以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
<1.剥離システム>
先ず、本実施形態に係る剥離システムの構成について、図1〜図3を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る剥離システムの構成を示す模式平面図である。また、図2は、ダイシングフレームに保持された重合基板の模式側面図であり、図3は、同重合基板の模式平面図である。
なお、以下においては、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。
図1に示す本実施形態に係る剥離システム1は、第1基板としての被処理基板Wと第2基板としての支持基板Sとが接着剤Gで接合された重合基板T(図2参照)を、被処理基板Wと支持基板Sとに剥離する。
以下では、図2に示すように、被処理基板Wの板面のうち、接着剤Gを介して支持基板Sと接合される側の板面を「接合面Wj」といい、接合面Wjとは反対側の板面を「非接合面Wn」という。また、支持基板Sの板面のうち、接着剤Gを介して被処理基板Wと接合される側の板面を「接合面Sj」といい、接合面Sjとは反対側の板面を「非接合面Sn」という。
被処理基板Wは、例えばシリコンウェハや化合物半導体ウェハなどの半導体基板に複数の電子回路が形成された基板であり、電子回路が形成される側の板面を接合面Wjとしている。また、被処理基板Wは、例えば非接合面Wnが研磨処理されることによって薄化されている。具体的には、被処理基板Wの厚さは、約20〜50μmである。
一方、支持基板Sは、被処理基板Wと略同径の基板であり、被処理基板Wを支持する。支持基板Sの厚みは、約650〜750μmである。かかる支持基板Sとしては、シリコンウェハの他、ガラス基板などを用いることができる。また、これら被処理基板W及び支持基板Sを接合する接着剤Gの厚みは、約40〜150μmである。
また、図3に示すように、重合基板Tは、ダイシングフレームFに固定される。ダイシングフレームFは、重合基板Tよりも大径の開口部Faを中央に有する略環状の部材であり、ステンレス鋼等の金属で形成される。ダイシングフレームFの厚みは、例えば1mm程度である。
重合基板Tは、かかるダイシングフレームFにダイシングテープPを介して固定される。具体的には、ダイシングフレームFの開口部Faに重合基板Tを配置し、開口部Faを裏面から塞ぐように被処理基板Wの非接合面Wn及びダイシングフレームFの裏面にダイシングテープPを貼り付ける。これにより、重合基板Tは、ダイシングフレームFに固定(保持)された状態となる。
図1に示すように、剥離システム1は、第1処理ブロック10及び第2処理ブロック20の2つの処理ブロックを備える。第1処理ブロック10と第2処理ブロック20とは、第2処理ブロック20及び第1処理ブロック10の順にX軸方向に隣接して配置される。
第1処理ブロック10では、重合基板Tの搬入、重合基板Tの剥離処理、剥離後の被処理基板Wの洗浄及び搬出等が行われる。すなわち、第1処理ブロック10は、ダイシングフレームFによって保持される基板(重合基板Tと被処理基板W)に対する処理を行うブロックである。かかる第1処理ブロック10は、搬入出ステーション11と、待機ステーション12と、第1搬送領域13と、剥離ステーション14と、第1洗浄ステーション15と、エッジカットステーション16とを備える。
搬入出ステーション11、待機ステーション12、剥離ステーション14、第1洗浄ステーション15及びエッジカットステーション16は、第1搬送領域13に隣接して配置される。具体的には、搬入出ステーション11と待機ステーション12とは、第1搬送領域13のY軸負方向側に並べて配置され、剥離ステーション14の一の剥離装置141と第1洗浄ステーション15の2つの第1洗浄装置151、152とは、第1搬送領域13のY軸正方向側に並べて配置される。また、剥離ステーション14の他の剥離装置142は、第1搬送領域13のX軸負方向側に配置され、エッジカットステーション16は、第1搬送領域13のX軸正方向側に配置される。
搬入出ステーション11には、複数のカセット載置台111が設けられており、各カセット載置台111には、重合基板Tが収容されるカセットCt又は剥離後の被処理基板Wが収容されるカセットCwが載置される。そして、搬入出ステーション11では、これらカセットCtとカセットCwが外部との間で搬入出される。
待機ステーション12には、例えばダイシングフレームFのID(Identification)の読み取りを行うID読取装置が配置され、かかるID読取装置によって、処理中の重合基板Tを識別することができる。なお、待機ステーション12では、上記のID読取り処理に加え、処理待ちの重合基板Tを一時的に待機させておく待機処理が必要に応じて行われる。かかる待機ステーション12には、後述する第1搬送装置131によって搬送された重合基板Tが載置される載置台が設けられており、かかる載置台に、ID読取装置と一時待機部とが載置される。
第1搬送領域13には、重合基板T又は剥離後の被処理基板Wの搬送を行う第1搬送装置131が配置される。第1搬送装置131は、水平方向への移動、鉛直方向への昇降及び鉛直方向を中心とする旋回が可能な搬送アーム部と、この搬送アーム部の先端に取り付けられた基板保持部とを備える。第1搬送領域13では、かかる第1搬送装置131により、重合基板Tを待機ステーション12、剥離ステーション14及びエッジカットステーション16へ搬送する処理や、剥離後の被処理基板Wを第1洗浄ステーション15及び搬入出ステーション11へ搬送する処理が行われる。
剥離ステーション14には、2つの剥離装置141、142が配置される。剥離ステーション14では、かかる剥離装置141、142によって、重合基板Tを被処理基板Wと支持基板Sとに剥離する剥離処理が行われる。具体的には剥離装置141、142では、被処理基板Wを下側に配置し且つ支持基板Sを上側に配置した状態で、重合基板Tを被処理基板Wと支持基板Sとに剥離する。なお、剥離ステーション14に配置される剥離装置の数は、本実施形態に限定されず、任意に設定できる。また、本実施形態の剥離装置141、142は水平方向に並べて配置していたが、これらを鉛直方向に積層して配置してもよい。
第1洗浄ステーション15には、2つの第1洗浄装置151、152が配置される。第1洗浄ステーション15では、かかる第1洗浄装置151、152によって、剥離後の被処理基板WをダイシングフレームFに保持された状態で洗浄する洗浄処理が行われる。第1洗浄装置151、152としては、例えば特開2013−016579号公報に記載の洗浄装置を用いることができる。なお、第1洗浄ステーション15に配置される洗浄装置の数は、本実施形態に限定されず、任意に設定できる。また、本実施形態の第1洗浄装置151、152は水平方向に並べて配置していたが、これらを鉛直方向に積層して配置してもよい。
エッジカットステーション16には、エッジカット装置が配置される。エッジカット装置は、重合基板Tにおける接着剤Gの周縁部を溶剤により溶解させて除去するエッジカット処理を行う。かかるエッジカット処理により接着剤Gの周縁部を除去することで、後述する剥離処理において被処理基板Wと支持基板Sとを剥離させ易くすることができる。なお、エッジカット装置は、例えば重合基板Tを接着剤Gの溶剤に浸漬させることにより、接着剤Gの周縁部を溶剤によって溶解させる。
また、第2処理ブロック20では、剥離後の支持基板Sの洗浄及び搬出等が行われる。すなわち、第2処理ブロック20は、ダイシングフレームFによって保持されていない基板(支持基板S)に対する処理を行うブロックである。かかる第2処理ブロック20は、第1受渡ステーション21と、第2受渡ステーション22と、第2洗浄ステーション23と、第2搬送領域24と、搬出ステーション25とを備える。
第1受渡ステーション21は、剥離ステーション14の剥離装置141のX方向負方向側であって、剥離装置142のY方向正方向側に配置される。また、第2受渡ステーション22、第2洗浄ステーション23及び搬出ステーション25は、第2搬送領域24に隣接して配置される。具体的には、第2受渡ステーション22及び第2洗浄ステーション23とは第2搬送領域24のY軸正方向側に並べて配置され、搬出ステーション25は第2搬送領域24のY軸負方向側に並べて配置される。
