の外周部に周回りに所定間隔を空けて配置される。
このように、第3の実施形態に係る剥離装置100cでは、保持部110は、弾性部材150によって弾性的に支持される。
次に、第3の実施形態に係る剥離装置100cによる剥離動作について図12を参照して説明する。図12は、第3の実施形態に係る剥離装置100cによる剥離動作の説明図である。
図12に示すように、剥離装置100cでは、第2フォーク220の降下によって生じる下向きの力が、重合基板Tおよび保持部110を介して弾性部材150へ伝わり、フォーク本体部221の基端部221a側に設けられた弾性部材150が伸びる。この結果、保持部110は、第2フォーク220の降下に倣い、フォーク本体部221の基端部221a側が引き下げられる。
このように、第3の実施形態に係る剥離装置100cでは、第2フォーク220の降下に対して保持部110が倣い動作をする。これにより、第2フォーク220の降下によって支持基板Sにかかる力の一部が、弾性部材150を含む保持部110によって吸収される。したがって、第3の実施形態に係る剥離装置100cによれば、支持基板Sに対して急激に力が加わることを抑制することができる。
なお、弾性部材150の取り付け位置は、図示したものに限定されない。たとえば、弾性部材150は、支持板105と保持部110との間に設けられてもよい。
(第4の実施形態)
ところで、上述してきた各実施形態では、第1搬送装置200が備える第2フォーク220を用いて重合基板Tの剥離動作を行う場合の例について説明した。しかし、重合基板Tにおける支持基板Sを吸着保持する保持部は、基板搬送装置が備える基板保持部である必要はない。
そこで、以下では、重合基板Tにおける支持基板Sを吸着保持する保持部の他の例について説明する。まず、第4の実施形態に係る剥離装置の構成について図13および図14を参照して説明する。図13は、第4の実施形態に係る剥離装置の構成を示す模式側面図である。また、図14は、第4の実施形態に係る第2保持部の形状を示す模式平面図である。
図13に示すように、第4の実施形態に係る剥離装置100dは、第1搬送装置200に代えて、重合基板Tにおける支持基板Sを吸着保持する第2保持部160と、この第2保持部160を鉛直方向に移動させる移動機構170とを備える。
第2保持部160は、アルミニウムなどの弾性体で形成される本体部161と、本体部161に形成された吸着部162とを備える。吸着部162は、上述した第2フォーク220の吸着部222と同様、本体部161の上面側に形成される凹部であり、本体部161の一端側にのみ形成される。吸着部162の側面には、吸気口が形成されており、かかる吸気口には、吸気管163を介して真空ポンプ等の吸気装置164が接続される。
移動機構170は、平板状の支持板171と、支持板171の上面に設けられ、第2保持部160の一端側を鉛直方向へ移動させるシリンダ172と、支持板171の上面に設けられ、第2保持部160の他端側を鉛直方向へ移動させるシリンダ173とを備える。
このように、第2保持部160は、シリンダ172によって一端側が保持され、シリンダ173によって他端側が保持された状態となっている。なお、シリンダ172およびシリンダ173は、たとえばX軸方向に沿って2つずつ並べて設けられる(図14参照)。
また、移動機構170は、支持板171を鉛直方向へ移動させる駆動部174と、駆動部174を支持する基台175と、支持板171の両端を支持する支持部176とを備える。駆動部174は、たとえばボールねじ(図示せず)とこのボールねじを駆動するモータ(図示せず)とを有する駆動機構を備え、第2保持部160を鉛直方向に上下移動させる。また、支持部176は鉛直方向に伸縮自在に構成される。
つづいて、第2保持部160の形状について図14を参照して説明する。図14に示すように、第2保持部160の本体部161は、シリンダ172およびシリンダ173の配列方向(図14ではY軸方向)に長い平板状に形成される。
第2保持部160の一端側には、吸着部162が形成される。ここでは、上述してきた各実施形態と同様に、吸着部162の形状が略扇形であるものとするが、吸着部162の形状は、図示のものに限定されない。
次に、第4の実施形態に係る剥離動作について図15Aおよび図15Bを参照して説明する。図15Aおよび図15Bは、第4の実施形態に係る剥離装置100dによる剥離動作の説明図である。
