JP5633445B2 - 車両用ホース - Google Patents

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Description

本発明は、自動車等の車両に用いられる車両用ホースに関するものである。
自動車のブレーキシステムにおいて、シャーシとホイールキャリパ間で液圧を伝達するためにブレーキホースが用いられている。ブレーキホースは、重要保安部品に指定されていることからも明らかなように、自動車の安全性を確保する上で極めて重要な部品である。図7に従来の車両用ホースの構成を示す。
図7に示すように、一般に、ブレーキホースとして用いられる車両用ホース70は、ブレーキ液が充填される内層ゴムチューブ71の外周に、補強のための編組層と被覆層とを少なくとも一層ずつ有している。より具体的には、車両用ホース70は、内層ゴムチューブ71の外周に、内層側から順に、第一編組層(補強編組層)72、中間ゴム層73、第二編組層(補強編組層)74、最外ゴム層75を有している。
このような構成を有する車両用ホースは、ハンドル操作の繰り返しに伴う頻繁な屈曲や、操舵時又は車輪の回転に伴う揺動などといった過酷な機械的ストレスが付加されることから、優れた耐疲労性が必要とされる。また、ブレーキシステムの鋭敏な動作を確保するために、低温から高温までの広範な温度領域で体積膨張量が小さいこと、すなわち耐膨張性が良好であること(低膨張性を有すること)も不可欠である。
そのため、低膨張性を有する車両用ホースの開発が行われている(例えば、特許文献1参照)。
特許3271752号公報
ブレーキホースに対する要求性能は年々高レベルになってきており、中でも繊細かつハイレスポンスなブレーキフィーリングを実現するために、ブレーキホースとして用いられる車両用ホースの更なる低膨張性とフレキシブル性とが強く求められている。
内層ゴムチューブ71、最外ゴム層75の材料として、ゴムの代わりに剛性が高い樹脂を使用し、低膨張性を向上させた樹脂製の車両用ホースはあるが、フレキシブル性が劣り、使用上制限が多かった。即ち、車両用ホースにおいて、低膨張性とフレキシブル性とを両立させることは困難であった。
本発明は、上記の課題を解決するために案出されたものであり、その目的は優れた低膨張性とフレキシブル性とを併せ持つ車両用ホースを提供するものである。
上記目的を達成するため創案された本発明は、ゴムからなる内層チューブと、前記内層チューブの外面に形成された第一補強繊維層と、前記第一補強繊維層の外面に形成された樹脂層と、前記樹脂層の外面に形成された第一ゴム層とを備え、前記第一補強繊維層が平衡水分率2.0%以下の繊維からなり、前記樹脂層がRFL液を塗布して形成され、前記第一補強繊維層と前記第一ゴム層とが前記樹脂層を介して加硫接着されている車両用ホースである。
前記第一ゴム層の外面に形成された第二補強繊維層と、前記第二補強繊維層の外面に形成された第二ゴム層とを備えているとよい。
前記第一補強繊維層を構成する繊維が共重合系アラミドであるとよい。
前記第一補強繊維層が無撚りの繊維を編み込んだ繊維層からなるとよい。
本発明によれば、優れた低膨張性とフレキシブル性とを併せ持つ車両用ホースの提供が可能となる。
本実施の形態に係る車両用ホースの構成を示す図である。 車両用ホースの膨張量と平衡水分率の関係を示す図である。 補強繊維層の持数を説明する図であり、(a)は2本持ち、(b)は3本持ちである。 フレキシブル性の測定に用いた曲げ剛性試験機を示す図である。 実施例及び比較例2で作製した車両用ホースのフレキシブル性を示す図である。 実施例及び比較例1,2で作製した各車両用ホースの圧力と膨張量の関係を示す図である。 従来の車両用ホースの構成を示す図である。
本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
本実施の形態に係る車両用ホースの基本構成を図1に示す。
図1に示すように、車両用ホース10は、例えばブレーキホースに好適なものであって、ゴムからなる内層チューブ11と、内層チューブ11の外面に形成された第一補強繊維層12と、第一補強繊維層12の外面に形成された樹脂層13と、樹脂層13の外面に形成された第一ゴム層14とを備え、第一補強繊維層12が平衡水分率2.0%以下の繊維からなり、樹脂層13がRFL液(レゾルシン・フォルマリン初期縮合物とゴムラテックスの混合物)を塗布して形成され、第一補強繊維層12と第一ゴム層14とが樹脂層13を介して加硫接着されていることを特徴としている。