第1受渡ステーション21では、剥離ステーション14の剥離装置141、142から剥離後の支持基板Sを受け取って第2受渡ステーション22へ渡す受渡処理が行われる。第1受渡ステーション21には、受渡装置211が配置される。受渡装置211は、例えばベルヌーイチャック等の非接触保持部を有し、この非接触保持部は水平軸回りに回動自在に構成されている。具体的に受渡装置211としては、例えば特開2013−016579号公報に記載の搬送装置を用いることができる。そして受渡装置211は、剥離後の支持基板Sの表裏面を反転させつつ、剥離装置141、142から第2処理ブロック20へ支持基板Sを非接触で搬送する。
第2受渡ステーション22には、支持基板Sを載置する載置部221と、載置部221をY方向に移動させる移動部222とが配置される。載置部221は、例えば3つの支持ピンを備え、支持基板Sの非接合面Snを支持して載置する。移動部222は、Y方向に延伸するレールと、載置部221をY方向に移動させる駆動部とを備える。第2受渡ステーション22では、第1受渡ステーション21の受渡装置211から載置部221に支持基板Sが載置された後、移動部222によって載置部221を第2搬送領域24側に移動させる。そして、載置部221から後述する第2搬送領域24の第2搬送装置241に支持基板Sが受け渡される。なお、本実施形態では、載置部221はY方向のみに移動するが、これに加えてX方向にも移動可能に構成されていてもよい。
なお、上述した第1受渡ステーション21の受渡装置211はベルヌーイチャック等の非接触保持部で支持基板Sを保持するため、搬送信頼性は高くない。このため、受渡装置211から後述する第2搬送領域24の第2搬送装置241に支持基板Sを直接受け渡そうとすると、当該支持基板Sを取り落す可能性がある。そこで、本実施形態では、第1受渡ステーション21と第2搬送領域24との間に第2受渡ステーション22を設け、当該第2受渡ステーション22で一旦支持基板Sを載置している。
第2洗浄ステーション23には、剥離後の支持基板Sを洗浄する第2洗浄装置が配置される。第2洗浄装置としては、例えば特開2013−016579号公報に記載の洗浄装置を用いることができる。
第2搬送領域24には、剥離後の支持基板Sの搬送を行う第2搬送装置241が配置される。第2搬送装置241は、水平方向への移動、鉛直方向への昇降及び鉛直方向を中心とする旋回が可能な搬送アーム部と、この搬送アーム部の先端に取り付けられた基板保持部とを備える。第2搬送領域24では、かかる第2搬送装置241により、剥離後の支持基板Sを搬出ステーション25へ搬送する処理が行われる。
搬出ステーション25には、複数のカセット載置台251が設けられており、各カセット載置台251には、剥離後の支持基板Sが収容されるカセットCsが載置される。そして、搬入出ステーション11では、このカセットCsが外部との間で搬出される。
また、剥離システム1は、制御装置30を備える。制御装置30は、剥離システム1の動作を制御する装置である。かかる制御装置30は、例えばコンピュータであり、図示しない制御部と記憶部とを備える。記憶部には、剥離処理等の各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部は記憶部に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって剥離システム1の動作を制御する。
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御装置30の記憶部にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、例えばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
次に、以上のように構成された剥離システム1を用いて行われる被処理基板Wと支持基板Sの剥離処理方法について説明する。図4は、かかる剥離処理の主な工程の例を示すフローチャートである。なお、剥離システム1は、制御装置30の制御に基づき、図4に示す各処理手順を実行する。
先ず、複数枚の重合基板Tを収容したカセットCtと、空のカセットCwとが、搬入出ステーション11の所定のカセット載置台111に載置されると共に、空のカセットCsが、搬出ステーション25の所定のカセット載置台251に載置される。そして、剥離システム1では、第1処理ブロック10の第1搬送装置131が、搬入出ステーション11に載置されたカセットCtから重合基板Tを取り出す。このとき、重合基板Tは、被処理基板Wが下面に位置し、支持基板Sが上面に位置した状態で、第1搬送装置131の基板保持部に上方から保持される。そして、第1搬送装置131は、カセットCtから取り出した重合基板Tを待機ステーション12へ搬入する基板搬入処理を行う(図4のステップA101)。
続いて、待機ステーション12では、ID読取装置が、ダイシングフレームFのIDを読み取るID読取処理を行う(図4のステップA102)。ID読取装置によって読み取られたIDは、制御装置30へ送信される。その後、重合基板Tは、第1搬送装置131によって待機ステーション12から取り出されて、エッジカットステーション16へ搬入される。
エッジカットステーション16では、エッジカット装置が、重合基板Tに対してエッジカット処理を行う(図4のステップA103)。かかるエッジカット処理によって接着剤Gの周縁部が除去されることにより、後段の剥離処理において被処理基板Wと支持基板Sとが剥離し易くなる。したがって、剥離処理に要する時間を短縮させることができる。
このように本実施形態にかかる剥離システム1では、エッジカットステーション16が第1処理ブロック10に組み込まれているため、第1処理ブロック10へ搬入された重合基板Tを第1搬送装置131を用いてエッジカットステーション16へ直接搬入することができる。したがって、一連の剥離処理のスループットを向上させることができる。また、エッジカット処理から剥離処理までの時間を容易に管理することができ、剥離性能を安定化させることができる。
なお、例えば装置間の処理時間差等により処理待ちの重合基板Tが生じる場合には、待機ステーション12に設けられた一時待機部を用いて重合基板Tを一時的に待機させておくことができ、一連の工程間でのロス時間を短縮することができる。
続いて、エッジカット処理後の重合基板Tは、第1搬送装置131によってエッジカットステーション16から取り出されて、剥離ステーション14の剥離装置141へ搬入される。剥離ステーション14では、剥離装置141が、重合基板Tに対して剥離処理を行う(図4のステップA104)。かかる剥離処理により、重合基板Tは、被処理基板Wと支持基板Sとに分離される。
その後、剥離システム1では、剥離後の被処理基板Wについての処理が第1処理ブロック10で行われ、剥離後の支持基板Sについての処理が第2処理ブロック20で行われる。なお、剥離後の被処理基板Wは、ダイシングフレームFによって保持されている。
第1処理ブロック10では、剥離後の被処理基板Wは、第1搬送装置131によって剥離ステーション14の剥離装置141から取り出されて、第1洗浄ステーション15の第1洗浄装置151へ搬入される。第1洗浄ステーション15では、第1洗浄装置151が、剥離後の被処理基板Wに対して洗浄処理を行う(図4のステップA105)。かかる洗浄処理によって、被処理基板Wの接合面Wjに残存する接着剤Gが除去される。
洗浄処理後の被処理基板Wは、第1搬送装置131によって第1洗浄ステーション15の第1洗浄装置151から取り出されて、搬入出ステーション11に載置されたカセットCwに収容される。その後、複数の被処理基板Wを収容したカセットCwは、搬入出ステーション11から搬出されて、回収される(図4のステップA106)。こうして、被処理基板Wについての処理が終了する。
一方、第2処理ブロック20では、ステップA105及びステップA106の処理と並行して、剥離後の支持基板Sに対する処理(後述するステップA107〜ステップA109)が行われる。
第2処理ブロック20では、先ず、第1受渡ステーション21の受渡装置211が、剥離後の支持基板Sの受渡処理を行う。具体的には、受渡装置211が、剥離後の支持基板Sを剥離ステーション14の剥離装置141から取り出して、第2受渡ステーション22へ搬入する(図4のステップA107)。