なお、剥離装置100dでは、たとえば第1搬送装置200の第1フォーク210によって重合基板Tが第2保持部160へ載置される。その後、剥離装置100dは、第2保持部160によって重合基板Tの下面を吸着保持した状態で、重合基板Tの上面が保持部110の吸着面112に当接する位置まで支持板171を鉛直上向きに移動させた後、保持部110が、重合基板Tの上面を吸着保持する。
つづいて、図15Aに示すように、剥離装置100dは、第2保持部160の他端側を保持するシリンダ173によって第2保持部160の他端側の移動を規制した状態で、第2保持部160の一端側を保持するシリンダ172を降下させる。すなわち、剥離装置100dは、第2保持部160の他端側を支点として第2保持部160の一端側を降下させる。これにより、重合基板Tは、第2保持部160の一端側から剥離し始める。
その後、剥離装置100dは、シリンダ172をさらに降下させることによって重合基板Tを完全に剥離させる。
つづいて、図15Bに示すように、剥離装置100dは、シリンダ173を降下させることによって、第2保持部160を水平に保持した状態とした後、駆動部174を用いて支持板171を所定位置まで降下させる。これにより、剥離装置100dによる剥離動作が完了する。
なお、剥離装置100dによる剥離動作が完了すると、剥離後の支持基板Sは、第1搬送装置200によって剥離室31から取り出され、第2洗浄装置34へと搬送される。
上述してきたように、第4の実施形態に係る剥離装置100dは、保持部110と、第2保持部160と、移動機構170とを備える。保持部110は、被処理基板Wを保持する。第2保持部160には、支持基板Sの一部を吸着保持する吸着部162が一端部側に設けられる。移動機構170は、保持部110によって被処理基板Wが保持された状態で、支持基板Sを保持した第2保持部160の他端部側を支点とし一端部側を保持部110に対して離す方向へ移動させる。
したがって、第4の実施形態に係る剥離装置100dによれば、基板の剥離処理を適切に行うことができる。
(第5の実施形態)
また、上述してきた各実施形態では、重合基板Tを常温で剥離する場合の例について説明した。しかし、剥離装置は、重合基板Tにおける被処理基板Wおよび支持基板Sのうちの一方を加熱または冷却することによって生じる温度差を利用して重合基板Tの剥離を促進させることとしてもよい。
そこで、以下では、重合基板Tの支持基板S側を加熱する場合の例について図16を参照して説明する。図16は、第5の実施形態に係る第2フォーク220aの構成を示す模式側面図である。
なお、以下では、第1の実施形態に係る剥離装置100が備える第2フォーク220に対して支持基板Sを加熱する構成を追加する場合の例を説明するが、第2〜第4の実施形態に係る剥離装置100a〜100dについても同様の構成を追加することができる。
図16に示すように、第5の実施形態に係る第2フォーク220aは、フォーク本体部228の内部に加熱機構229を備える。加熱機構229は、たとえば、ヒーターであり、フォーク本体部228に対して吸着保持される支持基板Sを所定の温度に加熱する。
第2フォーク220aによって重合基板Tが吸着保持されると、重合基板Tの支持基板S側が加熱機構229によって加熱される。これにより、支持基板Sが被処理基板Wに対して相対的に膨張し、被処理基板Wと支持基板Sとの間にずれが生じるため、重合基板Tの剥離が促進される。また、支持基板Sを加熱することで接着剤Gが軟化するため、これによっても重合基板Tの剥離を促進させることができる。
なお、重合基板Tに温度差を与えるためには、支持基板Sの加熱を急激に行うことが好ましい。そこで、第2フォーク220aは、重合基板Tの剥離を開始する直前に加熱機構229を作動させ、支持基板Sを瞬間的に加熱することとしてもよい。
また、保持部110には、加熱機構229に代えて、たとえばヒートポンプやペルチェ素子等を用いた冷却機構を設けてもよい。これにより、支持基板Sの被処理基板Wに対する相対的な膨張をより促進することができ、また、熱酸化に対する抑制効果を高めることもできる。
また、第2フォーク220aに加熱機構を設けず、保持部110に加熱機構または冷却機構を設け、保持部110に対して重合基板Tを吸着保持させた後、重合基板Tの被処理基板W側を瞬間的に加熱または冷却してもよい。
(第6の実施形態)
