JP5633812B2 - Au−Sn系合金はんだ - Google Patents
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また、接合後の接合部のSn濃度が20.65〜23.5重量%となるようにAu−Sn系ろう材の組成及び厚さ又は体積を調整して接合する接合方法が示されている(例えば、特許文献5参照。)。
例えば、特許文献4の組成ではSn−Au共晶組成付近にBiやInといった融点の低い元素(Biの融点:271℃、Inの融点:156℃)を入れる組成範囲が示されており、この場合、共晶温度からさらに融点が下がってしまう。一方でSbを含有させた組成範囲が示されているが、Sbのように比較的融点の高い元素(Sbの融点631℃)を10重量%程度含有させた場合、Au−Sbの2元系合金において状態図から分かるように液相温度が約800℃、固相温度が約370℃となり、高融点合金が生成してしまうことになり実用的な材料とは考えられない。
以上のようにPbフリーはんだにおいて、300〜340℃程度の融点を有する材料は見当たらず、MEMSや水晶デバイス等のとくに高信頼性を必要とする接合に際して支障をきたしている場合がある。
ここで十分な濡れ性とは、接合作業の際にボイド(空孔)を生じることなくはんだ合金が溶融して、接合面に適度な面積に拡がることを意味し、これにより被接合物との接触面積が確保され、被接合物を強固に固着して信頼性の高い接合を達成できることとなる。また、高信頼性とは、強固な接合の結果、使用環境の温度変化にも耐えて長寿命で安定した接合を維持できることを意味する。
他の一つは、前記Au−Sn合金はんだにおけるWとMoの合計が0.45質量%以上、4.1質量%以下であることを特徴とするAu−Sn合金はんだである。
Au−Sn共晶組成付近をベースとして、WまたはMoを所定量添加することにより、Au−Sn合金の液相温度が上昇し、さらには粘性も上昇するため接合温度を高くすることができる。具体的には、従来、接合が困難であったはんだの融点よりも30℃〜50℃高い350〜390℃程度での接合作業が可能となる。つまり、この温度領域はAu−Sn系合金(共晶温度:280℃)では温度が高すぎ、Au−Ge系合金(共晶温度:361℃)では温度が低すぎるのである。これらのはんだの高融点化に大きな効果を示すWとMoについて以下、説明をする。
原料の入ったるつぼを高周波溶解炉に入れ、酸化を抑制するために窒素を原料1kg当たり0.7L/分以上の流量で流した。この状態で溶解炉の電源を入れ、原料を加熱溶融させた。金属が溶融しはじめたら混合棒でよく攪拌し、局所的な組成のばらつきが起きないように均一に混ぜた。十分溶融したことを確認した後高周波電源を切り、速やかにるつぼを取り出し、るつぼ内の溶湯をはんだ母合金の鋳型に流し込んだ。鋳型にははんだ合金の製造の際に一般的に使用している形状(厚さ5mmの板状)と同様のものを使用した。
その分析結果を下記の表1に示す。
表1に示す試料1〜13の各はんだ母合金(厚さ5mmの板状インゴット)を、圧延機を用いて厚さ0.10mmまで圧延した。その際、インゴットの送り速度を調整しながら圧延していき、その後スリッター加工により25mmの幅に裁断した。このようにシート形状にした試料を金型プレス機を用いて、10mm角の形状に打ち抜き、以下の評価用試料として用いた。なお、一般的にAu−Snはんだが使用される場合、はんだ厚みは0.020〜0.050mm程度で使用されることが多いが、ここでは濡れ広がりの評価を行う際、濡れ性が濡れ広がり面積に反映され易いようにはんだ厚みを故意に厚くした。
この濡れ性評価は、上記プリフォーム材を用いて行った。まず、濡れ性試験機(装置名:雰囲気制御式濡れ性試験機)を起動し、加熱するヒーター部分に2重のカバーをしてヒーター部の周囲4箇所から窒素を流した(窒素流量:各12L/分)。その後、ヒーター設定温度をはんだの融点よりも高い370℃にして加熱した。
370℃に設定したヒーター温度が安定した後、Niメッキ(膜厚:2.0μm)、さらに最上層にAuメッキ(膜厚:1.0μm)をしたCu基板(板厚:0.3mm)をヒーター部にセッティング後、25秒加熱した。次に、はんだ合金をCu基板の上に載せ、25秒加熱した。加熱が完了した後はCu基板をヒーター部から取り上げてその横の窒素雰囲気が保たれている場所に一旦設置して冷却した。十分に冷却した後、大気中に取り出して接合部分を確認した。溶融前の面積を100%として、溶融・冷却後の面積を光学顕微鏡(株式会社キーエンス製VHX−900)の面積測定機能を用いて測定した。
接合性を確認するため、上記濡れ性評価と同様にして得たはんだ合金が接合されたCu基板のボイド率を、X線透過装置(株式会社東芝製 TOSMICRON−6125)を用いて測定した。試料(はんだ)とCu基板接合面をはんだ上部から垂直にX線を透過し、取り込んだ画像データを処理して以下の式(1)を用いてボイド率を算出した。
はんだ接合の信頼性を評価するためにヒートサイクル試験を行った。なお、この試験は、上記濡れ性評価と同様にして得たはんだ合金が接合されたCu基板を用いて行った。
まず、はんだ合金が接合されたCu基板に対して、−40℃の冷却と150℃の加熱を1サイクルとして、これを所定のサイクル繰り返した。その後、はんだ合金が接合されたCu基板を樹脂に埋め込み、断面研磨を行い、SEM(日立製作所株式会社製 S−4800)により接合面の観察を行った。接合面にはがれやはんだにクラックが入っていた場合を「×」、そのような不良がなく、初期状態と同様の接合面を保っていた場合を「○」とした。
また、ボイド率に関しては、全ての比較例において7%以上と高い値であり、この原因は融点に比較し接合温度が高すぎたり、WやMoの添加量が適当でなかったなどが考えられる。ヒートサイクル試験の結果においては全て500回までに不良が発生しており、この原因ははんだが濡れ広がり過ぎたり、ボイド率が高かったり、さらには、はんだの応力緩和性が不十分であったためだと考えられる。
Claims (2)
- Snを18.5質量%以上23.5質量%以下含有し、0.02質量%以上0.5質量%以下のW、0.02質量%以上4.3質量%以下のMoのうち少なくとも1種を含有し、残部がAuからなり、300〜340℃の温度範囲に融点を有することを特徴とするAu−Sn合金はんだ。
- 前記WとMoの合計が0.45質量%以上、4.1質量%以下であることを特徴とする請求項1記載のAu−Sn合金はんだ。
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