ここで、剥離後の支持基板Sは、剥離装置141によって上面側すなわち非接合面Sn側が保持された状態となっており、受渡装置211は、支持基板Sの接合面Sj側を下方から非接触で保持する。その後、受渡装置211は、保持した支持基板Sを反転させたうえで、第2受渡ステーション22の載置部221へ載置する。これにより、支持基板Sは、接合面Sjを上方に向けた状態で載置部221に載置される。
第2受渡ステーション22では、支持基板Sが載置された載置部221が移動部222によって第2搬送領域24側の所定の位置まで移動する。この所定の位置とは、第2搬送装置241の搬送アーム部が載置部221上の支持基板Sを受け取ることができる位置である。
続いて、支持基板Sは、第2搬送装置241によって第2受渡ステーション22から取り出されて、第2洗浄ステーション23へ搬入される。第2洗浄ステーション23では、第2洗浄装置が、剥離後の支持基板Sに対して洗浄処理を行う(図4のステップA108)。かかる洗浄処理によって、支持基板Sの接合面Sjに残存する接着剤Gが除去される。
洗浄処理後の支持基板Sは、第2搬送装置241によって第2洗浄ステーション23から取り出されて、搬出ステーション25に載置されたカセットCsに収容される。その後、複数の支持基板Sを収容したカセットCsは、搬出ステーション25から搬出されて、回収される(図4のステップA109)。こうして、支持基板Sについての処理も終了する。
以上のように本実施形態に係る剥離システム1は、重合基板T及び被処理基板Wに対する処理を行う第1処理ブロック10と、支持基板Sに対する処理を行う第2処理ブロック20とを備える。このため、重合基板T及び被処理基板Wに対する処理と、支持基板Sに対す処理とを並列に行うことが可能となるため、一連の基板処理を効率的に行うことができる。より具体的には、本実施形態に係る剥離システム1は、ダイシングフレームFに保持された基板(重合基板T及び剥離後の被処理基板W)用のフロントエンド(搬入出ステーション11及び第1搬送領域13)と、ダイシングフレームFに保持されない基板(剥離後の支持基板S)用のフロントエンド(搬出ステーション25及び第2搬送領域24)とを備える。これにより、被処理基板Wを搬入出ステーション11へ搬送する処理と、支持基板Sを搬出ステーション25へ搬送する処理とを並列に行うことが可能となる。したがって、従来の基板の搬送待ちを軽減でき、剥離処理のスループットを向上させることができる。
また、本実施形態によれば、重合基板Tと被処理基板WがダイシングフレームFに保持されていても、ダイシングフレームFで保持された重合基板T及び被処理基板Wの搬送と、ダイシングフレームFに保持されない支持基板Sの搬送とは、それぞれ別個の第1搬送装置131と第2搬送装置241とで行われる。したがって、従来のように1つの搬送装置でダイシングフレームに保持された基板とダイシングフレームに保持されない基板を搬送する場合に比べて、本実施形態では、重合基板T、被処理基板W、支持基板Sを搬送する際の制御を簡易化することができ、剥離処理を効率よく行うことができる。
さらに、本実施形態に係る剥離システム1では、剥離ステーション14、第2洗浄ステーション23及び第2搬送領域24が第1受渡ステーション21と第2受渡ステーション22を介して接続される。これにより、第1搬送領域13を経由することなく、剥離後の支持基板Sを剥離ステーション14から第2搬送領域24へ直接搬入することが可能となるため、剥離後の支持基板Sの搬送を円滑に行うことができる。
しかも、第2受渡ステーション22は、支持基板Sを載置する載置部221と、載置部221を水平方向に移動させる移動部222とを備える。これにより、第1受渡ステーション21と第2搬送領域24との間で支持基板Sを受け渡す際、支持基板Sを載置した載置部221を移動できるので、当該第1受渡ステーション21の受渡装置211の非接触保持部や第2搬送領域24の第2搬送装置241の搬送アーム部を伸長させる必要がない。したがって、第1受渡ステーション21と第2搬送領域24の専有面積を小さくでき、剥離システム1全体の専有面積を小さくすることができる。
なお、以上の剥離システム1において、第1処理ブロック10は、重合基板TにダイシングフレームFを取り付けるためのマウント装置を備えていてもよい。かかる場合、ダイシングフレームFが取り付けられていない重合基板TをカセットCtから取り出してマウント装置へ搬入し、マウント装置において重合基板TにダイシングフレームFを取り付けた後、ダイシングフレームFに固定された重合基板Tを剥離ステーション14へ搬送することとなる。なお、マウント装置は、第1処理ブロック10の任意の位置に配置すればよい。
また、以上の剥離システム1の第1処理ブロック10に設けられた第1洗浄ステーション15とエッジカットステーション16は、剥離システム1の外部に設けられていてもよい。さらに、第2処理ブロック20に設けられた第2洗浄ステーション23は、剥離システム1の外部に設けられていてもよい。
また、以上の剥離システム1において、各処理ステーションの処理装置や搬送領域の配置は任意に設計することができ、水平方向に並べて配置してもよいし、鉛直方向に積層して配置してもよい。
<2.剥離装置の構成>
次に、剥離ステーション14に設置される剥離装置141、142の構成について図5を参照して説明する。図5は、本実施形態に係る剥離装置141の構成を示す模式側面図である。なお、剥離装置142の構成は、剥離装置141の構成と同様であるので説明を省略する。
図5に示すように、剥離装置141は処理容器300を有する。処理容器300の側面には、被処理基板W、支持基板S、重合基板Tの搬入出口(図示せず)が形成され、当該搬入出口には開閉シャッタ(図示せず)が設けられる。
処理容器300の内部には、第1保持部310と、下側ベース部320と、回転機構330と、昇降機構340と、第2保持部350と、上側ベース部390と、位置調節部400と、押し下げ部410と、受渡部420と、剥離誘引部430と、移動調節部440と、計測部450と、検査部460と、イオナイザ470とが設けられる。
第1保持部310は、重合基板Tのうち被処理基板Wを下方から保持し、第2保持部350は、重合基板Tのうち支持基板Sを上方から保持する。第1保持部310は第2保持部350の下方に設けられて、被処理基板Wが下側に配置され、支持基板Sが上側に配置される。そして、第2保持部350は、保持した支持基板Sを被処理基板Wの板面から離す方向へ移動させる。これにより、剥離装置141では、重合基板Tを支持基板Sと被処理基板Wとに剥離する。以下、各構成要素について具体的に説明する。
第1保持部310には、例えばポーラスチャックが用いられる。第1保持部310は、円盤状の本体部311と、本体部311を支持する支柱部材312とを備える。支柱部材312は、後述する下側ベース部320に支持される。
本体部311は、例えばアルミニウムなどの金属部材で構成される。かかる本体部311の表面には、吸着面311aが設けられる。吸着面311aは、重合基板Tと略同径であり、重合基板Tの下面、すなわち、被処理基板Wの非接合面WNと当接する。この吸着面311aは、例えば炭化ケイ素等の多孔質体や多孔質セラミックで形成される。
本体部311の内部には、吸着面311aを介して外部と連通する吸引空間311bが形成される。吸引空間311bには、配管313が接続される。配管313は、バルブ314を介して2本の配管に枝分かれしている。一の配管313には、例えば真空ポンプなどの吸気装置315が接続される。吸気装置315には、その吸気圧力、すなわち第1保持部310で被処理基板Wを吸引する際の吸引圧力を測定するセンサ(図示せず)が設けられる。他の配管313には、内部に気体、例えば窒素ガスや大気を貯留する気体供給源316が接続される。
かかる第1保持部310は、吸気装置315の吸気によって発生する負圧を利用し、被処理基板Wの非接合面WNをダイシングテープPを介して吸着面311aに吸着させる。これにより、第1保持部310は被処理基板Wを保持する。また、第1保持部310は、表面から気体を噴出して被処理基板Wを浮上させながら保持することもできる。なお、ここでは、第1保持部310がポーラスチャックである場合の例を示したが、第1保持部は、例えば静電チャック等であってもよい。