内層チューブ11及び第一ゴム層14の材料は、特に限定されるものではないが、ブレーキホースのように過酷な機械的ストレスが加わる用途では、一般にゴムが使用される。ゴム材料としては、天然ゴム(NR)、クロロプレンゴム(CR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、イソブチレンゴム(IIR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)等を各部位の要求特性に応じて用いられる。また、その架橋形態及び製造方法も特に限定されるものではなく、更に必要に応じて、補強剤、充填剤、可塑剤、軟化剤、加工助剤、活性剤、スコーチ防止剤、老化防止剤等の配合剤を適宜使用することが出来る。また、ゴム以外では各種熱可塑性及び熱硬化性樹脂の適用が考えられる。
第一補強繊維層12は、共重合系アラミド繊維を単数あるいは複数本撚った糸を編み込んで形成される。共重合系アラミド繊維は、一般に高強度、高弾性の特性を有するが、本発明では、共重合系アラミド繊維でも特に低吸湿の特性を有するものが選択される。ここで低吸湿とは、JIS L 1013に準拠した平衡水分率2.0%以下を意味する。なお、本発明における平衡水分率は、温度23℃、相対湿度55%の条件下で測定したときの値である。
図2に、加圧圧力を4MPaとしたときの、第一補強繊維層12の繊維の平衡水分率と車両用ホースの膨張量の測定結果を示す。膨張量測定の方法は、JIS D2601(2006)6.4の膨張試験によるものである。
図2に示すように、第一補強繊維層12を構成する繊維として、平衡水分率が2.0%を超えるものを用いると、車両用ホースの膨張量が大きくなってしまうことが分かる。これは、第一補強繊維層12を構成する繊維として、平衡水分率が2.0%を超えるものを用いた場合、加熱(加硫)時に、第一補強繊維層12を構成する繊維が劣化してしまうことに起因すると考えられる。よって、第一補強繊維層12としては、平衡水分率が2.0%以下の繊維を用いることが望ましい。
樹脂層13の形成に用いるRFL液は、その組成が特に限定されるものではなく、また、ゴムラテックスは第一ゴム層14に使用される材料に応じて適宜選択することが出来る。
本実施の形態に係る車両用ホース10は、さらに、第一ゴム層14の外面に第二補強繊維層15と、第二補強繊維層15の外面に第二ゴム層16とを備えている。
第二補強繊維層15の材料は特に限定されるものではなく、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレン−2,6−ナフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリアリレート繊維、ポリビニルアルコール繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、アクリル繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリウレタン繊維、ポリオキシメチレン繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール繊維、ポリイミド繊維、ポフェニレンサルファイド繊維のような合成繊維、レーヨンやポリノジックのような化学繊維、綿や麻のような天然繊維等を各用途の要求特性に応じて用いれば良い。
第二ゴム層16は、内層チューブ11及び第一ゴム層14と同様に、要求特性に応じて上記した種々のものを用いることができる。
以上説明した各層の形成方法、条件については特に制限されるものではないが、樹脂層13を介しての第一補強繊維層12と第一ゴム層14との加硫接着は、例えば、樹脂層13の外面に第一ゴム層14を形成するためのゴム組成物を被覆した後、熱処理(車両用ホース10を形成する際の熱処理)を行うことにより、ゴム組成物の加硫と共に行われる。
更に、第一ゴム層14の外面に補強繊維層を複数形成する場合、補強繊維層間の摩耗を防ぐために中間ゴム層を介在させることが出来る。この中間ゴム層の材質、形態、形成方法についても特に制限されるものではないが、通常は補強繊維層形成時、層間に未加硫ゴムテープ、フィルム(例えば樹脂)を巻くか、ゴムを溶剤に溶かして糊状にしたものをコーティング、あるいはディッピングした後、架橋によって形成させる。