ところで、剥離システムの構成は、図1に示した構成に限定されず、種々の構成を取り得る。そこで、剥離システムの他の構成について図17を参照して説明する。図17は、第6の実施形態に係る剥離システムの構成を示す模式平面図である。
図17に示すように、第6の実施形態に係る剥離システム1aは、検査装置60をさらに備える。また、第6の実施形態に係る剥離システム1aは、図1に示す第2搬送領域40に代えて、第2搬送領域40aを備える。第2搬送領域40aには、X軸方向に延在する搬送路41a上を移動可能な第3搬送装置42aが設置される。なお、第3搬送装置42aは、図1に示す第3搬送装置42と同様、たとえばベルヌーイチャックを用いて被処理基板Wを非接触状態で搬送する。
検査装置60は、被処理基板Wに対し、接合面Wjに形成された電子回路に損傷がないか、あるいは、接着剤Gの残渣がないか等の表面検査を行う装置である。
剥離システム1aでは、第1洗浄装置33によって洗浄された被処理基板Wが第3搬送装置42aによって第1洗浄装置33から取り出され、検査装置60へ搬送される。検査装置60へ搬送された被処理基板Wは、検査装置60によって表面検査が行われる。そして、電子回路の損傷や接着剤Gの残渣等の異常が発見された被処理基板Wは、第3搬送装置42aによって第1洗浄装置33へ戻され、第1搬送装置200によって第1洗浄装置33から搬入出ステーション10へ搬送される。
一方、検査装置60によって異常が発見されなかった被処理基板Wは、第3搬送装置42aによって後処理ステーションMへ搬送され、後処理ステーションMによってマウントやダイシングといった後処理が施される。このように、剥離システムは、剥離後の被処理基板Wに対して表面検査を行う検査装置をさらに備えていてもよい。
上述してきたように、第6の実施形態に係る剥離システム1aでは、第1洗浄装置33と後処理ステーションMとの間に検査装置60が配置されることから、異常が発見されなかった被処理基板Wを後処理ステーションMへ搬送することができる。これにより、スループットを向上させることができる。
(その他の実施形態)
また、上述してきた各実施形態では、剥離対象となる重合基板が、被処理基板Wと支持基板Sとが接着剤Gによって接合された重合基板Tである場合の例について説明した。しかし、剥離装置の剥離対象となる重合基板は、この重合基板Tに限定されない。たとえば、上述してきた各実施形態の剥離装置では、SOI基板を生成するために、絶縁膜が形成されたドナー基板と被処理基板とが張り合わされた重合基板を剥離対象とすることも可能である。
ここで、SOI基板の製造方法について図18Aおよび図18Bを参照して説明する。図18Aおよび図18Bは、SOI基板の製造工程を示す模式図である。図18Aに示すように、SOIを形成するための重合基板Taは、ドナー基板Dとハンドル基板Hとを接合することによって形成される。
ドナー基板Dは、表面に絶縁膜5が形成されるとともに、ハンドル基板Hと接合する方の表面近傍の所定深さに水素イオン注入層6が形成された基板である。また、ハンドル基板Hとしては、たとえばシリコンウェハ、ガラス基板、サファイア基板等を用いることができる。
上述してきた各実施形態に係る剥離装置100,100a〜100dは、重合基板Taを引っ張ることによってドナー基板Dに形成された水素イオン注入層6に対して機械的衝撃を与える。これにより、図18Bに示すように、水素イオン注入層6内のシリコン−シリコン結合が切断され、ドナー基板Dからシリコン層が剥離される。
この結果、ハンドル基板Hの上面に対して絶縁膜5およびシリコン層7が転写され、SOI基板Waが形成される。なお、剥離装置100,100a〜100dは、剥離後のSOI基板Waを第2フォーク220,220aあるいは第2保持部160を用いて吸着保持する。
また、第2フォーク(または第4の実施形態に係る第2保持部)に対して設けられる吸着部の構成は、上述してきた各実施形態において示した例に限定されない。そこで、以下では、吸着部の他の構成について図19A〜図19Cを用いて説明する。図19Aは、吸着部の他の構成を示す模式平面図であり、図19Bおよび図19Cは、図19Aに示すB−B’線矢視の模式端面図である。
なお、図19A〜図19Cでは、第2フォークに対して他の構成の吸着部を設ける場合の例について示すが、第4の実施形態に係る第2保持部に対しても同様の構成の吸着部を適用可能である。