下側ベース部320は、第1保持部310の下方に配置され、当該第1保持部310を支持する。下側ベース部320は、処理容器300の床面に固定された回転機構330及び昇降機構340によって支持される。
回転機構330は、下側ベース部320を鉛直軸回りに回転させる。これにより、下側ベース部320に支持された第1保持部310が回転する。また、昇降機構340は、下側ベース部320を鉛直方向に移動させる。これにより、下側ベース部320に支持された第1保持部310が昇降する。
第1保持部310の上方には、第2保持部350が対向配置される。第2保持部350は、複数の吸着移動部を備える。具体的には、第2保持部350は、第1吸着移動部360と、第2吸着移動部370と、第3吸着移動部380とを備える。第1〜第3吸着移動部360、370、380は、上側ベース部390に支持される。上側ベース部390は、処理容器300の天井部に取り付けられた固定部材391に支柱392を介して支持される。
第1吸着移動部360は、支持基板Sの一端S1側の周縁部を吸着保持する。また、第2吸着移動部370は、支持基板Sの周縁部よりも支持基板Sの中央部寄りの領域を吸着保持する。なお、第2吸着移動部370は、X方向に複数、例えば2つ並べて配置される。第3吸着移動部380は、支持基板Sの他端S2側の周縁部を吸着保持する。そして、第1〜第3吸着移動部360、370、380は、吸着保持した領域をそれぞれ独立に被処理基板Wの板面から離す方向へ移動させる。
第1吸着移動部360は、吸着パッド361と、支柱部材362と、移動機構363とを備える。また、第2吸着移動部370は、吸着パッド371と、支柱部材372と、移動機構373とを備える。同様に、第3吸着移動部380も、吸着パッド381と、支柱部材382と、移動機構383とを備える。
吸着パッド361、371、381は、ゴムなどの弾性部材によって形成される。各吸着パッド361、371、381には、吸気口(図示せず)が形成されており、それぞれの吸気口には、吸気管364、374、384を介して真空ポンプなどの吸気装置365、375、385が接続される。各吸気装置365、375、385には、その吸気圧力、すなわち第1〜第3吸着移動部360、370、380が支持基板Sを吸引する際の吸引圧力を測定するセンサ(図示せず)が設けられる。
支柱部材362、372、382は、先端部において吸着パッド361、371、381を支持する。支柱部材362、372、382の基端部は、移動機構363、373、383によって支持される。移動機構363、373、383は、上側ベース部390の上部に固定されており、支柱部材362、372、382を鉛直方向に移動させる。
第1〜第3吸着移動部360、370、380は、吸気装置365、375、385の吸気によって発生する負圧を利用して支持基板Sを吸着する。これにより、第1〜第3吸着移動部360、370、380は、支持基板Sを保持する。
また、第1〜第3吸着移動部360、370、380は、支持基板Sを保持した状態で、それぞれ移動機構363、373、383によって支柱部材362、372、382及び吸着パッド361、371、381を鉛直方向に沿って移動させる。これにより、支持基板Sを鉛直方向に沿って移動させる。
第2保持部350においては、先ず、移動機構363を動作させ、次いで、移動機構373を動作させて、最後に、移動機構383を動作させる。すなわち、第2保持部350は、支持基板Sを一端S1側の周縁部から先に引っ張り、次いで中央部を引っ張り、最後に他端S2側の周縁部を引っ張る。これにより、第2保持部350は、支持基板Sを、その一端S1から他端S2へ向けて被処理基板Wから徐々に、かつ連続的に剥離させる。
第1保持部310の上方には、位置調節部400が配置される。位置調節部400は、第1搬送装置131によって剥離装置141に搬送され、第1保持部310に保持された重合基板Tを所定の位置(例えば吸着面311aと一致する位置)に位置調節する、換言すればセンタリングする。
位置調節部400は、例えば図3に示した重合基板Tの外周の3箇所に対応する位置であって、重合基板Tの中央部を中心として相互に等間隔にそれぞれ設けられる。なお、位置調節部400が設置される場所は、上記の3箇所に限定されるものではなく、例えば重合基板Tの外周の前後又は左右の2箇所、或いは重合基板Tの中央部を中心として相互に等間隔に4箇所以上に設置してもよい。
位置調節部400は、アーム部401と、当該アーム部401を回転させる回転移動機構402とを備える。アーム部401は、長尺状の部材であり、基端部が回転移動機構402に回転可能に接続される。また、アーム部401の長手方向の長さは、例えば回転移動機構402によって先端部が鉛直下向きになるまで回転移動させられたときにその先端部が重合基板Tの側面、より詳細には支持基板Sの側面に当接するような値であって、当該回転移動中にダイシングフレームFに干渉しない値に設定される。このようにアーム部401は、重合基板Tの側面に対して進退自在に構成されている。なお、アーム部401には種々の樹脂が用いられ、例えばポリオキシメチレン(POM:Polyoxymethylene)やセラゾール(PBI)などが用いられる。
回転移動機構402は、例えば上側ベース部390の下部に固定され、アーム部401を基端側を中心に回転移動させる。このとき、上述したように回転移動中のアーム部401がダイシングフレームFに干渉することはない。各位置調節部400のアーム部401がそれぞれ回転移動機構402によって回転移動させられると、アーム部401の先端部が重合基板Tの側面(支持基板Sの側面)に当接する。これにより、重合基板Tは、所定の位置に位置調節される。このように、位置調節部400を備えることにより、仮に重合基板Tが所定の位置からずれた状態で第1保持部310に保持された場合であっても、かかる重合基板Tを第1保持部310の正しい位置、詳しくは例えば吸着面311aと一致する位置に移動させて修正することができる。
第2保持部350の外方には、ダイシングフレームFを鉛直下方に押し下げるための押し下げ部410が配置される。押し下げ部410は、ダイシングフレームFの外周部の3箇所に設けられる。これら押し下げ部410は、ダイシングフレームFの中央部を中心として相互に等間隔に配置される。なお、上記では、押し下げ部410を3箇所に設けるようにしたが、これは例示であって限定されるものではなく、例えば4箇所以上であってもよい。
押し下げ部410は、図6に示すようにボールベア411と、支持部材412とを備える。支持部材412の先端部にボールベア411が支持され、支持部材412の基端部は上側ベース部390の下部に固定される。
ボールベア411は、ダイシングフレームFの表面に当接し、当該ダイシングフレームFを重合基板Tに対して鉛直下方に押し下げる。また、ボールベア411により、ダイシングフレームFは回転自在な状態で押し下げられる。これにより、重合基板Tの側面側には、後述する剥離誘引部430が侵入可能な空間が形成されることとなる。それによって剥離誘引部430の鋭利部材(後述)を重合基板Tの側面、より詳細には支持基板Sの接着剤G寄りの側面に容易に近づけて当接させることができる。
図5に示すように第2保持部350の外方、より詳細には押し下げ部410の外方には、第1保持部310に重合基板Tを受け渡す受渡部420が配置される。受渡部420は、ダイシングフレームFの左右の2箇所に対応する位置にそれぞれ設けられる。なお、上記では受渡部420を2箇所に設けるようにしたが、これは例示であって限定されるものではなく、例えば3箇所以上であってもよい。
受渡部420は、図6に示すように水平保持部材421と、鉛直支持部材422と、移動機構423とを備える。また受渡部420の水平保持部材421には、ガイド部424が設けられる。
水平保持部材421は水平方向に延伸し、当該水平保持部材421上にはガイド部424が設けられる。ガイド部424は、水平保持部材421上に保持された重合基板Tが、第1保持部310に対して所定の位置に位置するように位置調節をする。すなわち、ガイド部424は、位置調節部400による重合基板Tの位置調節に先だって、当該重合基板Tの位置調節を行う。