本発明では、第一補強繊維層12に平衡水分率2.0%以下の繊維を用いることで、第一補強繊維層12を構成する繊維の加硫時(加熱時)における劣化を低減し、車両用ホース10の膨張量を低減することを可能としている。また、第一補強繊維層12の外周にRFL液を塗布して形成された樹脂層13は、第一補強繊維層12の膨らみを抑えることに寄与し、車両用ホース10の膨張量を低減することを可能にしている。即ち、本発明では、第一補強繊維層12を構成する繊維の劣化を低減することと、第一補強繊維層12の外周にRFL液を塗布して形成された樹脂層13を設けることと、が相俟って、優れた低膨張性を実現している。更に、最外ゴム層である第二ゴム層16に高弾性のゴムを要求特性に応じて使用することが可能である。したがって、本発明によれば、優れた低膨張性とフレキシブル性とを併せ持つ車両用ホース10の提供が可能となる。
なお、上記実施の形態では、第一補強繊維層12は繊維を撚った糸を編み込んで形成されるものとしたが、糸は無撚りとしてもよい。第一補強繊維層12に使用する繊維を無撚りにすることにより、編込んだ繊維と繊維の隙間が埋まることから、更に低膨張量を向上させることが出来る。
実施例及び比較例を説明する。
実施例及び比較例1,2では、図1で説明した車両用ホース10のように、内層チューブの外面に補強繊維層及びゴム層を順次2層ずつ形成した車両用ホースを作製した。この材料構成を表1に示す。表1中、補強繊維層に用いたビニロン繊維は、株式会社クラレ製のビニロン(品番#1225−7)であり、ゴム層に用いたEPDMゴムは、住友化学株式会社製のエスプレンあるいは三井化学株式会社製の三井EPTである。また、樹脂層はRFL液を塗布して形成されたものである。ここで、樹脂層の厚さは0.05mm以下、第一ゴム層の厚さは0.75mmであった。また、表1中、持数が2とは、図3(a)のように、2本の糸30を1本の糸のように使用して編組したことを指し、持数が3とは、図3(b)のように、3本の糸31を1本の糸のように使用して編組したことを指す。
実施例及び比較例2で作製した車両用ホースについて、図4に示す曲げ剛性試験機を用いてフレキシブル性を測定した。具体的には、自由長100mmの車両用ホース40の片端41を固定し、図示しない引張試験機を使用して他端42を引張速度30mm/minで引き上げ、車両用ホース40の変位量(0〜30mm)と荷重の関係を測定した。この結果を図5に示す。
図5から分かるように、実施例で作製した車両用ホース(本発明品)は、比較例2で作製した車両用ホース(従来品)に比べ、フレキシブル性に優れている。
次に、実施例及び比較例1,2で作製した車両用ホースについて、膨張量測定を行った。膨張量測定の方法は、JIS D 2601(2006)6.4の膨張試験によるものである。この結果を図6に示す。
図6から分かるように、実施例で作製した車両用ホース(本発明品)は、比較例1,2で作製した車両用ホース(従来品)に比べ、低膨張性が向上している。
以上より、本発明によれば、優れた低膨張性とフレキシブル性とを併せ持つ車両用ホースを提供することが可能であることを確認することができた。
10 車両用ホース
11 内層チューブ
12 第一補強繊維層
13 樹脂層
14 第一ゴム層
15 第二補強繊維層
16 第二ゴム層

Claims (4)

  1. ゴムからなる内層チューブと、前記内層チューブの外面に形成された第一補強繊維層と、前記第一補強繊維層の外面に形成された樹脂層と、前記樹脂層の外面に形成された第一ゴム層とを備え、前記第一補強繊維層が平衡水分率2.0%以下の繊維からなり、前記樹脂層がRFL液を塗布して形成され、前記第一補強繊維層と前記第一ゴム層とが前記樹脂層を介して加硫接着されていることを特徴とする車両用ホース。
  2. 前記第一ゴム層の外面に形成された第二補強繊維層と、前記第二補強繊維層の外面に形成された第二ゴム層とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ホース。
  3. 前記第一補強繊維層を構成する繊維が共重合系アラミドであることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用ホース。
  4. 前記第一補強繊維層が無撚りの繊維を編み込んだ繊維層からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両用ホース。
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