図19Aに示すように、吸着部222Aは、吸気口222aと、溝部222bとを備える。吸気口222aは、フォーク本体部221Aの上面に形成される。かかる吸気口222aの開口面とフォーク本体部221Aの上面とは、面一である。
溝部222bは、係止部225側へ向けて膨らむ略三日月状に形成される。溝部222bは、吸気口222aを取り囲むように形成されており、かかる溝部222bに対してOリング等のシール部材227aが嵌め込まれる。
このように、吸着部222Aは、フォーク本体部221Aの上面に形成された吸気口222aの周囲をシール部材227aで取り囲むことにより構成されてもよい。かかる構成とすることにより、基板の吸着漏れや損傷を簡易な構成で抑制することができる。
なお、溝部222bの平面視による形状は、図19Aに示した形状に限定されず、扇形やその他の形状であってもよい。また、溝部222bの断面形状は、図19Bに示すように、略円弧状としてもよいが、たとえば図19Cに示すように、開口部から底部へ向けて漸次幅広となるアリ溝形状としてもよい。溝部222bの断面形状をアリ溝形状することにより、シール部材227aを溝部222bから抜け難くすることが可能である。
また、第2フォークの先端部に設けられる係止部(たとえば図4C参照)の構成も、上述してきた各実施形態で示した例に限定されない。以下では、係止部の他の構成について図20Aおよび図20Bを用いて説明する。図20Aおよび図20Bは、係止部の他の構成を示す図である。
たとえば、図20Aに示すように、係止部226Aは、突起部226cが本体部226bに対して入出可能に構成されてもよい。具体的には、突起部226cは、図示しない移動機構によって、本体部226bから基板へ向けて突出したり本体部226b内へ引っ込んだりする。
かかる構成とすることにより、第2フォークを用いてカセットCtから重合基板Tを取り出す場合や、第2フォークを用いて洗浄後の支持基板SをカセットCsへ戻す場合等に、突起部226cが基板と干渉することを防止することができる。
たとえば、支持基板Sが突起部226cの下側に入り込んでしまうと、支持基板SをカセットCsへ戻す際に、支持基板Sが突起部226cに引っ掛かり、支持基板Sや突起部226cが損傷してしまう可能性がある。これに対し、突起部226cを本体部226b内へ引っ込めた状態で、支持基板SをカセットCsへ戻すこととすれば、このような事態を防止することができる。
また、図20Bに示す係止部226Bのように、本体部226d自体をフォーク本体部221cに対してスライド可能に構成してもよい。具体的には、本体部226dは、図示しない移動機構によって基板へ近づく方向または基板から遠ざかる方向へ移動する。かかる構成とした場合も、図20Aに示した例と同様に、突起部226eと基板との干渉を防止することが可能である。
また、上述した各実施形態では、被処理基板Wと支持基板Sとを接着剤Gを用いて接合する場合の例について説明したが、接着剤Gは、接合面Wj,Sjの全面に塗布されてもよいし、接合面Wj,Sjの一部にのみ塗布されてもよい。接合面Wj,Sjの一部にのみ接着剤Gを塗布する場合には、被処理基板Wおよび支持基板Sの周縁部にのみ接着剤Gを塗布することが好ましい。また、接合面Wj,Sjを複数の領域に分け、領域ごとに異なる接着力の接着剤を塗布してもよい。
また、上述してきた各実施形態では、保持部110で被処理基板Wを保持し、第2フォーク220,220aあるいは第2保持部160で支持基板Sを保持するものとして説明した。しかし、これとは逆に、保持部110で支持基板Sを保持し、第2フォーク220,220aあるいは第2保持部160で被処理基板Wを保持してもよい。なお、被処理基板Wが薄型化されている場合、保持部110で被処理基板Wを保持し、第2フォーク220,220aあるいは第2保持部160で支持基板Sを保持することが好適である。
また、上述してきた各実施形態では、重合基板Tの板面が水平方向に延在する向きで重合基板Tの剥離処理を行う例を説明したが、これに限定されるものではない。たとえば、重合基板Tの板面が鉛直方向に延在する向きで重合基板Tの剥離処理を行ってもよいし、重合基板Tの板面が水平方向および鉛直方向以外の向きで重合基板Tの剥離処理を行ってもよい。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。