鉛直支持部材422は鉛直方向に延伸し、水平保持部材421を支持する。また鉛直支持部材422の基端部は、移動機構423によって支持される。移動機構423は、上側ベース部390の上部に固定されており、鉛直支持部材422を鉛直方向に移動させる。
受渡部420は、移動機構423によって鉛直支持部材422、水平保持部材421及びガイド部424を鉛直方向に沿って移動させる。したがって、第1搬送装置131から重合基板Tを受け取った水平保持部材421は鉛直方向に移動され、重合基板Tを第1保持部310に受け渡す。
図5に示すとおり第2保持部350の外方には、より詳細には受渡部420の外方には、剥離誘引部430が配置される。剥離誘引部430は、支持基板Sが被処理基板Wから剥離するきっかけとなる部位を重合基板Tにおける一端S1側の側面に形成する。
剥離誘引部430は、図6に示すように鋭利部材431と、ロードセル432と、移動機構433とを備える。鋭利部材431は、例えば刃物であり、先端が重合基板Tへ向けて突出するように移動機構433に支持される。なお、鋭利部材431は、例えばカミソリ刃やローラ刃あるいは超音波カッター等を用いてもよい。ロードセル432は鋭利部材431の端部に設けられ、鋭利部材431にかかる力(負荷)を検出する。
移動機構433は、Y方向に延伸するレールに沿って鋭利部材431を移動させる。剥離誘引部430は、移動機構433を用いて鋭利部材431を移動させることにより、支持基板Sの接着剤G寄りの側面に鋭利部材431を当接させる。これにより、剥離誘引部430は、支持基板Sが被処理基板Wから剥離するきっかけとなる部位(以下、「剥離開始部位」と記載する)を重合基板Tにおける一端S1側の側面に形成する。
また、移動機構433は、移動調節部440によって上方から支持される。移動調節部440は、例えば上側ベース部390の下部に固定され、移動機構433を鉛直方向に沿って移動させる。これにより、鋭利部材431の高さ位置、すなわち、重合基板Tの側面への当接位置を調節することができる。
ここで、剥離誘引部430を用いて行われる剥離誘引処理の内容について図7〜図9を参照して具体的に説明する。図7〜図9は、剥離誘引処理の動作説明図である。
なお、この剥離誘引処理は、重合基板Tのうちの被処理基板Wが第1保持部310によって保持され、ダイシングフレームFが押し下げ部410によって押し下げられた後、且つ、支持基板Sが第2保持部350によって保持される前に行われる。すなわち、剥離誘引処理は、支持基板Sがフリーな状態で行われる。また、剥離誘引部430は、制御装置30の制御に基づき、図7〜図9に示す剥離誘引処理を行う。
剥離誘引部430では、移動調節部440を用いて鋭利部材431の高さ位置を調節した後、移動機構433を用いて鋭利部材431を重合基板Tの側面へ向けて移動させる。具体的には、図7に示すように、重合基板Tにおける一端S1側の側面のうち、支持基板Sの接着剤G寄りの側面に向けて鋭利部材431を略水平に移動させる。
「支持基板Sの接着剤G寄りの側面」とは、支持基板Sの側面のうち、支持基板Sの厚みの半分の位置h1よりも接合面SJ寄りの側面である。すなわち、支持基板Sの側面は略円弧状に形成されており、「支持基板Sの接着剤G寄りの側面」は、鋭利部材431と接合面SJとのなす角度を0度とした場合における鋭利部材431とのなす角度θが0度以上90度未満の側面である。
先ず、鋭利部材431を予め決められた位置まで前進させる(予備前進)。その後、鋭利部材431をさらに前進させて鋭利部材431を支持基板Sの接着剤G寄りの側面に当接させる。
このとき、ロードセル432と移動機構433のいずれか一方又は両方を用いて、鋭利部材431が支持基板Sに当接したことを検知する。すなわち、ロードセル432を用いて鋭利部材431にかかる力を測定し、当該力の変化を検出することによって、鋭利部材431が支持基板Sに当接したことを検知してもよい。或いは、移動機構433に内蔵されたモータのトルクを測定し、当該トルクの変化を検出することによって、鋭利部材431が支持基板Sに当接したことを検知してもよい。さらに、これらロードセル432によって測定される力の変化が検出され、且つ移動機構433のモータのトルクの変化が検出された際に、鋭利部材431が支持基板Sに当接したことを検知してもよい。
ここで、第1保持部310は、例えば設置誤差等の種々の原因により、水平方向に僅かにずれて配置されている場合がある。かかる場合、剥離誘引部430によって重合基板Tに剥離開始部位を形成する際、鋭利部材431が、予め設定された範囲を超えて重合基板Tの側面に進入する場合がある。そうすると、被処理基板Wの接合面Wjに形成された電子回路が鋭利部材431によって損傷を被るおそれがある。
この点、本実施形態では、上述したようにロードセル432と移動機構433のいずれを用いた場合でも、鋭利部材431が支持基板Sに当接したことを検知できる。このため、鋭利部材431を重合基板Tの側面に適切な距離だけ進入させることができ、電子回路が損傷を被るのを回避することができる。
そして、鋭利部材431が支持基板Sの接着剤G寄りの側面に当接すると、支持基板Sの側面が略円弧状に形成されているため、支持基板Sには上方向きの力が加わることとなる。
続いて、図8に示すように、鋭利部材431をさらに前進させる。これにより、支持基板Sは、側面の湾曲に沿って上方へ押し上げられる。この結果、支持基板Sの一部が接着剤Gから剥離して剥離開始部位Mが形成される。
なお、支持基板Sは第2保持部350によって保持されておらずフリーな状態であるため、支持基板Sの上方への移動が阻害されることがない。本処理において、鋭利部材431を前進させる距離a1は、例えば1mm程度である。この距離a1は、例えば接着剤Gの種類や厚み等に応じて設定され、予め制御装置30に記憶されている。
また、剥離装置141においては、上記した処理による支持基板Sの剥離状態を確認する確認装置、具体的には剥離開始部位Mが形成されたことを確認する確認装置(図示せず)を設けるように構成してもよい。具体的に確認装置は、例えば支持基板Sの上方に設置されたIR(Infrared、赤外線)カメラ(図示せず)である。
詳しくは、赤外線は、支持基板Sにおいて被処理基板Wから剥離した部位と剥離していない部位とでその反射率が変化する。そこで、先ずIRカメラで支持基板Sを撮像することで、支持基板Sにおける赤外線の反射率の違い等が示された画像データを取得する。そして、画像データは制御装置30へ送信され、制御装置30では、その画像データに基づき、支持基板Sにおいて被処理基板Wから剥離した部位、すなわち剥離開始部位Mを検知することができる。
制御装置30において剥離開始部位Mが検知された場合、後述する次の処理へ移行する。一方、制御装置30において剥離開始部位Mが検知されない場合、例えば鋭利部材431をさらに前進させる、又は鋭利部材431を一旦後退させて支持基板Sから離し、その後図7及び図8で示した動作を再度実行するなどして、剥離開始部位Mを形成するようにする。このように、支持基板Sの剥離状態を確認する確認装置を設け、剥離状態に応じて剥離装置141を動作させることで、剥離開始部位Mを確実に形成することができる。
剥離開始部位Mが形成されると、続いて、図9に示すように、剥離装置141は、昇降機構340を用いて第1保持部310を降下させつつ、鋭利部材431をさらに前進させる。これにより、被処理基板W及び接着剤Gには下方向きの力が加わり、鋭利部材431によって支持された支持基板Sには上方向きの力が加わる。これにより、剥離開始部位Mが拡大する。
なお、本処理において、鋭利部材431を前進させる距離a2は、例えば1mm程度である。この距離a2は、例えば接着剤Gの種類や厚み等に応じて設定され、予め制御装置30に記憶されている。また、鋭利部材431が支持基板Sに当接してから前進する距離(a1+a2)は、少なくとも鋭利部材431の先端が、被処理基板Wの接合面Wjに形成された電子回路まで到達せず、当該電子回路が損傷を被らない範囲で設定される。
このように、剥離装置141は、支持基板Sの接着剤G寄りの側面に鋭利部材431を突き当てることにより、支持基板Sが被処理基板Wから剥がれるきっかけとなる剥離開始部位Mを重合基板Tの側面に形成することができる。
支持基板Sの接着剤G寄りの側面に鋭利部材431を当接させることによって、支持基板Sを被処理基板Wから引き剥がす方向の力(すなわち、上向きの力)を支持基板Sに加えることができる。しかも、支持基板Sの最外縁部に近い部位を持ち上げるため、支持基板Sを被処理基板Wから引き剥がす方向の力を支持基板Sに対して効率的に加えることができる。
なお、「支持基板Sの接着剤G寄りの側面」は、より好ましくは、図7に示すように、支持基板Sの接合面SJから支持基板Sの厚みの1/4の位置h2までの側面、すなわち、鋭利部材431とのなす角度θが0度以上45度以下の側面であるのが好ましい。鋭利部材431とのなす角度θが小さいほど、支持基板Sを持ち上げる力を大きくすることができるためである。
また、支持基板Sと接着剤Gとの接着力が比較的弱い場合には、図7に示すように、鋭利部材431を支持基板Sの接着剤G寄りの側面に当接させるだけで剥離開始部位Mを形成することができる。このような場合、図8及び図9に示す動作を省略することができる。
また、支持基板Sと接着剤Gとの接着力が比較的強い場合には、鋭利部材431を支持基板Sに当接させることで支持基板Sにかかる上向きの力よりも、当該支持基板Sと接着剤Gとの接着力が強くなる場合がある。かかる場合、鋭利部材431を支持基板Sの側面に当接させると、重合基板T自体がダイシングテープPから剥がれてしまう場合がある。そこで、鋭利部材431を接着剤Gに当接させて剥離開始部位Mを形成してもよい。そして、鋭利部材431を前進させて、接着剤Gの側面に剥離開始部位Mが形成される。
ここで、支持基板Sと接着剤Gとの間において、当該支持基板Sと接着剤Gの剥離を容易にするために離型膜が設けられている場合があり、この離型膜が支持基板Sと被処理基板Wの間にはみ出して、接着剤Gの側方を覆っている場合がある。かかる場合、支持基板Sを被処理基板Wから剥がそうとしても、支持基板Sの移動に伴い離型膜が引っ張られ、さらに被処理基板Wも引っ張られるため、支持基板Sと被処理基板Wを適切に剥離できない。そこで、鋭利部材431を接着剤Gに当接させるようにすると、この離型膜にも剥離開始部位Mが形成されることになる。したがって、支持基板Sを被処理基板Wから適切に剥離させることができる。
また、剥離装置141は、例えば図9に示す状態からさらに回転機構330を回転させ、第1保持部310を鉛直軸回りに例えば360度回転させるようにしてもよい。このとき、押し下げ部410がボールベア411を有しているため、ダイシングフレームFが押し下げ部410により押し下げられた状態で、第1保持部310を回転させることができる。これにより、剥離開始部位Mが支持基板Sの接合面SJの全周又は接着剤Gの全周に亘って形成されることとなり、支持基板Sを被処理基板Wから剥がし易くすることができる。
また、発明者らが調べたところ、剥離後に被処理基板Wの外周部に欠陥(例えばクラックや欠け)が発生する場合があることが分かった。この欠陥の一因としては、重合基板Tを剥離する際、その外周部において適切に剥離できていないことが考えられる。特に上述したように支持基板Sと接着剤Gとの間に離型膜が設けられている場合、支持基板Sの移動に伴い離型膜と被処理基板Wが引っ張られ、被処理基板Wの外周部に欠陥が発生しやすくなる。この点、本実施形態では、第1保持部310を回転させて剥離開始部位Mを支持基板S又は接着剤Gの全周に亘って形成できるので、支持基板Sの移動に伴い被処理基板Wが引っ張られることがなく、剥離後に被処理基板Wの外周部に生じる欠陥を抑制することができる。さらに、上記離型膜が設けられている場合でも、支持基板Sの移動に伴い離型膜と被処理基板Wが引っ張られることがないので、被処理基板Wの外周部の欠陥を特に効果的に抑制できる。
次に、鋭利部材431の高さ位置を計測する計測部450について説明する。計測部450は、例えばレーザ変位計であり、図6に示すように上側ベース部390に設けられる。かかる計測部450は、所定の測定基準位置から第1保持部310の保持面までの距離または測定基準位置と第1保持部310の保持面との間に介在する物体までの距離を計測する。
計測部450による計測結果は、制御装置30へ送信される。制御装置30は、図示しない記憶部に、外部装置によって予め取得された重合基板Tの厚みに関する情報(以下、「事前厚み情報」と記載する)を記憶する。かかる事前厚み情報には、重合基板Tの厚み、被処理基板Wの厚み、支持基板Sの厚み、接着剤Gの厚みおよびダイシングテープPの厚みが含まれる。
制御装置30は、計測部450から取得した計測結果と、記憶部に記憶された事前厚み情報とに基づき、支持基板Sの接着剤G寄りの側面に鋭利部材431が当接するように鋭利部材431の高さ位置を決定する。そして、制御装置30は、決定した高さ位置に鋭利部材431の先端が位置するように移動調節部440を制御して剥離誘引部430を移動させる。
ここで、剥離誘引部430の位置調節処理の内容について具体的に説明する。まず、剥離装置141は、計測部450を用いて第1保持部310の保持面までの距離D1を計測する。このとき、剥離装置141には、重合基板Tが未だ搬入されていない状態である。
なお、図6に示す重合基板Tの厚みD3、被処理基板Wの厚みD3w、接着剤Gの厚みD3g、支持基板Sの厚みD3sおよびダイシングテープPの厚みD3pは、事前厚み情報として制御装置30の記憶部に記憶された情報である。
続いて、剥離装置141は、重合基板Tを第1保持部310を用いて吸着保持した後、第1保持部310によって吸着保持された重合基板Tの上面すなわち支持基板Sの非接合面Snまでの距離D2を計測する。かかる計測結果は、制御装置30へ送信される。制御装置30は、計測部450の計測結果より算出される重合基板Tの厚み(D1−D2)と、事前厚み情報に含まれる重合基板Tの厚み(D3)との差が所定範囲内であるか否かを判定する。
ここで、計測部450の計測結果より算出される重合基板Tの厚み(D1−D2)と、事前厚み情報が示す厚み(D3)との誤差が所定範囲を超える場合には、例えば本来搬入されるべき重合基板Tとは異なる重合基板Tが誤って搬入された可能性がある。このような場合には、支持基板Sの接着剤G寄りの側面に鋭利部材431を適切に当接させることができず、場合によっては、鋭利部材431が被処理基板Wに接触して被処理基板Wが損傷するおそれがある。
このため、計測部450の計測結果を用いて算出される重合基板Tの厚みと、事前厚み情報に含まれる重合基板Tの厚みとの誤差が所定範囲を超える場合には、剥離装置141は、その後の処理を中止する。
一方、事前厚み情報との誤差が所定範囲内である場合、制御装置30は、支持基板Sの接着剤G寄りの側面の範囲、すなわち、支持基板Sの厚みの半分の位置から接合面Sjまでの高さ範囲を事前厚み情報に基づいて算出する。具体的には、支持基板Sの接着剤G寄りの側面の範囲は、D2+D3s/2〜D2+D3sとなる。そして、制御装置30は、かかる高さ範囲内に鋭利部材431の高さ位置を決定する。
制御装置30によって剥離誘引部430の切り込み位置が決定されると、剥離装置141は、制御装置30の制御に基づき、移動調節部440を用いて剥離誘引部430を移動させることによって鋭利部材431の高さ位置を調節する。
このように、剥離装置141は、計測部450と移動調節部440とを備える。計測部450は、所定の測定基準位置から第1保持部310の保持面までの距離または測定基準位置と第1保持部310の保持面との間に介在する物体までの距離を計測する。移動調節部440は、計測部450の計測結果と、予め取得された重合基板Tの厚みに関する情報とに基づいて、鋭利部材431の支持基板Sへの当接位置を調節する。これにより、支持基板Sの接着剤G寄りの側面に対して鋭利部材431を精度よく当接させることができる。
次に、剥離後の被処理基板Wを検査する検査部460について説明する。検査部460は、支持部材461を介して上側ベース部390に設けられる。なお、検査部460が設けられる位置は、上側ベース部390に限定されず、任意に設定できる。
検査部460には、例えばカメラが用いられる。検査部460は、被処理基板Wの全体を撮像できると共に、被処理基板Wの外周部を撮像できる。このように検査部460が異なる領域の画像データを撮像するには、種々の方法が考えられる。例えば検査部460自体の機能を利用して焦点距離を変更してもよいし、検査部460のレンズを変更してもよい。或いは、支持部材461を移動機構として機能させ、検査部460を鉛直方向と水平方向に移動させてもよい。そして、撮像された画像データは、制御装置30に送信される。
イオナイザ470は、図5に示すように処理容器300の天井部に取り付けられる。イオナイザ470は、重合基板Tを剥離する際に発生する静電気を除電する。これにより、重合基板Tの剥離処理を適切に行うことができる。また、被処理基板W上の電子回路が損傷を被るのを抑制することもできる。
<3.剥離装置の動作>
次に、剥離装置141を用いて行われる被処理基板Wと支持基板Sの剥離処理方法について説明する。図10は、かかる剥離処理の主な工程の例を示すフローチャートである。また、図11〜図21は、剥離処理の説明図である。なお、剥離装置141は、制御装置30の制御に基づき、図10に示す各処理手順を実行する。
先ず、第1搬送装置131によって剥離装置141に搬入された重合基板Tは、図11に示すように予め待機していた受渡部420に受け渡される(図10のステップA201)。受渡部420に受け渡された重合基板Tは、ガイド部424によって、第1保持部310に対して所定の位置に位置するように位置調節される。なお、このとき、第1保持部310は受渡部420の下方に位置している。そして第1保持部310では、吸着面311aの複数の孔が目詰まりするのを抑制するため、気体供給源316から吸着面311aに供給された気体が噴出している。
その後、図12に示すように第1保持部310を上昇させ、受渡部420から第1保持部310に重合基板Tが受け渡される(図10のステップA202)。このとき、第1保持部310の吸着面311aからは気体が噴出しており、重合基板Tは第1保持部310から浮上した状態で当該第1保持部310に保持される。なお、重合基板Tと吸着面311aとの隙間は微小であり、重合基板Tは第1保持部310に適切に保持される。
その後、図13に示すように第1保持部310をさらに上昇させ、位置調節部400によって第1保持部310に保持された重合基板Tを所定の位置に位置調節する(図10のステップA203)。具体的には、回転移動機構402によってアーム部401を回転移動させる。このとき、アーム部401の長手方向の長さが適切に設定されており、回転移動中のアーム部401がダイシングフレームFに干渉することはない。位置調節部400のアーム部401がそれぞれ回転移動機構402によって回転移動させられると、アーム部401の先端部が支持基板Sの側面に当接する。これにより、重合基板Tは、所定の位置に位置調節される。しかも、アーム部401が支持基板Sの側面に当接するので、製品となる被処理基板Wが損傷を被ることはない。
なおステップA203では、ステップA202に引き続き、第1保持部310の吸着面311aから気体が噴出しており、重合基板Tは第1保持部310から浮上している。かかる場合、重合基板Tが移動し易くなり、位置調節部400による重合基板Tの位置調節を円滑に行うことができる。
その後、第1保持部310においてバルブ314を切り替え、気体供給源316からの気体の供給を停止し、吸気装置315による111aの吸引を開始する。そして図14に示すように第1保持部310によって、被処理基板WをダイシングテープPを介して吸着保持する(図10のステップA204)。
その後、図14に示すように第1保持部310をさらに上昇させ、当該第1保持部310に保持された重合基板Tを剥離処理が行われる所定の位置に配置する(図10のステップA205)。このとき、押し下げ部410によってダイシングフレームFが重合基板Tに対して鉛直方向下方に押し下げられる。これにより、重合基板Tの側面側には、剥離誘引部430が侵入可能な空間が形成される。
ステップA201〜A205が行われている間、鋭利部材431の高さを調節する(図10のステップA206)。具体的には、計測部450で鋭利部材431の高さ位置を計測した後、移動調節部440によって剥離誘引部430が所定の高さ位置に移動される。
その後、剥離誘引部430の鋭利部材431を重合基板T側に移動させ、支持基板Sに当接させる。このとき、図7を参照して説明したようにロードセル432と移動機構433のいずれか一方又は両方を用いて、鋭利部材431が支持基板Sに当接したことを検知する(図10のステップA207)。
その後、図15に示すように鋭利部材431をさらに前進させつつ、図7〜図9を参照して説明した剥離誘引処理を行う(図10のステップA208)。これにより、重合基板Tの一端S1側の側面に剥離開始部位Mが形成される。
その後、図16に示すように第1〜第3吸着移動部360、370、380の吸着パッド361、371、381を降下させて支持基板Sに当接させる。そして、これら第1〜第3吸着移動部360、370、380で支持基板Sの非接合面SNを吸着保持する(図10のステップA209)。
続いて、図17に示すように第1吸着移動部360の吸着パッド361を上昇させる(図10のステップA210)。すなわち、剥離開始部位Mに対応する支持基板Sの一端S1側の周縁部を引っ張る。これにより、支持基板Sが、その周縁部から中心部へ向けて被処理基板Wから連続的に剥離し始める。
なお、ステップA210において、第1吸着移動部360の移動機構363を制御して吸着パッド361にかかる力を一定に維持してもよい。そうすると、第1吸着移動部360で支持基板Sを引っ張る際の力を一定にすることができ、支持基板Sを被処理基板Wから適切に剥離させることができる。このため、剥離後に被処理基板Wの外周部に生じる欠陥を抑制することができる。また通常、剥離が進むにつれ、吸着パッド361にかかる負荷は小さくなり、すなわち支持基板Sは剥離しやすくなる。そこで、上述したように吸着パッド361にかかる力を一定に維持すると、吸着パッド361が移動するにつれて、当該吸着パッド361の移動速度が大きくなる。このため、支持基板Sが被処理基板Wから剥離する剥離速度を向上させることができる。
その後、図18に示すように第2吸着移動部370の吸着パッド371を上昇させる(図10のステップA211)。すなわち、支持基板Sの一端S1側の周縁部を引っ張りつつ、支持基板Sの中央部付近をさらに引っ張る。なお、ステップA211においても、第2吸着移動部370の移動機構373を制御して吸着パッド371にかかる力を一定に維持してもよい。かかる場合、剥離処理をより安定させることができると共に、剥離速度をより向上させることができる。
その後、図19に示すように第3吸着移動部380の吸着パッド381を上昇させる(図10のステップA212)。すなわち、剥離装置141は、支持基板Sの一端S1側の周縁部及び支持基板Sの中央部付近を引っ張りつつ、支持基板Sの他端S2側の周縁部をさらに引っ張る。これにより、支持基板Sが被処理基板Wから剥離する(図10のステップA213)。なお、ステップA212においても、第3吸着移動部380の移動機構383を制御して吸着パッド381にかかる力を一定に維持してもよい。かかる場合、剥離処理をより安定させることができると共に、剥離速度をより向上させることができる。
その後、第2、第3吸着移動部370、380のみを上昇させ、あるいは、第1、第2吸着移動部360、370のみを降下させるなどして支持基板Sを水平にし、鋭利部材431を後退させる。
被処理基板Wと支持基板Sが剥離されると、図20に示すように第1保持部310を下降させ、当該第1保持部310を検査位置に配置する(図10のステップA214)。
続いて、図20に示すように検査部460によって、第1保持部310に保持された被処理基板Wの全体を撮像する。撮像された画像データは制御装置30に送信され、制御装置30では、この撮像された画像データに基づいて、第1保持部310における被処理基板Wの有無、すなわちダイシングテープP上の被処理基板Wの有無について検査する(図10のステップA215)。なお、被処理基板Wの接合面Wjには接着剤Gが残存するが、かかる接着剤Gは薄いため、検査部460によって被処理基板Wを撮像できる。図20の例では、接着剤Gを点線で示している。
そして、第1保持部310において被処理基板Wが確認されなかった場合、被処理基板Wが支持基板Sに引っ張られて、被処理基板Wと支持基板Sが一体のまま、重合基板TがダイシングテープPから剥離されたことになる。かかる場合、被処理基板Wと支持基板Sが適切に剥離されておらず、重合基板Tは、後続の処理が行われることなく、搬入出ステーション11に搬送され、さらに搬入出ステーション11から搬出されて回収される。また、何も保持していない状態のダイシングテープPとダイシングフレームFも、同様に搬入出ステーション11から搬出されて回収される。
一方、第1保持部310において被処理基板Wが確認された場合、重合基板Tは被処理基板Wと支持基板Sに剥離されたことになる。かかる場合、続けて被処理基板Wの外周部の状態の検査が行われる。
すなわち、図21に示すように回転機構330によって第1保持部310を回転させながら、検査部460によって、当該第1保持部310に保持された被処理基板Wの外周部を撮像する。そうすると、被処理基板Wの外周部全周の画像データが撮像される。撮像された画像データは制御装置30に送信され、制御装置30では、この撮像された画像データに基づいて、被処理基板Wの外周部の状態を検査する(図10のステップA216)。
そして、被処理基板Wの外周部に欠陥(例えばクラックや欠け)が確認された場合、当該欠陥のある被処理基板Wは、後続の処理が行われることなく、搬入出ステーション11に搬送され、さらに搬入出ステーション11から搬出されて回収される。
一方、被処理基板Wの外周部に欠陥が確認されなかった場合、当該正常な被処理基板Wは、剥離装置141から搬出されて、後続の処理が行われる。同様に、支持基板Sも、剥離装置141から搬出されて、後続の処理が行われる。こうして、剥離装置141における一連の被処理基板Wと支持基板Sの剥離処理が終了する。
本実施形態によれば、ステップA215において、第1保持部310における被処理基板Wの有無を検査し、さらにステップA216において、被処理基板Wの外周部の状態を検査している。このように被処理基板Wを検査するので、適切に剥離された正常な被処理基板と、適切に剥離されていない異常な被処理基板とを分別することができ、剥離処理全体の効率を向上させることができる。
しかも、ステップA215における簡易検査とステップA216における詳細検査が2段階で行われるので、例えばステップA215の簡易検査で重合基板Tが剥離されていないと判定された場合、後続のステップA216の詳細検査を省略することができる。したがって、検査を効率よく行うことができ、剥離処理全体の効率をさらに向上させることができる。
ところで、ステップA215において、第1保持部310における被処理基板Wの有無を検査する際には、上述した吸気装置315に設けられたセンサ(図示せず)を用いて、第1保持部310で被処理基板Wを吸引する際の吸引圧力を測定することも考えられる。例えば被処理基板WがダイシングテープPとダイシングフレームFに保持されておらず、第1保持部310に直接保持される場合には、第1保持部310における吸引圧力がゼロになれば、当該第1保持部310において被処理基板Wが無いと判定できる。しかしながら、本実施形態のように被処理基板WがダイシングテープPに貼り付けられていると、第1保持部310はダイシングテープPを直接保持する。そうすると、被処理基板WがダイシングテープPから剥離されても、第1保持部310は依然としてダイシングテープPを吸着保持し、当該第1保持部310における吸引圧力がゼロにならない。そうすると、被処理基板Wの有無を検査することができない。したがって、本実施形態のステップA215のように、検査部460によって被処理基板Wの全体を撮像することで、当該被処理基板Wの有無を検査することは、被処理基板WがダイシングテープPとダイシングフレームFに保持されている場合に特に有用である。
<4.その他の実施形態>
以上の実施形態の剥離装置141において、支持基板Sの被処理基板Wとの接合面Sjの全てが被処理基板Wから剥がれて剥離が完了したことを検知する剥離完了検知部が設けられていてもよい。
図22は、支持基板S、第1吸着移動部360の吸着パッド361、第2吸着移動部370の吸着パッド371、第3吸着移動部380の吸着パッド381、および剥離完了検知部500の位置関係を示す模式平面図である。
剥離完了検知部500は、例えば光電センサである。剥離完了検知部500は、具体的には、支持基板Sの一端S1付近に配置され、一端S1から他端S2へ向かう方向と平行な方向に、被処理基板Wと支持基板Sとの接合部分(例えば接着剤G)に向けて光を投光する投光部(剥離完了検知用投光部)500aを備える。また、剥離完了検知部500は、重合基板Tを挟んで投光部500aと反対側、すなわち他端S2付近に配置され、投光部500aからの光を受光する受光部(剥離完了検知用受光部)500bを備える。なお、図22においては、上記した光を点線で示した。
詳しくは、支持基板Sの被処理基板Wとの接合面Sjの全てが被処理基板Wから剥がれて剥離が完了すると、支持基板Sと被処理基板Wとの間には間隙が形成される。受光部500bは、その間隙が形成された場合に、投光部500aからの光を受光するような位置に配置される。そして、受光部500bは、光を受光した場合、受光したことを示す信号を制御装置30に送信する。
これにより、制御装置30は、剥離完了検知部500の検知結果に基づき、支持基板Sの剥離が完了したか否かを判定することができる。すなわち、制御装置30は、受光部500bで光が受光されない場合には支持基板Sの剥離が完了していないと判定する一方、光が受光された場合には支持基板Sの剥離が完了したと判定する。なお、投光部500aおよび受光部500bの配置は、図示の例に限定されるものではなく、例えば投光部500aが他端S2付近に、受光部500bが一端S1付近に配置してもよい。
上記のように構成したことから、剥離装置141にあっては、剥離処理によって支持基板Sの剥離が完了したことを容易に、かつ簡易な構成で判定することができる。なお、剥離完了検知部500の構成は、上記に限定されるものではない。
すなわち、図22に一点鎖線で示すように、例えば支持基板Sにおいて最後に被処理基板Wから剥離される他端S2の被処理基板Wとの接合部分に、X軸方向と平行な光が通過するように、投光部500aおよび受光部500bを配置してもよい。このように構成した場合であっても、制御装置30は、受光部500bで光が受光された場合、支持基板Sの他端S2が被処理基板Wから剥離したことを意味するため、支持基板Sの剥離が完了したと判定することができる。
また、上述してきた実施形態では、剥離対象となる重合基板が、被処理基板Wと支持基板Sとが接着剤Gによって接合された重合基板Tである場合の例について説明した。しかし、剥離装置の剥離対象となる重合基板は、この重合基板Tに限定されない。例えば剥離装置141では、SOI基板を生成するために、絶縁膜が形成されたドナー基板と被処理基板とが張り合わされた重合基板を剥離対象とすることも可能である。
ここで、SOI基板の製造方法について図23および図24を参照して説明する。図23および図24は、SOI基板の製造工程を示す模式図である。図23に示すように、SOI基板を形成するための重合基板Taは、ドナー基板Kとハンドル基板Hとを接合することによって形成される。
ドナー基板Kは、表面に絶縁膜600が形成されるとともに、ハンドル基板Hと接合する方の表面近傍の所定深さに水素イオン注入層601が形成された基板である。また、ハンドル基板Hとしては、例えばシリコンウェハ、ガラス基板、サファイア基板等を用いることができる。
剥離装置141では、例えば第1保持部310でドナー基板Kを保持し、第2保持部350でハンドル基板Hを保持した状態で、重合基板Taの外周部の一部を引っ張ることで、ドナー基板Kに形成された水素イオン注入層601に対して機械的衝撃を与える。これにより、図24に示すように、水素イオン注入層601内のシリコン−シリコン結合が切断され、ドナー基板Kからシリコン層602が剥離する。その結果、ハンドル基板Hの上面に絶縁膜600とシリコン層602とが転写され、SOI基板Waが形成される。なお、第1保持部310でハンドル基板Hを保持し、第2保持部350でドナー基板Kを保持してもよい。
また、上述してきた実施形態では、被処理基板Wと支持基板Sとを接着剤Gを用いて接合する場合の例について説明したが、接合面Wj、Sjを複数の領域に分け、領域ごとに異なる接着力の接着剤を塗布してもよい。
また、上述した実施形態では、重合基板Tが、ダイシングフレームFに保持される場合の例について説明したが、重合基板Tは、必ずしもダイシングフレームFに保持されることを要しない。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。